(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のフェノール樹脂(b)は、下記式(1)で表されるフェノール化合物と、下記式(2)で表される化合物との反応によってフェノール化合物(a)を得た後、さらに下記式(3)で表されるリン含有化合物を反応させて得ることができる。
【0024】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基又は炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。mはR
1の数を表し、0〜4の整数である。)
【0026】
(式(2)中、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。kはR
2の数を表し、0〜4の整数である。)
【0028】
(式(3)中、R
3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又は芳香族基を表す。)
【0029】
まず、フェノール化合物(a)について説明する。
フェノール化合物(a)は上記式(1)で表される化合物と上記式(2)で表される化合物との反応によって得られる。
【0030】
式(1)においてR
1はそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の無置換のアルキル基、炭素数6〜10の無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、又は炭素数1〜10の無置換のアルコキシ基であることが好ましい。
【0031】
フェノール化合物(a)を得るために、式(2)で表される化合物との反応に用いられる式(1)で表される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノン、2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,3’,4’−トリヒドロキシアセトフェノン、2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン一水和物、4’−ヒドロキシ−3’−メチルアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−2’−メチルアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−5’−メチルアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’−ニトロアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシアセトフェノン、4’,6’−ジメトキシ‐2’−ヒドロキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−3’,4’−ジメトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジメトキシアセトフェノン、5−アセチルサリチル酸メチル、2’,3’−ジヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン水和物、が挙げられる。
【0032】
フェノール化合物(a)を得るために、式(1)で表される化合物との反応に用いられる式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,3‐ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、シリンガアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、イソバニリン、4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒド、5−ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド、バニリン、o−バニリン、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−m−アニスアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メチルイソフタルアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド、5−ニトロバニリン、5−アリル−3−メトキシサリチルアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチルサリチルアルデヒド、3−エトキシサリチルアルデヒド、4−ヒドロキシイソフタルアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、などが挙げられる。これらは1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
フェノール化合物(a)は、酸性条件下もしくは塩基性条件下、式(1)で表される化合物の一種以上と式(2)で表される化合物とのアルドール縮合反応によって得られる。
式(2)で表される化合物は式(1)で表される化合物1モルに対して1.0〜1.05モルを使用する。
【0034】
酸性条件下でアルドール縮合反応を行う場合、用い得る酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸のような無機酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。酸性触媒の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して0.01〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.5モルである。
【0035】
一方、塩基性条件下でアルドール縮合反応を行う場合、用い得る塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の金属水酸化物、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ金属塩、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソブチルアミン、ピリジン及びピペリジン等のアミン誘導体、並びにジメチルアミノエチルアルコール及びジエチルアミノエチルアルコール等のアミノアルコール誘導体が挙げられる。塩基性条件の場合も、先に挙げた塩基性触媒を単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。塩基性触媒の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して0.1〜2.5モル、好ましくは0.2〜2.0モルである。
【0036】
フェノール化合物(a)を得る反応では、必要に応じて溶剤を使用してもよい。用い得る溶剤としては、例えばケトン類のように式(2)で表される化合物との反応性を有するものでなければ特に制限はないが、原料の式(2)で表される化合物を容易に溶解させる点ではアルコール類を溶剤として用いるのが好ましい。
【0037】
反応温度は通常10〜90℃であり、好ましくは35〜70℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。反応終了後、樹脂として取り出す場合には、反応物を水洗後または水洗無しに、加熱減圧下で反応液から未反応物や溶媒等を除去する。結晶で取り出す場合、大量の水中に反応液を滴下することにより結晶を析出させる。塩基性条件で反応を行った場合は生成したフェノール化合物が水中に溶け込むこともありうるので、塩酸を加えるなどして中性〜酸性条件にして結晶として析出させる。
【0038】
本発明のフェノール樹脂(b)は、上記フェノール化合物(a)に上記式(3)で表されるリン含有化合物を付加反応させることにより得ることができる。
上記式(3)で表される化合物は、例えば、HCA(三光株式会社製)として入手することができる。
【0039】
更に本発明のフェノール樹脂(b)の製造方法を具体的に述べると、リン含有化合物中に、フェノール化合物(a)を、発熱に注意しながら、滴下または分割添加することが好ましい。この際、反応溶媒として有機溶剤を用いてもよい。
【0040】
