(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トンネル層がそれぞれシリコン酸化物層で構成され、前記トンネル層の酸素含量よりも前記バッファ層の酸素含量が少なく、前記トンネル層のシリコン含量よりも前記バッファ層のシリコン含量が多い、請求項1に記載の太陽電池。
前記バッファ層は、前記第1導電型を有して前記第1導電型領域の少なくとも一部を構成する第1部分と、前記第2導電型を有して前記第2導電型領域の少なくとも一部を構成する第2部分とを含む、請求項12に記載の太陽電池。
前記第1部分及び前記第2部分のうちの少なくとも1つは、前記トンネル層に隣接する部分が、前記トンネル層から遠くに位置した部分よりも高い酸素含量及び低いシリコン含量を有する、請求項14に記載の太陽電池。
前記導電型領域を形成するステップは、前記バッファ層の第1部分に第1導電型ドーパントをドープし、前記バッファ層の第2部分に第2導電型ドーパントをドープして、前記第1部分と前記第2部分との間にドープされていない前記バッファ部分が位置するようにする、請求項17に記載の太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、様々な形態に変形可能であることはもちろんである。
【0011】
図面では、本発明を明確且つ簡略に説明するために、説明と関係のない部分の図示を省略し、明細書全体において同一又は極めて類似の部分に対しては同一の図面参照符号を使用する。そして、図面では、説明をより明確にするために、厚さ、面積などを拡大又は縮小して示しており、本発明の厚さ、面積などは図面に示したものに限定されない。
【0012】
そして、明細書全体において、ある部分が他の部分を「含む」とするとき、特に反対の記載がない限り、他の部分を排除するのではなく、他の部分をさらに含むことができる。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとするとき、これは、他の部分の「直上に」ある場合のみならず、その中間に他の部分が位置する場合も含む。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「直上に」あるとするときは、中間に他の部分が位置しないことを意味する。
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例に係る太陽電池を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る太陽電池の断面図であり、
図2は、
図1に示した太陽電池の部分背面平面図である。
【0015】
図1及び
図2を参照すると、本実施例に係る太陽電池100は、ベース領域110を含む半導体基板10と、半導体基板10の一面上に形成されるトンネル層20と、トンネル層20上に位置し、トンネル層20と異なる別個の層として構成されるバッファ部分22cを含むバッファ層22と、トンネル層20上でバッファ層22に又はバッファ層22上に形成される導電型領域32,34と、導電型領域32,34に接続される電極42,44とを含む。バッファ層22は、トンネル層20に隣接して形成され、電極42,44とは物理的に離隔して位置することができる。このとき、バッファ層22は、トンネル層20と異なる物質、組成及び/又は結晶構造を有する半絶縁物質(semi−insulating)で構成されてもよい。本実施例において、導電型領域32,34は、第1導電型を有する第1導電型領域32と、第2導電型を有し、第1導電型領域32と同一平面上に位置する第2導電型領域34とを含むことができ、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にはバリア領域36が位置することができる。バッファ部分22cは、バリア領域36の一部を構成する。そして、太陽電池100は、パッシベーション膜24、反射防止膜26、絶縁層40などをさらに含むことができる。これについてより詳細に説明する。
【0016】
半導体基板10は、第2導電型ドーパントを相対的に低いドーピング濃度で含むことで第2導電型を有するベース領域110を含むことができる。ベース領域110は、第2導電型ドーパントを含む結晶質半導体で構成することができる。一例として、ベース領域110は、第2導電型ドーパントを含む単結晶または多結晶半導体(一例として、単結晶または多結晶シリコン)で構成してもよい。特に、ベース領域110は、第2導電型ドーパントを含む単結晶半導体(例えば、単結晶半導体ウエハ、より具体的には、半導体シリコンウエハ)で構成することができる。このように、ベース領域110が単結晶シリコンで構成されると、太陽電池100が単結晶シリコン太陽電池を構成することになる。このように、単結晶半導体を有する太陽電池100は、結晶性が高くて欠陥の少ないベース領域110または半導体基板10をベースとするので、電気的特性に優れている。
【0017】
第2導電型は、p型またはn型であってもよい。一例として、ベース領域110がn型を有すると、ベース領域110と光電変換によってキャリアを形成する接合(一例として、トンネル層20を挟んだpn接合)を形成するp型の第1導電型領域32を広く形成して、光電変換面積を増加させることができる。また、この場合には、広い面積を有する第1導電型領域32が、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することで、光電変換効率の向上にさらに寄与することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0018】
そして、半導体基板10は、前面側に位置する前面電界領域130を含むことができる。前面電界領域130は、ベース領域110と同じ導電型を有しながら、ベース領域110よりも高いドーピング濃度を有することができる。
【0019】
本実施例では、前面電界領域130が、半導体基板10に第2導電型ドーパントを相対的に高いドーピング濃度でドープして形成されたドーピング領域として構成された場合を例示した。これによって、前面電界領域130が、第2導電型を有する結晶質(単結晶または多結晶)半導体を含んで半導体基板10の一部を構成するようになる。一例として、前面電界領域130は、第2導電型を有する単結晶半導体基板(一例として、単結晶シリコンウエハ基板)の一部分を構成することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、半導体基板10と異なる別個の半導体層(例えば、非晶質半導体層、微細結晶半導体層、または多結晶半導体層)に第2導電型ドーパントをドープして前面電界領域130を形成してもよい。または、前面電界領域130が、半導体基板10に隣接して形成された層(例えば、パッシベーション膜24及び/又は反射防止膜26)の固定電荷によってドープされたものと類似の役割を果たす電界領域として構成されてもよい。例えば、ベース領域110がn型である場合には、パッシベーション膜24が固定負電荷を有する酸化物(例えば、アルミニウム酸化物)で構成されて、ベース領域110の表面に反転領域(inversion layer)を形成し、これを電界領域として用いることができる。この場合には、半導体基板10が、別途のドーピング領域を備えずにベース領域110のみで構成されて、半導体基板10の欠陥を最小化することができる。その他の様々な方法により様々な構造の前面電界領域130を形成することができる。
【0020】
本実施例において、半導体基板10の前面は、テクスチャリング(texturing)されてピラミッドなどの形状の凹凸を有することができる。このようなテクスチャリングにより半導体基板10の前面などに凹凸が形成されて表面粗さが増加すると、半導体基板10の前面を介して入射する光の反射率を低下させることができる。したがって、ベース領域110と第1導電型領域32によって形成されたpn接合まで到達する光の量を増加させることができるので、光損失を最小化することができる。
【0021】
