特許第6671891号(P6671891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671891
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】電子部品試験装置、電子部品試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20200316BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G01R31/00
   G01R27/02 A
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-164136(P2015-164136)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-40629(P2017-40629A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年8月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504325667
【氏名又は名称】株式会社 電子制御国際
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】打田 宏志
(72)【発明者】
【氏名】安原 武志
(72)【発明者】
【氏名】竹下 玲
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭51−4833(JP,B1)
【文献】 特開昭48−38781(JP,A)
【文献】 特開平4−76468(JP,A)
【文献】 特開2011−112582(JP,A)
【文献】 特開2001−264398(JP,A)
【文献】 特開2000−147059(JP,A)
【文献】 特開平4−65683(JP,A)
【文献】 特開2003−149283(JP,A)
【文献】 特開平7−83995(JP,A)
【文献】 実開昭51−140442(JP,U)
【文献】 実開昭55−26406(JP,U)
【文献】 特公昭49−14278(JP,B1)
【文献】 特開2005−91316(JP,A)
【文献】 特開平5−119108(JP,A)
【文献】 特開平4−288849(JP,A)
【文献】 特開平3−259184(JP,A)
【文献】 特開2004−109019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 27/02
G01R 27/26
G01R 31/26
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置する配列部と、
配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給する第一電源部と、
第一インパルス波形の供給によって第一回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出する第一検出部と、
第一電源部にて第一インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形を保持する第一リファレンス波形保持部と、
第一検出部にて検出された第一検出波形と第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する第一判定部と、
第一回路を構成する試験対象電子部品の少なくとも一部を含む試験対象電子部品によって電気的に他の接続にて構成される第二回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第二インパルス波形を供給する第二電源部と、
第二インパルス波形の供給によって第二回路に流れる電流又は電圧波形である第二検出波形を検出する第二検出部と、
第二電源部にて第二インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第二回路と同じ回路である第二回路リファレンスに第二インパルス波形を供給した場合に第二検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第二リファレンス波形を保持する第二リファレンス波形保持部と、
第二検出部にて検出された第二検出波形と第二リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する第二判定部と、
第一判定部での一以上の判定結果と第二判定部での一以上の判定結果から第一回路又は/及び第二回路の不良製品が混入している領域を算出する不良製品混入領域算出部と、
を有する電子部品試験装置。
【請求項2】
第二回路は第一電源部にて第一インパルス波形を供給する試験対象電子部品の少なくとも一部に加えてこの試験対象電子部品と同種の電子部品によって構成される請求項に記載の電子部品試験装置。
【請求項3】
配列部に配列載置されている試験対象電子部品の相対的な電子部品同士の位置を変えずに電気的な接続を切り替えて第一回路から第二回路を構成し、又は/及び第二回路から第一回路を構成する回路構成変更部を有する請求項又はに記載の電子部品試験装置。
【請求項4】
第一インパルス波形が試験対象電子部品のインピーダンスを測定するための波形であるインピーダンス測定用波形であり、第二インパルス波形が試験対象電子部品のキャパシタンスを測定するための波形であるキャパシタンス測定用波形である、
又は
第一インパルス波形がキャパシタンス測定用波形であり第二インパルス波形がインピーダンス測定用波形である
請求項からのいずれか一に記載の電子部品試験装置。
【請求項5】
インパルス波形に代えて交流波形とする請求項1からのいずれか一に記載の電子部品試験装置。
【請求項6】
試験対象電子部品はコンデンサである請求項1からのいずれか一に記載の電子部品試験装置。
【請求項7】
試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置する配列ステップと、
配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される第一回路を構成する第一回路構成ステップと、
第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給する第一インパルス波形供給ステップと、
第一インパルス波形の供給によって第一回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出する第一検出ステップと、
第一検出部にて検出された第一検出波形と第一電源部にて第一インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する第一判定ステップと、
第一回路を構成する試験対象電子部品の少なくとも一部を含む試験対象電子部品によって電気的に他の接続にて構成される第二回路を構成する第二回路構成ステップと、
第二回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第二インパルス波形を供給する第二インパルス波形供給ステップと、
第二インパルス波形の供給によって第二回路に流れる電流又は電圧波形である第二検出波形を検出する第二検出ステップと、
第二検出部にて検出された第二検出波形と第二電源部にて第二インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第二回路と同じ回路である第二回路リファレンスに第二インパルス波形を供給した場合に第二検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第二リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する第二判定ステップと、
第一判定部での一以上の判定結果と第二判定部での一以上の判定結果から第一回路又は/及び第二回路の不良製品が混入している領域を算出する不良製品混入領域算出ステップと、
を有する電子部品試験方法。
【請求項8】
第二回路は第一電源部にて第一インパルス波形を供給する試験対象電子部品の少なくとも一部に加えてこの試験対象電子部品と同種の電子部品によって構成される請求項に記載の電子部品試験方法。
【請求項9】
配列載置されている試験対象電子部品の相対的な電子部品同士の位置を変えずに電気的な接続を切り替えて第一回路から第二回路を構成し、又は/及び第二回路から第一回路を構成する請求項又はに記載の電子部品試験方法。
【請求項10】