上記フェノール化合物(a)を、リン含有化合物中に滴下する際の温度は、20℃〜200℃が好ましく、反応性の制御、及び反応熱の除去の容易さから、50℃〜160℃が特に好ましい。
【0041】
上記のリン含有化合物と、フェノール化合物(a)を付加反応するときの割合には、特に制限がないが、例えば、得られる生成物が加水分解性に優れる点から、リン含有化合物をフェノール化合物(a)のオレフィン基1当量に対し、1当量ないしはそれ以上過剰(例えば1〜5当量)に用いることが好ましい。また、得られた化合物をエポキシ樹脂用の硬化剤として用いる場合は、過剰に存在するリン含有化合物を存在させたまま使用しても除去してから用いてもよいが、最終的に得られる硬化物が耐熱性、耐湿性に優れる点から、本発明のリン原子含有フェノール化合物とリン含有化合物の合計100重量部中に、本発明のリン原子含有フェノール化合物を少なくとも50重量部以上含有していることが好ましく、更に、80重量部以上含有していることが、とくに好ましい。
【0042】
上記の反応において、反応溶媒として有機溶剤を用いる場合、特に限定されないが、例えば、リン含有化合物、フェノール化合物(a)に不活性であるものが好ましく、例えば、脂肪族アルコール、芳香族炭化水素又はこれらの混合溶剤が用いられる。脂肪族アルコールとしては、用いる反応原料、得られる生成物の溶解度、反応条件、反応の経済性等を考慮して、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコール低級アルキルエーテル類、又は、プロピレングリコール低級アルキルエーテル等を挙げることができる。また、芳香族炭化水素溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン等を挙げることができる。このような溶剤は、通常、用いるリン含有化合物の合計100重量部に対して、20〜500重量部の範囲で用いられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
このようにして得られた本発明のフェノール樹脂(b)は、下記式(4)で表される構造を有する。
【0045】
(式(4)中、R
1、R
2、k、mは式(1)〜(2)と同様であり、Zは水素原子又は下記式(5)の構造を表し、複数存在するZのうち少なくとも一つは下記式(5)の構造を表す。)
【0047】
(式(5)中、R
3は式(3)と同じ。)
【0048】
本発明のフェノール樹脂(b)の水酸基当量は200〜800g/eq.が好ましく、220〜750g/eq.がより好ましい。一方、軟化点は100〜150℃が好ましい。
【0049】
次に、本発明のエポキシ樹脂について説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、上記手法によって得られた本発明のフェノール樹脂(b)とアルコール溶剤中、エピハロヒドリンとを反応させ、エポキシ化することにより得られる。なお、エポキシ化の際には、本発明のフェノール樹脂(b)の1種類のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。また、本発明のフェノール樹脂(b)に、フェノール樹脂(b)以外のフェノール化合物を併用しても良い。
併用できるフェノール樹脂(b)以外のフェノール化合物としては、エポキシ樹脂の原料として通常用いられるフェノール化合物であれば特に制限なく用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂としては、特に優れた溶剤溶解性を示し、なおかつ高い難燃性を有する硬化物が得られることから、式(2)で表される化合物と式(1)で表される化合物との反応によって得られたフェノール化合物(a)と、式(3)で表されるリン含有化合物と反応により得られた本発明のフェノール樹脂(b)のエポキシ化物が好ましい。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用できるが、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、フェノール樹脂(b)の水酸基1モルに対し通常2〜20モル、好ましくは2〜15モル、特に好ましくは2〜4.5モルである。エポキシ樹脂は、アルカリ金属酸化物の存在下でフェノール樹脂(b)とエピハロヒドリンとを付加させ、次いで生成した1,2−ハロヒドリンエーテル基を開環させてエポキシ化する反応により得られる。この際、エピハロヒドリンを上記のように通常より顕著に少ない量で使用することで、エポキシ樹脂の分子量を延ばすとともに分子量分布を広げることができる。この結果、得られるエポキシ樹脂は、比較的低い軟化点を有する樹脂状物として系中から取り出せ、優れた溶剤溶解性を示す。
【0051】
また、エポキシ化の際に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。中でも、アルコール類が好ましく、アルコール溶剤の極性により、エポキシ化時のイオン反応を効率良く進行させることができ、高純度でエポキシ樹脂を得ることができる。さらに、本発明のメソゲン基含有エポキシ樹脂において、α,β−不飽和カルボニル部位が高い反応性を示し、分解しやすい傾向に有るが、アルコール溶剤を用いることにより、溶媒和されるため、分解反応を受けにくくなる。用い得るアルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。中でも、エポキシ樹脂との相溶性の観点から、メタノールを用いることが特に好ましい。
【0052】
上記アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%、好ましくは4〜35質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜80質量%である。
【0053】
上記エポキシ化反応においてはアルカリ金属水酸化物が使用できる。
エポキシ化反応に使用できるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらは固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、本発明のフェノール樹脂(b)の水酸基1モルに対して通常0.9〜3.0モル、好ましくは1.0〜2.5モル、より好ましくは1.0〜2.0モル、特に好ましくは1.0〜1.3モルである。
また、本発明者等は、エポキシ化反応において、特にフレーク状の水酸化ナトリウムを用いることで、水溶液とした水酸化ナトリウムを使用するよりも得られるエポキシ樹脂に含まれるハロゲン量を顕著に低減させることが可能となることを知見するに至った。更にこのフレーク状の水酸化ナトリウムは、反応系内に分割添加されることが好ましい。分割添加を行なうことで、反応温度の急激な減少を防ぐことができ、これにより不純物である1,3−ハロヒドリン体やハロメチレン体の生成を防止することができる。
【0054】
エポキシ化反応を促進するために、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することが好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としては、本発明のフェノール樹脂の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0055】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。中でも、アルコール溶剤を用いた場合、50℃〜90℃が好ましく、60〜85℃がより好ましく、70〜80℃が特に好ましい。
反応終了後、反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下で反応液からエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また得られたエポキシ樹脂中に含まれるハロゲン量をさらに低減させるために、回収した本発明のエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行ない、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、本発明のフェノール樹脂の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0056】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下で溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。また、本発明のエポキシ樹脂が結晶として析出する場合は、大量の水に生成した塩を溶解した後に、本発明のエポキシ樹脂の結晶を濾取してもよい。
