(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段が、前記乾燥領域移動工程において、前記着液点の移動に追従するように、前記着液点の移動軌跡に沿って前記乾燥領域を移動させる工程を実行する、請求項16に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のウエハ洗浄装置では、基板の上面に僅かに残るIPAを速やかに蒸発させるためには、窒素吐出ノズルからの窒素ガスを基板の上面に強く吹き付ける必要がある。しかし、窒素ガスが強く吹き付けられると、基板上のパターンに局部的な外力が作用し、パターン倒壊が起こる虞がある。
一方、ガス吐出ヘッドは、基板の上面のほぼ全体を覆う。そのため、ガス吐出ヘッドと基板の上面との間でノズルヘッドを移動させなければならないので、ガス吐出ヘッドを基板の上面に十分に近づけることができない。よって、基板を速やかに乾燥させることができない虞がある。
【0007】
また、特許文献1の
図11には、ノズルヘッドとの干渉を避けつつガス吐出ヘッドを基板の上面に近づけるためにガス吐出ヘッドに切り欠きを設ける構成も開示されている。しかし、この構成では、基板の上面全体にガス吐出ヘッドから窒素ガスが供給され続けるので、遠心力でIPAの液膜を除去する前に局所的にIPAが蒸発し尽くして液膜割れが発生し、基板が露出する。これにより、基板の上面に部分的に液滴が残ることがある。この液滴は、最終的に蒸発するまで、基板上のパターンに表面張力をかけ続ける。これにより、パターン倒壊が起こる虞がある。
【0008】
そこで、この発明の1つの目的は、低表面張力液体を基板の上面から良好に排除することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、基板を水平に保持する基板保持工程と、前記水平に保持された基板の上面に、水よりも表面張力の低い低表面張力液体の液膜を形成する液膜形成工程と、前記低表面張力液体の液膜の中央領域に開口を形成する開口形成工程と、前記開口を広げることによって、前記基板の上面から前記液膜を排除する液膜排除工程と、低表面張力液体を供給する低表面張力液体ノズルから前記開口の外側に設定した着液点に向けて低表面張力液体を前記液膜に供給しながら、前記開口の広がりに追従するように前記着液点を移動させる着液点移動工程と、前記開口の内側に設定された乾燥領域に、前記基板よりも平面視サイズの小さな対向面を有する乾燥ヘッドの前記対向面を対向させて前記対向面と前記乾燥領域との間の空間にその空間外よりも低湿度の低湿度空間を形成しながら、前記乾燥領域および前記対向面を前記開口の広がりに追従するように移動させる乾燥領域移動工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0010】
この方法によれば、低表面張力液体の液膜の開口の内側に設定された乾燥領域に対向する対向面と乾燥領域との間の空間には、その空間外よりも低湿度である低湿度空間が形成される。そのため、乾燥領域に残った低表面張力液体を速やかに蒸発させることができる。
乾燥領域および対向面は、液膜の開口の広がりに追従して移動する。そのため、低表面張力液体の液膜が排除された後に基板の上面に残った低表面張力液体を速やかに蒸発させることができる。しかも、対向面が対向する乾燥領域は比較的広いので、基板の上面に局部的な外力が作用しにくい。
【0011】
一方、対向面は、基板よりも平面視サイズが小さい。そのため、低表面張力液体ノズルを回避した位置、すなわち基板の上面に十分に近い位置に乾燥ヘッドを配置しながら対向面を移動させることができる。これにより、乾燥領域に残った低表面張力液体を一層速やかに蒸発させることができる。
乾燥領域が開口の内側に設定されており、着液点が開口の外側に設定されているので、基板の上面から液膜が排除されるまでの間、液膜から低表面張力液体が自然に蒸発するのを抑えつつ、十分な量の低表面張力液体を液膜に供給することができる。そのため、開口の広がりによって液膜が排除される前に、局所的に液膜が蒸発して液膜割れが発生することを抑制できる。
【0012】
したがって、低表面張力液体を基板の上面から良好に排除することができる。
この発明の一実施形態では、前記乾燥領域移動工程は、前記着液点の移動に追従するように、前記着液点の移動軌跡に沿って前記乾燥領域を移動させる工程を含む。そのため、着液点に着液した低表面張力液体が自然に蒸発する前に、低表面張力液体を乾燥ヘッドによって速やかに蒸発させることができる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記開口形成工程が、前記基板の中央領域に向けて不活性ガスを吹き付ける不活性ガス吹き付け工程を含む。また、前記不活性ガス吹き付け工程が、前記液膜排除工程が完了するまで継続される。
この方法によれば、開口形成工程において、液膜の中央領域に向けて不活性ガスを吹き付けることによって、開口を効率良く、かつ確実に中央領域に形成することができる。また、不活性ガスの吹き付けが、液膜排除工程が完了するまで継続される。これにより、開口の広がりが促進され、低表面張力液体をより一層速やかに基板外に排除することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記液膜排除工程と並行して前記基板を回転させる基板回転工程をさらに含む。
この方法によれば、液膜排除工程と並行して基板を回転させるので、基板の回転によって発生する遠心力によって開口の広がりを促進することができる。これにより、低表面張力液体を一層速やかに基板外に排除することができる。また、基板の回転に伴って、液膜の開口の外側では、低表面張力液体の着液点が基板を走査し、開口の内側では乾燥領域が基板を走査する。それにより、基板の上面全体に対して、均一な乾燥処理を施すことができる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記基板回転工程が、前記基板の回転を徐々に減速させる回転減速工程を含む。
液膜排除工程の初期段階では、液膜の開口が小さいので、乾燥領域は、基板の上面の中央領域付近に位置している。一方、液膜排除工程の終期段階では、液膜の開口が大きくなっているので、乾燥領域は、基板の上面の周縁付近に位置している。
【0016】
仮に、液膜排除工程における基板の回転速度を一定にすると、液膜排除工程の終期段階において単位時間あたりに基板回転方向に乾燥領域が基板の上面を相対移動する距離は、液膜排除工程の初期段階において単位時間あたりに基板回転方向に乾燥領域が基板の上面を相対移動する距離よりも大きくなる。そのため、液膜排除工程の終期段階では、液膜排除工程の初期段階と比較して、単位面積あたりの基板上面乾燥時間、すなわち乾燥ヘッドの対向面に対向する時間が短い。
【0017】
したがって、基板回転工程において基板の回転を徐々に減速させて、液膜排除工程の終期段階において単位時間あたりに基板回転方向に乾燥領域が相対移動する距離を小さくし、単位面積あたりの基板上面乾燥時間を長くすることによって、液膜排除工程の初期段階と終期段階とで、単位面積あたりの基板上面乾燥時間の差を低減することができる。したがって、この方法によれば、基板の上面をむらなく乾燥させることができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記乾燥領域が、前記着液点に対して基板回転方向下流側に半分よりも広い領域が位置するように設定される。そのため、着液点に着液された低表面張力液体が自然に蒸発する前に低表面張力液体を一層確実に蒸発させることができる。
この発明の一実施形態では、前記乾燥領域が、扇形の平面形状を有しており、前記扇形の要が前記着液点から遠い位置に配置され、前記扇形の弧が前記着液点に近くかつ基板回転方向に沿うように配置されている。
【0019】
この方法によれば、扇形の平面形状を有する乾燥領域において、その扇形の要が着液点から遠い位置に配置され、その扇形の弧が着液点の近くに配置されている。これにより、扇形の弧が要よりも基板の周縁側に位置するので、基板上面の各部が乾燥ヘッドの対向面に対向する時間、すなわち乾燥時間を均一化することができる。したがって、基板の上面をむらなく乾燥させることができる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記低表面張力液体ノズルと前記乾燥ヘッドとが共通の移動部材に支持されており、前記着液点移動工程および前記乾燥領域移動工程が、前記移動部材を移動させる工程を含む。
この方法によれば、着液点移動工程および乾燥領域移動工程において、低表面張力液体ノズルと乾燥ヘッドとを共通に支持する移動部材を移動させることによって、低表面張力液体ノズルと乾燥ヘッドとの間の距離が一定に保たれる。したがって、基板の上面全体を均等な条件でむらなく乾燥させることができる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記乾燥ヘッドが、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ヘッドである。これにより、低湿度空間の湿度を不活性ガスによって低減させることができる。よって、基板の上面から低表面張力液体を速やかに蒸発させることができるので、基板の上面を速やかに乾燥させることができる。
この発明の一実施形態では、前記対向面が、基板の上面から上方に窪んで不活性ガス貯留空間を形成しており、前記不活性ガス供給ヘッドが、前記不活性ガス貯留空間に不活性ガスを供給する不活性ガス導入口を含む。
【0022】
この方法によれば、対向面が、基板の上面から上方に窪んで不活性ガス貯留空間を形成している。不活性ガス貯留空間には、不活性ガス導入口から供給された不活性ガスが貯留される。そのため、不活性ガス貯留空間に貯留された不活性ガスによって基板の上面に残った低表面張力液体を蒸発させることができる。したがって、乾燥領域の低表面張力液体をより一層速やかに蒸発させることができる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記不活性ガス供給ヘッドが、前記不活性ガス貯留空間を排気する排気口をさらに含む。
