(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周壁に小孔が形成された外筒スクリーンと、前記外筒スクリーンの内部に設けられたスクリュー軸と、前記スクリュー軸の周囲に螺旋状に設けられたスクリュー羽根と、を備えた脱水装置における脱水方法であって、
前記外筒スクリーンに投入される前の脱水対象物を濃度が6%以上になるように濃縮し、
前記スクリュー羽根と共に前記スクリュー軸を回転させることで、前記外筒スクリーンに投入された前記脱水対象物を前記スクリュー軸の軸芯方向に搬送しながら圧縮し、
前記外筒スクリーンに前記スクリュー軸の軸心方向の全体にわたって間隔あけて取り付けられた3つ以上の加熱用ジャケットの内部に100℃未満の温度の熱媒を流通させて前記外筒スクリーンの一部を加熱面とし、
前記脱水対象物に対して、搬送過程で前記加熱面で加熱して粘度を低下させかつ熱変性によって保水力が低下した状態で前記小孔が露出する濾過面で濾過する加熱脱水を3回以上繰り返すことを特徴とする脱水方法。
前記スクリュー軸の軸心方向に複数の加熱用ジャケットが設けられており、前記複数の加熱用ジャケットは直列に接続されており、前記熱媒は前記脱水対象物の排出側から供給側に向けて前記複数の加熱用ジャケットに順に流通されることを特徴とする請求項1に記載の脱水装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の脱水システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る脱水装置を含む脱水システムの構成を示すブロック図である。図中、実線の矢印は、複数の処理を経て汚泥から焼却灰とされる処理対象物の流れを示しており、点線の矢印は、気体、液体、電気の流れを示している。
【0024】
本実施の形態の脱水システム100は、し尿、下水、工場廃液等の有機性汚水、浄化槽汚泥、生活雑廃水汚泥(生活排水ピットの汚泥、ビルピット汚泥等の濃厚なSSを含有するもの)、上水汚泥等の汚泥を脱水するシステムとして有効であるが、本発明の脱水システムが脱水を行う汚泥(脱水対象汚泥)はこれらに限られない。脱水システム100は、機械的な脱水のみでは十分な脱水が困難な難脱水性の汚泥に対して有効に用いられる。以 下の実施の形態では、有機性廃棄物としての汚泥(有機汚泥)に脱水システム100が用いられる。
【0025】
脱水システム100は、汚泥に対して嫌気性消化処理(メタン発酵処理)を行う消化槽1と、消化槽1で得られた消化汚泥に対して凝集剤等の薬品を添加して凝集汚泥を調製する凝集槽2と、凝集槽2で得られた凝集汚泥に対して、濃縮処理及び脱水処理を行う脱水装置8と、脱水処理により得られた脱水汚泥(脱水ケーキ)を燃焼させる熱処理設備としての焼却炉5と、脱水機4に供給する熱媒を加熱する熱媒加熱機6と、焼却炉5の廃熱を利用して発電を行う発電機7とを備えている。
【0026】
脱水装置8は、脱水処理の前に汚泥から水分を分離して流動性の低い濃縮汚泥とする濃縮機3と、濃縮機3で得られた濃縮汚泥に薬品を添加する薬品添加部9と、薬品が添加された濃縮汚泥を脱水対象汚泥として、この脱水対象汚泥に対して脱水処理を行う脱水機4を備えている。なお、熱処理設備としては、焼却炉(焼却設備)の他に、炭化設備、乾燥設備がある。また、
図1の例では、凝集槽2を2段とし、無機凝集剤とポリマを添加できるようしているが、凝集槽2は、1段としても、3段以上の複数段としてもよく、また、凝集剤としてポリマだけを添加してもよい。
【0027】
