特許第6672300号(P6672300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672300
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】アスファルトフィニッシャ
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   E01C19/48 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-528722(P2017-528722)
(86)(22)【出願日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2016070804
(87)【国際公開番号】WO2017010541
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2018年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-141279(P2015-141279)
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】美濃 寿保
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0076101(US,A1)
【文献】 実開平07−031908(JP,U)
【文献】 実開平04−122711(JP,U)
【文献】 特開2014−105434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00−19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されたホッパと、
前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、
前記コンベアによって搬送されて路面上に撒かれた舗装材を車幅方向に敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュによって敷き拡げられた舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリード装置と、
前記ホッパの前方の物体を検出する物体検知センサと、
前記トラクタの前方を向く表示部を有する表示装置と、
前記表示装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記物体検知センサの出力に基づいて前記物体の存否と少なくともダンプトラックを含む複数の前記物体の種類を判定し、前記物体が存在すると判定した場合、判定結果に基づいて前記物体が存在することを表す情報を前記表示装置に表示させる、
アスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
撮像装置と、
音声出力装置を備え、
前記制御装置は、前記撮像装置が取得した画像に基づいて舗装材運搬車両の存否を判定し、前記物体が存在すると判定し、且つ、舗装材運搬車両が存在すると判定した場合、前記音声出力装置から音声を出力させる、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記アスファルトフィニッシャから所定距離範囲内に舗装材運搬車両が存在する場合に該舗装材運搬車両が存在すると判定する、
請求項2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記舗装材運搬車両が前記アスファルトフィニッシャに接近している場合に前記音声出力装置から音声を出力させる、
請求項2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項5】
前記物体検知センサは撮像装置であって、
音声出力装置を備え、
前記制御装置は、前記撮像装置が取得した画像に基づいて舗装材運搬車両の存否を判定し、前記物体が存在すると判定し、且つ、舗装材運搬車両が存在すると判定した場合、前記音声出力装置から音声を出力させる、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記アスファルトフィニッシャから所定距離範囲内に舗装材運搬車両が存在する場合に該舗装材運搬車両が存在すると判定する、
請求項5に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記舗装材運搬車両が前記アスファルトフィニッシャに接近している場合に前記音声出力装置から音声を出力させる、
請求項5に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項8】
前記表示装置は、前記アスファルトフィニッシャの前記トラクタのフレームよりも上に配置される、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項9】
前記表示装置は、前記アスファルトフィニッシャの前記トラクタのフレームの側部から外側に張り出し、且つ、前記スクリード装置の端部よりも内側に配置される、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックが投入する舗装材を受け入れるホッパを備えるアスファルトフィニッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックから投入されたアスファルト合材がホッパからこぼれ落ちるのを防止する合材こぼれ防止装置としてのゴムプレートを備えた舗装機械が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このゴムプレートは、ホッパの前端部両側方に立設状態で取り付けられ、ダンプトラックの接近又は離脱の際にダンプトラックのリヤバンパと当接したときに傾倒し、リヤバンパの通過後に元の状態に復帰するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−162292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、アスファルト合材をホッパに投入するために後進しながら舗装機械に接近するダンプトラックと舗装機械との間に物体が存在する場合については言及していない。そのため、ロードコーン等の物体がダンプトラックと舗装機械との間にある場合、その物体がダンプトラックと舗装機械との間に挟まれて損傷してしまうおそれがある。
