(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672272
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/656 20060101AFI20200316BHJP
B01J 23/648 20060101ALI20200316BHJP
B01J 23/644 20060101ALI20200316BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20200316BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20200316BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20200316BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20200316BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20200316BHJP
H01M 4/86 20060101ALN20200316BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20200316BHJP
【FI】
B01J23/656 M
B01J23/648 M
B01J23/644 M
B01J23/46 M
B01J37/00 F
B01J35/10 301G
H01M4/90 X
H01M4/88 K
!H01M4/86 M
!H01M8/10 101
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-513063(P2017-513063)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-533084(P2017-533084A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】GB2015052584
(87)【国際公開番号】WO2016038349
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年8月14日
(31)【優先権主張番号】1415846.3
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512269535
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、フュエル、セルズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY FUEL CELLS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オマリー, レイチェル ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッコ, エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, サイモン
【審査官】
▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−510993(JP,A)
【文献】
特表2014−504433(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/020349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
H01M 4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池における酸素発生反応を促進するための、 酸化イリジウム及び金属酸化物(M酸化物)の粒子を含む触媒であって、金属酸化物が、第4族金属酸化物、第5族金属酸化物、第7族金属酸化物及び酸化アンチモンからなる群より選択され、触媒の表面積が≧50m2/gであり、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子がd90≦15nmを有する、触媒。
【請求項2】
金属酸化物が、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化マンガン及び酸化ニオブからなる群より選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
金属酸化物における金属に対するイリジウムの原子比率が80:20から40:60である、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
燃料電池における酸素発生反応を促進するための触媒であって、触媒の表面積が≧50m2/gであり、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子がd90≦15nmを有することを特徴とする、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む、触媒。