第一インパルス波形が試験対象電子部品のインピーダンスを測定するための波形であるインピーダンス測定用波形であり、第二インパルス波形が試験対象電子部品のキャパシタンスを測定するための波形であるキャパシタンス測定用波形である、
又は
第一インパルス波形がキャパシタンス測定用波形であり第二インパルス波形がインピーダンス測定用波形である
請求項からのいずれか一に記載の電子部品試験方法。
【請求項11】
インパルス波形に代えて交流波形とする請求項から10のいずれか一に記載の電子部品試験方法。
【請求項12】
試験対象電子部品はコンデンサである請求項から11のいずれか一に記載の電子部品試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを高速に判定するための電子部品試験装置、電子部品試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会を背景として、パソコンやスマートフォン、ウェアラブル端末を始め、電気機器が広く普及している。電気機器にはコンデンサ、インダクタ、抵抗を始め様々な電子部品が使用されており、同種の電子部品でも用途に応じてその性能は多様である。例えば、コンデンサは、スマートフォンや各種電気機器の電源回路の平滑用、あるいはノイズ除去回路などに広く用いられているが、その用途が多岐にわたることから、用途に応じて小容量のものから大容量のものまで、また耐電圧も大小様々なものが製品化されている。
【0003】
電子部品は、電気機器の普及を背景として大量生産されているが、一方で電子部品の品質を保証するための電子部品の試験方法については現時点も手探りの状態であって、現在電子部品は過剰品質の状態で製品化されている。すなわち、大量生産された製品の品質試験は、通常は全製品のうち所定数の製品を抽出し、抽出された製品に対してのみ行われることが多い。しかしながら、電子部品の場合は試験方法が確立されておらず、製品の不良品率を減らすために全数個別検査が行われているのが現状である。
【0004】
そこで、特許文献1には、コンデンサの絶縁抵抗の検査時間の短縮を課題として、複数のコンデンサを並列接続して同時に検査を行う技術が開示されている。すなわち、並列接続した複数のコンデンサのそれぞれに検査用抵抗を直列接続し、複数のコンデンサ及び検査用抵抗に同時に電圧を印加して、それぞれの検査用抵抗の両端電圧を測定して、測定された両端電圧から複数のコンデンサの絶縁抵抗をそれぞれ求めて検査するというものである。
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、複数のコンデンサの絶縁抵抗をそれぞれ求めるために、複数のコンデンサと直列接続された検査用抵抗の両端電圧をそれぞれ測定する必要があった。すると、複数のコンデンサを同時に検査するといっても、個別に検査を行う場合と対して変わらないものであった。
【0005】
また、特許文献2には、プリント基板等に実装されている複数の電子部品を一度に検査する技術が開示されている。すなわち、複数の電子部品が電気的に接続されているプリント基板上の回路に対し、検査信号の入力によって回路から出力される信号を受信し、受信した信号を基準信号と比較して、複数の電子部品の良否判定を行うというものである。
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、プリント基板上の複数の電子部品の検査のみならず、プリント基板上の回路の検査も含むものであった。例えば、プリント基板上に電子部品がうまく実装されていない場合でも、回路から出力される信号は基準信号とは異なるものであると考えられ、特許文献2に記載の技術は、必ずしも複数の電子部品の検査を目的としたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−112582号公報
【特許文献2】特開2001−264398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件発明は、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを高速に判定するための電子部品試験装置、電子部品試験方法を提供することを課題とする。本件発明の電子部品試験装置、電子部品試験方法は、所定のインパルス波形の電流又は電圧を、複数の電子部品で構成される第一回路に供給し、第一回路に流れる電流又は電圧波形をもとに、電子部品中の不良製品の混入の有無を高速に判定するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明の電子部品試験装置は、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置する配列部と、配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給する第一電源部と、第一インパルス波形の供給によって第一回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出する第一検出部と、第一電源部にて第一インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形を保持する第一リファレンス波形保持部と、第一検出部にて検出された第一検出波形と第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する第一判定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本件発明の電子部品試験方法は、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置する配列ステップと、配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される第一回路を構成する第一回路構成ステップと、第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給する第一インパルス波形供給ステップと、第一インパルス波形の供給によって第一回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出する第一検出ステップと、第一検出部にて検出された第一検出波形と第一電源部にて第一インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する第一判定ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本件発明の電子部品試験装置、電子部品試験方法を用いることにより、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを高速に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図
図2】実施形態1の電子部品試験装置の第一回路の構成の一例を示す回路図
図3】第一インパルス波形を供給するための回路構成の一例を示す図
図4】実施形態1の電子部品試験装置の第一検出部にて検出される第一検出波形の概要を示す図
図5】実施形態1の電子部品試験装置の第一判定部における判定例を示す図
図6】実施形態1の電子部品試験装置の第一判定部における判定例の詳細を示す図
図7】実施形態1の電子部品試験装置を用いた電子部品の試験方法の処理の流れの一例を示す図
図8】実施形態2の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図
図9】実施形態2の電子部品試験装置の第二回路の構成例を示す回路図
図10】実施形態2の電子部品試験装置の不良製品混入領域算出部における処理例を示す図
図11】実施形態2の電子部品試験装置の不良製品混入領域算出部における別の処理例を示す図
図11-2】実施形態2の電子部品試験装置の不良製品混入領域算出部における別の処理例を示す図
図12】実施形態2の電子部品試験装置における電子部品の試験方法の処理の流れの一例を示す図
図13】実施形態3の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図
図14】実施形態3の電子部品試験装置の第一ブリッジ回路の構成の一例を示す図
図15】実施形態3の電子部品試験装置を用いた電子部品試験方法の一例を示す図
図16】実施形態4の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図
図17】実施形態4の電子部品試験装置の第一ブリッジ回路の一例を示す
