特許第6671910号(P6671910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671910
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】静電容量式タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20200316BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G06F3/041 640
   G06F3/044 128
   G06F3/041 470
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-196580(P2015-196580)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-68780(P2017-68780A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】鴻野 勝正
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−166865(JP,A)
【文献】 特開2011−154950(JP,A)
【文献】 特開2014−203205(JP,A)
【文献】 特開2014−219925(JP,A)
【文献】 特開2014−142785(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/043325(WO,A1)
【文献】 特開2011−102457(JP,A)
【文献】 特開2011−086114(JP,A)
【文献】 再公表特許第2013/129092(JP,A1)
【文献】 国際公開第2014/057171(WO,A1)
【文献】 特開2013−205991(JP,A)
【文献】 特開2012−094079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03、3/041−3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み可能且つ押圧に対して厚みが変化可能なシート状の絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に配列形成された複数の第1電極と、
一方向に配列された前記第1電極同士を電気的に接続する第1連結部と、
前記第1電極に対して非重畳状態で配列された複数の第2電極と、
前記一方向とは交差する方向に配列された前記第2電極同士を電気的に接続する第2連結部と、を有し、
前記第2電極が前記絶縁性基材に配列形成されるとともに、
前記絶縁性基材に一対の絶縁性連結基材が対向配置され、
一方の絶縁性連結基材に形成された前記第1連結部を介して前記第1電極同士が電気的に接続され、
他方の絶縁性連結基材に形成された前記第2連結部を介して前記第2電極同士が電気的に接続され、
前記第1連結部により接続された第1電極群と前記第2連結部により接続された第2電極群がマトリクス状に配列されたセンサシートと、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成される静電容量の変化から接触位置を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量が減少方向へ変化する場合にのみ、接触位置を算出するように構成されている静電容量式タッチセンサ。
【請求項2】
前記絶縁性基材に配列形成された第1電極または第2電極の何れか一方と、前記絶縁性連結基材に形成された第1連結部または第2連結部の何れか一方が、上下に縫い付けた導電糸により電気的に接続されている請求項記載の静電容量式タッチセンサ。
【請求項3】
前記絶縁性基材が編地または織地を含む布帛で構成され、前記第1及び第2電極が、前記編地の地組織に編み込まれる、若しくは前記織地の地組織に織り込まれた導電性繊維で構成されている、または前記布帛に刺繍された導電性繊維で構成されている、または前記布帛に塗布された導電性塗料で構成されている請求項1または記載の静電容量式タッチセンサ。
【請求項4】
