(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に取り付けた枠体内に上障子と下障子を収納して、上障子を固定保持し、下障子を上下動可能にして開口可能な上げ下げ窓が知られている。このような上げ下げ窓の一例として例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。この上げ下げ窓は障子の閉鎖状態で枠体内に上障子と下障子とが上下方向に平面状に配設されており、左右の縦枠の室内側に形成したガイド溝は、下端部から上方に向けて斜め方向に傾斜する傾斜溝と上下方向に延びる直線溝とを有している。そして、下障子はガイド溝に沿って開閉作動する。
【0003】
特許文献1に記載された従来の上げ下げ窓100は、
図12(a)に示すように、下障子101のロック機構として、下障子101の上框に形成した本体部102に摺動可能に設けていて縦枠103の凹溝103a内のフック状のロック受け部108にロック可能なロック部材105と、弾性によって片103dとガイド溝103bとの間で係脱可能なラッチ部材106とを左右両側に有している。
【0004】
ロック部材105は、操作部109をスライド操作することで凹溝103a内のロック受け部108に対して挿脱し、ロック(施錠)とその解除を行う。ロック部材105の先端部は、
図12(b)に示すように、中央の凸曲部105aと高さの低い端部角部105bとの2段形状を備えていて、ロック部材105を凹溝103a内に進出させて凸曲部105aと端部角部105bがロック受け部108を乗り越えて弾性変形させてロック部材105の側面に係合することでロックされる。
ロック部材105は補強のために鋼板を断面略コの字状に折り曲げて形成し、しかも先端面はプレス加工で凸曲部105aを形成するため、折り曲げ部に板厚分の端部角部105bが形成され、角ばっている上にバリ等があった。
【0005】
また、
図13(a)、(b)に示すように、ラッチ部材106は本体部102に形成した断面略L字状の一対のラッチ受け部107に進退可能に保持されたラッチ芯金106aを有しており、スムーズな装着と操作のためにラッチ受け部107とラッチ芯金106aとの間に例えば0.15mm程度の微細な隙間tを遊びとして形成している。
そして、閉鎖状態にある下障子101を開放作動する際に、ロック部材105を凹溝103aから引き抜いてロックを解除し、下障子101を屋内側に倒すと、ラッチ部材106がばねの付勢力に抗して凹溝103aから後退して係合を解除し、ガイド溝103bに移動して再び係合させる。次いで、下障子101を持ち上げることで、下障子101はガイド溝103bに沿って上障子側に上昇して開口状態になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の上げ下げ窓100では、ラッチ部材106とラッチ受け部107との間に微細な隙間tの遊びがあるため、下障子101を開閉操作する際にラッチ部材106が縦枠の凹溝103aとガイド溝103bとの間を移動して係脱し、凹溝103aやガイド溝103bを仕切る縦枠に衝突してガチャガチャと異音が発生し、操作者等に耳障りで不快感を与える欠点があった。
また、ラッチ部材106は、ラッチ部の先端形状が中央平面の両側に比較的小径(例えば半径7mm未満)の凸曲部を形成したため、凹溝103aやガイド溝103b内に落ち込むために移動がスムーズでなく衝撃音が発生する欠点があった。
【0008】
また、下障子101は、上障子と平面をなす閉鎖位置で凹溝103a内にロック部材105を挿入してロック受け部108とロックさせるが、ロック部材105の端部角部105bがロック受け部108を乗り越える際に端部角部105bと擦れて抵抗が大きく、開閉操作に大きな力を要する欠点があった。
【0009】