消化槽1のメタン発酵で生成されたメタンガスを含む消化ガスは、熱媒加熱機6に供給される。焼却炉5の焼却によって発生した廃熱は熱媒加熱機6及び発電機7に供給される。発電機7における廃熱は、熱媒加熱機6に供給される。熱媒加熱機6は、例えば水等の熱媒を加熱して温水にして脱水機4に供給する。熱媒加熱機6は、例えば、消化ガスを燃焼して温水を発生させる温水ボイラや、焼却炉排ガスと水の熱交換器であってよい。脱水機4は、この熱媒から得られる熱を用いて汚泥を加熱しながら脱水する。なお、焼却炉5は、脱水機4から排出される脱水汚泥のみでなく、他の場内汚泥や外部から搬入された汚泥を焼却してもよい。
【0028】
図2は、濃縮機3と脱水機4と薬品添加部9とが一体になって構成された脱水装置8の断面図である。なお、濃縮機3と脱水機4薬品添加部9とは、
図2に示すように一体的に構成されてもよいし、濃縮機3と薬品添加部9を脱水機4とは独立させて脱水機4の上部や横などに設けてもよい。
【0029】
本実施の形態の脱水機4は、いわゆるスクリュープレス方式の脱水機である。脱水機4では、機台11の上に円筒形状の外筒スクリーン12が水平に設置されている。外筒スクリーン12は、サポート部材に支持されている。外筒スクリーン12の内部には、スクリュー軸13が外筒スクリーン12と同芯状に設けられている。スクリュー軸13は、汚泥の搬送方向(
図2の左方向)に向かって径が次第に大きくなるテーパ形状を有しており、汚泥の排出側に大径端部を有し、汚泥の供給側に小径端部を有する。スクリュー軸13は、外筒スクリーン12に対して、回転可能かつ軸芯方向に移動可能である。
【0030】
外筒スクリーン12には、周壁に多数の小孔14が設けられている。小孔14は、外筒スクリーン12の内部と外部とを連通する。スクリュー軸13の周囲にはスクリュー羽根15が螺旋状に巻きつけられている。機台11の上には、スクリュー軸13の軸芯方向に沿って移動可能な可動台16が設けられている。可動台16の上には、前側軸受17と後側軸受18とが設けられている。前側軸受17と後側軸受18は、外筒スクリーン12の閉鎖端板から突出したスクリュー軸13の小径端部を径方向と軸芯方向に軸受けしている。
【0031】
前側軸受17及び後側軸受18の上には、減速機付きの可変速電動機19が設けられている。可変速電動機19の回転軸とスクリュー軸13の小径端部とは、連結ベルト20によって回転連結されている。可変速電動機19の回転がスクリュー軸13に伝達され、このようにして、可動台16の上に回転駆動装置が構成される。
【0032】
可動台16は、図示しない駆動装置によってスクリュー軸13の軸芯方向に平行移動(前進又は後退)する。この可動台16の移動によって、前側軸受17、後側軸受18、可変速電動機19、及び連結ベルト20もスクリュー軸13の軸芯方向に移動し、さらに、スクリュー軸13もその軸芯方向に移動する。このスクリュー軸13の軸芯方向への移動によって、外筒スクリーン12に対するスクリュー軸13の軸芯方向位置が変更される。
【0033】
スクリュー軸13のスクリュー羽根15の間には螺旋状の搬送圧縮通路21が形成されている。搬送圧縮通路21は外筒スクリーン12で覆われている。移送圧縮通路21の断面積は、汚泥の供給側(入口側)より排出側(出口側)のほうが小さくなっており、搬送圧縮通路21では、汚泥は、外筒スクリーン12の内周面とスクリュー羽根15とで圧縮されつつ搬送される。
【0034】
外筒スクリーン12の上部には、濃縮機3から排出される汚泥(濃縮汚泥)を外筒スクリーン12内に取り込むための投入口22が設けられている。外筒スクリーン12とスクリュー軸13のスクリュー羽根15及び大径部分の間には、移送圧縮通路21を通過した汚泥をさらに圧縮する四角形断面の円環形状ないし円筒形状の圧縮室23を形成している。圧縮室23は、移送圧縮通路21の出口を入口としている。