図18】実施形態4の電子部品試験装置を用いた電子部品の試験方法の処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本件発明の実施形態について図面とともに説明する。実施形態と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1、6、7、9、14、15などに関する。実施形態2は主に請求項2−7、10−15などに関する。実施形態3、4は主に請求項8、16などに関する。なお、本件発明はこれら実施形態や図面の記載に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
<<実施形態1>>
<概要>
【0013】
本実施形態は、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを高速に判定するための電子部品試験装置、電子部品試験方法に関する。
<構成>
【0014】
図1は、本実施形態の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図である。例えば本実施形態の電子部品試験装置(0100)は、配列部(0101)、第一電源部(0102)、第一検出部(0103)、第一リファレンス波形保持部(0104)、第一判定部(0105)から構成される。以下、各構成について説明する。
【0015】
なお、本明細書において、電子部品とは、コンデンサ・インダクタ・抵抗といった電子部品、チップコンデンサ・チップインダクタ・チップ抵抗といったチップ部品、チップ部品を複合した電子部品(例えば集積回路、ICチップなど)、発光ダイオード(LED)なども含む。
【0016】
(第一回路)
第一回路(0106)は、配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される回路である。本実施形態の電子部品試験装置は、第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧を供給し、検出された第一回路を流れる電流又は電圧波形をもとに、第一回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定するものである。
【0017】
第一回路を構成する電子部品の個数は特に限定するものではないが、第一回路を構成する電子部品中に1つの不良品が混入していた場合であっても、電子部品試験装置がその混入を判定できるような個数とすることが好ましい。また、第一回路を構成する電子部品は、全てが同種の電子部品であっても良いし、複数種の電子部品が混在していても良い。例えば、第一回路を構成する電子部品が全てコンデンサであっても良いが、コンデンサ、インダクタ、抵抗が混在していても良い。
【0018】
図2は、第一回路の構成の一例を示す回路図である。第一回路は、例えば(a)に示すように全てのコンデンサ(0201)が直列に接続されても、(b)に示すように並列に接続されても良い。また、(c)に示すようにコンデンサが直列及び並列に接続されていても良い。さらに、(d)に示すようにコンデンサ(0201)、抵抗(0202)、コイル(0203)が直列及び並列に接続されていても良い。
【0019】
なお、本件発明の電子部品試験装置は、電子部品の中でもコンデンサの試験を行うのに特に好適である。コンデンサの絶縁抵抗の試験方法として、コンデンサを充電した後に流れるリーク電流を測定する方法が知られているが、かかる方法ではコンデンサの容量が大きいとコンデンサの充電に時間を要することとなり、試験に時間がかかってしまう。さらに、大量生産されている大容量のコンデンサすべてに対して、コンデンサを充電して試験を行うとなると、試験により消費される電力量も甚大なものとなってしまう。
【0020】
しかしながら、本件発明の電子部品試験装置は、上述したように第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧を供給し、検出された第一回路を流れる電流又は電圧波形をもとに試験を行うものであって、コンデンサの試験の際にコンデンサをいちいち充電する必要がない。そのため、コンデンサの試験を高速に行えるだけでなく、試験により消費される電力量も抑えることができる。
【0021】
(配列部)
配列部(0101)は、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置するよう構成される。「試験対象電子部品を配列載置」とは、配列部にて試験対象電子部品を配列させる場合に限らず、他の装置にて試験対象電子部品を配列させた後、電子部品試験装置に試験対象電子部品を載置する場合も含む。試験対象電子部品の配列方法については、公知の技術を用いることが可能である。
【0022】
なお、第一回路は配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される。従って、配列部は試験対象電子部品を配列載置することにより、試験対象電子部品を電気的に接続して第一回路を構成する機能を有していてもよい。
【0023】
(第一電源部)
第一電源部(0102)は、第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給するよう構成される。「インパルス波形」とは、理論上は無限に短い半値幅と無限大の振幅を持つパルス波形であるが、本実施形態においては所定の半値幅(例えば1μs〜100μs程度)と所定の振幅(例えば1kV〜100kV)を持つパルス波形について示すものとする。
【0024】
なお、第一電源部から第一回路に供給される第一インパルス波形は、単一パルスであると電子部品の試験をより高速に行えるため好ましいが、複数パルスであっても良い。例えば同じ波形の第一インパルス波形を第一電源部から第一回路に対して3度供給して電子部品の試験を行う構成としても良い。
【0025】
インパルス波形は半値幅が非常に短いため、検出される電流又は電圧波形の半値幅も非常に短いものとなる。本件発明の電子部品試験装置は、検出される電流又は電圧波形をもとに試験を行うものであるため、インパルス波形を用いて試験を行うことにより、試験にかかる時間を短縮することができる。
【0026】
また、電子部品に供給される電流又は電圧波形としてインパルス波形を用いる場合、電子部品に与える影響を軽減することができる。すなわち、電子部品の耐電圧以上の電圧を加えたとしても、その電圧波形がインパルス波形であれば、電子部品に与えるエネルギー量が少ないため、電子部品を故障させることがない。すると、電子部品に供給される電流量又は電圧量を大きくして、検出される電流量又は電圧量を増大させることができて、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかをより精度よく判定することができる。
【0027】
なお、第一電源部は複数の第一インパルス波形を保持していても良い。第一電源部が複数の第一インパルス波形を保持しておくことにより、電子部品試験装置で複数種の電子部品の試験を行う場合に、各電子部品の種類に応じて保持されている複数の第一インパルス波形の中から最適な波形を選択し、第一回路に第一インパルス波形の電圧を供給することができる。
【0028】
図3に第一インパルス波形を供給するための回路構成の一例を示す。まず、第一インパルス波形を供給するにあたり、高圧電源(0301)により、高圧コンデンサ(0302)の両電極間に電荷が蓄えられる。そこで、スイッチ(0303)を一瞬だけOnとすると、高圧コンデンサに蓄えられていた電荷が第一回路(0305)へと供給される。その際、スイッチと試験対象電子部品の間にダイオード(0304)を設けることにより、試験対象電子部品中のコンデンサから高圧コンデンサへと電圧(電流)が逆流するのを防止することができ、すなわち高電圧を第一回路へと正確に供給することができる。なお、スイッチをOnにした場合に電源が短絡するのを防ぐため、電源と高圧コンデンサの間には抵抗(0306)が接続される。また抵抗に変えて、インダクタンスが接続されても良い。
【0029】
本実施形態の電子部品試験装置の第一電源部として設けられる高圧コンデンサの静電容量は、試験対象電子部品中にコンデンサが含まれている場合に、試験対象電子部品中のコンデンサの静電容量の10倍以上とすることが好ましい。ここで、「試験対象電子部品中のコンデンサの静電容量」とは、試験対象個々が含有するコンデンサの静電容量ではなく、試験対象電子部品により構成される第一回路の静電容量のことである。電源側の高圧コンデンサの静電容量を試験対象電子部品中のコンデンサの静電容量に対して10倍以上とすると、スイッチをOnとした場合に多量の電荷を試験対象電子部品中のコンデンサに供給することができ、インパルス電圧の印加時に試験対象電子部品に対して安定したインパルス波形を提供することができる。なお、さらに試験時間(タクトタイム)を短縮するため、充電回路部を並列にし、これを電子的ロータリースイッチで順番に切り替えることによりパルス発生時間間隔の短縮を図った回路とすることも可能である。
