特許第6672091号(P6672091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672091
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20200316BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20200316BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20200316BHJP
   B05C 11/10 20060101ALN20200316BHJP
   B05C 11/08 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
   H01L21/30 570
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
   H01L21/306 R
   B05D1/40 A
   B05D3/04 Z
   B05D3/10 N
   B05D3/12 E
   !B05C11/10
   !B05C11/08
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-125628(P2016-125628)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-228728(P2017-228728A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−23172(JP,A)
【文献】 特開2014−123704(JP,A)
【文献】 特開2016−36012(JP,A)
【文献】 特開2015−46449(JP,A)
【文献】 特開2015−65396(JP,A)
【文献】 特開2015−50414(JP,A)
【文献】 特開2012−186304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05D 1/40
B05D 3/04
B05D 3/10
B05D 3/12
H01L 21/304
H01L 21/306
B05C 11/08
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)上面に構造体が形成された基板を水平状態で保持する工程と、
b)前記基板の前記上面に処理液を供給して前記処理液の膜である塗布膜を前記上面上に形成し、前記構造体における隙間を前記処理液で満たす工程と、
c)前記b)工程よりも後に、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板を回転させた状態で、前記基板の前記上面の周縁領域に剥離液を付与することにより、前記塗布膜のうち前記周縁領域上の部位を前記基板から剥離させる工程と、
d)前記b)工程よりも後に、前記基板の前記上面の前記周縁領域と前記周縁領域の内側の内側領域との境界部に向けてガスを噴射することにより、前記内側領域上の塗布膜の外縁部の固化を促進する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程と前記b)工程との間において、前記基板の前記上面に溶剤を供給して前記溶剤の膜である溶剤膜を前記上面上に形成し、前記構造体における前記隙間を前記溶剤で満たす工程をさらに備え、
前記b)工程が、
b1)前記溶剤膜に前記処理液を供給し、前記構造体における前記隙間に存在する前記溶剤を前記処理液で置換する工程と、
b2)前記中心軸を中心として前記基板を回転させ、前記基板上から前記溶剤を除去する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記d)工程において噴射される前記ガスが、常温よりも高い温度に予め加熱されていることを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記c)工程において、前記基板の上方から前記基板の前記上面の前記周縁領域に向けて前記剥離液が吐出されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記d)工程が、前記c)工程と並行して行われることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記b)工程と前記c)工程との間に、前記塗布膜の固化を促進する工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
基板を処理する基板処理装置であって、
上面に構造体が形成された基板を水平状態で保持する基板保持部と、
上下方向を向く中心軸を中心として前記基板を前記基板保持部と共に回転する基板回転機構と、
前記基板の前記上面に処理液を供給して前記処理液の膜である塗布膜を前記上面上に形成し、前記構造体における隙間を前記処理液で満たす液供給部と、
前記基板の前記上面の周縁領域に剥離液を付与することにより、前記塗布膜のうち前記周縁領域上の部位を前記基板から剥離させる剥離液付与部と、