しかも、閉鎖時に下障子101の框部が縦枠103に設けた気密保持用のパッキンの弾性によって反発するため、この点でもロック部材105の端部角部105bがロック受け部108を乗り越えにくかった。その上、ロック部材105の先端部が2段形状になっているため、中央の凸曲部105aを乗り越えて2段目の端部角部105bにロック受け部108が当接・嵌合したときに段差によるクリック感が生じ、ロック位置に至らない位置で下障子101が閉鎖位置でロックされたと操作者が誤解することがあった。この場合、下障子101の閉鎖が不十分で気密性と断熱性を確保できないという欠点があった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、下障子の開閉時に異音を発生せず、開閉操作を確実に実行できるように操作性を向上させた建具を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、ロック部材が先端面の肉厚に関わらずスムーズにロック受け部とロックできるようにした建具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による建具は、建物開口部に設けた枠体内の一方に設けた固定障子と他方に設けていて移動可能な可動障子とを備えた建具であって、枠体の縦枠に形成されていて可動障子を閉鎖位置に保持する凹溝と、枠体の縦枠に形成されていて可動障子の移動をガイドするガイド溝と、可動障子に設けられていて該可動障子をガイド溝に係脱可能に支持するラッチ部材と、
ラッチ部材を摺動可能に支持する本体部と、本体部の上面に形成されていてラッチ部材をガイド溝に係脱するよう進退可能に支持するラッチ受け部と、ラッチ部材とラッチ受け部の一方に設けられていてラッチ部材をラッチ受け部に当接させる爪状の突部と、を備え
、突部は弾性を有するとともに、本体部の上面とラッチ部材との間に配設されることで、ラッチ部材がラッチ受け部の内面に当接されていることを特徴とする。
本発明によれば、可動障子を閉鎖位置と開放させるガイド溝との間で移動させる際、ラッチ部材はガイド溝に係脱する際にラッチ受け部に保持されて進退するが、ラッチ部材は爪状の突部によってラッチ受け部に当接していて遊びがないため、ラッチ部材はガイド溝に係脱する際に縦枠に衝突等してもがたつかず移動がスムーズで異音の発生を防止できる。
【0012】
また、凹溝に形成したロック受け部と、可動障子に設けていて凹溝に対して進退可能であって進出位置でロック受け部を乗り越える先端面を備えたロック部材と、を備え、ロック部材の先端面は略コの字状に折り曲げて肉厚部が先端面に形成した凸曲部の一部または別個の凸曲部とされ、凸曲部または別個の凸曲部はロック受け部を乗り越えて係合することが好ましい。
本発明では、可動障子のロック部材を凹溝内のロック受け部にロックする際、ロック部材の先端面に形成した肉厚部をなす中央の凸曲部の一部または別個の端部の凸曲部がロック受け部を乗り越えるため、引っかかりをなくしてスムーズにロックできる。
【0013】
また、ラッチ部材において、ガイド溝に係止するラッチ部が半径7mm以上の凸曲面状を有していることが好ましい。
ラッチ部材のラッチ部を半径の大きな凸曲面状に形成したため、ガイド溝に係止及び離脱する際に大きな落ち込みがなくスムーズに係合及び離脱することができる。
【0014】
また、ロック部材は先端面の後方に形成した側面にロック受け部を係合することでロックするようにしてもよい。
ロック部材の先端面を1または複数段の凸曲面状に形成する際、その先端面に加工によるバリ等が生じていてもその後方の側面にロック受け部を係合するため、パッキンの反発があっても可動障子の閉鎖位置でロック部材をロックでき、しかもロック部材のロックとその解除がスムーズに行える。
【発明の効果】
【0015】
本発明による建具によれば、ラッチ部材とラッチ受け部の一方に設けた突部によってラッチ部材をラッチ受け部に当接させるため、ラッチ部材を縦枠の凹溝とガイド溝との間で回動させて開閉作動する際に凹溝やガイド溝の枠部に係脱させても遊びによる異音が発生することはなく、スムーズに開閉操作できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による建具としての上げ下げ窓1について添付図面によって説明する。
