特許第6671986号(P6671986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671986
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】電流センサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-14026(P2016-14026)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-133943(P2017-133943A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−523751(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/002501(WO,A1)
【文献】 特開2007−212307(JP,A)
【文献】 特開2005−283451(JP,A)
【文献】 特開平08−136587(JP,A)
【文献】 特開2002−107385(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/010210(WO,A1)
【文献】 実開平04−032078(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0021249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通流方向と直交する断面が長方形の第1の導体部と、
通流方向と直交する断面が長方形であり、当該長方形の短辺および長辺が前記第1の導部の長方形の短辺および長辺と、通流方向に延在する少なくとも一部分において平行するように設けられ、電流流入部および電流流出部がそれぞれ前記第1の導体部の電流流入部および電流流出部と電気的に接続された第2の導体部と、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とが平行する部分における前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の非導領域内において、前記短辺に沿った方向の異なる位置に設けられ、前記第1の導体部および前記第2の導体部を流れる電流によって生じる誘導磁界を検出する第1の磁気センサおよび第2の磁気センサと、
を有し、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とは別体であり、電流流入部同士および電流流出部同士が、直接あるいは間接的に電気接続されており、
前記第1の導体部の前記長辺を形成し前記通流方向に沿った面と、前記第2の導体部の前記長辺を形成し前記通流方向に沿った面とが向かい合っており、
前記非導電領域の幅となる前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の距離である非導電領域幅xと、
前記非導電領域幅xの方向と前記第1の導体部および前記第2の導体部の電流方向との双方に直交する方向の高さtとの下記式(1)
[数1]
R=t/x …(1)
で示される比率Rが、下記式(2)
[数2]
1/4≦R≦1 …(2)
を満たし、
前記第1の磁気センサは前記第2の磁気センサに比べて前記第1の導体部側に設けられ、
前記第2の磁気センサは前記第1の磁気センサに比べて前記第2の導体部側に設けられ、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とは、前記高さの方向および電流の通流方向の双方に沿った仮想面に対して面対称であり、
前記第1の導体部と前記第1の磁気センサの距離と、前記第2の導体部と前記第2の磁気センサの距離とが等しく、
前記比率Rは、前記式(2)の範囲において、前記非導電領域内の前記非導電領域幅xの方向における中心の磁束密度勾配が最大となるように規定されている
電流センサ。
【請求項2】
前記第1の導体部および前記第2の導体部は平板状である
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1の導体部は平板状であり、
前記第2の導体部は、前記第1の導体部との間に前記非導領域を形成するように屈曲部を有する
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1の導体部と前記第2の導体部とは、前記通流方向における前記非導電領域の両端で電気的に直接接続している
請求項2または請求項3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記第2の導体部は、前記第1の導体部と面接する第1の平板部と、前記第1の導体部と面接する第2の平板部と、前記第1の導体部と平行に離間して位置する第3の平板部と、前記第1の平板部と前記第3の平板部の一端との間に介在する第4の平板部と、前記第2の平板部と前記第3の平板部の他端との間に介在する第5の平板部とを有し、
前記第1の平板部と前記第4の平板部、前記第3の平板部と前記第4の平板部、前記第2の平板部と前記第5の平板部、前記第3の平板部と前記第5の平板部とが、前記屈曲部を形成している
請求項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1の導体部と前記第2の導体部とは、前記長辺の方向および前記通流方向の双方に沿った仮想面に対して面対称であり、
前記断面方向において、前記第1の導体部と前記第1の磁気センサの距離と、前記第2の導体部と前記第2の磁気センサの距離とが等しい
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1の磁気センサと前記第2の磁気センサとの検出結果の差から前記第1の導体部および前記第2の導体部を流れる電流値を算出する処理部
をさらに有する請求項1〜のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電流センサの製造方法であって、
前記第1の導体部の長方形の断面の短辺および長辺が、前記第2の導体部の長方形の断面の短辺および長辺と、通流方向に延在する少なくとも一部分においてそれぞれ平行になる姿勢にする第1の工程と、