【0035】
外筒スクリーン12の下には、外筒スクリーン12内の圧搾によって汚泥から分離して小孔14から流出する液体を集める受皿24が設けてられている。基台11の上には、軸受板25が立設されている。この軸受板25は、外筒スクリーン12の開放端から突出したスクリュー軸13の大径端部を径方向にのみ軸受けしている。
【0036】
軸受板25には、複数の油圧シリンダ26を固定し、油圧シリンダ26のピストンロッド27を軸受板25に貫通し、ピストンロッド27の先端を排出テーパーコーン29に連結して、ピストンロッド27の前進、後退と所望位置での停止を制御する油圧回路を設けて、排出テーパーコーン29の位置をスクリュー軸13の軸芯方向へ変更させる。スクリュー軸13の大径端部と圧縮室23の出口の下には、圧縮室23の出口から流出する脱水汚泥の落下路28を設けている。
【0037】
上記のように構成された脱水機4において、可変速電動機19によって一体となったスクリュー軸13とスクリュー羽根15を回転させ、投入口22から外筒スクリーン12に汚泥を投入すると、汚泥は、スクリュー軸13の軸芯方向に搬送されつつ圧縮されて、汚泥から水分が離脱する。汚泥から分離した水分は外筒スクリーン12の小孔14から外筒スクリーンの外に排出されて、受皿24に受け入れられる。この脱水処理にて生成された脱水汚泥は、落下路28から脱水機4の外に排出される。
【0038】
この脱水機4において、所望の脱水性能を得るため、圧縮室23の入口から出口までの長さを調整する場合は、スクリュー軸13の軸芯方向位置変更装置で、スクリュー軸13を軸芯方向に移動して外筒スクリーン12に対するスクリュー軸13の軸芯方向位置を変更し、これによって圧縮室23の長さを増減させる。
【0039】
可動台11を図示しない駆動装置によって前進させて、その前進位置に停止させ、スクリュー軸13の軸芯方向位置を圧縮室23の出口側に変更すると、外筒スクリーン12とスクリュー軸13のスクリュー羽根15ないし大径部分の嵌合長さが減少し、圧縮室23の長さが減少する。逆に、可動台11を後退させてその後退位置に停止させ、スクリュー軸13の軸芯方向位置を移送圧縮通路21の入口側に変更すると、圧縮室23の長さが増加する。
【0040】
図3は、濃縮機3の構造を示す図である。本実施の形態の濃縮機3は、汚泥圧搾機であり、汚泥投入用ホッパー31と、汚泥移動手段32と、汚泥移動手段32の上方に設けられた加圧手段33と、汚泥移動手段32の下方に設けられた水捕集手段34とを備えている。
【0041】
汚泥移動手段32は、濾布で形成されるベルト36とベルト駆動装置38とで構成される。ベルト駆動装置38がベルト36を駆動すると、ベルト36の上面全体(搬送面)が水平移動し、凝集汚泥を水平方向汚泥排出口側に移動させる。凝集汚泥は、ベルト36上を移動する間に濾過され、濾液は下方の水捕集手段34に落下する。
【0042】
加圧手段33は、汚泥移動手段32の汚泥排出口37の手前に、ベルト36との間に隙間を空けて斜めに設置された加圧板33Aを備えている。汚泥は、汚泥移動手段32によって水平方向汚泥排出口側に移動されてくると、加圧板33Aとベルト36との間の隙間を通過する際に上から加圧される。
【0043】
加圧板33Aは一つ或いは二つ以上設けてもよいし、また、加圧板33Aは、設置角度が固定されるように設けることもできるし、設置角度を随時変更できるように設けることもでき、さらには、上下揺動可能に軸支することもできる。加圧板33Aの角度並びにベルト36との隙間の大きさを変更することにより、凝集汚泥にかかる圧力を調整することができ、濃縮効率を調整することができる。また、加圧板33Aの代わりに、例えばローラを設置することもできる。