図1乃至
図11は本発明の実施形態による上げ下げ窓1を示すものである。
本実施形態による上げ下げ窓1は、
図1に示すように建物の開口部に四角形枠状の枠体2と枠体2内に収められて密閉する上障子3及び下障子4とを備えている。枠体2は、上枠6、下枠7、左右の縦枠8,9からなっている。枠体2内の上障子3は固定障子として枠体2に固定保持され、下障子4は可動障子として上下方向に昇降可能で開閉可能である。
【0018】
また、
図2に示すように、左右の縦枠8,9内には上部にバランサー11が設けられ、各バランサー11から繰り出されるワイヤー12の他端部は下障子4の下框24の両端に設けた支持部材13の支持部13aにそれぞれ係止されている。バランサー11内にはワイヤー12を巻き上げ方向に付勢する巻き上げばねが内蔵されており、下障子4の荷重とバランスして任意の高さ位置で下障子4を静止保持できる。
【0019】
図3において、左右の縦枠8,9には下障子4の昇降をガイドするガイド溝15が形成されている。ガイド溝15は下枠7の部分から枠体2の屋内側に向けて傾斜して上方に延びる傾斜溝15aと上障子3と略平行に上枠6方向に延びる直線溝15bとを有している。傾斜溝15aの水平面に対する傾斜角θは適宜設定できるが、25°から45°の範囲に設定することが好ましい。
そして、上障子3と下障子4は閉鎖状態で枠体2内に略同一平面状に保持されて高い気密性と良好な意匠性を有しており、開口時には下障子4を傾斜させて左右の縦枠8,9のガイド溝15に沿って上昇させることで開口することができる。
【0020】
図1乃至
図3において、上障子3は上框17、下框18、左右の縦框19,20によって四角形状に形成され、内部にパネルとして複層ガラス、例えばトリプルガラス21が収納され、上障子3は枠体2に固定されている。同様に下障子4も上框23、下框24、左右の縦框25,26によって四角形状に形成され、内部にパネルとして複層ガラス、例えばトリプルガラス27が収納されている。
なお、上障子3と下障子4はパネルとしてトリプルガラス21に代えてぺアガラスや他の複層ガラスや単層ガラス等を収納していてもよい。
【0021】
そして、下障子4において、上框23にはその屋内側に下障子4を傾斜させる際に把持するための引手部30が設けられている。引手部30は例えば樹脂製であり、上障子3の下框18と下障子4の上框23と両者の隙間22を覆うように縦方向と横方向に密閉された断面筒状の複数のホロー部が積層されて形成され、一部のホロー部は隙間22内に配設されている。これによって断熱性を向上させている。
図3において、上げ下げ窓1の屋内側に樹脂製の引手部30を配設して外観の意匠性を向上させ、金属上框34を屋外側に寄せて断熱性を高めている。
【0022】
また、下障子4の上框23には、トリプルガラス27を保持するグレージングチャンネル32と引手部30との間に上部補強金具33が取り付けられてグレージングチャンネル32を覆っている。上部補強金具33は例えばスチール製等であり、屋内側の一端部から屋外側の他端部まで例えば階段状に形成されており、屋内側の一端部はグレージングチャンネル32を覆って引手部30の凹部に嵌合され、屋外側の他端部は金属上框34の凹部に嵌合して固定されている。
【0023】
次に
図3に示す下障子4の下框24において、トリプルガラス27を保持するグレージングチャンネル32は下部補強金具36によって覆われており、その下側には樹脂下框37が取り付けられている。下部補強金具36は例えばスチール等であり、屋内側の一端部から屋外側の他端部まで例えば階段状に形成されており、屋内側の一端部はグレージングチャンネル32を覆って樹脂下框37の凹部に嵌合され、屋外側の他端部は金属下框38の凹部に嵌合して固定されている。
