(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,図面を参照して,実施形態を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る電気集塵機10の構成を示す斜視図である。
【0010】
電気集塵機10は、放電電極11,対向電極12,直流電源13を備え、気流AF内に配置される。放電電極11,対向電極12が並んだ方向がX軸方向であり、X,Y、Z軸は互いに直交する。これらの点は、他の図でも同様である。
【0011】
気流AFは、気体(特に空気)の流れであり、X軸方向に流れる。気流AFは,ファン等の送風手段によって発生した強制流、自然の風、温度差等によって発生した非強制流の何れであっても良い。
気流AFが強制流の場合、電気集塵機10は送風手段に対応して設置される通風路に配置される。なお、この通風路は、気流AFが通れば足り、開放された状態、閉鎖された状態の何れでも良い。
【0012】
放電電極11,対向電極12はそれぞれ、気流AFの上流側および下流側に設置される。
放電電極11は、プラズマ発生用の電極であり、複数の板状電極(板状針電極)111(111(1)〜111(i)〜111(n))を有する。なお、判り易さのために、板状電極111(3)〜111(n−2)は記載を省略している。
【0013】
板状電極111は、平板形状の導体から構成され、複数の板状突起部(針電極)112、接続部113を有する。
ここでは、同一の板状電極111上の板状突起部112、接続部113は、略同一平面上に配置される。後述のように、板状突起部112、接続部113は、同一平面上に配置されなくても良い。
【0014】
板状突起部112は、略二等辺三角形形状の板状体であり、X軸と平行な軸A2に対して線対称の形状を有する。但し、後述のように、板状突起部112の形状は線対称性を有しなくても良い。
【0015】
同一の板状電極111上の板状突起部112の先端は、Z軸に平行な軸A1上に(板状突起部112の板厚方向と略垂直な方向に)、間隔dzで、配置される。
また、異なる板状電極111上の板状突起部112の先端は、Y軸方向(板状突起部112の板厚方向)に間隔dyで、配置される。
すなわち、板状突起部112の先端は、YZ平面に平行な平面上に配置される。
【0016】
但し、板状突起部112の先端を曲面上に配置することも可能である。この場合、対向電極12の対向面122が、板状突起部112の先端が配置される面と対応する形状を有することが好ましい。板状突起部112の先端からの放電の均一化のためである。
【0017】
板状突起部112の先端は、対向電極12と対向し、対向電極12の方向(ここでは、X軸正方向)を向いている。後述の比較例と異なり、本実施形態では、板状突起部112の先端同士は、対向していない。板状突起部112の先端が、対向電極12と対向することで、板状突起部112の設置密度、ひいては電気集塵機10の性能の向上が可能となる。この詳細は後述する。
【0018】
接続部113は、略矩形状の板状体であり、板状突起部112を互いに機械的および電気的に接続、固定する。
【0019】
対向電極12は、フィン形状を有し、対向電極および捕集電極の双方として機能する。対向電極12は、複数の板状体121が、間隔Dzで対向して、Z方向に配置される。板状体121は、放電電極11と対向する対向面(端面)122を有する。複数の板状体121の対向面122は、YZ平面に平行な平面上に配置される。この平面は、板状突起部112の先端が配置される面と、距離G(放電電極11と対向電極12間の距離)をなして平行に配置される。
板状体121間の間隙が、気流AFが通過する流路FPである。
【0020】
なお、対向電極12(板状体121)は、親水性材料(例えば、親水性樹脂)で被覆することが好ましい。対向電極12の洗浄や捕集した塵埃の回収が容易となる(電気集塵機10のメンテナンス向上)。
【0021】
