【実施例】
【0019】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1に示す建具設置構造Aは、建物の上下層間に立設する前後左右の自立方立11〜14と、両側の自立方立を梁状に接続する接続部材21〜23と、これら自立方立の間に配設された開口部30および戸袋部40と、開口部30と戸袋部40の間を回動して開閉動作する建具50とを具備している。
【0021】
自立方立11〜14の各々は、上材10aの下端側と下材10bの上端側との間に弾性体10cを介在させてこれら上端側と下端側とを重ね合わせて接続してなる。この接続構造は、例えば、特許第3324679号公報に開示される構成を適用すればよい。なお、
図1中の符号10dは、前記接続構造を箱状に覆うケースであり、省くことも可能である。
この接続構造によれば、上材10aの下端側と、下材10bの上端側とは、開口部30幅方向(
図1によれば左右方向)に重ね合わせられ、この重ね合わせ部分を貫通するボルト(図示せず)、及び該ボルトに環状に装着された弾性体10c(例えば、コイルスプリング)によって接続され、弾性的に接近離隔することが可能である。
【0022】
自立方立11〜14のそれぞれの上端部は、建物側のスラブに対し左右前後方向へ若干スライドするように接続される。この接続構造は、例えば、特許第3324679号公報の
図4に開示されるように、長穴とボルトの組み合わせでスライドする構造とすればよい。また、自立方立11〜14のそれぞれの下端部は、ブラケット等を介して床面に固定される。
自立方立11〜14の各々を構成する上材10aと下材10bは、例えば、金属製の角材とすればよい。
【0023】
また、接続部材21〜23の各々は、自立方立11〜14に交差して略水平方向へ連続する金属製の角材であり、その両端部を、両側の対応する前記自立方立に接続している。
詳細に説明すれば、
図1の左側と右側のそれぞれにおいて、前後に間隔を置いた上材10a,10aの間には接続部材21が接続され、前後に間隔を置いた下材10b,10bの間には接続部材22が接続される。また、
図1の手前側と奥側のそれぞれにおいて、左右に間隔を置いた下材10b,10bの間には接続部材23が接続される。また、開口部30上方における上枠31の上側には、左右に間隔を置いた下材10b,10bの間に接続部材24が接続される。
【0024】
これら接続部材と自立方立との接続箇所において、接続部材21〜24の各々の端部は、対応する自立方立11,12,13または14に対し、軸10eを介して回動するように接続される。
この接続構造を
図3の例示に基づき詳細に説明すれば、軸10eは、両側の上材10a,10a(又は10b,10b)の間側に位置し、ブラケット等を介して上材10a(又は10b)に固定されている。
この軸10eは、前記ブラケット及び接続部材21(又は22)を貫通するボルトであり、その先端側にはナットが締め付けられている。
したがって、通常状態において、接続部材21〜24の各々は、自立方立11〜14の各々に対し回動しないが、地震等により揺れた場合には、軸10e回りを若干回動する。すなわち、地震等により揺れた場合には、接続部材21〜24の各々と、対応する自立方立11〜14の各々との間の角度a,b(
図3(b)参照)が変化する。
【0025】
接続部材21(又は22)における長手方向の途中箇所(図示例によれば中央部)と、前記自立方立の上材10a(又は10b)における長手方向の途中箇所との間には、これら二箇所から受ける圧縮方向の力に対向するように弾発部材15が設けられる。
弾発部材15は、
図3に例示するように、シリンダ状部材15aと該シリンダ状部材15aに挿入されるピストン状部材15bとを圧縮コイルスプリング(図示せず)により接続してなる。
この弾発部材15は、図示する好ましい一例によれば、前後の自立方立11,12(または13,14)の間において、前後で対称となるように二つ設けられる。そして、これら弾発部材15は、上材10aと下材10bとが重なり合う方向と交差するように配設される。
【0026】
各弾発部材15の一端側は、自立方立11,12,13又は14に対し、圧縮方向へ移動不能であって且つ引張方向へ移動可能に接続される。
詳細に説明すれば、各弾発部材15の一端側と自立方立11,12,13又は14との間には、回動支持部材16が設けられる(
図3参照)。この回動支持部材16は、先端側が自立方立11,12,13又は14に対し接近離隔して回動するように、該回動支持部材16の基端側が自立方立11,12,13又は14に枢支された部材である。