前記絶縁性基材が不織布で構成され、前記第1及び第2電極が前記不織布に塗布された導電性塗料で構成されている、または前記不織布に刺繍された導電性繊維で構成されている請求項1からの何れかに記載の静電容量式タッチセンサ。
【請求項5】
前記絶縁性基材がエラストマーシートで構成され、前記第1及び第2電極が前記エラストマーシートに塗布された導電性塗料で構成されている請求項1からの何れかに記載の静電容量式タッチセンサ。
【請求項6】
静電シールド層が、裏面に配置されている請求項1からの何れかに記載の静電容量式タッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器のように携帯して必要なときに取り出して使うのではなく、直接身に着けて持ち歩くことのできるウェアラブル端末が注目されている。ウェアラブル端末としては、腕時計型やメガネ型以外に、センサを埋め込んだ服等も検討されている。そうした中、球面や自由曲面への適応が可能な織物にセンサ機能を持たせたタッチパネルが提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数の導電糸を並べた導電糸域と複数の絶縁糸を並べた絶縁糸域とが交互に並べられた縦糸と、絶縁糸で構成される横糸とで織られた二枚の導電布を各縦糸が交差する方向に重畳され、パイル糸で結びつけられた導電性織物で構成されたタッチセンサが提案されている。
【0004】
当該タッチセンサは、導電布間に加えられる圧力によって生じる静電容量の変化を検知することにより押圧位置を認識するように構成されている。
【0005】
特許文献2には、縦方向に延びる複数本の導電糸を横方向に並べた導電縦糸域と、縦方向に延びる複数本の絶縁糸を横方向に並べた絶縁縦糸域とが、横方向に交互に並べられた縦糸と、横方向に延びる複数本の導電糸を縦方向に並べた導電横糸域と、横方向に延びる複数本の絶縁糸を縦方向に並べた絶縁横糸域とが、縦方向に交互に並べられた横糸とを備え、導電縦糸域と導電横糸域との交差位置で、縦方向の導電糸と横方向の導電糸とが織り合わされて形成されるセルを、タッチセンサとして機能させる導電性織物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−102457号公報
【特許文献2】特開2011−86114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1,2に開示されたタッチセンサは、押圧により各導電布の厚みが変化し、導電糸同士間の距離が短くなる結果、静電容量が大きくなる方向に変化する現象を利用したものである。
【0008】
しかし、このようなタッチセンサをオンデマンドで操作可能な、例えばウェアラブルな入力デバイスとして採用すると、着用姿勢や動作によっては意図しない圧力が作用して誤検出する虞があった。そのため、押圧ではなく滑らかなタッチで多点位置検知が可能なタッチセンサが望まれていた。
【0009】
この様な滑らかなタッチで多点位置検知が可能なタッチセンサとして、スマートフォン等の平坦なガラス面上に形成され、電極間の静電容量の変化を利用したタッチセンサが開発されているが、自由曲面に沿い、折り畳み可能なタッチセンサは未だ実現されていなかった。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、自由曲面に沿うように配置可能で且つ折り畳み可能なシート状のタッチセンサで、滑らかなタッチで多点位置検知が可能な静電容量式タッチセンサを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による静電容量式タッチセンサの第一の特徴構成は、折り畳み可能且つ押圧に対して厚みが変化可能なシート状の絶縁性基材と、前記絶縁性基材に配列形成された複数の第1電極と、一方向に配列された前記第1電極同士を電気的に接続する第1連結部と、前記第1電極に対して非重畳状態で配列された複数の第2電極と、前記一方向とは交差する方向に配列された前記第2電極同士を電気的に接続する第2連結部と、を有し、前記第2電極が前記絶縁性基材に配列形成されるとともに、前記絶縁性基材に一対の絶縁性連結基材が対向配置され、一方の絶縁性連結基材に形成された前記第1連結部を介して前記第1電極同士が電気的に接続され、他方の絶縁性連結基材に形成された前記第2連結部を介して前記第2電極同士が電気的に接続され、前記第1連結部により接続された第1電極群と前記第2連結部により接続された第2電極群がマトリクス状に配列されたセンサシートと、前記第1電極と前記第2電極との間に形成される静電容量の変化から接触位置を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量が減少方向へ変化する場合にのみ、接触位置を算出するように構成されている点にある。