【0030】
(第一検出部)
第一検出部(0103)は、第一インパルス波形の供給によって第一回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出するよう構成される。第一検出波形の検出は、例えば電流計や電圧計などを用いて行うことができる。第一検出部は、検出された第一検出波形をそのまま保持しても良いが、検出された波形の特徴である立ち上がり時間、波尾長、振幅、波形面積、波形のばらつきなどを検出された波形から算出して保持しても良い。
【0031】
図4に、第一検出波形の立ち上がり時間と波尾長の概要について示す。第一検出波形(0401)の立ち上がり時間T1と波尾長T2は以下のように算出される。まず、第一検出波形のうちの波形の立ち上がりについて、波形の波高値の30%(もしくは10%)と90%の2点を結ぶ直線と時間軸との交点を波形の規約原点(0402)とする。そして、直線のうち波形の100%に対応する点と規約原点との間の時間を立ち上がり時間T1とする。また、第一検出波形の波尾について、波尾の50%となる点と規約原点との間の時間を波尾長T2とする。
【0032】
なお、第一検出波形は第一回路に流れる電圧波形であっても良いが、電流波形である方が好ましい。一般に電流の微小変化の方が検出しやすいため、従って電流波形を検出する方が、電子部品中の不良製品の混入をより精度よく判定することができる。
【0033】
(第一リファレンス波形保持部)
第一リファレンス波形保持部(0104)は、複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形を保持するよう構成される。ここで、第一リファレンス波形保持部にて保持される第一リファレンス波形は、理論的に予測される波形として設定されても良いし、実際に正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一リファレンス回路に第一インパルス波形の電圧を供給した場合に第一検出部にて検出された波形として設定されても良い。
【0034】
(第一判定部)
第一判定部(0105)は、第一検出部にて検出された第一検出波形と第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定するよう構成される。「第一検出波形と第一リファレンス波形とを比較して」とは、例えば立ち上がり時間、波尾長、振幅、波形面積、波形のばらつきなどを判定項目値として、第一検出波形と第一リファレンス波形の各判定項目値について比較する。
【0035】
本件発明の電子部品試験装置は、第一検出波形と第一リファレンス波形とを比較することにより試験対象電子部品の試験を行うものであって、試験対象電子部品個々の物性値(例えば静電容量、絶縁抵抗など)を測定するものではない。従って、個々の物性値を測定することで電子部品の試験を行う場合と比較して、電子部品の試験をより高速に行うことができる。
【0036】
「試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する」には、例えば第一検出波形の各判定項目値が、第一リファレンス波形の各判定項目値に対して許容範囲内(例えば±1%以内)である場合に、当該判定項目について試験対象電子部品に不良製品が混入していないと判定する構成としても良い。電子部品はその製造ラインが共通であったとしても、その物性値に多少のばらつきは生じるものであるため、本判定手法を用いることにより、その誤差をある程度許容することができる。
【0037】
また、「試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する」方法として、第一検出波形の各判定項目値の、第一リファレンス波形の各判定項目値に対する乖離度の程度に応じて、第一検出波形が検出された第一回路中の電子部品のランク付けを行うこととしても良い。具体的には、例えば第一検出波形の波尾長が、第一リファレンス電流波形の波尾長に対して±1%以内である場合には、第一回路を構成する試験対象電子部品を「優」とし、±3%以内である場合には「良」とし、±5%未満である場合には「可」とし、±5%以上である場合に「不可」とランク付けする。
【0038】
図5は、第一判定部における判定例を示す。(a)に示す波形は、第一リファレンス波形(0501)であって、波尾長t1と振幅i1を有する。まず、(b)に示す第一検出波形(0502)は、波尾長t2と振幅i2が第一リファレンス波形とほぼ同一である。一方、(c)に示す第一検出波形(0513)は、その振幅i3は第一リファレンス波形(0511)の振幅とほぼ同じであるが、波尾長t3が第一リファレンス波形の波尾長よりも長い。また、(d)に示す第一検出波形(0514)は、その波尾長t4が第一リファレンス波形(0511)の波尾長とほぼ同じであるが、振幅i4が第一リファレンス波形の振幅よりも小さい。
【0039】
図6は、図5における第一判定部における判定例の詳細を示す図である。すなわち、第一判定部における判定項目値として、各波形の「波尾長」と「振幅」の2値を用い、(a)から(d)それぞれの各判定項目値と、(a)に示す値との乖離度について示している。例えば(b)に示す第一検出波形の各判定項目値は、第一リファレンス波形の各判定項目値と比較した場合にその大きさが許容範囲内である±1%以内に収まっている。そこで、第一判定部は(b)に示す第一検出波形が検出された場合には、第一回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入していないものと判定する。
【0040】
一方、(c)に示す第一検出波形は、第一リファレンス波形とその波尾長を比較した場合に、+10%と許容範囲を大きく上回っている。そこで、第一判定部において(c)に示す第一検出波形が検出された場合には、第一回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入していると判定する。
【0041】
また、(d)に示す第一検出波形は、第一リファレンス波形とその振幅を比較した場合に、−20%と許容範囲を大きく下回っている。そこで、第一判定部において(d)に示す第一検出波形が検出された場合には、第一回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入していると判定する。
【0042】
なお、第一判定部は、試験対象電子部品中の不良製品の有無を判定するのみならず、不良の種類についても判定する構成としても良い。例えば(c)に示す第一検出波形は、第一リファレンス波形と比較して、波尾長が長い。波尾長が長いということは、試験対象電子部品中に静電容量の大きい不良製品が混入していることを示しており、第一判定部は、試験対象電子部品中に静電容量が大きい不良製品が混入しているという判定を下すこともできる。また、(d)に示す第一検出波形は、第一リファレンス波形と比較して振幅が小さい。振幅が小さいということは、試験対象電子部品中に絶縁抵抗の小さい不良製品が混入していることを示しており、第一判定部は、試験対象電子部品中に絶縁抵抗の小さい不良製品が混入しているという判定を下すこともできる。
【0043】
第一判定部での判定結果が、電子部品中に不良製品が混入していないとの判定結果である場合には、電子部品の試験をそのまま終了することができ、新たな電子部品にて第一回路を構成し、試験を行うことができる。一方、第一判定部での判定結果が、電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果である場合には、不良製品が混入している電子部品を、別の試験装置にて再試験を行う構成としても良い。
【0044】
なお、第一判定部での判定結果が、電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果である場合に、不良製品が混入している電子部品を用いて別の回路を構成し、別の回路を用いて再度試験を行う構成としても良い。(詳しくは実施形態2において説明する。)
【0045】
(交流波形)
第一電源部にて第一回路に供給される電流又は電圧は、インパルス波形に代えて交流波形としても良い。すなわち、第一電源部が、第一回路に所定の交流波形の電流又は電圧である第一交流波形を供給する構成としても良い。交流波形の周波数については特に限定するものではないが、高周波数(例えば数kHz〜数MHz)であることが好ましい。