前記第1の工程の姿勢において、前記第1の導体部の電流流入部と前記第2の導体部の電流流入部とで、断面が長方形の平板状の形状を持った第3の導体の端部を挟み込むとともに、前記第1の導体部の電流流出部と前記第2の導体部の電流流出部とで、断面が長方形の平板状の形状を持った第4の導体の端部を挟み込むことにより、前記第1の導体部および前記第2の導体部の電流流入部同士および電流流出部同士を電気接続する第2の工程と、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とが平行する部分における前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の非導領域内において、前記短辺に沿った方向の異なる位置に第1の磁気センサおよび第2の磁気センサを配置する第3の工程と
を有する電流センサ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体を流れる電流を検出する電流センサおよびその製造方法
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電流路(バスバー)となる導電体に貫通穴を設け、当該貫通穴に2つの磁気センサを設けた電流センサが特許文献1に開示されている。この電流センサでは、2つの磁気センサを近づけて設けているため、空間的に偏った外来磁場(ノイズとなる磁場)の原因となる磁気ノイズ源がある場合でも、2つの磁気センサ付近に生じる外来磁場をほぼ等しくできる。そのため、2つの磁気センサ付近の磁界検出結果の差を算出することで、外来磁場の磁界成分を除去でき、測定誤差を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−184269号公報
【特許文献2】特開平9−93771号公報
【特許文献3】特開平10−73619号公報
【特許文献4】特開2003−28899号公報
【特許文献5】特開2010−85228号公報
【特許文献6】特開2010−112767号公報
【特許文献7】特開2010−117165号公報
【特許文献8】特開2010−121983号公報
【特許文献9】特開2014−55790号公報
【特許文献10】特開2015−72124号公報
【特許文献11】特開2015−135267号公報
【特許文献12】特開2015−137892号公報
【特許文献13】特開2015−137894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電流センサでは、2つの磁気センサを近づけすぎると、当該2つの磁気センサ付近に生じる誘導磁界の差が小さくなり、S/N特性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
また、特許文献2〜13には、バスバーを開口部により分流する構成の電流センサが開示されている。しかしながら、特許文献2〜13に開示された電流センサでは、開口部の幅に対して高さ(厚さ)が薄く、開口部内における磁束密度勾配が小さい。そのため、2つの磁気センサを近づけすぎると、当該2つの磁気センサ付近に生じる誘導磁界の差が小さくなり、S/N特性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、外来磁場の影響を抑制して導電体を流れる電流を高精度に検出でき、且つ簡単に製造できる電流センサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明の電流センサは、通流方向と直交する断面が長方形の第1の導体部と、通流方向と直交する断面が長方形であり、当該長方形の短辺(幅)および長辺(高さ)が前記第1の導部の長方形の短辺および長辺と、通流方向に延在する少なくとも一部分において平行するように設けられ、電流流入部および電流流出部がそれぞれ前記第1の導体部の電流流入部および電流流出部と電気的に接続された第2の導体部と、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが平行する部分における前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の非導領域内において、前記短辺に沿った方向の異なる位置に設けられ、前記第1の導体部および前記第2の導体部を流れる電流によって生じる誘導磁界を検出する第1の磁気センサおよび第2の磁気センサとを有し、前記第1の導体部と前記第2の導体部とは別体であり、電流流入部同士および電流流出部同士が、直接あるいは間接的に電気接続されており、前記第1の導体部の前記長辺を形成し前記通流方向に沿った面と、前記第2の導体部の前記長辺を形成し前記通流方向に沿った面とが向かい合っている。
前記非導電領域の幅となる前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の距離である非導電領域幅xと、
前記非導電領域幅xの方向と前記第1の導体部および前記第2の導体部の電流方向との双方に直交する方向の高さtとの下記式(1)
[数1]
R=t/x …(1)
で示される比率Rが、下記式(2)
[数2]
1/4≦R≦1 …(2)
を満たし、
前記第1の磁気センサは前記第2の磁気センサに比べて前記第1の導体部側に設けられ、
前記第2の磁気センサは前記第1の磁気センサに比べて前記第2の導体部側に設けられ、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とは、前記高さの方向および電流の通流方向の双方に沿った仮想面に対して面対称であり、
前記第1の導体部と前記第1の磁気センサの距離と、前記第2の導体部と前記第2の磁気センサの距離とが等しく、
前記比率Rは、前記式(2)の範囲において、前記非導電領域内の前記非導電領域幅xの方向における中心の磁束密度勾配が最大となるように規定されている。
【0008】
この構成によれば、前記第1の導体部および前記第2の導体部の長方形の断面の長辺を長くするだけで、簡単な加工により、非導電領域の高さ方向を長くできる。すなわち、1本の導体体をくり抜いて非導電領域を形成する場合には、くり抜きが深いと加工が難しくなるが、本発明ではくり抜き加工が不要であり、簡単且つ安価にできる。