そして、半導体基板10の後面は、鏡面研磨などによって前面よりも低い表面粗さを有する、相対的に滑らかで且つ平坦な面からなることができる。本実施例のように、半導体基板10の後面側に第1及び第2導電型領域32,34が共に形成される場合には、半導体基板10の後面の特性に応じて太陽電池100の特性が大きく変わり得るからである。これによって、半導体基板10の後面にはテクスチャリングによる凹凸を形成しないことで、パッシベーション特性を向上させることができ、これによって、太陽電池100の特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、場合によって、半導体基板10の後面にテクスチャリングによる凹凸を形成してもよい。その他の様々な変形も可能である。
【0022】
半導体基板10の後面上にはトンネル層20が形成されてもよい。トンネル層20は、電子及び正孔にとって一種のバリア(barrier)として作用して、少数キャリア(minority carrier)が通過しないようにし、トンネル層20に隣接した部分で蓄積された後、一定以上のエネルギーを有する多数キャリア(majority carrier)のみがトンネル層20を通過できるようにする。このとき、一定以上のエネルギーを有する多数キャリアは、トンネル効果によって容易にトンネル層20を通過することができる。また、トンネル層20は、導電型領域32,34のドーパントが半導体基板10へ拡散することを防止する拡散バリアとしての役割を果たすことができる。このようなトンネル層20は、多数キャリアがトンネリングされ得る様々な物質を含むことができ、一例として、酸化物、窒化物、半導体、伝導性高分子などを含むことができる。例えば、トンネル層20は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、真性非晶質シリコン、真性多結晶シリコンなどを含むことができる。特に、トンネル層20は、シリコン酸化物を含むシリコン酸化物層で構成することができる。シリコン酸化物層は、パッシベーション特性に優れており、キャリアがトンネリングされやすい膜であるからである。
【0023】
このとき、トンネル層20は、半導体基板10の後面に全体的に形成することができる。これによって、別途のパターニングなしに容易に形成することができる。
【0024】
トンネル効果を十分に具現できるように、トンネル層20の厚さT1は、第2絶縁層40の厚さよりも小さくすることができる。一例として、トンネル層20の厚さT1が1.8nm以下であってもよく、一例として0.1nm〜1.5nm(より具体的には、0.5nm〜1.2nm)であってもよい。トンネル層20の厚さT1が1.8nmを超えると、トンネリングが円滑に起こらないため、太陽電池100の効率が低下することがあり、トンネル層20の厚さT1が0.1nm未満であると、所望の品質のトンネル層20を形成しにくいことがある。トンネル効果をより向上させるためには、トンネル層20の厚さT1が0.1nm〜1.5nm(より具体的に0.5nm〜1.2nm)であってもよい。本実施例では、トンネル層20上に、バリアとしての機能を果たすバッファ部分22cを含むバッファ層22が位置するので、トンネル層20の厚さを従来よりも小さくしても、不必要な部分でトンネリングが行われることを効果的に防止することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、トンネル層20の厚さT1が様々な値を有してもよい。
【0025】
本実施例では、トンネル層20上には、バッファ部分22cを含むバッファ層22が位置し、トンネル層20上においてバッファ層22に及び/又はバッファ層22上に導電型領域32,34が位置する。以下では、導電型領域32,34について先に説明した後、バッファ層22について詳細に説明する。
【0026】
本実施例において、導電型領域32,34は、第1導電型ドーパントを有して第1導電型を示す第1導電型領域32と、第2導電型ドーパントを有して第2導電型を示す第2導電型領域34とを含むことができる。ここで、第1導電型領域32と第2導電型領域34は、トンネル層20上で互いに同一平面上に位置することができ、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間でこれらと同一平面上にバリア領域36が位置することができる。すなわち、第1導電型領域32、バリア領域36及び第2導電型領域34は、互いに少なくとも一部の側面が隣接して位置することができる。
【0027】
第1導電型領域32は、トンネル層20を挟んでベース領域110とpn接合(又はpnトンネル接合)を形成して、光電変換によってキャリアを生成するエミッタ領域を構成する。そして、第2導電型領域34は、後面電界(back surface field)を形成して、半導体基板10の表面(より正確には、半導体基板10の後面)で再結合によってキャリアの損失が発生することを防止する後面電界領域を構成する。そして、バリア領域36は、第1導電型領域32と第2導電型領域34とを互いに離隔させる。第1導電型領域32と第2導電型領域34が互いに接触する場合には、シャント(shunt)が発生して太陽電池100の性能を低下させることがある。これによって、本実施例では、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にバリア領域36を位置させて、不必要なシャントを防止することができる。
【0028】
本実施例において、第1導電型領域32は、バッファ層22に形成され、第1導電型を有する第1部分22aと、バッファ層22の第1部分22a上に位置し、第1導電型を有する第1ドーピング部分30aとを含むことができる。第1部分22aは、第1ドーピング部分30aの形成工程での熱処理、または第1ドーピング部分30aの形成工程後に行われる熱処理によって、第1ドーピング部分30a内の第1導電型ドーパントがバッファ層22に拡散して形成された部分であり得る。これによって、第1部分22aと第1ドーピング部分30aは、平面視で互いに同一の位置で対応する形状を有するように形成されて、互いに重なって位置し得る。上述したように、第1ドーピング部分30aはドーピングによって形成され、第1部分22aはドーピング後のドーパントの拡散によって形成される場合に、第1部分22aの第1導電型ドーパントと第1ドーピング部分30aの第1導電型ドーパントとが互いに同一の物質であり、第1部分22aのドーピング濃度は、第1ドーピング部分30aのドーピング濃度と同一またはそれより小さくてもよい。特に、第1部分22aのドーピング濃度は、第1ドーピング部分30aのドーピング濃度よりも小さくてもよい。
【0029】
第1導電型領域32において第1導電型ドーパントは、ベース領域110と反対の導電型を示すことができるドーパントであれば足りる。すなわち、第1導電型がp型である場合には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を第1導電型ドーパントとして使用することができる。第1導電型がn型である場合には、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を第1導電型ドーパントとして使用することができる。
【0030】
そして、第2導電型領域34は、バッファ層22に形成され、第2導電型を有する第2部分22bと、バッファ層22の第2部分22b上に位置し、第2導電型を有する第2ドーピング部分30bとを含むことができる。第2部分22bは、第2ドーピング部分30bの形成工程での熱処理、または第2ドーピング部分30bの形成工程後に行われる熱処理によって、第2ドーピング部分30b内の第2導電型ドーパントがバッファ層22に拡散して形成された部分であり得る。これによって、第2部分22bと第2ドーピング部分30bは、平面視で互いに同一の位置で対応する形状を有するように形成されて、互いに重なって位置し得る。上述したように、第2ドーピング部分30bはドーピングによって形成され、第2部分22bはドーピング後のドーパントの拡散によって形成される場合に、第2部分22bの第2導電型ドーパントと第2ドーピング部分30bの第2導電型ドーパントとが互いに同一の物質であり、第2部分22bのドーピング濃度は、第2ドーピング部分30bのドーピング濃度と同一またはそれより小さくてもよい。特に、第2部分22bのドーピング濃度は、第2ドーピング部分30bのドーピング濃度よりも小さくてもよい。