【請求項5】
燃料電池における酸素発生反応を促進するための、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒を調製するための方法であって、金属酸化物が、第4族金属酸化物、第5族金属酸化物、第7族金属酸化物及び酸化アンチモンからなる群より選択され、前記方法が、前駆体混合物を火炎噴霧熱分解に供することを含み、前駆体混合物が、溶媒、酸化イリジウム前駆体及び金属酸化物前駆体を含み、触媒の表面積が≧50m2/gである、方法。
【請求項6】
アニーリング工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒及び電解触媒を含む触媒層。
【請求項8】
ガス拡散層及び請求項7に記載の触媒層を含むガス拡散電極。
【請求項9】
イオン伝導性膜及び請求項7に記載の触媒層を含む触媒化膜。
【請求項10】
キャリア/転写基材及び請求項7に記載の触媒層を含む触媒化キャリア/転写基材。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒、又は請求項7に記載の触媒層、又は請求項8に記載のガス拡散電極、又は請求項9に記載の触媒化膜を含む膜電極アセンブリ。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒、請求項7に記載の触媒層、請求項8に記載のガス拡散電極、請求項9に記載の触媒化膜、又は請求項11に記載の膜電極アセンブリを含む、電気化学デバイス。
【請求項13】
酸素発生反応を触媒するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒の使用。
【請求項14】
電気化学デバイスにおける、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒の使用。
【請求項15】
電気化学デバイスが、高い電気化学電位に曝される電極を有する燃料電池である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な酸素発生反応触媒と、電気化学用途、特にプロトン交換膜燃料電池におけるその使用とに関する。本発明はさらに、そのような新規酸素発生反応触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質によって分離された2つの電極を備える電気化学電池である。例えば水素、メタノール又はエタノールのようなアルコール、又はギ酸といった燃料はアノードに供給され、酸素又は空気のようなオキシダントはカソードに供給される。電気化学反応は電極で起こり、燃料及びオキシダントの化学エネルギーは電気エネルギー及び熱に変換される。電解触媒は、アノードにおける燃料の電気化学的酸化反応と、カソードにおける酸素の電気化学的還元反応を促進するために使用される。
【0003】
燃料電池は通常、用いられる電解質の性質に従って分類される。電解質は、膜が電子的に絶縁性であるがイオン的には伝導性である固体高分子膜であることが多い。プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)では、膜はプロトン伝導性であり、プロトンは、アノードで生成されて、膜を横切ってカソードへ搬送され、カソードにおいて酸素と結合して水を形成する。
【0004】
PEMFCの主要な成分は膜電極アセンブリ(MEA)であり、これは基本的に五層から構成される。中心層は、ポリマーイオン伝導性膜である。イオン伝導性膜のどちらかの面に電解触媒層があり、特定の電解反応のために設計された電解触媒を含んでいる。最後に、各電解触媒層に隣接してガス拡散層が存在する。ガス拡散層は、反応物質が電解触媒層に到達できるようにしなければならず、かつ、電気化学反応によって生じる電流を伝導しなければならない。したがって、ガス拡散層は、多孔性かつ電気伝導性でなければならない。
【0005】
燃料の酸化反応及び酸素の還元反応のための電解触媒は、一般に、白金又は一又は複数の他の金属を用いて合金化される白金を基礎とする。白金触媒又は白金合金触媒は、不担持のナノ微粒子(メタルブラック又は他の不担持の金属微粒子粉末など)の形態でありうるか、又は伝導性炭素基材若しくは他の伝導性材料(担持触媒)の上にそれよりもさらに大きな表面積の粒子として付着されうる。
【0006】
通常、MEAは以下に概略が説明される多くの方法によって構築することができる:
(i)電解触媒層はガス拡散層に塗布されて、ガス拡散電極を形成しうる。ガス拡散電極は、イオン伝導性膜の両側に配置され、一緒に積層化されて、5層のMEAを形成する。
(ii)電解触媒層は、イオン伝導性膜の両面に塗布され、触媒でコーティングされたイオン伝導性膜を生成しうる。その後、ガス拡散層は、触媒でコーティングされたイオン伝導性膜の両面に塗布される。
(iii)MEAは、一方の面が電解触媒層でコーティングされたイオン伝導性膜、電極触媒層に隣接するガス拡散層、及びイオン伝導性膜の他方の面上のガス拡散電極から形成することができる。
【0007】
