(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貯留部に貯留された流動性樹脂を押し出すことによって、前記貯留部に接続された吐出部に取り付けられた弾性変形可能なチューブから前記流動性樹脂を吐出する押し出し工程と、
前記チューブをクランパにより挟んで、前記クランパを下方向に移動させることによって、前記チューブ内に残留する残留樹脂を扱き出す扱き出し工程とを含む吐出方法。
前記押し出し工程及び前記扱き出し工程を複数回繰り返し、前記複数回の扱き出し工程のうちの少なくとも二つに対して、前記クランパの移動量を異ならせる請求項7又は8に記載の吐出方法。
請求項7から9のいずれか1項に記載の吐出方法によって吐出された前記流動性樹脂が成形型に供給された状態として、樹脂成形を行う工程を含む樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。本出願書類におけるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。なお、本出願書類においては、「液状」という用語は常温において液状であって流動性を有することを意味しており、流動性の高低、言い換えれば粘度の程度を問わない。また、本出願書類において、「樹脂成形品」とは、少なくとも樹脂成形された樹脂部分を含む製品を意味し、後述するような基板に装着されたチップが成形型により樹脂成形されて樹脂封止された形態の封止済基板を含む概念の表現である。
【0011】
〔実施形態1〕
(樹脂成形装置の構成)
本発明に係る実施形態1の樹脂成形装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1に示される樹脂成形装置1は、圧縮成形法を使用した樹脂成形装置である。実施形態1においては、例えば、半導体チップが装着された基板を樹脂成形する対象として、樹脂材料として流動性樹脂である液状樹脂を使用する場合を示す。なお、「基板」としては、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、樹脂基板、金属基板などの一般的な基板及びリードフレームなどが挙げられる。
【0012】
樹脂成形装置1は、基板供給・収納モジュール2と、3つの成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とを、それぞれ構成要素として備える。構成要素である基板供給・収納モジュール2と、成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0013】
基板供給・収納モジュール2には、封止前基板5を供給する封止前基板供給部6と、封止済基板7を収納する封止済基板収納部8と、封止前基板5及び封止済基板7を受け渡しする基板載置部9と、封止前基板5及び封止済基板7を搬送する基板搬送機構10とが設けられる。所定位置S1は、基板搬送機構10が動作しない状態において待機する位置である。
【0014】
各成形モジュール3A、3B、3Cには、昇降可能な下型11と、下型11に対向して配置された上型(図示なし、
図5参照)とが設けられる。上型と下型11とは併せて成形型を構成する。各成形モジュール3A、3B、3Cは、上型と下型11とを型締め及び型開きする型締機構12を有する(図の二点鎖線で示される円形の部分)。樹脂材料である液状樹脂が供給され硬化する空間であるキャビティ13が下型11に設けられる。下型11には、長尺状の離型フィルムを供給する離型フィルム供給機構14が設けられる。なお、ここでは、下型11にキャビティ13が設けられた構成について説明するが、キャビティは上型に設けられても良いし、上型と下型との両方に設けられても良い。
【0015】
樹脂供給モジュール4には、成形型(キャビティ13)に液状樹脂を吐出する吐出装置であるディスペンサ15とディスペンサ15を搬送する樹脂搬送機構16とが設けられる。ディスペンサ15は先端部に液状樹脂を吐出する吐出部17を備える。吐出部17には、吐出部17に取り付けられた弾性変形可能なチューブ(
図2〜3参照)を挟んで移動可能なクランパ18が設けられる。ディスペンサ15、吐出部17及びクランパ18の構成については、後述の
図2〜3を参照する部分において詳しく説明する。所定位置R1は、樹脂搬送機構16(ディスペンサ15含む)が動作しない状態において待機する位置である。
【0016】
図1に示されるディスペンサ15は、予め主剤と硬化剤とが混合された液状樹脂を使用する1液タイプのディスペンサである。主剤として、例えば、熱硬化性を有するシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂が使用される。液状樹脂を吐出する際に主剤と硬化剤とを混合して使用する2液混合タイプのディスペンサを使用することもできる。
【0017】
樹脂供給モジュール4には、樹脂成形装置1の動作を制御する制御部CTLが設けられる。制御部CTLは、封止前基板5及び封止済基板7の搬送、ディスペンサ15の搬送、液状樹脂の吐出、成形型の加熱、成形型の開閉などを制御する。言い換えれば、制御部CTLは、基板供給・収納モジュール2、成形モジュール3A、3B、3C、樹脂供給モジュール4における各動作の制御を行う。
【0018】
制御部CTLが配置される位置はどこでも良く、基板供給・収納モジュール2、成形モジュール3A、3B、3C、樹脂供給モジュール4のうちの少なくとも一つに配置することもできるし、各モジュールの外部に配置することもできる。また、制御部CTLは、制御対象となる動作に応じて、少なくとも一部を分離させた複数の制御部として構成することもできる。
【0019】
(ディスペンサの構成)
図2〜3を参照して、
図1に示した樹脂成形装置1において使用されるディスペンサ15の構成について説明する。
図2に示されるように、ディスペンサ15は、液状樹脂を押し出す押し出し機構19と、液状樹脂を貯留するシリンジ20と、シリンジ20とノズルとを接続する連結部21と、液状樹脂を吐出するノズル22とを備える。押し出し機構19とシリンジ20と連結部21とノズル22とが接続されることによってディスペンサ15は一体的に構成される。シリンジ20又はノズル22は、それぞれの用途に応じて別のシリンジ又はノズルに交換できる。
【0020】
押し出し機構19は、サーボモータ23と、サーボモータ23によって回転するボールねじ24と、ボールねじナット(図示なし)に取り付けられ回転運動を直動運動に変換するスライダ25と、スライダ25の先端に固定され内部に挿入孔を有するロッド26と、ロッド26の先端に取り付けられたプランジャ27とを備える。ボールねじ24はボールねじ軸受28によって支持される。スライダ25は、例えば、押し出し機構19の基台に設けられたガイドレール29に沿ってY方向に移動する。サーボモータ23が回転することによって、ボールねじ24、スライダ25、ロッド26をそれぞれ介してプランジャ27がY方向に移動する。
【0021】
サーボモータ23はモータの回転を制御できるモータである。サーボモータ23は、モータの回転を監視する回転検出器であるエンコーダ30を有する。エンコーダ30は、サーボモータ23の回転角、回転速度を検出して制御部31にフィードバックする。制御部31は、エンコーダ30からのフィードバック信号に基づき、サーボモータ23の回転を制御する。サーボモータ23の回転を制御することによって、プランジャ27の位置制御、速度制御、トルク制御などを、精度よく行うことができる。なお、制御部31は、
図1に示した樹脂成形装置1の制御部CTLに組み込まれても良く、制御部CTLとは独立して設けても良い。
【0022】
液状樹脂32が貯留されたシリンジ20が、シリンジ取り付け用のねじ33によって押し出し機構19に接続される。プランジャ27の外径とシリンジ20の内径とが一致するように、プランジャ27がシリンジ20内に挿入される。プランジャ27の周囲にはシール材であるOリング(図示なし)が取り付けられる。サーボモータ23の回転を制御することによって、プランジャ27の移動量(ストローク量)が制御される。シリンジ20の内断面積とプランジャ27の移動量との積によって、ディスペンサ15(吐出部17)から吐出される液状樹脂32の吐出量が設定される。シリンジ20を交換することによって、ディスペンサ15に貯留する液状樹脂32の樹脂量を任意に設定することができる。