この方法によれば、不活性ガス貯留空間を排気する排気口によって、基板の上面から蒸発して蒸気となった低表面張力液体が、不活性ガス貯留空間を介して低湿度空間から排除される。これにより、低湿度空間をより一層低湿度に保つことができるので、乾燥領域の低表面張力液体をより一層速やかに蒸発させることができる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記対向面が、基板の上面に平行な平坦面であり、前記対向面に複数の不活性ガス吐出口が形成されている。また、前記不活性ガス供給ヘッドが、前記複数の不活性ガス吐出口に連通する不活性ガス貯留空間と、前記不活性ガス貯留空間に不活性ガスを供給する不活性ガス導入口とを含む。
この方法によれば、不活性ガス導入口からの不活性ガスは不活性ガス貯留空間に供給される。不活性ガス貯留空間は、基板の上面に平行な平坦面である対向面に形成された複数の不活性ガス吐出口に連通されている。そのため、不活性ガスが1つの吐出口から供給される場合と比較して、広い範囲に均一に不活性ガスを供給できるから、湿度むらの少ない低湿度空間を形成することができる。したがって、乾燥領域の低表面張力液体を、むらなく、かつ速やかに蒸発させることができる。また、不活性ガス吐出口が複数あることによって、基板の上面に供給される不活性ガスの勢いを低減することができる。そのため、基板の上面に局部的に大きな外力が作用することを抑制できる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記乾燥ヘッドが、前記乾燥領域を加熱するヒータユニットを含む。これにより、乾燥領域の低表面張力液体の蒸発を一層促進することができる。
この発明の一実施形態では、前記乾燥ヘッドが、前記対向面と前記乾燥領域との間の空間を排気する排気ユニットを含む。
この方法によれば、対向面と乾燥領域との間の空間を排気する排気ユニットによって、低表面張力液体の蒸気を低湿度空間から排除することができる。したがって、乾燥領域の低表面張力液体を一層速やかに蒸発させることができる。
【0026】
この発明の一実施形態では、基板処理装置は、基板を水平に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板の上面に水よりも表面張力の低い低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給手段と、前記基板保持手段に保持された基板の上面に形成される前記低表面張力液体の液膜の中央領域に開口を形成する開口形成手段と、前記基板保持手段に保持された基板の上面に対向し、基板よりも平面視サイズの小さな対向面を有し、前記対向面と基板の上面との間の空間にその空間外よりも低湿度の低湿度空間を形成することによって基板の上面を乾燥させる乾燥ヘッドと、前記基板保持手段に保持された基板の上面に沿って前記乾燥ヘッドを移動させる乾燥ヘッド移動手段とを含む。
【0027】
この構成によれば、基板上に低表面張力液体の液膜が形成され、その液膜の中央領域に開口が形成される。その開口の内側に設定された乾燥領域に対向する対向面と乾燥領域との間の空間には、その空間外よりも低湿度である低湿度空間が形成される。そのため、乾燥領域に残った低表面張力液体を速やかに蒸発させることができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、
前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う所定の回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、前記低表面張力液体供給手段、前記開口形成手段、
前記基板回転手段、前記乾燥ヘッドおよび前記乾燥ヘッド移動手段を制御する制御手段
とをさらに含む。そして、前記制御手段が、前記低表面張力液体供給手段から基板の上面に低表面張力液体を供給させ、前記基板の上面に低表面張力液体の液膜を形成する液膜形成工程と、前記開口形成手段により前記液膜の中央領域に開口を形成する開口形成工程と、前記基板回転手段に前記基板を回転させることにより前記開口を広げることによって前記基板の上面から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記低表面張力液体供給手段から供給される低表面張力液体の着液点を前記開口の外側に設定して前記開口の広がりに追従するように前記着液点を移動させる着液点移動工程と、前記開口の内側に設定した乾燥領域に前記乾燥ヘッドの前記対向面を対向させ、前記開口の広がりに追従するように前記乾燥領域および前記対向面を移動させる乾燥領域移動工程とを実行する。
【0028】
この構成によれば、乾燥領域および対向面は、低表面張力液体の液膜の開口の広がりに追従する。そのため、低表面張力液体の液膜が排除された後に基板の上面に残った低表面張力液体を速やかに蒸発させることができる。しかも、対向面が対向する乾燥領域は比較的広いので、基板の上面に局部的な外力が作用しにくい。
一方、対向面は、基板よりも平面視サイズが小さい。そのため、低表面張力液体ノズルを回避した位置、すなわち基板の上面に十分に近い位置に乾燥ヘッドを配置しながら対向面を移動させることができる。これにより、乾燥領域に残った低表面張力液体を一層速やかに蒸発させることができる。
【0029】
乾燥領域が開口の内側に設定されており、着液点が開口の外側に設定されているので、基板の上面から液膜が排除されるまでの間、液膜から低表面張力液体が自然に蒸発するのを抑えつつ、十分な量の低表面張力液体が液膜に供給される。そのため、開口の広がりによって液膜が排除される前に、局所的に液膜が蒸発して液膜割れが発生することを抑制できる。
【0030】
したがって、低表面張力液体を基板の上面から良好に排除することができる。
この発明の一実施形態では、前記制御手段が、前記乾燥領域移動工程において、前記着液点の移動に追従するように、前記着液点の移動軌跡に沿って前記乾燥領域を移動させる工程を実行する。そのため、着液点に着液した低表面張力液体が自然に蒸発する前に、低表面張力液体を乾燥ヘッドによって速やかに蒸発させることができる。
【0031】
この発明の一実施形態では、前記開口形成手段が、前記基板保持手段に保持された基板の中央領域に向けて不活性ガスを吹き付ける不活性ガス供給手段を含む。また、前記制御手段が、前記開口形成工程において、前記不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させる不活性ガス吹き付け工程を実行し、かつ、前記液膜排除工程が完了するまで前記不活性ガス吹き付け工程を継続する。
【0032】
この構成によれば、開口形成工程において、液膜の中央領域に向けて不活性ガスを吹き付けることによって、開口を効率良く、かつ確実に中央領域に形成することができる。また、不活性ガスの吹き付けが、液膜排除工程が完了するまで継続される。これにより、開口の広がりが促進され、低表面張力液体をより一層速やかに基板外に排除することができる。
【0033】
この発明の一実施形態では
、前記制御手段が、前記液膜排除工程と並行して前記基板を回転させる基板回転工程を実行する。
この構成によれば、液膜排除工程と並行して基板を回転させるので、基板の回転によって発生する遠心力によって開口の広がりを促進することができる。これにより、低表面張力液体を一層速やかに基板外に排除することができる。また、基板の回転に伴って、液膜の開口の外側では、低表面張力液体の着液点が基板を走査し、開口の内側では、乾燥領域が基板を走査する。それにより、基板の上面全体に対して均一な乾燥処理を施すことができる。
【0034】
この発明の一実施形態では、前記制御手段が、前記基板回転工程において、基板の回転を徐々に減速させる回転減速工程を実行する。
この構成によれば、液膜排除工程と並行して実行される基板回転工程において、基板の回転を徐々に減速させることにより、基板の上面をむらなく乾燥させることができる。
この発明の一実施形態では、前記制御手段は、前記着液点に対して基板回転方向下流側に半分よりも広い領域が位置するように前記乾燥領域を設定する。そのため、着液点に着液された低表面張力液体が自然に蒸発する前に低表面張力液体を一層確実に蒸発させることができる。
【0035】
この発明の一実施形態では、前記対向面が、扇形の平面形状を有しており、前記扇形の要が前記着液点から遠い位置に配置され、前記扇形の弧が前記着液点に近くかつ基板回転方向に沿うように配置されている。
この構成によれば、扇形の平面形状を有する対向面において、その扇形の要が着液点から遠い位置に配置され、その扇形の弧が着液点の近くに配置されている。これにより、要よりも基板回転方向に大きい弧を、要よりも基板の周縁側に配置できる。そのため、扇形の弧が基板の周縁側に位置するので、基板上面の各部が乾燥ヘッドの対向面に対向する時間、すなわち乾燥時間を均一化することができる。したがって、基板の上面をむらなく乾燥させることができる。
【0036】
この発明の一実施形態では、前記低表面張力液体供給手段が、前記基板保持手段に保持された基板の上面に向けて低表面張力液体を供給する低表面張力液体ノズルを含む。また、基板処理装置は、前記低表面張力液体ノズルと前記乾燥ヘッドとを共通に支持し、前記低表面張力液体ノズルおよび前記乾燥ヘッドを前記基板の上方で移動させる移動部材をさらに含む。また、前記乾燥ヘッド移動手段が、前記移動部材を移動させる。
【0037】
この構成によれば、低表面張力液体ノズルと乾燥ヘッドとを共通に支持する移動部材を移動させることによって、低表面張力液体ノズルと乾燥ヘッドとの間の距離が一定に保たれる。したがって、基板の上面全体を均等な条件でむらなく乾燥させることができる。
この発明の一実施形態では、前記乾燥ヘッドが、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ヘッドである。そのため、低湿度空間の湿度を不活性ガスによって低減させることができる。これにより、基板の上面から低表面張力液体を速やかに蒸発させることができるので、基板の上面を速やかに乾燥させることができる。