前記基板の前記上面の前記周縁領域と前記周縁領域の内側の内側領域との境界部に向けてガスを噴射することにより、前記内側領域上の塗布膜の外縁部の固化を促進するガス噴射部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理装置であって、
前記ガス噴射部から噴射される前記ガスが、常温よりも高い温度に予め加熱されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の基板処理装置であって、
前記剥離液付与部が、前記基板の上方に配置されて前記基板の前記上面の前記周縁領域に向けて前記剥離液を吐出する剥離液ノズルを備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記ガス噴射部が、前記基板の上方に配置されて前記境界部に向けて前記ガスを噴射するガスノズルを備え、
前記基板処理装置が、
前記剥離液ノズルおよび前記ガスノズルを支持する支持アームと、
前記支持アームを移動するアーム移動機構と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理装置であって、
前記ガスノズルが、前記剥離液ノズルよりも前記基板保持部の回転方向前側に位置することを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記ガス噴射部からの前記ガスの噴射が、前記剥離液付与部からの前記剥離液の付与と並行して行われることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板に対して様々な処理が施される。例えば、表面上にレジストのパターン(すなわち、多数の微細な構造体要素の集合である構造体)が形成された基板上に、ノズルから薬液を吐出することにより、基板の表面に対してエッチング等の薬液処理が行われる。
【0003】
このような基板では、通常、基板の上面の周縁領域にはパターンは形成されず、周縁領域よりも内側の内側領域にパターンが形成される。特許文献1の基板処理装置では、基板の上面全体に膜を形成した後、周縁領域上の膜をエッチングにより除去する処理(いわゆる、ベベルエッチング処理)が行われる。
【0004】
特許文献2および特許文献3では、基板の周縁領域に対する処理の際に、周縁領域に向けて吐出された処理液が、周縁領域上の処理液と衝突して跳ね、内側領域に侵入することを抑制する技術が提案されている。具体的には、特許文献2の基板処理装置では、処理液ノズルよりも基板の回転方向の上流側にガスノズルが配置され、ガスノズルから周縁領域に向けてガスが噴射される。これにより、1周前に処理液ノズルから供給されて、基板が1回転する間に振り切られなかった古い処理液が、ガスノズルからのガスで除去される。したがって、処理液ノズルから新たに供給される処理液が、基板上の古い処理液と衝突することが抑制される。
【0005】
特許文献3の基板処理装置では、第1の処理液が基板の周縁流域に向けて吐出された後、第1の処理液の吐出を停止し、周縁領域に向けてガスが噴射される。これにより、周縁領域上から第1の処理液が除去される。その後、周縁領域に向けて第2の処理液が吐出されることにより、第2の処理液が基板上の第1の処理液と衝突することが抑制される。
【0006】
また、基板に対する薬液処理後には、基板に純水等を供給して薬液を除去するリンス処理、および、基板を高速に回転して基板上の液体を除去する乾燥処理がさらに行われる。上述の構造体が基板の表面に形成されている場合、リンス処理および乾燥処理を順に行うと、乾燥途上において、隣接する2つの構造体要素の間に純水の液面が形成される。この場合に、構造体要素に作用する純水の表面張力に起因して、構造体要素が倒壊するおそれがある。そこで、構造体における隙間(すなわち、構造体要素の間)に充填剤を充填して乾燥処理を行うことにより、乾燥処理における構造体要素の倒壊を防止する手法が提案されている。基板上の充填剤は、例えば、乾燥処理後に他の装置においてドライエッチング等が行われることにより、昇華されて除去される。なお、基板の周縁領域に付着した不要な充填剤は、基板の搬送時に搬送機構を汚すおそれがあるため、基板の周縁領域のみに剥離液を供給することにより、剥離されて基板上から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−210580号公報
【特許文献2】特開2015−70018号公報
【特許文献3】特開2015−70019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、基板の周縁領域上の充填剤を除去する際には、周縁領域に供給された剥離液により、内側領域上の充填剤の塗布膜の外縁部が弛む。このため、周縁領域上の充填剤の塗布膜の除去後に行われる乾燥処理の際に、基板の回転速度が増大すると、内側領域上の塗布膜の外縁部の一部が、遠心力により径方向外方に筋状に拡がるおそれがある。すなわち、周縁領域上の塗布膜の除去処理が終了した後に、周縁領域上に筋状の塗布膜の一部が残るおそれがある。