【0012】
第1電極と第2電極との間に形成される電磁界の変化に基づいて接触位置が検知される。即ち、第1電極と第2電極との間に手指を接近させることによって引き起こされる電極間の静電容量の減少に基づいて接触位置が検知される。仮に当該タッチセンサの何れかの部位が押圧されて厚みが変化した場合でも、第1電極と第2電極が非重畳状態で配列されているので第1電極と第2電極との間の静電容量が増加することは殆どなく、意図する/しないに関わらず圧力が付与された位置をタッチ位置と誤検出するようなことなく、滑らかなタッチで多点位置検知が可能となる。しかも、押圧されて変化する厚みに応じて静電容量が増加しても、制御部によって静電容量が減少方向へ変化する場合にのみ接触位置が算出されるので、押圧に伴って生じる静電容量の増加に基づく誤検出を回避することができる。
【0013】
そして、第1電極と第2電極とが同じ絶縁性基材に配列形成されるため、夫々の電極を異なる基材に形成する場合に比べて第1電極と第2電極との相対位置のばらつき、つまり電極間の静電容量のばらつきが小さくなり、静電容量の変化を精度よく検知できるようになる。このような構成を採用すれば、例えば、夫々の絶縁性連結基材に第1連結部または第2連結部のパターン幅を狭くなるように形成することにより、第1電極または第1連結部と第2連結部とが重畳する面積、或いは第2電極または第2連結部と第1連結部とが重畳する面積を小さくして静電容量への影響を抑制することができる。つまり、第1電極と第2電極との間の寄生容量を小さくできる。
【0014】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記絶縁性基材に配列形成された第1電極または第2電極の何れか一方と、前記絶縁性連結基材に形成された第1連結部または第2連結部の何れか一方が、上下に縫い付けた導電糸により電気的に接続されている点にある。
【0015】
第1電極または第2電極と対応する第1連結部または第2連結部が導電糸により物理的にしっかりと接続され、低抵抗で電気的にも確実に接続される。
【0016】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記絶縁性基材が編地または織地を含む布帛で構成され、前記第1及び第2電極が、前記編地の地組織に編み込まれる、若しくは前記織地の地組織に織り込まれた導電性繊維で構成されている、または前記布帛に刺繍された導電性繊維で構成されている、または前記布帛に塗布された導電性塗料で構成されている点にある。
【0017】
編地または織地を含む布帛であれば、自由曲面に沿うように配置可能で且つ折り畳み可能なシート状の絶縁性基材が構成でき、しかも絶縁糸で構成される地組織に各電極を極めて容易に編成できるようになる。
【0018】
同第四の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記絶縁性基材が不織布で構成され、前記第1及び第2電極が前記不織布に塗布された導電性塗料で構成されている、または前記不織布に刺繍された導電性繊維で構成されている点にある。
【0019】
絶縁性基材に不織布を用いる場合には、不織布に塗布された導電性塗料、または刺繍された導電性繊維により任意の形状の電極パターンを容易に形成できるようになる。
【0020】
同第五の特徴構成は、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記絶縁性基材がエラストマーシートで構成され、前記第1及び第2電極が前記エラストマーシートに塗布された導電性塗料で構成されている点にある。
【0021】
絶縁性基材にエラストマーシートを用いる場合にも、エラストマーシートに塗布された導電性塗料により任意の形状の電極パターンを容易に形成できるようになる。
【0022】