【0031】
第2導電型領域34において第2導電型ドーパントは、ベース領域110と同じ導電型を示すことができるドーパントであれば足りる。すなわち、第2導電型がn型である場合には、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を第2導電型ドーパントとして使用することができる。第2導電型がp型である場合には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を第2導電型ドーパントとして使用することができる。
【0032】
本実施例において、バリア領域36は、バッファ層22において第1部分22aと第2部分22bとの間に位置するバッファ部分22c、及び半導体層30において第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの間に位置するバリア部分30cを含むことができる。バッファ部分22cとバリア部分30cは、第1及び第2導電型ドーパントを実質的に含まない真性またはドープされていない(undoped)物質を含むことができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、バリア部分30cは様々な物質で構成することができる。これについては、より詳細に後述する。
【0033】
以下では、バッファ層22のバッファ部分22c、そして、第1及び第2部分22a,22bを詳細に説明した後、半導体層30のバリア部分30c、そして、第1及び第2ドーピング部分30a,30bを詳細に説明する。
【0034】
バッファ層22(より具体的には、バッファ部分22c)は、トンネル層20上において第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に位置し、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間で電子と正孔が再結合することを防止する層である。これについてより詳細に説明する。
【0035】
トンネリング確率は、トンネル層20の厚さと大きな相関関係を有しており、トンネル層20の厚さが一定の水準を超えると(例えば、2nm超過)、トンネリング確率がほぼ0に近く収束するようになる。したがって、高いトンネリング確率を確保するためには、トンネル層20の厚さが小さくなければならない。ところで、薄い厚さのトンネル層20のみが位置する場合には、キャリアがバリア領域36に容易にトンネリングされ得る。このとき、バリア領域36は、真性を有してキャリアの移動性が小さい水準であるが、半導体物質であるので若干のキャリアの流れが起こり得る。特に、電子は移動性が非常に高いので、バリア領域36にトンネリングされた電子は、正孔を主なキャリアとする(即ち、p型の伝導型を有する)導電型領域32,34に移動し得、これによって、バリア領域36と導電型領域32,34との境界部分で再結合が発生することがある。
【0036】
これを考慮して、本実施例では、トンネル層20上でバリア領域36またはバリア部分30cに対応する部分に、絶縁物質で構成されるバッファ部分22cを別途に形成して、バリア領域36へのトンネリングを防止する。このとき、トンネリングをより効果的に防止できるように、バッファ部分22cを含むバッファ層22は、トンネル層20と異なる結晶構造、異なる物質、または異なる組成を有しながら、トンネル層20よりも低い絶縁特性(即ち、高い誘電率)を有することができる。しかし、上述したように、バッファ層22の一部は、ドーパントによって導電型領域32,34の一部として機能するようになるので、バッファ層22が絶縁特性のみを有する場合には、第1及び第2導電型領域32,34または第1及び第2ドーピング部分30a,30bとしてのドーピング特性までも低下させることがある。したがって、バッファ層22は、バッファ部分22cではキャリアのトンネリングを防止しながら、第1及び第2部分22a,22bではドーピングによって第1及び第2導電型領域32,34としての役割を果たすことができるように、半絶縁物質で構成することができる。
【0037】
ここで、半絶縁物質とは、ドーパントが含まれない場合には絶縁物質として機能し、ドーパントが含まれる場合には、キャリアのトンネリングが可能なように第1及び第2導電型領域32,34として機能することができる物質を意味できる。
【0038】
一例として、バッファ層22は、多結晶構造を有するシリコン酸化物層で構成してもよい。バッファ層22が多結晶構造のシリコン酸化物層で構成されると、ドーパントをドープしやすく、熱安定性に優れ、トンネリングが容易に行われるようにするエネルギーバンドギャップを有することができるからである。
【0039】
トンネル層20がシリコン酸化物層で構成される場合に、バッファ層22とトンネル層20は互いに異なる結晶構造及び組成を有することができる。すなわち、トンネル層20は非晶質構造を有し、バッファ層22は、結晶質構造である多結晶構造を有することができる。そして、トンネル層20とバッファ層22は互いに異なる酸素含量及びシリコン含量を有することができる。より具体的には、バッファ層22の酸素含量がトンネル層20の酸素含量よりも小さくてもよく、バッファ層22のシリコン含量がトンネル層20のシリコン含量よりも大きくてもよい。ドーパントは、酸素よりはシリコンにさらに容易に結合できるので、シリコンの含量が高く、酸素の含量が低い場合、ドーパントがシリコンに結合されてシリコン−ドーパント結合(例えば、B−Si結合またはP−Si結合)を形成する量が多くなるので、ドーパントのドープ時に電気伝導性を有することができるので、キャリアがトンネリングされ得る。
【0040】
一例として、トンネル層20は、略SiO
2と同一又はこれと類似の化学式(例えば、SiOy、ここで、yは、1.9〜2.1)を有することができ、バッファ層22は、SiOx(xは、0.2〜1.5)の化学式を有することができる。または、トンネル層20が60〜70at%の酸素含量を有することができ、バッファ層22が、10〜45at%の酸素含量を有する部分を含むことができる。特に、バッファ層22においてトンネル層20に隣接する部分の酸素含量が10〜45at%であり得る。トンネル層20は、トンネリングバリアとしての役割を十分に行うことができると共に、化学的に安定化できるように、相対的に高い酸素含量を有することができる。バッファ層22は、シリコン−ドーパント結合が容易に行われ得るように相対的に低い酸素含量を有するものである。より具体的には、バッファ層22の化学式においてxの値が0.2未満であるか、またはバッファ層22の酸素含量が10at%未満であると、バッファ部分22cでトンネリングバリアとしての役割を行うことが難しくなり得る。そして、バッファ層22の化学式においてxの値が1.5を超えるか、またはバッファ層22の酸素含量が45at%を超えると、ドーパントのドーピングが容易でないので、第1及び第2部分22a,22bにおいてキャリアの流れが難しくなり得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、トンネル層20及びバッファ層22の化学式、酸素含量などは様々な値を有することができる。
【0041】
上述した例では、バッファ層22がトンネル層20と同じシリコン酸化物層を含み、組成、結晶構造、特性などが互いに異なることを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、バッファ層22がトンネル層20と異なる物質を備えるなどの様々な変形が可能である。
【0042】
本実施例において、バッファ層22の厚さT2がトンネル層20の厚さT1よりも大きくてもよい。上述したように、トンネル層20の厚さT1はトンネリング確率と大きな関連があるので、トンネル層20の厚さは、可能な限り小さいことが良い。そして、バッファ層22は、不必要なトンネリングを防止できるように、相対的に厚い厚さを有するようにする。
