(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672051
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】高炉内装入物のプロフィル測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/245 20060101AFI20200316BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20200316BHJP
C21B 7/24 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
G01B11/245 H
G01C3/06 110V
C21B7/24 302
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-80946(P2016-80946)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-191023(P2017-191023A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊司
【審査官】
仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−30707(JP,A)
【文献】
特開平6−343135(JP,A)
【文献】
特開2008−96298(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103667563(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0333752(US,A1)
【文献】
特開2015−45587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01C 3/00−3/32
C21B 7/00−9/16
F27D 17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉頂部の互いに離れた位置に配置され、高炉内装入物の表面をカラー撮影可能な一対の撮像装置と、
前記高炉の炉頂部において、一対の前記撮像装置から離れた位置に配置され、前記高炉内装入物に向けて照射する可視光照明装置と、
一対の前記撮像装置で撮影された撮像を3D画像計測処理する制御装置と、
を備えることを特徴とする、高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項2】
前記撮像装置の視野方向と、前記可視光照明装置の照射方向とが概ね直角であることを特徴とする、請求項1に記載の高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記可視光照明装置に対して概ね対称の位置に配置されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、暗視補正機能を備えた超高感度カメラであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項5】
前記撮像装置はピンホールタイプのカメラであり、前記可視光照明装置はピンホールタイプの照明であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項6】
前記撮像装置および前記可視光照明装置はいずれも、平面視において、前記高炉のアップテイク同士の間の中間位置に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉内装入物の表面形状(3Dプロフィル)の測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、銑鉄の製造における高炉には、炉頂から装入物として、粉鉄鉱石を焼き固めた焼結鉱や塊状鉄鉱石等、及びコークスが交互に装入されて堆積し、炉内に鉱石層およびコークス層が形成される。高炉下方にある羽口から吹き込まれる熱風とコークスとの反応によって生じるCOガスにより、鉄鉱石は加熱、還元され(間接還元)、また、一部はコークスにより直接的に還元されて、軟化融着帯を形成した後、溶滴となる。溶滴、すなわち溶銑は、コークス層の間を通過して炉底部に溜まる。炉内に形成された鉱石層およびコークス層は、炉内を徐々に降下する。
【0003】
以上の工程において、高炉に装入された鉄鉱石及びコークスによって形成される炉頂部の装入物分布を調整し、適正なガス分布を得ることは非常に重要である。高炉内炉頂部における装入物のプロフィル(表面形状)は、ベル式装入装置ではムーバブルアーマを、また、ベルレス式装入装置では分配シュートを介する装入物の落下軌跡により決定される。通常装入時は、炉頂部の装入物のプロフィルは、高炉の中心鉛直方向(軸心)を軸として中央部が低い略逆円錘形状をなしている。高炉内装入物のプロフィルは、高炉の操業にとって重要な情報であり、殊に近年、高炉では、低コークス比での操業安定化を目的に、装入物の分布制御が複雑化しており、十分な測定頻度と精度を実現するプロフィルの測定ニーズが高まっている。
【0004】
現在の高炉内装入物のプロフィル測定装置の主流は、高炉内に照射マイクロ波を走査して装入物プロフィルを2次元的に測定するマイクロ波方式である。さらに、近年は、高炉内装入物全面のプロフィルを、マイクロ波を用いて3次元的(3D)に測定する装置が公表されている。
【0005】