同第六の特徴構成は、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、静電シールド層が、裏面に配置されている点にある。
【0023】
外部からの静電ノイズや電磁ノイズの影響を低減させ、正確に接触位置を検知できるタッチセンサを実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、自由曲面に沿うように配置可能で且つ折り畳み可能なシート状のタッチセンサで、滑らかなタッチで多点位置検知が可能な静電容量式タッチセンサを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は本発明によるタッチセンサの分解斜視図、(b)は同断面図、(c)は同平面図
図2】(a)は本発明によるタッチセンサで第1電極を分割した実施例の平面図、(b)は同第1電極と第2電極とを千鳥格子状に配列した実施例の平面図、(c)は同第1電極と第2電極とをダイヤ柄状に配列した実施例の平面図
図3】(a)は本発明によるタッチセンサで絶縁性基材が一対の絶縁性連結基材でサンドイッチされた実施例の構成図、(b)は同断面図、(c)は同平面図
図4】(a)は本発明によるタッチセンサで絶縁層のない実施例の構成図、(b)は同断面図
図5】(a)は本発明によるタッチセンサで第1電極と第2電極とを単一層の表裏に夫々形成した実施例の断面図、(b)は同表面から見た平面図、(c)は同裏面から見た平面図
図6】(a)は本発明によるタッチセンサで第1電極と第2電極とが別々の層に形成されている実施例の構成図、(b)は同断面図
図7】(a)は図5(a)で絶縁層のない実施例の構成図、(b)は同断面図
図8】は本発明による接触位置検知システムを備えたタッチセンサの構成図
図9図7の接触位置検知システムの動作を示したフロー図
図10】本発明によるタッチセンサをウェアラブル端末として使用した例の概略図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による静電容量式タッチセンサについて、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図8に示すように、本発明による静電容量式タッチセンサ1は、センサシート1aと、制御部1bを含む接触位置検知システム1cとを備えている。センサシート1aは、自由曲面に沿うように配置可能で且つ折り畳み可能なシート状で、第1連結部4により接続された複数の第1電極3で構成される第1電極群20と、第2連結部6により接続された複数の第2電極5で構成される第2電極群21とがマトリクス状に配列されている。センサシート1aに滑らかなタッチで手指を接触させると、接触位置近傍で電極間の静電容量に変化が生じるが、当該静電容量が減少する方向の変化を示した場合にのみ、制御部1bは、接触位置を算出するように構成されている。尚、制御部1bの詳細は後述する。
【0028】
図1(a)に示すように、センサシート1aは、絶縁性基材2と、絶縁層7と、絶縁性連結基材8と、静電シールド層10とが積層されて構成されている。
【0029】
絶縁性基材2は、球面や自由曲面に沿うように配置可能で且つ折り畳み可能なシート状であり、例えば、編地または織地を含む布帛や、不織布、エラストマーシート等で構成されている。そのため、押圧に対して厚みが変化可能なものになっている。
実施例では、天竺編とも呼ばれる平編で編成された編地を用いている。尚、編地は、平編以外のゴム編、パール編等の緯編や、シングル・デンビー編等の経編で編成してもよい。素材としては、植物繊維や、動物繊維、化学繊維、合成繊維等を用いることができるが、実施例では、ポリエステル糸を使用している。
また、織地を使用する場合は、織り方としては、平織、綾織、朱子織等を用い、織地の素材には、編地と同様に、植物繊維や、動物繊維、化学繊維、合成繊維等を用いることができる。
また、不織布は、繊維を接着または絡み合わせることで布にしたものであり、素材としては、上記と同様に、各種繊維を用いることができる。
また、エラストマーシートは、ゴム状弾性を示す樹脂シートであり、スチレン系、塩化ビニル系、オレフィン系、ウレタン系などの素材で形成することができる。
【0030】
絶縁性基材2には、それぞれ同一サイズの矩形形状の複数の第1電極3と第2電極5が配列されている。