【0038】
この発明の一実施形態では、前記対向面が、前記基板保持手段に保持された基板の上面から上方に窪んで不活性ガス貯留空間を形成している。また、前記不活性ガス供給ヘッドが、前記不活性ガス貯留空間に不活性ガスを供給する不活性ガス導入口を含む。
この構成によれば、対向面が、基板の上面から上方に窪んで不活性ガス貯留空間を形成している。不活性ガス貯留空間には、不活性ガス導入口から供給された不活性ガスが貯留される。そのため、不活性ガス貯留空間に貯留された不活性ガスによって基板の上面に残った低表面張力液体を蒸発させることができる。したがって、基板の上面の低表面張力液体をより一層速やかに蒸発させることができる。
【0039】
この発明の一実施形態では、前記不活性ガス供給ヘッドが、前記不活性ガス貯留空間を排気する排気口をさらに含む。
この構成によれば、不活性ガス貯留空間を排気する排気口によって、基板の上面から蒸発して蒸気となった低表面張力液体が、不活性ガス貯留空間を介して低湿度空間から排除される。これにより、低湿度空間をより一層低湿度に保つことができるので、基板の上面の低表面張力液体をより一層速やかに蒸発させることができる。
【0040】
この発明の一実施形態では、前記対向面が、基板の上面に平行な平坦面であり、前記対向面に複数の不活性ガス吐出口が形成されている。また、前記不活性ガス供給ヘッドは、前記複数の不活性ガス吐出口に連通する不活性ガス貯留空間と、前記不活性ガス貯留空間に不活性ガスを供給する不活性ガス導入口とを含む。
この構成によれば、不活性ガス導入口からの不活性ガスは不活性ガス貯留空間に供給される。不活性ガス貯留空間は、基板の上面に平行な平坦面である対向面に形成された複数の不活性ガス吐出口に連通されている。そのため、不活性ガスが1つの吐出口から供給される場合と比較して、広い範囲に均一に不活性ガスを供給できるから、湿度むらの少ない低湿度空間を形成することができる。したがって、基板の上面の低表面張力液体を、むらなく、かつ速やかに蒸発させることができる。また、不活性ガス吐出口が複数あることによって、基板の上面に供給される不活性ガスの勢いを低減することができる。そのため、基板の上面に局部的に大きな外力が作用することを抑制できる。
【0041】
この発明の一実施形態では、前記乾燥ヘッドが、前記基板保持手段に保持された基板の上面を加熱するヒータユニットを含む。これにより、基板の上面の低表面張力液体の蒸発を一層促進することができる。
この発明の一実施形態では、前記乾燥ヘッドが、前記対向面と前記基板保持手段に保持された基板の上面との間の空間を排気する排気ユニットを含む。
【0042】
この構成によれば、対向面と基板の上面の間の空間を排気する排気ユニットによって、低表面張力液体の蒸気を低湿度空間から排除することができる。したがって、基板の上面の低表面張力液体を一層速やかに蒸発させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円形状の基板である。基板Wの直径は例えば300mmである。基板Wの表面には、微細なパターン(
図16参照)が形成されている。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、例えば、同様の構成を有している。
【0045】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。処理ユニット2は、一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5を含む。スピンチャック5は、図示しない壁面で外部から隔離されている。処理ユニット2は、基板Wを下面(下方側の主面)側から加熱するヒータ機構6と、基板Wの上面(上方側の主面)に対向し基板Wとの間の雰囲気を周囲の雰囲気から遮断する遮断板7と、スピンチャック5を取り囲む筒状のカップ8と、基板Wの下面に処理流体を供給する下面ノズル9とをさらに含む。
【0046】
処理ユニット2は、基板Wの上面にリンス液としての脱イオン水(DIW:Deionized Water)を供給するDIWノズル10と、基板Wの上面の中央領域に窒素ガス(N
2)等の不活性ガスを供給する不活性ガスノズル11と、基板Wの上方で移動可能な移動ノズル12とをさらに含む。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置を含む基板Wの上面の中央およびその近傍の領域のことである。
【0047】
処理ユニット2は、水よりも表面張力の低い低表面張力液体としての有機溶剤(例えばIPA)を基板Wの上面に供給する有機溶剤ノズル13と、窒素ガス等の不活性ガスを基板Wの上面に供給することで基板Wの上面を乾燥させる乾燥ヘッド14とをさらに含む。本実施形態では、乾燥ヘッド14は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ヘッドである。
【0048】
処理ユニット2は、カップ8を収容するチャンバ16(
図1参照)をさらに含む。図示は省略するが、チャンバ16には、基板Wを搬入/搬出するための搬入/搬出口が形成されており、この搬入/搬出口を開閉するシャッタユニットが備えられている。
スピンチャック5は、チャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる電動モータ23とを含む。チャックピン20およびスピンベース21は、基板Wを水平に保持する基板保持手段の一例である。回転軸22および電動モータ23は、チャックピン20およびスピンベース21によって保持された基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる基板回転手段の一例である。
【0049】
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びており、この実施形態では、中空軸である。回転軸22の上端は、スピンベース21の下面の中央に結合されている。スピンベース21は、水平方向に沿う円盤形状を有している。スピンベース21の上面の周縁部には、基板Wを把持するための複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。
【0050】
ヒータ機構6は、ホットプレートの形態を有しており、円板状のプレート本体45と、プレート本体45に支持されたヒータ46とを含む。ヒータ機構6は、スピンベース21の上方に配置されている。ヒータ機構6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸24が結合されている。昇降軸24は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔と、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸24の下端は、回転軸22の下端よりもさらに下方にまで延びている。この昇降軸24の下端に、ヒータ昇降機構26が結合されている。ヒータ昇降機構26を作動させることにより、ヒータ機構6は、スピンベース21の上面に近い下位置から、基板Wの下面に近い上位置までの間で上下動する。
【0051】
ヒータ46は、プレート本体45に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ46に通電することによって、プレート本体45の上面である加熱面45aが室温(例えば20〜30℃)よりも高温に加熱される。ヒータ46への給電線47は、昇降軸24内に通されている。そして、給電線47には、ヒータ46に電力を供給するヒータ通電機構48が接続されている。
【0052】
下面ノズル9は、中空の昇降軸24を挿通し、さらに、ヒータ機構6を貫通している。下面ノズル9は、基板Wの下面中央に臨む吐出口9aを上端に有している。下面ノズル9には、温水等の加熱流体が、加熱流体供給管30を介して加熱流体供給源から供給されている。加熱流体供給管30には、その流路を開閉するための加熱流体バルブ31が介装されている。温水は、室温よりも高温の水であり、例えば80℃〜85℃の水である。加熱流体は、温水に限らず、高温の窒素ガス等の気体であってもよく、基板Wを加熱することができる流体であればよい。
【0053】
遮断板7は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成され、スピンチャック5の上方でほぼ水平に配置されている。遮断板7において基板Wの上面と対向する面とは反対側の面には、中空軸27が固定されている。
中空軸27には、鉛直方向に沿って中空軸27を昇降させることによって、中空軸27に固定された遮断板7を昇降させる遮断板昇降ユニット28が結合されている。遮断板昇降ユニット28は、下位置から上位置までの任意の位置(高さ)に遮断板7を位置させることができる。
【0054】
不活性ガスノズル11は、基板Wの上面の中心領域に向けて窒素ガス(N
2)等の不活性ガスを供給することができる。この明細書において、不活性ガスとは、窒素ガスに限らず、基板Wの表面およびパターンに対して不活性なガスのことであり、例えばアルゴン等の希ガス類である。不活性ガスノズル11に窒素ガス等の不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給管43が結合されている。第1不活性ガス供給管43には、その流路を開閉する第1不活性ガスバルブ44が介装されている。
【0055】
DIWノズル10は、この実施形態では、基板Wの上面の回転中心に向けてDIWを吐出するように配置された固定ノズルである。DIWノズル10には、DIW供給源から、DIW供給管32を介して、DIWが供給される。DIW供給管32には、その流路を開閉するためのDIWバルブ33が介装されている。DIWノズル10は固定ノズルである必要はなく、少なくとも水平方向に移動する移動ノズルであってもよい。また、DIWノズル10は、DIW以外のリンス液を供給するリンス液ノズルであってもよい。リンス液としては、水のほかにも、炭酸水、電界イオン水、オゾン水、希釈濃度(例えば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)等を例示できる。