ところが、高炉内装入物の3Dプロフィル測定装置としてマイクロ波方式を用いる場合、国内で一般的なすり鉢状の高炉内装入物に対しては、マイクロ波方式固有の入射角問題が顕在化する。すなわち、マイクロ波の装入物への入射角度が小さくなると測定精度が低下し、場合によっては反射波が測定不能となる場合がある。また、高炉内装入物全面のプロフィルを3次元的に測定するためには、相当量の測定回数が必要となるが、高炉内装入物の降下速度は100mm/分程度であり、測定時間を長く要すると、その間に装入物が降下してプロフィルが変化するという問題が生じる。これらの問題を解決するには、極めて高価な3Dプロフィル装置を複数台設置する必要が生じ、コストの面や設置スペースを考慮すると現実的ではない。
【0006】
一方、特許文献1には、一対の赤外線カメラによる装入物表面の温度パターンから、3次元的に高炉内装入物の全面プロフィルを測定する方法が開示されている。ところが、高炉内装入物は、炉の中心部のみが数百℃の高温になるものの、中心部以外の範囲では、装入物の表面温度が通常100℃以下と言われている。したがって、中心部のみが白く写り、それ以外の範囲は温度差が小さいことからコントラストが得られず、所望する温度パターンを測定できない。そのため、赤外線カメラによる3Dプロフィル測定は実用には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−96298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、高炉内装入物の3Dプロフィルを測定するには、マイクロ波方式や赤外線方式では問題があり、実用化が困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、小型かつ安価で、高炉内装入物の3Dプロフィルを精度よく測定できる高炉内装入物のプロフィル測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は、高炉の炉頂部の互いに離れた位置に配置され、高炉内装入物の表面をカラー撮影可能な一対の撮像装置と、前記高炉の炉頂部において、一対の前記撮像装置から離れた位置に配置され、前記高炉内装入物に向けて照射する可視光照明装置と、一対の前記撮像装置で撮影された撮像を3D画像計測処理する制御装置と、を備えることを特徴とする、高炉内装入物のプロフィル測定装置を提供する。
【0011】
前記プロフィル測定装置において、前記撮像装置の視野方向と、前記可視光照明装置の照射方向とが概ね直角であることが好ましい。また、前記撮像装置は、前記可視光照明装置に対して概ね対称の位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
前記撮像装置は、暗視補正機能を備えた超高感度カメラでもよい。また、前記撮像装置はピンホールタイプのカメラであり、前記可視光照明装置はピンホールタイプの照明でもよい。
【0013】
前記撮像装置および前記可視光照明装置はいずれも、平面視において、前記高炉のアップテイク同士の間の中間位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型かつ安価で、高炉内装入物の3Dプロフィルを精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかるプロフィル測定装置を備えた高炉炉頂部の例を示す正面図である。
【
図2】
図2の高炉の炉頂部を上から見た平面図である。
【
図3】可視光照明装置、撮像装置を収納する耐圧容器の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
図1に、本発明のプロフィル測定装置1を取り付けた高炉2の例を示す。高炉2の炉口部にはベルレス式装入装置3が設けられ、鉄鉱石やコークスが、分配シュート4を通って炉内に装入され、高炉内装入物5として堆積する。本実施形態にかかるプロフィル測定装置1を構成する可視光照明装置11および撮像装置12は、高炉2の炉頂部の、炉体よりも外側に設置されている。
【0018】
可視光照明装置11は、可視光、例えば波長が300〜800nm程度の白色光を照射するLED照明等が用いられ、高炉内装入物5に向けて可視光を照射可能な向きに設置される。可視光照明装置11から照射される可視光の強度は、撮像装置12の性能に応じたものを選択すればよい。また、炉内を照射するための開口部に、粉塵による詰まりや汚れが生じることを考慮すると、開口部を小さくできるピンホールタイプの照明が好ましい。
【0019】
撮像装置12は、高炉内装入物5の表面全体を撮影可能な位置に設置され、可視光のカラー撮像が可能なカメラが用いられる。本発明で用いられる撮像装置は、暗視補正機能を備え、少ない光量でカラー撮影できる超高感度のカラー暗視カメラが好適であり、カメラの感度は、例えばISO感度換算で400万相当のものが用いられる。ただし、カメラ感度は照明照度との相関関係にあり、照明照度を高くできれば、超高感度カメラの性能は必要ない。しかし、カメラは高感度ほどシャッター速度を速くできることから、上昇する粉塵の影響を信号処理により除去する場合、超高感度カメラが有利に働くと考えられる。また、炉内を撮像するための開口部に、粉塵による詰まりや汚れが生じることを考慮すると、開口部を小さくできるピンホールタイプのカメラが好ましい。さらに、高炉2内の高温部から発生する赤外線が撮像装置12に入射し外乱となることから、撮像装置12に赤外線カットフィルターを設けることが好ましい。
【0020】
図2に示すように、可視光照明装置11は、一対の撮像装置12、12に対して、平面視において高炉2の中心から見て互いに直角方向に配置されている。すなわち、一対の撮像装置12、12は、高炉2の径方向に対向して設けられ、可視光照明装置11は、いずれの撮像装置12、12からも離れた位置、且つ撮像装置12、12は可視光照明装置11に対して対称位置に配置されている。一対の撮像装置12、12は、距離が離れているほど精度の良い解析結果が得られるので、