非導電領域の高さ方向を長くすることにより、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが位置する非導体領域内の磁束密度勾配を大きくできるので、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサに生じる第1の導電部および第2の導電部を流れる電流の誘導磁界の差を大きくすることができ、高い測定精度を得ることができる。
また、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが位置する非導体領域内の磁束密度勾配を大きくできるので、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサを近づけることができ、両磁気センサに生じる外来磁場の影響を高精度に除去でき、高い測定精度を実現できる。
【0009】
また、この構成によれば、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサに、それぞれ第1の導部および第2の導部から逆方向の磁界が与えられる。また、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサには、略同じ大きさ且つ略同一方向の外来磁界が与えられる。
そのため、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサの検出結果の差から、前記第1の導体部および前記第2の導体部を流れる電流値を算出できる。
また、この構成によれば、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが位置する非導領域内の磁束密度勾配を大きくできるので、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサに生じる第1の導部および第2の導部を流れる電流の誘導磁界の差を大きくすることができ、高い測定精度を得ることができる。
【0010】
また、この構成によれば、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが位置する非導領域内の磁束密度勾配を大きくできるので、第1の磁気センサおよび第2の磁気センサを近づけることができ、両磁気センサに生じる外来磁場の影響を高精度に除去でき、高い測定精度を実現できる。
【0011】
また、この構成によれば、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが前記仮想面に対して面対称であり、且つ前記第1の導体部と前記第1の磁気センサの距離と、前記第2の導体部と前記第2の磁気センサの距離とが等しい。そのため、前記第1の磁気センサおよび前記第2の磁気センサの位置決めが容易となり、高い位置決め精度により高精度な測定を行うことができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0012】
好適には本発明の電流センサの前記第1の導体部および前記第2の導体部は平板状である。
この構成によれば、前記第1の導体部および前記第2の導体部が平板状であるため、簡単な加工により、非導電領域の高さ方向を長くできる。
【0013】
好適には本発明の電流センサの前記第1の導体部は平板状であり、前記第2の導体部は、前記第1の導体部との間に前記非導領域を形成するように屈曲部を有する。
この構成によれば、前記第2の導体部に屈曲部を持たせることで、前記非導電領域における前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の距離を長くすることができる。
【0014】
好適には本発明の電流センサの前記第1の導体部と前記第2の導体部とは、前記通流方向における前記非導電領域の両端で電気的に直接接続している。
【0015】
好適には本発明の電流センサの前記第2の導体部は、前記第1の導体部と面接する第1の平板部と、前記第1の導体部と面接する第2の平板部と、前記第1の導体部と平行に離間して位置する第3の平板部と、前記第1の平板部と前記第3の平板部の一端との間に介在する第4の平板部と、前記第2の平板部と前記第3の平板部の他端との間に介在する第5の平板部とを有し、前記第1の平板部と前記第4の平板部、前記第3の平板部と前記第4の平板部、前記第2の平板部と前記第5の平板部、前記第3の平板部と前記第5の平板部とが、前記屈曲部を形成している。
この構成によれば、前記第1の導体部および前記第2の導体部の双方に前記屈曲部を持たせることで、前記第1の導体部および前記第2の導体部の間の距離を簡単な構成で長くすることができる。
この構成によれば、前記第1の導体部と前記第2の導体部とで、前記電流流入部および前記電流流出部をそれぞれ直接接続するため、前記第1の導体部と前記第2の導体部とを接続するための導電部を別途設ける必要がなく、構成を簡単且つ安価にできる。
この構成によれば、非導電領域内において、前記第1の導体部および前記第2の導体部の双方から発生する誘導磁界の強さの広がりパターンが同一となるので、非導電領域の中央付近の磁束密度勾配が直線に近づき、測定精度を高める設計が容易である。
【0016】
好適には本発明の電流センサの前記第1の導体部と前記第2の導体部とは、前記長辺の方向および前記通流方向の双方に沿った仮想面に対して面対称であり、前記断面方向において、前記第1の導体部と前記第1の磁気センサの距離と、前記第2の導体部と前記第2の磁気センサの距離とが等しい。
【0017】
この構成によれば、前記第1の磁気センサおよび前記第2の磁気センサの位置決めが容易となり、高い位置決め精度により高精度な測定を行うことができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0023】
好適には本発明の電流センサは、前記比率Rが下記式(3)を満たす。
[数3]
0. 4≦R≦0.6 …(3)
【0025】
好適には本発明の電流センサは、前記第1の磁気センサと前記第2の磁気センサとの検出結果の差から前記第1の導体部および前記第2の導体部を流れる電流値を算出する処理部をさらに有する。
この構成によれば、前記第1の磁気センサと前記第2の磁気センサとの検出結果の差を求めることで、外来磁場の影響を除去できる。
【0026】