<処理の流れ>
【0046】
図7に、本実施形態の電子部品試験装置を用いた電子部品の試験方法の処理の流れの一例を示す。まず、配列ステップにおいて、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置する(S0701)。次に、第一回路構成ステップにおいて、配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される第一回路を構成する(S0702)。そして、第一インパルス波形供給ステップにおいて、第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給する(S0703)。そして、第一検出ステップにおいて、第一インパルス波形の供給によって第一回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出する(S0704)。そして、第一回路判定ステップにおいて、第一検出部にて検出された第一検出波形と第一電源部にて第一インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する(S0705)。
<効果>
【0047】
上述した電子部品試験装置、電子部品試験方法を用いることにより、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを高速に判定することができる。
<<実施形態2>>
<概要>
【0048】
本実施形態の電子部品試験装置は、実施形態1で説明した各構成に加え、第一回路を構成する試験対象電子部品の少なくとも一部を含んで構成される第二回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧を供給して不良製品が混入しているか判定し、第一回路を用いた試験の一以上の判定結果と第二回路を用いた試験の一以上の判定結果から第一回路又は/及び第二回路の不良製品が混入している領域を算出する。
<構成>
【0049】
図8は、本実施形態の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図である。例えば本実施形態の電子部品試験装置(0800)は、配列部(0801)、第一電源部(0802)、第一検出部(0803)、第一リファレンス波形保持部(0804)、第一判定部(0805)、第二電源部(0807)、第二検出部(0808)、第二リファレンス波形保持部(0809)、第二判定部(0810)、不良製品混入領域算出部(0811)から構成される。第一電源部と第二電源部、第一検出部と第二検出部、第一リファレンス波形保持部と第二リファレンス波形保持部、第一判定部と第二判定部は同一のハードウェアで構成されても良い。以下では、主に実施形態1との相違点である、第二電源部、第二検出部、第二リファレンス波形保持部、第二判定部、不良製品混入領域算出部について説明する。
【0050】
(第二回路)
第二回路(0812)は、第一回路(0806)を構成する試験対象電子部品の少なくとも一部を含む試験対象電子部品によって電気的に他の接続にて構成される。すなわち、第二回路は、第一回路を構成する試験対象電子部品の一部により構成されても良いし、第一回路を構成する試験対象電子部品の全てにより構成されても良い。また、第二回路は第一電源部にて第一インパルス波形を供給する試験対象電子部品の少なくとも一部に加えてこの試験対象電子部品と同種の電子部品によって構成されても良い。ここで、「試験対象電子部品と同種の電子部品」とは、試験対象電子部品と同じ種類かつ同じ物性値を持つ電子部品のことを示しており、例えば試験対象電子部品が10μFの静電容量を持つコンデンサである場合には、試験対象電子部品と同種の電子部品も10μFの静電容量を持つコンデンサのことを示している。
【0051】
図9は、第二回路の構成例を示す回路図である。(a)は第一回路を示しており、(b)〜(d)は第二回路を示している。第一回路は、(9a)〜(9d)の4個の試験対象電子部品が直列に接続されることで第一回路が構成されている。第二回路は、例えば(b)に示すように第二回路を構成する試験対象電子部品を、第一回路を構成する試験対象電子部品と同一のものとして、試験対象電子部品の電気的な接続を切り替えることで、第二回路を構成しても良い。具体的には、第一回路において4個のコンデンサ((9a)〜(9d))が直列に接続されているのに対し、第二回路において4個のコンデンサ((9a)〜(9d))は並列に接続されている。
【0052】
また、(c)に示す第二回路は、第一回路を構成する試験対象電子部品のうちの一部を電気的に接続することにより構成されている。具体的には、第一回路において4個のコンデンサ((9a)〜(9d))が接続されているのに対し、第二回路はそのうち2個((9a)、(9b))を電気的に接続することにより構成されている。
【0053】
また、(d)に示す第二回路は、第一回路を構成する試験対象電子部品の一部と、かかる試験対象電子部品と同種の電子部品によって構成されている。具体的には、第一回路を構成する試験対象電子部品((9a)、(9b))と、かかる試験対象電子部品と同種の電子部品((9c)、(9d))を電気的に接続することにより構成されている。
【0054】
本実施形態の電子部品試験装置は、配列部に配列載置されている試験対象電子部品の相対的な電子部品同士の位置を変えずに電気的な接続を切り替えて第一回路から第二回路を構成し、又は/及び第二回路から第一回路を構成する回路構成変更部を有していても良い。例えば回路構成変更部はスイッチを制御することにより、電子部品同士の位置を変えずに電気的な接続のみを切り替えて第一回路から第二回路を構成し、又は/及び第二回路から第一回路を構成することができるように構成される。電子部品同士の位置を変えるには時間を要するため、電子部品試験装置が回路構成変更部を有していることにより電子部品同士の位置を変える手間を省くことができ、高速に電子部品の試験を行うことができる。
【0055】
なお、試験対象電子部品がコンデンサを含む場合に、電気的な接続を切り替えて第一回路から第二回路を構成する際は、第二回路に第二インパルス波形を供給する前にコンデンサを一度ショートさせ、コンデンサに蓄積している電荷を取り除くことが好ましい。なぜなら、コンデンサに電荷が蓄積していると、第二インパルス波形を供給した際に得られる電流又は電圧波形を正確に得ることができないためである。
【0056】
(第二電源部)
第二電源部(0807)は、第二回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第二インパルス波形を供給するよう構成される。第一電源部と第二電源部は基本的な構成は同様であるが、第二電源部により第二回路に供給される第二インパルス波形は、第一インパルス波形と同一の波形であっても良いし、別の波形であっても良い。
【0057】
第一インパルス波形と第二インパルス波形が異なる場合に、第一インパルス波形が試験対象電子部品のインピーダンスを測定するための波形であるインピーダンス測定用波形であり、第二インパルス波形が試験対象電子部品のキャパシタンスを測定するための波形であるキャパシタンス測定用波形であってもよく、又は第一インパルス波形がキャパシタンス測定用波形であり第二インパルス波形がインピーダンス測定用波形であってもよい。「インピーダンス測定用波形」とは、いわゆる試験対象電子部品の絶縁抵抗を測定するための波形であり、「キャパシタンス測定用波形」とは、いわゆる試験対象電子部品の静電容量を測定するための波形である。かかる構成を採用することにより、同じ電子部品試験装置で2つの物性値(例えばインピーダンスとキャパシタンス)に関して試験を行うことができ、従って試験対象電子部品中の不良製品の混入をより精度よく検出することができる。
【0058】
例えば、図9(a)に示す第一回路は4つのコンデンサが直列に接続され、図9(b)に示す第二回路は4つのコンデンサが並列に接続されている。そこで、まず図9(a)に示す第一回路にキャパシタンス測定用波形を供給し、第一回路を構成する試験対象電子部品中に静電容量に関して不良製品が混入しているかどうかを判定する。次に、図9(b)に示す第二回路を構成し、第二回路にインピーダンス測定用波形を供給し、第二回路を構成する試験対象電子部品中に絶縁抵抗に関して不良製品が混入しているかどうかを判定するといった具合である。
【0059】
(第二検出部)
第二検出部(0808)は、第二インパルス波形の供給によって第二回路に流れる電流又は電圧波形である第二検出波形を検出するよう構成される。第二検出部の構成は、第二回路に流れる電流又は電圧波形を検出する点を除いて、第一検出部の構成と同様である。