【0023】
吐出部17は、
図2(b)、
図3に示されるように、吐出口34を有するノズル22と、吐出口34に取り付けられた継ぎ手35と、継ぎ手35にはめ込まれた弾性変形可能なチューブ36とを備える。継ぎ手35の材質としては、例えば、耐熱性を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:PolyVinylidene DiFluoride )などが使用される。チューブ36としては、例えば、柔軟性及び耐熱性を有するシリコーンゴム、フッ素ゴムなどが使用される。
【0024】
図2(a)、
図3に示されるように、ディスペンサ15において、チューブ36の両側にはチューブ36を挟んで移動可能なクランパ18が設けられる。クランパ18は、一対のローラ支持部材37、38によって構成される。ローラ支持部材37は、例えば、Y方向に沿う1本の棒状部材37aと、棒状部材37aの両端に接続されX方向に沿う2本の棒状部材37bと、それぞれの棒状部材37bに接続されZ方向に沿う2本の棒状部材37cとによって構成される。同様に、ローラ支持部材38は、Y方向に沿う1本の棒状部材38aと、棒状部材38aの両端に接続されX方向に沿う2本の棒状部材38bと、それぞれの棒状部材38bに接続されZ方向に沿う2本の棒状部材38cとによって構成される。
【0025】
クランパ18を構成するローラ支持部材37、38には、それぞれローラ39、40が回転可能に取付けられる。すなわち、ローラ39、40が、それぞれローラ支持部材37、38によって、回転可能に支持される。ローラ39はクランパ18を構成する棒状部材37aにはめ込まれ、棒状部材37bによってX方向に移動し、棒状部材37cによってZ方向に移動する。同様に、ローラ40はクランパ18を構成する棒状部材38aにはめ込まれ、棒状部材38bによってX方向に移動し、棒状部材38cによってZ方向に移動する。
【0026】
図3に示されるように、クランパ18を構成する2本の棒状部材37cは、接続部材41に接続される。接続部材41は、ローラ支持部材37をX方向に移動させる移動機構42に接続し、かつ、棒状部材37をZ方向に移動させる移動機構43に接続する。同様に、クランパ18を構成する2本の棒状部材38cは、接続部材44に接続される。接続部材44は、棒状部材38をX方向に移動させる移動機構45に接続し、かつ、棒状部材38をZ方向に移動させる移動機構46に接続する。
【0027】
移動機構42、43、45、46は、駆動源と伝達部材との組合せで構成される。例えば、移動機構として、サーボモータとボールねじとの組合せ、油圧シリンダとロッドとの組合せなどが使用される。なお、移動機構は上記の構成に限らず、ローラ支持部材37、38をそれぞれX方向及びZ方向に移動させることができる構成であれば良い。
【0028】
図2(a)、
図3に示されるように、シリンジ20内に貯留された液状樹脂32は、プランジャ27によって押し出され、連結部21に形成された樹脂通路47、ノズル22に形成された吐出口34、継ぎ手35にはめ込まれたチューブ36をそれぞれ経由して吐出部17から下方に吐出される。
【0029】
(液状樹脂の吐出方法及び樹脂成形品の製造方法)
以下に、吐出装置であるディスペンサ15を含む樹脂成形装置1の動作の説明を兼ねて、液状樹脂の吐出方法及び樹脂成形品の製造方法について説明する。ディスペンサ15を用いた吐出方法について記載した後に、全体的な樹脂成形装置1を用いた樹脂成形品の製造方法について記載する。
【0030】
(液状樹脂の吐出方法(押し出し工程及び扱き出し工程)
図2〜4を参照して、ディスペンサ15において液状樹脂32を押し出す工程及びクランパ18によりチューブ36内に残留する残留樹脂を扱き出す工程、すなわち液状樹脂の押し出し工程と扱き出し工程とを含む吐出方法(吐出工程)について説明する。
【0031】
図2(a)に示されるように、押し出し工程では、サーボモータ23を回転させることによって、ボールねじ24、スライダ25、ロッド26を介してプランジャ27を−Y方向に移動させる。プランジャ23を−Y方向に移動させることによってシリンジ20内に貯留されている液状樹脂32を押圧し、液状樹脂32を−Y方向に押し出す。
【0032】
図3、
図4(a)に示されるように、プランジャ27によって押し出された液状樹脂32は、連結部21、ノズル22、チューブ36をそれぞれ経由して吐出部17(チューブ36の先端)から下方に吐出される。
【0033】
ディスペンサ15の吐出を開始(プランジャ27の押し出し動作を開始)することによって、吐出部17(チューブ36の先端)から吐出対象物に液状樹脂を吐出する。プランジャ27が液状樹脂32を押圧することによって、シリンジ20内の液状樹脂32に圧力が加わり、液状樹脂32の樹脂圧力が高くなる。ディスペンサ15の吐出を停止(プランジャ27の押し出し動作を停止)しても、シリンジ20内の液状樹脂32は樹脂圧力が高くなった状態を保持する。シリンジ20内の液状樹脂32の樹脂圧力が大気圧になるまでは、液状樹脂32の樹脂圧力によって吐出部17から吐出対象物に液状樹脂の吐出が続けられる。所謂、液だれ現象として吐出部17から吐出対象物に液状樹脂が垂れ下がる(吐出が続けられる)。
【0034】
液状樹脂の吐出工程における扱き出し工程をわかりやすくするため、
図4(a)に示されるように、プランジャ27の押し出し動作を停止した直後の状態において、便宜上、シリンジ20内に貯留されている液状樹脂を液状樹脂32、チューブ36内に残留している液状樹脂を残留樹脂48、チューブ36の先端から垂れ下がっている液状樹脂を液だれ樹脂49と呼ぶ。
【0035】
図4(a)〜(d)を参照して、ディスペンサ15の吐出部17に設けられたクランパ18を使用することにより、チューブ36内に残留している残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49を扱き出して早期に吐出を完了する扱き出し工程について説明する。
【0036】
まず、
図4(a)に示されるように、ディスペンサ15の吐出を停止(プランジャ27の押し出し動作を停止)して液だれ現象が発生している状態において、例えば、プランジャ27の押し出し動作を停止してから5秒後に、クランパ18をチューブ36の外側の所定位置まで下降させる。具体的には、移動機構43、46(
図3(b)参照)を使用してローラ支持部材37、38を下降させることにより、ローラ39、40をチューブ36の外側の所定位置で停止させる。
【0037】
次に、
図4(b)に示されるように、クランパ18によってチューブ36を両側から挟み込む。具体的には、移動機構42(
図3(b)参照)を使用してローラ支持部材37を−X方向に移動させ、かつ、移動機構45(
図3(b)参照)を使用してローラ支持部材38を+X方向に移動させる。このことにより、ローラ39とローラ40とによってチューブ36を両側から挟み込み、チューブ36内の液状樹脂(残留樹脂48)の通路を塞ぐ。
【0038】
次に、
図4(c)に示されるように、クランパ18(ローラ39、40)によってチューブ36を両側から挟んだ状態で、クランパ18を所定のストローク量だけ下降させる。具体的には、移動機構43、46(
図3(b)参照)を使用してローラ支持部材37、38を下降させる。ローラ39、40によってチューブ36を挟んだ状態で、ローラ39、40を回転させながら下降させる。このことにより、ローラ39、40によってチューブ36を挟んだ位置から下方に残留する残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49がクランパ18によって強制的に扱き出される。
【0039】
クランパ18による液状樹脂の扱き出し工程によって、例えば、低粘度の液状樹脂を使用する場合には、クランパ18を下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49をほぼすべて扱き出すことができる。また、高粘度の液状樹脂を使用する場合には、
