(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671863
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】コンクリート充填鋼管の製作方法、加圧装置およびコンクリート漏出制限器具
(51)【国際特許分類】
E04C 3/34 20060101AFI20200316BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
E04C3/34
E04G21/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-97848(P2015-97848)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-211306(P2016-211306A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−179807(JP,A)
【文献】
特開2007−062263(JP,A)
【文献】
特許第3022739(JP,B2)
【文献】
特公平04−075979(JP,B2)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0122553(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E04C 3/34
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管内にコンクリートを充填する工程と、上記鋼管の上部に加圧装置を連結する工程と、上記加圧装置によって上記鋼管内に充填された流動性を有する状態のコンクリートの上面部を加圧する工程とを有し、上記コンクリートの流動性が失われて凝結する前の段階で上記加圧装置による上記コンクリートへの加圧を終了することを特徴とするコンクリート充填鋼管の製作方法。
【請求項2】
鋼管内にコンクリートを充填する工程と、上記鋼管の上部に加圧装置を連結する工程と、上記加圧装置によって上記鋼管内に充填された流動性を有する状態のコンクリートの上面部を加圧する工程とを有し、上記鋼管の底部に固定されているベースプレートの上側に網状部材を敷いて、この網状部材上にコンクリートを充填し、上記網状部材および上記ベースプレートに形成された孔を通して余剰水を排出させることを特徴とするコンクリート充填鋼管の製作方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンクリート充填鋼管の製作方法において、上記鋼管内にコンクリートを充填する前の段階でコンクリートに流動化剤を添加して流動性を確保することを特徴とするコンクリート充填鋼管の製作方法。
【請求項4】
鋼管内にコンクリートを充填する工程と、上記鋼管の上部に加圧装置を連結する工程と、上記加圧装置によって上記鋼管内に充填された流動性を有する状態のコンクリートの上面部を加圧する工程とを有するコンクリート充填鋼管の製作方法に用いる加圧装置であって、
本体部と、上記本体部に対して移動する移動加圧部と、上記移動加圧部の先端部に設けられて上記コンクリートの上面部に接触する押圧板部と、上記本体部を上記鋼管に連結するための連結部と、上記押圧板部の周囲部に設けられて上記鋼管の内面に接触する摺接部材と、を備えることを特徴とする加圧装置。
【請求項5】
鋼管内にコンクリートを充填する工程と、上記鋼管の上部に加圧装置を連結する工程と、上記加圧装置によって上記鋼管内に充填された流動性を有する状態のコンクリートの上面部を加圧する工程とを有するコンクリート充填鋼管の製作方法に用いる加圧装置であって、
本体部と、上記本体部に対して移動する移動加圧部と、上記移動加圧部の先端部に設けられて上記コンクリートの上面部に接触する押圧板部と、上記本体部を上記鋼管に連結するための連結部と、を備えており、上記押圧板部が分割可能或いは変形可能に構成されていることを特徴とする加圧装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の加圧装置において、上記押圧板部には、上記コンクリート中の余剰水および空気を上側に抜けさせる孔が形成されていることを特徴とする加圧装置。
【請求項7】
鋼管内にコンクリートを充填する工程と、上記鋼管の上部に加圧装置を連結する工程と、上記加圧装置によって上記鋼管内に充填された流動性を有する状態のコンクリートの上面部を加圧する工程とを有するコンクリート充填鋼管の製作方法に用いるコンクリート漏出制限器具であって、