このような状態の基板を処理装置から搬出しようとすると、周縁領域上の塗布膜が基板の搬送機構に付着するおそれもある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、内側領域上の塗布膜が基板上の周縁領域に拡がることを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)上面に構造体が形成された基板を水平状態で保持する工程と、b)前記基板の前記上面に処理液を供給して前記処理液の膜である塗布膜を前記上面上に形成し、前記構造体における隙間を前記処理液で満たす工程と、c)前記b)工程よりも後に、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板を回転させた状態で、前記基板の前記上面の周縁領域に剥離液を付与することにより、前記塗布膜のうち前記周縁領域上の部位を前記基板から剥離させる工程と、d)前記b)工程よりも後に、前記基板の前記上面の前記周縁領域と前記周縁領域の内側の内側領域との境界部に向けてガスを噴射することにより、前記内側領域上の塗布膜の外縁部の固化を促進する工程とを備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理方法であって、前記a)工程と前記b)工程との間において、前記基板の前記上面に溶剤を供給して前記溶剤の膜である溶剤膜を前記上面上に形成し、前記構造体における前記隙間を前記溶剤で満たす工程をさらに備え、前記b)工程が、b1)前記溶剤膜に前記処理液を供給し、前記構造体における前記隙間に存在する前記溶剤を前記処理液で置換する工程と、b2)前記中心軸を中心として前記基板を回転させ、前記基板上から前記溶剤を除去する工程とを備える。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理方法であって、前記d)工程において噴射される前記ガスが、常温よりも高い温度に予め加熱されている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記c)工程において、前記基板の上方から前記基板の前記上面の前記周縁領域に向けて前記剥離液が吐出される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記d)工程が、前記c)工程と並行して行われる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記b)工程と前記c)工程との間に、前記塗布膜の固化を促進する工程をさらに備える。
【0016】
請求項7に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、上面に構造体が形成された基板を水平状態で保持する基板保持部と、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板を前記基板保持部と共に回転する基板回転機構と、前記基板の前記上面に処理液を供給して前記処理液の膜である塗布膜を前記上面上に形成し、前記構造体における隙間を前記処理液で満たす液供給部と、前記基板の前記上面の周縁領域に剥離液を付与することにより、前記塗布膜のうち前記周縁領域上の部位を前記基板から剥離させる剥離液付与部と、前記基板の前記上面の前記周縁領域と前記周縁領域の内側の内側領域との境界部に向けてガスを噴射することにより、前記内側領域上の塗布膜の外縁部の固化を促進するガス噴射部とを備える。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の基板処理装置であって、前記ガス噴射部から噴射される前記ガスが、常温よりも高い温度に予め加熱されている。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の基板処理装置であって、前記剥離液付与部が、前記基板の上方に配置されて前記基板の前記上面の前記周縁領域に向けて前記剥離液を吐出する剥離液ノズルを備える。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の基板処理装置であって、前記ガス噴射部が、前記基板の上方に配置されて前記境界部に向けて前記ガスを噴射するガスノズルを備え、前記基板処理装置が、前記剥離液ノズルおよび前記ガスノズルを支持する支持アームと、前記支持アームを移動するアーム移動機構とをさらに備える。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の基板処理装置であって、前記ガスノズルが、前記剥離液ノズルよりも前記基板保持部の回転方向前側に位置する。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項7ないし11のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記ガス噴射部からの前記ガスの噴射が、前記剥離液付与部からの前記剥離液の付与と並行して行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、内側領域上の塗布膜が基板上の周縁領域に拡がることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図2】ガスノズル近傍の平面図である。
図3】処理液供給部およびガス噴射部を示すブロック図である。
図4】基板の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板9に処理液を供給して処理を行う。図1では、基板処理装置1の構成の一部を断面にて示す。
【0025】