本発明の電流センサ製造方法は、上述した本発明の電流センサの製造方法であって、前記第1の導体部の長方形の断面の短辺および長辺が、前記第2の導体部の長方形の断面の短辺および長辺と、通流方向に延在する少なくとも一部分においてそれぞれ平行になる姿勢にする第1の工程と、前記第1の工程の姿勢において、前記第1の導体部の電流流入部と前記第2の導体部の電流流入部とで、断面が長方形の平板状の形状を持った第3の導体の端部を挟み込むとともに、前記第1の導体部の電流流出部と前記第2の導体部の電流流出部とで、断面が長方形の平板状の形状を持った第4の導体の端部を挟み込むことにより、前記第1の導体部および前記第2の導体部の電流流入部同士および電流流出部同士を電気接続する第2の工程と、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが平行する部分における前記第1の導体部と前記第2の導体部との間の非導領域内において、前記短辺に沿った方向の異なる位置に第1の磁気センサおよび第2の磁気センサを配置する第3の工程とを有する。
【0027】
この構成によれば、前記第1の導体部および前記第2の導体部の長方形の断面の長辺を長くするだけで、簡単な加工により、非導電領域の高さを長くできる。すなわち、1本の導体体をくり抜いて非導電領域を形成する場合には、くり抜きが深いと加工が難しくなるが、本発明ではくり抜き加工が不要であり、簡単且つ安価にできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、外来磁場の影響を抑制して導電体を流れる電流を高精度に検出でき、且つ簡単に製造できる電流センサおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る電流センサの構成を説明するための斜視図である。
図2図2は、図1に示す断面線A−Aにおける断面図である。
図3図3は、図2における導電部を流れる電流によって生じる磁界の分布を説明するための図である。
図4図4は、図2における各部の長さの比率を説明するための図である。
図5図5は、図1に示す電流センサの非導電領域内の磁束密度分布を説明するための図である。
図6図6は、図1に示す電流センサの非導電領域幅xが5mmの場合の非導電領域の高さtと、磁束密度勾配の関係を示す図である。
図7図7は、図1に示す電流センサの非導電領域の比率Rと磁束密度勾配の関係を示す図である。
図8図8は、図1に示す電流センサの隣接導体からの外来磁場の影響を説明するための図である。
図9図9は、図1に示す第1の磁気センサと第2の磁気センサとの間の距離と、処理部で算出した差との関係を説明するための図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係る本実施形態の電流センサを説明するための図である。
図11図11は、図10に示す電流センサの製造工程を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、本発明の第3実施形態に係る本実施形態の電流センサを説明するための図である。
図13図13は、本発明の第4実施形態に係る本実施形態の電流センサを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る電流センサを説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電流センサの構成を説明するための斜視図、図2図1に示す断面線A−Aにおける断面図、図3図2における導電部を流れる電流によって生じる磁界の分布を説明するための図、図4図2における各部の長さの比率を説明するための図である。
【0031】
図1に示すように、電流センサ1は、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cを備えた導電体11、第1の磁気センサ15、第2の磁気センサ17および処理部21を有する。
【0032】
図1および図2に示すように、電流センサ1は、断面矩形の板状で、通流方向(電流方向)であるY1方向の所定の位置に開口部(貫通孔)である非導電領域13が形成された導電体11を有している。
非導電領域13のX1方向側には第1の導体部11bが位置し、X2方向側には第2の導体部11cが位置している。
第1の導体部11bおよび第2の導体部11cの通流方向と直交する断面は長方形であり、例えば同一の大きさである。
【0033】
第1の導体部11bの電流流入部11b1と、第2の導体部11cの電流流入部11c1とが第3の導電部11aで電気的に接続されている。また、第1の導体部11bの電流流出部11b2と、第2の導体部11cの電流流出部11c2とが第4の導電部11dで電気的に接続されている
第1の導体部11bおよび第2の導体部11cの各々には、図1および図2に示すように、第3の導電部11aおよび第4の導電部11dに流れる電流Iの1/2となる電流Ibおよび電流Icが流れる。
【0034】
非導電領域13は、X1−X2方向における第1の導体部11bと第2の導体部11cとの間に位置し、導電体11のZ1側およびZ2側の面との間の貫通した直方体形状をしている。
【0035】
非導電領域13内には、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cとの間の距離が相互に異なる位置に、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17が設けられている。
具体的には、第1の磁気センサ15は、第2の導体部11cに比べて第1の導体部11b側に設けられている。第2の磁気センサ17は第1の導体部11bに比べて第2の導体部11c側に設けられている。第1の導体部11bおよび第2の導体部11cは、これらの長方形の断面の長辺の方向および通流方向の双方に沿った仮想面31に対して面対称であり、断面方向(X−Z面方向)において、第1の導体部11bと第1の磁気センサ15との間の距離と、第2の導体部11cと第2の磁気センサ17との間の距離とが等しい。
第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17は、図示しない基板上等に固定されている。
【0036】
第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17とは同じ磁気検出特性を有している。
図3に示すように、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17は、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cを流れる電流によって生じる第1の誘導磁界Bbおよび第2の誘導磁界Bcを検出する。
