(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数種類の血液成分を含む血液を収容可能なバッグ(50)を有する血液バッグシステム(10a)を収容するためのカップ(80)を備え、前記血液バッグシステム(10a)が収容された前記カップ(80)を回転させることにより前記血液バッグシステム(10a)内の血液を遠心分離する遠心分離機(70)であって、
前記血液バッグシステム(10a)は、前記バッグ(50)に接続されたチューブ(44)を含み、前記チューブ(44)はその延在方向に間隔をおいた複数部分で封止されることにより互いに独立した内腔を有する複数のセグメントチューブ(44a)が形成されるようになっており、
前記カップ(80)は、前記チューブ(44)が複数の封止部分(44b)で折り畳まれることにより並列状態で並んだ前記複数のセグメントチューブ(44a)を、遠心処理時に遠心力が作用する方向又は遠心力が作用する方向に対して傾斜した方向に沿って保持可能なセグメント保持部(86)を有する、
ことを特徴とする遠心分離機(70)。
複数種類の血液成分を含む血液を収容可能なバッグ(50)を含む血液バッグシステム(10a)を収容するためのカップ(80)を備え、前記血液バッグシステム(10a)が収容された前記カップ(80)を回転させることにより前記血液バッグシステム(10a)内の血液を遠心分離する遠心分離機(70)に配置されるセグメント保持部(86)であって、
前記血液バッグシステム(10a)は、前記バッグ(50)に接続されたチューブ(44)を含み、前記チューブ(44)はその延在方向に間隔をおいた複数部分で封止されることにより互いに独立した内腔を有する複数のセグメントチューブ(44a)が形成されるようになっており、
前記カップ(80)は、前記チューブ(44)が複数の封止部分(44b)で折り畳まれることにより並列状態で並んだ前記複数のセグメントチューブ(44a)を、遠心処理時に遠心力が作用する方向又は遠心力が作用する方向に対して傾斜した方向に沿って保持可能である、
ことを特徴とするセグメント保持部(86)。
【発明の概要】
【0004】
ところで、血液製剤の製造者によっては、製剤製造工程において、採取した血液が所定の品質基準を満たしているか否かの確認(品質確認)をする場合がある。このような品質確認を行うため、血液バッグ内に血液(乏白血球乏血小板血液)を移送した後、チューブシーラー等により、血液バッグに接続されたチューブにおいてその長手方向に間隔をおいた複数部分を溶着及び封止することで複数のセグメントチューブを形成する。複数のセグメントチューブは血液バッグとともに遠心分離機に装着される。遠心処理によって、各セグメントチューブ内の血液は赤血球(赤血球層)と血漿(血漿層)とに分離される。
【0005】
品質確認は、遠心処理後の各セグメントチューブ内の赤血球層を見て、赤血球層の長さが所定長さ以上あるか否かの目視判定により行う。したがって、上記の品質確認を行うためには、各セグメントチューブ内で赤血球と血漿との境界である分離面がきれいに形成されること(セグメントチューブの長さ方向に沿って血漿と赤血球とが直列に並ぶこと)が必要である。しかし、遠心分離機内での各セグメントチューブの姿勢(配置角度)が適切でないと各セグメントチューブ内の血液がきれいに分離しない場合がある。そうなると、目視判定による品質確認ができない。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、血液バッグシステムにおける各セグメントチューブ内の血液をきれいに分離することができる遠心分離機及びセグメント保持部を提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を達成するため、複数種類の血液成分を含む血液を収容可能なバッグを有する血液バッグシステムを収容するためのカップを備え、前記血液バッグシステムが収容された前記カップを回転させることにより血液バッグシステム内の血液を遠心分離する遠心分離機であって、前記血液バッグシステムは、前記バッグに接続されたチューブを含み、前記チューブはその延在方向に間隔をおいた複数部分で封止されることにより互いに独立した内腔を有する複数のセグメントチューブが形成されるようになっており、前記カップは、前記チューブが複数の封止部分で折り畳まれることにより並列状態で並んだ前記複数のセグメントチューブを、遠心処理時に遠心力が作用する方向又は遠心力が作用する方向に対して傾斜した方向に沿って保持可能なセグメント保持部を有する、ことを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された本発明の遠心分離機によれば、遠心処理時において、遠心力が作用する方向に対して適切な方向に複数のセグメントチューブを保持するので、各セグメントチューブ内の血液を複数層にきれいに分離することができる。