特許第6671845号(P6671845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671845
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】液滴検知シート
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20200316BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20200316BHJP
【FI】
   G01N21/78 A
   B32B7/022
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-24136(P2015-24136)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-33508(P2016-33508A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-153755(P2014-153755)
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504072820
【氏名又は名称】株式会社サンオーク
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】石野 良明
(72)【発明者】
【氏名】高須 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 保弘
(72)【発明者】
【氏名】羽藤 信弘
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−230044(JP,A)
【文献】 特開2005−300555(JP,A)
【文献】 特開2002−168847(JP,A)
【文献】 特開2013−011654(JP,A)
【文献】 特開2003−090838(JP,A)
【文献】 特開2005−337948(JP,A)
【文献】 特開2007−303831(JP,A)
【文献】 特開2007−316058(JP,A)
【文献】 特開2008−111774(JP,A)
【文献】 特表2009−504806(JP,A)
【文献】 特開2012−202989(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0042722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/75−21/83
B32B 1/00−43/00
G01N 31/00−31/22
G01N 33/00−33/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、該基材の表面に設けられて不可逆的な発色が可能な塗工層とを有する液滴検知シートであって、
前記塗工層が、水分を含む液滴に接触すると不可逆的に発色する水溶性染料と水溶性及び/又は吸水性の接着剤(ポリビニルアルコールを除く)とを含有しており、前記接着剤は水系以外の溶媒に溶解する性質を更に備え
前記塗工層に含有される前記水溶性染料の粒径は、JIS K0069−1992に規定されるふるい分け試験法による公称目開き106μmのふるい残分が0.1%以下であり、かつ公称目開き45μmのふるい残分が95%以上の範囲にあり、前記水溶性染料が前記接着剤および溶媒中に分散・保持されている、ことを特徴とする液滴検知シート。
【請求項2】
前記基材が白色または淡色であり、発色後の前記塗工層は濃色系であることを特徴とする請求項1に記載の液滴検知シート。
【請求項3】
前記塗工層に含有される前記水溶性染料と前記接着剤との配合比率が、水溶性染料:接着剤=1:99〜70:30(固形分の重量部)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴検知シート。
【請求項4】
前記塗工層が、0.3〜3.0g/mであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液滴検知シート。
【請求項5】
前記塗工層上に剥離可能な保護フィルムが積層してあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴検知シート。
【請求項6】
