(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術において、フレキシブル基板は例えば異方性導電接着剤を介してアクチュエータプレートに熱圧着される。その際、異方性導電接着剤が例えば各チャネル(特に非吐出チャネル)のうちアクチュエータプレートの裏面上での開口部を通して各チャネル内に進入するおそれがある。この場合、異方性導電接着剤が各チャネル内で熱収縮することで、アクチュエータプレートに応力が作用する。その結果、アクチュエータプレートにクラックが発生する等、歩留まりが低下する要因になる。
【0006】
また、アクチュエータプレートの裏面にフレキシブル基板を圧着すると、アクチュエータプレートの裏面とフレキシブル基板の裏面との間には段差が生じる。フレキシブル基板は、ノズルプレート等に比べて厚み公差が大きい。そのため、アクチュエータプレートとフレキシブル基板との間に形成される段差の高さにばらつきが生じやすい。その結果、被記録媒体とノズルプレートとの間の距離を一定に保つように、インクジェットヘッドを組み付けることが難しい。
【0007】
一方で、特許文献2には、カバープレートの裏面に駆動配線を形成する構成が開示されている。特許文献2において、駆動配線は、カバープレートのうち、アクチュエータプレートよりも外側に位置する部分まで引き出され、フレキシブル基板に接続されている。
しかしながら、特許文献2の構成では、駆動配線がカバープレートのうちスリットに対してチャネル寄りに位置する部分で駆動電極に接続されている。そのため、カバープレートにおけるスリットよりも外側に位置する部分に駆動配線を引き出す際にスリットを避けて引き出す必要がある。この場合、駆動配線間のピッチが狭くなる等、配線形成が難しくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、配線形成の容易化を図った上で、歩留まりや組付性を向上させることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の一態様に係る液体噴射ヘッドは、第1方向に沿って延在する噴射チャネル及び非噴射チャネルが第1方向に交差する第2方向に間隔をあけて交互に並設されたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートの表面に積層され、前記噴射チャネルに連通する液体供給路を有するカバープレートと、前記噴射チャネル及び前記非噴射チャネルの内面に形成された駆動電極と、前記第1方向における前記液体供給路よりも外側に位置する前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記駆動電極に接続された駆動配線と、を備え、前記カバープレートは、前記アクチュエータプレートに対して前記第1方向の外側に突出する突出端部を有し、前記カバープレートの裏面のうち、前記液体供給路よりも前記第1方向の外側に位置する部分には、前記駆動配線に接続されるとともに、前記突出端部において外部配線に接続されるパッド部が形成されている。
さらに、本態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記駆動電極は、前記噴射チャネルの内面に形成された共通電極と、前記非噴射チャネルの内面に形成された個別電極と、を有し、前記駆動配線は、前記共通電極に接続された共通配線と、前記噴射チャネルを間に挟んで前記第2方向で対向する前記個別電極同士を架け渡す個別配線と、を有し、前記カバープレートには、複数の前記共通配線同士をまとめて接続する接続配線が形成され、前記パッド部は、前記接続配線を介して前記共通配線に接続される共通パッド部と、対応する前記個別配線にそれぞれ接続される個別パッド部と、を有する。
【0010】
本態様によれば、第1方向における液体供給路よりも外側に位置するアクチュエータプレートの表面に駆動配線を形成することで、チャネルに対して第1方向の外側に駆動配線を引き出す際に、従来のように液体供給路を避けて駆動配線を引き出すことがない。これにより、第1方向における液体供給路よりも外側に位置するアクチュエータプレートの表面上において、配線の形成スペースに制約が生じるのを抑制できるので、駆動配線間のピッチを確保できる等、配線形成の容易化を図ることができる。
そして、カバープレートにおける突出端部の裏面で外部配線を接続することで、アクチュエータプレートの裏面にフレキシブル基板を実装する構成と異なり、実装時において、異方性導電接着剤がアクチュエータプレートの裏面での各チャネルの開口部を通して各チャネル内に進入するのを抑制できる。これにより、異方性導電接着剤の熱収縮に起因してアクチュエータプレートにクラック等が発生するのを抑制し、歩留まりの向上を図ることができる。
また、外部配線がアクチュエータプレートの裏面よりも裏側に突出することがない。そのため、液体噴射ヘッドのノズル面高さのばらつきを抑制できる。そのため、液体噴射ヘッドをキャリッジに組み付ける際の組付性を向上させ、被記録媒体と液体噴射ヘッドとの間の距離を一定に保つことができる。
【0011】
上記態様において、前記駆動電極は、前記噴射チャネルの内面に形成された共通電極と、前記非噴射チャネルの内面に形成された個別電極と、を有し、前記駆動配線は、前記共通電極に接続された共通配線と、前記噴射チャネルを間に挟んで前記第2方向で対向する前記個別電極同士を架け渡す個別配線と、を有し、前記カバープレートには、複数の前記共通配線同士をまとめて接続する接続配線が形成され、前記パッド部は、前記接続配線を介して前記共通配線に接続される共通パッド部と、対応する前記個別配線にそれぞれ接続される個別パッド部と、を有していてもよい。
上記態様において、各パッド部をカバープレートにおける突出端部の裏面に引き出すことで、共通電極及び個別電極を同一面で外部配線に接続することができる。これにより、カバープレートと外部配線との接続作業を簡単に行うことができる。
【0012】
上記態様において、前記共通配線及び前記個別配線のうち、一方の配線は、前記アクチュエータプレートの表面において前記噴射チャネルの前記第1方向の一方側に形成され、前記共通配線及び前記個別配線のうち、他方の配線は、前記アクチュエータプレートの表面において前記噴射チャネルの前記第1方向の他方側に形成されていてもよい。
本態様によれば、共通配線及び個別配線が、アクチュエータプレートの表面のうち、噴射チャネルを間に挟んで第1方向の両側に位置する部分であって、第1方向における液体供給路よりも外側に位置する部分に各別に形成されているため、各配線の形成領域の面積を確保できる。その結果、各配線での電気抵抗を低減させることができ、各配線での発熱を抑制できる。また、各配線間の短絡も抑制できる。また、外部配線とパッド部との接続面積が増えることで、接続不良を減らすことができる。