この回動支持部材16は、弾発部材15側から押圧された場合には、自立方立11,12,13又は14の側面に当接して回動不能になり、弾発部材15側から引っ張られた場合には、自立方立11,12,13又は14の側面から離れるようにして回動する
【0027】
また、各回動支持部材16の他端側は、後述する取付ブラケット17及び傾斜ブラケット18を介することで、接続部材21(又は22)に対し、回転可能に支持される。
取付ブラケット17は、接続部材21(又は22)の長手方向の中央部から下方へ突出しており、その突端側には、両側の弾発部材15,15を接続するための二つの傾斜ブラケット18が固定される。
各傾斜ブラケット18は、取付ブラケット17の下端側に固定され、弾発部材15の自立方立13(又は14)側の止着箇所へ向かって、斜め下方へ延びている。この傾斜ブラケット18の先端側には、弾発部材15のピストン状部材15b先端が回転可能に止着される。
【0028】
また、開口部30は、奥側の左右の自立方立12,14の下側において、上枠31、左右の縦枠32,32、および床面等によって囲まれた矩形状の空間である(
図1参照)。この開口部30は、火災等の災害時に、後述する左右の建具50,50によって閉鎖される。
左右の縦枠32,32及び自立方立12,14は、その下端側において、床面等に止着されている。
上枠31は、その上側で略水平方向へわたる接続部材24(
図1及び
図4参照)に対し一体的に固定されている。
【0029】
また、戸袋部40は、開口部30に対する交差面(図示例によれば、開口部30に直交する壁面)に設けられる(
図1参照)。
この戸袋部40は、上枠42及び第1の可動バー43と、両側の縦枠32,41と、床面とによって矩形枠状に構成され、その内部に建具50を収納する。
本実施例によれば、戸袋部40の両側(
図1の前後)に、自立方立11,12(又は13,14)が配設され、これら自立方立における戸袋部40よりも上側に、上述した接続部材21及び弾発部材15等が設けられる。
【0030】
上枠42には、横幅方向へ連続して建具50の上端部に近接するとともに、上下方向へ移動するように第1の可動バー43が支持される (
図1及び
図4参照)。
【0031】
上枠42は、戸袋部40を構成する縦枠32,41の上端部間にわたる水平長尺状の部材である。この上枠42の一端側(
図4によれば左端側)は、ブラケット等を介して縦枠32に不動に固定されている。また、その他端側は、縦枠41に不動に固定されている。縦枠32,41は、それぞれ、上記自立方立の下材10bに不動に固定されている。
この上枠42は、
図4に示すように、第1の可動バー43を上下動可能に嵌め合わせるように下方を開口した凹状部42aと、該凹状部42aにおける戸袋内奥側の壁部から下方へ下がり、さらに戸袋内奥側へ断面略L字状に曲げられた奥側片部42bとを一体に有する。
そして、上枠42の長手方向において、前記奥側片部42bの途中箇所には、後述するバネ止着ブラケット44を挿通するように貫通孔42b1(
図4参照)が設けられる。この貫通孔42b1は、図示例によれば矩形状の孔である。
【0032】
また、第1の可動バー43は、上方を開口した断面凹状に形成され、長手方向の略全長にわたって、上枠42の凹状部42aに対し、遊びを有する状態で嵌合されている。
そして、この第1の可動バー43は、建具50の戸先側に対応する一端側を上下回動させるように、その回動支点側(
図4によれば左端側)が上枠42に枢支されている。
詳細に説明すれば、上枠42内には、下方を開口した凹状の支持ブラケット42a1が固定される。第1の可動バー43内には、上方を開口した凹状の被支持ブラケット43aが固定される。支持ブラケット42a1の凹状部分には、被支持ブラケット43aが嵌め合せられ、これらには、支持ブラケット42a1に対し被支持ブラケット43aが回動するように、軸状部材42a2が挿通される。
よって、この構成によれば、第1の可動バー43は、軸状部材42a2を回動支点として、前記一端側(
図4によれば右端側)が回動可能になる。
【0033】
また、第1の可動バー43の前記一端側には、第1の可動バー43を上枠42に相対し上方へ付勢するように引張りバネ45(付勢手段)が設けられる。
詳細に説明すれば、引張りバネ45の下端側は、バネ止着ブラケット44に止着されている。バネ止着ブラケット44は、一端側を引張りバネ45の下端に止着するとともに、他端側を上枠42の貫通孔42b1に挿通して第1の可動バー43内面に止着している(