【0056】
移動ノズル12は、ノズル移動ユニット29によって、水平方向および垂直方向に移動される。移動ノズル12は、基板Wの上面の回転中心に対向する位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で水平方向に移動する。ホーム位置は、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。移動ノズル12は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。ノズル移動ユニット29は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。
【0057】
移動ノズル12は、この実施形態では、酸、アルカリ等の薬液を供給する薬液ノズルとしての機能を有している。より具体的には、移動ノズル12は、液体と気体とを混合して吐出することができる二流体ノズルの形態を有していてもよい。二流体ノズルは、気体の供給を停止して液体を吐出すればストレートノズルとして使用できる。移動ノズル12には、薬液供給管34および第2不活性ガス供給管35が結合されている。薬液供給管34には、その流路を開閉する薬液バルブ36が介装されている。第2不活性ガス供給管35には、その流路を開閉する第2不活性ガスバルブ37が介装されている。薬液供給管34には、薬液供給源から、酸、アルカリ等の薬液が供給されている。第2不活性ガス供給管35には、不活性ガス供給源から、不活性ガスとしての窒素ガスが供給されている。
【0058】
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄液である。さらに具体的には、薬液は、フッ酸に限られず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。これらを混合した薬液の例としては、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)等が挙げられる。
【0059】
有機溶剤ノズル13は、基板Wの上面に低表面張力液体を供給する低表面張力液体ノズルの一例である。低表面張力液体ノズルは、基板Wの上面に低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給手段の一例である。低表面張力液体としては、IPAに限らず、水よりも表面張力が小さく、かつ、基板Wの上面および基板Wに形成されたパターン(
図16参照)と化学反応しない(反応性が乏しい)、IPA以外の有機溶剤を用いることができる。より具体的には、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液を低表面張力液体として用いることができる。また、低表面張力液体は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。例えば、IPA液と純水との混合液であってもよいし、IPA液とHFE液との混合液であってもよい。
【0060】
処理ユニット2は、乾燥ヘッド14を支持する移動部材17と、移動部材17を移動させる移動ユニット15とをさらに含む。移動部材17は、水平方向に延びるアームを含む。移動ユニット15は、鉛直方向に延び、移動部材17に連結された回動軸15aと、回動軸15aを駆動する回動軸駆動機構15bとを含む。回動軸駆動機構15bは、回動軸15aを鉛直な回動軸線まわりに回動させることによって基板Wの上面に沿って移動部材17を揺動させ、回動軸15aを鉛直方向に沿って昇降することにより、移動部材17を上下動させる。移動部材17の揺動および昇降に応じて、乾燥ヘッド14が水平方向および垂直方向に移動する。
【0061】
有機溶剤ノズル13は、乾燥ヘッド14に固定されている。詳しくは、後述する
図3Aおよび
図3Bも参照して、有機溶剤ノズル13は、その吐出口13aを基板Wの上面に向けた状態で、乾燥ヘッド14を上下に貫通する貫通孔14a内で固定されている。そのため、乾燥ヘッド14と低表面張力ノズルとしての有機溶剤ノズル13とは、共通の移動部材17によって支持されており、移動部材17によって基板Wの上方で移動される。
【0062】
有機溶剤ノズル13は、基板Wの上面の回転中心に対向する中央位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動可能である。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。基板Wの上面に対向しないホーム位置とは、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。同様に、乾燥ヘッド14は、基板Wの上面の回転中心に対向する中央位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動可能である。有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりすることができる。
【0063】
有機溶剤ノズル13には、有機溶剤ノズル13に低表面張力液体としての有機溶剤(本実施形態ではIPA)を供給する有機溶剤供給管38が結合されている。有機溶剤供給管38には、その流路を開閉する有機溶剤バルブ39が介装されている。乾燥ヘッド14には、乾燥ヘッド14に窒素ガス等の不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給管40が結合されている。第3不活性ガス供給管40には、その流路を開閉する第3不活性ガスバルブ41が介装されている。また、乾燥ヘッド14には、乾燥ヘッド14内およびその周辺を排気する排気管42が結合されている。排気管42には、その流路を開閉する排気バルブ49が介装されている。
【0064】
図3Aは、乾燥ヘッド14の模式的な縦断面図であり、
図3Bは、
図3AのIIIb−IIIb線に沿った横断面図である。
乾燥ヘッド14は、例えばブロック状の形態を有している。乾燥ヘッド14は、水平方向に長手方向を有しており、長手方向の大きさが90mm程度である。乾燥ヘッド14は、基板Wの上面に対向し、基板Wよりも平面視サイズの小さな対向面50を有する。対向面50は、基板Wの上面から上方に窪んで、不活性ガス貯留空間51を乾燥ヘッド14内に形成している。対向面50は、乾燥ヘッド14の下面によって構成された第1面50Aと、不活性ガス貯留空間51の天井面によって構成された第2面50Bとを含む。
【0065】
乾燥ヘッド14は、不活性ガス貯留空間51を排気する排気口52と、不活性ガス貯留空間51の天井面に形成された複数の不活性ガス導入口53と、複数の不活性ガス導入口53に対して不活性ガス貯留空間51とは反対側に区画された不活性ガス供給室54とを含む。
排気口52には、前述の排気管42が連結されている。排気口52から排出された有機溶剤や不活性ガス等の気体は、排気管42を介して乾燥ヘッド14の外部へ送られる。不活性ガス供給室54には、前述の第3不活性ガス供給管40が連結されている。
【0066】
第3不活性ガス供給管40から不活性ガス供給室54に供給された不活性ガスは、不活性ガス供給室54内で拡散し、複数の不活性ガス導入口53から均一な流量で不活性ガス貯留空間51に供給される。この実施形態では、排気口52による不活性ガス貯留空間51の排気と、不活性ガス貯留空間51の不活性ガスの供給とによって、対向面50と基板Wの上面との間の空間の有機溶剤の気体の濃度が低減される。これにより、対向面50と基板Wの上面との間の空間にその空間外よりも低湿度の低湿度空間Bが形成される。低湿度空間Bは、基板Wの上面の有機溶剤の蒸発を促進するので、基板Wの上面の有機溶剤を効率良く乾燥させることができる。
【0067】
このように、乾燥ヘッド14は、基板Wの上面を乾燥させる乾燥ヘッドの一例である。したがって、乾燥ヘッド14を支持する移動部材17を移動させる移動ユニット15は、基板Wの上面に沿って乾燥ヘッド14を移動させる乾燥ヘッド移動手段として機能する。
対向面50の第2面50Bは、略扇形の平面形状を有している。詳しくは、対向面50の第2面50Bは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aから遠い位置に要50aを配置し、貫通孔14aの近くに弧50bを配置した扇形を形成している。
【0068】
不活性ガス貯留空間51は、略扇形の平面形状を有している。その扇形の要を構成する部分51aは、排気口52と連通している。当該扇形の弧を構成する部分51bは、有機溶剤ノズル13よりも排気口52側に位置している。排気口52側に不活性ガス貯留空間51の扇形の要を構成する部分51aを配置することで、不活性ガス貯留空間51内の有機溶剤の蒸気を集合させて排気口52へ導けるので、不活性ガス貯留空間51を効率良く排気することができる。
【0069】
図4は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御ユニット3は、マイクロコンピュータを備えており、所定の制御プログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。より具体的には、制御ユニット3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。特に、制御ユニット3は、搬送ロボットIR,CR、電動モータ23、ノズル移動ユニット29、移動ユニット15、遮断板昇降ユニット28、ヒータ通電機構48、ヒータ昇降機構26、バルブ類31,33,36,37,39,41,44,49等の動作を制御する。制御ユニット3は、第3不活性ガスバルブ41および排気バルブ49を制御することで、乾燥ヘッド14を制御する。
【0070】