典型的には、大抵の用途にとって十分な電力を供給するためには数十の又は数百ものMEAが必要とされ、そのため、燃料電池スタックを作り上げるために多数のMEAが接合される。流動場プレートが、MEAを分離するために使用される。このプレートは、いくつかの機能、すなわち、MEAへの反応物質の供給、生成物の取り出し、電気的接続の提供、及び物理的な支持の提供を果たす。
【0008】
カソードが酸素還元反応を促進し、アノードが水素酸化反応を促進する通常の燃料電池の作動では、電極の電位は、可逆水素電極(RHE)のような標準の水素電極に対し、それぞれ典型的に0.9〜0.6V及び0.0〜0.1Vである。しかしながら、複数の現実の作動状況においては、アノード又はカソードにおいて他の反応が断続的に促進されることがあり、またこれらは、アノード又はカソードのいずれにおいても、1.0Vを超える、又は場合によっては2.0Vを超える、望ましくない程高い電気化学的電位で発生しうる。このような高い電位は、層内に存在する炭素(触媒の担体材料など)の腐食に起因する電解触媒層/電極構造への不可逆的な損傷、及び高電位エクスカーションの間に生じるさまざまな金属焼結分解機構に起因するナノ粒子電解触媒金属の活性表面積の損失を引き起こしうる。このような作動状況は十分に文書化されているが、以下が含まれる:
(i)セル反転:燃料電池は、時折、アノードへの燃料供給の一時的な減少によってしばしば引き起こされる電圧反転(セルが反対の極性に付勢される)を被る。これは、その後、カソードにおける酸素還元反応よりも高い電位で発生するアノードにおける炭素の電気的酸化といった、電流の生成を維持するために生じる一時的な望ましくない電気化学反応を引き起こす。このようなセル反転状況において(たとえ極めて短い期間であっても)、炭素の酸化によりアノード構造が不可逆的に損傷を受け、それにより電解触媒担体が失われる可能性がある。
(ii)スタートアップ/シャットダウン:燃料電池がしばらくの間アイドリングしている場合、空気に由来する酸素がカソード側から膜を通って拡散し、アノード側に依然として存在する任意の残留水素が移動する可能性が十分にある。セルが再起動され、水素がアノード内に再導入されるときに、空気がアノードから完全にパージされるまで、水素/空気の混合組成が、セルを通って移動するフロントとして、短時間の間アノードに存在する。入口側で水素に富み、出口側で空気に富んだフロントの存在は、カソード側で炭素の電気的酸化を高電位で生じさせ、アノードの出口側で酸化還元に対する逆反応が生じるように、燃料電池内に内部電気化学電池を設定することができる。このようなスタートアップ状態では、カソード構造は、炭素の酸化に起因して不可逆的に損傷を受ける場合があり、ひいてはカソード触媒層構造の永久劣化を生じうる。同様に損傷を与える電気化学電池は、シャットダウンにおいても設定されうる。このようなプロセスは、システム緩和戦略を採用することにより、例えばシャットダウンの間に窒素のような不活性ガスでアノードのガス空間をパージすることにより、制限することが可能であるが、MEAによる解決策によりこのようなシステム複雑化の必要性は緩和される。
【0009】
高い電気化学的電位の発生に関連した問題に対処するために提案される解決策は、通常の電解触媒担体よりも酸化性の腐食に対して高い耐性を有する電解触媒担体の採用、又は、酸素発生反応(水の電気分解)などの損傷を与える炭素の電気的酸化反応の存在下、高い電気化学的電位で生じうる代替的な酸化反応に活性を有する追加的な電解触媒組成物の取り込みを含む。
【発明の概要】
【0010】
国際公開第2011/021034号には、イリジウム又は酸化イリジウムと、一又は複数の金属M又はその酸化物とを含む酸素発生反応(水電解)の触媒が記載されており、この場合Mは遷移金属及びSn(但しルテニウムを除く)からなる群より選択される。これら触媒は、通常の方法により作製される。
【0011】
本発明の目的は、国際公開第2011/021034号に開示されるものより改善された酸素発生反応能力を有する酸素発生反応の触媒を提供することである。
【0012】
本発明は、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒を提供するもので、前記触媒は前駆体混合物を火炎噴霧熱分解に供することにより得られ、前駆体混合物は、溶媒、酸化イリジウム前駆体及び金属酸化物前駆体を含む。
【0013】
本発明はさらに、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒の調製方法を提供し、前記方法は、前駆体混合物を火炎噴霧熱分解に供することを含み、前駆体混合物は、溶媒、酸化イリジウム前駆体及び金属酸化物前駆体を含む。
【0014】
本発明はさらに、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒、特に酸素発生反応を促進する触媒を提供し、この触媒は、触媒の表面積(BET)が≧50m
2/gであり、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子がd90≦15nmを有することを特徴とする。
【0015】