【0013】
上記態様において、前記カバープレートの裏面のうち、前記パッド部の形成領域には、凹凸部が形成されていてもよい。
本態様によれば、カバープレートの裏面において、凹凸部を覆うようにパッド部を形成することで、パッド部の形成領域が平坦面に形成されている場合に比べて、パッド部の面積を確保できる。これにより、パッド部の電気抵抗を低減し、パッド部での発熱を抑制できる。
【0014】
本発明の一態様に係る液体噴射ヘッドは、第1方向に沿って延在する噴射チャネル及び非噴射チャネルが第1方向に交差する第2方向に間隔をあけて交互に並設されたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートの表面に積層され、前記噴射チャネルに連通する液体供給路を有するカバープレートと、前記噴射チャネルの内面に形成された共通電極と、前記非噴射チャネルの内面に形成された個別電極と、前記第1方向における前記液体供給路よりも外側に位置する前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記共通電極に接続された共通配線と、前記第1方向における前記液体供給路よりも外側に位置する前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記噴射チャネルを間に挟んで前記第2方向で対向する前記個別電極同士を架け渡す個別配線と、を有し、前記カバープレートのうち、前記液体供給路よりも前記第1方向の外側に位置する部分には、前記個別配線に接続されるとともに、外部配線に接続される個別パッド部が形成されている。
本態様によれば、第1方向における液体供給路よりも外側に位置するアクチュエータプレートの表面に共通配線及び個別配線を形成することで、チャネルに対して第1方向の外側に共通配線及び個別配線を引き出す際に、従来のように液体供給路を避けて駆動配線を引き出すことがない。これにより、第1方向における液体供給路よりも外側に位置するアクチュエータプレートの表面上において、配線の形成スペースに制約が生じるのを抑制できるので、駆動配線間のピッチを確保できる等、配線形成の容易化を図ることができる。この場合、特に個別電極のように、個別に電圧を印加する必要があり、かつ個別に外部配線に接続する必要がある電極を、液体供給路よりも第1方向の外側で個別配線に接続することで、配線形成の容易化がより顕著になる。
【0015】
本発明の一態様に係る液体噴射装置は、上記一態様に係る液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、上記態様の液体噴射ヘッドを備えているため、信頼性に優れた液体噴射装置を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、配線形成の容易化を図った上で、歩留まりや組付性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
[プリンタ]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、一対の搬送手段2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド5(液体噴射ヘッド)5と、インク循環手段6と、走査手段(移動機構)7と、を備えている。なお、以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向に一致している。Y方向は走査手段7の走査方向に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向を示している。
【0020】
搬送手段2,3は、被記録媒体PをX方向に搬送する。具体的に、搬送手段2は、Y方向に延設されたグリッドローラ11と、グリッドローラ11に平行に延設されたピンチローラ12と、グリッドローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備えている。同様に、搬送手段3は、Y方向に延設されたグリッドローラ13と、グリッドローラ13に平行に延設されたピンチローラ14と、グリッドローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備えている。
【0021】
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクをそれぞれ収容するインクタンク4Y,4M,4C,4Kを備えている。本実施形態において、インクタンク4Y,4M,4C,4Kは、X方向に並んで設けられている。
【0022】
図2はインクジェットヘッド5及びインク循環手段6の概略構成図である。
図1、
図2に示すように、インク循環手段6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環手段6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。なお、インク供給管21及びインク排出管22は、インクジェットヘッド5を支持する走査手段7の動作に追従可能な可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0023】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。そして、インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0024】
図1に示すように、走査手段7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。具体的に、走査手段7は、Y方向に延設された一対のガイドレール31,32と、一対のガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、キャリッジ33をY方向に移動させる駆動機構34と、を備えている。なお、上述した搬送手段2,3及び走査手段7により、インクジェットヘッド5と被記録媒体Pとを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0025】
駆動機構34は、X方向におけるガイドレール31,32の間に配設されている。駆動機構34は、Y方向に間隔をあけて配設された一対のプーリ35,36と、一対のプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、一方のプーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を備えている。