直流電源13は、放電電極11と対向電極12間に高圧直流電圧(印加電圧Va)を印加する。直流電源13は、放電電極11に数kV(例えば、6〜12kV程度)の負(または正)の電圧Vaを印加し、対向電極12をアース電位とする。
【0022】
放電電極11に電圧Vaが印加されると、板状突起部112の先端に電界が集中する。印加電圧Vaが十分大きくなると(板状突起部112の先端付近の電界強度が絶縁破壊電界に達すると)、板状突起部112の先端で絶縁破壊が起き、放電が始まる。すなわち、気流AF中の気体(例えば、空気中の窒素や酸素など)の中性分子が、電荷を帯びて、イオン(荷電粒子)となる(イオン化)。この結果、放電電極11と対向電極12の間の領域(正確には、板状突起部112の先端を包み、対向電極12に向かう領域)にプラズマPlが発生する。
【0023】
気流AFがプラズマPlおよびその近くを通過するときに、気流AF中の塵埃Ptに、プラズマPl中の荷電粒子(正、負のイオンや電子、主として負イオン)の電荷が付着し(帯電)、帯電塵埃Ptiとなる。帯電塵埃Ptiは、放電電極11と対向電極12間の電界から静電気力を受け、アース電位の対向電極12に引き付けられ、捕獲される。
【0024】
図示していないが、放電電極11と対向電極12(特に、放電電極11)を絶縁材料(例えば、ABS樹脂)のフレームで囲んでも良い。放電電極11に人体が触れて感電することを防止できる。このフレームは、電気集塵機10の強度確保にも有用である。
【0025】
放電電極11と対向電極12間の距離Gは、印加電圧Vaが数kV程度であれば、5〜30mm程度、より好ましくは10〜20mm程度である。異常放電を抑止するために、ある程度の距離Gが必要となる。印加電圧Vaが高くなるに伴い、距離Gを大きくする必要がある。
【0026】
板状電極111の板厚は、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは、0.2〜0.5mm(例えば、0.3mm程度)である。
板厚が0.1mmより小さいと、針状電極111の強度が小さくなり、電気集塵機10の使用中に撓む可能性がある。また、板厚が2mmより大きいと、板状電極111の加工(作成)や板状電極111からの放電が困難となる可能性がある。
【0027】
板状突起部112のY軸方向(上下方向)の間隔dyは、好ましくは2〜20mm、より好ましくは、5〜15mm(例えば、10mm程度)である。なお、この詳細は後述する。
【0028】
板状突起部112のZ軸方向(左右方向)の間隔dzは、好ましくは5〜20mm、より好ましくは、10〜15mm(例えば、13mm程度)である。
【0029】
上記に示されるように、間隔dyは、間隔dzより小さいのが通例である。これは、
図9を用いて後述する帯電塵埃Ptiの捕集メカニズムにより説明できる。すなわち、板状突起部112の形状に由来するZ方向の電界が捕集に寄与するため、Z軸方向の(同一の板状電極111の)板状突起部112間の電位変化を大きくすることが望ましい。そのため、間隔dzは上述のように10mm程度とすることが好ましい。
【0030】
一方、間隔dyに関連するY軸方向の電位変化、すなわちY軸方向の電界は、実質的には捕集にあまり寄与しない。そこで、間隔dyを小さくすることで、電気集塵機10のコンパクト化を図ることができる。
【0031】
板状突起部112の長さLは、好ましくは3〜15mm、より好ましくは、5〜15mm(例えば、10mm程度)である。
【0032】
板状体121の間隔Dzは、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは、0.5〜2mm(例えば、1mm程度)である。
【0033】
板状突起部112の間隔dzに対する板状体121の間隔Dzの比R(=dz/Dz)は、好ましくは5〜20、より好ましくは、10〜15(例えば、10程度)である。
【0034】