【0060】
(第二リファレンス波形保持部)
第二リファレンス波形保持部(0809)は、第二電源部にて第二インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第二回路と同じ回路である第二回路リファレンスに第二インパルス波形を供給した場合に第二検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第二リファレンス波形を保持するよう構成される。第二リファレンス波形保持部にて保持される第二リファレンス波形は、理論的に予測される波形として設定されても良いし、実際に正常な電子部品を電気的に接続して構成される第二リファレンス回路に第二インパルス波形の電圧を供給した場合に第二検出部にて検出された波形として設定されても良い。
【0061】
(第二判定部)
第二判定部(0810)は、第二検出部にて検出された第二検出波形と第二リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定するよう構成される。第二判定部での判定は、実施形態1において説明した第一判定部での判定と同様に行うことができる。
【0062】
(不良製品混入領域算出部)
不良製品混入領域算出部(0811)は、第一判定部での一以上の判定結果と第二判定部での一以上の判定結果から第一回路又は/及び第二回路の不良製品が混入している領域を算出するよう構成される。「不良製品が混入している領域を算出する」とは、すなわち試験対象電子部品の中から不良製品を抽出することを目的としている。
【0063】
図10に、不良製品混入領域算出部における処理例を示す。図10に示すのは、図9(c)に示す第二回路を用いた場合の例であり、8個の試験対象電子部品(10a〜10h)の中から不良製品(10f)を抽出する際の処理の概要について示す。本例において、まず、図10(a)に示すように、8個の試験対象電子部品(10a〜10h)を電気的に接続して回路(10−1)を構成し、試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。8個の試験対象電子部品中には不良製品(10f)が混入しているため、判定結果として、試験対象電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果が出力される。
【0064】
そこで、第一回路を構成する試験対象電子部品の電気的な接続を再構築して、試験対象電子部品(10a〜10d)と、試験対象電子部品(10e〜10h)をそれぞれ電気的に接続して2つの回路(10−2、10−3)を構成し、それぞれの回路に対して回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。すると、試験対象電子部品(10a〜10d)中には不良製品が混入しておらず、試験対象電子部品(10e〜10h)中には不良製品が混入しているとの判定結果が出力される。
【0065】
そこで、不良製品が混入している試験対象電子部品(10e〜10h)の電気的な接続を再構築して、試験対象電子部品(10e、10f)と、試験対象電子部品(10g、10h)をそれぞれ電気的に接続して2つの回路(10−4、10−5)を構成し、それぞれの回路に対して回路を構成している試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。すると、試験対象電子部品(10g、10h)中には不良製品が混入しておらず、試験対象電子部品(10e、10f)中に不良製品が混入しているとの判定結果が出力される。
【0066】
そこで、不良製品が混入している試験対象電子部品(10e、10f)それぞれについて、不良製品かどうかを判定することにより、試験対象電子部品(10f)が不良製品であると特定することができる。
【0067】
なお、図10に示す例において、例えば最初に試験対象電子部品(10a〜10h)を用いて試験を行った際に、試験対象電子部品中に不良製品が混入していないとの判定結果である場合は、8個の試験対象電子部品の試験をたった1度で終了することができる。また、もし試験対象電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果である場合でも、試験対象電子部品の数が8個であり、8個のうち不良製品の混入が1つである場合には、最短で4度、最長でも7度の試験により試験対象電子部品中の不良製品を特定することができる。試験対象電子部品の全数個別検査を行う場合、試験対象電子部品の数が8個であれば、試験の回数も8度となるから、図10に示す例を用いて不良製品の混入領域を算出することにより、電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを高速に判定することができる。
【0068】
図11に、不良製品混入領域算出部における別の処理例を示す。図11に示すのは、図9(d)に示す第二回路を用いた場合の例であり、16個の試験対象電子部品(1〜16)の中から不良製品(11)を抽出する際の処理の概要について示す。本例において、まず図11(a)に示すように、16個の試験対象電子部品(1〜16)を4つの試験対象電子部品毎に区分し、それぞれを電気的に接続して4つの第一回路(a〜d)を構成する。そして、構成された4つの第一回路それぞれについて、それぞれの第一回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。16個の試験対象電子部品中には不良製品(11)が混入しているから、第一回路(a、b、d)を構成する試験対象電子部品中には不良製品が混入しておらず、第一回路(c)を構成する試験対象電子部品中には不良製品が混入しているとの判定結果が出力される。
【0069】
次に、16個の試験対象電子部品の電気的な接続を切り替えて、4つの第二回路(e〜h)を構成する。そして、構成された4つの第二回路それぞれについて、それぞれの第二回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。すると、第二回路(a、b、d)を構成する試験対象電子部品中には不良製品が混入しておらず、第二回路(c)を構成する試験対象電子部品中には不良製品が混入しているとの判定結果が出力される。
【0070】
そこで、不良製品混入領域算出部にて、第一回路(a〜d)と第二回路(e〜h)を用いて行った試験の判定結果をもとに、不良製品が混入している領域を算出する。具体的には、不良製品混入領域算出部は、第一判定部から第一回路のうち(c)を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果を取得し、第二判定部から第二回路のうち(g)を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果を取得する。すると、第一回路(c)と第二回路(g)とに共通に用いられている試験対象電子部品は(11)であるから、不良製品混入領域算出部は、16個の試験対象電子部品のうち(11)が不良製品であると特定することができる。
【0071】
図11−2に、不良製品混入領域算出部における別の処理例を示す。図11−2に示すのは、図9(d)に示す第二回路を用いた場合の例であり、8個の試験対象電子部品(10a〜10h)の中から不良製品(10f)を抽出する際の処理の概要について示す。本例において、まず、図10(a)に示すように、8個の試験対象電子部品(10a〜10h)を電気的に接続して回路(10−1)を構成し、試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。8個の試験対象電子部品中には不良製品(10f)が混入しているため、判定結果として、試験対象電子部品中に不良製品が混入しているとの判定結果が出力される。
【0072】
そこで、不良製品が混入している試験対象電子部品(10a〜10h)を2つに区分(10a〜10d、10e〜10h)して、区分されたそれぞれに対して、試験対象電子部品と同種の正常な電子部品(10i〜10l)を電気的に接続して新たな回路(10−2、10−3)を構成し、それぞれの回路について回路を構成する試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する。図11−2に示す例では、(10−2)に示す回路には不良製品が混入していないとの判定がなされ、(10−2)を構成する試験対象電子部品(10a〜10d)の試験を終了することができる。一方(10−3)に示す回路には不良製品が混入しており、(10i〜10l)には不良製品が混入していないから、不良製品は(10e〜10h)中に混入していると判定することができる。不良製品が混入している試験対象電子部品は、別の試験装置にて再試験を行うことができる。