図4(c)に示されるように、糸引き状の残留樹脂50がわずかに残ることがある。しかし、この糸引き状の残留樹脂50は短時間で落下するので、それほど大きな時間ロスにはならない。クランパ18による液状樹脂の扱き出し工程を行うことによって、液状樹脂を早期に吐出することができる。以上のようにして、吐出工程を完了することができる。
【0040】
なお、糸引き状の残留樹脂50が吐出対象物につながる状態が解消されてから、糸引き状の残留樹脂50の下方に皿状の樹脂受け部材を配置して、樹脂受け部材により糸引き状の残留樹脂50を受ける状態にて、後述のように吐出対象物に対してディスペンサ15を相対的に移動させて退避させてもよい。
【0041】
次に、
図4(d)に示されるように、クランパ18をチューブ36から離して元の位置まで戻す。このことによって、チュ−ブ36は弾性変形した状態から開放され、初期の状態に戻る。時間の経過とともにチューブ36内は液状樹脂32によって満たされた初期の状態に戻る。なお、チューブ36下端部近傍において、液状樹脂32の表面張力により液状樹脂32が存在しない空間ができることがある。
【0042】
(樹脂成形品の製造方法)
図1、
図5を参照して、樹脂成形装置1において、基板に装着された半導体チップを樹脂封止する場合の樹脂成形品の製造方法について説明する。樹脂成形装置1の動作として成形モジュール3Bを使用する場合について説明する。
【0043】
まず、
図1に示されるように、複数の半導体チップ51(
図5(a)参照)が装着された封止前基板5を、半導体チップ51が装着された面を下側にして、封止前基板供給部6から基板載置部9に封止前基板5を送り出す。次に、基板搬送機構10を所定位置S1から−Y方向に移動させて基板載置部9から封止前基板5を受け取る。基板搬送機構10を所定位置S1に戻す。
【0044】
次に、例えば、成形モジュール3Bの所定位置M1まで+X方向に基板搬送機構10を移動させる。次に、成形モジュール3Bにおいて、基板搬送機構10を−Y方向に移動させて下型11の上方の所定位置C1に停止させる。次に、基板搬送機構10を上昇させて封止前基板5を上型52の型面に吸着又はクランプなどによって固定する(
図5(a)参照)。上型52と下型11とは併せて成形型53を構成する。基板搬送機構10を基板供給・収納モジュール2の所定位置S1まで戻す。
【0045】
次に、成形モジュール3Bにおいて、離型フィルム供給機構14から長尺状の離型フィルム54(
図5(a)参照)を下型11に供給する。次に、下型11に設けられた吸着機構(図示なし)によって、離型フィルム54をキャビティ13の型面に沿って吸着する。
【0046】
次に、樹脂搬送機構16を使用してディスペンサ15を成形モジュール3Bの所定位置M1まで−X方向に移動させる。次に、成形モジュール3Bにおいて、樹脂搬送機構16を−Y方向に移動させて下型11の上方の所定位置C1にディスペンサ15を停止させる(
図5(a)参照)。
【0047】
図5(a)に示されるように、樹脂搬送機構16によって、ディスペンサ15は上型52と下型11との間の所定位置に配置される。ディスペンサ15の先端に設けられた吐出部17から液状樹脂32をキャビティ13に吐出する。この場合には、下型11のキャビティ13が、液状樹脂32が吐出される吐出対象物となる。吐出部17に取り付けられたチューブ36内の残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がった液だれ樹脂49を、クランパ18によって扱き出す(
図4参照)。この吐出工程により、液状樹脂を早期にキャビティ13に吐出することができる。樹脂搬送機構16を使用してディスペンサ15を所定位置M1に戻す。
【0048】
次に、
図5(b)に示されるように、液状樹脂32を加熱して溶融させ粘度が低下した流動性樹脂55を生成する。型締機構12(
図1参照)を使用して下型11を上昇させ、上型52と下型11とを型締めする。型締めすることによって、封止前基板5に装着された半導体チップ51を、キャビティ13に生成された流動性樹脂55に浸漬させる。このとき、下型11に設けられたキャビティ底面部材(図示なし)を使用して、キャビティ13内の流動性樹脂55に所定の樹脂圧力を加えることができる。
【0049】
なお、型締めする過程において、真空引き機構(図示なし)を使用してキャビティ13内を吸引しても良い。このことによって、キャビティ13内に残留する空気や流動性樹脂55中に含まれる気泡などが成形型53の外部に排出される。加えて、キャビティ13内が所定の真空度に設定される。
【0050】
次に、下型11に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、流動性樹脂55を硬化させるために必要な時間だけ、流動性樹脂55を加熱する。流動性樹脂55を硬化させて硬化樹脂56を成形する。このことによって、封止前基板5に装着された半導体チップ51を、キャビティ13の形状に対応して成形された硬化樹脂56によって樹脂封止する。このようにして樹脂成形工程を行うことができる。
【0051】
次に、
図5(c)に示されるように、流動性樹脂55を硬化させた後に、型締機構12を使用して上型52と下型11とを型開きする。上型52の型面には樹脂封止された樹脂成形品57(封止済基板7)が固定されている。
【0052】
次に、基板供給・収納モジュール2の所定位置S1から下型11の上方の所定位置C1に基板搬送機構10を移動させて、封止済基板7を受け取る。次に、基板搬送機構10を移動させ、基板載置部9に封止済基板7を受け渡す。基板載置部9から封止済基板収納部8に封止済基板7を収納する。この段階において、樹脂封止が完了する。
【0053】
なお、樹脂成形品57(封止済基板7)は、半導体チップ51が装着された領域毎に切断することによって、切断された領域それぞれが製品となる場合がある。また、半導体チップ51が装着された一部の領域を切断することによって、その一部の領域が製品となる場合がある。さらには、樹脂成形品57そのものが1つの製品となる場合もある。
【0054】
(作用効果)
本実施形態の吐出装置であるディスペンサ15は、流動性樹脂である液状樹脂32を貯留する貯留部であるシリンジ20と、液状樹脂32を押し出す押し出し機構であるプランジャ27を少なくも含む機構と、シリンジ20に接続され液状樹脂32を吐出する吐出部17と、吐出部17に取り付けられた弾性変形可能なチューブ36と、チューブ36を挟んで移動可能なクランパ18と、クランパ18の移動量を制御する制御部31とを備える構成としている。
【0055】
このような構成とすることにより、ディスペンサ15の吐出部17に取り付けられたチューブ36をクランパ18で挟み、クランパ18を下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂48をクランパ18により強制的に扱き出すことができる。このことにより、ディスペンサ15の吐出部17から液状樹脂を早期に吐出することができる。すなわち、液状樹脂等の流動性樹脂の吐出工程に要する時間の短縮を図ることができる。したがって、流動性樹脂の吐出工程を行って製造する樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0056】
本実施形態の吐出方法は、貯留部であるシリンジ20に貯留された流動性樹脂である液状樹脂32を押し出すことによって、シリンジ20に接続された吐出部17に取り付けられた弾性変形可能なチューブ36から液状樹脂32を吐出する押し出し工程と、チューブ36をクランパ18により挟んで、クランパ18を下方向に移動させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂48を扱き出す扱き出し工程とを含む。
【0057】
この方法によれば、ディスペンサ15の吐出部17に取り付けられたチューブ36をクランパ18で挟み、クランパ18を下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂48をクランパ18により強制的に扱き出すことができる。このことにより、ディスペンサ15の吐出部17から液状樹脂を早期に吐出することができる。すなわち、液状樹脂等の流動性樹脂の吐出工程に要する時間の短縮を図ることができる。したがって、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態によれば、ディスペンサ15の吐出部17に弾性変形可能なチューブ36を取り付ける。チューブ36の両側にはチューブ36を挟んで移動可能なクランパ18を設ける。ディスペンサ15の吐出部17から液だれ現象が発生しても、チューブ36をクランパ18で挟みクランパ18を下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49をクランパ18により強制的に扱き出すことができる。