【0043】
例えば、トンネル層20の厚さT1:バッファ層22の厚さT2の比率は、1:1.5〜1:10であってもよい。前記比率が1:1.5未満であると、バッファ層22の厚さT2が十分でないので、バリア領域36へのトンネリングを防止するバッファ層22の効果が十分でないことがある。前記比率が1:10を超えると、バッファ層22の厚さT2が大きくなるので、太陽電池100の厚さが増加し、工程時間が増加し得る。また、バッファ層22の厚さT2が大きすぎると、導電型領域32,34の特性が低下することがある。すなわち、上述したように、バッファ層22の第1及び第2部分22a,22bが、ドーパントによって、それぞれ第1及び第2導電型領域32,34の一部として機能することができるが、ドーピング濃度が相対的に低い第1及び第2部分22a,22bが相対的に厚く形成されると、第1及び第2導電型領域32,34の特性が低下することがある。
【0044】
または、バッファ層22の厚さT2は10nm以下であってもよい。バッファ層22の厚さT2が10nmを超えると、バッファ層22によって太陽電池100の厚さが増加し、工程時間が増加し、導電型領域32,34の特性が低下することがある。一例として、バッファ層22の厚さT2は2nm〜10nmであってもよい。バッファ層22の厚さT2が2nm未満であると、バリア領域36へのトンネリングを防止するバッファ層22の効果が十分でないことがある。太陽電池100の厚さ、工程時間、導電型領域32,34の特性などをさらに考慮すると、バッファ層22の厚さT2が2nm〜5nmであってもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、バッファ層22の厚さは多様に変化可能である。
【0045】
しかし、上述したバッファ層22の厚さT2は、バッファ層22を別途にドープせずに、半導体層30にドープされたドーパントを拡散してバッファ層22を形成することを考慮したものである。したがって、バッファ層22を別途にドープする場合には、このような制限が存在せず、バッファ層22の厚さT2がさらに大きいことも可能である。この場合にバッファ層22の厚さは、300nm以下程度であってもよい。その他の様々な変形が可能である。
【0046】
バッファ層22のバッファ部分22cは、上述した物質、結晶構造、厚さ、特性などを有しながら、第1及び第2導電型ドーパントが含まれていない領域である。バッファ層22の第1部分22aは、上述した物質、結晶構造、厚さ、特性などを有しながら、第1導電型ドーパントが含まれた領域であり、バッファ層22の第2部分22bは、上述した物質、結晶構造、厚さ、特性などを有しながら、第2導電型ドーパントが含まれた領域である。すなわち、バッファ層22の第1部分22aは、酸素含量が10〜45%であり、化学式がSiOx(ここで、xは、0.2〜1.5)であるシリコン酸化物層に第1導電型ドーパントがドープされた領域であり、第2部分22bは、酸素含量が10〜45%であり、化学式がSiOx(ここで、xは、0.2〜1.5)であるシリコン酸化物層に第2導電型ドーパントがドープされた領域である。そして、バッファ部分22cは、第1部分22aと第2部分22bとの間でバリア領域36またはバリア部分30cに対応して位置し、ドーパントがドープされていないアンドープまたは真性領域である。
【0047】
特に、先に簡単に言及したように、第1及び第2部分22a,22bにおいてドーパントは、バッファ層22を構成する半絶縁物質の半導体物質(即ち、シリコン)に結合された形態で位置する。すなわち、バッファ層22の第1及び第2部分22a,22bには、シリコン−ドーパント結合が存在するようになる。例えば、第1部分22aにおいて、p型のドーパントとしてボロン(B)を使用した場合、第1部分22aにはシリコン−ボロン結合(Si−B結合)が存在するようになる。例えば、第2部分22bにおいて、n型のドーパントとしてリン(P)を使用した場合、第2部分22bにはシリコン−リン結合(Si−P結合)が存在するようになる。このように、第1及び第2導電型ドーパントがバッファ層22の半導体物質(即ち、シリコン)と活性化された(activated)状態で存在するので、導電型領域32,34の一部として機能することができるようになる。このようなシリコン−ドーパント結合は、二次イオン質量分析(secondary ion mass spectrometry、SIMS)などの様々な分析方法によって検出することができる。
【0048】
バッファ層22上に位置する半導体層30は、第1導電型領域32の一部を構成する第1ドーピング部分30aと、第2導電型領域34の一部を構成する第2ドーピング部分30bと、第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの間に位置し、真性を有するバリア部分30cとを含むことができる。
【0049】
第1部分22a上に位置する第1ドーピング部分30aは、ベース領域110と反対の第1導電型ドーパントを含む半導体(一例として、シリコン)を含むことができる。本実施例では、第1ドーピング部分30aが、半導体基板10上(より明確には、トンネル層20上に位置した第1部分22aの上)で半導体基板10と別個に形成され、第1導電型ドーパントがドープされた半導体層で構成される。これによって、第1ドーピング部分30aは、半導体基板10上に容易に形成できるように、半導体基板10と異なる結晶構造を有する半導体層で構成することができる。例えば、第1ドーピング部分30aは、蒸着などの様々な方法により容易に製造できる非晶質半導体、微結晶半導体、または多結晶半導体(一例として、非晶質シリコン、微細結晶シリコン、または多結晶シリコン)などに第1導電型ドーパントをドープして形成することができる。第1導電型ドーパントは、半導体層を形成する工程において半導体層に共に含まれてもよく、または、半導体層を形成した後に熱拡散法、イオン注入法などの様々なドーピング方法により半導体層に含まれてもよい。
【0050】
第2部分22b上に位置する第2ドーピング部分30bは、ベース領域110と反対の第2導電型ドーパントを含む半導体(一例として、シリコン)を含むことができる。本実施例では、第2ドーピング部分30bが、半導体基板10上(より明確には、トンネル層20上に位置した第2部分22bの上)で半導体基板10と別個に形成され、第2導電型ドーパントがドープされた半導体層で構成される。これによって、第2ドーピング部分30bは、半導体基板10上に容易に形成できるように、半導体基板10と異なる結晶構造を有する半導体層で構成することができる。例えば、第2ドーピング部分30bは、蒸着などの様々な方法により容易に製造できる非晶質半導体、微結晶半導体、または多結晶半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、または多結晶シリコン)などに第2導電型ドーパントをドープして形成することができる。第2導電型ドーパントは、半導体層を形成する工程において半導体層に共に含まれてもよく、または、半導体層を形成した後に熱拡散法、イオン注入法などの様々なドーピング方法により半導体層に含まれてもよい。
【0051】
バリア部分30cは、第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの間でこれらを実質的に絶縁できる様々な物質を含むことができる。例えば、バリア部分30cが真性半導体を含むこともできる。このとき、第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bとバリア部分30cが同一平面上に形成され、実質的に同一の厚さを有し、同一の半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン)で構成され得る。そして、バリア部分30cは、実質的にドーパントを含まなくてもよい。一例として、半導体物質を含む半導体層を形成した後、半導体層の一部の領域に第1導電型ドーパントをドープして第1ドーピング部分30aを形成し、他の領域の一部に第2導電型ドーパントをドープして第2ドーピング部分30bを形成すると、第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bが形成されていない領域がバリア部分30cを構成するようになる。これによれば、第1ドーピング部分30a、第2ドーピング部分30b及びバリア部分30cの製造方法を単純化することができる。