第1電極3は、縦方向に所定間隔で配列され、見かけ上は矩形形状に縦方向に長い矩形状となるように、それぞれの第1電極3同士が同一横幅の第1連結部4で連結され、さらに、第2電極5を挟んで横方向に等ピッチで配列されている。
第1連結部4の横幅は、後述の第2連結部6との対向面積が狭くなるように、第1電極3の横幅よりも狭く形成されていてもよい。
第2電極5は、横幅が第1電極3と同じで縦幅が第1電極3より短い矩形状で、隣接する第1電極3間の中央部に縦方向に等ピッチで配列され、且つ第1電極3を挟んで横方向にも等ピッチで配列されている。
そして、第1電極3と第2電極5とは平面視で重畳しないように配列されている。
【0031】
静電容量式タッチパネルは、第1電極3と第2電極5との間に形成される静電容量の変化により、接触位置を検知する。そのため、第1電極3及び第2電極5のサイズは大きい方が、静電容量が大きくなり、検知感度が向上するので好ましいが、一方、サイズが大きくなりすぎると、接触位置の分解能が低下する。よって、検知感度と接触位置の分解能とのバランスを考慮して、各電極のピッチやサイズ等を設定する。好ましくは、第1電極3及び第2電極5の電極ピッチは3〜10mmで形成する。
また、第1電極3と第2電極5間の距離(平面視)は0.5〜2mm以上とするのが好ましい。
【0032】
上述の電極配列により、隣接する第1電極3と第2電極5との間の静電容量のばらつきは小さくなる。静電容量式タッチパネルは、手指が接近し接触することによる静電容量の変化を捉えて、接触位置を検知している。そのため、初期状態の静電容量のばらつきが小さいことにより、接触位置の検知確度が向上する。
【0033】
絶縁性基材2が編地または織地を含む布帛で構成されている場合には、第1電極3と第2電極5は、編地の地組織に編み込まれ、または織地の地組織に織り込まれた導電性繊維で構成される。導電性繊維は、中に導電性の高い金属や黒鉛を均一に分散させた合成繊維や、金属を繊維化し、或いは表面を金属で被覆した繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した繊維等が使用でき、できるだけ導電性の高いものが好ましい。また、導電性繊維に含まれる金属や導電性物質は、手指等が接触することによる腐食が起きにくいものを用いるのが好ましい。さらに、電極のシート抵抗を下げるため、導電性繊維が高密度で、しかも導電性繊維同士が密に接触し合うように編み込まれ、または織り込まれる編み方、または織り方を採用するのが好ましい。尚、実施例では、導電性繊維は、銀メッキナイロン(34本の銀メッキフィラメントが束になった糸で、総繊度70デニールのもの)を使用し、天竺編により絶縁性基材2としての編地に編成されている。
【0034】
上記のように、絶縁性基材2となる布帛の組織構造に導電性繊維を含ませる構造以外に、ミシン等を用いて布帛に導電性繊維を刺繍してもよい。また導電性繊維を用いるのではなく、導電性塗料を布帛に任意のパターンで塗布してもよい。導電性塗料としては、塗布可能で十分低い抵抗を発現できるものであれば特に限定されないが、例えば銀微粒子とバインダとを含む銀ペーストなどを挙げることができる。またパターン状に形成する方法としては、例えばスクリーン印刷やインクジェット印刷などの公知の塗布方法を用いることができる。また導電性塗料として伸縮性が高い材料を用いることで、布帛が伸びたり、折れ曲がったりした場合にも断線し難く、好ましい。
【0035】
尚、絶縁性基材2が不織布で構成されている場合には、第1電極3と第2電極5は、不織布に塗布された導電性塗料で構成される。
絶縁性基材2がエラストマーシートで構成されている場合には、第1電極3と第2電極5は、エラストマーシートに塗布された導電性塗料で構成してもよく、また、エラストマーシートに導電性物質を練り込んで構成してもよい。また導電性塗料としては、伸縮性が高い材料であることが好ましい。
【0036】
絶縁性連結基材8は、実施例では、絶縁性基材2と同様の天竺編で編成された編地を用いている。尚、絶縁性連結基材8は、絶縁性基材2と必ずしも同じである必要はない。例えば、絶縁性連結基材8に、ゴム編で編成された編地や、綾織の織地、不織布等を用いてもよく、また、素材も絶縁性基材2に用いたものと異なるものを用いてもよい。
【0037】
絶縁性連結基材8には、複数の第2連結部6が配列されている。第2連結部6は、上述の導電性繊維を用いて、天竺編により絶縁性連結基材8としての編地に編成されている。