【0059】
本実施形態によれば、ディスペンサ15の吐出部17に残留して垂れ下がっている液状樹脂が自然落下するのを待つのではなく、クランパ18を使用して強制的に扱き出す。このことにより、液状樹脂を吐出する時間を短縮することができる。したがって、ディスペンサ15の生産効率を向上させることができる。かつ、樹脂成形装置1の生産性を向上させることができる。
【0060】
本実施形態によれば、チューブ36内に残留する残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49をクランパ18によって強制的に扱き出し、吐出工程に要する時間を短縮することができる。このことにより、液だれ樹脂49を放置することによって液だれ樹脂49が吐出対象物であるキャビティ13の周囲の要素部品などに飛散することを抑制できる。したがって、飛散した樹脂によって樹脂成形装置1が汚染されることを抑制できる。また、飛散した樹脂が硬化して樹脂成形装置1の動作不良が発生することを抑制することができる。
【0061】
本実施形態によれば、クランパ18を使用して液だれ樹脂49を長時間放置することなく早期にキャビティ13に液状樹脂を吐出することができる。したがって、キャビティ13内に供給された液状樹脂の分布のばらつき及び厚みのばらつきを抑制することができる。このことにより、樹脂封止された樹脂成形品57の樹脂厚みのばらつきを低減することができる。また、フローマークなどの概観不良の発生も低減させることができる。
【0062】
本実施形態においては、ディスペンサ15が吐出動作を停止(プランジャ27が押し出し動作を停止)した後に、クランパ18がチューブ36を挟んでチューブ36内の残留樹脂48が扱き出す場合を示した。これに限らず、クランパ18がチューブ36を挟む動作を、プランジャ27が押し出し動作を停止すると同時に行っても良いし、プランジャ27が押し出し動作を停止するわずか前の段階に行っても良い。
【0063】
なお、本実施形態では、樹脂成形装置1として、基板供給・収納モジュール2と、3つの成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とを備える構成について説明した。樹脂成形装置は、この構成に限定されず、少なくとも成形型と、液状樹脂を吐出する吐出装置と、成形型を型締めする型締機構とを備え、樹脂成形を行う機能を有する装置であれば良い。
【0064】
〔実施形態2〕
(ディスペンサの変形例1)
図6を参照して、実施形態2において使用されるディスペンサについて説明する。実施形態1との違いは、ディスペンサにおいて、クランパの構成を変更したことである。それ以外の構成は実施形態1と同じなので同一の構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図6に示されるように、ディスペンサ58において、チューブ36の両側にはチューブ36を挟んで移動可能なクランパ59が設けられる。クランパ59は、一対のローラ支持材60、61によって構成される。ローラ支持部材60は、Y方向に沿う1本の棒状部材60aと、棒状部材60aの一端に接続されX方向に沿う1本の棒状部材60bと、棒状部材60bに接続されZ方向に沿う1本の棒状部材60cとによって構成される。同様に、ローラ支持部材61は、Y方向に沿う1本の棒状部材61aと、棒状部材61aの一端に接続されX方向に沿う1本の棒状部材61bと、棒状部材61bに接続されZ方向に沿う1本の棒状部材61cとによって構成される。
【0066】
実施形態1と同様に、クランパ59を構成するローラ支持部材60、61には、それぞれローラ39、40が回転可能に取付けられる。すなわち、ローラ39、40が、それぞれローラ支持部材60、61によって、回転可能に支持される。ローラ39はクランパ59を構成する棒状部材60aにはめ込まれ、棒状部材60bによってX方向に移動し、棒状部材60cによってZ方向に移動する。同様に、ローラ40はクランパ59を構成する棒状部材61aにはめ込まれ、棒状部材61bによってX方向に移動し、棒状部材61cによってZ方向に移動する。
【0067】
クランパ59を構成する1本の棒状部材60cは、接続部材62に接続される。接続部材62は、ローラ支持部材60をX方向に移動させる移動機構42に接続し、かつ、ローラ支持部材60をZ方向に移動させる移動機構43に接続する。同様に、クランパ59を構成する1本の棒状部材61cは、接続部材63に接続される。接続部材63は、ローラ支持部材61をX方向に移動させる移動機構45に接続し、かつ、ローラ支持部材61をZ方向に移動させる移動機構46に接続する。
【0068】
クランパ59によってチューブ36を両側から挟み込み、ローラ39、40を回転させながら下降させる動作は実施形態1と同じである。したがって、実施形態1と同様に、チューブ36内に残留する残留樹脂48をクランパ59により強制的に扱き出すことができる。このことにより、ディスペンサ59の吐出部17から液状樹脂を早期に吐出することができる。
【0069】
本実施形態によれば、ディスペンサ58において、クランパ59を構成するローラ支持部材60及び61をそれぞれ1本の棒状部材60a、60b、60c及び61a、61b、61cによって構成する。したがって、クランパ59の構成をより簡略化することができ、ディスペンサ58のコストを低減することができる。
【0070】
本実施形態においては、ディスペンサ58において、クランパ59を構成するローラ支持部材60及び61(具体的にはローラ39及び40)を平行に配置し、両側からチューブ36を挟む構成とした。これに限らず、例えば、はさみのように支点を中心に両側に開いたローラ支持部材(ローラ)によってチューブ36を挟むこともできる。このような構成にすることにより、クランパの動作を簡単にし、クランパの移動機構をより簡略化することができる。
【0071】
〔実施形態3〕
(ディスペンサの変形例2)
図7を参照して、実施形態3において使用されるディスペンサについて説明する。実施形態1との違いは、ディスペンサにおいて、クランパに関し、一方の側にローラ支持部材及びローラを設け、他方の側には吐出部に固定された固定板を設けたことである。それ以外の構成は実施形態1と同じなので同一の構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
図7に示されるように、ディスペンサ64において、吐出部65は、吐出口34を有するノズル22と、吐出口34に取り付けられた継ぎ手35と、継ぎ手35にはめ込まれた弾性変形可能なチューブ36と、ノズル22に固定された固定板66とを備える。固定板66とチューブ36とは接触するようにして吐出部65に配置される。
【0073】
固定板66の反対側にはチューブ36を挟んで移動可能なクランパ67が設けられる。クランパ67は、実施形態1に示したローラ支持部材37と同じものを使用して構成される。ローラ支持部材37は、Y方向に沿う1本の棒状部材37aと、棒状部材37aの両端に接続されX方向に沿う2本の棒状部材37bと、それぞれの棒状部材37bに接続されZ方向に沿う2本の棒状部材37cとによって構成される。なお、固定板66は、クランパとして働くと考えることもできる。
【0074】
クランパ67を構成するローラ支持部材37には、ローラ39が回転可能に取付けられる。すなわち、ローラ39が、ローラ支持部材37によって、回転可能に支持される。ローラ39はクランパ67を構成する棒状部材37aにはめ込まれ、棒状部材37bによってX方向に移動し、棒状部材37cによってZ方向に移動する。接続部材41、移動機構42、43の構成及び動作は実施形態1と同じなので説明を省略する。
【0075】