【0006】
上述に鑑み、舗装材運搬車両とアスファルトフィニッシャとの間にある物体の損傷を防止するアスファルトフィニッシャの提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例に係るアスファルトフィニッシャは、トラクタと、前記トラクタの前側に設置されたホッパと、前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、前記コンベアによって搬送されて路面上に撒かれた舗装材を車幅方向に敷き拡げるスクリュと、前記スクリュによって敷き拡げられた舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリード装置と、前記ホッパの前方の物体を検出する物体検知センサと、前記トラクタの前方を向く表示部を有する表示装置と、前記表示装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記物体検知センサの出力に基づいて前記物体の存否と少なくともダンプトラックを含む複数の前記物体の種類を判定し、前記物体が存在すると判定した場合、判定結果に基づいて前記物体が存在することを表す情報を前記表示装置に表示させる。

【発明の効果】
【0008】
上述の手段により、舗装材運搬車両とアスファルトフィニッシャとの間にある物体の損傷を防止できるアスファルトフィニッシャが提供される。

【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の実施例に係るアスファルトフィニッシャの左側面図である。
図1B】本発明の実施例に係るアスファルトフィニッシャの上面図である。
図1C】本発明の実施例に係るアスファルトフィニッシャの背面図である。
図2】アスファルトフィニッシャに搭載される前方監視システムの構成例を示す概略図である。
図3】前方監視処理の一例のフローチャートである。
図4A】アスファルトフィニッシャの周囲の状態を示す図である。
図4B】アスファルトフィニッシャの周囲の状態を示す図である。
図4C】アスファルトフィニッシャの周囲の状態を示す図である。
図4D】アスファルトフィニッシャの周囲の状態を示す図である。
図5】前方監視処理の別の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1A図1Cは、本発明の実施例に係る道路機械の一例であるアスファルトフィニッシャ100の図である。具体的には、図1Aは左側面図であり、図1Bは上面図であり、図1Cは背面図である。
【0011】
アスファルトフィニッシャ100は、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード装置3で構成される。
【0012】
トラクタ1はアスファルトフィニッシャ100を走行させるための機構である。本実施例では、トラクタ1は走行用油圧モータを用いて前輪及び後輪を回転させてアスファルトフィニッシャ100を移動させる。走行用油圧モータは、油圧源から作動油の供給を受けて回転する。
【0013】
また、トラクタ1にはコントローラ30、メインモニタ60、運転席61、撮像装置62、音声出力装置63、インジケータ64等が搭載される。具体的には、メインモニタ60及び運転席61を含むキャブがトラクタ1の上面に設置され、撮像装置62及び音声出力装置63がトラクタ1の上面の前端中央部に設置され、インジケータ64がトラクタ1の右側部に設置される。インジケータ64はトラクタ1の左側部に設置されてもよく、トラクタ1の右側部及び左側部の双方に設置されてもよい。ダンプトラックの運転者がインジケータ64を見るのを遮るような部材、機器等がアスファルトフィニッシャ100に取り付けられることはない。
【0014】
ホッパ2は舗装材を受け入れるための機構である。本実施例では、ホッパシリンダ2aによって車幅方向に開閉可能に構成される。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2を全開状態にして舗装材運搬車両としてのダンプトラックの荷台から舗装材(例えばアスファルト合材である。)を受け入れる。また、ダンプトラックの荷台から舗装材を受け入れているときも、アスファルトフィニッシャ100はプッシュローラ2bを介してダンプトラックを前方に押しながら走行(施工)を継続する。ホッパ2内に受け入れられた舗装材はコンベア及びスクリュを用いてスクリード装置3に給送される。
【0015】
スクリード装置3は舗装材を敷き均すための機構である。本実施例では、スクリード装置3はトラクタ1によって牽引される浮動スクリード装置であり、レベリングアーム3aを介してトラクタ1と連結される。
【0016】
図2は、アスファルトフィニッシャ100に搭載される前方監視システム150の構成例を示す概略図である。
【0017】
前方監視システム150はアスファルトフィニッシャ100の前方を監視するシステムである。本実施例では、前方監視システム150は、主に、コントローラ30、メインモニタ60、撮像装置62、音声出力装置63、及びインジケータ64で構成される。
【0018】
コントローラ30は、前方監視システム150を制御する制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、トラクタ1のフレーム1a内に格納されている。判定部31及び注意喚起部32を含むコントローラ30の各種機能要素は内部メモリに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