また、下部補強金具36は上部補強金具33と略対称に形成されていてそれぞれグレージングチャンネル32を介してトリプルガラス27を上下に挟持する構成を有している。しかも、上框23と下框24に引手部30と樹脂下框37をそれぞれ設置すると共に、金属上框34と金属下框38を屋外側に寄せて断熱性を高めたことによる下障子4の強度低下を両補強金具33、36で補強している。
【0024】
また、下障子4に設けた樹脂下框37はグレージングチャンネル32の下部から下部補強金具36を覆って屋内側に延びており、その屋内側端部には突出部として引手片37aが突出している。グレージングチャンネル32の下部には樹脂下框37に係合する金属下框38が屋外側に延びて下部補強金具36の他端部を嵌合すると共にその下方には支持部材13が係合されている。支持部材13は下部補強金具36にねじ固定されている。
【0025】
また、下障子4の下框24と下枠7との間には下障子4と支持部材13が回動して傾斜し昇降することを許容するための空間42が形成されており、この空間42はガイド溝15の傾斜溝15aに沿った屋内側に開口42aを有している。そして、樹脂下框37の引手片37aが開口42aに突出して開口を狭めている。
また、開口42aを形成する下枠7には例えばアルミ製の金属下枠44が形成され、金属下枠44の屋外側端部に固定されたパッキン45に閉鎖状態の下障子4の金属下框38が当接して密閉している。
【0026】
図3及び
図4において、下障子4はガイド溝15内に支持部材13を保持させてガイド溝15に沿って昇降可能であり、支持部材13が直線溝15bに移動した時点で上障子3と略平行に昇降可能であり、全開位置でストッパー47に当接する。
図4において、下障子4の縦框25,26にはそれぞれグレージングチャンネル32を覆う金属縦框49に樹脂縦框50が連結されている。各樹脂縦框50の縦枠8,9側には例えばモヘア等のシール材51が上下方向に取り付けられている。
縦框25,26に対向する縦枠8,9には金属縦枠52の内側に樹脂縦枠53が連結され、樹脂縦枠53は断面筒状のホロー部53aが縦方向と横方向にそれぞれ複数形成されている。各金属縦枠52の屋外側に固定されたパッキン46には閉鎖位置にある下障子4の金属縦框49が当接して気密に密閉している。
【0027】
図5は下障子4に設けた左右のロック装置55の一方を代表して示すものである。下障子4の上框23内の左右の側部にそれぞれ設けたロック装置55は、上框23の本体部56に例えば金属製のラッチ部材57とロック部材58が縦枠8、9の凹溝60方向にそれぞれ進退可能に配設されている。なお、本明細書において、ラッチ部材57やロック部材58が凹溝60内に進む方向を前進または前方とし、反対側に退く方向を後退または後方というものとする。
ラッチ部材57は、下障子4における上框23の見付け方向(幅方向)の両側部に設けられ、後述するコイルばね66の弾性によって前方(外側)に付勢されて突出する。そして、下障子4を引手部30で屋内側に傾斜させて、ラッチ部材57をガイド溝15の直線溝15bに嵌合可能としている。
下障子4を開閉する場合にはラッチ部材57と支持部材13が嵌合するガイド溝15をガイドとして昇降可能とされている。また、上げ下げ窓1の清掃状態では、ラッチ部材57がガイド溝15を外れて更に屋内側に傾斜して保持されることになる。
【0028】
各ラッチ部材57は、
図5〜
図8に示すように、長板状のラッチ芯金61とその上部に一体形成された略長板状のラッチ板62とを備えている。ラッチ板62の先端側(前方)に凹溝60やガイド溝15に係脱可能な拡幅したラッチ部62aを形成している。
図5において、ラッチ部62aの先端面は最も突出する中央の平面部62bとその両側で円弧状の凸曲面を呈して後退しつつ外側に拡幅する曲面部62cと両側の端部62dとで形成されている。
特に本実施形態では、曲面部62cの曲率半径を従来技術より大きい例えば7mmまたはそれ以上に設定して丸みを大きく滑らかに形成した。これによって、ラッチ部62aが凹溝60やガイド溝15に係脱する際に移動が滑らかであり、縦枠8,9の枠部と衝突することによる衝突音を低減させることができる。