図7(c)を参照して、クランパ67によりチューブ36内に残留する残留樹脂を扱き出す工程について説明する。まず、移動機構43を使用してクランパ67をチューブ36の外側の所定位置まで下降させる。次に、移動機構42を使用してクランパ67を−X方向に移動させ、クランパ67(ローラ39)と固定板66とによってチューブ36を挟み込む。次に、クランパ67と固定板66とによってチューブ36を挟んだ状態で、クランパ67を下降させる。このことにより、ローラ39によってチューブ36を挟んだ位置から下方に残留する残留樹脂及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂を強制的に扱き出す。
【0076】
本実施形態によれば、ディスペンサ64において、吐出部65に固定板66を固定し、固定板66の反対側にチューブ36を挟んで移動可能なクランパ67を設ける。固定板66とクランパ67とによってチューブ36を挟み込み、ローラ39を回転させながら下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂をクランパ67により強制的に扱き出すことができる。このことにより、ディスペンサ64の吐出部65から液状樹脂を早期に吐出することができる。
【0077】
本実施形態によれば、ディスペンサ64において、吐出部65に固定板66とチューブ36を挟んで移動可能なクランパ67とを設ける。クランパ67を一方の側にのみ設けるので、移動機構の数を実施形態1に比べて半減することができる。したがって、クランパを含むクランプ機構の構成を一層簡略化することができ、ディスペンサ64のコストをより低減することができる。
【0078】
〔実施形態4〕
実施形態4では、上記実施形態において、貯留部内の流動性樹脂の残量に対応して、制御部によりクランパを移動させる移動量を制御する構成について説明する。また、扱き出し工程において、貯留部内の流動性樹脂の残量に対応して、クランパの移動量を制御する方法について説明する。
【0079】
また、上記実施形態において、複数の吐出対象物に対して吐出を行う場合、言い換えれば、一連の押し出し工程及び扱き出し工程を複数回繰り返す場合について説明する。ここでは、貯留部内の流動性樹脂の残量に対応して、制御部によってクランパを移動させる移動量を制御する構成となる。また、貯留部内の流動性樹脂の貯留量は複数の吐出対象物に対応する量であり、制御部によるクランパの移動量は複数の吐出対象物のうちの少なくとも二つに対して異なる方法となる。
【0080】
(比較例)
本実施形態の説明に先立ち、比較例として、従来のディスペンサにおける吐出樹脂量のばらつきについて説明する。
【0081】
従来のディスペンサにおいては、吐出開始から一定時間後の吐出樹脂量を調べると、シリンジ内の液状樹脂の樹脂量に応じて、吐出対象物に吐出された吐出樹脂量が異なっていた。
【0082】
この現象について、
図8を参照して説明する。
図8に示すように、従来のディスペンサには、チューブ36及びクランパ18が設けられていない。
図8(A)はシリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して大きい状態であり、
図8(B)はシリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して中程度の状態であり、
図8(C)はシリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して小さい状態である。
【0083】
図8(A)〜(C)のいずれでも、同じ移動量にてプランジャ27を押し出して、シリンジ20内の液状樹脂32を吐出部17の吐出口から吐出し、時間が十分に経過すれば、プランジャ27の移動量に対応した樹脂量が吐出される。
【0084】
しかしながら、プランジャ27の押し出し動作停止後において、比較的短い時間が経過した後の吐出樹脂量を調べたところ、例えば、
図8(A)〜(C)の場合であれば、(A)が最も少なくなり、(C)が最も多くなり、(B)がそれらの間となった。
【0085】
この現象について、以下のように考察される。例えば、
図8(A)〜(C)のいずれの状態においても、同じ移動量にてプランジャ27が押し出されると、シリンジ20内の液状樹脂32が圧縮されて、シリンジ20内において応力が生じる。この応力は、吐出部17の吐出口から液状樹脂32が吐出されることにより低下する。プランジャ27の押し出し動作を停止しても、液状樹脂32が圧縮された状態から元に戻ろうとするため、吐出部17からの樹脂吐出が継続されることになる。
【0086】
ここで、圧縮された液状樹脂32が元に戻るまでの時間、すなわちプランジャ27の押し出し動作により発生するシリンジ20内の応力が解消されるまでの時間は、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量に依存する。この時間は、例えば、
図8(A)〜(C)の場合であれば、(A)が最も長くなり、(C)が最も短くなり、(B)がそれらの間となる。
【0087】
したがって、プランジャ27の押し出し動作開始から、この動作により発生するシリンジ20内の応力がなくなるまでよりも前の時刻までの一定時間において、吐出部17の吐出口から吐出される液状樹脂32の樹脂量も、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量に依存することになる。この一定時間における吐出樹脂量は、例えば、
図8(A)〜(C)の場合であれば、(A)が最も少なくなり、(C)が最も多くなり、(B)がそれらの間となる。
【0088】
以上のように、比較例の従来のディスペンサを使用した場合には、プランジャ27の押し出し動作でのプランジャ27の移動量を一定に設定しても、実際の吐出樹脂量がシリンジ20内の液状樹脂32の残量に依存することがわかった。そして、液だれ現象が発生することによって、設定した吐出量(重量)を吐出するのにかなりの時間を要していることがわかる。このように、従来のディスペンサを使用した場合には、設定した液状樹脂の吐出量を吐出するまでに非常に時間を要することが問題となる。
【0089】
(予備実験)
次に、予備実験として、
図9〜10を参照して、例えば、
図1に示したディスペンサ15を使用して、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量が変化した場合でも、吐出部17から設定した一定の吐出量を早期に吐出する方法について説明する。
【0090】
実施形態1に示したように、ディスペンサ15の吐出部17に取り付けられたチューブ36をクランパ18で挟み、クランパ18を下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49をクランパ18により強制的に扱き出すことができる。
【0091】
しかしながら、
図8を参照して説明したように、ディスペンサの吐出部17から吐出される液状樹脂の吐出量は、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量に依存することがわかった。本実施形態においては、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量に対応して、クランパ18によってチューブ36を挟み込む位置、及び、クランパ18を移動させるストローク量を制御することによって、吐出部17から設定した一定の吐出量を早期に吐出する方法について説明する。
【0092】
図9〜10に示されるように、例えば、ディスペンサ15において、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して大きい状態(A)、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して中程度の状態(B)、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して小さい状態(C)、それぞれに対応してクランパ18を下降させてチューブ36を挟み込む位置、及び、クランパ18を移動させるストローク量を調整する。
図9(A)〜(C)のぞれぞれは、
図8(A)〜(C)に対応する。
【0093】