【0038】
第2連結部6は、横方向の直線状で、縦方向に配列された第2電極5のピッチと同じピッチで、縦方向に等ピッチで配列されている。そして、第2連結部6は、平面視で第2電極5と重畳するように配列され、後述するように、第1電極3を挟んで横方向に配列された第2電極5同士を電気的に接続する。
【0039】
絶縁層7が、対向配置された絶縁性基材2と絶縁性連結基材8との間に挟まれて配置されている。絶縁層7は、絶縁性基材2に配列された第1電極3と絶縁性連結基材8に配列された第2連結部6とが導通することを防止することを第1の目的として、また、第1電極3と第2連結部6とが交差する部分が形成する静電容量を下げることを第2の目的として配置されている。そのため、絶縁層7は、絶縁耐圧が大きく且つ誘電率が小さい材料で、できるだけ厚いものを用いるのが好ましい。また、後述するように、押圧による静電容量の増加を低減するため、絶縁層7は、例えば、高密度で編まれた圧縮されにくい編地を用いるのが好ましい。よって、絶縁層7は、絶縁性基材2や絶縁性連結基材8と同じものであっても構わないが、それらに限るものではない。
【0040】
尚、上述の第1電極3と第2連結部6とが交差する部分が形成する静電容量が大きすぎると、手指等が接近し接触することで生じる第1電極3と第2電極5間の静電容量の変化は相対的に小さくなり、検知感度が下がってしまう。また、押圧により、絶縁層7が圧縮され、第1電極3と第2連結部6との間の距離が短くなると、第1電極3と第2連結部6とが交差する部分が形成する静電容量は増加する。そのため、僅かな押圧であっても静電容量の増加により、手指等の接触による静電容量の低下分が相殺され、検知感度の低下や誤検知の虞がある。よって、第1電極3と第2連結部6との間の静電容量はできるだけ下げておく必要がある。そのため第2連結部6の幅は細い方が好ましいが、抵抗値との兼ね合いで幅1mm以下程度が好ましい。
【0041】
静電シールド層10が、絶縁性連結基材8の下の裏面に配置されている。静電シールド層10は、例えば、導電性繊維が編地の裏面側の全面に編み込まれた編地を用いることができる。全面に編み込まれた導電性繊維は、電磁波シールドを構成し、外部からの静電気ノイズの影響を低減する。それにより、隣接する第1電極3と第2電極5との間の静電容量の測定精度の低下を軽減でき、もって接触位置の検出確度の向上が図れる。
【0042】
図1(b)に示すように、第2電極5と、平面視で第2電極5と重畳するように配列された第2連結部6とは、上下間の連結部6aにより、物理的及び電気的に接続されている。そのため、第1電極3を挟んで横方向に配列された第2電極5同士は、上下間の連結部6a及び第2連結部6を介して電気的に接続される。
【0043】
第2連結部6は、低抵抗であることが望ましいが、第1電極3と第2連結部6とが交差する部分が形成する静電容量を増加させるようなことがあってはならない。そのため、第2連結部6は、導電性繊維を高密度でしかも平面視でできるだけ細く編み込む編み方を採用して形成するのが好ましい。
【0044】
上下間の連結部6aは、平面視で第2電極5と第2連結部6とが重畳する部分に、導電性繊維を用いた太めのミシン糸を上下から縫い付けて形成される。このため、上下間の連結部6aは、物理的にしっかりと接続されたものとなり、しかも低抵抗となる。
【0045】
図1(c)に示すように、第1電極群20と、第2連結部6により接続された第2電極群21とがマトリクス状に配列されてセンサシート1aが形成される。そして、縦方向に配列された第1電極3は、夫々引出配線11を介して、カラムコネクタ12に接続されている。また、第2連結部6を介して接続され横方向に配列された第2電極5は、夫々引出配線11としての延長された第2連結部6を介して、ロウコネクタ13に接続されている。
【0046】
以下では、別実施形態を示し、上述の実施形態との相違点を詳説する。
図2(a)に示すように、第1電極3は、図1(c)に示したような縦方向に長い矩形状に替えて、第2電極5と同様に、縦方向に配列された複数の矩形状に分割されている。そして、第1電極3は、隣接する第2電極5間の中央部に、縦方向に配列された第2電極5のピッチと同じピッチで、縦方向に等ピッチで配列され、且つ第2電極5を挟んで横方向にも、横方向に配列された第2電極5のピッチと同じピッチで、等ピッチで配列されている。