すなわち、板状体121の間隔Dzは、板状突起部112の間隔dzに比べて、十分に小さいことが好ましい。間隔dzに比べて、板状体121の間隔Dzを小さくすることで、対向電極12全体が平板状の場合と放電状態が近くなる。すなわち、板状突起部112毎のプラズマ強度のばらつきが抑えられ、板状突起部112それぞれを板状体121と位置合わせする必要が低減する。
【0035】
ここで、板状突起部112の一部が放電しない可能性がある。板状突起部112上の放電部(プラズマ生成スポット)と対向電極12間で放電電流が流れ、電気回路を形成する。この電気回路は負荷(抵抗)が小さい部分に優先的に電流が流れる。したがって、板状突起部112それぞれの電気的状況が異なると、一部の板状突起部112で放電しない可能性がある。
【0036】
これを防止し、全ての板状突起部112から均等な強さのプラズマを生成するため、次のような工夫が考えられる。
・板状突起部112と対向電極12間の距離Gを均一にする。例えば、板状突起部112毎の距離Gの相違を1mm以内とする。
・板状突起部112の先端形状をなるべく同程度の尖り具合とする。
・全ての板状突起部112を同電位とする(この詳細は後述する)。
【0037】
(比較例)
図2は、比較例に係る電気集塵機10xの構成を示す斜視図である。
電気集塵機10xは、放電電極11x,対向電極12,直流電源13を備え、気流AF内に配置される。
【0038】
放電電極11xは、プラズマ発生用の電極であり、複数の板状電極111xを有する。
板状電極111xは、対向電極12と略平行(YZ平面に平行な平面上)に配置される平板形状の電極であり、複数の板状突起部112x、接続部113xを有する。接続部113xの上下(Y方向)に、2つの板状突起部112xが配置されている。
この結果、実施形態と異なり、異なる板状電極111xの板状突起部112xの先端が互いに対向している。
【0039】
(集塵性能の向上とコンパクト化)
以下、比較例を参照しながら、電気集塵機10のコンパクト化と高性能化の両立に関し、説明する。
【0040】
電気集塵機10の集塵性能は、帯電効率(流入する塵埃Ptをどれだけ帯電できるか)と捕集効率(帯電塵埃Ptiをどれだけ捕集できるか)で決まる。
【0041】
A.板状電極111の高密度化とプラズマPlの強度
放電電極11からのプラズマPlの強度は、帯電効率、捕集効率双方の向上に、大きく寄与する。
【0042】
プラズマPlは、板状突起部112の先端から発生する。このため、板状突起部112の個数を多くすることで、プラズマPlの強度、ひいては電気集塵機10の集塵性能を向上することが考えられる。電気集塵機10のコンパクト化と高性能化を両立するには、板状突起部112の密度を大きくすれば良いことになる。
【0043】
しかし、板状突起部112を近接配置したときには、プラズマ同士が干渉し(プラズマ干渉)、その強度が低下する。電気集塵機10のコンパクト化と高性能化を両立するには、このプラズマ干渉を抑制する必要がある。
【0044】
実施形態と比較例では、プラズマ干渉の抑制状態が大きく異なる。
図3A〜
図3C、
図4A〜
図4Cは、比較例、および実施形態に係る電気集塵機10x、10において、板状電極111x、111の間隔dyを変化させたときのプラズマPlの分布を表す模式図である。
【0045】
図3A,
図4Aでは、板状電極111x、111間の間隔dyが十分大きい。このとき、プラズマPlは十分離れているため、互いに干渉することはない。
【0046】
図3B,
図4Bでは、板状電極111x、111間の間隔dyが小さく、プラズマPlが重なり合っている。これらの図では、プラズマPlが重なっても、プラズマPlの分布は変化しないとしている。
【0047】
もし、
図3B,
図4Bのような状態が実現されれば、板状電極111x、111の密度を増加することで、プラズマスポットが増加し、その分、電気集塵機10x、10の集塵性能が向上することになる。
【0048】
しかしながら、
図3C,