【0037】
第1の磁気センサ15及び第2の磁気センサ17は、例えば磁気抵抗効果素子(GMR素子,TMR素子など)を含んで構成されており、特定の感度軸の磁界に対して強い感度を示す。例えば、第1の磁気センサ15の感度軸S1および第2の磁気センサ17の感度軸S2は何れもZ2の向きである。
【0038】
本実施形態では、図4に示すように、非導電領域13の幅となる第1の導体部11bと第2の導体部11cとの間のX1−X2方向の距離を非導電領域幅xとする。
また、Z1−Z2方向の非導電領域13の高さをtとする。
【0039】
図5は、図1に示す電流センサ1の非導電領域13内の磁束密度分布を説明するための図である。
図5では、t=2.2mm、x=5mmとし、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cの幅を1.8mmとし、40Aの電流Iを流す場合でシミュレーションした結果である。この場合に、非導電領域13の中心付近の磁束密度勾配は約1.0mT/mmとなり、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との間の検出磁界の差が約1mT必要であると、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17とのX1−X2方向の間隔は1.0mm必要となる。
【0040】
図6は、図1に示す電流センサ1の非導電領域幅xが5mmの場合の非導電領域13の高さtと、磁束密度勾配の関係を示す図である。
図6のシミュレーションは、図5の場合と同じ条件で行った。
【0041】
図7図1に示す電流センサ1の非導電領域13の比率Rと磁束密度勾配の関係を示す図である。
図7のシミュレーションは、x=6mmとし、80Aの電流Iを流す場合で行った。
【0042】
図4図7に示すように、電流センサ1では、下記式(1)で示される非導電領域13の非導電領域幅xと高さtとの比率Rが、非導電領域13内のX1−X2方向における磁束密度勾配の最大値から所定の範囲内になるように規定されている。
【0043】
[数1]
R=t/x …(1)
【0044】
比率Rは、好ましくは下記式(2)の条件を満たす。
【0045】
[数2]
1/4≦R≦1 …(2)
【0046】
比率Rは、さらに好ましくは非導電領域13内の磁束密度勾配の最大値付近になるように規定され、例えば、下記式(3)の条件を満たす。
【0047】
[数3]
0. 4≦R≦0.6 …(3)
【0048】
処理部21は、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17の磁界検出結果を入力し、これらを基に、導電体11を流れる電流値を算出する。
具体的には、処理部21は、第1の磁気センサ15の第1の磁気検出結果と第2の磁気センサ17の第2の磁気検出結果との差から、導電体11を流れる電流値を算出する。
【0049】
以下、電流センサ1の作用を説明する。
導電体11の第3の導電部11aからの電流Iが、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cにI/2ずつ分流される。具体的には、第1の導体部11bの電流流入部11b1から電流流出部11b2に向けてI/2の電流Ibが流れる。第2の導体部11cの電流流入部11c1から電流流出部11c2に向けてI/2の電流Icが流れる。
【0050】
図3に示すように、第1の導体部11bを流れる電流Ibにより、電流方向に対する右ネジの方向に第1の誘導磁界Bbが生じる。第2の導体部11cを流れる電流Icにより、電流方向に対する右ネジの方向に第2の誘導磁界Bcが生じる。
ここで、上述したように電流Ibと電流Icとは共にI/2である。そのため、非導電領域13内において、第1の誘導磁界Bbと第2の誘導磁界Bcとは向きが逆で、大きさ同じである。
【0051】
具体的には、図3に示すように、非導電領域13内の第1の磁気センサ15の位置には第1の導体部11bによりZ1方向の第1の誘導磁界Bbが生じる。一方、第2の磁気センサ17の位置には第2の導体部11cによりZ2方向の第2の誘導磁界Bcが生じる。両磁界の大きさは略同じである。
【0052】
本実施形態では、非導電領域幅xを「5mm」とし、高さtを「2.2mm」とした。
この場合に、図5および図6に示すように、非導電領域幅x方向における非導電領域13内の磁束密度勾配は最大付近になる。
そのため、非導電領域13内において、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17とのX1−X2方向の距離を「0.6〜3.0mm」のように近距離にしても、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との間に誘導磁界の差を大きくできる。
【0053】
ここで、第1の導体部11bの第1の誘導磁界Bbの第1の磁界検出結果をVbとし、第2の導体部11cの第2の誘導磁界Bcの第2の磁界検出結果をVcとする。
処理部21は、下記式(4)に示すように、第1の磁界検出結果をVbと第2の磁界検出結果をVcとの差である。
【0054】
[数4]
V=Vb−Vc …(4)
【0055】
処理部21は、上記式(4)を演算して得たVに基づいて、導電体11を流れる電流値を算出する。
【0056】
電流センサ1による外来磁界の影響の抑制に関する作用を説明する。
図8は、電流センサ1の隣接導体からの外来磁場の影響を説明するための図である。図9は、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との間の距離と、処理部21で算出した差との関係を説明するための図である。
図9は、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17の中心と隣接導体83の中心との距離(横軸)と、隣接導体83からの外乱磁場による算出電流値への影響(縦軸)との関係を、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17の複数の距離について示した図である。
【0057】
図8に示すように、隣接導体からの外乱磁界Bnが存在する場合に、第1の磁気センサ15に生じる磁界は、第1の誘導磁界Bbと外来磁界Bnの第1の合成磁界(Bb+Bnb)になる。