図4及び
図10参照)。
また、引張りバネ45の上端側は、バネ止着ブラケット46を介して、不動部位に止着されている。
したがって、第1の可動バー43の自由端側は、引張りバネ45に吊り下げられるとともに、引張りバネ45によって上方への付勢力を受ける。
【0034】
そして、第1の可動バー43の下端部には、戸袋部40に収納された際の建具50の上端部が近接する。詳細に説明すれば、第1の可動バー43の下端部には、建具50上端部が横幅方向へ連続して近接するとともに、該上端部から突出するローラ状突起57が接触する(
図4及び
図11参照)。
【0035】
建具50は、開口部30と戸袋部40との間を扇形状に回動して開閉動作する開き戸(ドア)である。この建具50は、
図5に示すように、略矩形状の建具本体51と、該建具本体51から下方へ突出する横向きの第2の可動バー52と、建具本体51の面に支持された被係止部53とを具備している(
図5参照)。
【0036】
建具本体51は、図示例によれば、上下左右の框51a,51b,51c,51dと、これらの内側の空間を塞ぐ板状部材51e等から構成される。
上側の框51aは、その戸尻側が図示しないヒンジ等を介して、建物側の不動部位に対し回動自在に支持される。
下側の框51bは、横幅方向へわたって下方を断面凹状に開口しており、その開口部に、後述する第2の可動バー52を収納している。
戸先側の框51cは、内部が中空状であり、第2の可動バー52の前端側を上方へ付勢する引張りバネ54(付勢手段)を内在している。
戸尻側の框51dは、その下端側に、当該建具50を閉鎖方向へ付勢して回動可能に支持するバネ入りヒンジ55を内在している。
【0037】
建具本体51の上端部には、開閉回動に伴い第1の可動バー43の下部に沿って転動させるようにローラ状突起57と、建具50が第1の可動バー43の下側へ進入するのを案内する案内部材58とが具備される(
図4及び
図5参照)。
【0038】
ローラ状突起57は、その外周面の上半部側を、建具本体51(詳細には框51a)の上端面から上方へ突出させるようにして、框51a内に軸支されている。このローラ状突起57の回転軸方向は、建具50の横幅方向と略平行である。
ローラ状突起57の上半部は、建具50が戸袋部40内に収納された際に、第1の可動バー43の下端面に接触する(
図11参照)。
【0039】
案内部材58は、戸袋部40内への進入方向に沿って斜め下方を向くガイド傾斜面58aを有する部材であり、図示例によれば、金属片を先端楔状に曲げるようにして形成される。この案内部材58は、ガイド傾斜面58aの部分を、建具50の表面よりも戸袋部40側へ突出させるようにして、建具本体51の上端に止着固定される(
図4及び
図10参照)。
【0040】
また、第2の可動バー52は、建具本体51の横幅方向へ連続する略棒状のバー本体52aと、該バー本体52aの戸先寄りに回転自在に支持されたローラ52bとを具備する。
バー本体52aは、例えば、金属製の中空角材等から形成され、その下辺側の部分を下框51bから下方へ突出させた状態で、戸尻側(ドアヒンジ側)の部分が回転自在に支持されている。
【0041】
前記支持構造について、より詳細に説明すれば、
図7に示すように、バー本体52aの基端側には、上方へ突出する凸部52a1が設けられ、この凸部52a1が、軸状部材52a2及び軸受部材52a3を介して、下框51b内で回転するように支持される。なお、
図7中、符号52a4は、凸部52a1及び軸受部材52a3を貫通した軸状部材52a2の先端側に止着される止め輪である。
【0042】
バー本体52aの先端寄りの下側には、下方向きに開口する凹部が設けられ、この凹部内には、ローラ52bが回転自在に支持されている。
ローラ52bは、円柱状の部材であり、その外周面をバー本体52aから下方へ突出させるとともに、建具50の開閉に伴って床面を転動するように、バー本体52a先端側の前記凹部内に支持されている。
【0043】
バー本体52aの先端側には、第2の可動バー52の下方への回動量を規制する規制部52cが設けられる。この規制部52cは、第2の可動バー52の先端側がバー本体52aに相対して下方へ回動した場合に、バー本体52aに対し凹凸状に係合して(図示せず)、その回動量を規制する。
【0044】
また、引張りバネ54は、その一端側がバー本体52aの先端側に止着されるとともに、その他端側が戸先側の縦框51c内に止着されており、第2の可動バー52の先端側を建具本体51に相対し上方へ付勢する付勢手段として機能する。なお、