<処理の流れ>
【0073】
図12は、本実施形態の電子部品試験装置における電子部品の試験方法の処理の流れの一例を示す図である。まず、配列ステップにおいて、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置する(S1201)。次に、第一回路構成ステップにおいて、配列された試験対象電子部品を電気的に接続して構成される第一回路を構成する(S1202)。そして、第一インパルス波形供給ステップにおいて、第一回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第一インパルス波形を供給する(S1203)。そして、第一検出ステップにおいて、第一検出部にて検出された第一検出波形と第一電源部にて第一インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第一回路と同じ回路である第一リファレンス回路に第一インパルス波形を供給した場合に第一検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第一リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する(S1205)。
【0074】
その後、第二回路構成ステップにおいて、第一回路を構成する試験対象電子部品の少なくとも一部を含む試験対象電子部品によって電気的に他の接続にて構成される第二回路を構成する(S1206)。そして、第二インパルス波形供給ステップにおいて、第二回路に所定のインパルス波形の電流又は電圧である第二インパルス波形を供給する(S1207)。そして、第二検出ステップにおいて、第二インパルス波形の供給によって第二回路に流れる電流又は電圧波形である第二検出波形を検出する(S1208)。そして、第二回路判定ステップにおいて、第二検出部にて検出された第二検出波形と第二電源部にて第二インパルス波形を供給する複数の電子部品と同種の正常な電子部品を電気的に接続して構成される第二回路と同じ回路である第二回路リファレンスに第二インパルス波形を供給した場合に第二検出部にて検出されるべき電流又は電圧波形である第二リファレンス波形とを比較して試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定する(S1209)。
【0075】
その後、不良製品混入領域算出ステップにおいて、第一判定部での一以上の判定結果と第二判定部での一以上の判定結果から第一回路又は/及び第二回路の不良製品が混入している領域を算出する(S1210)。
<効果>
【0076】
上述した構成を採用することにより、一度に複数の電子部品の良否判定を行うことができ、従って電子部品の試験にかかる時間を短縮することができる。さらに、第一回路と第二回路を用いて電子部品の試験を行うことにより、不良製品が混入している領域を算出することができる。
<<実施形態3>>
<概要>
【0077】
本実施形態は、試験対象となる複数の電子部品をブリッジ回路の一部に組み込み、ブリッジ回路に電流又は電圧を供給した際にブリッジ回路内を流れる電流又は電圧を検出して、電子部品中に不良製品が混入しているか判断する電子部品試験装置に関する。
<構成>
【0078】
図13は、本実施形態の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図である。例えば本実施形態の電子部品試験装置(1300)は、配列部(1301)、第一電源部(1302)、第一検出部(1303)、第一判定部(1304)から構成される。以下、各構成について説明する。
【0079】
(第一ブリッジ回路)
第一ブリッジ回路(1305)は、試験対象となる電子部品である試験対象電子部品をブリッジ回路の一部に組み込んだ回路である。ここで、第一ブリッジ回路に組み込まれる試験対象電子部品の数は特に限定するものではないが、一度に複数の電子部品の試験を行うという点で、2個以上の電子部品を電気的に接続することが好ましい。
【0080】
図14に、第一ブリッジ回路の構成の一例を示す。図14に示す例は、ブリッジ回路としてホイートストンブリッジ回路を採用した例である。(a)に示す例は、試験対象電子部品(1401)を直列に接続し、試験の基準とする試験基準電子部品(1402)を直列に接続し、それぞれを互いに並列に接続してホイートストンブリッジ回路を構成している。その際に、試験対象電子部品の接続点(1403)と、試験基準電子部品の接続点(1404)とが電気的に接続されており、両接続点間を流れる電流又は電圧を例えば検流計(1405)を用いて差動検出する。ここで、「試験基準電子部品」とは、既に物性値が判明している電子部品であって、例えば既に不良製品でないと判明している試験対象電子部品であっても良い。
【0081】
また、(b)に示す第一ブリッジ回路は、(a)とは異なり試験対象電子部品(1401)と試験基準電子部品(1402)を直列に接続し、それぞれを互いに並列に接続したものである。その際に、試験対象電子部品と試験基準電子部品の接続点(1406)間を電気的に接続し、接続点間を流れる電流又は電圧を例えば検流計(1405)により差動検出する。
【0082】
さらに、図14に示す例は、試験対象電子部品を1個ずつ直列又は並列に接続して2個の試験対象電子部品を用いてホイートストンブリッジ回路を構成しているが、例えば試験対象電子部品を複数(2個以上)直列又は並列に接続した回路を2つ用意し、2つの回路を図14に示す試験対象電子部品に変えて直列又は並列に接続して、2つの回路をホイートストンブリッジ回路に組み込むような構成としても良い。
【0083】
本実施形態の電子部品試験装置は、第一ブリッジ回路に電流又は電圧を供給し、第一ブリッジ回路内を流れる電流又は電圧を検出することにより、試験対象電子部品の良否判定を行うものである。ブリッジ回路を用いると、電子部品中の不良製品の混入の検出精度を上げることができる。
【0084】
(配列部)
配列部(1301)は、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置するよう構成される。配列部に配列された試験対象電子部品は、電気的に接続されることでブリッジ回路の一部に組み込まれ、第一ブリッジ回路を構成する。
【0085】
(第一電源部)
第一電源部(1302)は、第一ブリッジ回路に電流又は電圧を供給するよう構成される。第一ブリッジ回路に供給される電流又は電圧波形は、所定のインパルス波形もしくは交流波形であることが好ましい。
【0086】
(第一検出部)
第一検出部(1303)は、第一電源部からの電流又は電圧の供給によって第一ブリッジ回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出するよう構成される。電流又は電圧波形の検出は、上述したように例えば検流計を用いて行うことができる。
【0087】
(第一判定部)
第一判定部(1304)は、試験対象電子部品中に不良製品が混入しているか判定するよう構成される。不良製品が混入しているかどうかの判定方法として、例えば試験対象電子部品中に不良製品が混入していた場合に検出されると考えられる電流又は電圧波形を電子部品試験装置が予め保持しておき、かかる電流又は電圧波形が検出された場合に、試験対象電子部品中に不良製品が混入していると判定する構成としても良い。
【0088】
しかしながら、本実施形態の場合、第一検出部にて検出される電流又は電圧波形は、試験対象電子部品の不良の程度により様々であり、一概に特定することができない。すなわち、図14に示す第一ブリッジ回路に電流又は電圧を供給した場合、検流計を流れる電流又は電圧は、主に試験対象電子部品と試験基準電子部品のインピーダンスの違いに起因するものであるが、試験対象電子部品の電気的特性のばらつきにより、検流計を流れる電流又は電圧波形は種々の変化をすると予想される。そこで、第一判定部は検流計を流れる電流又は電圧の閾値を保持しており、検流計を流れる電流又は電圧が閾値を超えた場合に、試験対象電子部品中に不良製品が混入していると判定しても良い。
<処理の流れ>
【0089】
図15は本実施形態の電子部品試験装置を用いた電子部品試験方法の一例を示す。まず、配列ステップにおいて、試験対象電子部品を配列する(S1501)。次に、第一ブリッジ回路構成ステップにおいて、試験対象電子部品を電気的に接続してブリッジ回路の一部に組み込み、第一ブリッジ回路を構成する(S1502)。そして、第一電源供給ステップにおいて、第一ブリッジ回路に電源を供給する(S1503)。そして、第一検出ステップにおいて、第一電源部からの電流又は電圧の供給によって第一ブリッジ回路に流れる電流又は電圧波形である第一検出波形を検出する(S1504)。そして、第一判定ステップにおいて、試験対象電子部品中に不良製品が混入しているかどうかを判定する(S1505)。