図5は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図であり、主として、制御ユニット3が動作プログラムを実行することによって実現される処理が示されている。未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(S1)。この後、基板Wは、搬送ロボットCRによって搬出されるまで、スピンチャック5に水平に保持される(基板保持工程)。
【0071】
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、薬液処理(S2)が開始される。薬液処理工程では、まず、不活性ガスの供給が開始される。具体的には、制御ユニット3は、第1不活性ガスバルブ44を開き、基板Wの上面に向けて不活性ガスノズル11から不活性ガスを供給させる。このときの不活性ガスの流量は小流量である。小流量とは、例えば
3リットル/mi
n未満の流量である。
【0072】
制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を所定の薬液回転速度で回転させる。制御ユニット3は、遮断板昇降ユニット28を制御して遮断板7を上位置に位置させる。その一方で、制御ユニット3は、ノズル移動ユニット29を制御して、移動ノズル12を基板Wの上方の薬液処理位置に配置する。
薬液処理位置は、移動ノズル12から吐出される薬液が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、薬液バルブ36を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、移動ノズル12から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの上面全体に行き渡る。
【0073】
一定時間の薬液処理の後、基板W上の薬液をDIWに置換することにより、基板Wの上面から薬液を排除するためのDIWリンス処理(S3)が実行される。具体的には、制御ユニット3は、薬液バルブ36を閉じ、代わって、DIWバルブ33を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けてDIWノズル10からDIWが供給される。供給されたDIWは遠心力によって基板Wの上面全体に行き渡る。このDIWによって基板W上の薬液が洗い流される。この間に、制御ユニット3は、ノズル移動ユニット29を制御して、移動ノズル12を基板Wの上方からカップ8の側方へと退避させる。
【0074】
DIWリンス処理においても、不活性ガスノズル11による不活性ガスの供給と、スピンベース21による基板Wの回転が継続される。DIWリンス処理においても不活性ガスは、小流量で供給される。基板Wは、所定のDIWリンス回転速度で回転される。
一定時間のDIWリンス処理の後、基板W上のDIWを、水よりも表面張力の低い低表面張力液体である有機溶剤(例えばIPA)に置換する有機溶剤処理(S4)が実行される。
【0075】
有機溶剤処理が実行される間、基板Wを加熱してもよい。具体的には、制御ユニット3が、ヒータ昇降機構26を制御して、ヒータ機構6を上位置に位置させ、ヒータ通電機構48を制御してヒータ機構6に通電させて基板Wを加熱する。基板Wは、必ずしもヒータ機構6によって加熱される必要はない。すなわち、制御ユニット3が、加熱流体バルブ31を開いて、下面ノズル9から加熱流体を供給させることで基板Wを加熱してもよい。
【0076】
制御ユニット3は、移動ユニット15を制御して、基板Wの上方の有機溶剤リンス位置に有機溶剤ノズル13を移動させる。有機溶剤リンス位置は、有機溶剤ノズル13の吐出口13aから吐出される有機溶剤(例えばIPA)が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。
そして、制御ユニット3は、遮断板昇降ユニット28を制御して、遮断板7を上位置と下位置との間の処理位置に位置させる。処理位置は、有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14が遮断板7と基板Wとの間で水平に移動することができる位置である。そして、制御ユニット3は、DIWバルブ33を閉じて、有機溶剤バルブ39を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、有機溶剤ノズル13から有機溶剤が供給される。供給された有機溶剤は遠心力によって基板Wの上面全体に行き渡り、基板W上のDIWを置換する。有機溶剤によりDIWを置換した後、基板Wに撥水剤を供給する別のノズル(図示せず)を用いて基板Wの上面に撥水剤を供給し、有機溶剤を撥水剤で置換した後、撥水剤を有機溶剤により置換してもよい。
【0077】
有機溶剤処理において、制御ユニット3は、スピンチャック5の回転を減速し、かつ有機溶剤バルブ39を閉じて有機溶剤の供給を停止する。それにより、基板W上に有機溶剤の液膜が形成される(液膜形成工程)。
有機溶剤液膜の排除に際して、制御ユニット3は、第1不活性ガスバルブ44を制御して、基板Wの中央領域に向けて不活性ガスノズル11から不活性ガスを吹き付ける(不活性ガス吹き付け工程)。
【0078】
これにより、不活性ガスが吹き付けられる位置、すなわち、基板Wの中央領域において、有機溶剤液膜が不活性ガスによって排除され、有機溶剤液膜の中央領域に、基板Wの表面を露出させる開口が形成される(開口形成工程)。このように、不活性ガスノズル11は、有機溶剤液膜の中央領域に向けて不活性ガスを吹き付ける不活性ガス供給手段の一例であり、有機溶剤液膜の中央領域に開口を形成する開口形成手段でもある。有機溶剤液膜の中央領域とは、平面視で基板Wの上面の中央領域と重なる領域のことである。この開口を広げることによって、基板W上の有機溶剤が基板W外へと排出される(液膜排除工程)。制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、液膜排除工程と並行して基板Wを回転させる(基板回転工程)。不活性ガス吹き付け工程は、液膜排除工程が完了するまで継続される。
【0079】
不活性ガスの吹き付けにより有機溶剤液膜に付加される力と、基板Wの回転による遠心力とによって開口が広がり、基板Wの上面から有機溶剤液膜が排除される。開口の広がりに伴って、制御ユニット3は、移動ユニット15を制御して、有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14を基板Wの周縁へ向けて移動させる。その際、制御ユニット3は、有機溶剤バルブ39を開いて有機溶剤液膜に有機溶剤ノズル13から有機溶剤を供給させつつ、第3不活性ガスバルブ41を開いて有機溶剤液膜が排除されて露出した基板Wの上面に不活性ガスを供給させて基板Wの上面を乾燥させる。また、制御ユニット3は、排気バルブ49を開いて不活性ガス貯留空間51を排気する。
【0080】
そして、有機溶剤処理を終えた後、制御ユニット3は、有機溶剤バルブ39、第3不活性ガスバルブ41および排気バルブ49を閉じ、移動ユニット15を制御して有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14をホーム位置へ退避させる。また、制御ユニット3は、第1不活性ガスバルブ44を閉じて不活性ガスノズル11からの不活性ガスの供給を停止させる。そして、制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、基板Wを乾燥回転速度で高速回転させる。それにより、基板W上の液成分を遠心力によって振り切るための乾燥処理(S5:スピンドライ)が行われる。
【0081】
スピンドライでは、制御ユニット3は、移動ユニット15を制御して有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14を退避させる。そして、制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、基板Wを所定の乾燥回転速度で高速回転させる。乾燥回転速度は、例えば800rpmである。これにより、基板W上の液成分を遠心力によって振り切る。スピンドライは、制御ユニット3が遮断板昇降ユニット28を制御して遮断板7を下位置へ移動させた状態で行われる。
【0082】
その後、電動モータ23を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。そして、制御ユニット3は、遮断板昇降ユニット28を制御して遮断板7を上位置に退避させる。そして、制御ユニット3は、第1不活性ガスバルブ44を閉じて不活性ガスノズル11による不活性ガスの供給を停止させる。
その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S6)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0083】
図6は、有機溶剤処理(
図5のS4)の詳細を説明するためのタイムチャートである。
図7A〜
図7Dは、有機溶剤処理(
図5のS4)の様子を説明するための処理ユニット2の要部の図解的な断面図である。
有機溶剤処理は、有機溶剤リンスステップT1と、液膜形成ステップT2と、穴開けステップT3と、穴広げステップT4とを含み、これらが順に実行される。
図6において「IPAノズル位置」は、有機溶剤ノズル13の位置を表し、「IPA吐出」は、有機溶剤ノズル13からの有機溶剤の吐出状況を表す。
【0084】
有機溶剤リンスステップT1は、基板Wを回転させながら、基板Wの上面に低表面張力液体としての有機溶剤を供給するステップ(低表面張力液体供給工程、液膜形成工程)である。
図7Aに示すように、基板Wの上面に有機溶剤ノズル13から有機溶剤(例えばIPA)が供給される。供給された有機溶剤は、遠心力を受けて基板Wの上面の中心領域から周縁へと向かい、DIWリンス処理(
図5のS3)で基板Wの上面に供給されたDIW(リンス液)が全て有機溶剤に置換される。
【0085】