よって、遠心処理後において、セグメントチューブ内の血液の目視判定による品質確認を行うことができる。
【0009】
上記の遠心分離機において、前記カップは、バッグ収容部を有するカップ本体を有し、前記セグメント保持部は、前記カップ本体に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0010】
この構成により、遠心処理をした血液バッグシステムを遠心分離機から取り出した後においても、複数のセグメントチューブをセグメント保持部に保持させたままにしておくことで、バッグから延びるチューブをぶら下げても、各セグメント内の血液の分離面を維持できる。よって、目視判定による品質確認を支障なく行うことができる。また、血液バッグシステムを遠心分離器に装着する前に、複数のセグメントを折り畳んでセグメント保持部にセットすることで、装着時間を短縮することができる。
【0011】
上記の遠心分離機において、前記セグメント保持部は、遠心処理後の前記セグメントチューブ内の血球層の長さが所定長さ以上であるか否かを判定するためのリファレンス部を有していてもよい。
【0012】
この構成により、リファレンス部を参照することで、目視判定による品質確認を容易に行うことができる。
【0013】
上記の遠心分離機において、前記セグメント保持部は、透明材料で構成された中空筒状の保持部本体を有し、前記保持部本体の周壁部に前記リファレンス部が設けられていてもよい。
【0014】
この構成により、セグメント保持部の外側から透明な保持部本体を通してセグメントチューブ内の血球層を見つつリファレンス部を参照することで、目視判定による品質確認を一層迅速且つ簡易に行うことができる。
【0015】
また、本発明は、複数種類の血液成分を含む血液を収容可能なバッグを含む血液バッグシステムを収容するためのカップを備え、前記血液バッグシステムが収容された前記カップを回転させることにより前記血液バッグシステム内の血液を遠心分離する遠心分離機に配置されるセグメント保持部であって、前記血液バッグシステムは、前記バッグに接続されたチューブを含み、前記チューブはその延在方向に間隔をおいた複数部分で封止されることにより互いに独立した内腔を有する複数のセグメントチューブが形成されるようになっており、前記カップは、前記チューブが複数の封止部分で折り畳まれることにより並列状態で並んだ前記複数のセグメントチューブを、遠心処理時に遠心力が作用する方向又は遠心力が作用する方向に対して傾斜した方向に沿って保持可能である、ことを特徴とする。
【0016】
上記のセグメント保持部において、前記カップは、バッグ収容部を有するカップ本体を有し、前記カップ本体に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0017】
上記のセグメント保持部において、遠心処理後の前記セグメントチューブ内の血球層の長さが所定長さ以上であるか否かを判定するためのリファレンス部を有していてもよい。
【0018】
上記のセグメント保持部において、透明材料で構成された中空筒状の保持部本体を有していてもよい。
【0019】
本発明の遠心分離機及びセグメント保持部によれば、血液バッグシステムにおける各セグメントチューブ内の血液をきれいに分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る遠心分離機及びセグメント保持部について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
本発明の実施形態に係る遠心分離機70(
図3等)の構成を説明する前に、
