特許第6672214号(P6672214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672214
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ビード部を補強したチューブレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   B60C15/06 N
   B60C15/06 Q
   B60C15/06 B
   B60C15/06 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-68415(P2017-68415)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-190125(P2017-190125A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年3月30日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0044823
(32)【優先日】2016年4月12日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514040088
【氏名又は名称】ハンコック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANKOOK TIRE & TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン、グク
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−155150(JP,A)
【文献】 特開昭63−002708(JP,A)
【文献】 特開2017−114454(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0056673(US,A1)
【文献】 特開平03−050004(JP,A)
【文献】 特開2007−076549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00,9/04,15/04,15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアをカーカスがターンアップして巻き込み、カーカスの内部にはビードコアの上側にビードフィラが充填され、前記ビードフィラは、タイヤのラジアル方向において相対的に上部に位置する上部ビードフィラと、タイヤのラジアル方向において相対的に下部に位置する下部ビードフィラとを含み、カーカスの外側にはスチールチェーファが巻き込まれるチューブレスタイヤにおいて、
下部ビードフィラの下側、かつ前記ビードコアと前記カーカスのターンアップ部との間にはリムフランジ側に前記カーカスのターンアップ部が引きずられて下がることを防ぐ第1の補強ゴム層が充填され、前記第1の補強ゴム層は、前記ビードコアと前記下部ビードフィラとの間の少なくとも一部には配置されず、
前記スチールチェーファの外部にはナイロンチェーファが巻き込まれ、
前記スチールチェーファと前記ナイロンチェーファとの間には界面応力を減らす第2の補強ゴム層が形成され、前記第2の補強ゴム層の上端は、タイヤのラジアル方向において、前記スチールチェーファの上端よりも下側に配置され、
前記ビードコアと前記カーカスの前記ターンアップ部との間における、前記第1の補強ゴム層の厚さは、前記ビードコアのうち、前記カーカスの前記ターンアップ部が位置する側とは反対側に設けられた前記第1の補強ゴム層の厚さよりも大きいことを特徴とする、ビード部を補強したチューブレスタイヤ。
【請求項2】
前記第1の補強ゴム層の高さは前記リムフランジの高さ以下に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のビード部を補強したチューブレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブレスタイヤに関するものであって、より詳しくはリムフランジ部に当接する部位とカーカスエッジ部の応力を効果的に低減できるビード部を補強したチューブレスタイヤ(TUBELESS TIRE HAVING REINFORCED BEAD PORTION)に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、タイヤにおける耐久要求性能は、ベルト耐久性とビード耐久性に分けられ、タイヤで発生するビード部の剥離(Separation)を防ぐために多くの研究が行われている。
【0003】
図1は従来、通常ビード部の剥離を防ぐためのタイヤのビード部10を示す断面図である。図に示すように、高強力スチールワイヤからなるビードバンドル(11,Bead bundle)を中心にタイヤの基本骨組みを成すラジアル(Radial)方向に配列されたカーカス12が位置するが、過荷重や高温状態で走行を続けると、反復的な圧縮引張により、特にカーカス12のターンアップエッジ部12aで高いせん断応力が発生し、早期に事故につながるのがビード部剥離の一般的な事故現象である。
【0004】
それを防ぐために、スチールコードからなるスチールチェーファ(14,Steel chafer)でカーカス12を保護し、又は必要に応じてナイロンチェーファ(15,Nylon chafer)で補強するのが一般的な補強構造とされた。さらに、従来は前記ビードコア11を中心にカーカス12が位置することになれば、空き空間が生じてしまうが、これを埋めるゴムはビードフィラ13と呼ばれ、ここで前記ビードフィラ13は大型タイヤにおいて要求特性に合わせるために二重構造のそれぞれの物性を備えたゴムに設計され、その位置によって上部を上部ビードフィラ13a、下側にあるゴムを下部ビードフィラ13bという。