【0019】
メインモニタ60はアスファルトフィニッシャ100の運転者に各種情報を表示する装置である。本実施例ではメインモニタ60は液晶ディスプレイであり、コントローラ30からの指令に応じて各種情報を表示可能である。また、メインモニタ60は、アスファルトフィニッシャ100の運転者の操作入力を受ける入力装置を含んでいてもよい。
【0020】
物体を検出する物体検知センサとしての撮像装置62はアスファルトフィニッシャ100の前方にある空間の画像を取得する装置である。本実施例では撮像装置62はカメラであり、取得した画像をコントローラ30に対して出力する。撮像装置62は、距離画像カメラ、赤外線カメラ、ステレオカメラ等であってもよい。
【0021】
音声出力装置63はアスファルトフィニッシャ100の周囲に向けて音声を出力する装置である。本実施例では音声出力装置63はアスファルトフィニッシャ100の前方に向けて音声を出力するスピーカであり、コントローラ30からの指令に応じて警報を出力可能である。音声出力装置63は音声メッセージを出力してもよい。
【0022】
インジケータ64はアスファルトフィニッシャ100の前方を向く表示部を有する表示装置である。本実施例では、インジケータ64は、コントローラ30が格納されているフレーム1aよりも上に配置されている。具体的には、インジケータ64は、フレーム1aの上面よりも高い位置に配置されている。また、インジケータ64はLEDパネルであり、コントローラ30からの指令に応じて各種情報を表示可能である。例えば、舗装材を積載したダンプトラックの運転者に後退指示を表示し、ダンプトラックの後退が可能であることをその運転者に知らせることができる。
【0023】
また、インジケータ64は、図1Bに示すように、使用時にトラクタ1のフレーム1aの右側部から外側に張り出し、且つ、スクリード装置3の端部3bよりも内側となるように配置されてもよい。スクリード装置3は、例えば、側方に最も伸張させた状態である。また、インジケータ64は、図1Bに示すように、非使用時にアスファルトフィニッシャ100の車幅内に収まるように折り畳み可能に構成されてもよい。
【0024】
判定部31は、撮像装置62が取得した画像(以下、「前方空間画像」とする。)に基づいて各種判定を行う機能要素である。本実施例では、判定部31は、公知の画像処理を前方空間画像に適用し、アスファルトフィニッシャ100の前方の所定空間範囲内に物体が存在するか否かを判定する。物体は、例えば、ロードコーン、人(作業者等)、及び小型機械(ランマ、タンパ等)を含む。
【0025】
例えば、判定部31は、撮像装置62としてのステレオカメラ又は距離画像センサの出力から導き出される物体とアスファルトフィニッシャ100との距離に基づいてアスファルトフィニッシャ100の前方の所定空間範囲内に物体が存在するか否かを判定する。判定部31は、物体検知センサとしての距離センサ(例えば、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ、赤外線センサ等)の出力を用いてアスファルトフィニッシャ100の前方の所定空間範囲内に物体が存在するか否かを判定してもよい。この場合、撮像装置62は省略されてもよい。
【0026】
判定部31は、所定空間内に物体が存在すると判定した場合、所定空間内に物体が存在することを表す情報をメインモニタ60及びインジケータ64に表示させる。判定部31はその情報をインジケータ64のみに表示させてもよい。
【0027】
また、判定部31は、公知の画像処理を前方空間画像に適用し、ダンプトラックが所定距離範囲内に存在するか否かを判定する。所定距離範囲は、例えば、ホッパ2の先端から5〜10mの前方水平距離となるように設定される。ある程度前もってダンプトラックの存在を検知するためである。ひいては、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100の間に物体が存在することをダンプトラックの運転者に知らせたときにその運転者が余裕を持って適切な運転操作を行えるようにするためである。この場合、判定部31は、物体検知センサで物体の存否を判定し、その物体検知センサとは別の撮像装置でダンプトラックの存否を判定してもよい。例えば、判定部31は、距離センサの出力に基づいて物体の存否を判定し、撮像装置62が取得した画像に基づいてダンプトラックの存否を判定してもよい。また、判定部31は、物体検知センサの出力に基づいて物体の存否を判定し、且つ、ダンプトラックの存否を判定してもよい。
【0028】
また、判定部31は、公知の画像処理を前方空間画像に適用し、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100に接近しているか否かを判定する。ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100に接近している場合に限って警報を出力できるようにするためである。この場合、判定部31は、物体検知センサで物体の存否を判定し、その物体検知センサとは別の撮像装置でダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100に接近しているか否かを判定してもよい。例えば、判定部31は、距離センサの出力に基づいて物体の存否を判定し、撮像装置62が取得した画像に基づいてダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100に接近しているか否かを判定してもよい。また、判定部31は、物体検知センサの出力に基づいて物体の存否を判定し、且つ、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100に接近しているか否かを判定してもよい。
【0029】