図1に示す血液バッグシステム10について説明する。この血液バッグシステム10は、複数の成分を含有する血液を比重の異なる複数の成分(例えば、軽比重成分及び重比重成分の2つの成分)に遠心分離し、各成分を異なるバッグに分けて収容、保存するためのものである。より具体的には、血液バッグシステム10は、全血から白血球及び血小板を除去した後の血液(乏白血球乏血小板血液)を血漿及び濃厚赤血球の2つの成分に遠心分離し、血漿及び濃厚赤血球を異なるバッグに分けて収容、保存するように構成されている。
【0023】
血液バッグシステム10は、ドナーから血液(全血)を採取する血液採取部12と、全血から所定の血液成分を除去する前処理部14と、所定成分が除去された残余の血液成分を遠心分離して複数の血液成分に分けるとともに各成分を異なるバッグに収容(貯留)する分離処理部16とを有する。
【0024】
血液採取部12は、採血バッグ18と、採血チューブ20、22と、採血針24と、分岐コネクタ26と、初流血バッグ28とを有する。
【0025】
採血バッグ18は、ドナーから採取した血液(全血)を収容(貯留)するための軟質のバッグである。採血バッグ18内には、予め抗凝固剤が入れられていることが好ましい。
【0026】
一端が採血バッグ18に接続された採血チューブ20には、採血チューブ20の流路を閉塞及び開放するクランプ30が設けられている。採血チューブ20の他端には、封止部材32を介して分岐コネクタ26が接続されている。封止部材32は、初期状態では流路が閉塞しているが、破断操作を行うことで流路が開通するように構成されたものである。
【0027】
分岐コネクタ26に一端が接続された採血チューブ22の他端には、採血針24が接続される。採血針24には、使用前まではキャップ24aが装着されている。採血針24の使用後は、採血チューブ22に沿ってニードルガード24bを移動させることで、採血針24がニードルガード24bに覆われる。
【0028】
分岐コネクタ26に一端が接続された分岐チューブ34には、分岐チューブ34の流路を閉塞及び開放するクランプ36が設けられる。分岐チューブ34の他端には、初流血バッグ28が接続される。初流血バッグ28にはサンプリングポート38が接続される。なお、分岐コネクタ26の向きや配置は、
図1の構成に限られず、適宜変更可能である。
【0029】
前処理部14は、所定細胞を除去するフィルタ40と、一端が採血バッグ18に接続され他端がフィルタ40の入口に接続された入口側チューブ42と、一端がフィルタ40の出口に接続され他端が分離処理部16に接続された出口側チューブ44とを有する。
【0030】
本実施形態では、フィルタ40は、白血球除去フィルタとして構成されている。このような白血球除去フィルタとしては、軟質樹脂シートから形成された袋状のハウジング内に、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な孔を有した通液性のある多孔質体を収容した構造のものを用いることができる。本実施形態では、フィルタ40は、血小板も補足できるように構成されている。
【0031】
入口側チューブ42の、採血バッグ18側の端部には、上述した封止部材32と同様の構成及び機能を有する封止部材46が設けられている。出口側チューブ44には、出口側チューブ44の流路を閉塞及び開放するクランプ48が設けられている。
【0032】
分離処理部16は、フィルタ40で所定細胞が除去された後の血液を収容(貯留)する親バッグ50と、親バッグ50内の血液を遠心分離して得られた上清成分を収容及び保存する子バッグ52と、添加液である赤血球保存液M(以下「保存液M」という)を収容する薬液バッグ54と、親バッグ50、子バッグ52及び薬液バッグ54に接続された移送ライン55とを有する。
【0033】
親バッグ50は、フィルタ40で所定細胞が除去された後の血液を収容(貯留)するためのバッグと、当該血液成分を遠心分離して得られた沈降成分(濃厚赤血球)を保存するためのバッグとを兼ねている。
【0034】
移送ライン55は、親バッグ50に接続された第1チューブ56と、子バッグ52に接続された第2チューブ58と、薬液バッグ54に接続された第3チューブ60と、第1〜第3チューブ56、58、60に接続された分岐コネクタ62(分岐部)とを有する。
【0035】
第1チューブ56の一端部(親バッグ50側の端部)には、上述した封止部材32と同様の構成及び機能を有する封止部材66が設けられており、破断操作が行われるまで、親バッグ50内の血液成分が他のバッグに移行することを防止する。