図4Cに示すように、板状電極111x、111間の間隔dyが小さくなると、プラズマPlが干渉し、プラズマPlの強度が低下する。すなわち、プラズマ密度(荷電粒子密度)が減少し、塵埃への帯電効率が減少し、集塵性能が低下する。
このため、板状電極111x、111の密度を増加しても、電気集塵機10x、10の集塵性能は向上しなくなる。
【0049】
このプラズマPlの強度低下は、プラズマPlの発光強度からも裏付けることができる。すなわち、板状電極111x、111間の間隔dyがある程度小さくなると、プラズマPlの発光強度が小さくなる。
【0050】
ここで、
図3C,
図4Cに示すように、板状電極111x、111では、プラズマPlの強度低下の度合いが大きく異なる。間隔dyを小さくしたとき、板状電極111xではプラズマPlの強度が大きく低下するが、板状電極111ではプラズマPlの強度はさほど低下しない。
このように、本実施形態で、プラズマ干渉を抑制可能であるのは、プラズマ分布の方向性に起因すると考えられる。
【0051】
比較例、および実施形態いずれにおいても、プラズマPlは、板状電極111x、111の先端から発生し、この先端を囲み、対向電極12に向かって、伸びたような分布となる。
さらに、プラズマPlは、板状電極111x、111から離れる方向に向いている。板状電極111x、111自体は同電位なので、板状電極111x、111の面上では電界は集中せず、放電が発生し難いためである。
【0052】
本実施形態では、板状突起部112の先端が対向電極12の方を向いている(対向する)。このため、板状突起部112から生じるプラズマPlは、対向電極12の方向(X軸方向)へ伸びている。この結果、板状突起部112を近づけたときに、プラズマPlの重なりが比較的小さく、その強度低下が小さい(プラズマ干渉の抑制)。
【0053】
比較例では、板状突起部112xの先端は対向電極12と対向してはいない。このため、板状突起部112xから生じるプラズマPlは、対向電極12の方向(X軸方向)から傾いた方向に伸びている(Y軸方向に傾く)。この結果、板状突起部112xを近づけたときに、プラズマPlの重なりが大きく、その強度が大きく低下する。
【0054】
比較例において、プラズマ強度の低下を防止するには、印加電圧Vaが6kV、板状突起部112xと対向電極12間の距離Gが10mm程度の場合、板状突起部112xの先端間の間隔dyを50mm程度以上にすることが必要であった。すなわち、比較例では、1つの板状電極111x(上下一対の板状突起部112x)を追加する毎に、電気集塵機10xの高さ(Y方向大きさ)が、少なくとも50mm以上(正確には、50mm+板状電極111の長さL×2)増加する。
【0055】
実施形態では、板状突起部112の間隔dyを例えば、2mm程度まで小さくしても、プラズマ強度を概ね維持できる。これにより、例えば、10枚(n=10)の板状電極111を用い、高さ18mm(=dy*(n−1)=2*9)程度のコンパクトな電気集塵機10を作成できる。すなわち、比較例(間隔dyが50mm程度で、2つの板状突起部112xの追加)と比べて、半分以下のスペースで5倍以上の個数の板状突起部112を配置できる。
【0056】
板状突起部112の高密度化によって、通風抵抗が増大し、板状突起部112当たりの集塵性能が低下する可能性はある。しかしながら、多くの場合、板状電極111の板厚は、比較的薄いことが想定される(例えば、1mm以内)。このため、板状突起部112を高密度化しても、通風抵抗はそれほどには増大しないと考えられる。したがって、比較例に対して、実施形態では、十分な集塵性能の向上が可能である。
【0057】
図5は、板状電極111の間隔dy、dxと、プラズマ強度PP(荷電粒子密度)の関係を表すグラフである。
グラフの横軸は板状電極111の間隔dy、dx、縦軸はプラズマ強度PP(荷電粒子密度)である。プラズマ強度PPは、規格化されたプラズマの強度であり、放電電流から導出した。放電電流は荷電粒子の流れであり、同じ測定回路を用いれば電流の増加とプラズマの生成量はほぼ対応するからである。