また、第2の磁気センサ17に生じる磁界は、第2の磁界Bcと外来磁界Bnの第2の合成磁界(Bc+Bnc)になる。
ここで、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17とは近接しているため、外来磁界BnbとBncの大きさは略同じになる。
【0058】
第1の磁気センサ15の第1の合成磁界(Bb+Bnb)の第1の磁界検出結果を(Vb+Vnb)とし、第2の磁気センサ17の第2の合成磁界(Bc+Bnc)の第2の磁界検出結果を(Vc+Vnc)とする。
処理部21は、下記式(5)に示すように、第1の磁界検出結果(Vb+Vnb)と第2の磁界検出結果(Vc+Vnc)との差を算出する。このとき、外来磁界Bnb,Bncの成分である(Vnb―Vnc)は非常に小さく無視できる。
【0059】
[数5]
V=(Vb+Vnb)−(Vc+Vnc)
=(Vb−Vc)+(Vnb―Vnc) …(5)
【0060】
図9に示すように、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との距離が短い方が、隣接導体83からの外乱磁場による算出電流値への影響(縦軸)を小さくできる。
また、隣接導体83からの外乱磁場による算出電流値への影響が同じであれば、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との距離が短い方が、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17の中心と隣接導体の中心との距離(横軸)を短くできる。
【0061】
隣接導体83からの外乱磁場による算出電流値への影響を、1×10−5T(信号磁界1mTとするとその1%)まで許容し、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との距離1.0mmの場合は、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17の中心と隣接導体83の中心との距離は約27mm以上確保する必要がある。
隣接導体83からの外乱磁場による算出電流値への影響を抑えるためには差動処理する第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17との距離を短くする必要がある。
【0062】
以上説明したように、電流センサ1では、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17に、それぞれ第1の導体部11bおよび第2の導体部11cから逆方向の誘導磁界が与えられる。また、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17には、略同じ大きさ且つ略同一方向の外来磁界が与えられる。
そのため、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17の検出結果の差を算出することで、外来磁界の影響を抑制して、導電体11を流れる電流値を高精度に算出できる。
【0063】
また、電流センサ1によれば、非導電領域幅xと高さtとの比率Rを上述した式(1)〜(3)に示すように規定したことで、非導電領域13内の磁束密度勾配を大きくできる。そのため、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17に生じる第1の導体部11bおよび第2の導体部11cを流れる電流の誘導磁界の差を大きくすることができ、高い測定精度を得ることができる。
【0064】
すなわち、導電体11の最大電流に応じて一定に規定されている場合に、非導電領域13の寸法を規定する比率Rを上述したように規定することで、非導電領域13内に磁束密度勾配を最大付近にすることができることを見出した。この非導電領域13の形状は、高さtが大きく、特許文献2〜13に開示された電流路の形状の思想とは大きく異なる。
【0065】
また、電流センサ1によれば、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17が位置する非導体領域13内の磁束密度勾配を大きくできるので、第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17とを近づけることができ、両磁気センサに生じる外来磁場の影響を高精度に除去でき、高い測定精度を実現できる。
【0066】
また、電流センサ1によれば、第1の導体部11b、第2の導体部11c、第3の導電部11aおよび第4の導電部11dの断面を矩形にしたことで、比較的、シンプルな形状にすることができ、簡単な加工により製造工程を簡単できる。
【0067】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係る本実施形態の電流センサ201を説明するための図である。
電流センサ201は、第1の導体部211b、第2の導体部211c、第3の導体部211a、第4の導体部211dを各々別体として有する。
第1の導体部211bおよび第2の導体部211cは、平板状であり、その通流方向(Y1−Y2方向)と直交する断面は長方形である。ここで、当該長方形の短辺はX1−X2方向に平行であり、長辺はZ1−Z2方向に平行である。
すなわち、第1の導体部211bおよび第2の導体部211cは、長辺を形成し通流方向(Y1−Y2方向)に沿った面同士が向かい合っている。
【0068】
第1の導体部211bの電流流入部211b1と、第2の導体部211cの電流流入部211c1とが第3の導電部211aで電気的に接続されている。また、第1の導体部211bの電流流出部211b2と、第2の導体部211cの電流流出部211c2とが第4の導電部211dで電気的に接続されている
第1の導体部211bおよび第2の導体部211cの断面の面積は同じであり、第3の導電部211aに流れる電流Iの1/2となる電流Ibおよび電流Icが各々に流れる。
【0069】
電流センサ201は、第1の導体部211b、第2の導体部211c、第3の導体部211aおよび第4の導体部211dで囲まれた非導電領域213を有する。
非導電領域213内には、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cとの間のX−X2方向の距離が相互に異なる位置に、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17が設けられている。