【0052】
しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、バリア部分30cを第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bと別途に形成した場合には、バリア部分30cと第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bとが互いに異なる厚さを有することができる。一例として、第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bのシャントをより効果的に防止するために、バリア部分30cが第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bよりも厚い厚さを有してもよい。または、バリア部分30cを形成するための原料を低減するために、バリア部分30cの厚さを第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bの厚さよりも小さくしてもよい。その他の様々な変形が可能であることは勿論である。また、バリア部分30cの基本構成物質が、第1ドーピング部分30a及び第2ドーピング部分30bと異なる物質を含むこともできる。この場合に、バリア部分30cが、ドープされていない絶縁物質(例えば、酸化物、窒化物)などで構成されてもよい。または、バリア部分30cが、第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの間に位置した空き空間(例えば、トレンチ)として構成されてもよい。
【0053】
そして、バリア部分30cが第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの境界の一部のみを離隔させるように形成されてもよい。これによれば、第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの境界の他の一部は互いに接触してもよい。この場合には、バリア領域36(又はバッファ部分22c)も第1導電型領域32(又は第1部分22a)と第2導電型領域(又は第2部分22b)との境界の一部のみを離隔させるように形成され、境界の他の一部は互いに接触することができる。また、バリア部分30cを必ず備えなければならないわけではなく、第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bが全体的に接触して形成されることも可能である。この場合には、第1導電型領域32(又は第1部分22a)と第2導電型領域(又は第2部分22b)が全体的に接触して形成され得る。その他の様々な変形が可能である。
【0054】
本実施例では、導電型領域32,34がトンネル層20を挟んで半導体基板10の後面上に位置する場合を例示した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、導電型領域32,34のうちの少なくとも1つが、半導体基板10にドーパントをドープして形成されたドーピング領域を含むことも可能である。すなわち、導電型領域32,34が、半導体基板10の一部を構成する単結晶半導体構造のドーピング領域を含むことができる。その他の様々な方法により導電型領域32,34が形成されてもよい。
【0055】
本実施例では、ベース領域110と同じ導電型を有する第2導電型領域34の面積よりも、ベース領域110と異なる導電型を有する第1導電型領域32の面積を広く形成することができる。これによって、ベース領域110と第1導電型領域32との間でトンネル層20を通じて形成されるpn接合をさらに広く形成することができる。このとき、ベース領域110及び第2導電型領域34がn型の導電型を有し、第1導電型領域32がp型の導電型を有する場合に、広く形成された第1導電型領域32によって、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することができる。このような第1導電型領域32、第2導電型領域34及びバリア領域36の平面構造は、
図2を参照してより詳細に後述する。
【0056】
導電型領域32,34及びバリア領域36上に絶縁層40を形成することができる。絶縁層40は、第1導電型領域32と第1電極42との接続のための第1開口部402、及び第2導電型領域34と第2電極44との接続のための第2開口部404を備える。これによって、絶縁層40は、第1導電型領域32及び第2導電型領域34が接続されてはならない電極(即ち、第1導電型領域32の場合には第2電極44、第2導電型領域34の場合には第1電極42)と接続されることを防止する役割を果たす。また、絶縁層40は、第1及び第2導電型領域32,34及び/又はバリア領域36をパッシベーションする効果を有することができる。
【0057】
半導体層30上で電極42,44が位置していない部分に絶縁層40が位置することができる。絶縁層40は、トンネル層20よりも厚い厚さを有することができる。これによって、絶縁特性及びパッシベーション特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0058】
絶縁層40は、様々な絶縁物質(例えば、酸化物、窒化物など)からなることができる。一例として、絶縁層40は、シリコン窒化膜、水素含有シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、Al
2O
3、MgF
2、ZnS、TiO
2及びCeO
2からなる群から選択されたいずれか1つの単一膜、または2つ以上の膜が組み合わされた多層膜構造を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、絶縁層40が様々な物質を含むことができることはもちろんである。
【0059】
半導体基板10の後面に位置する電極42,44は、第1導電型領域32に電気的及び物理的に接続される第1電極42と、第2導電型領域34に電気的及び物理的に接続される第2電極44とを含む。
【0060】
このとき、第1電極42は、絶縁層40の第1開口部402を貫通して第1導電型領域32に接続され、第2電極44は、絶縁層40の第2開口部404を貫通して第2導電型領域34に接続される。このような第1及び第2電極42,44としては様々な金属物質を含むことができる。そして、第1及び第2電極42,44は、互いに電気的に接続されずに第1導電型領域32及び第2導電型領域34にそれぞれ接続されて、生成されたキャリアを収集して外部に伝達できる様々な平面形状を有することができる。すなわち、本発明が第1及び第2電極42,44の平面形状に限定されるものではない。
【0061】
以下では、
図2を参照して、第1導電型領域32及び第2導電型領域34、バリア領域36、そして、第1及び第2電極42,44の平面形状を詳細に説明する。
【0062】
図2を参照すると、本実施例では、第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、それぞれ、ストライプ状をなすように長く形成されると共に、長手方向と交差する方向において互いに交互に位置している。第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に、これらを離隔させるバリア領域36が位置することができる。図示していないが、互いに離隔した複数の第1導電型領域32が一側縁部で互いに接続され、互いに離隔した複数の第2導電型領域34が他側縁部で互いに接続されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0063】