図10(a)に示されるように、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して大きい状態(A)では、クランパ18をP1の位置まで下降させてチューブ36を挟み込む。この状態でクランパ18をP1の位置からチューブ36の下端のP4の位置まで所定のストローク量L1だけ下降させて、チューブ36内に残留する残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂49をクランパ18によって強制的に扱き出す。
【0094】
同様に、
図10(b)に示されるように、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して中程度の状態(B)では、クランパ18をP2の位置まで下降させてチューブ36を挟み込む。この状態でクランパ18をP2の位置からチューブ36の下端のP4の位置まで所定のストローク量L2だけ下降させて、チューブ36内の残留樹脂48及びチューブ36から垂れ下がっている液だれ樹脂49をクランパ18によって強制的に扱き出す。この場合には、クランパ18を下降させるストローク量L2とL1との関係はL2<L1となる。
【0095】
同様に、
図10(c)に示されるように、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量の値が他と比較して小さい状態(C)では、クランパ18をP3の位置まで下降させてチューブ36を挟み込む。この状態でクランパ18をP3の位置からチューブ36の下端のP4の位置まで所定のストローク量L3だけ下降させて、チューブ36内の残留樹脂48及びチューブ36から垂れ下がっている液だれ樹脂49をクランパ18によって強制的に扱き出す。この場合には、クランパ18を下降させるストローク量L3とL2とL1との関係はL3<L2<L1となる。
【0096】
ここで、チューブ36を挟んだ状態のクランパ18の下降を停止させる位置P4を同じとして、クランパ18でチューブ36を挟み込む位置を変化させることにより、クランパ18を移動させるストローク量を変化させるようにするのが好ましい。そうすれば、扱き出し動作後の状態がばらつくことを低減することができ、安定した吐出工程を行うことができる。したがって、ディスペンサ15の吐出部17から設定した一定の吐出量(重量)を早期に吐出することが可能となる。このことにより、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量が変化しても、安定して一定の吐出量を早期に吐出することができる。
【0097】
(装置構成)
本実施形態においては、上記実施形態1〜3のいずれの構成も採用することができるが、ここでは予備実験の説明と対応させて、実施形態1のディスペンサ15を使用した場合について記載する。
【0098】
装置構成において実施形態1と異なる点は、制御部31(
図2参照)が、貯留部であるシリンジ20内の流動性樹脂である液状樹脂32の残量に対応して、クランパ18を移動させる移動量を制御する点である。さらに、シリンジ20内の液状樹脂23の貯留量が複数の吐出対象物に対応する量であり、制御部31によるクランパ18の移動量が複数の吐出対象物のうちの少なくとも二つに対して異なる点においても、実施形態1と異なる。
【0099】
(液状樹脂の吐出方法)
液状樹脂の吐出方法において実施形態1と異なる点は、まず、例えば、予め上記予備実験のようにして、実験的にシリンジ20内の液状樹脂32の残量に対応するクランパ18を移動させる移動量を設定しておく。
【0100】
この後に、吐出工程を複数の吐出対象物に対して行う際に、例えば、上記予備実験と同様に、
図9〜10の(A)、(B)、(C)に対応して、それぞれ異なる吐出対象物に吐出する。
【0101】
複数の吐出対象物に液状樹脂32の吐出を行うので、液状樹脂32の押し出し工程及び扱き出し工程を複数回繰り返すことになる。この際、例えば、上記予備実験と同様に、
図9〜10の(A)、(B)、(C)に対応して、複数回の扱き出し工程におけるクランパ18のストローク量を異ならせる。
【0102】
ここで、吐出樹脂量を高精度に制御する場合には、吐出対象物ごと、すなわち吐出工程ごとにクランパ18のストローク量を異ならせればよい。吐出樹脂量の制御に精度を必要としないのであれば、吐出対象物ごと、すなわち吐出工程ごとにクランパ18のストローク量を異ならすことなく、少なくとも2つの吐出対象物、すなわち少なくとも2つの吐出工程に対してクランパ18のストローク量を異ならせればよい。
【0103】
なお、樹脂成形品の製造方法に関しては、基本的には実施形態1と同様であり、複数の吐出対象物に対応した複数回の吐出工程をここで説明したように行えばよい。この際、樹脂成形工程を行う数は、吐出対象物の数又は吐出工程を行う数と同じとすることができる。
【0104】
本実施形態では、貯留部であるシリンジ内の流動性樹脂の残量に対応して、クランパを移動させる移動量を制御する。さらに、貯留部であるシリンジ内の流動性樹脂の残量である貯留量が複数の吐出対象物に対応する量となり、制御部によるクランパの移動量が複数の吐出対象物のうちの少なくとも二つに対して異なる。
【0105】
また、本実施形態では、扱き出し工程では、貯留部であるシリンジ内の流動性樹脂の残量に対応して、クランパの移動量を制御する。さらに、押し出し工程及び扱き出し工程を複数回繰り返し、複数回の扱き出し工程のうちの少なくとも二つに対して、クランパの移動量を異ならせる。
【0106】
より詳細には、本実施形態によれば、ディスペンサ15の吐出部17に弾性変形可能なチューブ36を取り付け、チューブ36の両側にチューブ36を挟んで移動可能なクランパ18を設ける。シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量によって、クランパ18がチューブ36を挟み込む位置P1、P2、P3及びクランパ18を移動させるストローク量L1、L2、L3をそれぞれ制御する。これらのことにより、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量が変化しても、一定の液状樹脂を吐出部17から吐出することができる。したがって、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量に依存することなく、一定の液状樹脂を吐出部17から早期に安定して吐出することができる。すなわち、液状樹脂等の流動性樹脂の吐出工程に要する時間の短縮を図ることができることに加えて、流動性樹脂の吐出量の高精度化を図ることができる。したがって、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の生産性及び品質の安定性を向上させることができる。
【0107】
本実施形態においては、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量を(A)、(B)、(C)の3段階に分け、クランパ18がチューブ36を挟み込む位置P1、P2、P3及びクランパ18を移動させるストローク量L1、L2、L3をそれぞれ3段階に分けて制御した。これに限らず、シリンジ20に貯留する液状樹脂の貯留量に対応して、シリンジ20内に残留する液状樹脂32の樹脂量を更に細かく分けることによって、クランパ18がチューブ36を挟み込む位置及びクランパ18を移動させるストローク量を更にそれぞれを細かく制御するようにしても良い。
【0108】
なお、ディスペンサ15の吐出部17に取り付けられるチューブ36の口径及び長さについては任意に設定することができる。チューブ36の口径が大きいと液状樹脂を早期に吐出することができる。チューブ36の口径を小さくチューブ36の長さを長くしてクランパ18を移動させるストローク量を大きくすることにより、チューブ36を押しつぶす体積をより高精度に制御することが可能となる。したがって、吐出する液状樹脂の吐出量を更に高精度に制御することができる。チューブ36の口径及び長さについては、生産性を考慮して、液状樹脂の粘度及び吐出量などに対応して最適化することができる。
【0109】
〔実施形態5〕