上記鋼管に形成されている蒸気抜き孔に嵌まる栓状部と、上記栓状部を上記鋼管に留め付ける留付部材とを備えており、上記栓状部にはコンクリートの漏出は制限するが余剰水および空気を通過させる孔が上記鋼管内から鋼管外に通じるように形成されていることを特徴とするコンクリート漏出制限器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管内に充填したコンクリートを加圧するコンクリート充填鋼管の製作方法、コンクリート充填鋼管、加圧装置およびコンクリート漏出制限器具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート充填鋼管(CFT; Concrete Filled Steel Tube)造における鋼管柱へのコンクリート充填施工は、圧入工法、落し込み充填工法のいずれかによって実施することができる。一般に、柱―梁接合部の内部にはダイアフラムが設けられているが、コンクリート充填の際、ダイアフラム直下に空隙、空気溜り等が発生することにより、不可避のコンクリートの強度変動が生じることが知られている。強度変動にともなう強度低下分を担保するために、コンクリートの強度補正値(Sc値)を10〜15N/mm
2に設定することがJASS5等に規定されており、コンクリートの呼び強度(=Fq+Sc)が非常に大きくなってしまい、コンクリート材料費が高くなる。なお、上記Fqはコンクリートの品質基準強度である。
【0003】
ここに、上記ダイアフラム直下に空隙、空気溜り等が発生するのを抑制できると、コンクリートの強度変動幅が小さくなり、その結果、Sc値を小さく設定でき、コンクリートの呼び強度を低くできるため、コンクリート材料費を低減することが可能になる。
【0004】
そして、特許文献1には、鋼管と充填コンクリートとの付着力を増大させ、充填コンクリートの軸力負担率を増大させ得る充填コンクリート鋼管柱にプレストレスを導入する建築工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2860727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ダイアフラム直下に空隙、空気溜り等が発生するのを抑制し、コンクリート強度の変動を低減するためには、コンクリートの流動性が失われないうちに鋼管内に充填されたコンクリートを加圧することが効果的であると考えられる。一方、特許文献1の建築工法では、鋼管柱の内部にコンクリートを充填し、鋼管柱の塞ぎ板の上に耐圧蓋を取り付けて、充填したコンクリートの上に密閉空間を形成し、この密閉空間内に圧力流体を供給して、未硬化のコンクリートの上面を加圧するため、コンクリート充填鋼管柱の製作作業が複雑になる。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑み、加圧コンクリートによるコンクリート充填鋼管を簡単な作業で製作できるコンクリート充填鋼管の製作方法、コンクリート充填鋼管、加圧装置およびコンクリート漏出制限器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のコンクリート充填鋼管の製作方法は、上記の課題を解決するために、鋼管内にコンクリートを充填する工程と、上記鋼管の上部に加圧装置を連結する工程と、上記加圧装置によって上記鋼管内に充填された流動性を有する状態のコンクリートの上面部を加圧する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記鋼管の上部に連結した加圧装置によって、鋼管内に充填されたコンクリートを加圧するため、密閉空間の形成や圧力流体の供給といった高度な作業は不要になり、加圧コンクリートによるコンクリート充填鋼管を簡単な作業で製作でき、また、コンクリートの強度の変動を低減することができる。また、上記鋼管に加圧装置を連結するので、上記コンクリートの加圧によって上記加圧装置が受ける反力を上記鋼管に負担させることができる。
【0010】
上記鋼管内にコンクリートを充填する前の段階でコンクリートに流動化剤を添加して流動性を確保するようにしてもよい。これによれば、上記コンクリートの流動性確保状態についての時間管理が的確に行えるようになり、上記コンクリートに対する加圧の効果を確実に生じさせることができる。
【0011】
上記コンクリートの流動性が失われて凝結する前の段階で上記加圧装置による上記コンクリートへの加圧を終了するようにしてもよい。これによれば、上記コンクリートが凝結するまで待って加圧を終了する工法に比べ、短時間でコンクリート充填鋼管を製作していくことができる。
【0012】