前記塗工層を設けた面とは反対側の前記基材の表面に粘着剤層を設け、該粘着剤層上に剥離性シート材が積層してあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液滴検知シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分を含む液滴が接触する事によって不可逆的に発色する液滴検知シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水に濡れると発色する様々な液滴検知シートが提案されている。例えば、常態では白色だが水に濡れると濡れた部分の屈折率が変化して下地色が透けて見える水筆紙がある。しかし、可逆性のため付着した水が蒸発すると消色し、保存性に問題がある。これに対して、特許文献1には常態では黄色だが水に濡れると濡れた部分が青色に変化する感水紙を使用した薬剤飛散状況解析方法が開示されている。しかし、「噴霧される薬品の付着に反応する薬品反応紙」や「薬品反応紙は薬品の付着により変色する感水紙」との記載はあるが薬品反応紙や感水紙の構成を含めた詳細な記載はなく、薬品反応紙や感水紙に係る技術内容の詳細は開示されてない。
また、非特許文献1には感水紙試験紙の取扱説明書についての記載、非特許文献2には感水紙の紹介記事、非特許文献3には感水紙を使用した農薬飛散状況に関する実証報告が記載されているが感水紙試験紙や感水紙の技術内容の詳細は開示されてない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−303831号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】スプレーイングシステムスジャパン株式会社 感水試験紙取扱説明書インターネット情報<URL:http://www.spray.co.jp/products/kansuishi01.html>
【非特許文献2】ノズルネットワーク株式会社 感水紙のご案内インターネット情報<URL:http://www.nozzle-network.co.jp/drift/kansuishi.html>
【非特許文献3】ドリフト対策感水紙解析技術[農薬飛散低減対策試験・実証等に関する情報交換会]資料インターネット情報<URL:http://www.maff.go.jp/kinki/syouhi/anzen/posi/pdf/190301_04.pdf#search='%E6%84%9F%E6%B0%B4%E7%B4%99'>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の実情に鑑みて雨、結露水、噴霧された水分を含む液滴などと接触した履歴が簡単に確認でき、また、農薬などの水分を含む各種薬剤散布時や撒水時の液滴飛散状況を簡便に目視で確認・判断でき、且つ、証拠として保存することが可能な液滴検知シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の[1]〜[6]を提供することにより、上記目的を達成する。
[1] シート状の基材と、該基材の表面に設けられて不可逆的な発色が可能な塗工層とを有する液滴検知シートであって、前記塗工層が、水分を含む液滴に接触すると不可逆的に発色する水溶性染料と水溶性及び/又は吸水性の接着剤(ポリビニルアルコールを除く)とを含有しており、前記接着剤は水系以外の溶媒に溶解する性質を更に備え、前記塗工層に含有される前記水溶性染料の粒径は、JIS K0069−1992に規定されるふるい分け試験法による公称目開き106μmのふるい残分が0.1%以下であり、かつ公称目開き45μmのふるい残分が95%以上の範囲にあり、前記水溶性染料が前記接着剤および溶媒中に分散・保持されている、ことを特徴とする液滴検知シート。
[2] 前記基材が白色または淡色であり、発色後の前記塗工層は濃色系であることを特徴とする[1]に記載の液滴検知シート。
[3] 前記塗工層に含有される前記水溶性染料と前記接着剤との配合比率が、水溶性染料:接着剤=1:99〜70:30(固形分の重量部)であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の液滴検知シート。
[4] 前記塗工層が、0.3〜3.0g/mであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の液滴検知シート。
[5] 前記塗工層上に剥離可能な保護フィルムが積層してあることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の液滴検知シート。
[6] 前記塗工層を設けた面とは反対側の前記基材の表面に粘着剤層を設け、該粘着剤層上に剥離性シート材が積層してあることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の液滴検知シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば雨、結露水、噴霧された水分を含む液滴などと接触した履歴が簡単に確認でき、また、農薬などの水分を含む各種薬剤散布時や撒水時の液滴飛散状況を簡便に目視で確認・判断でき、且つ、証拠として保存することが可能となる液滴検知シートを提供することができる。また、本発明の液滴検知シートを用いた液滴の検知方法は、水に濡れると色調変化する試薬や複雑な解析装置を使用する従来の方法と比較して、安価・簡便な方法である。