基板処理装置1は、チャンバ11と、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部4と、処理液供給部5と、ガス噴射部6と、支持アーム71と、アーム移動機構72とを備える。チャンバ11の内部には、基板保持部31およびカップ部4等が収容される。
【0026】
基板保持部31は、基板9の中央部を真空吸着により保持するいわゆるバキュームチャックである。基板保持部31は、上下方向を向く中心軸J1を中心として回転可能に設けられる。基板9は、基板保持部31の上方に配置される。基板9は、チャンバ11内において水平状態にて基板保持部31により吸着保持される。基板回転機構33は、基板保持部31の下方に配置される。基板回転機構33は、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部31と共に回転駆動する。基板回転機構33は、有蓋略円筒状の回転機構収容部34の内部に収容される。
【0027】
処理液供給部5は、基板9に複数種類の処理液を個別に供給する。当該複数種類の処理液には、例えば、後述する薬液、リンス液、溶剤および充填剤溶液が含まれる。処理液供給部5は、第1ノズル51と、第2ノズル52と、第3ノズル53とを備える。第1ノズル51および第2ノズル52はそれぞれ、基板9の上方から基板9の上側の主面(以下、「上面91」という。)に向けて処理液を供給する。第1ノズル51から基板9に処理液の供給が行われている状態では、第2ノズル52および第3ノズル53は、基板9の径方向外側へと退避している。第2ノズル52から基板9に処理液の供給が行われる際には、第1ノズル51および第3ノズル53が基板9の径方向外側へと退避し、第2ノズル52が基板9の上方に位置する。第3ノズル53は、基板9の上方から基板9の上面91の周縁領域(すなわち、エッジ部)に向けて処理液を供給する。図1では、第1ノズル51、第2ノズル52および第3ノズル53を、基板9の上方に描いている。
【0028】
ガス噴射部6は、基板9の上面91に向けてガスを噴射する。ガス噴射部6は、基板9の上方に配置されるガスノズル61を備える。ガスノズル61は、第3ノズル53と共に、略水平に延びる支持アーム71の一方の端部に取り付けられる。換言すれば、支持アーム71は、第3ノズル53およびガスノズル61を支持する。支持アーム71の他方の端部は、支持アーム71を移動するアーム移動機構72に接続される。アーム移動機構72は、支持アーム71を略水平に回転させることにより、ガスノズル61および第3ノズル53を、基板9の上方の位置と基板9の径方向外側の位置との間で移動する。
【0029】
図2は、ガスノズル61およびガスノズル61近傍を示す平面図である。図2では、ガスノズル61および第3ノズル53が基板9の周縁領域93の上方に位置する状態を描く。また、図2では、図の理解を容易にするために、基板9の上面91において周縁領域93の径方向内側の領域である内側領域94上に平行斜線を付し、周縁領域93と内側領域94との境界を二点鎖線にて示す。基板9の上面91では、多数の微細な構造体要素の集合である構造体(例えば、回路パターン)が、内側領域94に形成されており、周縁領域93には当該構造体は形成されていない。
【0030】
基板回転機構33による基板9の回転方向は、図2中の反時計回り方向である。ガスノズル61は、基板保持部31および基板9の回転方向前側、かつ、ガスノズル61の下方における基板9の接線方向に対して径方向外側を向いた状態で支持アーム71に取り付けられる。ガスノズル61からのガスの噴射方向と上述の接線方向との成す角度は、例えば、約45度である。第3ノズル53も、ガスノズル61と同様に、基板9の回転方向前側、かつ、第3ノズル53の下方における基板9の接線方向に対して径方向外側を向いた状態で支持アーム71に取り付けられる。第3ノズル53からの処理液の吐出方向と上述の接線方向との成す角度は、例えば、約45度である。図2に示す例では、ガスノズル61は、第3ノズル53よりも基板保持部31および基板9の回転方向前側に位置する。
【0031】
図1に示すカップ部4は、中心軸J1を中心とする環状の部材であり、基板9および基板保持部31の周囲に配置される。カップ部4は、上カップ部41と、下カップ部42と、カップ移動機構43とを備える。上カップ部41は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部材である。上カップ部41は、基板9および基板保持部31の径方向外側に配置され、基板9および基板保持部31の側方を全周に亘って覆う。上カップ部41は、回転中の基板9から周囲に向かって飛散する処理液等を受ける。カップ移動機構43は、上カップ部41を上下方向に移動する。上カップ部41は、図1に示す基板9の周囲の位置である処理位置と、当該処理位置よりも下方の退避位置との間を、カップ移動機構43により移動する。
【0032】
下カップ部42は、中心軸J1を中心とする有底略円筒状の部材である。下カップ部42は、上カップ部41の下方にて回転機構収容部34の径方向外側に配置される。下カップ部42は、例えば、回転機構収容部34の外側面に固定される。下カップ部42は、上カップ部41の下部に接続される。具体的には、上カップ部41の下端部が、下カップ部42の内部に挿入される。下カップ部42は、上カップ部41にて受けられた処理液等を受ける。下カップ部42の底部には、下カップ部42にて受けられた処理液等を排出する排液ポート44が設けられる。排液ポート44には、処理液等をチャンバ11の外部へと導く排液管が接続される。