【0057】
上記の通りフレーク状の水酸化ナトリウムを使用して得られる本発明のエポキシ樹脂の全ハロゲン量は1800ppm以下が通常であり、1600ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1300ppm以下である。全ハロゲン量が多すぎるものは硬化物の電気信頼性に悪影響を及ぼすことがある。
【0058】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂及び本発明のフェノール樹脂の少なくともどちらか1つを必須成分として含有する。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂を必須成分として含有する場合には、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。
【0060】
他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD及びビスフェノールI等)やフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド及びシンナムアルデヒド等)との重縮合物、キシレン等の芳香族化合物とホルムアルデヒドの重縮合物とフェノール類との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン及びイソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン及びベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール及びビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン及びビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル及びビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、並びにアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは、1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のエポキシ樹脂を併用する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分に占める本発明のエポキシ樹脂の割合は30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、特に好ましくは100質量%(他のエポキシ樹脂を併用しない場合)である。ただし、本発明のエポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、全エポキシ樹脂中で1〜30質量%となる割合で添加する。
【0061】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂を必須成分として含有する場合には、硬化剤を用いることが好ましい。この場合、用い得る硬化剤としては、前述の本発明のフェノール樹脂であっても良く、その他の硬化剤であっても良い。その他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物等が挙げられる。これら他の硬化剤の具体例を下記(a)〜(e)に示す。
(a)アミン系化合物 ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン及びナフタレンジアミン等
(b)酸無水物系化合物 無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等
(c)アミド系化合物 ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等、
【0062】
(d)フェノール系化合物 多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p−ヒドロキシアセトフェノン及びo−ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類
(e)その他 イミダゾール類、BF
3−アミン錯体、グアニジン誘導体
【0063】
これら他の硬化剤の中ではジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン及びナフタレンジアミンなどのアミン系化合物、並びにカテコールとアルデヒド類、ケトン類、ジエン類、置換ビフェニル類又は置換フェニル類との縮合物などの活性水素基が隣接している構造を有する硬化剤がエポキシ樹脂の配列に寄与するため好ましい。
他の硬化剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0064】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のフェノール樹脂を硬化剤として用いる場合には、本発明のフェノール樹脂以外に、その他の硬化剤を併用して用いてもよい。併用して用いられる硬化剤としては、例えば、前述と同様の、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物等が挙げられる。
【0065】
他の硬化剤を併用する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物中の全硬化剤成分に占める本発明のフェノール樹脂の割合は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のフェノール化合物を含む全硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜2.0当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要により硬化促進剤を添加しても良い。硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルフォスフィン、ビス( メトキシフェニル) フェニルフォスフィン等のフォスフィン類、2―メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2―エチル,4―メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が例示される。
硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部当たり、通常0.2〜5.0重量部、好ましくは、0.2〜4.0重量部である。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物(以下、硬化性樹脂組成物とも称する)には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてシランカップリング剤、離型剤及び顔料等種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂並びに各種熱可塑性樹脂等を添加することができる。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の具体例としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、シアナート樹脂、イソシアナート化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビニルベンジルエーテル化合物、ポリブタジエンおよびこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、インデン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂は本発明のエポキシ樹脂組成物中において60質量%以下を占める量が用いられる。