【0070】
具体的には、第1の磁気センサ15は、第2の導体部211cに比べて第1の導体部211b側に設けられている。第2の磁気センサ17は第1の導体部211bに比べて第2の導体部211c側に設けられている。第1の導体部211bおよび第2の導体部211cは、これらの長方形の断面の長辺の方向(Z1−Z2方向)および通流方向(Y1−Y2方向)の双方に沿った仮想面31に対して面対称であり、断面方向(X−Z面方向)において、第1の導体部211bと第1の磁気センサ15との間の距離と、第2の導体部211cと第2の磁気センサ17との間の距離とが等しい。
第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17は、第1の導体部211bおよび第2の導体部211cを流れる電流によって生じる誘導磁界を検出する。
【0071】
第1実施形態と同様に、非導電領域213の幅となる第1の導体部211bと第2の導体部211cとの間の距離を非導電領域幅xとする。また、Z1−Z2方向の非導電領域213の高さをtとする。
そして、電流センサ201においても、第1実施形態と同様に、非導電領域213の非導電領域幅xと高さtとの比率Rが、非導電領域213内のX1−X2方向における磁束密度勾配の最大値から所定の範囲内になるように規定されている。
好適には、比率Rが、第1実施形態の式(1)〜(3)を満たすように規定される。
【0072】
以下、電流センサ201の製造工程を説明する。
図11は、図10に示す電流センサ201の製造工程を説明するためのフローチャートである。
ステップST1:
断面が長方形の平形状の第1の導体部211bおよび第2の導体部211cを用意する。
また、断面が長方形の平形状の第3の導体部211aおよび第4の導体部211dを用意する。
【0073】
ステップST2:
第1の導体部211bの長方形の断面の短辺および長辺が、第2の導体部211cの長方形の断面の短辺および長辺と、それぞれ平行になる姿勢にする。具体的には、第1の導体部211bと第2の導体部211cとが対向する姿勢にする。
【0074】
ステップST3:
第1の導体部211bの電流流入部211b1と、第2の導体部211cの電流流入部211c1とで第3の導体部211aの端部を挟み込む。
また、第1の導体部211bの電流流出部211b2と、第2の導体部211cの電流流出部211c2とで第4の導体部211dの端部を挟み込む。
これにより、第1の導体部211bの電流流入部211b1と、第2の導体部211cの電流流入部211c1とが電気接続される。また、第1の導体部211bの電流流出部211b2と、第2の導体部211cの電流流出部211c2とが電気接続される。
【0075】
このとき、第1の導体部211b、第2の導体部211c、第3の導体部211aおよび第4の導体部211dによって囲まれた非導電領域213の非導電領域幅xと高さをtとの比率Rは上記式(1)〜(3)を満たすように規定される。これは、第1の導体部211bおよび第1の導体部211bの高さt(長辺)と、第3の導体部211aおよび第4の導体部211dのX1−X2方向の幅を適切に選定するのみで規定でき、特別な加工は不要である。
【0076】
ステップST4:
第1の導体部211b、第2の導体部211c、第3の導体部211aおよび第4の導体部211dによって囲まれた非導電領域213内における、第1の導体部11bおよび第2の導体部11cとの間のX−X2方向の距離が相互に異なる位置に、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17を配設する。
【0077】
以上説明したように、電流センサ201およびその製造方法によれば、前記第1の導体部および前記第2の導体部の長方形の断面の長辺を長くするだけで、簡単な加工により、非導電領域の高さを長くできる。すなわち、1本の導体体をくり抜いて非導電領域を形成する場合には、くり抜きが深いと加工が難しくなるが、電流センサ201では、このようなくり抜き加工が不要であり、簡単且つ安価にできる。
【0078】
また、電流センサ201によれば、非導電領域213の非導電領域幅xと高さをtとの比率Rは上記式(1)〜(3)を満たすように規定したことで、第1実施形態で説明した電流センサ1の作用および効果を同様に得ることができる。
【0079】
<第3実施形態>
図12は、本発明の第3実施形態に係る本実施形態の電流センサ301を説明するための図である。
電流センサ301は、第1の導体部311bおよび第2の導体部311cを各々別体として有する。
第1の導体部311bと第2の導体部311cとの間には、非導電領域313が形成されている。
第1の導体部311bと第2の導体部311cとは、非導電領域313のY1−Y2方向の両端で電気的に直接接合している。
第2の導体部311cは、平板状である。
【0080】
第1の導体部311bは、第2の導体部311cと面接する第1の平板部351と、第2の導体部311cと面接する第2の平板部352と、第2の導体部311cと平行に離間して位置する第3の平板部353と、第1の平板部351と第3の平板部353の一端との間に介在する第4の平板部354と、第2の平板部352と第3の平板部353の他端との間に介在する第5の平板部355とを有する。
第1の平板部351と第4の平板部354、第3の平板部353と第4の平板部354、第2の平板部352と第5の平板部355、第3の平板部353と第5の平板部355とが、屈曲部を形成している。
【0081】
第1の導体部311bおよび第2の導体部311cの断面の面積は同じであり、全体の電流Iの1/2となる電流Ibおよび電流Icが各々に流れる。
【0082】
電流センサ301は、第2の導体部311c、第1の導体部311bの第3の平板部353、第4の平板部354および第5の平板部355で囲まれた非導電領域313を有する。
非導電領域313内には、第1の導体部311bの第3の平板部353と第2の導体部311cとの間のX−X2方向の距離が相互に異なる位置に、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17が設けられている。
【0083】
