特許第6672017号(P6672017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672017
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】電気車制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/24 20060101AFI20200316BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20200316BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B60L9/24 A
   B60L1/00 G
   H02M7/48 Z
   H02M7/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-41604(P2016-41604)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-158376(P2017-158376A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安岡 育雄
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正尚
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】寺井 政文
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−207831(JP,A)
【文献】 特開平11−332245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0296507(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104108319(CN,A)
【文献】 特開2014−117121(JP,A)
【文献】 特開2009−072049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−58/40
H02M 7/00− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線から供給された交流電力を直流電力に変換し、前記変換した直流電力を駆動用電動機に用いる交流電流に変換する主変換装置と、
前記主変換装置を介さずに前記架線から供給された交流電力を直流電力に変換し、前記変換した直流電力を第1の用途に用いる交流電流に変換する補助電源装置と、
前記主変換装置を介さずに前記架線から供給された交流電力を第2の用途に用いる直流電力に変換するPWMコンバータを有する客車電源装置と、
それぞれが収容する第1の筐体と、第2の筐体とを有し、
前記第1の筐体に収容される前記客車電源装置と、前記第2の筐体に収容される前記客車電源装置とは、出力側で並列接続されている、
電気車制御装置。
【請求項2】
前記主変換装置、前記補助電源装置、および前記客車電源装置に共通して用いられる媒体を循環させる循環路を、更に備える、
請求項1記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記第1の用途は、他の車両を牽引する牽引車両に設けられたコンプレッサーを含む設備を駆動することであり、
前記第2の用途は、前記他の車両に設けられた空調装置を含む設備を駆動することである、
請求項1または請求項2記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記第1の筐体は、列車の幅方向に関する第1側に配置可能であり、
前記第2の筐体は、前記列車の前記幅方向に関する第2側に配置可能である、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気車には、交流架線から供給された電力を所望の形態の電力に変換して、変換した電力を駆動用電動機および他の車両を牽引する電気車に供給する制御装置が知られている。しかしながら、上述した制御装置とは別体に他車用に電力を供給する電源装置が設置されている場合があった。このため、制御装置および電源装置を、電気車に設置する場合、設置スペースの確保や、設置場所の設計が困難である場合があった。また、設置後にメンテナンス作業が煩雑である場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、利便性の高い電気車制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電気車制御装置は、主変換装置と、補助電源装置と、客車電源装置とをそれぞれが収容する第1の筐体と、第2の筐体とを有する。主変換装置は、架線から供給された交流電力を直流電力に変換し、前記変換した直流電力を駆動用電動機に用いる交流電流に変換する。客車電源装置は、前記主変換装置を介さずに前記架線から供給された交流電力を直流電力に変換し、前記変換した直流電力を第1の用途に用いる交流電流に変換する。客車電源装置は、前記主変換装置を介さずに前記架線から供給された交流電力を第2の用途に用いる直流電力に変換するPWMコンバータを有する。前記第1の筐体に収容される前記客車電源装置と、前記第2の筐体に収容される前記客車電源装置とは、出力側で並列接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の電気車制御装置30Aおよび30Bを搭載した電気車システム1の概要構成図。