図7中、引張りバネ54の上下の片状部材は、引張りバネ54を止着するためのブラケットである。
【0045】
また、被係止部53は、建具50の全開時に、不動部位である戸袋部40壁面の係脱装置(図示せず)に係止される部材であり、例えば、
図6に示すように、支持板53bの表面に略U字ボルト状の被係止環53aを止着してなる。
この被係止部53は、可動支持部56を介することで、建具本体51の板状部材51eに対し面方向(図示例によれば、上下左右方向)へ移動するように支持されている。
【0046】
可動支持部56は、
図6に示すように、建具本体51の面に固定される基台56aと、該基台56aの表面に水平移動可能に止着される水平移動板56bと、該水平移動板56bの表面に上下移動可能に止着される上下移動板56cとから構成される。
【0047】
基台56aは、金属製板材を凹状に曲げることで略矩形箱状に構成され、その表面には、止着具56b2(例えば、ネジ又はボルト等)を螺合するためのネジ孔56a1が複数設けられる。
【0048】
水平移動板56bは、基台56aに嵌り合って水平方向へ移動するように断面凹状に形成され、その表面には、横方向へ長尺な長孔56b1と、止着具56c2(例えば、ネジ又はボルト等)を止着するためのネジ孔56b3とが、それぞれ複数形成される。
この水平移動板56bは、基台56aに止着される止着具56b2が長孔56b1に挿通されることで、通常時は移動不能であるが、地震等による力が加わった場合に、可動支持部56に相対し水平方向へ移動する。
【0049】
上下移動板56cは、水平移動板56b表面よりも一回り程小さい板状の部材であり、その表面に、被係止部53を挿通した止着具53b2(例えば、ネジ又はボルト等)止着するためのネジ孔56c1と、止着具56c2を挿通する縦長状の長孔56c3とを、それぞれ複数有する。
この上下移動板56cは、水平移動板56bに止着される止着具56c2が、長孔56c3に挿通されることで、通常時は移動不能であるが、地震等による力が加わった場合に、水平移動板56bに相対し上下方向へ移動する。
【0050】
よって、上記構成の可動支持部56及び被係止部53によれば、被係止部53が係脱装置(図示せず)にロックされた状態で地震が発生した場合に、被係止部53が、上下移動板56c及び水平移動板56bによって上下左右に移動するため、被係止部53及び前記係脱装置の破損や変形等を防ぐことができる。
【0051】
なお、前記係脱装置は、建具50(ドア)が開放して戸袋部40に収まった際に、ばね力等により自動的に被係止部53に係止し、この係止状態を非常信号に応じて解除する構成とすればよく、例えば、実開平6−18678号公報に開示されるロック装置や、その他の係脱装置等を用いることが可能である。
【0052】
次に、上記構成の建具設置構造A及び建具50等について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
当該建具設置構造Aが地震等により、
図1の前後方向へ揺れた場合、
図3(b)(c)に示すように、接続部材21(又は22)と一方の自立方立13との間の角度a、および接続部材21(又は22)と他方の自立方立14との間の角度bが、それぞれ変化する。そして、この揺れに伴って、両側の弾発部材15には、それぞれ圧縮方向または引張方向の力が作用しようとする。
【0053】
すなわち、
図3(b)に示すように、接続部材21(又は22)が図示の左へ移動した場合には、左側の弾発部材15には圧縮力が加わり、この弾発部材15は、前記圧縮力に対向する弾発力を発生する。一方、右側の弾発部材15は、回動支持部材16を揺動させて自立方立14から離れるので、引張り力を受けない。
また、
図3(c)に示すように、接続部材21(又は22)が図示の右へ移動した場合には、前記と左右逆の動作が行われる。
【0054】
よって、地震により接続部材21(又は22)と自立方立13(又は14)の間の角度a又はbを狭める圧縮方向の力を、弾発部材15によって吸収することができる上、弾発部材15に引っ張り力が作用して該弾発部材15が破損するようなことを、回動支持部材16の回動によって防ぐことができる。
【0055】
しかも、本実施例よれば、弾発部材15を、上材10aと下材10bとが重なり合う方向と交差(図示例によれば直交)する方向へ弾発するように設けたので、あらゆる方向の横揺れや縦揺れ等を、弾発部材15及び上下材10a,10b間の弾性体10cによって効果的に吸収することができる。