【0058】
グラフG1は、YZ平面に平行な板状電極111をY方向に間隔dyで対向配置した場合に対応する(
図6参照)。
グラフG2は、YZ平面に平行な板状電極111をX方向に間隔dxで並列配置した場合に対応する(
図7参照)。
グラフG3は、XZ平面に平行な板状電極111をY方向に間隔dyで並列配置した場合に対応する(
図8参照)。
【0059】
グラフG1では、間隔dyを小さくしたとき、プラズマ強度PPが大きく低下する。一方、グラフG3では、間隔dyを小さくしたとき、プラズマ強度PPはさほど低下せず、コンパクト化に適している。
なお、グラフG2では、間隔dxの大小と関係なく、プラズマ強度PPは小さく、対向電極12から遠い方の板状電極111が実質的に放電に寄与していないと考えられる。
【0060】
B.帯電塵埃Ptiの捕集効率向上
既述のように、帯電塵埃Ptiは、放電電極11,対向電極12間に形成される電界により、対向電極12に引き付けられ、捕集される。この電界は、塵埃Ptの捕集に寄与することから、捕集電界と呼ばれる。捕集効率の向上には、捕集電界を制御することが重要である。
【0061】
図9は、放電電極11,対向電極12間での電位分布および帯電塵埃Ptiの軌跡を表す図である。ここでは、放電電極11,対向電極12間にー6kV(−6000V)の電圧を印加したときのコンピュータシミュレーション(数値計算)の結果を表している。
【0062】
図9内の濃淡は、電位の大きさ[V]に対応する。電位は、放電電極11から対向電極12に近づくにつれて、−6000Vから0Vまで、変化する。濃淡の境界が電位の等高線であり、この等高線の垂直方向に電界Eが形成される。
【0063】
電界Eの向きは、基本的にはX軸方向であるが、板状突起部112の先端に電界Eが集中することから、板状突起部112の近傍でZ軸方向の成分を有する。
このため、帯電塵埃Ptiは、X軸方向(対向電極12に向かう方向)に移動しつつ、電界のZ軸方向成分により、Z軸正負の方向へも移動する。帯電塵埃Ptiは、対向電極12(板状体121の側面および対向面122)と衝突して捕集される。捕集されなかった帯電塵埃Ptiは、板状体121間(流路FP)を通過して、電気集塵機10から排出される。
【0064】
仮に電界Eの方向がX軸方向のみとすると、帯電塵埃PtiにはX軸方向のみの力が加わり、板状体121間(流路FP)を通過し易くなる。すなわち、電界EがZ軸方向成分(横電界と呼ぶ)を有することが帯電塵埃Ptiの捕集効率を向上する上で重要である。
【0065】
(1)板状電極111(板状突起部112)と板状体121の板厚方向の関係
板状突起部112(板状電極111)は、横電界を捕集に有効に活用できるような幾何学的配置であることが好ましい。
本実施形態では、板状突起部112、板状体121それぞれが、方向性(板厚方向)を有する。この場合、実施形態のように、板状突起部112と板状体121の板厚方向を互いに略垂直にすることが好ましい。この場合、
図9に示すように、Z軸方向(板状突起部112の幅方向)の横電界を利用して、帯電塵埃Ptiの捕集効率を向上できる。
なお、対向電極12と板状体121の板厚方向の角度には、ある程度の幅(例えば、90°±10°)が認められる。
【0066】
(2)板状突起部112先端のY軸方向配置
既述のように、本実施形態では、異なる板状電極111上の板状突起部112の先端は、Y軸方向(板状突起部112の板厚方向)に配置される(位相が揃っている)。この配置であれば、複数の板状突起部112により形成される横電界を有効に活用できる。仮に、板状突起部112の先端がY軸方向(その板厚方向)に配置されないと、それぞれの板状突起部112からの横電界が打ち消し合い、有効に利用されない可能性がある。
【0067】
(変形例)
以下、電気集塵機10の変形例について述べる。
(1)板状突起部112の形状
図10A〜