【0036】
第1チューブ56の他端部は、分岐コネクタ62の第1ポート62aと接続している。分岐コネクタ62の第2ポート62bには、第2チューブ58の一端が接続されている。分岐コネクタ62の第3ポート62cには、第3チューブ60の一端が接続されている。
【0037】
薬液バッグ54に収容される保存液Mとしては、例えば、MAP液、SAGM液、OPTISOL等が使用される。第3チューブ60の薬液バッグ54側の端部には、上述した封止部材32と同様の構成及び機能を有する封止部材68が設けられており、薬液バッグ54内の保存液Mが他のバッグに移行することを防止している。
【0038】
血液バッグシステム10における各チューブは、透明で可撓性を有する樹脂製のチューブである。
【0039】
図1に示す血液バッグシステム10を使用してドナーから血液(全血)を採取し、採取した血液から白血球及び血小板を除去し、残余の成分(乏白血球乏血小板血液)を血漿及び濃厚赤血球の2層に分離し、さらに、分離した成分ごとにバッグに分けて貯留する処理は、例えば、以下の手順によって行うことができる。
【0040】
まず、採血針24をドナーの皮膚に穿刺して、ドナーから血液を採取する採血工程を行う。採血工程では、採血バッグ18への血液の採取に先行して、ドナーからの血液の初流(採血初流)を所定量だけ初流血バッグ28に収容する。この場合、封止部材32を閉塞状態(初期状態)としたまま、クランプ36を開放状態とする。こうすることで、採血チューブ20側、すなわち採血バッグ18側への採血初流の流入が阻止される一方、採血チューブ22、分岐コネクタ26及び分岐チューブ34を経由して採血初流を初流血バッグ28に導入することができる。
【0041】
次に、サンプリングポート38に図示しない採血管を装着することにより、当該採血管に採血初流を採取する。採取した採血初流は、検査用血液として使用される。なお、用途によっては、分岐コネクタ26からサンプリングポート38までの部分は省略されてもよい。
【0042】
採血初流を採取し終えたら、クランプ36により分岐チューブ34を閉塞し、封止部材32に対して破断操作を行って、採血チューブ20の流路を開通させる。このとき、クランプ30を開放状態としておくと、ドナーからの血液は、採血チューブ22と採血チューブ20とを順に経由して採血バッグ18に流入する。
【0043】
所定量の血液を採血バッグ18に採取及び貯留したら、採血バッグ18内の血液が流出しないように、クランプ30により採血チューブ20を閉塞する。そして、チューブシーラー等によって採血チューブ20を溶着及び封止した後に採血チューブ20を封止した部分で切断する。
【0044】
次に、採血バッグ18を相対的に上方位置とし、親バッグ50を相対的に下方位置とし、その中間位置にフィルタ40を配置してから、封止部材46に対して破断操作を行って、入口側チューブ42の流路を開通させる。これにより、採血バッグ18内の全血は、入口側チューブ42を介してフィルタ40に流入し、フィルタ40を通る過程で白血球及び血小板が除去される。白血球及び血小板が除去された血液は、出口側チューブ44を介して親バッグ50に流入する。
【0045】
その後、チューブシーラー等によって、出口側チューブ44をクランプ48より下流側の位置で溶着及び封止したうえで、出口側チューブ44を封止した部分で切断する。また、遠心処理後に品質確認を行うために、
図2のように、親バッグ50に接続された出口側チューブ44において、その延在方向に間隔をおいた複数部分をチューブシーラー等により溶着及び封止することにより、複数(図示例では7個)のセグメントチューブ44aを形成する。
【0046】
複数のセグメントチューブ44aは、互いに独立した内腔(液室)を有しており、各内腔内にはフィルタ40による濾過後の血液が封入された状態となっている。各セグメントチューブ44aは、同一長さであり、例えば、60〜80mmの長さに形成される。
【0047】
次に、親バッグ50に採取した血液を、血漿及び濃厚赤血球に分離する遠心工程(遠心処理)を実施するために、分離処理部16及び出口側チューブ44(セグメントチューブ44aを構成する出口側チューブ44)を
図3に示す遠心分離機70に装着する。以下、説明の便宜上、血液バッグシステム10のうち遠心処理の対象となる部分、すなわち親バッグ50を含む分離処理部16及び出口側チューブ44を「血液バッグシステム10a」という。