【0026】
キャリッジ33は、無端ベルト37に連結されている。キャリッジ33には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクをそれぞれ吐出する複数のインクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Kが搭載されている。本実施形態において、インクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Kは、Y方向に並んで配置されている。
【0027】
<インクジェットヘッド>
図3は、インクジェットヘッド5の分解斜視図である。なお、インクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Kは、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明ではまとめてインクジェットヘッド5として説明する。
図3に示すインクジェットヘッド5は、後述する吐出チャネル61におけるチャネル延在方向(第1方向)の中央部からインクを吐出するとともに、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる循環式サイドシュートタイプのものである。
【0028】
インクジェットヘッド5は、ノズルプレート51、アクチュエータプレート52及びカバープレート53を主に備えている。そして、インクジェットヘッド5は、これらノズルプレート51、アクチュエータプレート52及びカバープレート53がこの順で接着剤等によりZ方向に積層された構成とされている。なお、以下の説明では、上述したZ方向のうち、アクチュエータプレート52に対してカバープレート53側を表側、アクチュエータプレート52に対してノズルプレート51側を裏側として説明する。
【0029】
<アクチュエータプレート>
アクチュエータプレート52は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されている。アクチュエータプレート52は、分極方向がZ方向で異なる2枚の圧電板を積層してなる、いわゆるシェブロン基板である。
【0030】
図4は、アクチュエータプレート52の平面図である。
図3、
図4に示すように、アクチュエータプレート52には、X方向に延びるチャネル列63〜66がY方向に間隔をあけて4列配列されている。本実施形態において、チャネル列63〜66は、第1チャネル列63、第2チャネル列64、第3チャネル列65及び第4チャネル列66である。なお、以下の説明では、Y方向やチャネル延在方向のうち、第1チャネル列63側を一方といい、第4チャネル列66側を他方という場合がある。
【0031】
アクチュエータプレート52において、各チャネル列63〜66間に位置する部分には、Y方向で隣り合うチャネル列63〜66を分断する分断部67〜69が形成されている。各分断部67〜69は、第1チャネル列63と及び第2チャネル列64との間に位置する第1分断部67、第2チャネル列64と第3チャネル列65との間に位置する第2分断部68、及び第3チャネル列65と第4チャネル列66との間に位置する第3分断部69である。各分断部67〜69は、アクチュエータプレート52をZ方向に貫通している。本実施形態において、第2分断部68におけるY方向の幅は、第1分断部67及び第3分断部69よりも広くなっている。
【0032】
図4に示すように、各分断部67〜69は、それぞれX方向に延在している。各分断部67〜69におけるX方向の両端部は、チャネル列63〜66よりもX方向の両側に位置している。
図3の例において、分断部67〜69は、アクチュエータプレート52におけるX方向の両端部以外の領域に全域に亘って形成されている。但し、分断部67〜69は、アクチュエータプレート52をX方向に貫通していても構わない。
【0033】
第1チャネル列63は、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)61と、インクが充填されない非吐出チャネル(非噴射チャネル)62と、を有している。各チャネル61,62は、X方向(第2方向)に間隔をあけて交互に並んでいる。アクチュエータプレート52のうち、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62間に位置する部分は、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62間をX方向で仕切る駆動壁70を構成している。なお、以下の説明では、主に第1チャネル列63に関する構成について説明し、他のチャネル列64〜66に関する構成において第1チャネル列63と対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
吐出チャネル61は、Z方向から見た平面視において、Y方向に沿って延在している。具体的に、本実施形態の吐出チャネル61は、平面視において、Y方向に対して交差する方向(チャネル延在方向)に延在している。なお、チャネル延在方向がY方向に一致する構成であっても構わない。
【0035】
図5は、
図4のV−V線に相当する断面図である。
図5に示すように、吐出チャネル61は、X方向から見た側面視において、裏側に向けて凸の湾曲形状に形成されている。具体的に、吐出チャネル61は、チャネル延在方向の両端部に位置する切り上がり部61aと、各切り上がり部61a間に位置する中間部61bと、を有している。
切り上がり部61aは、チャネル延在方向の両側に向かうに従い表側に向けて湾曲しながら延在している。
中間部61bは、アクチュエータプレート52をZ方向に貫通している。
【0036】
図4に示すように、非吐出チャネル62は、アクチュエータプレート52のうち、各吐出チャネル61に対してX方向の両側において、吐出チャネル61と平行に延在している。
【0037】
図6は、
図3のVI−VI線に相当する断面図である。
図6に示すように、非吐出チャネル62は、Z方向における溝深さが全体に亘って一様に形成されている。本実施形態において、非吐出チャネル62は、アクチュエータプレート52をZ方向に貫通している。非吐出チャネル62におけるチャネル延在方向の一方端部は、アクチュエータプレート52におけるY方向の一方端面上で開口している。非吐出チャネル62におけるチャネル延在方向の他方端部は、第1分断部67内に開口している。
【0038】