上記鋼管の底部に固定されているベースプレートの上側に網状部材を敷いて、この網状部材上にコンクリートを充填し、上記網状部材および上記ベースプレートに形成された孔を通して余剰水を排出させるようにしてもよい。これによれば、上記コンクリートの加圧によって上記孔からコンクリートの漏出が生じるのを上記網状部材によって防止することができる。
【0013】
また、この発明のコンクリート充填鋼管は、上記のいずれか1項に記載のコンクリート充填鋼管の製作方法により作製されたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明の加圧装置は、上記コンクリート充填鋼管の製作方法に用いる加圧装置であって、本体部と、上記本体部に対して移動する移動加圧部と、上記移動加圧部の先端部に設けられて上記コンクリートの上面部に接触する押圧板部と、上記本体部を上記鋼管に連結するための連結部とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記の構成であれば、上記本体部を上記鋼管に連結するための連結部を備えるので、上記コンクリートの加圧によって上記加圧装置が受ける反力を、上記連結部を通じて上記鋼管に負担させることができる。
【0016】
上記押圧板部には、上記コンクリート中の余剰水および空気を上側に抜けさせる孔が形成されていてもよい。これによれば、上記コンクリート中の余剰水や空気を、上記孔を通じて排出することができる。
【0017】
上記押圧板部の周囲部に、上記鋼管の内面に接触する摺接部材が設けられていてもよい。これによれば、上記押圧板部の周囲部近傍の鋼管内面の寸法精度が低く、上記周囲部と上記内面との間に大きく隙間が開くような場合でも、上記摺接部材によって隙間を無くすことができる。
【0018】
上記押圧板部が分割可能或いは変形可能に構成されていてもよい。これによれば、分割状態の押圧板部或いはコンパクトに変形された押圧板部を、上記鋼管内に入れた後にでも組み立てる、或いは展開することができる。このため、上記加圧装置を取り付けるための取付部を上記鋼管内側に設けた場合でも、上記押圧板部を、上記取付部を避けて鋼管内に入れた後に、押圧可能な形状にすることができる。
【0019】
また、この発明のコンクリート漏出制限器具は、上記のいずれか1項に記載のコンクリート充填鋼管の製作方法に用いるコンクリート漏出制限器具であって、上記鋼管に形成されている蒸気抜き孔に嵌まる栓状部と、上記栓状部を上記鋼管に留め付ける留付部材とを備えており、上記栓状部にはコンクリートの漏出は制限するが余剰水および空気を通過させる孔が上記鋼管内から鋼管外に通じるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記の構成であれば、蒸気抜き孔内に上記コンクリートが漏出して硬化するのを防止できるとともに、上記コンクリート内の余剰水や空気を上記蒸気抜き孔から排出することが可能になる。さらに、余剰水が排出されることで、充填されたコンクリートの水セメント比が小さくなり、押圧による密度の向上と相まって、コンクリート強度が増進する。
【発明の効果】
【0021】
本発明であれば、加圧コンクリートによるコンクリート充填鋼管を簡単な作業で製作でき、また、コンクリートの強度の変動を低減することができる等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート充填鋼管の製作方法を説明する説明図である。
【
図2】同図(A)は
図1の概略のA−A矢視断面図であり、同図(B)は
図1の概略のB−B矢視断面図である。
【
図3】同図(A)は
図1の概略のD−D矢視図であり、同図(B)は
図1の概略のC−C矢視断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るコンクリート充填鋼管の製作方法を説明する図であって、同図(A)は押圧板部の概略の平面図であり、同図(B)は同側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコンクリート充填鋼管の製作方法を説明する図であって、蒸気抜き孔に装着されたコンクリート漏出制限器具を示した概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態にかかるコンクリート充填鋼管の製作方法は、鋼管柱1内にコンクリート2を充填する工程と、上記鋼管柱1の上部に加圧装置3を連結する工程と、上記加圧装置3によって上記鋼管柱1内に充填された流動性を有する状態のコンクリート2の上面部を加圧する工程とを備える。
【0024】
上記鋼管柱1は、例えば四角筒形状を有しており、この鋼管柱1のベースプレート11は、柱型71上に塗布されたベースモルタル72上に配置されている。また、上記ベースモルタル72の上面には、