図8において、ラッチ部材57のラッチ板62の裏側に上長溝62eが形成され、ラッチ板62の内側に係止させたラッチ芯金61には上下に貫通する中長溝61aが形成されている。ラッチ部材57におけるラッチ芯金61の中長溝61aの先端面61bには突片61cが形成され、後端部にはラッチ板62とラッチ芯金61に開口が形成されている。
【0029】
一方、ラッチ部材57を摺動可能に支持する本体部56の上面には、ラッチ芯金61の両側部を摺動可能に保持する断面略コの字溝状を呈する一対のラッチ受け部64が形成されている(
図6、7参照)。ラッチ受け部64の先端側には、ラッチ板62のラッチ部62aが凹溝60側に突出している。ラッチ受け部64の間にはラッチ板62の上長溝62eとラッチ芯金61の中長溝61aに対向して下長溝56aが形成され、その間に弾性部材をなすコイルばね66が配設されている。また、下長溝56aの後端部には後端面56bが形成されている。
そのため、コイルばね66は上長溝62e、中長溝61a、下長溝56a間に配設されている。コイルばね66の一端部は本体部56に形成した下長溝56aの後端面56bに固定され、他端部はラッチ芯金61に形成した突片61cに係止されている。これによって、ラッチ部材57はコイルばね66の付勢力によって縦枠8,9の凹溝60やガイド溝15方向に進出してラッチ部62aが係脱可能とされている。
【0030】
また、
図8に示すラッチ板62の裏面において、上長溝
62eの先端
面と反対側の後端部両側に略爪状に屈曲または湾曲する一対の突部67が突出している。この突部67は弾性を有している。これによってラッチ部材57のラッチ芯金61はラッチ受け部64の上側内面に当接し、従来技術における遊びのわずかな隙間tがなくなる。そのため、ラッチ部材57が縦枠8,9の凹溝60やガイド溝15に係脱する際にラッチ部材57が遊びによってラッチ受け部64に衝突して異音が発生すること等がない。
尚、
図8に示すように、ラッチ板62に設けた突部67に代えて、本体部56における下長溝56aの両側に突部67を設けてもよい。これによってもラッチ部材57をラッチ受け部64の上側内面に当接することができる。
【0031】
また、
図5,6,7に示す本体部56において、ラッチ部材57の下方には棒状のロック部材58が摺動可能に取り付けられている。
図6に示すように、ロック部材58は板状の鋼材を金型を用いたプレス加工等で断面略コの字状をなすように折り曲げたものであり、本体部56の下面に開口するように断面略L字状に形成された挿通溝69に部分的に嵌挿されている。
本実施形態によるロック部材58は略コの字状の断面形状が短片部58aと底部58bと本体部56の外側に突出する長片部58cとで概略構成されており、短片部58aの両側部と底部58bの一部両側面とで挿通溝69に当接している。そして、短片部58aの端面が挿通溝69の最奥部69aと非接触である上に長片部58cの端面部分が下障子4の框部に当接していない点で、上述した従来技術と相違している。これによって従来技術と比較してロック部材58の摺動をよりスムーズに行うことができる。
【0032】
また、ロック部材58は下障子4の上框23の屋内側に設けた操作部71に連結されており、操作部71の進退によって凹溝60に進退して係脱可能とされている。縦枠8,9の凹溝60内には、例えば略フック状のロック受け部70が形成され、凹溝60内に進出したロック部材58における底部58bの側面58dとフック状の先端部で係合して下障子4を閉鎖状態でロック(施錠)する。ロック状態において、ロック受け部70はフック状の先端部でロック部材58の側面58dに当接することで弾性的に側面58dを押圧する。
なお、ロック部材58を凹溝60から外すとロック受け部70から外れてアンロック(解錠)状態になり、下障子4を傾斜させることでラッチ部材57のラッチ部62aがガイド溝15に係合可能になる。
【0033】
次に、ロック部材58の先端面の形状について
図9(a)、(b)により説明する。