有機溶剤リンスステップT1では、制御ユニット3は、遮断板昇降ユニット28を制御して遮断板7を処理位置に位置させる。基板Wの上面は、処理位置に位置する遮断板7によって覆われているため、遮断板7と基板Wの上面との間の空間は外部の空間から遮断されている。そのため、処理ユニット2の壁面から跳ね返った液滴や雰囲気中のミスト等が基板Wの上面に付着することを抑制または防止できる。
【0086】
また、有機溶剤リンスステップT1では、不活性ガスノズル11からの小流量での不活性ガスの供給が継続される。
有機溶剤リンスステップT1の期間中、基板Wは、スピンチャック5によって、所定の有機溶剤リンス処理速度で回転させられる。有機溶剤リンス処理速度は、例えば300rpmである。有機溶剤ノズル13は、中心位置に配置される。中心位置とは、基板Wの回転軸線A1上で基板Wに上方から対向する位置である。有機溶剤バルブ39は開状態とされ、したがって、有機溶剤(例えばIPA)が基板Wの上面の回転中心に向けて上方から供給される。移動ノズル12は、カップ8の側方のホーム位置に退避している。薬液バルブ36および第2不活性ガスバルブ37は閉状態に制御される。
【0087】
液膜形成ステップT2は、
図7Bに示すように、基板Wの回転を減速させ基板Wから飛散する有機溶剤の量を減少させることにより、有機溶剤の液膜Mの膜厚を成長させるステップである。液膜形成ステップT2では、膜厚の大きな液膜M(例えば膜厚1mm)が基板Wの表面に形成される。
基板Wの回転は、この例では、有機溶剤リンス処理速度から段階的または連続的に減速される。より具体的には、基板Wの回転速度は、300rpmから、50rpmに減速されて所定時間(たとえば10秒)維持され、その後、10rpmに減速されて所定時間(たとえば30秒)維持される。液膜形成ステップT2では、
図6における「基板回転速度」以外の条件については、有機溶剤リンスステップT1と同じ条件に維持される。有機溶剤ノズル13は、中心位置に保持され、引き続き、基板Wの上面の回転中心に向けて有機溶剤を供給する。有機溶剤ノズル13からの有機溶剤の供給が、液膜形成ステップT2が終わるまで継続されることにより、基板Wの上面の至るところで有機溶剤が失われることがない。
【0088】
穴開けステップT3は、
図7Cに示すように、不活性ガスノズル11から液膜Mの中央領域に向けて垂直に大流量(例えば3リットル/分)で不活性ガス(例えば窒素ガス)を吹き付け、液膜Mの中央領域に小さな開口H(例えば直径30mm程度)を開けて基板Wの上面の中央領域を露出させるステップである(不活性ガス吹き付け工程、開口形成工程)。
【0089】
穴開けステップT3では、必ずしも不活性ガス吹き付け工程が実行される必要はない。例えば、制御ユニット3が、加熱流体バルブ31を開いて、下面ノズル9から基板Wの下面の中央領域へ加熱流体を供給させることによって基板Wを加熱して中央領域の有機溶剤を蒸発させ、不活性ガスの吹き付けはしないで、液膜Mの中央領域に開口Hを形成させてもよい(開口形成工程)。このように、下面ノズル9は、液膜Mの中央領域に開口Hを形成する開口形成手段として機能することが可能である。また、基板Wの上面への不活性ガスの吹き付けと、加熱流体による基板Wの下面の中央領域の加熱との両方によって液膜Mに開口Hを形成してもよい。
【0090】
穴開けステップT3の期間中、制御ユニット3は、有機溶剤バルブ39を制御して、有機溶剤ノズル13からの有機溶剤の供給を停止する。また、穴開けステップT3の期間中、遮断板7は、処理位置で維持される。
穴開けステップT3の期間中、制御ユニット3は、移動ユニット15を制御することによって、有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14を穴開け位置に位置させる。穴開け位置は、基板Wの中央領域から基板Wの周縁側へ僅かにずれた位置である。有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14が穴開け位置に位置することで、不活性ガスノズル11は、有機溶剤ノズル13および乾燥ヘッド14によって阻害されることなく、液膜Mの中央領域へ不活性ガスを供給することができる。
図7Cでは、不活性ガスノズル11の下方に乾燥ヘッド14が位置するが、実際には、穴開け位置は、不活性ガスノズル11から不活性ガスが吹き付けられる基板Wの上面の中央領域を避けた位置である。
【0091】
穴開けステップT3では、制御ユニット3は、電動モータ23を制御してスピンベース21の回転を徐々に加速させる。具体的には、スピンベース21の回転は、所定の開口形成速度になるまで加速される。開口形成速度は、例えば30rpmである。開口形成速度は、30rpmに限られず、10rpm〜50rpmの範囲で変更可能である。
穴広げステップT4は、
図7Dに示すように、基板Wを回転させることにより液膜Mの開口Hを広げることによって基板Wの上面から液膜Mを排除するステップである(液膜排除工程、基板回転工程)。穴広げステップT4では、基板回転工程は、液膜排除工程と並行して実行される。すなわち、基板Wの上面から液膜Mが排除されるまでの間、基板Wの回転は維持される。
【0092】
穴広げステップT4では、制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、スピンベース21の回転が所定の液膜排除速度になるまで徐々に減速させる(回転減速工程)。液膜排除速度は、例えば10rpmである。液膜排除速度は、10rpmに限られず、10rpm〜30rpmの範囲で変更可能である。
穴広げステップT4では、不活性ガスノズル11による基板Wの中央領域への不活性ガスの吹き付けが維持される(不活性ガス吹き付け工程)。不活性ガスノズル11による不活性ガスの吹き付けは、基板Wの上面から液膜Mが排除されるまでの間、すなわち液膜排除工程が完了するまで継続される。
【0093】
穴広げステップT4では、制御ユニット3は、有機溶剤バルブ39を制御して、有機溶剤ノズル13から基板Wの上面への有機溶剤の供給を再開する。有機溶剤ノズル13から供給される有機溶剤の温度(有機溶剤温度)は、室温より高いことが好ましく、例えば50℃である。その際、制御ユニット3は、有機溶剤ノズル13から供給される有機溶剤の着液点Pを開口Hの外側に設定する。着液点Pとは、有機溶剤ノズル13から供給される有機溶剤が基板Wの上面に着液する点をいう。有機溶剤ノズル13は、回転軸線A1まわりに回転しないので、着液点Pは、基板Wが回転することによって基板回転方向Sの上流側へ相対移動していることになる。開口Hの外側とは、開口Hの周縁H1に対して回転軸線A1とは反対側をいう。
【0094】
穴広げステップT4では、制御ユニット3は、第1不活性ガスバルブ44を開いて、乾燥ヘッド14から基板Wへの不活性ガスの供給を開始する。乾燥ヘッド14から供給される不活性ガスの温度(不活性ガス温度)は、室温より高いことが好ましく、例えば50℃である。同時に、制御ユニット3は、排気バルブ49を開いて、不活性ガス貯留空間51に貯留された不活性ガスおよび有機溶剤の蒸気を排気口52から排出する。
【0095】
穴広げステップT4では、制御ユニット3は、開口Hの内側に乾燥領域Rを設定する。乾燥領域Rとは、開口Hの内側において基板Wの上面を乾燥させるべき領域のことであり、具体的には、基板Wの上面において乾燥ヘッド14の対向面50と対向する領域のことである。乾燥領域Rは、平面視で乾燥ヘッド14の対向面50の第2面50Bと重なっている。乾燥ヘッド14は、回転軸線A1まわりに回転しないので、乾燥領域Rは、基板Wが回転することによって基板回転方向Sの上流側へ相対移動していることになる。開口Hの内側とは、開口Hの周縁H1よりも回転軸線A1側をいう。
【0096】
不活性ガス導入口53からの不活性ガスの供給流量と、排気口52からの気体の排出流量とを調整することによって、不活性ガス貯留空間51内の雰囲気の諸元(例えば、雰囲気中の有機溶剤ガスの濃度)が制御される。これにより、対向面50と乾燥領域Rとの間の空間に低湿度空間Bが形成される。このように、乾燥領域Rの上方雰囲気を低湿度にすることにより、液膜Mが排除された後に乾燥領域Rに残った有機溶剤が蒸発しやすくなるので、基板Wの上面を効率的に乾燥させることができる。
【0097】
穴広げステップT4では、制御ユニット3は、移動ユニット15を制御して、吐出口13aから有機溶剤を吐出している状態の有機溶剤ノズル13を穴開け位置から外周位置へ移動させることによって、開口Hの広がりに追従するように着液点Pを移動させる(着液点移動工程)。外周位置とは、有機溶剤ノズル13が基板Wの周縁と対向する位置のことである。着液点Pは、開口Hの周縁
H1付近で開口Hの広がりに追従することが好ましい。
【0098】
制御ユニット3は、移動ユニット15を制御して、乾燥ヘッド14を穴開け位置から外周位置へ移動させることによって、開口Hの広がりに追従するように対向面50および乾燥領域Rを移動させる(乾燥領域移動工程)。前述したように、乾燥ヘッド14は、有機溶剤ノズル13と共通の移動部材17によって支持されているため、有機溶剤ノズル13の移動に追従する。
【0099】
図8Aは、穴広げステップT4における着液点Pおよび乾燥領域Rの移動軌跡を模式的に示した平面図である。
図8Bは、
図8Aの着液点Pおよび乾燥領域Rの周辺の拡大図である。
図8Aおよび
図8Bならびに後述する
図15では、明瞭化のために、有機溶剤の液膜M、着液点Pおよび乾燥領域Rに斜線を付してある。
図8Aに示すように、乾燥領域Rは、着液点Pの移動に追従するように、着液点Pの移動軌跡(
図8Aの一点鎖線参照)に沿って移動する(
図8Aの二点鎖線参照)。乾燥ヘッド14および有機溶剤ノズル13を移動させる際、乾燥領域Rは、着液点Pに対して基板回転方向Sの下流側に半分よりも広い領域が位置するように設定されていてもよい。
【0100】
また、
図8Aの拡大図である