【0033】
図3は、基板処理装置1の処理液供給部5およびガス噴射部6を示すブロック図である。図3では、処理液供給部5およびガス噴射部6以外の構成も併せて示す。第1ノズル51は、薬液供給源54、リンス液供給源55および溶剤供給源56に接続される。第2ノズル52は、充填剤溶液供給源57に接続される。第3ノズル53は、溶剤供給源56に接続される。
【0034】
薬液供給源54から送出された薬液は、第1ノズル51を介して基板9の上面91の中央部に供給される。薬液としては、例えば、フッ酸または水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液が利用される。リンス液供給源55から送出されたリンス液も、第1ノズル51を介して基板9の上面91の中央部に供給される。リンス液としては、例えば、純水(DIW:deionized water)や炭酸水が利用される。溶剤供給源56から第1ノズル51へと送出された溶剤は、第1ノズル51を介して基板9の上面91の中央部に供給される。溶剤としては、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、メタノール、エタノールまたはアセトン等の有機溶剤が利用される。当該溶剤は、上述のリンス液(例えば、純水)よりも表面張力が低い。本実施の形態では、溶剤としてIPAが利用される。
【0035】
第1ノズル51の下端には、例えば、薬液用、リンス液用および溶剤用の複数の吐出口が設けられており、種類の異なる処理液は、異なる配管および吐出口を介して基板9の上面91に供給される。処理液供給部5では、例えば、第1ノズル51に代えて、薬液、リンス液および溶剤を基板9の上面91の中央部にそれぞれ供給する複数の処理液ノズルが設けられてもよい。
【0036】
充填剤溶液供給源57から第2ノズル52へと送出された充填剤溶液は、第2ノズル52を介して基板9の上面91の中央部に供給される。すなわち、第2ノズル52は、基板9の上面91に充填剤溶液を供給する液供給部に含まれる。充填剤溶液としては、例えば、固体の溶質であるポリマー(樹脂)を溶媒に溶かした溶液が利用される。ポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂が利用される。ポリマーが非水溶性である場合、溶媒としては、例えばアルコール等の有機溶剤が利用される。ポリマーが水溶性である場合、溶媒としては、例えば純水が利用される。本実施の形態では、非水溶性のポリマーをIPAに溶かした溶液が、充填剤溶液として利用される。充填剤溶液は、上述の溶剤よりも比重が大きい。また、充填剤溶液は、上述の溶剤よりも表面張力が高い。当該ポリマーは、基板9上において溶媒が気化することにより固化し、所定温度以上に加熱されることにより架橋反応を生じる。当該ポリマーは、基板処理装置1とは別の装置において昇華されるものであり、昇華剤とも呼ばれる。
【0037】
溶剤供給源56から第3ノズル53へと送出された溶剤は、第3ノズル53を介して基板9の上面91の周縁領域93(図2参照)に供給される。
【0038】
ガスノズル61は、ガス供給源65に接続される。ガス噴射部6は、ガスノズル61とガス供給源65との間に配置されるガス加熱部62をさらに備える。ガス供給源65から送出されたガスは、ガス加熱部62において常温よりも高い温度に予め加熱された後、ガスノズル61へと供給される。加熱されたガスは、ガスノズル61を介して、基板9の上面91の周縁領域93と内側領域94(図2参照)との境界部に向けて噴射される。ガスノズル61から噴射されるガスは、例えば、窒素等の不活性ガスである。また、当該ガスとして、ドライエア等の様々な種類のガスが利用されてよい。
【0039】
基板処理装置1における基板9の処理は、例えば、薬液処理、リンス処理、溶剤置換処理、充填剤充填処理、エッジリンス処理および乾燥処理の順で行われる。図4は、基板処理装置1における基板9の処理の流れの一例を示す図である。まず、上面91に上述の構造体が形成された基板9が、基板保持部31により水平状態で保持される(ステップS11)。続いて、基板9の回転が開始され、比較的高い回転速度にて回転中の基板9に対して、第1ノズル51から薬液が供給される。そして、薬液の供給が所定時間継続されることにより、基板9に対する薬液処理(すなわち、薬液によるエッチング処理)が行われる(ステップS12)。
【0040】
薬液の供給が停止されると、比較的高い回転速度にて回転中の基板9に対して、第1ノズル51からリンス液が供給される。そして、リンス液の供給が所定時間継続されることにより、基板9に対するリンス処理が行われる(ステップS13)。リンス処理では、基板9上の薬液が、第1ノズル51から供給されるリンス液(例えば、純水)により洗い流される。上記所定時間が経過すると、基板9の回転速度を徐々に減少させ、上述の回転速度よりも十分に低い回転速度(以下、「液膜保持速度」という。)とする。基板9の回転速度は、例えば、10rpmまで減少する。この状態において、基板9の上面91上には、リンス液の液膜が形成されて保持される。
【0041】