図2】主変換装置および補助電源装置と、客車電源装置とが別体に設けられた電気車制御装置の一例を示す図。
図3】位相整流装置210の詳細を示す図。
図4】第3コンバータ70の一例を示す図。
図5】電気車制御装置および客車電源装置が設けられた車両M1およびM2の一例を示す図。
図6】電気車制御装置30の冷却設備の一例を示す図
図7】2の実施形態の電気車システム1の概要構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電気車制御装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態の電気車制御装置30Aおよび30Bを搭載した電気車システム1の概要構成図である。電気車制御装置30Aおよび30Bが搭載された電気車(例えば電気機関車)は、交流電力の供給源である架線Pに集電器10が接触することにより、架線Pから電力供給を受けて走行する。
【0009】
電気車システム1は、主要な構成要素として、車輪Wと、モータMaからMdと、集電器10と、変圧器20と、電気車制御装置30Aおよび30Bと、統合制御部100と、第1制御部110と、第2制御部120とを備える。以下、電気車制御装置30Aおよび30Bを、特別に区別しない場合は、単に「電気車制御装置30」と称する。また、電気車制御装置30Aおよび30Bの機能構成は同様であり、同様の数字の符号が付された名称は機能構成が同様である。
【0010】
集電器10には、架線Pから交流電力が供給される。変圧器20は、集電器10から出力された交流電力の電圧を所望の電圧に変換する。所望の電圧に変換された交流電力は、電気車制御装置30に出力される。
【0011】
統合制御部100、第1制御部110、および第2制御部120は、例えば、電気車制御装置30が備えるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することで機能するソフトウェア機能部である。また、統合制御部100、第1制御部110、および第2制御部120の一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0012】
統合制御部100は、通信線を介して第1制御部110および第2制御部120と通信する。図1に示す点線は通信線示す。統合制御部100は、電気車の状態や、マスターコントローラ(不図示)から入力された信号(ノッチ数など)等に基づいて、電気車制御装置30を制御するための制御信号を生成し、第1制御部110または第2制御部120に出力する。第1制御部110および第2制御部120は、例えば統合制御部100から取得した制御信号に基づいて、電気車制御装置30が有するコンバータや、インバータを制御するための信号を生成し、出力する。
【0013】
電気車制御装置30は、主変換装置、補助電源装置、および客車電源装置を備える。主変換装置、補助電源装置、および客車電源装置は、1つの筐体内に収容される。
【0014】
(主変換装置)
主変換装置は、第1コンバータ32aおよび32bと、フィルタコンデンサ34aおよび34bと、第1インバータ36aおよび36bと、第1コンバータ制御部40aおよび40bと、第1インバータ制御部42aおよび42bとを有する。主変換装置の機能構成の符号の後に付された「a」から「d」の符号は、いずれのモータ(「モータMa」から「モータMd」)に対して電力を供給するかを示す符号である。以下、各機能構成の数字の後に付した符号は省略して説明する。
【0015】
第1コンバータ32は、変圧器20から供給される単相交流電圧を直流電圧に変換する。第1コンバータ32は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)コンバータである。第1コンバータ制御部40は、第1制御部110(または第2制御部120)から取得した制御信号に基づいて、交流電圧を所望の直流電圧に変換させるための制御信号を第1コンバータ32に出力する。フィルタコンデンサ34は、第1コンバータ32から出力された直流電圧の脈動成分を平滑化する。
【0016】
第1インバータ36は、第1コンバータ32側から供給される直流電圧を用いて、三相の交流電圧を生成し、生成した交流電圧に応じた電力をモータMに供給する。第1インバータ36は、例えばVVVFインバータである。VVVFインバータは、直流の電圧を、出力すべき交流電圧の振幅に応じてパルスの幅を決定する。第1インバータ制御部42は、第1インバータ36の半導体素子を制御することで、第1インバータ36に所望の交流電圧を生成させる。