図8Bを参照して、平面視で第2面50Bと重なる領域である乾燥領域Rは、対向面50の第2面50Bと同様に、略扇形の平面形状を有している。乾燥領域Rが形成する扇形は、着液点Pから遠い位置に要Raを有し、着液点Pの近くかつ基板回転方向Sの上流側に弧Rbを配置している。弧Rbは、要Raよりも基板Wの外側(周縁側)に位置している。弧Rbは、基板回転方向Sに沿って配置されている。同様に、対向面50の第2面50Bの扇形の要50aは、着液点Pから遠くに配置されている。また、第2面50Bの扇形の弧50bは、着液点Pに近くかつ基板回転方向Sに沿って配置されている。説明の便宜上、乾燥領域Rの要Raには、第2面50Bの要を示す符号50aを併記し、乾燥領域Rの弧Rbには、第2面50Bの弧を示す符号50aを併記する。
【0101】
この実施形態によれば、開口Hの内側に設定された乾燥領域Rに対向する対向面50と乾燥領域Rとの間の空間には、その空間外よりも低湿度である低湿度空間Bが形成される。そのため、乾燥領域Rの有機溶剤を速やかに蒸発させることができる。
乾燥領域Rおよび対向面50は、開口Hの広がりに追従する。そのため、有機溶剤の液膜Mが排除された後に基板Wの上面に残った有機溶剤を速やかに蒸発させることができる。しかも、対向面50が対向する乾燥領域Rは比較的広いので、乾燥ヘッド14から供給される不活性ガスが基板Wの上面に局部的に大きな外力を作用させることはない。
【0102】
一方、対向面50は、基板Wよりも平面視サイズが小さい。そのため、有機溶剤ノズル13を回避した位置、すなわち基板Wの上面に十分に近い位置に乾燥ヘッド14を配置しながら対向面50を移動させることができる。これにより、乾燥領域Rに残った有機溶剤を一層速やかに蒸発させることができる。
乾燥領域Rが開口Hの内側に設定されており、着液点Pが開口Hの外側に設定されているので、基板Wの上面から液膜Mが排除されるまでの間、液膜Mから有機溶剤が自然に蒸発するのを抑えつつ、十分な量の有機溶剤を液膜Mに供給することができる。そのため、開口Hの広がりによって液膜Mが排除される前に、局所的に液膜Mが蒸発して液膜割れが発生することを抑制できる。
【0103】
このようにして、有機溶剤を基板Wの上面から良好に排除することができる。
また、乾燥領域Rが着液点Pの移動に追従するように着液点Pの移動軌跡に沿って移動する。そのため、着液点Pに着液した有機溶剤が自然に蒸発する前に、有機溶剤を乾燥ヘッド14によって確実に蒸発させることができる。
また、開口形成工程において、不活性ガスノズル11が、液膜Mの中央領域に向けて不活性ガスを吹き付けることによって、開口Hを効率良く、かつ確実に中央領域に形成することができる。
【0104】
また、不活性ガスの吹き付けが、液膜排除工程が完了するまで継続される。これにより、開口Hの広がりが促進され、より一層速やかに有機溶剤を基板W外に排除することができる。さらに、液膜排除工程では、遮断板7が処理位置に位置しているため、基板Wの上方を基板Wの中心から基板Wの周縁に向かう気流を形成することができる。このような気流が形成されることによって、乾燥ヘッド14から供給される不活性ガスによって液膜Mから有機溶剤が跳ね上がったとしても、跳ね上がった有機溶剤が開口Hの内側に落ちることを防ぐことができる。
【0105】
また、液膜排除工程と並行して基板Wを回転させる基板回転工程が実行されるので、基板Wの回転によって発生する遠心力によって開口Hの広がりを促進することができる。これにより、一層速やかに液膜Mを基板W外に排除することができる。
また、基板Wの回転に伴って、液膜Mの開口Hの外側では着液点Pが基板Wを走査し、開口Hの内側では乾燥領域Rが基板Wを走査する。それにより、基板Wの上面全体に対して均一な乾燥処理を施すことができる。
【0106】
液膜排除工程の初期段階では、液膜Mの開口Hが小さいので、乾燥領域Rは、基板Wの上面の中央領域付近に位置している。一方、液膜排除工程の終期段階では、液膜Mの開口Hが大きくなっているので、乾燥領域Rは、基板Wの上面の周縁付近に位置している。
仮に、液膜排除工程における基板Wの回転速度を一定にすると、液膜排除工程の終期段階において単位時間あたりに基板回転方向Sに乾燥領域Rが基板Wの上面を相対移動する距離は、液膜排除工程の初期段階において単位時間あたりに基板回転方向Sに乾燥領域
Rが基板Wの上面を相対移動する距離よりも大きくなる。そのため、液膜排除工程の終期段階では、液膜排除工程の初期段階と比較して、単位面積あたりの基板上面乾燥時間、すなわち乾燥ヘッド14の対向面50に対向する時間が短い。
【0107】
したがって、基板回転工程において基板Wの回転を徐々に減速させて、液膜排除工程の終期段階において単位時間あたりに基板回転方向Sに乾燥領域Rが相対移動する距離を小さくし、単位面積あたりの基板上面乾燥時間を長くすることによって、液膜排除工程の初期段階と終期段階とで、単位面積あたりの基板上面乾燥時間の差を低減することができる。したがって、基板Wの上面をむらなく乾燥させることができる。
【0108】
本実施形態のように乾燥ヘッド14が不活性ガス供給ヘッドである場合、基板回転工程において基板Wの回転を徐々に減速させることによって、液膜排除工程の初期段階と液膜排除工程の終期段階とで、単位面積あたりの基板Wの上面に不活性ガスが吹き付けられる時間の差を低減することができる。
また、乾燥領域Rは、着液点Pに対して基板回転方向Sの下流側に半分よりも広い領域が位置するように設定されるため、着液点Pに着液された有機溶剤が自然に蒸発する前に一層確実に蒸発させることができる。
【0109】
また、略扇形の平面形状を有する乾燥領域Rにおいて、扇形の要Raが着液点Pから遠い位置に配置され、扇形の弧Rbが着液点Pの近くにかつ基板回転方向Sに沿うように配置されている。これにより、扇形の弧Rbが要Raよりも基板Wの周縁側に位置するので、基板Wの上面の各部が乾燥ヘッド14の対向面50に対向する時間、すなわち乾燥時間を均一化することができる。したがって、基板Wの上面をむらなく乾燥させることができる。
【0110】
また、着液点移動工程および乾燥領域移動工程において、有機溶剤ノズル13と乾燥ヘッド14とを共通に支持する移動部材17を移動させることによって、有機溶剤ノズル13と乾燥ヘッド14との間の距離が一定に保たれる。したがって、基板Wの上面全体を均等な条件でむらなく乾燥させることができる。
また、乾燥ヘッド14が不活性ガス供給ヘッドであるため、低湿度空間Bの湿度を不活性ガスによって低減させることができる。これにより、乾燥領域Rから有機溶剤を速やかに蒸発させることができるので、基板Wの上面を速やかに乾燥させることができる。
【0111】
また、対向面50が、基板Wの上面から上方に窪んで不活性ガス貯留空間51を形成している。不活性ガス貯留空間51には、不活性ガス導入口53から供給された不活性ガスが貯留される。そのため、不活性ガス貯留空間51に貯留された不活性ガスによって基板Wの上面に残った有機溶剤を蒸発させることができる。したがって、より一層速やかに有機溶剤を蒸発させることができる。
【0112】
また、不活性ガス貯留空間51を排気する排気口52によって、基板Wの上面から蒸発して蒸気となった有機溶剤が、不活性ガス貯留空間51を介して低湿度空間Bから排除される。これにより、低湿度空間Bをより一層低湿度に保つことができるので、乾燥領域Rの有機溶剤をより一層速やかに蒸発させることができる。
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
【0113】
図9は、第1実施形態の第1変形例に係る処理ユニット2Pに備えられた乾燥ヘッド14Pを示した模式的な断面図である。
図9および後述する
図11〜
図15では、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
第1実施形態の第1変形例に係る乾燥ヘッド14Pが第1実施形態に係る乾燥ヘッド14(
図3Aおよび
図3B参照)と主に異なる点は、乾燥ヘッド14Pが、不活性ガス導入口53および不活性ガス供給室54の代わりに、基板Wの上面(乾燥領域R)を加熱するヒータユニット55を含む点である。
【0114】
対向面50Pは、基板Wの上面から上方に窪んで、不活性ガス貯留空間51(
図3A参照)の代わりに乾燥室59を形成している。対向面50Pは、乾燥ヘッド14Pの下面によって構成された第1面50PAと、乾燥室59の天井面によって構成された第2面50PBとを含む。対向面50Pの第2面50PBは、略扇形の平面形状を有していてもよい。対向面50Pの第2面50PBは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aから遠い位置に扇形の要50aを配置し、貫通孔14aの近くに扇形の弧50bを配置している。第2面50PBは、平面視で乾燥領域Rと重なっている。乾燥ヘッド14Pは、乾燥室59内を排気する排気口59Aを含む。排気口59Aは、排気管42に連結されている。
【0115】
ヒータユニット55は、例えば、乾燥室59の天井部に配置されている。ヒータユニット55の下面は、対向面50Pの第2面50PBの一部を構成していてもよい。ヒータユニット55は、通電されることにより温度が上昇される抵抗体を含む。ヒータユニット55には、給電線56によってヒータ通電ユニット57からの電力が供給される。
この構成によれば、ヒータユニット55による基板Wの加熱によって乾燥領域Rの有機溶剤の蒸発を一層促進することができる。
【0116】
図10は、第1実施形態の第2変形例に係る処理ユニット2Uに備えられた乾燥ヘッド14Uを示した模式的な断面図である。第2変形例の乾燥ヘッド14Uが第1変形例の乾燥ヘッド14Pと主に異なる点は、乾燥ヘッド14Uの対向面50Uが窪んでおらず、乾燥室59(
図9参照)を形成していない点である。対向面50Uは、ヒータユニット55Uの下面によって構成されている。対向面50Uは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aよりもヒータユニット55U側で乾燥領域Rと対向する対向部分50UBを含む。
【0117】