【0048】
本実施形態に係る遠心分離機70は以下のように構成されている。遠心分離機70は、駆動源であるモータ72と、モータ72によって回転軸線aを中心に回転駆動されるロータ74と、ロータ74のアーム74aにピン76を介して懸垂支持された複数のバケット78と、血液バッグシステム10を収容可能であり各バケット78に装填されるカップ80と、これらを収容するハウジング82とを備える。
【0049】
バケット78は、上方に開口した有底筒状に構成されている。バケット78は、その上部にてピン76を介してロータ74のアーム74aに回転自在に支持されている。したがって、ロータ74の停止時(非回転時)には、バケット78は
図3の実線で示すように縦向き(鉛直姿勢)となっている。一方、ロータ74の回転時には、バケット78は遠心力の作用下に、
図3の仮想線で示すように横向き(水平姿勢)となる。
【0050】
図4に示すように、カップ80は、バッグ収容部85、85a、87を有するカップ本体84と、カップ本体84に対して着脱可能に構成されたセグメント保持部86とを備える。
【0051】
各バッグ収容部85、85a、87は、上方に開口した有底の穴の形態に形成されている。最も大きいバッグ収容部85は、親バッグ50を縦向きに収容するのに適した形状に形成されている。バッグ収容部86は、子バッグ52を収容するのに適した形状に形成されている。バッグ収容部87は、薬液バッグ54を収容するのに適した形状に形成されている。なお、カップ本体84に設けられるバッグ収容部は1つだけであってもよい。
【0052】
カップ本体84は、セグメント保持部86が着脱可能な装着部90を有する。本実施形態の場合、装着部90は、カップ本体84の軸方向(高さ方向)に沿って延在するとともに上方に開口した有底の穴の形態に形成されている。カップ本体84の軸方向は、遠心分離機70の遠心動作時(ロータ74の回転時)に遠心力が作用する方向と平行である。セグメント保持部86を装着部90に挿入する際、装着部90の底部90aにセグメント保持部86の底面が当接することにより、セグメント保持部86を所定位置にて停止させる。
【0053】
装着部90を形成する内壁面にセグメント保持部86を係止する突起を設け、この突起によりセグメント保持部86を所定位置にて停止させてもよい。なお、装着部90は、カップ本体84の外周面に設けられてもよい。
【0054】
本実施形態の場合、セグメント保持部86は、出口側チューブ44が封止部分44bで折り畳まれることにより並列状態に並んだ複数のセグメントチューブ44a(
図5参照)を、遠心処理時に遠心力が作用する方向に沿って保持可能に構成されている。
【0055】
セグメント保持部86は、並列状態に並んだ複数のセグメントチューブ44aを収納するのに適した形状に形成されている。本実施形態の場合、セグメント保持部86は、一端(
図5で上端)が開口し他端(
図5で下端)が閉じた収容室86bを有し、中空筒状(
図5では中空円筒形状)に形成されている。並列状態に並んだ複数のセグメントチューブ44aがセグメント保持部86に収納された状態では、封止部分44bの弾性力で複数のセグメントチューブ44aが広がろうとする力により、セグメント保持部86の内周面に複数のセグメントチューブ44aが押し付けられる。
【0056】
セグメント保持部86は、遠心処理時にセグメントチューブ44aがはみ出ず、セグメントチューブ44aがよれず、セグメントチューブ44a内の血液の分離面98(
図7参照)をきれいに形成できるように、適切に寸法設定がされている。例えば、セグメント保持部86の内径D(収容室86bの直径)は、10〜30mmに設定され、好ましくは、15〜25mmに設定される。また、収容室86bの長さLは、60〜150mmに設定され、好ましくは、80〜100mmに設定される。
【0057】
図4及び
図5において、セグメント保持部86は、透明材料で構成された中空筒状の保持部本体92と、保持部本体92の周壁部に設けられたリファレンス部94とを有する。
【0058】
リファレンス部94は、遠心処理後のセグメントチューブ44a内の赤血球層が所定長さ以上(例えば、セグメントチューブ44aの長さ方向に15mm以上)であるか否かを判定するための手段であり、
図5では複数の目盛線を有する目盛部94Aの形態を有する。