【0044】
水捕集手段34は、汚泥移動手段32に沿ってその下方に設けられており、汚泥移動手段32から落下してくる水を捕集して、廃水口から排水できるようになっている。
【0045】
次に、このような構成を備えた濃縮機3の動作について説明する。汚泥投入用ホッパー31に凝集汚泥を投入すると、凝集汚泥は汚泥移動手段32によって水平方向汚泥排出口側に移動させられ、ベルト36の上面上を水平に搬送される。凝集汚泥は、この搬送過程で脱水されると共に、加圧板33Aで圧搾されることで、さらに濃縮濾液を分離させ、濃縮汚泥の濃度を所定の濃度に近づけられ、汚泥排出口37から板状の濃縮汚泥として送り出される。脱水された水は、汚泥移動手段32から落下して水捕集手段34に捕集され、廃水口から排水される。
【0046】
なお、濃縮機3としては、上記のような構成の汚泥圧搾機のほかにも、従来の汚泥脱水に使用される汚泥圧搾機、例えば遠心濃縮機、スクリュー濃縮機、楕円板型濃縮機などを採用することも可能である。また、平板で汚泥を加圧する構成の機械を使用することもできる。また、濃縮濾液を分離するための構造は、ベルトに限定されず、隙間を空けたスリットバーを並べて、その隙間から濃縮濾液を排出し、スリットバー上の濃縮汚泥を機械的な移送手段で移送するような装置で代替してもよい。濃縮機3では、上記のような機械濃縮によって、汚泥濃度が6%以上、好ましくは8%以上になるように、汚泥を濃縮する。
【0047】
このように、濃縮機3では、例えば濃縮汚泥濃度を6%以上とかなり高くするために濃縮時に圧搾力が加えられるので、濃縮機3の前段階の凝集槽で添加した薬品による汚泥凝集力は低下しており、この状態で脱水機4に投入して加熱しながら脱水すると、凝集が不十分な柔らかい汚泥を脱水することになり、脱水対象汚泥の含水率が低下しにくい。特に余剰汚泥や消化汚泥のような柔らかい汚泥では、加熱により凝集が崩れやすいが、無機凝集剤を加えることで、脱水部内での汚泥凝集力を再度高めることができ、加熱による脱水対象汚泥の含水率の低下の効果を大きくできる。
【0048】
そこで、本実施の形態では、薬品添加部9が濃縮機3と脱水機4との間に配置される。薬品添加部9は、濃縮機3の汚泥排出口37と脱水機4の投入口22とを接続する通路として構成され、ここを通過する濃縮汚泥に対して薬品を添加する。濃縮機3から排出された濃縮汚泥は、その重力によって薬品添加部9内を通過する間に薬品を添加されて、脱水機4の投入口22から外筒スクリーン12内に投入される。
【0049】
薬品添加部9は、濃縮機3にて濃縮された汚泥に対して、薬品として、ポリマ及び無機薬品(無機凝集剤)を添加する。薬品添加部9で濃縮汚泥に添加される汚泥処理凝集用の無機薬品(無機凝集剤)としては、アルミニウムや鉄などの金属塩(例えば、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸バンド、PAC(ポリ塩化アルミニウム)等)を採用できる。ただし、塩素を多く含む金属塩であるPACや塩化第二鉄では、脱水後の脱水濾液に塩素イオンが多く含まれることになり、脱水機4の腐食が進行しやすく、脱水機4の耐久性が低下する。特に、本実施の形態のように脱水時に加熱をする場合には、脱水濾液が高温になり、塩素イオンによりスクリーンやケーシングの腐食が激しく進行する。このため、スクリーンやケーシングに耐久性のある高価な材料を選定しなければならず、脱水機4の製造コストが高くなってしまう。よって、本実施の形態において使用する無機薬品として好ましいのは、金属硫酸塩(例えば、ポリ硫酸第二鉄や硫酸バンド)である。
【0050】