図11〜14を参照して、実施形態5の樹脂成形装置の構成及び樹脂成形品の製造方法について説明する。実施形態1の樹脂成形装置1との違いは、樹脂成形する対象が円形状のウェーハであること、及び、液状樹脂を吐出対象物に吐出して吐出対象物から成形型に液状樹脂を供給することである。それ以外の構成及び動作は実施形態1と同じなので同一の構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
(樹脂成形装置の構成)
図11を参照して、実施形態5の樹脂成形装置の構成について説明する。
図11に示されるように、樹脂成形装置68は、ウェーハ供給・収納モジュール69と、3つの成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とを、それぞれ構成要素として備える。構成要素であるウェーハ供給・収納モジュール69と、成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0111】
ウェーハ供給・収納モジュール69には、封止前ウェーハ70を供給する封止前ウェーハ供給部71と、封止済ウェーハ72を収納する封止済ウェーハ収納部73と、封止前ウェーハ70及び封止済ウェーハ72を受け渡しするウェーハ載置部74と、封止前ウェーハ70及び封止済ウェーハ72を搬送するウェーハ搬送機構75とが設けられる。なお、封止前ウェーハとしては、例えば、支持部材となるウェーハに複数の半導体チップが装着されたウェーハ、半導体前工程(拡散工程及び配線工程)が完了したウェーハ、半導体前工程が完了したウェーハに再配線が形成されたウェーハなどがある。
【0112】
各成形モジュール3A、3B、3Cには、昇降可能な下型11と、下型11に対向して配置された上型52(
図14参照)とが設けられる。上型52と下型11とは併せて成形型53を構成する。各成形モジュール3A、3B、3Cは、上型52と下型11とを型締め及び型開きする型締機構12を有する(図の二点鎖線で示される円形の部分)。液状樹脂が供給され硬化する空間となる円形状のキャビティ76が下型11に設けられる。
【0113】
樹脂供給モジュール4には、テーブル77とテーブル77に離型フィルム(
図12参照)を供給する離型フィルム供給機構78とが設けられる。テーブル77に供給された離型フィルムの上には、円形状の貫通孔を有する樹脂収容枠79が載置される。離型フィルムと樹脂収容枠79とが一体となって、ディスペンサ15(
図2参照)から吐出された液状樹脂を収容する樹脂収容部(
図12参照)を構成する。樹脂供給モジュール4には、樹脂収容部に液状樹脂を吐出するディスペンサ15とディスペンサ15を移動させる移動機構80と樹脂収容部を搬送する樹脂搬送機構81とが設けられる。ディスペンサ15は実施形態1に示したディスペンサと同じである。実施形態1と同様に、ディスペンサ15の吐出部17にはクランパ18が設けられる。本実施形態では、テーブル77に載置された離型フィルム又は樹脂収容部が、液状樹脂が吐出される吐出対象物となる。
【0114】
離型フィルム供給機構78としては、長尺状(ロール状)の離型フィルムをテーブル77に供給する離型フィルム供給機構、又は、短冊状にカットされた離型フィルムをテーブル77に供給する離型フィルム供給機構が使用される。
【0115】
ウェーハ供給・収納モジュール69には、樹脂成形装置68の動作を制御する制御部CTLが設けられる。制御部CTLは、封止前ウェーハ70及び封止済ウェーハ72の搬送、ディスペンサ15の移動及び液状樹脂の吐出、成形型の加熱、成形型の開閉などを制御する。
【0116】
(樹脂成形品の製造方法)
図12〜14を参照して、吐出対象物である樹脂収容部(離型フィルム)に液状樹脂を吐出し、樹脂収容部に吐出された液状樹脂を成形型に供給して樹脂成形品を製造する方法について説明する。
【0117】
まず、
図12(a)に示されるように、離型フィルム供給機構78(
図11参照)から、例えば、長尺状の離型フィルム82をテーブル77に供給して、所定の大きさにカットする。次に、円形状の貫通孔83を有する樹脂収容枠79を離型フィルム82の上に載置する。この状態で、離型フィルム82と樹脂収容枠79とが一体となって液状樹脂を収容する樹脂収容部84を構成する。次に、移動機構80を使用して、ディスペンサ15を樹脂収容部84の上方の所定位置まで移動させる。この場合には、移動機構80を使用してディスペンサ15を樹脂収容部84の上方に移動させる場合を示すが、テーブル77をディスペンサ15の下方に移動させても良い。ディスペンサ15と樹脂収容部84とを相対的に移動させるような構成であれば良い。
【0118】
次に、
図12(b)に示されるように、ディスペンサ15の樹脂吐出部17(チューブ36)から樹脂収容部84(離型フィルム82)に向かって液状樹脂85を吐出する。液状樹脂85は、樹脂収容部84が有する貫通孔83の中に吐出される。液状樹脂85を吐出するパターン形状としては、例えば、
図13(a)に示されるように、円形状の貫通孔83に対応するように螺旋状のパターン形状に液状樹脂85を吐出することが好ましい。
この場合には、中央部から外周部に向かって螺旋状に液状樹脂85が吐出される。逆に、外周部から中央部に向かって螺旋状に液状樹脂85を吐出しても良い。
【0119】
液状樹脂85を吐出するパターン形状は螺旋状のパターン形状に限定されない。これ以外にも、同心円状、分散したドットなど、樹脂収容部84が有する貫通孔83の形状に対応して任意に設定することができる。液状樹脂85が、樹脂収容部84にできるだけ均等に配置されるようなパターン形状であることが好ましい。
【0120】
次に、
図12(c)に示されるように、ディスペンサ15の吐出を停止(プランジャ27の押し出し動作を停止)した後は、ディスペンサ15の吐出部17に取り付けられたチューブ36内の残留樹脂48及びチューブ36の先端から垂れ下がった液だれ樹脂49をクランパ18を使用して扱き出す(
図4参照)。離型フィルム82の上には、螺旋状に吐出された液状樹脂85が配置される(
図13(a)参照)。この場合には、底面が離型フィルム82により構成される樹脂収容部84が吐出対象物となる。
【0121】
次に、
図12(d)に示されるように、樹脂収容枠79の底面に設けられた吸着溝(図示なし)により離型フィルム82を樹脂収容枠79に吸着する。樹脂搬送機構81を使用して、樹脂収容枠79と離型フィルム82と螺旋状に吐出された液状樹脂85とが一体となった状態の樹脂収容部84をテーブル77から持ち上げる。
【0122】
次に、
図14(a)に示されるように、ウェーハ搬送機構75(
図11参照)を使用して、半導体チップ86が装着された封止前ウェーハ70を上型52の型面に吸着又はクランプなどによって固定する。次に、樹脂搬送機構81を使用して、樹脂収容部84を上型52と下型11との間の所定位置に搬送する。樹脂収容部84において、液状樹脂85は樹脂収容枠79と離型フィルム82とによって閉じられた貫通孔83に収容されている。次に、樹脂搬送機構81を下降させて、下型11の上に樹脂収容部84を載置する。この状態で、離型フィルム82上に吐出された螺旋状の液状樹脂85は、キャビティ76の上方に配置される。
【0123】
次に、
図14(b)に示されるように、下型11に設けられた吸着機構(図示なし)によって、離型フィルム82をキャビティ76の型面に沿って吸着する。このことによって、離型フィルム82と液状樹脂85とが一括してキャビティ76に供給される。次に、下型11に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、液状樹脂85を加熱して溶融させ粘度が低下した流動性樹脂87を生成する。
【0124】
次に、
図14(c)に示されるように、型締機構12(
図11参照)によって下型11を上昇させ、上型52と下型11とを型締めする。型締めすることによって、封止前ウェーハ70に装着された半導体チップ86を流動性樹脂87に浸漬させる。
【0125】
次に、下型11に設けられたヒータを使用して、流動性樹脂87を硬化させて硬化樹脂88を成形する。このことによって、封止前ウェーハ70に装着された半導体チップ86を、キャビティ76の形状に対応して成形された硬化樹脂88によって樹脂封止する。この段階において、樹脂封止された樹脂成形品89(封止済ウェーハ72)が製造される。ウェーハ搬送機構75(
図11参照)を使用して、樹脂成形品89を封止済ウェーハ収納部73(
図11参照)に収容する。
【0126】