【0017】
モータMは、三相交流によってロータを回転させ、駆動力を出力する。モータMの出力する駆動力は、図示しない歯車等の連結機構を介して車輪Wに伝達され、電気車を走行させる。モータMは、例えば、かご型三相誘導電動機である。なお、車輪Wは、線路Rを介して接地される。
【0018】
(補助電源装置)
補助電源装置は、第2コンバータ50と、フィルタコンデンサ52と、第2インバータ54と、ACフィルタ56と、第2コンバータ制御部60と、第2インバータ制御部62とを有する。
【0019】
第2コンバータ50は、変圧器20から供給される単相交流電圧を直流電圧に変換する。第2コンバータ50は、例えばPWMコンバータである。第2コンバータ制御部60は、第1制御部110(または第2制御部120)から取得した制御信号に基づいて、交流電圧を所望の直流電圧に変換させるための制御信号を第2コンバータ50に出力する。フィルタコンデンサ52は、第2コンバータ50から出力された直流電圧の脈動成分を平滑化する。
【0020】
第2インバータ54は、第2コンバータ50側から供給される直流電圧を用いて、三相の交流電圧を生成し、生成した交流電圧に応じた電力をACフィルタ56に供給する。第2インバータ54は、例えばCVCFインバータである。第2インバータ制御部62は、第2インバータ54の半導体素子を制御することで、第2インバータ54に所望の交流電圧を生成させる。
【0021】
ACフィルタ56は、例えばリアクトルと、コンデンサとを備える。ACフィルタ56は、第2インバータ54から出力された電圧に含まれる高周波成分を減衰させて、正弦波状の交流波形にする。正弦波状の交流波形を有する電力は、電気機関車の電装品や、コンプレッサーを駆動するのに用いられる。
【0022】
(客車電源装置)
客車電源装置は、第3コンバータ70と、フィルタコンデンサ72と、第3コンバータ制御部80とを有する。第3コンバータ70は、変圧器20から供給される単相交流電圧を直流電圧に変換する。第3コンバータ70は、例えばPWNコンバータである。第3コンバータ制御部80は、交流電力を所望の直流電力に変換させるための制御信号を第3コンバータ70に出力する。フィルタコンデンサ72は、第3コンバータ70から出力された直流電圧の脈動成分を平滑化する。
【0023】
第3コンバータ70は、変換した直流電圧の電力を電気機関車が牽引する客車に出力する。第3コンバータ70から出力された電力は、客車に備えられた空調装置を含む各種機器を駆動するために用いられる。電気車制御装置30Aの第3コンバータ70と、電気車制御装置30Bの第3コンバータ70とは、出力側で共通化されている。このため、一方の客車電源装置が故障等した場合であっても、客車への電力の供給を維持することができる。
【0024】
第1の実施形態の電気車システム1では、電気車制御装置30は、例えば機関車内に2台搭載される。客車電源の交流側入力は変圧器の4次巻線からとっており電圧は300V程度と低く、客車電源に必要な400kW程度を取ろうとすると1巻線では大電流となり、主変圧器の巻線を構成するが難しくなる。このため、4次巻線を二巻線とし、一巻線当たりの電流を低く抑える。客車電源装置は、電気車制御装置30(30Aおよび30B)内に1台ずつ合計2台設けられる。客車電源装置は、直流側出力が並列接続され、客車電源装置から出力された電力は、客車用の電源として客車に供給される。このような構成するにすることにより、客車電源装置に含まれるコンバータを比較的小さく構成することが可能である。また、電気車制御装置30に用いられる一系統の冷却システムを用いて、主変換装置、補助電源装置、および客車電源装置を冷却することができる(図6参照)。
【0025】
ここで、主変換装置および補助電源装置と、客車電源装置とは、別体に設けられる場合がある。図2は、主変換装置および補助電源装置と、客車電源装置とが別体に設けられた電気車制御装置の一例を示す図である。図2に示す電気車制御装置130Aおよび130Bは、主変換装置および補助電源装置を備え1つの筐体に収容されるが、客車電源装置200は他の筐体に収容される。客車電源装置200を制御する制御部が、客車電源装置200に含まれるスイッチング素子の通流率を制御する。これにより、客車電源装置200は、変圧器20から供給された単相交流電圧を直流電圧に変換する。平滑回路は、変換された直流電圧を平滑化して、平滑化した直流電圧の電力を客車に供給する。
【0026】
客車電源装置200は、位相整流装置210と、位相整流側制御部215と、位相整流装置210の出力側にリアクトル220と、コンデンサ230とを含む平滑回路を備える。図3は、位相整流装置210の詳細を示す図である。位相整流装置210は、複数のサイリスタ等の素子212−1から212−4を有する。また、位相整流側制御部215は、例えば統合制御部100と通信線で接続されている。位相整流側制御部215は、統合制御部100からの指示に基づいて、自装置を制御する。
【0027】