なお、本発明の液滴検知シートは感度が極めて良好であるので、手に付着した汗や測定環境の露等の水分で発色するため取り扱いには綿の手袋などで直接に接触しない様にして取り扱ことが望ましい。本発明の液滴検知シートの表面に保護フィルムを積層することで取り扱いを容易化できる。更にまた、測定時に垂直面や天井面など様々な場所に固定でき、固定する対象物も屋外ではフェンス、塀、外壁等の建造物、岩、樹木、枝葉等の自然物などに固定でき、風などで飛散しない様に裏面に粘着剤を積層した本発明の液滴検知シートによって作業性が格段に簡便化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る液滴検知シートの実施の形態の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明に係る液滴検知シートで、表面に再剥離性を有する保護フィルムを積層した形態例を示す概略構成図である。
図3】本発明に係る液滴検知シートで、塗工層を設けた面とは反対側の基材の表面に粘着剤層を設けた形態例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の液滴検知シートは、図1に示すように、シート状の基材1と、この基材1の表面に設けられて不可逆的な発色が可能な塗工層2とを有する液滴検知シートであって、前記塗工層2が、水分を含む液滴に接触すると発色する水溶性染料と水溶性及び/又は吸水性の接着剤とを含有することを特徴としている。そして、前記基材が白色または淡色であり、発色後の前記塗工層が濃色系であることが望ましいものである。
本発明の液滴検知シートは、雨や結露水など比較的大きな液滴(水滴)や、スプレーなどで噴霧された薬剤など比較的微細な液滴(薬剤などの化学成分を含む水滴)を高感度で検知するのに好適なシートである。本発明の液滴検知シートでは、液滴との接触によって塗工層内の水溶性染料が瞬時に溶解し、液滴の大きさに応じたスポットで発色する。よって、液滴の有無を検知できるというだけでなく、発生しているスポットの密度、大きさによって液滴の拡散状態等も確認することができる。
なお、不可逆的に発色する水溶性染料を使用することで、発色したスポットは水分が蒸発しても変色や消色する事はなく、目視で確認・判断でき、且つ証拠として保存することができる。このため、本発明の液滴検知シートは、雨、結露水、噴霧水などとの接触履歴や農薬など水分を含む各種薬剤散布時や撒水時の液滴飛散状況を目視で確認・判断できる液滴検知シートとして好適に使用できる。
【0010】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する塗工層の水溶性染料は一般的な黒、赤、緑、藍等の濃色系の水溶性染料が使用される。濃色系の水溶性染料を使用することで、スポット状の発色状態を容易に視認出来る様にすることが可能となる。
【0011】
また、水溶性染料の粒径は、JIS K0069−1992に規定されるふるい分け試験法による公称目開き106μmのふるい残分が0.1%以下であり、かつ公称目開き45μmのふるい残分が95%以上の範囲にあることが好ましい。
【0012】
公称目開き45μmのふるいを通過する粒径では着色能が大きくなって地色と濡れた時の色のコントラスト差が小さくなり発色スポットの視認性が劣り好ましくない。一方、公称目開き106μmのふるいを通過しない粒径では地色と濡れた時の色のコントラスト差は良好になるが表面にざらつきが発生し、更に塗工工程上ストリークなどの不具合が発生し好ましくない。
【0013】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する水溶性染料を含む塗工層に含有される接着剤は、水溶性及び/又は吸水性を有しているとともに、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエンなどの水系以外の溶媒に溶解するものであれば特に限定する物ではなく、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド架橋体、ポリビニルピロリドン等、汎用の接着剤を使用できる。
【0014】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する塗工層の水溶性染料と水溶性及び/又は吸水性の接着剤との配合比率が濃色系の水溶性染料:水溶性及び/又は吸水性の接着剤=1:99〜70:30(重量部)であることが好ましい。
【0015】
水溶性染料が1重量部以下では絶対量が少なく濡れた時の発色が弱く、検知能力が劣るので好ましくない。70重量部以上では着色能が大きくなって地色と濡れた時の色のコントラスト差が小さくなり発色スポットの視認性が劣るので好ましくない。
【0016】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する塗工層の重量が0.3〜3.0g/mであることが好ましい。