対向部分50UBは、略扇形の平面形状を有していてもよい。対向部分50UBは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aから遠い位置に扇形の要50aを配置し、貫通孔14aの近くに扇形の弧50bを配置している。対向部分50UBは、平面視で乾燥領域Rと重なっている。この構成によれば、ヒータユニット55Uを基板Wの上面より近い位置に配置して基板Wを加熱することができ、これによって乾燥領域Rの有機溶剤の蒸発を一層促進することができる。
【0118】
図11は、第1実施形態の第3変形例に係る処理ユニット2Qが備える乾燥ヘッド14Qを示した図である。乾燥ヘッド14Qは、第1実施形態で示した複数の不活性ガス導入口53と、不活性ガス供給室54とを含み、かつ、第1変形例で示したヒータユニット55を含んでいる。言い換えると、乾燥ヘッド14Qは、ヒータユニット55を有する不活性ガスヘッドである。この構成によれば、不活性ガス貯留空間51の不活性ガスによる低湿度空間Bの湿度の低減と、ヒータユニット55による加熱とによって、乾燥領域Rの有機溶剤の蒸発を一層促進することができる。
【0119】
図12は、第1実施形態の第4変形例に係る処理ユニット2Rに備えられた乾燥ヘッド14Rを示した模式的な断面図である。第1実施形態の第4変形例に係る乾燥ヘッド14Rが第1実施形態に係る乾燥ヘッド14(
図3Aおよび
図3B参照)と主に異なる点は、乾燥ヘッド14Rが、排気口52、不活性ガス導入口53および不活性ガス供給室54の代わりに、対向面50と基板Wの上面(乾燥領域R)との間の空間を排気する排気ユニット58を含む点である。
【0120】
乾燥ヘッド14Rでは、対向面50Rが基板Wの上面から上方に窪んで、不活性ガス貯留空間51(
図3A参照)の代わりに乾燥室59Rを形成している。対向面50Rは、乾燥ヘッド14Rの下面によって構成された第1面50RAと、乾燥室59Rの天井面によって構成された第2面50RBとを含む。対向面50Rの第2面50RBは、略扇形の平面形状を有していてもよい。対向面50Rの第2面50RBは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aから遠い位置に扇形の要50aを配置し、貫通孔14aの近くに扇形の弧50bを配置している。第2面50RBは、平面視で乾燥領域Rと重なっている。
【0121】
乾燥ヘッド14Rは、乾燥室59R内を排気する排気口59RAを含む。排気口59RAは、例えば、第2面50RBに形成されている。排気口59RAは、排気管42に連結されている。この構成によれば、対向面50Rと乾燥領域Rとの間の空間を排気する排気ユニット58によって、有機溶剤の蒸気を低湿度空間Bから排除することができる。したがって、乾燥領域Rの有機溶剤を一層速やかに蒸発させることができる。
【0122】
図13は、第1実施形態の第5変形例に係る処理ユニット2Sに備えられた乾燥ヘッド14Sを示した模式的な断面図である。第1実施形態の第5変形例に係る乾燥ヘッド14Sが第1実施形態に係る乾燥ヘッド14(
図3Aおよび
図3B参照)と主に異なる点は、対向面50Sが、基板Wの上面に平行な平坦面であり、対向面50Sに複数の不活性ガス吐出口60が形成されている点である。
【0123】
また、乾燥ヘッド14Sは、第1実施形態に係る乾燥ヘッド14とは異なり、排気口52、不活性ガス導入口53および不活性ガス供給室54を含んでおらず、不活性ガスが第3不活性ガス供給管40から不活性ガス貯留空間51に直接供給される。
対向面50Sは、乾燥ヘッド14Sの下面によって構成されている。対向面50Sは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aよりも不活性ガス吐出口60側で乾燥領域Rと対向する対向部分50SBを含む。
【0124】
対向部分50SBは、有機溶剤ノズル13が挿通された貫通孔14aから遠い位置に要50aを配置し、貫通孔14aの近くに弧50bを配置している。対向部分50SBは、平面視で乾燥領域Rと重なっている。
この構成によれば、基板Wの上面に平行な平坦面である対向面50Sに複数の不活性ガス吐出口60が形成されている。複数の不活性ガス吐出口60に連通する不活性ガス貯留空間51には、不活性ガス導入口53から不活性ガスが供給される。そのため、低湿度空間Bの湿度のむらを低減することができる。したがって、乾燥領域Rの有機溶剤を、むらなく、かつ速やかに蒸発させることができる。また、不活性ガス吐出口60が複数あることによって、基板Wの上面に供給される不活性ガスの勢いを低減することができる。そのため、基板Wの上面に作用する局部的な外力を低減することができる。
<第2実施形態>
図14は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置1Tに備えられた処理ユニット2Tの構成例を説明するための図解的な断面図である。
図15は、穴広げステップT4(
図6および
図7D参照)における着液点Pおよび乾燥領域Rの移動軌跡を模式的に示した平面図である。第2実施形態に係る処理ユニット2Tが第1実施形態に係る処理ユニット2と主に異なる点は、有機溶剤ノズル13Tと乾燥ヘッド14Tとのそれぞれが、独立して水平方向および垂直方向に移動可能な点である。
【0125】
詳しくは、処理ユニット2は、乾燥ヘッド14Tを支持する移動部材17Tと、移動部材17Tを移動させる移動ユニット15Tと、有機溶剤ノズル13Tを支持し有機溶剤ノズル13Tを水平方向および垂直方向に移動させる有機溶剤ノズル移動ユニット18とを含む。有機溶剤ノズル13Tは、基板Wの上面に低表面張力液体を供給する低表面張力液体ノズルの一例である。乾燥ヘッド14Tを支持する移動部材17Tを移動させる移動ユニット15Tは、基板Wの上面に沿って乾燥ヘッド14Tを移動させる乾燥ヘッド移動手段として機能する。
【0126】
有機溶剤ノズル13Tは、有機溶剤ノズル移動ユニット18によって水平方向へ移動させられることによって、基板Wの上面の回転中心に対向する位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。ホーム位置は、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。移動ノズル12は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。有機溶剤ノズル移動ユニット18は、例えば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。
【0127】
乾燥ヘッド14Tは、貫通孔14aが設けられていない点を除いては、第1実施形態の乾燥ヘッド14(
図3Aおよび
図3B参照)と同じ構成である。
第2実施形態の基板処理装置1Tによる基板処理は、乾燥ヘッド14Tを移動させるために制御ユニット3が移動ユニット15Tを制御し、有機溶剤ノズル13Tを移動させるために制御ユニット3が有機溶剤ノズル移動ユニット18を制御する点(
図4参照)を除いて第1実施形態の基板処理装置1による基板処理とほぼ同様である。
【0128】
有機溶剤ノズル13Tと乾燥ヘッド14Tとのそれぞれは、独立して水平方向および垂直方向に移動可能であるため、第2実施形態の穴広げステップT4では、第1実施形態とは異なり、乾燥領域Rが着液点Pの移動に追従しないように乾燥領域Rを移動させることも可能である(
図15参照)。
すなわち、制御ユニット3は、有機溶剤ノズル移動ユニット18を制御して、吐出口13Taから有機溶剤を吐出している状態の有機溶剤ノズル13Tを穴開け位置から外周位置へ移動させることによって、開口Hの広がりに追従するように着液点Pを移動させる(着液点移動工程)。同時に、制御ユニット3は、移動ユニット15Tを制御して、乾燥ヘッド14Tを穴開け位置から外周位置へ移動させることによって、対向面50および乾燥領域Rが、着液点Pには追従せず、開口Hの広がりに追従するように移動させる(乾燥領域移動工程)。
【0129】
一方、第1実施形態の穴広げステップT4と同様に、乾燥領域Rが着液点Pの移動に追従するように、着液点Pの移動軌跡に沿って乾燥領域Rを移動させることも可能である(
図8A参照)。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の変形例を適用することができる。
【0130】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
例えば、第1実施形態の基板処理では、液膜排除工程が完了するまで不活性ガス吹き付け工程を継続するとしたが、必ずしもその必要はない。すなわち、不活性ガスノズル11が基板Wの中央領域に向けて不活性ガスを吹き付けることによって液膜Mに開口Hを形成した後は、制御ユニット3が第1不活性ガスバルブ44を閉じて不活性ガスノズル11からの不活性ガスの供給を停止させてもよい。
【0131】
また、第1実施形態の基板処理では、穴広げステップT4において、基板Wを回転させるとしたが、必ずしも基板Wを回転させる必要はない。基板Wを回転させることによる遠心力と、下面ノズル9からの温水の供給による基板の加熱と、不活性ガスノズル11からの不活性ガスの供給による液膜Mの押し出しと、ヒータ機構6による基板Wの加熱とのうちのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせによって開口Hを広げることが可能である。
【0132】
また、対向面50,50P,50Rの第2面50B,50PB,50RBと、対向部分50UB,50SBとは、必ずしも扇形の平面形状を有している必要はなく、適宜その形状を変更することが可能である。
また、乾燥領域Rは、着液点Pに対して基板回転方向Sの下流側に半分よりも広い領域が位置するように設定されるとしたが、必ずしもその必要はなく、乾燥領域Rが着液点Pに対して基板回転方向Sの上流側に半分よりも広い領域が位置するように設定される場合も有り得る。
【0133】
また、乾燥ヘッドの構成は、乾燥ヘッド14,14P,14U、14Q,14R,14S,14Tに限られず、例えば、乾燥ヘッド14,14P,14Qが排気口52を含まない構成であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。