位相整流側制御部215は、素子212−1から212−4をオン状態にするときの位相については、任意に設定することができる。一方、位相整流側制御部215は、電流がゼロになったときのみ素子212−1から212−4をオフ状態にすることができるため、素子をオフ状態にするときの位相については、任意に設定することができない。また、位相整流装置210は、素子212−1から212−4のオン状態またはオフ状態の切り替え(スイッチング)は、電源の周波数60[Hz]における半周期に一度だけとなるため、出力される直流電圧を細かく制御することができない。直流電圧のリップルを抑えるため、位相整流装置210の出力側には、大型のリアクトル220とコンデンサ230とを含む平滑回路が必要である。客車に供給する必要がある電力は、例えば400[kW]程度の容量である。1台の客車電源装置200が、この容量を客車に供給するため、位相整流装置210およびリアクトル220は、大型化する場合があった。更に、このリアクトル220を冷却するための専用の冷却装置が必要であった。
【0028】
これに対して、本実施形態の電気車制御装置30は、客車電源装置を含む。客車電源装置は、第3コンバータ70を有する。第3コンバータ70は、例えばPWMコンバータである。図4は、第3コンバータ70の一例を示す図である。第3コンバータ制御部80は、PWMコンバータにはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の自己消弧型の素子71−1から71−4が用いられているため、電流の状態に関わらず、任意の位相角で素子71−1から71−4をオン状態またはオフ状態に制御することができる。これにより、第3コンバータ制御部80は、電源周波数50[Hz]の1周期において、45回、第3コンバータ70が有する素子71−1から71−4のスイッチングを行う。この結果、第3コンバータ制御部80は、2250[Hz]のスイッチングができ、出力される直流電圧のリップルを抑えることができる。
【0029】
本実施形態では、出力側には、リアクトルを設ける必要がなくなり、電気車制御装置30の筐体内に客車電源装置を設けることができるようになった。また、リアクトルに対する専用の冷水装置を設ける必要がなくなったため、電気車制御装置30に設けられる装置を一系統の冷却機構で冷却することができる。
【0030】
図5は、電気車制御装置および客車電源装置が設けられた車両M1およびM2の一例を示す図である。図5(A)は、客車電源装置200と、主変換装置および補助電源装置を1つの筐体内に収容する電気車制御装置130Aおよび130Bとが設けられた車両M1およびM2の一例を示す図である。車両M1およびM2は、他の車両を牽引する車両(電気機関車)であって、同じ列車の編成に含まれる車両である。客車電源装置200および電気車制御装置130は、車両M1の床面F1上および車両M2の床面F2上に載置される。以下、車両M1およびM2を区別しない場合は、単に「車両M」と称し、床面F1および床面F2を区別しない場合は、単に「床面F」と称する。
【0031】
電気車制御装置130Aと、電気車制御装置130Bとは、床面Fの幅方向に並んで載置される。また、客車電源装置200は、電気車制御装置130Aの(例えば進行方向とは反対側の)長手方向側に載置される。この場合、床面Fにおける機器の載置状態が非対称となり、電気車に装置等を取り付けに対する利便性が低い場合があった。例えば、装置の取り付けの際の設計を共通化することができなかったり、装置を取り付ける部品を共有化することができなかったりするためである。
【0032】
これに対して、本実施形態では、主変換装置、補助電源装置および客車電源装置を1つの筐体に収容した電気車制御装置30が設けられた車両M1およびM2の床面に設けられるため、利用者の利便性を向上させることができる。図5(B)は、電気車制御装置30が設けられた車両M1およびM2の一例を示す図である。電気車制御装置30Aおよび30Bは、床面Fの幅方向に並んで載置される。この場合、床面Fにおける機器の載置状態が対称となり、装置の取り付けの際の設計を共通化することができたり、装置を取り付ける部品を共有化することができたりすることができる。この結果、電気車制御装置30は、利用者の利便性を向上させることができる。
【0033】
以下、より具体的に本実施形態の電気車制御装置30の奏する効果について説明する。
【0034】
(保守性の向上)
上述のように電気車制御装置30のコンバータは、IGBTがスイッチングする際、または通電する際に発生する損失による発熱する。従来から発熱を抑える機構として、水を各冷却器に循環させて冷却する循環水冷、あるいは冷却ファンによる空冷を用いている場合があった。従来の構成では、電気車制御装置は水冷であり、客車電源装置は空冷であった。この理由は、従来からこれらの装置が別体として、かつ異なる冷却方式で製造されてきたという歴史的な経緯によるものである。
【0035】
ここで、空冷方式と水冷方式とを比較すると、保守性の観点からは、一般に水冷方式が簡便であると考えられる。空冷方式を採用する場合は、電源装置にフィンを設ける必要があり、また付着ダストの清掃が必要となるなど、水冷方式に比較すると保守作業が煩雑であるためである。
【0036】