1g/m以下では絶対量が少なく濡れた時の発色が弱く、検知能力が劣るので好ましくない。3g/m以上では水に濡れない状態で濃く着色し、地色と濡れた時の色のコントラスト差が小さくなり発色スポットの視認性が劣るので好ましくない。
【0017】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する塗工層は、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエンなどの水以外の溶媒に、上記水溶性染料が溶解せずに分散した状態であり、且つポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド架橋体、ポリビニルピロリドン等が分散している塗料(水溶性染料と接着剤との混合物)を基材上に塗工・乾燥して形成するのが好ましい。塗料中に水(水溶性染料を溶解する溶媒)が配合されると、水溶性染料が塗料中で溶解・発色するので水と接触せぬように配慮する必要がある。上記の接着剤としては、水溶性及び/又は吸水性を用いるのが好ましく、その理由は塗料中における水溶性染料の分散性や安定性が良好になり、均一な発色性が得られ、かつ、水分を含む液滴の吸収性に優れるからである。
なお、本発明で採用する水溶性染料については、当該染料自体は一般的な黒、赤、緑、藍等の濃色の化合物であるが、粒径を特定の範囲にすること、および、水溶性及び/又は吸水性の接着剤との配合比を特定の範囲にすることで接着剤と溶媒中に分散・保持されている形態では無色〜淡色を示すため、塗工層は未使用時(すなわち、液滴との未接触時)において、基材の色が反映される無色〜淡色となるのである。
従って発色前における本発明の液滴検知シートの塗工面の色は基材に基づいた色で、液滴に接触したときに水溶性染料が溶解して不可逆的に発色するのである。
【0018】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的な発色が可能な塗工層の下面には発色した後の視認性を良くするため、白色、黄、ピンク、淡青、等の淡色系(蛍光色を含む)の基材を使用するのが好適である。
本発明の液滴検知シートでは、前述したように淡色系の基材表面に、発色後に濃色系となる塗工層を設けた組み合わせとするのが好ましいものである、このような液滴検知シートは汎用性を備え、視認性が向上したものとなるからである。
しかし、これに限る必要はなく、本発明の液滴検知シートは、使用する環境に応じて発色を確認し易い色の組み合わせに適宜に設計してよい。例えば、基材の色を赤や黒の濃色として、塗工層が黄色、青色を発色させるものであってもよい。
【0019】
本発明において、上記基材に採用可能なシート状の材料としては、生分解性を有するポリ乳酸系樹脂シート、ポリプロピレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の汎用のプラスチックシート、合成紙シート、片艶紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙などの紙シートが挙げられ、これらシート(基材)を積層複合化した基材でも使用することができる。また、無色・透明のプラスチックシートの表面に一般的な染料や顔料により白色あるいは淡色に着色した層を設けた基材、白色あるいは淡色で不透明性のプラスチックシートを基材として使用することができる。
【0020】
本発明において、基材表面に水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する水溶性染料を含んでなる塗工層を設ける塗工方法は特に限定されるものではなく、一般的な塗工機が使用できるが塗料特性や塗工量から特にグラビア、マイヤーバーの塗工装置が付いた塗工機が好ましい。
【0021】
本発明において、基材は特に限定する物ではないが経済性、汎用性、機能性、環境性の観点から片艶紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙が好ましい。これらの基材は原料パルプとして針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、などの木材パルプを主体とし、これに必要に応じて、麻、竹、ワラ、ケナフ等の非木材パルプを併用することができる。これらの原料パルプに必要に応じてクレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム粉末等の内添用填料を加え、さらにロジンサイズ剤等のサイズ剤、ポリアクリルアミド等の乾燥紙力増強剤、ポリアミド・ポリアミン・エピクロルヒドリンやメラミン樹脂等の湿潤紙力増強剤、硫酸バンド等の定着剤等の製紙用副資材を適宜添加して紙料を調製し、円網抄紙機、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機等の抄紙機を使用して常法に従い非塗工紙を得ることができる。