図2に示すように対向するように設置することが好ましい。また、可視光照明装置11を撮像装置12、12から離すのは、撮像装置12の直近にある粉塵からの反射光による外乱を防止するためであり、撮像装置12、12を可視光照明装置11に対して対称位置に配置するのは、陰影形状の見え方が2つの撮像装置12、12で同様となり、2つの画像のマッチング精度が上がるためである。また、撮像装置12、12の視野方向と、可視光照明装置11の照射方向とを直角にすることにより、照明の影で陰影が強調され、画像解析時のマッチング上有利になる。一方、可視光照明装置11と撮像装置12とを同一方向または逆方向とすると、コントラストの小さい画像となり、マッチングが困難になる。さらに、同一方向の場合には、粉塵の反射光が撮像装置12に直接入射して外乱になる。したがって、撮像装置12の視野方向と可視光照明装置11の照射方向とは、概ね直角であることが好ましく、一対の撮像装置12、12は、可視光照明装置11に対して概ね対称の位置に配置されていることが好ましい。
【0021】
可視光照明装置11と撮像装置12、12の理想的な配置位置は上述の通りであるが、現実的には、アップテイク6や片持ちゾンデ等のセンサ類、その他操業用装置類が干渉し、プロフィル測定装置1を理想位置に配置するのは極めて困難である。したがって、撮像装置12の視野方向と可視光照明装置11の照射方向とは、直角±30°の範囲内におさめることが望ましい。同様に、一対の撮像装置12、12は、可視光照明装置11に対して対称の位置±30°の範囲内におさめることが望ましい。
【0022】
また、可視光照明装置11および撮像装置12、12は、高炉2の上方から見た平面視において、
図2に示すように、いずれも高炉2の排ガス流路であるアップテイク6同士の間の中間位置になるように配置されている。これは、アップテイク6に近いほど粉塵が多く舞っているためであり、厳密に中間点でなくても構わないが、なるべくアップテイク6から離れた位置に配置することが好ましい。さらに、高炉2内において、アップテイク6の入口よりも上方には、粉塵が多く舞い上がりやすいため、可視光照明装置11および撮像装置12、12は、アップテイク6の入口の高さ方向位置と同等かそれよりも低い位置に配置することが好ましい。このように、粉塵が多く舞い上がる位置を避けて可視光照明装置11および撮像装置12を設置することで、粉塵の影響をより低減してプロフィルを測定することができる。
【0023】
可視光照明装置11および撮像装置12は、高炉2からの熱および圧力に備えて耐圧容器に収納することが好ましい。
図3は耐圧容器20の例を示す。耐圧容器20は、底面に、高炉2の炉内に向けた開口部21を有し、開口部21の炉外側には透明の耐熱ガラス22が取り付けられており、炉内側には仕切弁23が取り付けられる。仕切弁23は、図示しない仕切弁駆動部によって開閉され、プロフィル測定時には開き、非測定時には閉じられる。なお、プロフィル測定時には、高炉2の内部のガスが外部に漏洩しない構造にするとともに、粉塵による耐熱ガラス22の汚れや詰まりを防止する目的で、窒素ガスによるパージを行うとよい。
【0024】
撮像装置12、12は、制御装置13に接続されている。制御装置13は、一対の撮像装置12、12が同時に撮影した2枚の画像データを取り入れ、これらのデータから、被写体である高炉内装入物5の三次元位置座標を解析し、三次元データ化する。この解析は、市販の三次元写真計測システム用ソフトウェアによって行われる。なお、基準点や基準長としては、撮像装置12、12により撮影される、例えば炉内構造物や片持ちゾンデ等のセンサ類の既知位置や既知長さを利用すればよい。
【0025】
以上のように、本発明のプロフィル測定装置は、超高感度カラー撮像装置と可視光照明、および3D画像計測システムにより構成されている。可視光照明を利用して撮影することにより、温度に関係なく撮影できるので、中心の高温部のみがハレーションを起こすことがないうえ、温度差が無い部分でも撮影ができる。また、カラー撮影画像は、色相、彩度、明度と情報量が多いので、赤外線による明暗だけのパターンマッチングに比べて画像解析しやすく、正確な3Dプロフィルが求められる。さらに、画素数を大きくすることができ、精度が向上する。
【0026】
また、マイクロ波による測定のように送受信に時間をかけることがなく、高炉内装入物全面のプロフィル測定を極めて短時間で行えることから、炉内装入物の降下速度の影響を受けずに測定することが可能となる。例えば、原料装入待ちの間で、30秒から1分間程度の間隔をあけて2回測定すれば、炉内全面の装入物の降下速度が精度よく測定できることになり、操業管理に役立てることができる。
【0027】
しかも、本発明を構成する装置はいずれも汎用品であり、いずれも小型で、且つ可動するものではないため、装置を収納する耐圧容器や炉内との遮断構造などを小型化、簡素化することができる。したがって、設置工事を含めて低コストで実現できる。
【0028】
なお、撮像装置12で動画撮影を行う場合には、ノイズキャンセリングを行うことにより、粉塵を除去した画像を得て、さらに精度よくプロフィルを求めることが可能である。
【0029】
大型高炉の場合や、可視光照明装置11と撮像装置12の性能の関係により、一箇所の可視光照明装置11だけでは撮像のための十分な光量が得られない場合は、可視光照明装置11を、高炉2の中心軸に対して対称位置に2個所設置してもよい。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、装入物の堆積状態が刻々と変化する暗所内の装入物のプロフィル測定方法に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 プロフィル測定装置
2 高炉
3 ベルレス式装入装置
4 分配シュート
5 高炉内装入物
6 アップテイク
11 可視光照明装置
12 撮像装置
13 制御装置
20 耐圧容器
21 開口部
22 耐熱ガラス
23 仕切弁