このとき、第1導電型領域32の面積を第2導電型領域34の面積よりも大きくすることができる。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34の面積は、これらの幅を異ならせることによって調節することができる。すなわち、第1導電型領域32の幅W1を第2導電型領域34の幅W2よりも大きくすることができる。これによって、エミッタ領域を構成する第1導電型領域32の面積を十分に形成して、光電変換が広い領域で起こるようにすることができる。このとき、第1導電型領域32がp型を有する場合に、第1導電型領域32の面積を十分に確保して、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することができる。
【0064】
そして、第1電極42が、第1導電型領域32に対応してストライプ状に形成され、第2電極44が、第2導電型領域34に対応してストライプ状に形成されてもよい。第1及び第2開口部(
図1の参照符号402,404参照、以下同様)のそれぞれが、第1及び第2電極42,44に対応して第1及び第2電極42,44の全面積に形成されてもよい。これによると、第1及び第2電極42,44と第1導電型領域32及び第2導電型領域34との接触面積を最大化して、キャリア収集効率を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。第1及び第2開口部402,404が、第1及び第2電極42,44の一部のみを第1導電型領域32及び第2導電型領域34にそれぞれ接続するように形成されてもよいことは勿論である。例えば、第1及び第2開口部402,404が複数個のコンタクトホールとして構成されてもよい。そして、図示していないが、第1電極42が一側縁部で互いに接続されて形成され、第2電極44が他側縁部で互いに接続されて形成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0065】
再び
図1を参照すると、半導体基板10上にパッシベーション膜24が位置し、パッシベーション膜24上に反射防止膜26が位置することができる。パッシベーション膜24及び反射防止膜26は、実質的に半導体基板10の前面に全体的に形成することができる。ここで、全体的に形成するということは、物理的に完壁に全てに形成されたことのみならず、不可避的に一部の除外された部分がある場合を含む。
【0066】
パッシベーション膜24は、半導体基板10に接触して形成されて、半導体基板10の表面またはバルク内に存在する欠陥を不動化させる。これによって、少数キャリアの再結合サイトを除去して、太陽電池100の開放電圧(Voc)を増加させることができる。反射防止膜26は、半導体基板10の前面に入射する光の反射率を減少させる。これによって、半導体基板10の前面を通して入射する光の反射率を低下させることによって、ベース領域110と第1導電型領域32との界面に形成されたpn接合まで到達する光量を増加させることができる。これによって、太陽電池100の短絡電流(Isc)を増加させることができる。このように、パッシベーション膜24及び反射防止膜26によって太陽電池100の開放電圧及び短絡電流を増加させて、太陽電池100の効率を向上させることができる。
【0067】
パッシベーション膜24または反射防止膜26は様々な物質で形成することができる。一例として、パッシベーション膜24または反射防止膜26は、シリコン窒化膜、水素含有シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、アルミニウム酸化膜、MgF
2、ZnS、TiO
2及びCeO
2からなる群から選択されたいずれか1つの単一膜、または2つ以上の膜が組み合わされた多層膜構造を有することができる。一例として、パッシベーション膜24はシリコン酸化物を含み、反射防止膜26はシリコン窒化物を含むことができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、パッシベーション膜24及び反射防止膜26には様々な物質、構造などを適用することができる。そして、半導体基板10が反射防止膜26に接触形成されることも可能であり、その他の様々な変形が可能である。
【0068】
本実施例に係る太陽電池100に光が入射すると、ベース領域110と第1導電型領域32との間に形成されたpn接合での光電変換によって電子と正孔が生成され、生成された正孔及び電子は、トンネル層20をトンネリングして、それぞれ第1導電型領域32及び第2導電型領域34に移動した後、第1及び第2電極42,44に移動する。これによって、電気エネルギーを生成するようになる。
【0069】
本実施例のように、半導体基板10の後面に電極42,44が形成され、半導体基板10の前面には電極が形成されない後面電極構造の太陽電池100においては、半導体基板10の前面でシェーディング損失(shading loss)を最小化することができる。これによって太陽電池100の効率を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、第1及び第2導電型領域32,34のうちの少なくとも1つとこれに接続される第1及び第2電極42,44のうちの少なくとも1つが、半導体基板10の前面に位置することも可能である。その他の様々な変形が可能である。
【0070】
そして、第1及び第2導電型領域32,34が、トンネル層20を挟んで半導体基板10上に形成されるので、半導体基板10と異なる別個の層として構成される。これによって、半導体基板10にドーパントをドープして形成されたドーピング領域を導電型領域として使用する場合よりも、再結合による損失を最小化することができる。
【0071】
また、トンネル層20上にトンネル層20と別個に形成され、バッファ部分22cを含むバッファ層22を形成して、望まない部分でトンネル層20を介したトンネリングが起こることを防止することができる。そして、バッファ層22は、シリコン−ドーパント結合を形成できる物質で構成されて、バッファ層22の一部は導電型領域32,34の少なくとも一部を構成するので、バッファ部分22cを除外した部分へのトンネリングは円滑に行われるようにすることができる。これによって、望まない電子と正孔の再結合は防止しながら、光電変換のためのキャリアのトンネリングは円滑に行われるようにして、太陽電池100の効率を向上させることができる。
【0072】
上述した構造では、バッファ層22の第1及び第2部分22a,22b、そして、バッファ部分22cの配置と、導電型領域32,34の第1及び第2ドーピング部分30a,30b、そして、バリア部分30cの配置とが一致する場合を例示した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1及び第2部分22a,22bを第1及び第2ドーピング部分30a,30bと別個にドープして形成し、第1及び第2部分22a,22bと第1及び第2ドーピング部分30a,30bの配置が互いに異なっていてもよい。その他の様々な変形が可能である。
【0073】
上述した構造の太陽電池100の製造方法を、
図3A乃至
図3Hを参照して詳細に説明する。
図3A乃至
図3Hは、本発明の実施例に係る太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【0074】
まず、
図3Aに示したように、第2導電型ドーパントを有するベース領域110で構成される半導体基板10を準備する。本実施例において、半導体基板10は、n型のドーパントを有するシリコン基板(一例として、シリコンウエハ)からなることができる。n型のドーパントとしては、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を使用することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、ベース領域110がp型のドーパントを有してもよい。