【0022】
これら非塗工紙の紙面強度を向上させるために、サイズプレス装置等によって、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、アルキルケテンダイマー、澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カルボキシメチル化セルロース、カルボキシメチル化グアーガム、リン酸化グアーガム、酸化グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の薬品を表面に塗工することが可能である。
【0023】
これら非塗工紙を原紙としてその表面にカオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの顔料とスチレン・ブタジエンラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエンラテックス、澱粉、ポリビニルアルコール等の周知の接着剤に分散剤、耐水化剤、防腐剤、防かび剤、等の塗工用の副資材を適宜併用して塗工液を調製し、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、キャストコーター等の周知のコーターを使用してコート紙、アート紙、キャストコート紙などの塗工紙を得ることができる。
【0024】
本発明において、水分を含む液滴が接触すると不可逆的に発色する水溶性染料を含む塗工層を設けてなる液滴検知シートの坪量は特に限定するものではないが40〜300g/mが好ましく、特に取り扱い性や経済性の点から60〜250g/mが好適である。
【0025】
本発明の液滴検知シートは、前述した基材と塗工層とを備えてなるものが基本形態型(図1)であるが、図2に示すように、塗工層2上(表面)に保護フィルム3を更に配置することで、使用前に塗工層が水と接触して発色することを予防しつつ、取扱いが容易な液滴検知シートとすることができる。
塗工層上に積層する保護フィルムは、少なくとも片面に粘着剤層を有するもので、塗工層と接触する上記保護フィルムの粘着剤がその表面を侵すことが無く、且つ保護フィルムを剥がす時に上記粘着剤が塗工層表面を破壊することがないものであれば特に限定するものではなく、汎用の紙製マスキング用粘着シートやフィルム製マスキング用粘着シートが使用できる。ただし、塗工層を水分と接触させないようにするという耐水性の観点からフィルム製マスキング用粘着シートがより好適である。剥離力は特に限定するものではないが取り扱いの観点から20〜200g/15mm程度が好ましい。20g/15mm以下では取り扱い時に液滴検知シートから脱落する可能性があり好ましくない。また、200g/15mm以上では液滴検知シートから剥離する際に表面を破壊する可能性があり好ましくない。
【0026】
また、本発明の液滴検知シートの基本形態型(図1)に、図3に示すように、塗工層2を設けた面とは反対側の基材1の表面に粘着剤層4を設け、この粘着剤層4上に剥離性シート材5を積層してもよい。これにより粘着剤層を利用して任意の構造物(少なくとも、粘着剤層を接触できる表面部を有する物体)に液滴検知シートを貼り付けることができるようになる。この場合も、塗工層2上に上記保護フィルム3を有する形態が好適な液滴検知シートとなる。
上記好適な液滴検知シートにおいて、粘着剤層は、保護フィルムを積層した液滴検知シートの反対面に設け、剥離シートで保護した所謂、粘着シートの形状である。粘着剤は所望の粘着力が得られれば特に限定するものではなく、汎用のアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が使用できる。粘着力はフェンス、塀、外壁等の建造物、岩、樹木、枝葉等の自然物、機械・装置等の人工物など固定する対象物に対して充分に接着し、風や振動・衝撃などで容易に剥離・脱落しない程度であれば特に限定するものではないが100〜1000g/15mm程度が好ましい。100g/15mm以下では対象物によって脱落する可能性があり好ましくない。また、1000g/15mm以上では対象物によって剥離不能になったり、対象物の表面を破壊する可能性があり好ましくない。
剥離性シート材は粘着剤に対し適度の剥離性を有するものであれば特に限定するものではなく、シリコーン系剥離剤を塗布した汎用の剥離紙や剥離フィルムを使用できる。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
水溶性染料粉末(日本化薬製 カヤフェクトブルーNRE)をJIS K0069−1992に規定されるふるい分け試験法により分級し、公称目開き75μmのふるい残分が0.1%以下であり、かつ公称目開き53μmのふるい残分が95%以上の範囲の粉末を分取した。