図10Dは、板状電極111(放電電極11)の形状の一例を表す平面図である。
【0068】
実施形態では、板状突起部112は、二等辺三角形(正三角形含む)のような左右(Z軸方向)に対称な形状をしている(
図10A参照)。
【0069】
板状突起部112は、非対称な三角形でもよい(
図10B参照)。このとき、板状突起部112は斜め方向を向いている。このように、板状突起部112の向きがX軸方向からある程度傾いていても良い。
【0070】
板状突起部112は、複数の突起(先端が複数に枝分かれ)を有しても良い(
図10C参照)。このとき、板状突起部112は左右(Z軸方向)に非対称でも良い。
板状突起部112は、針金のような線や、細い棒形状でもよい(
図10D参照)。
【0071】
図11、
図13は、板状電極111の一例を示す斜視図である。
図12A、
図12Bは、板状電極111の一例を示す斜視図および側面図である。
【0072】
板状突起部112は、折り曲げられていても良い(
図11参照)。
接続部113に、異なる形状の板状突起部112a、112bが接続されていても良い(
図12A,
図12B参照)。
ここでは、板状突起部112a、112bの向きをY軸の正方向、負方向に変化させている。このとき、板状突起部112a、112bは、接続部113とは同一平面上には配置されず、板状電極111全体としては立体形状を有することになる。
【0073】
接続部113をYZ平面上に配置し、板状突起部112を折り曲げても良い(
図13参照)。
ここでは、板状突起部112を折り曲げることで、X軸方向(対向電極12)に向けている。これは、比較例の板状電極111xの板状突起部112xを折り曲げたのと同様の形状である。
【0074】
このように、板状突起部112(あるいはその先端のみ)を対向電極12の方向を向かせることでも、プラズマPlの向きを対向電極12の方向(X軸方向)として、板状電極111の高密度時のプラズマ干渉を抑制できる。
【0075】
図14、
図15は、放電電極11の一例を示す斜視図である。
導電性(例えば、金属)の接続部材114で、複数の板状電極111をY軸方向に機械的、電気的に接続し、一体の放電電極11とすることができる。
【0076】
導電性の板材に切り込みを入れて曲げることで、接続部115で接続された複数の板状突起部112を形成しても良い(
図15参照)。このとき、気流AFは開口116を通過できる。
なお、放電電極11の通風抵抗を下げるために、接続部115の面積を低減することが好ましい(例えば、開口を設ける)。
【0077】
以下、放電電極11の製造方法について説明する。
図10A〜
図10Dに示す板状電極111は、一枚の導体板(金属板)からの打ち抜き加工、あるいはレーザ加工により作成できる。このうち、打ち抜き加工が、コストが安く、大量生産に向いている。
【0078】
図11,
図12A,
図12B,
図13、
図14に示す板状電極111(放電電極11)では、打ち抜き加工後に、板状突起部112またはその一部を折り曲げれば良い。
図15に示す放電電極11は、既述のように、導電性の板材Mに切り込みCLを入れて曲げることで作成できる(
図16参照)。
【0079】
既述のように、全ての板状突起部112から均等な強さのプラズマを生成するためには、複数の板状突起部112を同電位にすることが好ましい。このために、次のような手段を採用できる。
・複数の板状電極111を導線で接続して、1つの直流電源13から電圧を印加する(
図17A参照)。
・複数の板状電極111に複数の電源13a〜13cから同一の電圧を印加する(
図17B参照)。
・複数の板状電極111の側面または背面を導電性の接続部材(例えば、金属フレーム)114で接続する(
図18A、
図18B参照)。
・放電電極11全体を導電性の板材から一括で作成する(
図14〜
図16参照)。
なお、放電電極11の強度向上のため、必要に応じて、絶縁性のフレームを追加しても良い。
【0080】