本発明はさらに、酸素発生反応を促進するための触媒の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の触媒を含有する電極の電位が2.0V vs RHE(可逆水素電極)に到達するまでに要した時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本発明の好ましい及び/又は任意選択的な特徴を規定する。本発明のいずれの態様も、文脈がそれ以外を要求しない限り、本発明の他のいずれかの態様と組み合わせることができる。文脈がそれ以外を要求しない限り、任意の態様の好ましい又は任意選択的な特徴のいずれもが、単独で又は組み合わせで、本発明の任意の態様と組み合わせることができる。
【0018】
本発明は、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒を提供するもので、この触媒は、前駆体混合物を火炎噴霧熱分解に供することにより調製され、前駆体混合物は、溶媒、酸化イリジウム前駆体及び金属酸化物前駆体を含む。
【0019】
適切には、酸化イリジウムは式IrO
2のものである。
【0020】
金属酸化物は、第4族の金属酸化物(例えば酸化チタン)でもよい。
【0021】
金属酸化物は、第5族の金属酸化物(例えば酸化タンタル又は酸化ニオブ)でもよい。
【0022】
金属酸化物は、第7族の金属酸化物(例えば酸化マンガン)でもよい。
【0023】
金属酸化物は、酸化アンチモンでもよい。
【0024】
適切には、金属酸化物は、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化マンガン及び酸化ニオブからなる群より;さらに適切には、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化マンガン及び酸化ニオブからなる群より;さらに適切には酸化タンタルより選択される。
【0025】
金属酸化物における金属Mに対するイリジウムの原子比は、80:20から40:60、適切には75:25から50:50である。
【0026】
酸化イリジウム及び金属酸化物は適切には粒子として存在し、各粒子は酸化イリジウムと金属酸化物の両方を含み;物質には若干の合金化が生じている可能性があり、合金化が存在する場合、その範囲はX線回折により示される。しかしながら、酸化イリジウムと金属酸化物のうちの一方のみを含む粒子がいくらか存在してもよい。
【0027】
本発明の触媒は、好ましくは担持されないが、任意選択的にさらなる金属酸化物粒子上に担持されてもよい。
【0028】
本発明の触媒は、火炎噴霧熱分解技術を用いて調製される。このような技術は、従来技術に既知であり、適切な溶媒中における酸化イリジウム前駆体及び金属酸化物前駆体の溶液を提供すること、及びこの溶液を適切な速度で火炎中に送達することを含む。
【0029】
適切には、酸素分散速度は5から100l/分;さらに適切には10から70l/分;及び好ましくは20から40l/分である。
【0030】
適切には、前駆体供給速度は2.5から80ml/分;さらに適切には2.5から50ml/分;好ましくは5から10ml/分である。
【0031】
適切な酸化イリジウム前駆体には、イリジウム有機金属化合物、例えばイリジウムエチルヘキサノエート、イリジウムアセチルアセトネート及びイリジウムアセテートが含まれる。
【0032】
適切な金属酸化物前駆体には、有機金属化合物、例えば金属エトキシド、金属エチルヘキサノエート及び金属アセテートが含まれる。
【0033】
溶媒は、高い燃焼エンタルピーを有することが必要である。適切な溶媒には、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、酢酸/ベンジルアルコールブレンド、エタノール、メタノール、アセトニトリル、エチルヘキサン酸が含まれる。前駆体物質は、溶媒中に可溶であることが必要とされ、所与の前駆体に適切な溶媒の選択は、当業者の能力の範囲内にある。
【0034】
触媒は、火炎噴霧熱分解法を用いて形成された後、任意選択的にアニーリング工程に供してもよく、この工程において、触媒は、適切には400℃から700℃、好ましくは400℃から600℃に加熱される。適切には、追加の加熱工程が空気中で実行される。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、このような熱処理工程により触媒が安定化し、使用中に触媒から酸化イリジウムが溶解することが防止されると考える。さらに、このような熱処理工程により、触媒の混入物、例えばキャリア溶媒の不完全な燃焼により生じる残留炭素及び/又は前駆体物質又は溶媒中に痕跡レベルで存在するハロゲン化物種が除去されると考えられる。
【0035】
本発明のさらなる態様は、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒の調製方法を提供し、前記方法は、前駆体混合物を火炎噴霧熱分解に供することを含み、この前駆体混合物は、溶媒、酸化イリジウム前駆体及び金属酸化物前駆体を含む。方法はさらに、前述の任意選択的熱処理工程を含む。
【0036】
酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子は、適切には、≦15nm、適切には≦13nm、好ましくは≦12nmのd90を有する。酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子は、適切には、≦10nm、適切には≦8nm、好ましくは≦6nmのd50を有する。d90は、粒子の90%が、記述された寸法以下のサイズを有することを意味する。