【0005】
従来、タイヤのビード部構造として、韓国公開特許第2012-0067138号、韓国公開特許第2013-0014878号、韓国公開特許第2013-0075792号などが開示されている。
【0006】
一方、チューブレスタイヤ(Tubeless Tire)は、ブチル(Butyl)材などで作られた、空気の漏れないゴム膜をチューブの代りにタイヤの内側の内壁に直接貼り付けたタイヤであって、空気が漏れることを防止し、チューブとタイヤとの摩擦がないため、熱の発生が少なく、軽くて組立てしやすくなるメリットがある。
【0007】
チューブレスタイヤに高い圧力が加えられた状態でリムフランジ部におけるブレーキドラムなどへ熱が加えられると、リムフランジ部に当接する部分のゴムが切れる事故が発生することがある。このような現象を抑えるために、タイヤにおいてリムフランジ部に当接する部分の応力を低減させるゴムの量を増やして製造したものの、スチールチェーファとナイロンチェーファ上にクラックが生じる場合は、その効果が大きくないという問題があった。しかも、カーカスエッジ部にクラックが発生すれば、スチールチェーファの界面に沿って伝播し、リムフランジ部のゴムにクラックが生じやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2012-0067138号
【特許文献2】韓国公開特許第2013-0014878号
【特許文献3】韓国公開特許第2013-0075792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の問題を解決するためになされたもので、本発明の目的はカーカスエッジとスチールチェーファとナイロンチェーファの界面応力を減らして耐久性を向上したビード部を補強したチューブレスタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明によるビード部を補強したチューブレスタイヤは、ビードコアをカーカスがターンアップして巻き込み、カーカスの内部にはビードコアの上側にビードフィラが充填され、カーカスの外側にはスチールチェーファが巻き込まれるチューブレスタイヤにおいて、ビードコアとカーカスとの間にはリムフランジ側に引きずられてカーカスのターンアップ部が下がることを防止する第1の補強ゴム層が形成される。
【0011】
スチールチェーファの外部にはナイロンチェーファが巻き込まれ、スチールチェーファとナイロンチェーファとの間には界面応力を減らす第2の補強ゴム層が形成される。
【0012】
第1の補強ゴム層のモジュラスは、カーカスのトッピングゴムの350〜450%とする。第1の補強ゴム層の高さは、リムフランジの高さ以下に形成される。
【0013】
第2の補強ゴム層のモジュラスは、カーカスのトッピングゴムの125〜175%とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるビード部を補強したチューブレスタイヤによれば、カーカスエッジとスチールチェーファとナイロンチェーファの界面応力を減らし、高い空気圧の使用条件でビード部の耐久性を上げてビード部を補強する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、従来のビード部の剥離を防ぐためのタイヤのビード部を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施例によるビード部を補強したチューブレスタイヤのビード部を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施例において補強ゴム層のモジュラスに伴う変形エネルギーを示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施例によるビード部の変形エネルギーを従来のビード部の変形エネルギーと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図を参照して本発明の好ましい実施例を詳述する。このとき、添付された図において同じ構成要素はできる限り同じ符号で示している点に留意する。また、本発明の要旨を曖昧にする公知の機能及び構成に関する詳述は省略する。同じ理由により、添付図において一部の構成要素は誇張、省略され、又は概略的に図示されている。
【0017】
図2は、本発明の実施例によるビード部を補強したチューブレスタイヤのビード部を示す断面図である。本発明が適用されたチューブレスタイヤは、路面に接するゴム層のトレッド(Tread)、トレッドに連結されていてタイヤの側面を成すサイドウォール(Side wall)、サイドウォールに連結されていて車のリム(Rim)に固定されるビード(Bead)部、タイヤの内部に設置されてサイドウォールの屈伸運動に対する耐疲労性に強くて骨組みを形成するカーカス(Carcass)、そしてトレッドとカーカスとの間に配置されてカーカスを保護し、トレッド表面の剛性を高めるベルトを含む。以下では、サイドウォールの端部に設置されたビード部のビードコア以外にタイヤを構成する部分については詳述を省略する。
【0018】
図2に示すように、ビード部100はビードコア110と、カーカス120と、ビードフィラ130と、スチールチェーファ140と、ナイロンチェーファ150、第1の補強ゴム層160と、第2の補強ゴム層170を含む。
【0019】
ビードコア110は、多数のワイヤからなるヌードビードを備える六角形断面を成しており、円形断面の多数層に形成され得る。