本実施形態において、非吐出チャネル62におけるチャネル延在方向の長さは、吐出チャネル61よりも長くなっている。したがって、X方向から見た側面視において、非吐出チャネル62は、吐出チャネル61の全体と重なり合うとともに、チャネル延在方向の両端部が吐出チャネル61よりもチャネル延在方向の両側に突出している。なお、上述した非吐出チャネル62の長さは、チャネル延在方向において、第1分断部67と非吐出チャネル62との境界部分からアクチュエータプレート52におけるY方向の一方端面までの距離である。
【0039】
図4、
図5に示すように、吐出チャネル61の内面には、共通電極(駆動電極)75が形成されている。共通電極75は、吐出チャネル61の内面のうち、全周(X方向で対向する内側面及び切り上がり部61aの底面)に亘って連続的に形成されている。また、共通電極75は、吐出チャネル61の内面におけるZ方向の全体に亘って形成されている。
【0040】
アクチュエータプレート52のうち、吐出チャネル61に対してY方向の両側であって、X方向で隣り合う非吐出チャネル62間に位置する部分は、一方土手部72A及び他方土手部72Bを構成している。一方土手部72Aは、吐出チャネル61に対してY方向の一方に位置している。他方土手部72Bは、吐出チャネル61に対してY方向の他方であって、吐出チャネル61と第1分断部67との間に位置している。
【0041】
他方土手部72Bの表面には共通配線(駆動配線)76が形成されている。共通配線76は、チャネル延在方向に延びる帯状に形成されている。共通配線76におけるチャネル延在方向の一方端部は、吐出チャネル61におけるチャネル延在方向の他方開口縁で共通電極75に接続されている。図示の例において、共通配線76におけるチャネル延在方向の一方端部は、アクチュエータプレート52の表面において、吐出チャネル61のY方向の他方端部をX方向の両側から取り囲んでいる。
共通配線76におけるチャネル延在方向の他方端部は、他方土手部72B内で終端している。
【0042】
図4、
図6に示すように、各非吐出チャネル62の内面には、個別電極(駆動電極)77が形成されている。個別電極77は、非吐出チャネル62の内面のうち、X方向で対向する内側面に各別に形成されている。したがって、各個別電極77のうち、同一の非吐出チャネル62内で対向する個別電極77同士は、互いに電気的に分離されている。また、Z方向及びチャネル延在方向において、個別電極77は、非吐出チャネル62の内側面全体に亘って形成されている。
【0043】
図3、
図4に示すように、アクチュエータプレート52における一方土手部72Aの表面には、個別配線(駆動配線)78が形成されている。個別配線78は、一方土手部72Aの表面をX方向に延在している。個別配線78は、吐出チャネル61を挟んでX方向で対向する個別電極77同士を接続している。このように、本実施形態では、共通配線76及び個別配線78は、アクチュエータプレート52の表面において、吐出チャネル61を間に挟んで互いに離間した部分に配置されている。すなわち、共通配線76及び個別配線78は、異なる土手部72A,72Bに各別に形成されている。なお、共通配線76が一方土手部72A上で引き回され、個別配線78が他方土手部72B上で引き回されていてもよい。また、共通配線76及び個別配線78が同一の土手部72A,72B上で引き回されていても構わない。
【0044】
図4に示すように、第2チャネル列64、第3チャネル列65及び第4チャネル列66は、第1チャネル列63と同様に、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62がX方向に交互に並んで構成されている。各チャネル列64〜66の吐出チャネル61及び非吐出チャネル62は、第1チャネル列63の吐出チャネル61及び非吐出チャネル62と同等の配列ピッチで形成されている。この場合、各チャネル列63〜66において、チャネル延在方向で対向する吐出チャネル61同士は、そのチャネル延在方向が同一直線上に配置されている。また、各チャネル列63〜66において、チャネル延在方向で対向する非吐出チャネル62同士は、そのチャネル延在方向が同一直線上に配置されている。なお、Y方向で隣り合うチャネル列63〜66において、吐出チャネル61同士及び非吐出チャネル62同士がX方向で互い違い(千鳥状)に配置される構成でも構わない。また、吐出チャネル61同士及び非吐出チャネル62同士は、各チャネル列63〜66間で必ずしも同一直線上に配置されている必要はない。また、例えば第1チャネル列63及び第2チャネル列64間において、チャネル延在方向で対向する吐出チャネル61同士及び非吐出チャネル62同士を同一直線上に配置し、第3チャネル列65及び第4チャネル列66間において、チャネル延在方向で対向する吐出チャネル61同士及び非吐出チャネル62同士を同一直線上に配置する構成であっても構わない。
【0045】
アクチュエータプレート52において、第2チャネル列64に対応する一方土手部72Aの表面には、共通配線76が形成されている。一方、アクチュエータプレート52において、第2チャネル列64に対応する他方土手部72Bの表面には、個別配線78が形成されている。すなわち、第1チャネル列63及び第2チャネル列64の対応する共通配線76同士は、アクチュエータプレート52の表面において、第1チャネル列63及び第2チャネル列64間に位置する部分に配置されている。一方、第1チャネル列63及び第2チャネル列64の対応する個別配線78同士は、アクチュエータプレート52の表面において、第1チャネル列63及び第2チャネル列64を間に挟んで互いに離間した部分に配置されている。
【0046】
また、第1チャネル列63及び第2チャネル列64と、第3チャネル列65及び第4チャネル列66と、はZ方向から見た平面視でアクチュエータプレート52の中心を対称中心として点対称となるように形成されている。
したがって、アクチュエータプレート52において、第3チャネル列65に対応する一方土手部72Aの表面には、個別配線78が形成されている。アクチュエータプレート52において、第3チャネル列65に対応する他方土手部72Bの表面には、共通配線76が形成されている。
アクチュエータプレート52において、第4チャネル列66に対応する一方土手部72Aの表面には、共通配線76が形成されている。アクチュエータプレート52において、第4チャネル列66に対応する他方土手部72Bの表面には、個別配線78が形成されている。
【0047】
<ノズルプレート>
図5、
図6に示すように、ノズルプレート51は、アクチュエータプレート52の裏面に接着されている。本実施形態において、ノズルプレート51は、吐出チャネル61の中間部61b及び非吐出チャネル62を裏側から閉塞している。
【0048】
ノズルプレート51には、X方向に互いに平行に延びるノズル列(第1ノズル列81、第2ノズル列82、第3ノズル列83及び第4ノズル列84)がY方向に間隔をあけて4列配設されている。また、ノズルプレート51のうち、アクチュエータプレート52の上述した第2分断部68と平面視で重なり合う部分には、ノズルプレート51をZ方向に貫通する貫通孔80が形成されている。