【0037】
酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子は、適切には1から15nm、さらに適切には1から10nm、好ましくは2から8nmの平均粒子サイズを有する。それよりも大きな粒子が見られてもよいが、それらは異常であり、活性が低い。
【0038】
粒度分布は、当業者に既知の透過電子顕微鏡法を用いて決定することができる(例えば「透過電子顕微鏡法(TEM)を用いたナノ粒子のサイズの測定」NIST−NCLジョイントアッセイプロトコール、PCC−7)。粒度分布を提供するために、適切な既製のソフトウェアを備える較正済み透過型電子顕微鏡が使用される。
【0039】
本発明の触媒の表面積(BET)は、通常の噴霧乾燥法により作製されたアナログ式の触媒の表面積より大きい。本発明の触媒の表面積は、適切には≧50m
2/g、適切には≧60m
2/g;適切には≧75m
2/g;適切には≧80m
2/g;適切には≧85m
2/g;及び適切には≧90m
2/gである。表面積は、当業者に既知のBET法を用いて決定される;詳細は、‘Analytical Methods in Fine Particle Technology’, by Paul A. Webb and Clyde Orr, Micromeritics Instruments Corporation 1997に見ることができる。
【0040】
本発明はさらに、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子を含む触媒を提供し、この触媒は、触媒の表面積が≧50m
2/gであり、酸化イリジウム及び金属酸化物の粒子がd90≦15nmを有することを特徴とする。
【0041】
本発明の触媒は、酸素発生反応を触媒することに特定の有用性を有する:
H
2O−>
1/2O
2+2H
++2e
−
【0042】
したがって、酸素発生反応を触媒することに使用される本発明の触媒がさらに提供される。別の構成として、酸素発生反応を触媒するための本発明の触媒の使用、特に電極が高い電気化学的電位に曝される燃料電池における本発明の触媒の使用が提供される。
【0043】
本発明の触媒は、例えば燃料電池のような電気化学電池、特にPEMFCの、ガス拡散電極のための触媒層、又はPEMFCの触媒でコーティングされたイオン伝導膜に特定の用途を有する。したがって、本発明の触媒及び電解触媒を含む触媒層がさらに提供され;この電解触媒は水素酸化反応又は酸素還元反応を促進する。本発明の触媒及び電解触媒は、別個の層若しくは混合層として、又は二つの組み合わせとして、触媒層中に存在することができる。別個の層として存在する場合、層は、大部分の水が機能的MEA中に存在するところ(燃料電池の作動条件と全体のMEA配合とに大きく依存する)に本発明の触媒を含む層が存在するように、適切に配置される。
【0045】
白金は、一又は複数の他の白金族金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム)、金、銀若しくは卑金属、又は一又は複数の他の白金族金属、金、銀卑金属の酸化物を用いて合金化又は混合されてもよい。
【0046】
触媒層がアノード触媒層である場合、白金は、オスミウム、ルテニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、イリジウム、スズ、チタン又はロジウム;或いはこれらの酸化物のうちの一又は複数を用いて合金化される。
【0047】
触媒層がカソード触媒層である場合、白金は、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、イリジウム、銅、鉄又は亜鉛;或いはこれらの酸化物のうちの一又は複数を用いて合金化される。
【0049】
別の構成として、電解触媒は、炭素担持材料上に担持されてもよい。炭素担持材料は、粒子状又は繊維状物質、例えば、グラファイト、ナノファイバー、ナノチューブ、ナノグラフェンプレートレット、表面積の小さなカーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、熱処理済み又はグラファイト化(2000℃超)カーボンブラック又は他の高グラファイト炭素担体からなる群より選択される一又は複数の炭質材料とすることができる。
【0050】
別の構成として、電解触媒は、非炭質担体上に担持される。このような担体の例には、チタニア、ニオビア、アラウネ、タングステンカーバイド、酸化ハフニウム又は酸化タングステンが含まれる。このような酸化物及び炭化物は、その導電性を高めるために他の金属でドープしてもよく、例えばニオブでドープしたチタニアである。
【0051】
別の構成として、電解触媒は、本発明の触媒、即ち酸化イリジウム及び金属酸化物を含む触媒上に担持されてもよい。
【0052】
別の構成として、担持電解触媒と不担持電解触媒の混合物を使用することができ、この場合担持電解触媒の担体は、炭素、非炭質担体、本発明の触媒又はこれらの混合物とすることができる。
【0053】
電解触媒は、当業者に既知の方法により、例えば湿式化学法により作製することができる。