また、判定部31は、公知の画像処理を前方空間画像に適用し、アスファルトフィニッシャ100の前方の所定空間範囲内に存在する物体の種類を識別してもよい。例えば、その物体が人(作業者等)であるかロードコーンであるか小型機械であるかを判別してもよい。そして、判定部31は、その物体が人であると判定した場合に所定空間内に人が存在することを表す情報をインジケータ64に表示させてもよい。また、その物体がロードコーンであると判定した場合に所定空間内にロードコーンが存在することを表す情報をインジケータ64に表示させてもよい。同様に、その物体が小型機械であると判定した場合に所定空間内に小型機械が存在することを表す情報をインジケータ64に表示させてもよい。
【0030】
注意喚起部32は、作業関係者の注意を喚起する機能要素である。作業関係者は、アスファルトフィニッシャ100の前方で作業する作業者、ダンプトラックの運転者、アスファルトフィニッシャ100の運転者等を含む。本実施例では、注意喚起部32は、アスファルトフィニッシャ100の前方に物体が存在し、且つ、ダンプトラックが所定距離範囲内に存在すると判定部31が判定した場合に音声出力装置63から警報を出力させる。或いは、注意喚起部32は、アスファルトフィニッシャ100の前方に物体が存在し、且つ、ダンプトラックが所定距離範囲内に存在し、且つ、ダンプトラックが接近していると判定部31が判定した場合に音声出力装置63から警報を出力させてもよい。
【0031】
次に、図3及び図4A図4Dを参照し、前方監視システム150による前方監視処理の一例について説明する。図3は前方監視処理の一例のフローチャートである。コントローラ30は、アスファルトフィニッシャ100の稼働中、所定の制御周期で繰り返しこの前方監視処理を実行する。また、図4A図4Dはそれぞれ、アスファルトフィニッシャ100の周囲の状態を示す側面図及び上面図であり、右上の図はインジケータ64の表示内容を示す。また、距離DAはダンプトラック200の存否の判定に用いる距離であり、範囲RAは物体の存否の判定に用いる空間的範囲である。また、図4Aの一点鎖線で示す範囲RM1は、ダンプトラック200のルームミラーM1に映る空間的範囲を示し、図4Aの二点鎖線で示す範囲RM2は、ダンプトラック200の右サイドミラーM2に映る空間的範囲を示す。
【0032】
最初に、コントローラ30の判定部31は、アスファルトフィニッシャ100の前方の範囲RA内に物体が存在するかを判定する(ステップST1)。範囲RAは、例えば、図4A図4Dのそれぞれにおいて破線で表される空間的範囲である。なお、範囲RAは、予め設定されていてもよく、アスファルトフィニッシャ100の走行速度等に応じて動的に設定されてもよい。本実施例では、範囲RAは、ダンプトラック200と同等の幅及び高さを有する。
【0033】
範囲RA内に物体が存在しないと判定した場合(ステップST1のNO)、判定部31は、範囲RA内に物体が存在することを表す情報をインジケータ64に表示させることなく、今回の前方監視処理を終了させる。なお、判定部31は、範囲RA内に物体が存在しないことを表す情報をインジケータ64に表示させてもよい。
【0034】
図4Aは範囲RA内に物体が存在しないときの状態を示す図である。図4Aにおいて、インジケータ64の表示内容を示す右上の図は範囲RA内に物体が存在しないことを表す。ダンプトラック200の運転者は、インジケータ64のこの表示を見ることでダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体が存在しないことが分かる。
【0035】
一方、範囲RA内に物体が存在すると判定した場合(ステップST1のYES)、判定部31は、範囲RA内に物体が存在することを表す情報をインジケータ64に表示させる(ステップST2)。また、判定部31は、範囲RA内に物体が存在することを表す情報をメインモニタ60にも表示させる。
【0036】
図4Bは範囲RA内に物体(作業者)が存在するときの状態を示す図である。図4Bにおいて、インジケータ64の表示内容を示す右上の図は範囲RA内に物体が存在することを表す。ダンプトラック200の運転者は、インジケータ64のこの表示を見ることでダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体が存在することが分かる。
【0037】
その後、判定部31は、距離DA内にダンプトラック200が存在するかを判定する(ステップST3)。距離DAは、例えば、撮像装置62の設置位置を基準とした前方水平距離である。なお、距離DAは、予め設定されていてもよく、アスファルトフィニッシャ100の走行速度等に応じて動的に設定されてもよい。
【0038】
距離DA内にダンプトラック200が存在すると判定した場合(ステップST3のYES)、判定部31は、作業関係者に対して注意喚起を行う(ステップST4)。すなわち、範囲RA内に物体が存在し且つ距離DA内にダンプトラック200が存在すると判定した場合、判定部31は、音声出力装置63から警報を出力させる。
【0039】
図4Cは、距離DA内にダンプトラック200が存在し、且つ、範囲RA内に物体(作業者)が存在するときの状態を示す図である。図4Cにおいて、インジケータ64の表示内容を示す右上の図は範囲RA内に物体が存在することを表す。ダンプトラック200の運転者は、インジケータ64のこの表示を見ることでダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体が存在することが分かる。また、図4Cの斜線ハッチングは、音声出力装置63が警報を出力していることを表す。作業関係者はこの警報を聞くことで距離DA内まで接近したダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体(作業者)が存在することが分かる。
【0040】
一方、距離DA内にダンプトラック200が存在しないと判定した場合(ステップST3のNO)、判定部31は、注意を喚起することなく、今回の前方監視処理を終了させる。すなわち、範囲RA内に物体が存在する場合であっても距離DA内にダンプトラック200が存在しない場合には判定部31は音声出力装置63から警報を出力させない。
【0041】