【0047】
さらに、第1電極3と第2電極5とは、横方向に一直線上に交互に配列されるようになっている。
【0048】
縦方向に配列された第1電極3同士は、第1連結部4により電気的に接続されている。そして、第1連結部4により接続された第1電極群20と、第2連結部6により接続された第2電極群21とがマトリクス状に配列されてセンサシート1aが形成されている。
第1連結部4を介して接続され縦方向に配列された第1電極3は、夫々引出配線11としての延長された第1連結部4を介して、カラムコネクタ12に接続されている。
【0049】
図2(b)に示す実施形態は、図2(a)に示した実施形態において、第2電極5を全体に縦方向に半ピッチだけずらしたものである。即ち、第1電極3と第2電極5とは千鳥格子状に配列されている。こうして、センサシート1aは、第1連結部4により接続された第1電極群20と、第2連結部6により接続された第2電極群21とがマトリクス状に配列されて形成される。これにより、第2連結部6は、第1電極3ではなく、第1連結部4と交差することになる。そのため、平面視で交差する部分の面積が小さくなり、寄生容量の低減が図れる。
【0050】
図2(c)に示す実施形態は、図2(b)に示した実施形態において、第1電極3及び第2電極5を、正方形状とし、対向する頂点が縦方向または横方向に配列するように配置したものである。即ち、第1電極3と第2電極5とはダイヤ柄状に配列されている。
【0051】
図3(a)〜(c)に示すように、絶縁性基材2には、第1電極3と第2電極5が、図2(a)に示した配列と同様の配列で形成されている。絶縁性基材2には、絶縁層7を挟んで一対の絶縁性連結基材8が対向配置されている。そして、上方の絶縁性連結基材8aには、縦方向に伸びる第1連結部4が形成されており、第1連結部4を介して縦方向に配列された第1電極3同士が電気的に接続されている。他方、下方の絶縁性連結基材8bには、横方向に伸びる第2連結部6が形成されており、第2連結部6を介して横方向に配列された第2電極5同士が電気的に接続されている。
【0052】
図4(a),(b)に示すように、絶縁性基材2及び絶縁性連結基材8は、共に両面編になっている。そして、絶縁性基材2の上面側には第1電極3及び第2電極5が形成され、また、絶縁性連結基材8においても、その上面側に第2連結部6が形成されている。絶縁性基材2の下面側は絶縁層として機能しており、そのため、絶縁性基材2と絶縁性連結基材8との間には絶縁層7を挿入する必要がない。
【0053】
図5(a)〜(c)に示すように、絶縁性基材2は多層編になっている。そして、絶縁性基材2の上面側の表面層には、第1電極3及びその引出配線11が形成され、絶縁性基材2の下面側の裏面層には、第2電極5、第2電極5同士を電気的に接続する第2連結部6、及び第2電極5の引出配線11としての第2連結部6が形成されている。そのため、絶縁性連結基材8が不要となる。また、絶縁性基材2の中間層は、絶縁層として機能するため、絶縁層7も不要となり、材料コストの削減が可能となる。そして、第1電極3等のすべてが1つの絶縁性基材2に形成されるため、第1電極3等の相互の配列精度が向上する。
【0054】
図6(a),(b)に示すように、絶縁性基材2には、第1電極3と、縦方向に配列された第1電極3同士を電気的に接続する第1連結部4が配列形成されている。第2絶縁性基材9には、第2電極5と、横方向に配列された第2電極5同士を電気的に接続する第2連結部6が配列形成されている。絶縁性基材2と第2絶縁性基材9とは対向配置され、それらの間に、絶縁層7が挿入されている。そのため、上下間の連結部の形成が不要となる。
【0055】
さらに、図7(a),(b)に示すように、絶縁性基材2と第2絶縁性基材9を、共に両面編にする。そして、絶縁性基材2の上面側に、第1電極3と、縦方向に配列された第1電極3同士を電気的に接続する第1連結部4を配列形成する。一方、第2絶縁性基材9には、下面側に、第2電極5と、横方向に配列された第2電極5同士を電気的に接続する第2連結部6を配列形成する。第2絶縁性基材9は、絶縁性基材2に沿うように対向配置されるため、絶縁性基材2の下面層と第2絶縁性基材9の上面層とが、絶縁層として機能するようになる。そのため、絶縁層7を挿入する必要がなくなる。
【0056】