【0056】
また、建具50(ドア)を戸袋部40に収納する前の状態で地震が発生し、変形等により建具50の戸先側が上方へ傾いたとしても、
図10に示すように、建具50を戸袋部40側へ回動させれば、案内部材58のガイド傾斜面58aが、第1の可動バー43を上方へ押し上げ、その後、ローラ状突起57が第1の可動バー43の下面側へ転動しながら入り込む。よって、地震時の変形等に起因して、建具50が戸袋部40内に納まらなくなるようなことを防ぐことができる。
また、建具50の戸先側が上方へ傾いた前記状態において、建具50の下部側では、第2の可動バー52が相対的に下方へ回動するため、建具50と床面等との間に生じる隙間を小さくすることができる(
図13(a)(b)参照)。
【0057】
また、建具50(ドア)を戸袋部40に収納した状態で地震が発生し、変形等により建具50の戸先側が上方へ傾いたとしても、
図11(a)(b)に示すように、該建具50の上端部(詳細にはローラ状突起57)を受けて、第1の可動バー43が相対的に上方へ移動する。
このため、建具50を反戸袋側へ引っ張れば、ローラ状突起57が第1の可動バー43の下端面に沿って転動し、建具50を戸袋部40から引き出すことができる。
よって、建具50の戸先側の上端部が、その上側の上枠42等にかじりついて、建具50が開放し難くなるようなことを防ぐことができる。
【0058】
また、逆に、戸袋部40内への収納状態において、地震時の変形等により建具50の戸先側が下方へ下がった場合には、
図12(a)(b)に示すように、建具50上端のローラ状突起57が、第1の可動バー43の下端から下方へ離れ、第1の可動バー43の自由端側は、引張りバネ45によって吊り下げられた状態になる。
この状態において、建具50の下部側では、第2の可動バー52(
図5参照)が相対的に上方へ回動するため、建具50の戸先側が床面等に強く当接して、建具50が開閉し難くなるようなことを防ぐことができる。
また、通常状態では、第2の可動バー52の先端側を引張りバネ54により上方へ付勢しているため、ローラ52bと床面との間の摩擦を軽減して、建具50を容易に開閉することができる。
【0059】
次に、上記建具設置構造Aにおける第2の可動バー52部分の構造の他例について説明する。なお、以下に示す他例は、上記実施例の一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、重複する詳細説明は適宜省略する。
【0060】
図8(a)に要部を示す第2の可動バー52は、上記実施例の建具50から引張りバネ54を省いた構成としている。
この構造では、必要に応じて、バー本体52aにおける回転軸(具体的には軸状部材52a2)よりも戸尻側に、重量バランスを調整する錘体(図示せず)が設けられる。
【0061】
また、
図8(b)に要部を示す第2の可動バー52は、上記実施例の建具50に対し、引張りバネ54を牽引装置60に置換した構成とされる。
牽引装置60は、バー本体52aの戸先側に一端側を止着した紐状部材61と、紐状部材61を掛け回すとともに建具本体51に対し回転自在に支持された滑車状部材62と、紐状部材61の他端側に止着された錘体63とを具備してなる。
この構造によれば、上記実施例と同様に、バー本体52aの先端側を牽引装置60によって上方へ付勢し、ローラ52bと床面との摩擦抵抗を軽減し、建具50の開閉をスムーズにすることができる。
【0062】
また、
図8(c)に要部を示す第2の可動バー52は、建物側の床面に、第2の可動バー52先端側のローラ52bを受けるようにレール部70を設けている。
レール部70は、建具50の開閉軌跡に沿う曲線状の金属板であり、その上面を平坦に形成している。
この構造によれば、床面がカーペットである場合等のように、床面にローラ52bが沈み込む使用状況において、床面の上に、レール部70を設けることで、前記沈み込みを防いで、建具50の開閉をスムーズにすることができる。
図8(c)に示す建具構造において、第2の可動バー52側の構成は、上述した何れの態様であってもよい。
【0063】
上述した建具設置構造Aにおいて、建具50は、
図9に示す両面フラッシュ扉タイプの建具100に置換することが可能である。
建具100では、一体的な可動バーユニット80を、建具本体90の下端側に着脱可能に装着している。
可動バーユニット80は、横幅方向へわたる基部材81と、該基部材81に対し上下方向へ移動するように支持された第2の可動バー82と、これら基部材81と第2の可動バー82との間に設けられた引張りバネ83(付勢手段)とを具備している。