具体的には、第1の磁気センサ15は、第2の導体部311cに比べて第3の平板部353側に設けられている。第2の磁気センサ17は第3の平板部353に比べて第2の導体部311c側に設けられている。断面方向(X−Z面方向)において、第3の平板部353と第1の磁気センサ15との間の距離と、第2の導体部311cと第2の磁気センサ17との間の距離とが等しい。
第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17は、第1の導体部311bおよび第2の導体部311cを流れる電流によって生じる誘導磁界を検出する。
【0084】
第1実施形態と同様に、非導電領域313の幅となる第1の導体部311bの第3の平板部353と第2の導体部311cとの間の距離を非導電領域幅xとする。また、Z1−Z2方向の非導電領域313の高さをtとする。
そして、電流センサ301においても、第1実施形態と同様に、非導電領域313の非導電領域幅xと高さtとの比率Rが、非導電領域213内のX1−X2方向における磁束密度勾配の最大値から所定の範囲内になるように規定されている。
好適には、比率Rが、第1実施形態の式(1)〜(3)を満たすように規定される。
【0085】
電流センサ301によれば、上述した第2実施形態の電流センサ201と同様の作用および効果を得ることができる。
また、電流センサ301によれば、第1の導体部311bと第2の導体部311cとで、電流流入部および電流流出部をそれぞれ直接接続するため第1の導体部311bと第2の導体部311cとを接続するための導電部を別途設ける必要がなく、構成を簡単且つ安価にできる。
【0086】
<第4実施形態>
図13は、本発明の第4実施形態に係る本実施形態の電流センサ401を説明するための図である。
電流センサ401は、第1の導体部311cおよび第2の導体部411cを各々別体として有する。
第1の導体部311cと第2の導体部411cとの間には、非導電領域413が形成されている。
【0087】
第1の導体部311bと第2の導体部411cとは、YZ平面に平行な仮想面431に対して面対称である。
第1の導体部311bは、第3実施形態で説明した第1の導体部311bと同じである。
【0088】
第1の導体部311bおよび第2の導体部411cの断面の面積は同じであり、全体の電流Iの1/2となる電流Ibおよび電流Icが各々に流れる。
電流センサ401は、第1の導体部311bと第2の導体部411cとで囲まれた非導電領域413を有する。
【0089】
非導電領域413内には、仮想面431に対して対称な位置に第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17が設けられている。
第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17は、第1の導体部311bおよび第2の導体部411cを流れる電流によって生じる誘導磁界を検出する。
【0090】
第1実施形態と同様に、非導電領域413の幅となる第1の導体部311bの第3の平板部353と第2の導体部411cとの間の距離を非導電領域幅xとする。また、Z1−Z2方向の非導電領域413の高さをtとする。
そして、電流センサ401においても、第1実施形態と同様に、非導電領域413の非導電領域幅xと高さtとの比率Rが、非導電領域213内のX1−X2方向における磁束密度勾配の最大値から所定の範囲内になるように規定されている。
好適には、比率Rが、第1実施形態の式(1)〜(3)を満たすように規定される。
【0091】
電流センサ401によれば、上述した第2実施形態の電流センサ201と同様の作用および効果を得ることができる。
また、電流センサ401によれば、第1の導体部311bと第2の導体部311cとで、電流流入部および電流流出部をそれぞれ直接接続するため、第1の導体部311bと第2の導体部411cとを接続するための導電部を別途設ける必要がなく、構成を簡単且つ安価にできる。
【0092】
また、電流センサ401によれば、仮想面431に対して、第1の導体部311bと第2の導体部411cとが面対称であり、且つ第1の磁気センサ15と第2の磁気センサ17とが面対称であるため、位置決めが容易となる。そして、高い位置決め精度により高精度な測定を行うことができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0093】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0094】
上述した実施形態では、非導電領域13,231,313,413が空洞の場合を例示したが、その一部または全体に合成樹脂等の非導電性物質を充填してもよい。
また、上述した実施形態では、第1の導体部11b,211b.311bと第2の導体部11c,211c,311c,411cとの断面積が同じ場合を例示したが、断面積は異なっていてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、第1の磁気センサ15の感度軸S1および第2の磁気センサ17の感度軸S2は何れもZ2の向きにしたが、Z1の向きでもよい。また、第1の磁気センサ15の感度軸S1と、第2の磁気センサ17の感度軸S2との向きを逆にしてもよい。この場合には、処理部21は、第1の磁気センサ15の第1の磁気検出結果と第2の磁気センサ17の第2の磁気検出結果とを加算して、導電体11を流れる電流値を算出する。
【0096】
また、上述した実施形態では、非導電領域13,231,313,413内に、第1の磁気センサ15および第2の磁気センサ17を設けた場合を例示したが、4つ以上の偶数個の磁気センサを設けてもよい。
【0097】
また、上述した実施形態では、本発明の磁気センサの一例として磁気抵抗効果素子を例示したが、ホール素子を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、導電体の電流値を検出する電流センサに適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1, 201,301,401…電流センサ
13,231,313,413…非導電領域
11b,211b.311b…第1の導体部
11c,211c,311c,411c…第2の導体部
15…第1の磁気センサ
17…第2の磁気センサ
21…処理部
31,431…仮想面

図1
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