次に、リンス液の供給が停止され、上述の液膜保持速度にて回転中の基板9に対して第1ノズル51から溶剤が供給される。そして、溶剤の供給を継続しつつ、基板9の回転速度を液膜保持速度から徐々に増加させ、比較的高い回転速度にて基板9を回転させる。これにより、基板9の上面91の中央部から溶剤が径方向外方へと拡がり、基板9上のリンス液が溶剤に置換される。基板9の上面91上には、溶剤の薄い液膜(以下、「溶剤膜」という。)が形成されて保持される。当該溶剤は、表面張力が低いため、基板9の上面91の構造体における隙間(すなわち、構造体において隣接する構造体要素の間の空間)に入り込みやすい。このため、構造体における隙間が溶剤で満たされる(ステップS14)。溶剤膜は、少なくとも構造体の高さをほぼ覆う程度、または、それ以上の厚さを有する。溶剤による純水の置換処理が終了すると、溶剤の供給が停止される。
【0042】
さらに、ステップS14における比較的高い回転速度を維持した状態で回転中の基板9に対して、第2ノズル52から充填剤溶液が供給される。第2ノズル52から基板9上の溶剤膜に供給された充填剤溶液は、基板9の回転により上面91の中央部から径方向外方へと拡がる。これにより、溶剤膜上に充填剤溶液の液膜が形成される。なお、基板9の回転が停止された状態で充填剤溶液が供給され、その後、基板9の回転が開始されることにより、溶剤膜上に充填剤溶液の液膜が形成されてもよい。所定量の充填剤溶液が供給されて充填剤溶液の液膜形成が終了すると、充填剤溶液の供給が停止される。そして、基板9の回転速度を減少し、例えば、上述の液膜保持速度とする。
【0043】
上述のように、基板9の上面91の略全体は溶剤膜により覆われており、溶剤膜の上面の略全体は充填剤溶液の液膜により覆われている。充填剤溶液の比重は溶剤よりも大きいため、溶剤膜と充填剤溶液の液膜との上下が入れ替わる。これにより、基板9の上面91上の構造体における隙間に存在する溶剤が、充填剤溶液により置換され、構造体における隙間が充填剤溶液により満たされる(ステップS15)。換言すれば、ステップS15は、構造体において隣接する構造体要素の間に充填剤を埋め込む充填剤充填処理(すなわち、充填剤埋め込み処理)である。基板9上では、上面91上に充填剤溶液の液膜が位置し、充填剤溶液の液膜上に溶剤膜が位置する。
【0044】
ステップS15が終了すると、基板9の回転速度が増加され、充填剤溶液の液膜上の溶剤膜が基板9上から除去される。また、充填剤溶液の余剰も、基板9上から除去される。このときの基板9の回転速度は、ステップS15において基板9の構造体における隙間(すなわち、隣接する構造体要素の間)に埋め込まれた充填剤が遠心力で外方に抜けてしまわない程度の速度である。例えば、基板9は、300rpm〜500rpmにて回転駆動される。これにより、基板9の上面91上に、充填剤溶液の膜である塗布膜が形成される(ステップS16)。当該塗布膜は、構造体の全体を覆うために必要な厚さを有する。基板9上では、充填剤溶液に含まれる溶媒が気化することにより、塗布膜の固化が進行する。
【0045】
その後、基板9を回転させた状態で、基板9の上面91の周縁領域93に第3ノズル53から溶剤が連続的に供給されることにより、基板9の周縁領域93上の充填剤溶液を除去するエッジリンス処理が行われる(ステップS17)。ステップS17では、基板9の周縁領域93に加えて、基板9の側面に付着した充填剤溶液も除去される。
【0046】
ステップS17では、例えば、基板9は、ステップS16と同様に300〜500rpmにて回転している。ステップS17において第3ノズル53から基板9の周縁領域93に付与される溶剤(本実施の形態ではIPA)は、基板9上の塗布膜のうち周縁領域93上の部位を基板9上から剥離させる剥離液である。本実施の形態では、当該剥離液は、充填剤溶液の溶媒と同じ種類の液体である。また、第3ノズル53は、基板9の上方に配置され、基板9の上面91の周縁領域93に向けて基板9の上方から当該剥離液を吐出する剥離液ノズルである。当該剥離液ノズルは、基板9の上面91の周縁領域93に剥離液を付与する剥離液付与部に含まれる。
【0047】
基板処理装置1では、ステップS17と並行して、ガス噴射部6のガスノズル61から、基板9の上面91の周縁領域93と内側領域94との境界部に向けてガスが噴射される。これにより、内側領域94上の塗布膜(すなわち、充填剤溶液)の外縁部の固化が促進される(ステップS18)。例えば、ステップS18は、ステップS17の開始から若干遅れてが開始され、以後、ステップS17およびステップS18が並行して行われる。ステップS18において基板9に向けて噴射されるガスは、上述のように、図3に示すガス加熱部62により、常温よりも高い温度に予め加熱されている。ステップS18は、例えば、ステップS17の終了と同時に終了してもよく、ステップS17の終了から所定時間の経過後に終了してもよい。
【0048】
ステップS17およびステップS18が終了すると、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS19)。ステップS19では、基板9を基板保持部31により保持した状態で、ステップS16と同様の回転速度にて基板保持部31を回転駆動する。これにより、基板9の周縁領域93に付与された剥離液(上記例では、IPA)が、遠心力により基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、基板9上から除去される。上述のステップS12〜S19中に基板9上から径方向外方へと飛散した薬液、リンス液、溶剤および充填剤溶液(すなわち、処理液)は、カップ部4により受けられ、排液ポート44を介してチャンバ11外へと排出される。