図6は、電気車制御装置30の冷却設備の一例を示す図である。電気車制御装置30は、流路400および410と、ポンプPを有する。ポンプPは、熱交換器から供給された液体(媒体)を貯蓄するストレージタンクに貯まった液体を流路400および410に吐出する。流路400および410は、ポンプPから吐出された液体を電気車制御装置30内で循環させ、循環させた液体を熱交換器(不図示)に送る。また、流路400および410は、主変換電源装置、補助電源装置、および客車電源装置内を循環する流路と連結されている。流路400および410に連結された流路は、液体を循環させることにより、主変換装置、補助電源装置、および客車電源装置を冷却する。なお、主変換装置を冷却するための流路は、第1コンバータ32を冷却する流路と、第1インバータ36を冷却する流路とを含む。
【0037】
第1の実施形態の電気車制御装置30は、冷却方式を全て水冷方式に統一することができる。この形態では、従来用いてきた水冷管を延長するのみで良く、またメンテナンスも水冷用設備を対象に一本化することができ、更に、上述のように保守内容も簡便である。従って、保守性を向上することができる。
【0038】
(客車用電源入力力率の向上)
従来の客車電源装置では、図3で示したように直流整流回路が用いられていたため位相の制御のみが可能であり力率の制御ができなかった。これに対して、第1の実施の形態では客車用電源装置の交流側入力は交流を直流に変換するPWMコンバータである。PWMコンバータは、電流の制御が可能であるため、力率を制御することが可能である。力率を1に制御できるため客車用電源装置の効率を向上させることができる。
【0039】
以上説明した第1の実施形態の電気車制御装置30は、主変換装置、補助電源装置、および客車電源装置を1つの筐体内に収容することにより、利用者の利便性を向上させることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態との共通する機能等についての説明は省略する。第1の実施形態では、電気車システム1Aは、電気車制御装置30Aおよび30Bを備えるものとしたが、第2の実施形態の電気車システム1Aは、電気車制御装置30Bを備えず、電気車制御装置30Aを備える。
【0041】
図7は、第2の実施形態の電気車システム1Aの概要構成を示す図である。第2の実施形態の電気車システム1Aは、電気車制御装置30A、統合制御部100、および第1制御部110を備える。
【0042】
従来は、駆動用の電動機を駆動する駆動用の交流を直流に変換するPWMコンバータと、フィルタコンデンサと、VVVFインバータと、電気機関車内のコンプレッサーなどの設備に電力を供給する補助電源装置とは同一装置内に搭載されていたが、客車電源装置は別装置となっていた。これに対して電気車制御装置30に用いられるPWMコンバータは、直流の出力側にリアクトルを設ける必要がないため、その分装置として小型化することが可能である。これにより、電気車制御装置30内に客車電源装置を搭載することが可能となった。この結果、電気機関車に搭載する装置の数を減らすことが可能となり電気車システム全体の小型化を行うことができる。一例としては、従来、別装置として設けられていた客車電源装置は800mm×1550mm×1000mm=1.24m程度の大きさがあったが、本実施形態の電気車制御装置30内の客車電源装置部分は600×2050×860=1.06mであり容積として約2割削減される。これにより客車電源装置を主変換装置内に一体として収容した構成とすることが可能となった。
【0043】
以上説明した第2の実施形態によれば、電気車制御装置30Aは、客車電源装置を含み、別体として客車電源装置を設ける必要がなくなったため、装置のサイズを低減させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、電気車制御装置30は、2つの主変換装置を含むものとして説明したが、電気車制御装置30は、任意の数の主変換装置を含んでもよい。
【0045】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、架線Pから供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をモータMに用いる交流電流に変換する主変換装置と、架線Pから供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を第1の用途に用いる交流電流に変換する補助電源装置と、架線から供給された交流電力を第2の用途に用いる直流電力に変換する客車電源装置とを1つの筐体内に収容することにより、利便性の高い電気車制御装置を提供することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1,1A…電気車システム、30A、30B…電気車制御装置、32a、32b…第1コンバータ、36a、36b…第1インバータ、50…第2コンバータ、54…第2インバータ、70…第3コンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7