ポリビニルピロリドン(日本触媒製 K-90)をイソプロピルアルコールに溶解して濃度10重量%のバインダー溶液を調製し、上記の水溶性染料粉末を分散し、イソプロピルアルコールで希釈して、水溶性染料:ポリビニルピロリドン=62:38(固形分重量比)で固形分濃度8.3重量%の水溶性染料分散液を調製した。
表面の平滑度が3000秒のキャストコート紙(日本製紙製 エスプリVW、坪量210g/m)のキャストコート面に、上記水溶性染料分散液をマイヤーバーで固形分として0.6g/m塗工し、本発明の液滴感知シートを作製した。
上記キャストコート紙は白色であり、水溶性染料分散液を塗工層として形成してある使用前の液滴感知シート表面の色の様子は若干青みを帯びた白色であった。
上記シートにマイクロシリンジで純水4μlを滴下したところ、水滴滴下部分は濃い青色に発色し、基紙への経時的な吸収、乾燥により水滴直径と同じ円形に青色発色部分が固定化し、水滴の接触を目視により視認でき、かつ発色部分は変形、変色することなく保存することができた。
【0028】
[実施例2]
実施例1において、水溶性染料分散液のポリビニルピロリドンと水溶性染料粉末の配合比を水溶性染料:ポリビニルピロリドン=55:45(固形分重量比)とした以外は実施例1と同様にして本発明の液滴検知シートを作製した。
【0029】
[実施例3]
実施例1において、水溶性染料粉末の粒子径をJIS K0069−1992に規定されるふるい分け試験法による公称目開き106μmのふるい残分が0.1%以下であり、かつ公称目開き45μmのふるい残分が95%以上の範囲とした以外は、実施例1と同様にして本発明の液滴検知シートを作製した。
【0030】
[実施例4]
粒子径がJIS K0069−1992に規定されるふるい分け試験法による公称目開き75μmのふるい残分が0.1%以下であり、かつ公称目開き45μmのふるい残分が95%以上の範囲である水溶性染料粉末(日本化薬製 カヤフェクトブルーNRE)をイソプロプロピルアルコールに分散した濃度48重量%の水溶性染料分散液と濃度10重量%のポリエチレンオキサイド架橋体(住友精化製 アクアコークTWB)の酢酸エチル溶液とを、水溶性染料粉末/ポリエチレンオキサイド架橋体=1/99(固形分重量比)で配合した固形分濃度10.4重量%の水溶性染料分散液を調製した。
表面の平滑度が3000秒のキャストコート紙(日本製紙製 エスプリV、坪量210g/m)のキャストコート面に、上記水溶性染料分散液をアプリケーターバーで塗工し、固形分付着量が3g/mの発色層を塗設し、本発明の液滴検知シートを作製した。
該シートにマイクロシリンジで純水4μlを滴下したところ、水滴滴下部分は濃い青色に発色し、水滴はシート中へ迅速に吸収され、乾燥により水滴直径と同じ円形に青色発色部分が固定化し、水滴の接触を目視により視認でき、かつ発色部分は変形、変色することなく保存することができた。更に、発色した染料はポリエチレンオキサイド架橋体内部に保持されるため発色した染料が手指等に付着することがなく、取扱い易いものであった。
【0031】
[実施例5]
実施例1の液滴検知シートの塗工表面に保護フィルム(サンエー化研製 サニテクトY)を圧着ロール方式で積層貼合した。この液滴検知シートの取り扱い時に、塗工層に指が接触するとその部分が手汗で指紋状に発色する虞(おそれ)があるので手袋を着用するのが望ましいものであるが、保護フィルムを積層した場合は直接素手で触っても全く問題が無く簡単に取り扱い作業することが出来た。この時の液滴検知シート表面に対する保護フィルムの剥離力は55g/15mmで表面を破壊することなく容易に剥離することが出来、且つ液滴検知シート表面を侵すことも無く何ら変化は見られなかった。
【0032】
[実施例6]
実施例5の液滴検知シートの塗工表面に保護フィルムを積層貼合した基材を表面基材として通常の粘着加工機で剥離紙(リンテック製EK100LT)に粘着剤(綜研化学製SKダイン1035)を塗工量25g/m2(乾燥重量)になるよう塗布し、転写法で液滴検知粘着シートを得た。この時の液滴検知粘着シートの粘着力は500g/15mmで金網フェンスおよびブロック塀の垂直面に充分に固着し、剥離する際には容易に剥離することが出来た。なお、固着対象物が機械装置の塗装面の場合は、液滴検知シートの密着性が高くなる傾向にあったが、この場合も剥離可能であった。
【0033】
[評価]
本発明の液滴検知シートの評価方法は無風の屋内において幅50mm×長さ1.5mのテープ状の液滴検知シートを床上に置き、水を入れたハンドスプレーで高さ1mの地点から液滴検知シートに向かって噴霧し、液滴が接触して発色する際の感度及び視認性、飛散分布状況を定性的に評価した。
【0034】
また、保存性は発色スポットの7日後の変化(変色、消色、スポットの大きさ)を目視で確認した。
○:発色スポットの大きさ、色調、コントラストなど感度や視認性の良いもの
×:上記以外のもの
【0035】
【表1】
【符号の説明】
【0036】
1 基材
2 塗工層
3 保護フィルム
4 粘着剤層
5 剥離性シート材
図1
図2
図3