【0054】
触媒層は、追加の成分を含んでもよい。そのような成分には、限定されないが:層内部のイオン伝導性を向上させるために導入されるイオン伝導性ポリマー、例えばプロトン伝導性ポリマー;過酸化水素分解触媒;水輸送を制御するための疎水性添加剤(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなポリマー又は表面処理を行った若しくは行っていない無機固体)が含まれる。
【0055】
触媒層を調製するために、本発明の触媒、電解触媒及び任意の追加成分を、水性及び/又は有機溶媒中に分散させて、触媒インクが調製される。必要な場合は、粒子サイズの均一化を達成するために、高剪断混合、ミリング加工、ボールミル粉砕、マイクロフルイダイザー等に通すこと又はそれらの組み合わせなどの当技術分野で既知の方法で、粒子の破壊が行われる。
【0056】
触媒インクの調製後、インクを基材(例えばガス拡散層、イオン伝導性膜又はキャリア/転写基材)上に付着させて触媒層を形成する。インクは、当業者に既知の任意の適切な技術によって付着させることができ、そのような技術には、限定されないが、グラビアコーティング、スロットダイ(スロット、押し出し)コーティング、スクリーン印刷、回転スクリーン捺染、インクジェット印刷、噴霧法、ペインティング、バーコーティング、パッドコーティング、ギャップコーティング技術、例えばナイフ又はドクターブレードオーバーロール及びニードルジェットアプリケーションが含まれる。
【0057】
別の構成として、本発明の触媒を含むインク及び電解触媒を含む第2のインクを調製し、二つのインクを連続して基材上に付着させて、一つの層が本発明の触媒を含み、第2の層が電解触媒を含む、二つの別々の層を有する触媒層を提供する。別の構成として、一つのインクを第1の基材(例えばガス拡散基材)上に付着させて第1のインクを含む層を形成し;第2のインクを第2の基材(例えばイオン伝導性膜)上に付着させて第2のインクを含む層を形成し;次いで第1のインクを含む層と第2のインクを含む層を接触させて本発明の触媒層を形成する。
【0058】
厚さ、電解触媒のローディング、空隙率、細孔径分布、平均細孔寸法及び疎水性といった触媒層の特徴は、それがアノードに使用されるか又はカソードに使用されるかに依存するであろう。
【0059】
アノードに使用される場合、触媒層の厚さは、適切には≧1μm;さらに適切には≧2μm;好ましくは≧5μmである。触媒層は、適切には≦15μm;さらに適切には≦10μmである。
【0060】
カソードに使用される場合、触媒層は、適切には≧2μm;好ましくは≧5μmである。触媒層は、適切には≦20μm;さらに適切には≦15μmである。
【0061】
触媒層中の電解触媒からの白金のローディングは、それがアノードに使用されるか又はカソードに使用されるかに依存するであろう。
【0062】
アノードに使用される場合、触媒層中の白金のローディングは、0.02から0.2mgPt/cm
2、適切には0.02から0.15mgPt/cm
2、好ましくは0.02から0.1mgPt/cm
2である。
【0063】
カソードに使用される場合、触媒層中の白金のローディングは、0.05mgPt/cm
2から0.4mgPt/cm
2である。
【0064】
触媒層において、電解触媒中の白金に対する本発明の触媒中のイリジウムの重量比は0.01:1から10:1である。実際の比は、触媒層がアノードに使用されるか又はカソードに使用されるかに依存するであろう。アノード触媒層の場合、同比は、適切には0.05:1から10:1、好ましくは0.25:1から5:1である。カソード触媒層の場合、同比は、適切には0.1:1から1:1、好ましくは0.1:1から0.5:1である。
【0065】
触媒層は、ガス拡散層上に付着されて、ガス拡散電極を形成する。したがって、本発明のさらなる態様は、ガス拡散層及び本発明の触媒層を含むガス拡散電極を提供する。ガス拡散層は、適切には通常のガス拡散基材をベースとしている。典型的な基材には、炭素繊維と熱硬化樹脂のバインダーの網を含む不織布の紙又はウェブ(例えば、東レ株式会社から市販される炭素繊維紙のTGP−Hシリーズ又はドイツ国Freudenberg FCCT KGから市販されるH2315シリーズ、又はドイツ国SGL Technologies GmbHから市販されるSigracet(登録商標)シリーズ又はBallard Power Systems Inc.から市販されるAvCarb(R)シリーズ)、或いは織炭素布が含まれる。炭素の紙、ウェブ又は布には、湿潤性(親水性)を高めるため、又は防水性(疎水性)を高めるために、電極を製造して炭素の紙、ウェブ又は布をMEAに取り込む前に前処理を行うことができる。いずれの処理も、その性質は、燃料電池の種類と使用される作動条件によって決まる。基材は、液体懸濁液からの含浸によりアモルファスカーボンブラックのような材料を取り込むことにより湿潤性を高めることができるか、又は基材の孔構造にPTFE又はポリフルオロエチレンプロピレン(FEP)といったポリマーのコロイド懸濁液を含浸させた後、乾燥させ、ポリマーの融点を上回る温度に加熱することにより疎水性を高めることができる。PEMFCのような用途の場合、微多孔質層もガス拡散基材の電解触媒層と接触する面に適用できる。微多孔質層は、典型的にはカーボンブラックとポリテトラフロオロエチレン(PTFE)のようなポリマーの混合物を含む。