図8に示すように、タッチセンサ1は、第1電極群20と第2連結部6により接続された第2電極群21とがマトリクス状に配列されたセンサシート1aと、接触位置検知システム1cとを備えている。接触位置検知システム1cは、マルチプレクサ22、信号検出部23及び信号処理部24を含む制御部1bの他、発振器などの基準信号発生部25や出力部26等を備えている。尚、第1電極群20には、第1連結部4により接続された第1電極群20と、第1連結部4によらずに第1電極3同士が直接接続された第1電極群20とが含まれる。
基準信号発生部25は、第1電極3に印加する周期信号を発生させ出力する。
信号処理部24は、例えば、マルチプレクサ22にタイミング信号を送ることで、基準信号発生部25が出力した周期信号を、カラムコネクタ12を介して、横方向に配列された第1電極群20に、タイミングをずらして印加する。
信号検出部23は、第2連結部6により接続された第2電極群21が接続されたロウコネクタ13に接続されている。そして、信号検出部23は、第2電極群21が出力する信号を検出する。
信号処理部24は、信号検出部23で検出された信号とタイミング信号とに基づいて、接触位置の座標を算出する。
また、信号処理部24は、第1電極3と第2電極5との間の静電容量が減少方向へ変化する場合にのみ、手指等が触れたと判定し、接触位置の座標を算出する。
本願のセンサシートにおいては、押圧に対して厚みが変化可能なシート状の絶縁性基材を含むが、第1電極と第2電極が非重畳状態で配列されているため、非導電物でセンサシートに圧力が付与された場合に、第1電極と第2電極との間の静電容量の変化(増加)が抑えられる。そのため、手指等を接近させた場合の第1電極と第2電極との間の静電容量の変化(減少)の方が大きくなり、静電容量が減少方向へ変化する場合にのみ接触位置の座標を算出することで、意図しない圧力付与による誤検出を回避できる。
そして、信号処理部24での処理結果は、接触位置の座標データとして、出力部26から外部装置(図示せず)に出力される。
【0057】
図9には、上述の接触位置検知システム1cの動作の例をフロー図にして示している。
各第1電極3に基準信号発生部25からの周期信号を印加(掃引)し(S1)、信号検出部23は、第2電極5からの信号を検知する(S2)。これらの動作は、第1電極3の全カラムへの掃引が終了するまで続けられる(S3)。信号処理部24は、信号検出部23から出力された第2電極5からの信号から、静電容量の減少方向の変化が生じているか判定する(S4)。静電容量の減少がある場合には(S4,Y)、信号処理部24は、手指等の接触によるものと判断し、その座標位置の算出を行い(S5)、出力部26に出力する(S6)。以上は、1回のタッチ検出のフローを説明したものであるが、本処理を所定時間毎に行うことで、連続的に座標位置を検出することができる。
【0058】
図10に示すように、静電容量式タッチセンサ1は、曲げたり折り畳んだりすることができるため、ウェアラブル端末として、例えば、ベスト30や腕章31、帽子32の一部に装備することができる。また、カラムコネクタ12及びロウコネクタ13を外して接触位置検知システム1cをタッチセンサ1から取り外すことができるため、タッチセンサ1が装備されたベスト30等の洗濯等が可能である。
【0059】
上述した実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明が上述した具体例に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明による静電容量式タッチセンサは、フレキシブルなシート状のタッチセンサに軽く触れるだけで接触位置を検出することができ、また、曲げたり折り畳んだりすることも可能であるため、ウェアラブル端末に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1:タッチセンサ
1a:センサシート
1b:制御部
1c:接触位置検知システム
2:絶縁性基材
3:第1電極
4:第1連結部
5:第2電極
6:第2連結部
7:絶縁層
8:絶縁性連結基材
9:第2絶縁性基材
10:静電シールド層
20:第1電極群
21:第2電極群
22:掃引部
23:信号検出部
24:信号処理部
25:発振器
26:出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10