【0049】
各ノズル列81〜84は、ノズルプレート51をZ方向に貫通するノズル孔86〜89をそれぞれ有している。同一のノズル列81〜84において、各ノズル孔86〜89は、それぞれX方向に間隔をあけて一直線上に並設されている。各ノズル孔86〜89は、対応するチャネル列63〜66の吐出チャネル61内に連通している。具体的に、各ノズル孔86〜89は、対応するチャネル列63〜66の吐出チャネル61において、チャネル延在方向の中央部に位置するように形成されている。したがって、各チャネル列63〜66の非吐出チャネル62は、ノズル孔86〜89には連通しておらず、ノズルプレート51により裏側から覆われている。なお、各ノズル孔86〜89は、裏側に向かうに従い漸次縮径するテーパ状とされている。
【0050】
図3、
図4に示すように、各ノズル列81〜84は、各ノズル孔86〜89がそれぞれX方向で同等のピッチで配列されている。また、各ノズル列81〜84間において、ノズル孔86〜89は、それぞれX方向に互いにオフセットしている。この場合、各ノズル孔86〜89は、例えば各ノズル孔86〜89の配列ピッチの1/4ピッチ毎にオフセットされていることが好ましい。但し、各ノズル孔86〜89のオフセット量は、適宜設計変更が可能である。
【0051】
<カバープレート>
図5、
図6に示すように、カバープレート53は、各チャネル61,62を閉塞するようにアクチュエータプレート52の表面に接着されている。カバープレート53は、上述したアクチュエータプレート52に対してY方向の幅が長く形成されている。そのため、カバープレート53におけるY方向の両端部は、アクチュエータプレート52よりもY方向の両側に突出している。そしてカバープレート53のうち、アクチュエータプレート52に対してY方向の一方に突出した部分は、一方突出端部53aを構成している。カバープレート53のうち、アクチュエータプレート52に対してY方向の他方に突出した部分は、他方突出端部53bを構成している。
【0052】
カバープレート53には、入口共通インク室(第1入口共通インク室91a、第2入口共通インク室92a、第3入口共通インク室93a及び第4入口共通インク室94a)及び出口共通インク室(第1出口共通インク室91b、第2出口共通インク室92b、第3出口共通インク室93b及び第4出口共通インク室94d)が形成されている。なお、以下の説明では、第1入口共通インク室91a及び第1出口共通インク室91bについて主に説明する。
【0053】
図3、
図5に示すように、第1入口共通インク室91aは、カバープレート53のうち、第1チャネル列63におけるY方向の他方端部とZ方向で対向する部分に形成されている。第1入口共通インク室91aは、裏側に向けて窪むとともに、X方向に延びる凹溝状に形成されている。第1入口共通インク室91aにおけるX方向の両端部は、第1チャネル列63よりもX方向の外側に位置している。第1入口共通インク室91aのうち、吐出チャネル61に対応する位置(Z方向で対向する位置)には、カバープレート53をZ方向に貫通する供給スリット(液体供給路)96がそれぞれ形成されている。
【0054】
なお、
図5に示すように、カバープレート53の裏面において、供給スリット96のチャネル延在方向の他方開口縁は、切り上がり部61aにおけるチャネル延在方向の他方端縁(他方土手部72Bの一方端縁)と同等の位置に形成されている。これにより、上述した共通配線76は、平面視において、供給スリット96よりもチャネル延在方向の他方側に配置される。なお、供給スリット96のチャネル延在方向の他方開口縁が、切り上がり部61aにおけるチャネル延在方向の他方端縁よりも一方側に位置していても構わない。
【0055】
図3に示すように、第1入口共通インク室91aのうち、第1チャネル列63よりもX方向の両側に位置する部分には、カバープレート53をZ方向に貫通する配線用スリット98が形成されている。配線用スリット98は、アクチュエータプレート52の表面のうち第1チャネル列63よりもX方向の両側に位置する部分を外部に露出させている。なお、配線用スリット98の内径は、供給スリット96の内径よりも大きく形成しても構わない。また、配線用スリット98は、第1チャネル列63よりもX方向の両側に位置する部分において、複数形成しても構わない。
【0056】
図3、
図5に示すように、第1出口共通インク室91bは、カバープレート53のうち、第1チャネル列63におけるY方向の一方端部とZ方向で対向する部分に形成されている。第1出口共通インク室91bは、裏側に向けて窪むとともに、X方向に沿って延設された凹溝状に形成されている。第1出口共通インク室91bにおけるX方向の両端部は、第1チャネル列63よりもX方向の外側に位置している。第1出口共通インク室91bのうち、吐出チャネル61に対応する位置(Z方向で対向する位置)には、カバープレート53をZ方向に貫通する排出スリット(液体供給路)97がそれぞれ形成されている。
【0057】
したがって、第1入口共通インク室91a及び第1出口共通インク室91bは、それぞれ供給スリット96及び排出スリット97を通して各吐出チャネル61に連通する。一方、第1入口共通インク室91a及び第1出口共通インク室91bは、非吐出チャネル62には連通していない。すなわち、各非吐出チャネル62は、第1入口共通インク室91a及び第1出口共通インク室91bの底部によって閉塞されている。
【0058】
なお、カバープレート53の裏面において、排出スリット97のチャネル延在方向の一方開口縁は、切り上がり部61aにおけるチャネル延在方向の一方端縁(一方土手部72Aの他方端縁)と同等の位置に形成されている。したがって、上述した個別配線78は、平面視において、排出スリット97よりもチャネル延在方向の一方側に配置される。なお、排出スリット97のチャネル延在方向の一方開口縁が、切り上がり部61aにおけるチャネル延在方向の一方端縁よりも他方側に形成されていても構わない。
【0059】
また、
図5に示すように、他のチャネル列64〜66に対応する入口共通インク室92a〜94a及び出口共通インク室92b〜94bについても、カバープレート53のうち対応するチャネル列64〜66におけるY方向の両端部とZ方向で対向する位置にそれぞれ形成されている。そして、他のチャネル列64〜66に対応する入口共通インク室92a〜94aのうち、吐出チャネル61に対応する位置には、カバープレート53をZ方向に貫通する供給スリット96が形成されている。一方、他のチャネル列64〜66に対応する出口共通インク室92b〜94bのうち、吐出チャネル61に対応する位置には、カバープレート53をZ方向に貫通する排出スリット97が形成されている。