図2(A)にも示すように、当該ベースモルタル72の縁に至る溝(チューブでもよい)72aが形成されている。そして、この溝72aの上方には、上記ベースプレート11に鉛直方向に形成された孔11aが位置しており、上記鋼管柱1内に浸入した雨水等が上記孔11aおよび上記溝72aを通って管外に排出されるようにしている。また、上記鋼管柱1内の上記ベースプレート11上には網状部材73が、上記コンクリート2を充填する前に設置される。上記網状部材73は、例えば、水は透過させるが上記コンクリートの細骨材(砂等)および粗骨材は透過させない程度の目の粗さを有する。また、上記ベースプレート11上には、アンカーボルト用孔11bが形成されている。
【0025】
上記鋼管柱1の周壁12には、蒸気抜き孔12aが水平方向に形成されている。火災が発生して上記コンクリート(硬化後)が加熱されるとき、コンクリート内の水分の蒸発により発生する蒸気は、上記蒸気抜き孔12aから排出される。
【0026】
上記鋼管柱1には、
図2(B)にも示すように、内ダイアフラム13が溶接により接合されており、この内ダイアフラム13に、例えば、H形鋼からなる梁74が固定されている。上記内ダイアフラム13には、充填されるコンクリート2を通過させる打設口13aおよび上記コンクリート2中の余剰水や空気を通過させる孔13bが鉛直方向に形成されている。
【0027】
上記鋼管柱1の周壁12の上部には、
図3(A)に示すように、例えば、4個の取付部14が、角形鋼管の各面に、すなわち、上記鋼管柱1の中心軸に直交する面内において上記中心軸回りに90度間隔で溶接等により固定されている。各取付部14の上部には、例えば、ボルト・ナット141用の挿通孔が形成されている。そして、このボルト・ナット141用の挿通孔に装着されたボルト・ナット141によって、上記加圧装置3の連結部31が上記取付部14に固定される。
【0028】
上記加圧装置3の上記連結部31は、例えば、平面視で十字形状をなしており、4箇所の端部の各々を、上記ボルト・ナット141によって上記取付部14に固定することができる。上記加圧装置3の上記連結部31には、当該加圧装置3の本体部32の背面側(上面側)が溶接等により固定されている。
【0029】
上記本体部32には、当該本体部32に対して移動する移動加圧部33が設けられている。上記移動加圧部33は、例えば、上記本体部32の外に出ることができるプランジャ部と、上記本体部32内(シリンダ内)に存在するピストン部とからなる。また、上記本体部32内には、上記移動加圧部33を上記本体部32内に収容させる方向に付勢するバネが設けられていてもよい。さらに、上記本体部32は、図示しない耐圧ホースを介して、足場(例えば、デッキ鋼板)75に設置した手動式のポンプ300に接続されている。このポンプ300を手動で操作することにより、圧力液体を上記本体部32に供給することができる。
【0030】
上記圧力液体が供給されることで、上記移動加圧部33は、上記バネの付勢に抗して移動し、上記本体部32の外へと出ていくことができる。一方、上記ポンプ300において上記圧力液体の戻りが許容される切り替え操作が実行されると、上記バネの付勢によって上記移動加圧部33は上記本体部32内に収容される方向に移動し、上記本体部32内の上記圧力液体は上記ポンプ300へと戻る。
【0031】
上記移動加圧部33の先端側(下端側)には、上記コンクリート2の上面部に接触する押圧板部34が設けられている。この押圧板部34は、上記鋼管柱1の内面形状に合った四角形状(鋼管柱が円形であれば円形)を有しており、その周囲縁部と上記鋼管柱1の内面との間には隙間が形成されるようになっている。なお、この隙間は、例えば、1mm程度とされるのが望ましいが、これに限らない。この実施形態では、上記押圧板部34の周囲部に、上記鋼管柱1の内面に接触する摺接部材34bを設けている。この摺接部材34bは、例えば、ゴム製のOリングやパッキン等からなる。また、上記押圧板部34には、上記コンクリート2を加圧するときに生じる余剰水や空気を上側に抜けさせる孔34aが形成されている。
【0032】
上記鋼管柱1内に上記コンクリート2を充填する工程においては、この鋼管柱1の上端の開口からコンクリート2を投入してもよいし、この鋼管柱1の下部側からコンクリート2を圧入するようにしてもよい。この投入や圧入は、上記加圧装置3を上記鋼管柱1の上端部に固定する前に行う。
【0033】