【0064】
基部材81は、下方を開口した断面凹状の長尺状部材である。
この基部材81の長手方向の一端には、建具本体90に嵌め合せるための凸部81aが設けられる。また、基部材81の前記一端よりの下部には、下方を開口した断面凹状の軸受部材等を介して、軸状部材81cが支持されている。
同基部材81の長手方向の他端側の下部には、引張りバネ83の上端部がブラケット等を介して止着されている。
【0065】
また、第2の可動バー82は、下方を開口した断面凹状の長尺状部材である。
この第2の可動バー82の長手方向の一端側は、その上部に直方体状のブラケット等を介して、軸状部材81cに対し回転自在に支持される。
また、第2の可動バー82の長手方向の他端側には、引張りバネ83の下端部がブラケット等を介して止着されている。
また、第2の可動バー82の長手方向の前記他端側の下部には、軸受ブラケット及び軸状部材等を介して、ローラ82aが回転自在に支持されている。このローラ82aは、断面凹状の第2の可動バー82内に位置し、その外周面の下端側を、下方へ露出し突出している。
【0066】
建具本体90は、厚さ方向に間隔を置いて配設された二枚の板材91,92を、これらの間の複数の骨材92,93,94により接合している。
建具本体90の下方側は、下方を開口した断面凹状に開口しており、この開口の内部は、可動バーユニット80が着脱されるように構成される。
建具本体90の戸先側(
図9によれば左側)の下端寄りには、可動バーユニット80の挿入を容易にするための切欠部95が設けられる。
【0067】
符号93に示す骨材は、二枚の板材91,91間の下端寄りで、略水平方向へわたるように固定される。この骨材93は、下方を凹状に開口しており、この凹状部分には、基部材81が嵌め合せられる。
また、符号94に示す骨材は、骨材93よりも戸尻側(
図9によれば右方向側)にて、上下方向へわたるように設けられる。この骨材94には、基部材81の凸部81aに嵌脱可能な嵌合孔94aが設けられる。
【0068】
上記構成の可動バーユニット80は、
図9に示すように、建具本体90を構成する二枚の板材91,91間に対し下方側から挿入され、凸部81aが嵌合孔94aに差し込まれ、基部材81の前端寄り部分が、ネジ止め等の止着手段により骨材92に止着される。なお、図中、符号84は、可動バーユニット80が装着された後に、建具本体90戸先側の切欠部95を塞ぐ、カバープレートであり、ネジ等の止着具によって建具本体90に止着される。
【0069】
また、建具100の上半部側には、上述したローラ状突起57及び案内部材58と、可動支持部56’とを具備する。
可動支持部56’は、
図9に示すように、建具本体90内に固定された基台56a’と、該基台56a’の表面に止着された平板56b’と、該平板56’との間に滑り板56c’を挟んで固定された被係止部53’とから構成される。
基台56a’は、板金材料を略凹状に曲げることで形成され、建具本体90の両板材91,91内に埋め込まれ固定されている。
平板56b’は、図示例によれば、矩形状の平板であり、ネジやボルト等の止着具により基台56a’に止着固定されている。
滑り板56c’は、フッ素樹脂からなる略枠状の平板であり、後述する被係止部53’が上下方向へ滑り易くしている。
被係止部53’は、建具100の全開時に、不動部位である戸袋部40壁面の係脱装置(図示せず)に係止される部材であり、支持板53b’の表面にブラケット等を介して被係止軸53a’を止着してなる。
この被係止部53’は、支持板53b’の上下方向の長孔に挿通される止着具(例えばネジやボルト等)によって、平板56b’に止着されている。
【0070】
よって、
図9に示す建具100によれば、先に記した建具50と略同様に、第2の可動バー82の上下動により、地震等に起因して建具本体90の戸先側が下方へ傾いた場合でも、相対的に第2の可動バー82を上昇させることができ、ひいては、建具本体90が床面等にかじりついて回動しなくなるようなことを防ぐことができる。
その上、メンテナンス等の際には、可動バーユニット80の交換を容易に行うことができる。
また、建具100が全開し被係止部53’が係脱装置(図示せず)に係止された状態で、地震等により当該建具構造や建物等に変形が生じた場合でも、被係止部53’が平板56b’の固定部分に対し相対的に上下方向へ移動するため、被係止部53’又は前記係脱装置が破損したりするようなことを防ぐことができる。
【0071】