【0060】
カバープレート53のうち、アクチュエータプレート52の上述した第2分断部68と平面視で重なり合う部分には、カバープレート53をZ方向に貫通する挿通孔99が形成されている。挿通孔99は、Y方向の幅が第2分断部68よりも狭くなっている。この場合、カバープレート53のうち、アクチュエータプレート52における第2分断部68を通して露出した部分であって、挿通孔99に対してY方向の一方側に位置する部分は、一方露出端部(突出端部)53cを構成している。カバープレート53のうち、アクチュエータプレート52における第2分断部68を通して露出した部分であって、挿通孔99に対してY方向の他方側に位置する部分は、他方露出端部(突出端部)53dを構成している。なお、本実施形態において、挿通孔99のX方向における長さは、第2分断部68と同等になっている。
【0061】
図7は、カバープレート53の底面図である。
ここで、
図5、
図7に示すように、カバープレート53の裏面において、上述した各個別配線78と平面視で重なり合う部分には、個別パッド部100がそれぞれ形成されている。個別パッド部100は、カバープレート53の裏面上でチャネル延在方向に延びる帯状に形成されている。例えば第1チャネル列63に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の他方端部は対応する各個別配線78に電気的に接続されている。第1チャネル列63に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の一方端部はカバープレート53における一方突出端部53aまでそれぞれ引き出されている。
【0062】
第2チャネル列64に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の一方端部は対応する各個別配線78に電気的に接続されている。第2チャネル列64に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の他方端部はカバープレート53における一方露出端部53cまで引き出されている。
第3チャネル列65に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の他方端部は対応する各個別配線78に電気的に接続されている。第3チャネル列65に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の一方端部はカバープレート53における他方露出端部53dまで引き出されている。
第4チャネル列66に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の一方端部は対応する各個別配線78に電気的に接続されている。第4チャネル列66に対応する各個別パッド部100において、チャネル延在方向の他方端部はカバープレート53における他方突出端部53bまで引き出されている。
【0063】
カバープレート53の裏面において、上述した各共通配線76と平面視で重なり合う部分には、共通引出配線110が形成されている。共通引出配線110は、カバープレート53の裏面上でチャネル延在方向に延びる帯状に形成されている。例えば第1チャネル列63に対応する各共通引出配線110は、対応する各共通配線76に電気的に接続されている。例えば第1チャネル列63に対応する共通引出配線110において、チャネル延在方向の一方端部は第1入口共通インク室91aの供給スリット96の裏側開口縁まで引き出されている。
【0064】
図3、
図7に示すように、カバープレート53において、各入口共通インク室91a〜94a、供給スリット96及び配線用スリット98の内面には、接続配線111が形成されている。接続配線111は、各供給スリット96の裏側開口縁で各チャネル列63〜66の対応する各共通引出配線110に電気的に接続されている。すなわち、各共通配線76は、接続配線111によって各チャネル列63〜66毎にまとめて電気的に接続(共通化)されている。
【0065】
図7に示すように、カバープレート53の裏面において、各チャネル列63〜66に対してX方向の両側に位置する部分には、共通パッド部112が形成されている。各共通パッド部112は、チャネル延在方向に延びる帯状に形成されている。例えば、第1チャネル列63に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の他方端部は各配線用スリット98の裏側開口縁でそれぞれ接続配線111に接続されている。第1チャネル列63に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の一方端部はカバープレート53における一方突出端部53aまでそれぞれ引き出されている。したがって、第1チャネル列63に対応する共通引出配線110及び共通パッド部112は、カバープレート53における一方突出端部53aの裏面上で外部に露出している。
【0066】
第2チャネル列64に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の一方端部は各配線用スリット98の裏側開口縁で接続配線111に接続されている。第2チャネル列64に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の他方端部は一方露出端部53cまで引き出されている。したがって、第2チャネル列64に対応する共通引出配線110及び共通パッド部112は、一方露出端部53cの裏面上で第2分断部68及び貫通孔80を通して外部に露出している。
【0067】
第3チャネル列65に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の他方端部は各配線用スリット98の裏側開口縁で接続配線111に接続されている。第3チャネル列65に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の一方端部は他方露出端部53dまで引き出されている。したがって、第3チャネル列65に対応する共通引出配線110及び共通パッド部112は、他方露出端部53dの裏面上で第2分断部68及び貫通孔80を通して外部に露出している。
第4チャネル列66に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の一方端部は各配線用スリット98の裏側開口縁で接続配線111に接続されている。第4チャネル列66に対応する一対の共通パッド部112において、チャネル延在方向の他方端部は他方突出端部53bまで引き出されている。したがって、第4チャネル列66に対応する共通引出配線110及び共通パッド部112は、他方突出端部53bの裏面上で外部に露出している。