また、範囲RA内に物体が存在しないと判定した場合(ステップST1のNO)、判定部31は、距離DA内にダンプトラック200が存在するかを判定しない。すなわち、距離DA内にダンプトラック200が存在する場合であっても範囲RA内に物体が存在しない場合には判定部31は音声出力装置63から警報を出力させない。ダンプトラック200が物体に接触するおそれがないためである。
【0042】
図4Dは、距離DA内にダンプトラック200が存在し、且つ、範囲RA内に物体が存在しないときの状態を示す図である。図4Dにおいて、インジケータ64の表示内容を示す右上の図は範囲RA内に物体が存在しないことを表す。ダンプトラック200の運転者は、警報が出力されていない状態でインジケータ64のこの表示を見ることでダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体が存在しないことが分かる。
【0043】
次に、図5を参照し、前方監視システム150による前方監視処理の別の一例について説明する。図5は前方監視処理の別の一例のフローチャートである。コントローラ30は、アスファルトフィニッシャ100の稼働中、所定の制御周期で繰り返しこの前方監視処理を実行する。
【0044】
なお、図5の前方監視処理は、ステップST3Aを有する点で図3の前方監視処理と相違するがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
【0045】
図5の前方監視処理では、距離DA内にダンプトラック200が存在すると判定した場合(ステップST3のYES)、判定部31は、ダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100に接近しているかを判定する(ステップST3A)。
【0046】
そして、ダンプトラック200が接近していると判定した場合(ステップST3AのYES)、判定部31は、作業関係者に対して注意喚起を行う(ステップST4)。すなわち、範囲RA内に物体が存在し、距離DA内にダンプトラック200が存在し、且つダンプトラック200が接近していると判定した場合、判定部31は、音声出力装置63から警報を出力させる。
【0047】
一方、ダンプトラック200が接近していないと判定した場合(ステップST3AのNO)、判定部31は、注意を喚起することなく、今回の前方監視処理を終了させる。すなわち、範囲RA内に物体が存在し、且つ、距離DA内にダンプトラック200が存在する場合であってもダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100から遠ざかっている場合には判定部31は音声出力装置63から警報を出力させない。ダンプトラック200が物体に接触するおそれがないためである。
【0048】
このように、コントローラ30は、撮像装置62が取得した画像に基づいてアスファルトフィニッシャ100の前方に物体が存在するか否かを判定する。そして、物体が存在すると判定した場合にその旨を表す情報をインジケータ64に表示させる。その結果、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体が存在するにもかかわらず、アスファルトフィニッシャ100の運転者がダンプトラック200の運転者に誤って接車(後退)指示を与えてしまうのを防止できる。また、ダンプトラック200の運転者は、インジケータ64に表示された情報でダンプトラック200の後方に物体が存在しないことを確認した上でダンプトラック200を後退させることができ、ダンプトラック200と物体の接触を防止できる。
【0049】
また、コントローラ30は、撮像装置62が取得した画像に基づいてアスファルトフィニッシャ100の前方にダンプトラック200が存在するか否かを判定する。そして、所定距離範囲内にダンプトラック200が存在し、且つ、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体(作業者)が存在すると判定した場合に警報を出力させる。その結果、ダンプトラック200の接近に気付いていない作業者にダンプトラック200の接近を知らせることができる。また、作業者の存在に気付いていないダンプトラック200の運転者に作業者の存在を知らせることができる。また、ダンプトラック200と物体とが接触するおそれがあることをアスファルトフィニッシャ100の運転者に知らせることができ、ホーンを鳴らす等の措置をその運転者にとらせることができる。
【0050】
また、図5の前方監視処理では、コントローラ30は、所定距離範囲内にダンプトラック200が存在し、且つ、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の間に物体(作業者)が存在し、且つ、ダンプトラック200が後退していると判定した場合に警報を出力させる。その結果、舗装材の投入を終えたダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100から遠ざかる際に警報が出力されてしまうのを防止できる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0052】
また、本願は、2015年7月15日に出願した日本国特許出願2015−141279号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0053】
1・・・トラクタ 1a・・・フレーム 2・・・ホッパ 2a・・・ホッパシリンダ 2b・・・プッシュローラ 3・・・スクリード装置 3a・・・レベリングアーム 3b・・・端部 30・・・コントローラ 31・・・判定部 32・・・注意喚起部 60・・・メインモニタ 61・・・運転席 62・・・撮像装置 63・・・音声出力装置 64・・・インジケータ 100・・・アスファルトフィニッシャ 150・・・前方監視システム 200・・・ダンプトラック
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5