ロック部材58は上述のように板状の鋼材を断面略コの字状に折り曲げて形成して強度を高めており、平面視で先端部は中央凸曲部72aとその一方の端部である底部58bに形成した端部凸曲部72bとを有している。特に凹溝60のロック受け部70が摺動可能な端部凸曲部72bは底部58bの板厚部分で形成されており、金型によるプレス加工で形成することで、この端部凸曲部72bを断面円弧状に形成した。
これによって端部凸曲部72bに角部が形成されず円弧状の曲面を形成するため、ロック受け部70のフック状の先端部をこすりながらスムーズに摺動してロック部材58の(底部58bの)側面58dに係合することができる。
なお、
図9(a)において、ロック部材58の先端部における短片部58aと底部58bと長片部58cとの各折り曲げ部に折り曲げを容易にするスリット溝59を形成してもよい。
【0034】
本実施形態による上げ下げ窓1は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
図1及び
図3に示すように下障子4が閉鎖状態にある場合には、枠体2内で上障子3と下障子4が同一面状に設置されて気密性を保持している。しかも下障子4の上框23の両側に設けた各ロック装置55のロック部材58は縦枠8,9の凹溝60内に進出して略フック状のロック受け部70と側面58dで係合してロック(施錠)している。また、ラッチ部材57はコイルばね66の付勢力によってラッチ部62aが凹溝60に係合している。
この状態から、下障子4を開口作動するには、上框23の両側に設けた各ロック装置55の操作部71をスライドさせてロック部材58を縦枠8,9の各凹溝60から外し、下障子4の引手部30を操作者が把持して屋内側に引く。
【0035】
すると、下障子4は、ラッチ部材57のラッチ部62aが凹溝60を仕切る縦枠8,9を押してコイルばね66の付勢力に抗して凹溝60から外れ、ラッチ部材57はラッチ受け部64に沿って後退する。そして、下障子4は下端の支持部材13を中心に見込み方向屋内側に回動し、ガイド溝15の直線溝15bに対向する位置でラッチ部材57がコイルばね66の付勢力によって前進して直線溝15bに係合する。この状態で
図10に示すように、下障子4は傾斜状態に保持され、半開状態になる。
下障子4の傾斜時に、ラッチ部材57のラッチ部62aが回動して凹溝60やガイド溝15を仕切る縦枠8,9に係脱しても、ラッチ部材57は突部67によってラッチ受け部64に当接しているために遊びがなく、ガチャガチャと異音が発生することはない。しかも、ラッチ部62aが凹溝60やガイド溝15に係脱する際に、ラッチ部62aは中央の平面部62bの両側に丸みの大きい曲面部62cを有するため、凹溝60やガイド溝15に係合したり離脱したりするときに滑らかに移動して乗り越えることができて、衝突音を低減できる。
【0036】
そして、操作者が引手部30や引手片37aを手で持ち上げて下障子4をガイド溝15に沿って上昇させると、下障子4は下框24に固定した支持部材13とラッチ部材57とがガイド溝15の傾斜溝15aと直線溝15bに沿って上昇し、
図11に示すように、上障子3と平行に保持された全開位置に至る。
なお、下障子4は、支持部材13を引き上げるワイヤー12の上端を連結したバランサー11内の巻き上げばねの付勢力によって任意の開口位置で停止する。
【0037】
次に全開状態の下障子4を閉鎖させるには、下障子4がガイド溝15の直線溝15bで上障子3と平行に保持された位置から、操作者が引手部30や引手片37aを把持してガイド溝15に沿って下障子4を降下させる。
そして、下障子4は支持部材13が傾斜溝15aの下端に到達して傾斜状態となった半開状態に至る。次いで、支持部材13を支点として下障子4を見込み方向屋外側、即ち上障子3の方向に回動させることでラッチ部材57をコイルばね66の付勢力に抗してガイド溝15から後退させて外し、その屋外側に設けた縦枠8,9の凹溝60にコイルばね66の付勢力でラッチ部材57のラッチ部62aを係合させる。