【0066】
別の構成では、触媒化膜を形成するために、触媒層は、イオン伝導性の膜の上に触媒インクを直接コーティングすることにより付着させる。したがって、本発明のさらなる態様は、イオン伝導性膜と本発明の触媒層を含む触媒化膜を提供する。イオン伝導性膜はPEMFCにおける使用に適したいずれの膜でもよく、例えば膜は、Nafion(登録商標)(DuPont)、Aquivion(登録商標)(Solvay−Plastics)、Flemion(登録商標)(旭硝子株式会社)及びAciplex(登録商標)(旭化成株式会社)などのペルフルオロ化スルホン酸材料をベースとするものであってもよい。あるいは、膜は、fumapem(登録商標)P、E又はKシリーズ製品としてFuMA−Tech GmbHから、JSR社、東洋紡社などから入手可能なものなど、スルホン化炭化水素膜をベースとするものであってもよい。あるいは、膜は、120℃から180℃の範囲で作動する、リン酸をドープしたポリベンゾイミダゾールに基づくものであってもよい。
【0067】
イオン伝導性膜の成分は、イオン伝導性膜成分に機械的強度を付与する一又は複数の物質を含むことができる。例えば、イオン伝導性膜の成分は、拡張PTFE材又はナノファイバー網といった多孔性補強材料を含むことができる。
【0068】
イオン伝導性膜は、一又は複数の過酸化水素分解触媒を、膜の片面若しくは両面上の層として又は膜内部に埋設させて含むことができる。使用に適した過酸化水素分解触媒の例は、当業者に既知であり、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化ビスマス、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化バナジウム及び酸化ランタンといった金属酸化物;適切には酸化セリウム、酸化マンガン又は酸化チタン;好ましくは酸化セリウム(セリア)を含む。
【0069】
イオン伝導性膜の成分は、任意選択的に、アノード及びカソードそれぞれから膜内に拡散して水を生成することのできる再結合触媒、特に未反応のH
2及びO
2の再結合のための触媒を含むことができる。適切な再結合触媒は、高表面積の酸化物担体材料(シリカ、チタニア、ジルコニアなど)上に金属(白金など)を含む。再結合触媒のさらなる例は、欧州特許第0631337号及び国際公開第00/24074号に開示されている。
【0070】
別の構成として、触媒層は、触媒インクを転写基材上にコーティングすることにより転写基材上に付着されて触媒化転写基材を形成する。したがって、本発明の別の態様は、転写基材及び本発明の触媒層を含む触媒化転写基材を提供する。転写基材は、後の工程で層から除去されることが意図される。例えば、触媒層は、デカール転写により、ガス拡散層又はイオン伝導性膜へと転写することができ、転写基材は、転写工程の直後に又は転写工程後の何らかの時点で除去される。
【0071】
別の構成として、触媒層は、触媒インクをキャリアフィルム上にコーティングすることによりキャリアフィルム上に付着されて、触媒化キャリアフィルムを形成する。したがって、本発明の別の態様は、キャリアフィルムと本発明の触媒を含む触媒化キャリアフィルムを提供する。キャリアフィルムの除去に先立ち、触媒層の暴露面上に追加の層を付着させることができる;例えばイオン伝導性イオノマー層を、触媒層の付着に関して上述したような既知の任意の適切な付着技術を用いたイオノマーの分散により適用することができる。例えば国際出願PCT/GB2015/050864に記載されるように、さらなる追加層を必要に応じて追加することができる。キャリアフィルムは、適切な時点で触媒層から除去される。
【0072】
キャリアフィルム及び/又は転写基材は、損傷を受けずに触媒層を除去することのできる任意の適切な材料から形成することができる。適切な材料の例には、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP−ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー)及びポリオレフィン、例えば二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)が含まれる。
【0073】
本発明はさらに、触媒層、ガス拡散電極又は本発明の触媒化膜、及び、MEA、触媒層、ガス拡散電極、又は本発明の触媒化膜を含む、燃料電池などの電気化学デバイスを含むMEAを提供する。
【0074】
本発明は、PEMFCにおけるその使用に関して記載されるが、本発明の触媒層が、記載されるような高電圧状況が起こりうる他の種類の燃料電池にも使途を有することを理解されたい。加えて、本発明の触媒は、他の電気化学デバイス、特に酸素発生反応がアノードにおける一次反応である水電解電池に使途を見出すことができる。加えて、本発明の触媒は、非電気化学デバイスにおける使途を見出すことができる。
【0075】
例示的で、本発明を限定しない以下の実施例を参照し、本発明についてさらに説明する。
【実施例】
【0076】
火炎噴霧熱分解法による実施例の一般的調製方法