<効果>
【0090】
本実施形態の電子部品試験装置を用いて電子部品の試験を行うことにより、一度に複数の電子部品の試験を行うことで電子部品の試験にかかる時間を短縮することができるのみならず、その判定の精度を向上させることができる。
<<実施形態4>>
<概要>
【0091】
本実施形態の電子部品試験装置は、実施形態3の電子部品試験装置において、第一ブリッジ回路として直角相ブリッジ回路を用いる。
<構成>
【0092】
図16は、本実施形態の電子部品試験装置の一例を示す機能ブロック図である。例えば本実施形態の電子部品試験装置(1600)は、配列部(1601)と、第一電源部(1602)と、第二電源部(1603)と、第一検出部(1604)と、第一判定部(1605)と、から構成される。以下、各構成について説明する。
【0093】
(第一ブリッジ回路)
第一ブリッジ回路(1606)は、試験対象となる電子部品である試験対象電子部品をブリッジ回路の一部に組み込んだ回路である。実施形態3では、第一ブリッジ回路としてホイートストンブリッジ回路を用いたが、本実施形態では、第一ブリッジ回路として直角相ブリッジ回路を用いる。なお、第一ブリッジ回路に組み込まれる試験対象電子部品の数は特に限定するものではないが、一度に複数の電子部品の試験を行うという点で、2個以上の電子部品を電気的に接続して第一ブリッジ回路が構成されても良い。
【0094】
図17に本実施形態の第一ブリッジ回路の一例を示す。図17に示す例は、ブリッジ回路として直角相ブリッジ回路を採用した例である。すなわち、第一ブリッジ回路は、試験対象電子部品(1703)と、試験の基準となる電子部品である試験基準電子部品(1704)とが直列接続され、両端に第一電源部(1701)と第二電源部(1702)の二つの電源が接続されている。本例では、試験対象電子部品としてコンデンサを、試験基準電子部品として抵抗を用いているが、特に限定するものではない。また、試験対象電子部品と試験基準電子部品の接続点が接地されており、接続点を流れる電流又は電圧を例えば検流計(1705)により差動検出する。
【0095】
なお、試験対象電子部品は1個の電子部品であっても良いが、複数個の電子部品が電気的に接続されていても良い。例えば、複数個のコンデンサを直列に接続して、図17に示す試験対象電子部品の位置に組み込んでも良い。
【0096】
(配列部)
配列部(1601)は、試験対象となる複数の電子部品である試験対象電子部品を配列載置するよう構成される。配列部に配列された試験対象電子部品は、電気的に接続されることでブリッジ回路の一部に組み込まれ、第一ブリッジ回路を構成する。
【0097】
(第一電源部、第二電源部)
第一電源部(1602)において、第一ブリッジ回路に交流の電流又は電圧を印加する。一方、第二電源部(1603)においても、第一ブリッジ回路に第一電源部と同一の交流の電流又は電圧を印加するが、試験対象電子部品の成分に応じてその位相を第一電源部から発生する正弦波に対して所定位相ずらす。例えば、試験対象電子部品がコンデンサであり、試験基準電子部品が抵抗である場合には、コンデンサの位相は抵抗と比較してπ/2だけ進行するから、第二電源部は第一電源部に印加される交流の位相に対してπ/2だけ遅らせた交流の電流又は電圧を印加する。
【0098】
(第一検出部)
第一検出部(1604)において、試験対象電子部品と基準電子部品の接続点に流れる電流又は電圧を検出する。電流又は電圧波形の検出は、例えば検流計を用いて行うことができる。
【0099】
(第一判定部)
第一判定部(1605)において、試験対象電子部品の良否判定を行う。なお、試験対象電子部品の良否判定は、例えば第一検出部にて検出された電流又は電圧により行われても良いが、検出された電流又は電圧に処理を施した上で行われても良い。
【0100】
(部分放電試験)
第一検出部は、部分放電試験回路を構成していても良い。「部分放電」とは、例えばコンデンサの極板間が絶縁材料で構成される場合に、絶縁材料の不均一性や不良性により、コンデンサの一部で放電が起こる現象であり、「部分放電試験回路」とは、この部分放電を検出することにより電子部品の不良を検出するための回路のことである。例えばコンデンサの絶縁材料中にボイドがあると、その部分から電子部品の故障が生じてしまうため、その検出が望まれる。
【0101】
部分放電はランダムに発生するため、その放電時の電流量から電子部品の良否判定を行うのは困難であり、一般的に部分放電試験回路は電流量ではなく、電流量を積分した電荷量を計測する。従って、第一検出部が「部分放電試験回路を構成」とは、例えば第一検出部にて試験対象電子部品と基準電子部品との接続点を流れる電荷量を測定できるような回路を構成していることを示す。
【0102】
(信号処理)
第一検出部は信号処理回路を構成していても良い。例えば上述したように第一検出部が部分放電試験回路を構成している場合、第一検出部は試験対象電子部品の部分放電を検出することとなるが、部分放電はランダムに発生するために、検出された部分放電信号はそのままでは利用することができない。そこで、信号処理回路を用いて部分放電信号を処理し、試験対象電子部品の良否判定を行うことが好ましい。
【0103】
(アナログ信号処理)
なお、信号処理回路による信号処理は、アナログ信号処理としても良い。一般にデジタル信号処理は大容量の信号を処理できるというメリットがあるが、一方でアナログ信号処理に比較して遅いというデメリットがある。本件発明の場合、信号処理は電子部品の試験を行うために使用するものであるから、大容量の信号を処理するというよりはより高速に信号処理を行うことができる方が望ましい。
【0104】
(フーリエ変換)
アナログ信号処理の具体例として、例えば信号処理回路がフーリエ変換を行う構成としても良い。例えばフーリエ変換を行うメリットとして、第一検出部にて検出される電流には多数のノイズ成分が重畳されていることが多い。すると、単に検出された電流から電子部品の不良を判断することは困難である。しかしながら、ノイズとして検出される各成分はその周波数が一定であることも多いから、フーリエ変換を用いて周波数成分を検出することにより、電子部品の不良に起因した電流のみを取り出すことができる。
【0105】
(Wavelet変換)
また、アナログ信号処理の別の例として、例えば信号処理回路がWavelet変換を行う構成としても良い。Wavelet変換とは周波数解析手法の一つであり、基底関数としてWavelet関数と呼ばれる関数を用いる。フーリエ変換との違いとして、フーリエ変換は変換によりデータの時間成分が失われてしまうが、Wavelet変換では時間成分を残すことが可能である。
<処理の流れ>
【0106】
図18に、本実施形態のブリッジ電子部品試験装置を用いた電子部品の試験方法の処理の流れの一例を示す。まず、配列ステップにおいて、試験対象電子部品を配列する(S1801)。次に、第一ブリッジ回路構成ステップにおいて、試験対象電子部品を電気的に接続してブリッジ回路の一部に組み込んで、第一ブリッジ回路を構成する(S1802)。そして、第一電源作動ステップにおいて、第一電源を作動させて、第一ブリッジ回路に正弦波の電圧を供給する(S1803)。次に、第二電源作動ステップにおいて、第二電源を作動させて、第一ブリッジ回路に正弦波の電圧を供給する(S1804)。なお、第一電源作動ステップと第二電源作動ステップは順序がその逆であっても、また同時であっても良い。次に、第一検出ステップにおいて、第一検出波形を検出する(S1805)。その後、判定ステップにおいて、試験対象電子部品が不良製品であるどうかを判定する(S1806)。
<効果>
【0107】
本実施形態のブリッジ電子部品試験装置を用いることにより、一度に複数の電子部品の試験を行うことで電子部品の試験にかかる時間を短縮することができるのみならず、その良否判定の精度を向上させることができる。さらに、部分放電試験回路や信号処理回路を有していることによって、その良否判定の精度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0108】
0100:電子部品試験装置、0101:配列部、0102:第一電源部、0103:第一検出部、0104:第一リファレンス波形保持部、0105:第一判定部、0106:第一回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18