【0068】
なお、アクチュエータプレート52とカバープレート53とは、全体を非導電接着剤(NCP)により接着しても構わない。この場合、接着時において、共通配線76、共通引出配線110、個別配線78及び個別パッド部100が非導電性接着剤を貫通する。これにより、共通配線76及び共通引出配線110間の導通、並びに個別配線78及び個別パッド部100間の導通が図られる。また、各プレート52,53のうち、共通配線76及び共通引出配線110間、並びに個別配線78及び個別パッド部100間を異方性導電接着剤(ACP)により接着し、それ以外の領域を非導電接着剤により接着しても構わない。
【0069】
カバープレート53には、各チャネル列63〜66に対応してフレキシブル基板(第1フレキシブル基板120、第2フレキシブル基板121、第3フレキシブル基板122及び第4フレキシブル基板123)が実装されている。
第1フレキシブル基板120は、カバープレート53に対してY方向の一方側を通ってカバープレート53の裏側まで引き回されている。第1フレキシブル基板120は、カバープレート53における一方突出端部53aの裏面に圧着されている。第1フレキシブル基板120は、一方突出端部53aの裏面において、第1チャネル列63に対応する個別パッド部100及び共通パッド部112に電気的に接続されている。
【0070】
第2フレキシブル基板121は、カバープレート53の挿通孔99を通してカバープレート53の裏側まで引き回されている。第2フレキシブル基板121は、カバープレート53における一方露出端部53cの裏面に圧着されている。第2フレキシブル基板121は、一方露出端部53cの裏面において、第2チャネル列64に対応する個別パッド部100及び共通パッド部112に電気的に接続されている。
【0071】
第3フレキシブル基板122は、カバープレート53の挿通孔99を通してカバープレート53の裏側まで引き回されている。第3フレキシブル基板122は、カバープレート53における他方露出端部53dの裏面に圧着されている。第3フレキシブル基板122は、他方露出端部53dの裏面において、第3チャネル列65に対応する個別パッド部100及び共通パッド部112に電気的に接続されている。
第4フレキシブル基板123は、カバープレート53に対してY方向の他方側を通ってカバープレート53の裏側まで引き回されている。第4フレキシブル基板123は、カバープレート53における他方突出端部53bの裏面に圧着されている。第4フレキシブル基板123は、他方突出端部53bの裏面において、第4チャネル列66に対応する個別パッド部100及び共通パッド部112に電気的に接続されている。
【0072】
[プリンタの動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環手段6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0073】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送手段2,3のグリッドローラ11,13が回転することで、これらグリッドローラ11,13及びピンチローラ12,14間に被記録媒体Pを搬送方向(X方向)に向けて搬送する。また、これと同時に駆動モータ38がプーリ35,36を回転させて無端ベルト37を動かす。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながらY方向に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド5より4色のインクを被記録媒体Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。
【0074】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のような循環式サイドシュートタイプのインクジェットヘッド5では、まず
図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、各入口共通インク室91a〜94aを通り、供給スリット96を介して各チャネル列63〜66の吐出チャネル61内に供給される。また、各吐出チャネル61内のインクは、排出スリット97を介して各出口共通インク室91b〜94b内に流入し、その後インク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0075】
そして、キャリッジ33(
図1参照)によって往復移動が開始されると、制御手段はフレキシブル基板120〜123や各種配線(配線76,78,110,111及びパッド部100,112)を介して共通電極75及び個別電極77間に駆動電圧を印加する。このとき、各個別電極77を駆動電位Vddとし、各共通電極75を基準電位GNDとする。すると、吐出チャネル61を画成する2つ駆動壁70に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁70が非吐出チャネル62側へ突出するように変形する。具体的には、駆動壁70におけるZ方向の中間部分を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル61があたかも膨らむように変形する。
【0076】
このように、2つの駆動壁70の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出チャネル61の容積が増大する。そして、吐出チャネル61の容積が増大したことにより、入口共通インク室91a〜94a内に貯留されたインクが吐出チャネル61内に誘導される。そして、吐出チャネル61の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル61の内部に伝播し、この圧力波がノズル孔86〜89に到達したタイミングで、駆動電圧をゼロにする。これにより、駆動壁70が復元し、一旦増大した吐出チャネル61の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル61の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、液滴状のインクがノズル孔86〜89を通って外部に吐出されることで、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0077】
ここで、本実施形態では、スリット96,97よりもY方向の外側に位置する土手部72A,72Bの表面上に、共通電極75及び個別電極77に各別に接続される共通配線76及び個別配線78を形成する構成とした。