【0020】
カーカス120は、ビードコア110を巻き上げて(ターンアップして)設置され、スチールコードからなる芯材にゴムを着せてタイヤのラジアル(Radial)方向に配列され、トレッド内部に配置されるベルト層タイヤの骨組みの役目を持つ。
【0021】
ビードフィラ130は、ビードコア110を中心にカーカス120が位置するときに形成される空き空間(ビードコアの上側空間)を充填するゴムであって、位置によって上部ビードフィラ131と下部ビードフィラ132に分けられる。
【0022】
スチールチェーファ140は、カーカス120の外側に密接して巻き込んで設けられ、カーカス120の両側へ巻き上げられてターンアップされる。スチールチェーファ140の端部は、カーカス120のターンアップ部121の端部121aより低く形成される。
【0023】
ナイロンチェーファ150は、スチールチェーファ140の一側(リムのフランジ側)を巻き込んで密着し、ナイロンチェーファ150の端部にはスチールチェーファ140の端部とカーカス120のターンアップ部121が巻き上げられ、ターンアップ部121の端部121aより高く形成される。ナイロンチェーファ150の端部は、上部ビードフィラ131の右側面に当接する。
【0024】
第1の補強ゴム層160は、ビードコア110とカーカス120のターンアップエッジ部121との間に形成され、カーカス120のターンアップ部121が引きずられて下がることを防ぐ。第1の補強ゴム層160は、ビードコア110においてリムフランジ(F)側に位置する。これによって、第1の補強ゴム層160はビードコア110とリムフランジ(F)との間の圧力が増加し、カーカス120が引っ張る反対方向に変形し、カーカス120のターンアップ部121が引きずられて下がることを防止する。
【0025】
ビードコア110の右側面とカーカス120のターンアップ部121の内面との距離、すなわち、第1の補強ゴム層160の厚さ(L)は2〜4mmであるのが好ましい。そして、第1の補強ゴム層160の高さは、リムフランジ(F)の高さ(H)以下に形成される。第1の補強ゴム層160のモジュラス(Modulus)は、カーカスのトッピングゴムの350〜450%とするのが好ましい。
【0026】
第2の補強ゴム層170は、スチールチェーファ140とナイロンチェーファ150との間に形成されて界面の応力を減らす。第2の補強ゴム層170の厚さは、3mm以下であるのが好ましい。第2の補強ゴム層170のモジュラスは、カーカストッピングゴムの125〜175%とするのが好ましい。
【0027】
第1の補強ゴム層160のモジュラスが高ければ高いほど、カーカスエッジの変形エネルギーは減少する一方、スチールチェーファ140とナイロンチェーファ150との変形エネルギーは増加するため、スチールチェーファ140とナイロンチェーファ150との間に剥離(Separation)が生じる確率が高まり、本発明のような構造の変更と適正な剛性分配(第1の補強ゴム層と第1の補強ゴム層のモジュラス分配)が必要である。
【0028】
図3は、本発明の実施例において第1の補強ゴム層160のモジュラスによる変形エネルギーを示すグラフである。図3のグラフでは、第1の補強ゴム層160のモジュラスをカーカスのトッピングゴムの100%、200%、300%及び400%としたとき、カーカスエッジ(ターンアップ部の端部)の変形エネルギーとスチールチェーファとナイロンチェーファとの間の変形エネルギーを示す。このとき、変形エネルギーは100%を100としたとき、相対的な数値を示す。すなわち、カーカスエッジの変形エネルギーは100、82、74及び68と次第に減少し、スチールチェーファとナイロンチェーファとの間の変形エネルギーは100、125、134及び138と次第に増加していくのがわかる。
【0029】
図4は、本発明の実施例によるビード部の変形エネルギーを従来のビード部の変形エネルギーと比較して示したグラフである。グラフでは、従来構造(a)の変形エネルギーを100としたときの相対値を示す。グラフに示すように、図1で示されたような従来の構造(a)から図2で示した本発明の構造(b)に変えた場合、カーカスエッジの変形エネルギーが約25%減少し、スチールチェーファとナイロンチェーファとの間の変形エネルギーが約55%減少することがわかる。
【0030】
さらに、本発明の構造(c)、すなわち、物性及び構造を最適化した場合(第1の補強ゴム層のモジュラスをカーカスのトッピングゴムの400%とし、第2の補強ゴム層のモジュラスをカーカスのトッピングゴムの150%とした場合)、カーカスエッジの変形エネルギーは約35%減少し、スチールチェーファとナイロンチェーファとの間の変形エネルギーが約65%まで減少することがわかる。
【0031】
一方、本明細書と図に開示された本発明の実施例は、本発明の技術内容をわかりやすく説明し、本発明の理解を深めるために特定例を示したのに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施例以外にも本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であることは、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【符号の説明】
【0032】
100:ビード部
110:ビードコア
120:カーカス
121:ターンアップ部
121a:ターンアップ部の端部
130:ビードフィラ
131:上部ビードフィラ
132:下部ビードフィラ
140:スチールチェーファ
150:ナイロンチェーファ
160:第1の補強ゴム層
170:第2の補強ゴム層
F:リムフランジ
H:リムフランジの高さ
L:第1の補強ゴム層の厚さ
図1
図2
図3
図4