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られ、その好ましい用途としては半導体封止材やプリント配線板等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られているのと同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物の必須成分であるエポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材、並びに必要により硬化促進剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂等を、必要に応じて押出機、ニーダ又はロール等を用いて均一になるまで充分に混合して得られた本発明のエポキシ樹脂組成物を、溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更にその融点以上で2〜10時間加熱することにより本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることが出来る。前述の方法でリードフレーム等に搭載された半導体素子を封止することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いることができる。
【0070】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は溶剤を含むワニスとすることもできる。該ワニスは、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤のうち、少なくとも一方に本発明のエポキシ樹脂、もしくは本発明のフェノール樹脂を含み、必要に応じて無機充填材などのその他の成分を含む混合物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤と混合することにより得ることが出来る。溶剤の量はワニス全体に対し通常10〜95質量%、好ましくは15〜85質量%である。
上記のようにして得られるワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維及び紙などの繊維基材に含浸させた後に加熱によって溶剤を除去すると共に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化状態とすることにより、本発明のプリプレグを得ることが出来る。尚、ここで言う「半硬化状態」とは、反応性の官能基であるエポキシ基が一部未反応で残っている状態を意味する。該プリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることが出来る。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。合成例、実施例、比較例において部は質量部を意味する。
なお、水酸基当量、軟化点、は以下の条件で測定した。
・水酸基当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K−7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
【0072】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、4’−ヒドロキシアセトフェノン150部、バニリン167部およびエタノール221部を仕込み、溶解した。これに97質量%硫酸22部を添加後60℃ まで昇温し、この温度で10時間反応後、反応液を水1324部に注入し、晶析させた。結晶を濾別後、水662部で2回水洗し、その後真空乾燥し、黄色結晶のフェノール化合物(a)を282部得た。得られた結晶のDSC測定による吸熱ピーク温度は233℃であった。
【0073】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらHCA(三光株式会社製)178部、キシレン360部を加え、100℃に加熱した。そこにフェノール化合物(a)200部を1時間かけて分割添加し、その後130℃に昇温し、10時間加熱還流した。反応物にエタノール180部を加えた後、エバポレーターで溶媒を減圧留去し、本発明のフェノール樹脂(b)(P1)を320g得た。得られたフェノール樹脂(b)の水酸基当量は243g/eqであり、軟化点は135.8℃であった。
【0074】
(実施例2)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら本発明のフェノール樹脂(P1 水酸基当量243g/eq.)163部、エピクロロヒドリン433部(7モル当量 対 フェノール樹脂)、メタノール130部を加え、撹拌下で溶解し、70〜75℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム30部を90分かけて分割添加した後、更に75℃で75分反応を行った。反応終了後、水90部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン380部を加え溶解し、75℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液11部を加え、1時間反応を行った後、油層の洗浄水が中性になるまで水洗を行った。得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP1)183部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は304g/eq.であった。
【0075】
(実施例3〜6、比較例1)
実施例1で得られたフェノール樹脂(P1)ないし比較用のフェノール樹脂(P3)を、エポキシ樹脂(EP1及びEP2)、フィラー(無機充填材)、ワックス、カップリング剤、硬化促進剤を表1の割合(当量)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、硬化性樹脂組成物を得た。この硬化性樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化された硬化性樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化し、評価用試験片を得た。この評価用試験片を用いて、耐熱性と難燃性を以下の要領で測定、評価した。試験結果を表1に示す。
【0076】
<耐熱性試験>
動的粘弾性測定器:TA−instruments製、DMA−2980
測定温度範囲:−30℃〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
解析条件Tg:DMA測定に於けるTanδのピーク点(tanδMAX)をTgとした。
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計。
【0077】
【表1】
【0078】
EP1:日本化薬社製 NC2000L
EP2:日本化薬社製 NC3000
P3:三井化学社製 ミレックスXLC−3L
P2:P1とP3を重量比で33:67の割合になるように混合
P4:P1とP3を重量比で5:95の割合になるように混合
P5:P1とP3を重量比で10:90の割合になるように混合
ワックス:カルナバ1号
硬化促進剤:トリフェニルフォスフィン(北興化学社製 TPP)
カップリング剤:信越化学工業社製 KBM−303
無機充填材:溶融シリカ 瀧森工業社製 MSR−2122 対樹脂83wt%
硬化促進剤使用量:
耐熱性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し1%とし、難燃性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し2%とした。
ワックス使用量:0.3重量% 対組成物
カップリング剤使用量:0.4重量% 対フィラー
エポキシ樹脂・硬化剤比率:1等当量
【0079】
上記表から明らかなように、本発明のフェノール樹脂は、比較例のフェノール樹脂と比較して、耐熱性、難燃性共に優れるという結果が示された。
【0080】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2013年10月9日付で出願された日本国特許出願(特願2013−211750)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。