上記コンクリート2が上記鋼管柱1内に所定の高さまで充填されたら、上記鋼管柱1の上部に加圧装置3を連結する作業を行う。この作業では、例えば、上記加圧装置3をクレーンで吊り上げた状態において、上記足場75上で作業する人が、上記クレーンを操作する人と声を掛け合い、上記加圧装置3の上記押圧板部34を上記鋼管柱1の上端開口に位置させて、上記加圧装置3を降下させる。この降下によって、上記押圧板部34が上記鋼管柱1内に入り込むとともに、上記連結部31が上記取付部14に形成されているストッパ部14aに受け止められる。この状態では、上記連結部31における上記ボルト・ナット141用の挿通孔が、上記取付部14に形成されている上記ボルト・ナット141用の挿通孔の位置と合致する。これにより、上記ボルト・ナット141を上記挿通孔に挿通させて、上記加圧装置3を上記取付部14に固定することができる。
【0034】
次に、上記ポンプ300を操作し、上記加圧装置3によって上記鋼管柱1内に充填された流動性を有する状態のコンクリート2の上面部を加圧するが、この加圧を、上記加圧装置3を上記取付部14に固定した後すぐに行う必要は特に無い。上記コンクリート2は自重でも加圧されて沈降するので、暫く時間をおいて沈降せてから、上記加圧装置3による加圧を行うようにしてもよい。ただし、上記コンクリート2の流動性が確保されている時間内で上記加圧装置3による上記コンクリート2への加圧が行われるようにする。また、上記コンクリート2に加える圧力の上限は、上記鋼管柱1の許容応力に対し、十分小さな値とする。
【0035】
なお、上記コンクリート2が加圧により沈降したことで上記移動加圧部33が移動した場合でも、一定の圧力が上記加圧装置3によって上記コンクリート2に付与され続けられるのが望ましい。例えば、上記手動式のポンプ300に代えて、供給液圧を一定化できる電動ポンプ等を用いることで、沈降に影響されることなく一定圧の加圧が維持されるようにしてもよい。また、エアコンプレッサーからの圧縮空気で駆動される液圧ポンプを用いて一定圧の加圧が維持されるようにしてもよい。上記手動式のポンプ300を用いる場合、圧力計の数値を作業者が監視し、圧力が低下したときに圧力を補うように追加の手動操作を行うようにしてもよい。一方、上記圧力の低下を許容することとし、圧力計の数値が所定の範囲内に低下したときに、加圧が終了したとするようにしてもよい。
【0036】
上記の方法であれば、上記鋼管柱1の上部に連結した上記加圧装置3によって、上記鋼管柱1内に充填されたコンクリート2を加圧するため、密閉空間の形成や圧力流体の供給といった高度な作業は不要になり、加圧コンクリートによるコンクリート充填鋼管を簡単な作業で製作でき、また、コンクリートの強度の変動を低減することができる。また、上記鋼管柱1の上部に加圧装置3を連結するので、上記コンクリート2の加圧によって上記加圧装置3が受ける反力を上記鋼管柱1に負担させることができる。
【0037】
ここで、上記鋼管柱1内にコンクリートを充填する前の段階、例えば、アジテータ車で撹拌中のコンクリートに流動化剤を添加して流動性を確保するようにしてもよい。これによれば、上記コンクリート2の流動性確保状態についての時間管理が的確に行えるようになり、上記コンクリート2に対する加圧の効果を確実に生じさせることができる。
【0038】
上記コンクリート2の流動性が失われて凝結する前の段階で上記加圧装置3による上記コンクリート2への加圧を終了するようにしてもよい。これによれば、上記コンクリート2が凝結するまで待って加圧を終了する工法に比べ、短時間でコンクリート充填鋼管を製作していくことができる。上記コンクリート2の流動性終了の判断は、既存の試験データ等を利用して行うことができ、また、上記流動化剤を用いる場合には、使用する流動化剤で示されている流動性保持時間を参考にして判断できる。
【0039】
上記ベースプレート11の上側に上記網状部材73を敷いて、この網状部材73上にコンクリート2を充填し、上記ベースプレート11に形成された孔11aから余剰水を排出させるようにすると、上記コンクリート2の加圧によって上記孔11aから上記コンクリート2が漏れ出るのを上記網状部材73によって防止することができる。
【0040】
そして、上記加圧装置3であれば、上記本体部32を上記鋼管柱1に連結するための連結部31を備えるので、上記コンクリート2の加圧によって上記加圧装置3が受ける反力を、上記連結部31を通じて上記鋼管柱1に負担させることができる。
【0041】
また、上記押圧板部34に、上記コンクリート2中の余剰水および空気を上側に抜けさせる孔34aが形成されていると、上記コンクリート2中の余剰水や空気を、上記孔34aを通じて排出することができる。
【0042】
また、上記押圧板部34の周囲部に、上記鋼管柱1の内面に接触する摺接部材34bが設けられていると、上記押圧板部34の周囲部近傍の鋼管内面の寸法精度が低く、上記周囲部と上記内面との間に大きな隙間が形成されるような場合でも、上記摺接部材34bによって隙間を無くす或いは隙間を小さくすることができる。