(2)対向電極12の形状
図19A〜
図19Cは、対向電極12の一例を表す斜視図である。
実施形態のように、対向電極12をフィン状とすることができる(
図19A参照)。すなわち、板状体121を並べて対向電極12とすることができる。
【0081】
対向電極12は、網目状(
図19B参照)、ハニカム状(
図19C参照)でも良い。すなわち、四角柱や六角柱の貫通孔(流路FP)を有するブロックを対向電極12とする。貫通孔の大きさや密度は、通風抵抗との関係で、決定できる。
【0082】
対向電極12を網目状やハニカム状にした場合、放電電極11の板状電極111の板厚方向(積層方向)との関係を問題とする余地が低減する(
図20参照)。すなわち、流路FPが一軸方向(X軸方向)を向くことから、板状電極111の積層方向(板厚方向)が変化しても、流路FPとの角度関係は変化しない。
【0083】
これに対して、
図19Aのようなフィン形状の対向電極12では、流路FPがY軸方向にも広がっているので、板状電極111の積層方向(板厚方向)が変化すると、流路FPとの角度関係が変化する。既述のように、板状電極111の積層方向(板厚方向)と、板状体121の積層方向(板厚方向)が直交することが、捕集効率向上の観点から好ましい。
【0084】
(空気調和機20)
電気集塵機10は、空気調和機(エアコン)に組み込むことができる。
図21は、実施形態に係る空気調和機20の構成を示す模式図である。
空気調和機20は、室内ユニット21,室外ユニット22を有する。
室内ユニット21,室外ユニット22は、接続部23で接続され、その間を冷媒が循環する。すなわち、冷媒を用いて、室内ユニット21から室外ユニット22に(冷房)、あるいはその逆方向に(暖房)、熱が移動する。
【0085】
室内ユニット21は、フィルタ24,放電電極11,熱交換器25、隔壁26,ファン27を有し、気流AFが流入、流出する。このうち、放電電極11,熱交換器25の組み合わせは、図示しない直流電源により直流電圧を印加することで、電気集塵機として機能する。
【0086】
フィルタ24は、気流AF中の比較的大きなゴミ(塵埃)をろ過、除去する。
放電電極11は、気流AF中の比較的小さな塵埃を帯電させるものであり、実施形態および変形例の放電電極11を利用できる。
【0087】
熱交換器25は、気流AFと冷媒間での熱交換と共に、帯電した塵埃を捕捉する。すなわち、熱交換器25は、電気集塵機10の対向電極12としても機能する。
【0088】
熱交換器25は、複数の板状体121および配管28を有する。既述のように複数の板状体121が対向してZ方向に配置される。これらの板状体121は電気伝導性および熱導電性の良好な材料(例えば、金属)で形成され、配管28に接続されている。このため、板状体121は、配管28中の冷媒と熱交換を行う。
【0089】
放電電極11と熱交換器25間に直流高電圧が印加される。この結果、放電電極11からプラズマが発生して塵埃が帯電し、熱交換器25内の板状体121で捕捉される。
【0090】
隔壁26は、熱交換器25から流出する気流AFの方向を変えるためのものである。隔壁26で区切られた空間内にファン27が設置され、フィルタ24から熱交換器25へと向かう気流AFが形成される。
以上のように、空気調和機20は、空調機能と共に、集塵機能をも有する。
【0091】
なお、空気調和機20は、室内への設置の関係から、Y軸方向よりもZ軸方向に長い横長の形状を有することがある。この場合、放電電極11および熱交換器25も、横長となり、Y軸方向の長さが比較的短くなる(高さが低い)。
【0092】
このとき、放電電極11での板状電極111の積層方向(板厚方向)をY軸方向とすると、板状電極111の個数(積層数)が比較的少なくて済む。すなわち、比較的少ない積層層で、板状突起部112の密度を確保でき、放電電極11の製造が容易となる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。