【0059】
図6のように、セグメント保持部86に設けられるリファレンス部94は、保持部本体92の長さ方向に沿って所定長さ(例えば、15mm)をもつ基準マーカ94Bの形態を有してもよい。基準マーカ94Bは、セグメント保持部86の下端寄りの箇所に設けられている。基準マーカ94Bは、周方向に1つだけ設けられてもよいが、
図6のように周方向に間隔をおいて複数設けられるとよい。
図6に示す基準マーカ94Bは帯状(矩形状)に形成されているが、線状に形成されてもよい。
【0060】
上記のように構成された遠心分離機70に、上述した血液バッグシステム10a(フィルタ40による濾過後の血液が親バッグ50内に収容されるとともに、親バッグ50に接続された出口側チューブ44の複数のセグメントチューブ44a内に血液が封入された状態のもの)を装着する。
【0061】
この場合、まず、
図5のように、出口側チューブ44を封止部分44bで交互に折り曲げて、複数のセグメントチューブ44aを並列状態に束ねる。そして、セグメント保持部86の開口部86aを介して、セグメント保持部86の内側に束ねた状態の複数のセグメントチューブ44aを挿入する。これにより、各セグメントチューブ44aは、セグメント保持部86の長さ方向を向く状態でセグメント保持部86の内側(収容室86b)に保持される。
【0062】
次に、カップ本体84のバッグ収容部85、85a、87に、親バッグ50、子バッグ52及び薬液バッグ54をそれぞれ挿入するとともに、複数のセグメントチューブ44aが保持されたセグメント保持部86をカップ本体84の装着部90に装着する。そして、この状態のカップ80を、停止状態の遠心分離機70のバケット78内に装填する。なお、カップ本体84に設けるバッグ収容部の数は任意であり、どのバッグ収容部にどのバッグを収容するかも任意に決定してよい。
【0063】
次に、遠心分離機70において、モータ72の駆動作用下にロータ74を回転軸線aを中心に回転させる。このときの遠心分離機70の状態を模式的に示したのが
図7である。
図7のように、バケット78は、回転軸線aを中心に回転しながら、遠心力によって、バケット78内に装填されたカップ80と一緒に、回転軸線aに対して垂直な方向(水平方向)にスイングする。
【0064】
回転軸線aを中心とした回転に伴って、カップ80に収容された親バッグ50内の血液、及びセグメント保持部86に保持された各セグメントチューブ44a内の血液は、カップ80の底方向に遠心力を受ける。これにより、血液は、比重の差によって、軽比重成分の血漿と重比重成分の赤血球(濃厚赤血球)とに遠心分離される。血漿と赤血球との境界には分離面98が形成される。所定の遠心分離が行われたら、遠心分離機70はモータ72を減速して停止させる。
【0065】
その後、遠心処理後の血液バッグシステム10aを遠心分離機70から取り出す。具体的には、まず、血液バッグシステム10aを収納したカップ80をバケット78から抜き取り、遠心分離機70の外に取り出す。次に、複数のセグメントチューブ44aをセグメント保持部86に保持させたまま、セグメント保持部86をカップ本体84の装着部90から離脱させる(抜き取る)。これにより、血液バッグシステム10aを遠心分離機70から取り出した後においても、複数のセグメントチューブ44aは並列状態に束ねられた状態が保持される。
【0066】
次に、移送ライン55を介して親バッグ50から子バッグ52へと血漿を移送して赤血球を親バッグ50に残す分離移送工程を実施する。分離移送工程が終了したら、チューブシーラー等により第2チューブ58を溶着及び封止し、封止部分44bを切断することによって子バッグ52を切り離す。なお、本実施形態の遠心分離機70は、上述した遠心工程だけでなく、分離移送工程を自動で行うように構成されてもよい。
【0067】
次に、保存液Mを親バッグ50内の赤血球(濃厚赤血球)に添加する添加工程を実施する。具体的には、薬液バッグ54を相対的に上方に位置させ、親バッグ50を相対的に下方に位置させることにより、保存液Mを移送ライン55を介して落差で薬液バッグ54から親バッグ50へと移送する。
【0068】