さらに好ましい態様として、上述した建具50又は100は、
図14に示す建具200や、
図15に示す建具300に置換することが可能である。
【0072】
建具200は、建具100に対し、補助可動バー210を加えるように構成してある。
補助可動バー210は、第2の可動バー82に対し戸厚方向に並ぶとともに、板材91の外面に沿うようにして設けられる。
この補助可動バー210は、第2の可動バー82の回動支点(軸状部材81c)よりも戸尻側で建具本体90に対し回転可能であって且つ回転半径方向へ所定量移動可能に支持され、且つ、第2の可動バー82と連動して同方向へ回転するように第2の可動バー82の回動支点よりも戸先側の部分に係合している。
【0073】
詳細に説明すれば、補助可動バー210は、略垂直な面を略水平方向へ連続させた略長尺矩形板状に形成され、建具本体90の戸尻側に対応する一端側に戸厚方向へ突出する軸状突起211を有し、その他端側には枢支孔212を有する(
図14参照)。また、この補助可動バー210の下端側には、板材91の下端との当接により上方への回動を規制する回動規制片部214が設けられる。
これに対し、建具本体90の板材91の戸尻側には、補助可動バー210の軸状突起211を枢支するための支持孔91aが設けられる。この支持孔91aは、図示する好ましい一例によれば、上下方向の長孔と水平方向の長孔を組み合わせた横向きT字状に形成される。
補助可動バー210の軸状突起211は、前記上下方向の長孔に挿入された後に、前記水平方向の長孔側へ寄せられる。したがって、この軸状突起211は、前記水平方向の長孔に沿って移動可能になる。
【0074】
また、補助可動バー210の先端側の枢支孔212と、第2の可動バー82先端側の枢支孔82bとの双方には、軸状部材213が回転自在に挿入される。
よって、補助可動バー210は、建具本体90の戸尻側に対し回転自在に枢支されるとともに、前記水平方向の長孔に沿って回転半径方向へ所定量移動可能であって、第2の可動バー82と連動して同方向へ回転可能である。
なお、前記回転半径方向への移動量(前記所定量)は、支持孔91aの前記水平方向の長孔の長さ寸法の変更により調整可能であり、回転半径の異なる補助可動バー210と第2の可動バー82が同方向へスムーズに連動して回転するように、適宜に設定される。
【0075】
また、
図15に示す建具300は、上述した建具100に対し、補助可動バー310を加えるように構成してある。
補助可動バー310は、第2の可動バー82に対し戸厚方向に並ぶとともに、板材91の内面に沿うようにして設けられる。
この補助可動バー310は、第2の可動バー82の回動支点(軸状部材81c)よりも戸尻側で建具本体90に対し回転可能且つ回転半径方向へ所定量移動可能に支持され、且つ、第2の可動バー82と連動して同方向へ回転するように第2の可動バー82の回動支点よりも戸先側の部分に係合している。
【0076】
詳細に説明すれば、補助可動バー310は、略垂直な面を略水平方向へ連続させた長尺矩形板状に形成され、建具本体90の戸尻側に対応する一端側の端部に、戸尻方向側を開口した略横向きV字状の切欠部311を有し、その他端側を、第2の可動バー82の先端側に回転自在に枢支している。
また、建具本体90の板材91の戸尻側には、補助可動バー310の切欠部311に嵌り合って補助可動バー310を回転自在に枢支する軸状突起91bが設けられる。
よって、補助可動バー310は、建具本体90の戸尻側に対し回転自在に枢支されるとともに、切欠部311を軸状突起91bに沿わせて回転半径方向へ所定量移動可能であって、第2の可動バー82と連動して同方向へ回転可能である。
なお、前記回転半径方向への移動量(前記所定量)は、切欠部311の深さ方向(略水平方向)の寸法の変更により調整可能であり、回転半径の異なる補助可動バー210と第2の可動バー82が同方向へスムーズに連動して回転するように、適宜に設定される。
【0077】
上記構成の建具200,300(
図14及び
図15参照)によれば、建具本体90の戸先側が上方へ移動した場合に、該建具本体90と床面等との隙間を効果的に減らすことができる。
詳細に説明すれば、例えば、補助可動バー210,310を具備しない建具50,100では、建物の変形等に起因して戸先側が上がった場合に、第2の可動バー52,82の先端側が自重により下がり、建具本体90と床面等との間に生じる隙間を塞ごうとする。しかし、バネ入りヒンジ55との干渉を避ける等のために第2の可動バー52,82の回動支点(軸状部材81c)が建具50,100の幅方向中央寄りに位置する場合には、