この構成によれば、共通配線76及び個別配線78をチャネル列63〜66に対してY方向の外側に引き出す際に、従来のようにスリット96,97を避けて共通配線76及び個別配線78を引き出すことがない。これにより、土手部72A,72Bの表面上において、配線の形成スペースに制約が生じるのを抑制できるので、共通配線76及び個別配線78間のピッチを確保できる等、配線形成の容易化を図ることができる。
【0078】
そして、本実施形態では、カバープレート53のうち、アクチュエータプレート52から突出した各端部53a〜53dの裏面でそれぞれフレキシブル基板120〜123を実装する構成とした。
この構成によれば、アクチュエータプレート52の裏面にフレキシブル基板を実装する構成と異なり、実装時において、異方性導電接着剤がアクチュエータプレート52の裏面での各チャネル61,62の開口部を通して各チャネル61,62内に進入するのを抑制できる。これにより、異方性導電接着剤の熱収縮に起因してアクチュエータプレート52にクラック等が発生するのを抑制し、歩留まりの向上を図ることができる。
また、アクチュエータプレート52の裏面において、フレキシブル基板120〜123がノズルプレート51よりも裏側に突出することがない。そのため、インクジェットヘッド5のノズル面高さのばらつきを抑制できる。そのため、インクジェットヘッド5をキャリッジ33に組み付ける際の組付性を向上させ、被記録媒体Pとノズルプレート51との間の距離を一定に保つことができる。
【0079】
なお、図示の例では、アクチュエータプレート52を認識可能な大きさとするため、アクチュエータプレート52及びカバープレート53におけるZ方向の厚さを同等に示している。但し、カバープレート53におけるZ方向の厚さは、アクチュエータプレート52よりも厚くなっていることが好ましい。このように構成することで、例えばアクチュエータプレート52に、カバープレート53に対して突出した突出端部を形成する場合に比べて各端部53a〜53dの強度を確保し、クラック等の発生を抑制できる。また、アクチュエータプレート52の突出端部にフレキシブル基板を圧着する場合に比べて圧着時の取り扱いが容易になる。
【0080】
また、各種配線を介して共通電極75及び個別電極77をカバープレート53における端部53a〜53dの裏面に引き出すことで、共通電極75及び個別電極77を同一面でフレキシブル基板120〜123に接続することができる。これにより、カバープレート53とフレキシブル基板120〜123との接続作業を簡単に行うことができる。
【0081】
本実施形態では、共通配線76及び個別配線78が異なる土手部72A,72Bの表面に各別に形成されているため、共通配線76及び個別配線78を同一の土手部72A,72Bに形成する場合に比べて各配線76,78の形成領域の面積を確保できる。その結果、各配線76,78での電気抵抗を低減させることができ、各配線76,78での発熱を抑制できる。また、各配線76,78間の短絡も抑制できる。また、フレキシブル基板120〜123とパッド部100,112との接続面積が増えることで、接続不良を減らすことができる。
【0082】
そして、本実施形態のプリンタ1は、上述したインクジェットヘッド5を備えているため、信頼性に優れたプリンタ1を提供できる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0085】
上述した実施形態では、ノズル孔86〜89が四列のインクジェットヘッド5を例にして説明したが、これに限られない。すなわち、ノズル孔が一列のインクジェットヘッドであっても、ノズル孔が四列以外の複数列のインクジェットヘッドであっても本発明を適用することができる。
【0086】
上述した実施形態では、サイドシュートタイプのインクジェットヘッド5について説明したが、これに限られない。例えば、吐出チャネルにおけるチャネル延在方向の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドに本発明を適用しても構わない。
上述した実施形態では、アクチュエータプレート52としてシェブロン基板を用いた構成について説明したが、これに限られない。すなわち、分極方向が厚さ方向に沿って一方向に設定された、いわゆるモノポール基板をアクチュエータプレートとして用いても構わない。
【0087】
また、
図8に示すように、カバープレート53の裏面のうち、共通パッド部112の形成領域に表側に窪む凹部130を形成しても構わない。凹部130は、共通パッド部112の延在方向に沿って溝状に延在している。凹部130は、X方向に間隔をあけて複数形成されている。そして、Y方向から見た断面視において、共通パッド部112は、カバープレート53の裏面上で凹部130の内面、及び凹部130に対してX方向の両側に位置する部分に形成されている。
この構成によれば、カバープレート53の裏面のうち共通パッド部112の形成領域が平坦面に形成されている場合に比べて、共通パッド部112の面積を確保できる。これにより、共通パッド部112の電気抵抗を低減し、共通パッド部112での発熱を抑制できる。なお、凹部130の形状は、共通パッド部112の延在方向に延びている必要はなく、適宜変更が可能である。また、凹部130に代えて凸部を形成しても構わない。また、
図8の例では、共通パッド部112の形成領域に凹部130を形成した場合について説明したが、これに限らず、個別パッド部100の形成領域に凹凸部を形成しても構わない。
【0088】
上述した実施形態では、第1チャネル列63及び第2チャネル列64に対応する各種配線と、第3チャネル列65及び第4チャネル列66に対応する各種配線と、を点対称に形成した場合について説明したが、これに限られない。各種配線のレイアウトは、適宜変更が可能である。この場合、上述した実施形態では、入口共通インク室91a〜94a側に接続配線111を形成した場合について説明したが、出口共通インク室91b〜94b側に接続配線を形成しても構わない。
【0089】
上述した実施形態では、個別パッド部100及び共通パッド部112の双方をカバープレート53の裏面でフレキシブル基板120〜123に接続する構成について説明したが、少なくとも個別パッド部100はカバープレート53のうち、裏面以外の部分(例えば、Y方向の両端面等)でフレキシブル基板に接続しても構わない。この場合、特に個別電極77のように、個別に電圧を印加する必要があり、かつ個別にフレキシブル基板120〜123に接続する必要がある電極を、スリット96,97よりも外側で個別配線78に接続することで、配線形成の容易化がより顕著になる。
【0090】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。