【0075】
このとき、半導体基板10の前面及び後面のうちの少なくとも一面が凹凸を有するようにテクスチャリングしてもよい。半導体基板10の表面のテクスチャリングとしては、湿式または乾式テクスチャリングを用いることができる。湿式テクスチャリングは、テクスチャリング溶液に半導体基板10を浸漬することによって行うことができ、工程時間が短いという利点がある。乾式テクスチャリングは、ダイヤモンドドリルまたはレーザーなどを用いて半導体基板10の表面を削るもので、凹凸を均一に形成できる一方、工程時間が長く、半導体基板10に損傷が発生することがある。その他に、反応性イオンエッチング(RIE)などにより半導体基板10をテクスチャリングすることもできる。このように、本発明では、様々な方法で半導体基板10をテクスチャリングすることができる。
【0076】
一例として、半導体基板10の前面が凹凸を有するようにテクスチャリングされ、半導体基板10の後面が、鏡面研磨などによって処理されて、半導体基板10の前面よりも小さい表面粗さを有する平坦な面として構成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な構造の半導体基板10を使用することができる。
【0077】
次に、
図3Bに示したように、半導体基板10の後面にトンネル層20を形成する。トンネル層20は、半導体基板10の後面に全体的に形成することができる。
【0078】
ここで、トンネル層20は、一例として、熱的成長法、蒸着法(例えば、化学気相蒸着法(PECVD)、原子層蒸着法(ALD))などによって形成することができる。特に、トンネル層20は、化学気相蒸着法により形成された非晶質構造を有する非晶質シリコン酸化物層であってもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な方法によりトンネル層20が形成されてもよい。
【0079】
次に、
図3Cに示したように、トンネル層20上にバッファ層22を形成する。バッファ層22は、トンネル層20上で半導体基板10の後面に全体的に形成することができる。
【0080】
バッファ層22は、常圧化学気相蒸着(APCVD)、低圧化学気相蒸着(LPCVD)などのような様々な工程によって製造することができる。このとき、バッファ層22を、所望の組成の多結晶構造を有するシリコン酸化物層で形成するために、バッファ層22を低圧化学気相蒸着で形成することができる。バッファ層22の結晶性が圧力に影響を受けるので、優れた結晶度を有するバッファ層22を形成するためには低圧化学気相蒸着を用いることが良いからである。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0081】
シリコン酸化物層で構成されるバッファ層22を形成するための原料ガスとしては、様々な物質を用いることができ、一例として、酸化窒素(N
2O)及びシラン(SiH
4)を用いることができ、その比率は1:0.01〜1:0.35であってもよい。これによって、安定的に所望の組成のバッファ層22を形成することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な原料ガスを用いることができる。
【0082】
このとき、バッファ層22の形成温度は600〜1000℃(より具体的には、600〜675℃)であってもよい。温度が600℃未満である場合には、非晶質構造のシリコン酸化物層が形成されることがあり、温度が1000℃を超える場合には、部分的に単結晶構造のシリコン酸化物層が形成されることがあるからである。多結晶構造の特性を最大化するためには、バッファ層22の形成温度が600〜675℃であり得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、バッファ層22の形成温度は多様に変化可能である。
【0083】
このとき、バッファ層22は、ドーピングが行われていない状態で形成されて、バッファ部分22cのみで構成されてもよい。
【0084】
上述した実施例では、バッファ層22がシリコン酸化物層を含むことを例示として説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。バッファ層22が、他の物質、組成、結晶構造などを有することも可能である。
【0085】
次いで、
図3D及び
図3Eに示したように、トンネル層20上に第1導電型領域32と第2導電型領域34を形成する。これをより具体的に説明すると、次の通りである。
【0086】
まず、
図3Dに示したように、トンネル層20上に、より詳細にはバッファ層22上に真性の半導体層300を形成する。半導体層300は、微結晶質、非晶質、または多結晶半導体で構成されてもよい。半導体層300は、一例として、熱的成長法、蒸着法(例えば、化学気相蒸着法(PECVD))などにより形成することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な方法により半導体層300を形成することができる。
【0087】
次いで、
図3Eに示したように、ドーパントのドーピングによって第1導電型領域32、第2導電型領域34、及びバリア領域36を形成する。
【0088】
例えば、第1ドーピング部分30aに該当する領域にイオン注入法、熱拡散法、レーザードーピング法などのような様々な方法により第1導電型ドーパントをドープし、第2ドーピング部分30bに該当する領域にイオン注入法、熱拡散法、レーザードーピング法などによる様々な方法により第2導電型ドーパントをドープすることができる。すると、第1ドーピング部分30aと第2ドーピング部分30bとの間に位置した領域がバリア部分30cを構成することになる。
【0089】
そして、イオン注入法の後に行われる活性化熱処理工程、または熱拡散法、レーザードーピング法などの工程中の熱処理によって、第1ドーピング部分30a内の第1導電型ドーパントがバッファ層22に拡散して第1部分22aを形成する。これと同様に、第2ドーピング部分30b内の第2導電型ドーパントがバッファ層22に拡散して第2部分22bを形成する。バリア部分30cに対応して位置して第1及び第2導電型ドーパントが拡散しない部分は、バッファ部分22cとして残るようになる。
【0090】
これによって、第1部分22aと第1ドーピング部分30aで構成される第1導電型領域32、第2部分22bと第2ドーピング部分30bで構成される第2導電型領域34、バッファ部分22cとバリア部分30cで構成されるバリア領域36が形成される。
【0091】
本実施例では、バッファ層22の第1及び第2部分22a,22bを、第1及び第2ドーピング部分30a,30bのドーピング工程または後続熱処理工程において共に形成する場合を例示した。これによって、工程を単純化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1及び第2部分22a,22bを、別途のドーピングによって形成するなどの様々な変形が可能である。また、導電型領域32,34、そして、バリア領域36を形成する方法としては、公知の様々な方法を用いることができる。そして、バリア領域36を形成しないなどの様々な変形が可能である。
【0092】
次いで、
図3Fに示したように、半導体基板10の前面に第2導電型ドーパントをドープして前面電界領域130を形成することができる。前面電界領域130は、イオン注入法、熱拡散法、レーザードーピング法などのような様々な方法により形成することができる。その他の様々な方法を用いることができる。また、前面電界領域130が別途に形成されないことも可能である。
【0093】
次いで、
図3Gに示したように、半導体基板10の前面にパッシベーション膜24及び反射防止膜26を順次形成し、半導体基板10の後面に絶縁層40を形成する。すなわち、半導体基板10の前面上にパッシベーション膜24及び反射防止膜26を全体的に形成し、半導体基板10の後面上に第1及び第2導電型領域32,34を覆うように全体的に絶縁層40を形成する。パッシベーション膜24、反射防止膜26及び絶縁層40は、真空蒸着法、化学気相蒸着法、スピンコーティング、スクリーン印刷またはスプレーコーティングなどのような様々な方法により形成することができる。パッシベーション膜24及び反射防止膜26、そして、絶縁層40の形成順序は多様に変更可能である。