本発明の実施例1から7は、実験室スケールの火炎噴霧熱分解法のセットアップを用いて調製された。酸化イリジウム及び金属酸化物の前駆体物質(下記表1に示す)を、生成物の組成に従って混合し、溶媒(トルエン)に溶解した。前駆体混合物中の全体の最終的金属濃度は、全体を通じて0.15mol/lに一定に保った。調製されたままの溶液は安定であり、表1に示す供給速度でぜん動ポンプにより火炎噴霧熱分解装置の火炎中へと送達された。火炎は、中央噴霧送達、予混合円形支持炎及び円形シートガス送達からなっている。酸素は、分散ガスとして使用され、表1に示す速度で送達された。メタン(1.5l/分)と酸素(3.2l/分)の混合物が、内部ノズルに供給され、予混合炎を形成した。すべてのガス流量は、較正済みマスフローコントローラーにより制御された。
【0077】
【0078】
比較実施例1
IrO
2/Ta
2O
5を、国際公開第2011/021034号に記載されるものと類似の方法を用いて調製した。
【0079】
表面積の測定
実施例1から7及び比較実施例1の各々の比表面積(BET)の測定値を決定した。結果を表2に示す。
【0080】
【0081】
粒子サイズの測定
実施例1の平均粒子サイズ及びd90を、分析を助けるGatanのDigital Micrograpソフトウェアを用いる透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて測定した。
図1は、実施例1の粒度分布分析を示している。実施例2から7の平均粒子サイズは、TEMから10nmを下回ることが分かった。
【0082】
MEAの調製
触媒層は、本発明の触媒(実施例1から7又は比較実施例1)を含むインクを、防水炭素繊維ガス拡散基材(ガス拡散層)上の疎水性マイクロポーラス層に刷毛塗りすることにより調製された。触媒インクは、EP0731520に記載される技術に従って作製された。触媒層における本発明の触媒のローディングを表3に示す。
【0083】
一般的なアノード(Johnson Matthey Fuel Cells LimitedのHiSPEC
TM18600を用いる)及びカソード(Johnson Matthey Fuel Cells LimitedのHiSPEC
TM 9100を用いる)の電解触媒層を、周知のデカール転写法を用いてペルフルオロ化スルホン酸膜のいずれかの側に適用し、触媒化膜を生成した。すべての実施例(比較実施例1を含む)において、アノード触媒層へのローディングは0.1mgPt/cm
2であり、カソード触媒層へのローディングは0.37mgPt/cm
2であった。
【0084】
触媒化膜及び本発明の触媒を含むガス拡散電極を、アノード触媒層が本発明の触媒を含む触媒層(上記のように調製された)に接触するように燃料電池ハードウェア内において組立て、本発明のアノード触媒層を提供した。カソード触媒層も、炭素/PTFEの疎水性マイクロポーラス層でコーティングされた防水炭素繊維ガス拡散基材に接触させ、完全なMEAを形成した。
【0085】
MEAは、活性面積6cm
2の燃料電池において、完全加湿ガス反応物質を用いて、80℃、7.2psigで試験した。最初の電気化学実験では、カソード電極が擬RHE(可逆水素電極)として機能できるように、アノード電極に窒素を供給し、カソード電極に水素を供給した。酸素発生反応(OER)に関する本発明の触媒の初期活性を決定するために、アノード電位を0.01〜1.6V vs RHEの間で2回、10mV/秒の掃引速度で循環させた。次いで酸素発生質量活性が1.5Vと決定された。この間、アノード反応物質の排気を、Spectra Mass Spectrometerを用いて連続的にサンプリングし、発生するO
2及びCO
2をモニタリングした。差次的な電気化学質量分析(即ち1.5VにおけるO
2:CO
2の比)を用いて酸素発生ファラデー効率に関する質量活性を修正した。結果を表3に示す。
【0086】
誘導されたセル反転事象下における触媒のOER能力を評価するために、次いでカソード電極に空気を供給し(アノードへの窒素の供給は維持された)、200mA/cm
2の負荷を引き出した。このような電流密度における初期カソード電位を記録し(約0.83V)、セル電位がモニタリングされていることを前提としてアノード電気の計算を可能にするために使用した(E=電位として、E
セル=E
カソード−E
アノード)。ここでまた、質量分析を用いて、発生したO
2及びCO
2の合計量を比較し、層の継続的な反転の間の反応選択性を測定した。急激な電位上昇により試験が終了されるまで、セル電位は時間と共に減衰した(増大した)。アノード電位が2.0Vに到達するまでに要した時間を表3及び
図2に示す。
【0087】
【0088】
本発明の触媒を含むMEAは、酸素発生反応を触媒するうえで比較実施例1の触媒を含むMEAより効率的であり(質量活性及びファラデー効率により示されるように)、アノード触媒層の劣化に対して改善された保護を提供した(O
2/CO
2選択制及び2.0Vに到達するまでの時間により実証されるように)。本発明の触媒は、炭素の腐食に優先して、比較実施例1の触媒より一桁大きい選択性で、継続的に酸素を発生させることができ、200mA/cm
2の間にアノード電位が2.0Vに到達するまでの時間が延長された。本発明の触媒は、比較実施例1より有意に高い活性及びMEA耐久性を呈した。