【0038】
そして、操作部71をスライド操作してロック部材58を前進させて凹溝60内に侵入させる。すると、
図5及び
図9(b)に示すように、ロック部材58の先端部の中央凸曲部72aが凹溝60内のフック状のロック受け部70を押圧して変形させながら乗り越える。次に、ロック部材58の端部凸曲部72bにロック受け部70が当接するが、端部凸曲部72bも凸曲面状に形成されているためにクリック感は得られない。そして、下枠7、縦枠8,9に設けたパッキン45、46を下障子4の下框24、縦框25,26で押圧する状態で、ロック部材58の端部凸曲部72bがロック受け部70を弾性変形させて乗り越えて側面58dに当接させて気密のロック(施錠)状態になる。
こうして、下障子4は
図3に示す上障子3と平面状に重なった閉鎖位置に至る。
【0039】
上述のように本実施形態による上げ下げ窓1によれば、ラッチ部材57は突部67によってラッチ受け部64に押し付けられて摺動可能に支持し遊びがないため、下障子4の閉鎖位置と半開位置との間の回動時にラッチ部材57がカチャカチャと異音を発することはない。しかも、ラッチ部62aが凹溝60とガイド溝15との間を移動する際に、ラッチ部62aは中央の平面部62bの両側に半径の大きい曲面部62cを有するため、凹溝60やガイド溝15を係脱するときに滑らかに移動して乗り越えることができて衝突音を低減できる。そのため、下障子4の操作性が向上する。
また、ロック部材58は先端面が中央凸曲部72aと肉厚部の端部凸曲部72bを有するためフック状のロック受け部70を弾性変形させて乗り越える際に、下枠7、縦枠8,9に設けたパッキン45、46を圧縮した状態でスムーズにロック位置に移動させることができる。しかもロック部材58がロック受け部70を乗り越える際に、中央凸曲部72aと端部凸曲部72bの間でクリック感が生じないため、下障子4でパッキン45、46を押圧した気密状態の閉鎖位置でロックできる。
【0040】
なお、本発明による上げ下げ窓1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。
例えば上述した実施形態では、ロック部材58はロック受け部70を乗り越える際に
図9(a)、(b)に示すように中央凸曲部72aと端部凸曲部72bからなる二段の曲面を設けたが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、
図9(c)に示すように1つの凸曲部74で形成してもよい。この場合には、1つの金型でプレス加工することで肉厚部の底部58bも短片部58a及び長片部58cと一体に略円弧状の凸曲部74を形成できる。この場合には、ロック工程の途中で一層確実に段差によるクリック感を操作者に感じさせることはないので、よりスムーズ且つ確実にロック操作を行える。
【0041】
また、上述した実施形態では、スライド可能なラッチ部材57の裏面に突部67を設けてラッチ部材57をラッチ受け部64に当接させて遊びをなくすようにしたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、上述したようにラッチ部材57のラッチ板62に設けた突部67に代えて、本体部56における下長溝56aの両側に突部67を設けてもよい。また、突部67はラッチ芯金61に設けてもよいし、或いは、ラッチ受け部64の上下いずれか一方の面に突部67を設けてラッチ部材57をラッチ受け部64の一方または他方の面に押圧させてもよい。
なお、突部67は金属または樹脂のいずれで形成してもよい。
【0042】
また、本発明による建具としての上げ下げ窓1は、枠体2内の上障子3を固定障子とし、下障子4を可動障子としたが、これとは逆に枠体2と共に固定障子を下側に可動障子を上側に配置して上下方向を逆にして設定してもよいし、或いは横方向に固定障子と可動障子を配列してもよい。
また、本発明の建具は上げ下げ窓1に限定されることなく、ラッチ部材57、更にはロック部材58等を備えた各種の窓やドア等にも適用できる。