【0094】
次いで、
図3Hに示したように、第1及び第2導電型領域32,34にそれぞれ接続される第1及び第2電極42,44を形成する。
【0095】
一例として、絶縁層40に第1及び第2開口部402,404を形成し、第1及び第2開口部402,404内にめっき法、蒸着法などの様々な方法で第1及び第2電極42,44を形成することができる。他の実施例として、第1及び第2電極形成用ペーストを絶縁層40上にそれぞれスクリーン印刷などで塗布した後、ファイヤースルー(fire through)またはレーザー焼成コンタクト(laser firing contact)などを行うことで、上述した形状の第1及び第2電極42,44を形成することも可能である。この場合には、第1及び第2電極42,44を形成するときに第1及び第2開口部402,404が形成されるので、別途に第1及び第2開口部402,404を形成する工程を追加しなくて済む。
【0096】
本実施例によれば、バッファ部分22c、そして、第1及び第2部分22a,22bを含むバッファ層22を単純な工程によって製造することによって、優れた効率を有する太陽電池100の生産性を向上させることができる。
【0097】
以下、
図4及び
図5を参照して、本発明の他の実施例に係る太陽電池及びその製造方法を詳細に説明する。上述した説明と同一又は極めて類似の部分に対しては、上述の説明をそのまま適用できるので、詳細な説明を省略し、互いに異なる部分に対してのみ詳細に説明する。そして、上述した実施例又はその変形例と下記の実施例又はその変形例を互いに結合したものも本発明の範囲に属する。
【0098】
図4は、本発明の他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
【0099】
図4を参照すると、本実施例では、バッファ層22の第1部分22aが第1導電型領域32を全体的に構成し、バッファ層22の第2部分22bが第2導電型領域34を全体的に構成し、バッファ層22のバッファ部分22cがバリア領域36を全体的に構成する。すなわち、第1導電型領域32が第1部分22aのみで構成され、第2導電型領域34が第2部分22bのみで構成され、バリア領域36がバッファ部分22cのみで構成される。
【0100】
上述したように、バッファ層22の第1及び第2部分22a,22bは導電型領域32,34として機能することができるので、本実施例では、別途の半導体層(
図1の参照符号30、以下同様)を形成せず、バッファ層22のみで導電型領域32,34を構成したものである。これによれば、太陽電池100の構造を単純化し、製造工程を単純化することができる。
【0101】
このように、バッファ層22が単独で導電型領域32,34として機能する太陽電池100は、
図3Bに示したように、バッファ部分22cからなるバッファ層22を形成した後に、バッファ層22に第1及び第2導電型ドーパントをドープすることによって製造することができる。第1及び第2導電型ドーパントのドーピングは、
図3Eを参照した半導体層30のドーピングに関する説明をそのまま適用できるので、詳細な説明を省略する。
【0102】
本実施例において、バッファ層22は、300nm以下(より具体的に、2nm〜300nm)の厚さを有することができる。バッファ層22が、導電型領域32,34として機能するのに適した程度の十分な厚さを有しなければならないからである。バッファ層22が導電型領域32,34として機能することを考慮すると、バッファ層22の厚さは100nm〜300nmであり得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、バッファ層22が様々な厚さを有することができる。
【0103】
バッファ層22は、その厚さ方向において一定の酸素含量を有することができる。すなわち、
図1を参照して説明したように、バッファ層22の酸素含量は、厚さ方向において均一に10〜45at%の範囲内で一定の値を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0104】
すなわち、バッファ層22においてトンネル層20に隣接する部分では、不必要なトンネリングを効果的に防止できるように、相対的に高い酸素含量及び低いシリコン含量を有し、バッファ層22においてトンネル層20と遠く離れた部分(即ち、電極42,44)と隣接する部分では、優れた電気的特性を有するように、相対的に低い酸素含量及び高いシリコン含量を有することができる。例えば、バッファ層22においてトンネル層20に隣接する部分では、酸素含量が10〜45at%であってもよく、バッファ層22においてトンネル層20と遠く離れた部分では、酸素含量が10at%以下(即ち、0at%〜10at%)であり、シリコン含量が90at%以上(即ち、90〜100at%)であってもよい。
【0105】
一例として、バッファ層22においてトンネル層20に隣接する部分から遠ざかるほど、酸素含量が次第に減少し、シリコン含量が次第に増加するようにすることができる。このようなバッファ層22の形成時に用いられる原料ガスの含量などを次第に変更することによって製造することができる。
【0106】
図5は、本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
【0107】
図5を参照すると、本実施例では、バッファ層22がバッファ部分22cのみを含み、第1及び第2部分(
図1の参照符号22a,22b、以下同様)を備えない。すなわち、バッファ層22が、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に対応して部分的に位置することができる。
【0108】
このような構造のバッファ層22は、
図3Bに示したように、トンネル層20上に全体的にバッファ層22を形成した後に、バッファ層22から第1及び第2導電型領域32,34に該当する部分を除去するパターニングを行って製造することができる。または、マスクまたはマスク層などを用いて、バッファ部分22cに該当する部分にのみバッファ層22を形成することによって製造することができる。
【0109】
本実施例では、第1及び第2導電型領域32,34がそれぞれ第1及び第2ドーピング部分30a,30bのみで構成されるので、第1及び第2導電型領域32,34のドーピング特性を向上させることができる。そして、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間において、トンネル層20とバリア部分30cとの間にバッファ部分22cを位置させて、バリア部分30cへの不必要なトンネリングを効果的に防止することができる。
【0110】
図では、バッファ部分22cとバリア部分30cの配置が一致する場合を例示した。これによって、バッファ部分22cの側面がバリア部分30cの側面と一致する。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。バッファ部分22cの側面がバリア部分30cの側面と一致しなくてもよい。一例として、バッファ部分22cが、バリア部分30cよりも大きい幅を有しながら、バリア部分30cを全体的にカバーするように位置してもよい。その他の様々な変形が可能である。
【0111】
上述したような特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例で例示した特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって、他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせ及び変形に係わる内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。