本実施形態によれば、ディスペンサ15の吐出部17に弾性変形可能なチューブ36を取り付ける。チューブ36の両側にはチューブ36を挟んで移動可能なクランパ18を設ける。チューブ36をクランパ18で挟みクランパ18を下降させることによって、チューブ36内に残留する残留樹脂及びチューブ36の先端から垂れ下がっている液だれ樹脂をクランパ18により強制的に扱き出すことができる。
【0127】
本実施形態によれば、吐出対象物である樹脂収容部84(離型フィルム82)に液状樹脂85を吐出し、樹脂収容部84に収容された液状樹脂85を下型11に設けられたキャビティ76供給して樹脂成形する。液状樹脂85を直接キャビティ76に吐出しないので、離型フィルム82上に吐出された液状樹脂85は成形型に設けられたヒータからの熱の影響を受けない。したがって、液状樹脂85を離型フィルム82上に吐出している間に、液状樹脂85が硬化をし始めることを抑制することができる。このことにより、離型フィルム82上に吐出した液状樹脂85が硬化するばらつきを抑制し、樹脂成形品の樹脂厚みのばらつきを低減することができる。
【0128】
各実施形態においては、ディスペンサに設けられた吐出部から吐出対象物に向かって液状樹脂を吐出する。実施形態1においては、下型11に設けられたキャビティ13を吐出対象物として、キャビティ13に液状樹脂32を吐出する形態を説明した。実施形態5においては、テーブル77の上に載置された離型フィルム82(樹脂収容部84)を吐出対象物として、離型フィルム82に液状樹脂85を吐出する形態を説明した。
【0129】
吐出対象物としては、キャビティや離型フィルム以外にも、半導体チップが装着された基板、半導体チップが装着されたウェーハ、半導体前工程が完了したウェーハなどに、液状樹脂を吐出することができる。これらの場合には、液状樹脂が吐出された吐出対象物が成形型に供給されて樹脂成形される。液状樹脂は成形型に設けられたキャビティにおいて溶融され、キャビティの形状に対応して硬化する。
【0130】
各実施形態においては、主剤と硬化剤とが予め混合されて生成された液状樹脂を使用する1液タイプのディスペンサを示した。これに限らず、実際に使用する際にディスペンサにおいて主剤と硬化剤とを混合して使用する2液混合タイプのディスペンサを使用した場合においても、各実施形態と同様の効果を奏する。
【0131】
各実施形態においては、半導体チップを樹脂封止する際に使用される樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を説明した。樹脂封止する対象はIC、トランジスタなどの半導体チップでも良く、半導体を用いない非半導体チップでも良く、半導体チップと非半導体チップとが混在するチップ群でも良い。基板やウェーハなどに装着された1個又は複数個のチップを硬化樹脂によって樹脂封止する際に本発明を適用することができる。
【0132】
加えて、電子部品を樹脂封止する場合に限らず、レンズ、リフレクタ(反射板)、導光板、光学モジュールなどの光学部品、その他の樹脂成形品を樹脂成形によって製造する場合に、本発明を適用することができる。
【0133】
以上のように、上記実施形態の吐出装置は、流動性樹脂を貯留する貯留部と、流動性樹脂を押し出す押し出し機構と、貯留部に接続され流動性樹脂を吐出する吐出部と、吐出部に取り付けられた弾性変形可能なチューブと、チューブを挟んで移動可能なクランパと、クランパの移動量を制御する制御部とを備える構成としている。
【0134】
この構成によれば、吐出装置の吐出部に取り付けられた弾性変形可能なチューブをクランパで挟み、クランパを下降させることによって、チューブ内に残留する残留樹脂をクランパにより扱き出すことができる。したがって、液状樹脂等の流動性樹脂の吐出工程に要する時間の短縮を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0135】
さらに、上記実施形態の吐出装置では、制御部は、貯留部内の流動性樹脂の残量に対応して、クランパを移動させる移動量を制御する構成としている。
【0136】
この構成によれば、貯留部内に残留する流動性樹脂の残量が変化しても、一定の流動性樹脂を吐出することができる。したがって、流動性樹脂の吐出量の高精度化を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の品質の安定性を向上させることができる。
【0137】
さらに、上記実施形態の吐出装置では、貯留部内の流動性樹脂の貯留量は、複数の吐出対象物に対応する量であり、制御部によるクランパの移動量は、複数の吐出対象物のうちの少なくとも二つに対して異なる構成としている。
【0138】
この構成によれば、貯留部内の流動性樹脂の残量が変化しても、一定の流動性樹脂を吐出することができる。したがって、流動性樹脂の吐出量の高精度化を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の品質の安定性を向上させることができる。
【0139】
さらに、上記実施形態の吐出装置では、クランパを水平方向に移動させる第1駆動機構と、クランパを鉛直方向に移動させる第2駆動機構とを有する構成としている。
【0140】
この構成によれば、第1駆動機構を使用して、クランパによりチューブを挟むことができる。第2駆動機構を使用して、クランパを所定量移動させることができる。したがって、チューブ内に残留する残留樹脂をクランパにより扱き出すことができる。
【0141】
さらに、上記実施形態の吐出装置では、クランパは回転するローラを備え、クランパがチューブを挟んだ状態でローラが回転しながら下降することによってチューブ内に残留する残留樹脂を扱き出す構成としている。
【0142】
この構成によれば、ローラが回転しながら下降することによりチューブ内に残留する残留樹脂を扱き出すことができる。
【0143】
上記実施形態の樹脂成形装置は、上記のいずれかの吐出装置を備える構成としている。
【0144】
この構成によれば、液状樹脂等の流動性樹脂の吐出工程に要する時間の短縮を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0145】
上記実施形態の吐出方法は、貯留部に貯留された流動性樹脂を押し出すことによって、貯留部に接続された吐出部に取り付けられた弾性変形可能なチューブから流動性樹脂を吐出する押し出し工程と、チューブをクランパにより挟んで、クランパを下方向に移動させることによって、チューブ内に残留する残留樹脂を扱き出す扱き出し工程とを含む。
【0146】
この方法によれば、クランパにより流動性樹脂を早期に吐出することができる。したがって、液状樹脂等の流動性樹脂の吐出工程に要する時間の短縮を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0147】
さらに、上記実施形態の吐出方法は、扱き出し工程で、貯留部内の流動性樹脂の残量に対応して、クランパの移動量を制御する。
【0148】
この方法によれば、貯留部内に残留する流動性樹脂の残量が変化しても、一定の流動性樹脂を吐出することができる。したがって、流動性樹脂の吐出量の高精度化を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の品質の安定性を向上させることができる。
【0149】
さらに、上記実施形態の吐出方法は、押し出し工程及び扱き出し工程を複数回繰り返し、複数回の扱き出し工程のうちの少なくとも二つに対して、クランパの移動量を異ならせる。
【0150】
この方法によれば、貯留部内の流動性樹脂の残量が変化しても、一定の流動性樹脂を吐出することができる。したがって、流動性樹脂の吐出量の高精度化を図ることができ、流動性樹脂の吐出を行って製造する樹脂成形品の品質の安定性を向上させることができる。
【0151】
上記実施形態の樹脂成形品の製造方法は、上記いずれかの吐出方法によって吐出された流動性樹脂が成形型に供給された状態として、成形型を型締めする型締工程を含む。
【0152】
この方法によれば、樹脂成形品を安定に製造することができ、生産性を向上させることができる。
【0153】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。