図13(b)に示すように、前記回動支点に対応する位置で、前記隙間Sが大きくなる傾向がある。
このような状況であっても、補助可動バー210,310を具備した建具200,300では、補助可動バー210,310の先端側が第2の可動バー82の先端側に引かれて下方へ回動するため、前記隙間S(
図13参照)の部分を補助可動バー210,310によって狭くすることができる(
図16参照)。
補助可動バー210,310の前記回動は、支持孔91a又は切欠部311による支持部分の略水平方向への微動により、スムーズに行われる。
図16(a)(b)は、補助可動バー310を具備した建具300の作用効果を模式的に例示したものだが、補助可動バー210を具備した建具200についても同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
なお、上記実施例によれば、回動支持部材16を自立方立13(又は14)側に設けたが(
図3参照)、他例としては、回動支持部材16を接続部材21(又は22)側に設けたり、回動支持部材16を接続部材21(又は22)側及び自立方立13(又は14)側の両方に設けたりすることも可能である。
【0079】
また、上記実施例によれば、
図1の前後の自立方立11,12(13,14)の間に、弾発部材15を設けるようにしたが、他例としては、
図1の左右方向に並ぶ自立方立11,13の間や、自立方立12,14の間に、上記実施例と同様にして弾発部材15を設けることも可能である。
【0080】
また、上記実施例によれば、弾発部材15として圧縮コイルバネを用いたが、この弾発部材15は、圧縮力に対し弾発するものであればよく、他例としては、ゴム等の弾性体や、板バネ、空気バネ等を利用した態様とすることも可能である。
【0081】
また、上記実施例によれば、第1の可動バー43及び第2の可動バー52,82を上方へ付勢する付勢手段を引張りバネ45,54,83としたが、この付勢手段の他例としては、圧縮バネ(例えば、コイルスプリングや、板バネ、ゴム等)を用いて前記可動バーを上方へ付勢する態様とすることも可能である。
【0082】
また、上記実施例によれば、第1の可動バー43及び第2の可動バー52,82の各々を、回動支点部を中心にして上下方向へ回動させる態様としたが、他例としては、これら可動バーを上下方向へ平行にスライドさせる態様とすることも可能である。
【0083】
また、上記実施例によれば、第1の可動バー43の動作性を良好にした好ましい態様として、第1の可動バー43の上方への移動を付勢手段(引張りバネ45)により補助するようにしたが、他例としては、前記付勢手段を省いた態様とすることも可能である。
【0084】
また、上記実施例によれば、戸袋部40側の上枠42に対し第1の可動バー43を設けるようにしたが、他例としては、開口部30側の上枠31に対し、略同構成の可動バー(図示せず)を設けることも可能である。
【0085】
また、上記実施例によれば、不動な上枠42に対し、第1の可動バー43を上下に移動させるように設けたが、他例としては、建具50(又は100)に対し可動バー(図示せず)を設けた態様とすることも可能である。この態様の前記可動バーは、横幅方向へ連続して上枠42に対向するとともに、上下方向へ移動するように建具50の上端側に支持される。
【0086】
また、上記実施例によれば、上記弾発部材15を開き戸の設置構造に適用したが、他例としては、上記弾発部材15を、引戸や他の建具の設置構造に適用することも可能である。
【0087】
また、上記実施例によれば、自立方立上部側に弾発部材15及び弾性体10cを具備して建具設置構造Aを構成したが、他の実施例としては、
図17に示す建具設置構造Bのように、弾発部材15や弾性体10cを具備しない態様とすることも可能である。
建具設置構造Bは、上記建具設置構造Aに対し、弾発部材15、弾性体10c、ケース10d、及び一部の接続部材21,23等を省いたものである。この建具設置構造Bにおいて、自立方立11〜14の各々は、上材10aと下材10bを直接接続したものである。また、この建具設置構造Bでは、建具50(100,200又は300)に対し、部分的に開閉可能なくぐり戸59を設けている。このくぐり戸59は、上記建具設置構造A(
図1参照)に具備することも可能である。
この建具設置構造Bにおいても、上記建具設置構造Aと略同様に、第1の可動バー43及び第2の可動バー52,82や、補助可動バー210,310等を適用することが可能である。