【0049】
乾燥処理が終了した基板9は、基板処理装置1から搬出され、次の処理装置(図示省略)へと搬送される。そして、当該次の処理装置にて基板9が加熱され、基板9上の構造体における隙間(すなわち、隣接する構造体要素の間)に埋め込まれた充填剤を固化させる処理が行われる。基板9が基板処理装置1から次の処理装置へと搬送される際には、基板9の周縁領域93の充填剤は除去されているため、搬送機構が充填剤により汚染されることが防止される。基板処理装置1では、上述のステップS11〜S19の処理が、複数の基板9に対して順次行われる。
【0050】
以上に説明したように、基板処理装置1における基板9の処理では、まず、上面91に構造体が形成された基板9が水平状態で保持される。続いて、基板9の上面91に充填剤溶液が供給される。これにより、充填剤溶液の膜である塗布膜が基板9の上面91上に形成され、上記構造体における隙間が充填剤溶液で満たされる。そして、塗布膜の形成よりも後に、中心軸J1を中心として基板9を回転させた状態で、基板9の上面91の周縁領域93に剥離液が付与されることにより、塗布膜のうち周縁領域93上の部位が、基板9から剥離する(ステップS17)。また、塗布膜の形成よりも後に、基板9の上面91の周縁領域93と内側領域94との境界部に向けてガスが噴射されることにより、内側領域94上の塗布膜の外縁部の固化が促進される(ステップS18)。
【0051】
基板処理装置1では、上述の境界部にガスが噴射されることにより、内側領域94上の塗布膜の外縁部における溶媒の気化が促進され、当該外縁部の固化が促進される。これにより、周縁領域93に付与された剥離液により内側領域94上の塗布膜の外縁部が弛むことを抑制することができる。その結果、ステップS17のエッジリンス処理よりも後の処理(例えば、乾燥処理)において、内側領域94上の塗布膜が、基板9の回転による遠心力により周縁領域93上に拡がることを抑制することができる。換言すれば、基板9のエッジリンス処理を好適に完了することができる。
【0052】
上述の例では、内側領域94上の塗布膜の外縁部の固化促進(ステップS18)は、周縁領域93への剥離液の付与(ステップS17)と並行して行われる。これにより、剥離液が付与された直後の塗布膜にガスを噴射することができる。その結果、周縁領域93に付与された剥離液により内側領域94上の塗布膜の外縁部が弛むことを、より一層抑制することができ、内側領域94上の塗布膜が周縁領域93上に拡がることを、さらに抑制することができる。
【0053】
基板処理装置1では、ステップS18は、ステップS17よりも後に行われてもよい。例えば、ステップS17のエッジリンス処理が終了した際の基板9の回転速度では、内側領域94上の塗布膜が周縁領域93へと拡がらない場合、ステップS18は、ステップS17のエッジリンス処理の終了後、ステップS19の乾燥処理よりも前に行われてもよい。また、ステップS18は、ステップS17と同時に開始されてもよく、あるいは、ステップS17よりも前に行われてもよい。例えば、ステップS18をステップS17よりも前に行う場合、基板9の周縁領域93と内側領域94との境界部に向けてガスが噴射されることにより、内側領域94上の塗布膜の外縁部の固化が先に進行した後、エッジリンス処理が行われるため、内側領域94上の塗布膜の外縁部の弛みを、より一層抑制することができる。換言すれば、ステップS18の塗布膜の外縁部の固化促進は、ステップS16の塗布膜の形成よりも後に行われていればよい。これにより、上述の例と同様に、内側領域94上の塗布膜が周縁領域93上に拡がることを抑制することができる。
【0054】
基板処理装置1では、ガス噴射部6から噴射されるガスは、常温よりも高い温度に予め加熱されている。これにより、ステップS18において、内側領域94上の塗布膜の外縁部の固化を、さらに促進することができる。なお、塗布膜の揮発性が比較的高い場合、当該ガスは必ずしも高温である必要はなく、常温であってもよい。
【0055】
また、剥離液付与部は、基板9の上方に配置されて基板9の上面91の周縁領域93に向けて剥離液を吐出する剥離液ノズル(すなわち、第3ノズル53)を備える。これにより、基板9の上面91の周縁領域93に対して、剥離液を容易に付与することができる。
【0056】
上述のように、ガス噴射部6は、基板9の上方に配置されて周縁領域93と内側領域94との境界部に向けてガスを噴射するガスノズル61を備える。また、基板処理装置1は、剥離液ノズルである第3ノズル53およびガスノズル61を支持する支持アーム71と、支持アーム71を移動するアーム移動機構72とをさらに備える。これにより、第3ノズル53とガスノズル61との相対的な位置関係を維持しつつ、第3ノズル53およびガスノズル61を、基板9の上方の処理位置と、基板9の径方向外側の退避位置との間で移動することができる。したがって、基板9上における第3ノズル53からの剥離液の吐出位置と、ガスノズル61からのガスの噴射位置との相対的な位置関係を常に維持することができる。その結果、基板9に対するエッジリンス処理の質を安定させることができる。
【0057】