ところで、採取した血液の品質確認のため、遠心分離機70による血液バッグシステム10aの遠心処理後、各セグメントチューブ44a内の赤血球層の長さが所定長さ以上あるか否かを目視判定する。このような目視判定による品質確認を適正に行うためには、すべてのセグメントチューブ44a内において、血液が血漿と赤血球とにきれいに分離していること(セグメントチューブ44aの長さ方向に血漿と赤血球とが直列に並んでいること)が必要である。
【0069】
本実施形態の遠心分離機70では、遠心処理時において、遠心力が作用する方向に沿って複数のセグメントチューブ44aをセグメント保持部86により保持するので、
図7のように、各セグメントチューブ44a内の血液を血漿と赤血球とにきれいに分離することができる。よって、遠心処理後において、セグメントチューブ44a内の血液の目視判定による品質確認を行うことができる。
【0070】
この場合、セグメント保持部86では、透明材料で構成された保持部本体92にリファレンス部94が設けられている(
図4及び
図5)。このため、セグメント保持部86の外側から透明な保持部本体92を通して各セグメントチューブ44a内の赤血球層を見つつリファレンス部94を参照することにより、赤血球層の長さが所定長さ以上あるか否かを判定することができる。具体的には、
図5のように、リファレンス部94が目盛部94Aの形態を有する場合、目盛部94Aを参照して測った赤血球層の長さが所定長さ以上であるか否かにより上記判定を行うことができる。
図6のように、リファレンス部94が基準マーカ94Bの形態を有する場合、赤血球層の長さが基準マーカ94Bよりも長いか否かにより上記判定を行うことができる。
【0071】
なお、セグメント保持部86は、カップ本体84の軸方向に対して傾斜して装着されることにより、出口側チューブ44が封止部分44bで折り畳まれることにより並列状態に並んだ複数のセグメントチューブ44aを、遠心処理時に遠心力が作用する方向に対して傾斜した方向に沿って保持してもよい。
【0072】
本実施形態と異なり、セグメント保持部86がカップ本体84から取り外せない構成であってもよい。このような構成では、遠心処理をした血液バッグシステム10aを遠心分離機70から取り出した後において、親バッグ50から延出する出口側チューブ44をぶら下げた場合、複数のセグメントチューブ44aが直列状に垂下する(上下方向に伸びる)ことになる。このとき、複数のセグメントチューブ44aのうち2つに1つは、重比重成分である赤血球が下方に存在し、軽比重成分である血漿が上方に存在することになる。このため、出口側チューブ44をぶら下げた状態が継続すると、重力によって徐々に血漿と赤血球とが混ざり合って分離面98が消失してしまう。
【0073】
これに対し、本実施形態では、セグメント保持部86は、カップ本体84に対して着脱可能に構成されているので、各セグメントチューブ44a内の血液の分離面98を維持できる。すなわち、遠心処理をした血液バッグシステム10aを遠心分離機70から取り出した後においても複数のセグメントチューブ44aをセグメント保持部86に保持させておく。こうすることで、親バッグ50から延びる出口側チューブ44をぶら下げて放置した場合でも、セグメント保持部86によって保持された各セグメントチューブ44a内では、重比重成分である赤血球が下方に存在し、軽比重成分である血漿が上方に存在する。このため、重力によって血漿と赤血球とが混ざり合って分離面98が消失することがない。よって、目視判定による品質確認を支障なく行うことができる。
【0074】
また、本実施形態の場合、血液バッグシステム10aを遠心分離機70に装着する前に、複数のセグメントチューブ44aをセグメント保持部86にセットすることで、血液バッグシステム10aの装着時間を短縮することができる。
【0075】
本実施形態の場合、セグメント保持部86は、遠心処理後のセグメントチューブ44a内の赤血層の長さが所定長さ以上であるか否かを判定するためのリファレンス部94を有するので、目視判定による品質確認を容易に行うことができる。特に、透明材料で構成された中空筒状の保持部本体92の周壁部にリファレンス部94が設けられている。この構成により、セグメント保持部86の外側から透明な保持部本体92を通してセグメントチューブ44a内の血球層を見つつリファレンス部94を参照することで、目視判定による品質確認を一層迅速且つ簡易に行うことができる。
【0076】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。