【0043】
次に、他の実施形態について、説明していく。
図4(A)は分割タイプの押圧板部340を示した平面図であり、同図(B)は正面図である。上記押圧板部340は、上記移動加圧部33と分離可能に設けられており、この移動加圧部33の先端部が嵌合する円形の嵌合凹部340aを備えていてもよい。上記押圧板部340においては、4個の四角形状の分割部341からなるが、4個の三角形状の分割部からなるようにすることもできる。上記鋼管柱1が円筒形状であるなら、分割部は扇形状に形成されることになる。分割数は、4個に限らず、2分割、3分割、5分割、6分割等でもよい。また、各分割部の形状は互いに同じでなくてもよい。
【0044】
上記四角形状の分割部341は、互いに同じ形状を有している。また、各分割部341には、互いが接合する側となる縁の上面部において、立上部341aが設けられている。上記立上部341aには、ボルト・ナット432用の挿通孔が形成されており、この挿通孔を通して設けたボルト・ナット432により、上記4個の分割部341が互いに接合される。
【0045】
各分割部341の接合箇所に隙間が存在するとしても、この隙間が余剰水や空気の抜けに役立つものであれば、問題はない。また、このような隙間が許容されるので、上記ボルト・ナット432による強固な接合ではなく、ピン、フック、鉤状部等による係合構造等によって、分割部を互いに連結することも可能である。
【0046】
上記分割タイプの押圧板部340を用いると、当該押圧板部340を、上記鋼管柱1内に入れた後で組み立てることができる。このため、上記加圧装置3を取り付けるための取付部14を上記鋼管柱1内に設けた場合でも、上記押圧板部340を、上記取付部14を避けて上記鋼管柱1内に入れた後に組み立てることができる。すなわち、上記取付部14を上記鋼管柱1内に設ける方法も問題なく実行することができる。なお、上記コンクリート2に対する加圧処理の終了後、上記分割タイプの押圧板部340を分割して上記鋼管柱1内から取り出すようにしてもよいし、以降のコンクリート充填工事が行われない場合は上記鋼管柱1内に放置することとしてもよい。
【0047】
このような分割に限らず、上記押圧板部を変形可能に構成してもよい。例えば、ヒンジを用いて折り畳み可能な構造としてもよい。また、例えば、複数の扇状部材を軸回りに旋回可能に設けた構造(鍋の落とし蓋として利用されている構造)としてもよい。
【0048】
次に、他の実施形態について、説明していく。この実施形態では、上記鋼管柱1の周壁12に形成されている蒸気抜き孔12aに、コンクリート漏出制限器具5を設ける。なお、本願出願人は、先に圧入コンクリート漏出防止構造(特開平11−303399号公報参照)を提案している。この圧入コンクリート漏出防止構造は、上記蒸気抜き孔12aから余剰水や空気が排出されることも阻止するのに対し、上記コンクリート漏出制限器具5は、上記蒸気抜き孔12aからコンクリート2が漏出するのを制限しつつ、余剰水や空気が漏出するのを許容する。また、蒸気抜き孔12a内に漏出して上記コンクリートが硬化するのを防止する。
【0049】
上記コンクリート漏出制限器具5は、上記鋼管柱1の周壁12に形成されている蒸気抜き孔12aに嵌まる栓状部51と、上記栓状部51を上記鋼管柱1に留め付ける留付部材52とを備えている。そして、上記栓状部51にはコンクリートの漏出は制限するが余剰水および空気を通過させる孔51aが上記鋼管柱1内から管外に通じるように形成されている。上記孔51aには、排水可能な栓(目の粗い繊維状の栓等)が施されていてもよい。上記栓が移動しないように、上記孔51aの内面に引っ掛かり部(凹凸等)が形成されていてもよい。また、上記栓状部51の外周部には鍔状部51bが形成されており、この鍔状部51bが上記留付部材52によって上記周壁12側へ押圧される。上記留付部材52は、ベルトを用いて構成することができる。なお、角筒形状の鋼管柱の平面部に対しては、上記ベルトによる押圧が行い難いので、上記平面部の箇所では剛性を有するL字アングル材等を用いた構造を採用することとしてもよい。
【0050】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼管柱(鋼管)
11 ベースプレート
11a 孔
12 周壁
12a 記蒸気抜き孔
13 内ダイアフラム
13a 打設口
14 取付部
2 コンクリート
3 加圧装置
31 連結部
32 本体部
33 移動加圧部
34 押圧板部
34a 孔
340 押圧板部
5 コンクリート漏出制限器具
51 栓状部
52 留付部材