基板処理装置1では、ガスノズル61は、第3ノズル53よりも基板保持部31の回転方向前側(すなわち、回転方向の下流側)に位置する。これにより、第3ノズル53からの剥離液が付与された直後の塗布膜にガスを噴射することができる。その結果、周縁領域93に付与された剥離液により内側領域94上の塗布膜の外縁部が弛むことを、より一層抑制することができ、内側領域94上の塗布膜が周縁領域93上に拡がることを、さらに抑制することができる。
【0058】
なお、基板処理装置1では、例えば、基板保持部31にヒータ(図示省略)が内蔵され、ステップS16の後に(すなわち、ステップS16とステップS17との間に)基板9が加熱されることにより、基板9上の上記塗布膜の固化が促進されてもよい。また、塗布膜の固化促進は、必ずしも、ヒータによる基板9の加熱により行われる必要はない。例えば、基板9上の塗布膜に光が照射されることにより、塗布膜の固化が促進されてもよい。また、基板9上の塗布膜全体に加熱されたガスが付与されることにより、塗布膜の固化が促進されてもよい。このように、周縁領域93への剥離液の付与よりも前に、基板9上の塗布膜を予めある程度固化させておくことにより、剥離液を付与した際に塗布膜が弛むことを、より一層抑制することができる。その結果、内側領域94上の塗布膜が周縁領域93上に拡がることを、さらに抑制することができる。
【0059】
基板処理装置1では、上述のように、基板9の保持(ステップS11)と塗布膜の形成(ステップS15,S16)との間において、基板9の上面91に溶剤が供給されて溶剤膜が上面91上に形成され、上述の構造体における隙間が溶剤で満たされる(ステップS14)。そして、塗布膜の形成工程が、溶剤膜に充填剤溶液を供給し、構造体における隙間に存在する溶剤を充填剤溶液で置換する工程(ステップS15)と、中心軸J1を中心として基板9を回転させ、基板9上から溶剤を除去する工程(ステップS16)とを備える。これにより、構造体における隙間に充填剤溶液を容易に満たすことができ、充填剤溶液の塗布膜を容易に形成することができる。
【0060】
上述の基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
【0061】
例えば、ガスノズル61から噴射されるガスは、必ずしも常温よりも高温である必要はなく、常温であっても常温よりも低温であってもよい。
【0062】
ガスノズル61は、必ずしも第3ノズル53(すなわち、剥離液ノズル)よりも基板保持部31の回転方向前側に位置する必要はない。ガスノズル61は、例えば、第3ノズル53よりも基板保持部31の回転方向後側にて、第3ノズル53と共に支持アーム71により支持されてもよい。この場合であっても、基板保持部31の回転速度がある程度高ければ、第3ノズル53からの剥離液が付与された直後の塗布膜上の部位に、ガスノズル61からガスを噴射することができる。また、ガスノズル61は、必ずしも第3ノズル53と共に支持アーム71により支持される必要はなく、第3ノズル53とは別々に移動可能であってもよい。
【0063】
第3ノズル53は、必ずしも基板9の上方に配置される必要はない。例えば、複数の第3ノズル53が基板9の下方にて周方向に配列され、当該複数の第3ノズル53から、回転中の基板9の下面に向けて剥離液が吐出されてもよい。剥離液は、基板9の下面に沿って径方向外方へと移動し、基板9の側面を回り込んで上面91の周縁領域93に付与される。この場合、例えば、複数のガスノズル61が基板9の上方にて周方向に配列され、当該複数のガスノズル61から、周縁領域93と内側領域94との境界部に向けてガスが噴射されることにより、内側領域94上の塗布膜の外縁部の固化が促進されてもよい。この場合であっても、上記と同様に、周縁領域93に付与された剥離液により内側領域94上の塗布膜の外縁部が弛むことを抑制することができる。その結果、内側領域94上の塗布膜が周縁領域93上に拡がることを抑制することができる。
【0064】
基板処理装置1では、基板9上への塗布膜の形成は、必ずしも、ステップS15,S16の方法で行われる必要はなく、他の様々な方法にて行われてもよい。さらに、塗布膜の形成よりも前の工程(ステップS12〜S14)は、様々に変更されてよい。例えば、ステップS12では、様々な種類の薬液が基板9上に供給され、基板9に対する様々な種類の薬液処理が行われてよい。
【0065】
充填剤溶液は、例えば、水溶性のポリマーを純水等の溶媒に溶かした溶液であってもよい。この場合、剥離液として、例えば純水が利用される。剥離液は、必ずしも充填剤溶液の溶媒と同じ種類の液体である必要はなく、様々な液体が利用されてよい。
【0066】
上述の基板処理装置1は、半導体基板以外に、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、FED(field emission display)等の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。あるいは、上述の基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0067】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0068】
1 基板処理装置
6 ガス噴射部
9 基板
31 基板保持部
33 基板回転機構
53 第3ノズル
61 ガスノズル
71 支持アーム
72 アーム移動機構
91 (基板の)上面
93 周縁領域
94 内側領域
J1 中心軸
S11〜S19 ステップ
図1
図2
図3
図4