外筒スクリーン12内に投入された濃縮汚泥は、回転するスクリュー軸13の周りに螺旋状に設けられたスクリュー羽根15によって落下路28に向けて搬送されつつ、圧縮され、この圧縮によって分離した水分が外筒スクリーン12の周壁に設けられた小孔14から外部に排出される。また、脱水された汚泥(脱水汚泥)は、落下路28から脱水機4の外部に排出される。
【0051】
本実施の形態の脱水機4では、スクリュー軸13及びスクリュー羽根15が中空に形成されており、その内部に熱媒加熱機6で加熱された熱媒(温水)が導入される。スクリュー軸13の内部空間とスクリュー羽根15の内部空間とは、スクリュー羽根15の汚泥供給側端部で互いに連通している(スクリュー軸13の内部空間とスクリュー羽根15の内部空間とがシリーズになっている)。
【0052】
図4は、熱媒の流路の例を示す図である。
図4に示すように、熱媒入口からスクリュー軸13の内部に流入された熱媒は、スクリュー軸13内部を汚泥の排出側(
図4の左側)から汚泥の供給側(
図4の右側)に向かって、汚泥の搬送方向と逆方向に流れる。スクリュー軸13の右端(汚泥の供給側端)に到達した熱媒は、そこからスクリュー羽根15の内部に流入する。
【0053】
スクリュー軸13からスクリュー羽根15に流入した熱媒は、スクリュー羽根15の内部空間を、汚泥の搬送方向に向かって螺旋状に流れる。スクリュー軸13の汚泥排出側(
図4の左側)端部は、二重管構造となっており、熱媒入口から導入された熱媒が内管を通ってスクリュー軸13の内部空間に流入し、スクリュー羽根15の内部空間を流れて汚泥供給側から汚泥排出側に戻ってきた熱媒は、外管を通って排出される。
【0054】
スクリュー軸13とスクリュー羽根15は回転しているため、熱媒をスクリュー羽根15に流入させるには、熱媒を回転継手(ロータリージョイント)を介して回転の中心にあるスクリュー軸13に注入し、スクリュー軸13を経由してスクリュー羽根15に流す必要がある。本実施の形態のように、スクリュー軸13の内部空間とスクリュー羽根15の内部空間とをシリーズにすることで、スクリュー軸13内で、熱媒を、スクリュー軸13内部に流す熱媒とスクリュー羽根15に流す熱媒とに定量に分配する必要がなく、複雑な構造を必要としない。
【0055】
上記のように、本実施の形態では、脱水機4で加熱しながら脱水する前に、濃縮機3において汚泥を濃縮する。このように濃縮後に加熱しながら脱水することで、必要なエネルギーが小さくても高い脱水効果が得られ、また、薬品添加部9において濃縮汚泥に無機凝集剤を添加しているので、含水率がより低下するが、この無機凝集剤によって、加熱面でスケールが生成されるという問題がある。すなわち、熱媒として一般的に使用される蒸気など、温度が100℃以上の熱媒を使用すると、加熱面温度が100℃以上となり、脱水対象汚泥に水分蒸発が生じやすくなり、脱水中に発生する濾液中のスケール成分による加熱面へのスケール付着が生じやすくなる。加熱面にスケールが付着すると、加熱のための伝熱速度が低下し、加温効果が表れなかったり、スケールが成長することで汚泥の脱水機内での挙動に変化を与え、脱水性を低下させたりする。特に、濃縮汚泥に無機凝集剤を添加する場合には、濃縮汚泥が酸性となって汚泥中のスケール成分が脱水濾液中に溶け出しやすくなり、スケール生成量は顕著に増加する。
【0056】
そして、加熱面にスケールが付着して伝熱速度や脱水性が低下すると、継続的に目標とする含水率まで低下できないことになり、甚だしい場合には、スケールに遮られて汚泥が流動できなくなる場合もある。その結果、小さなエネルギーで高い脱水効果が得られる脱水システムを提供できないことになる。
【0057】
そこで、本実施の形態では、熱媒の温度は55℃以上100℃未満(好ましくは70℃以上90℃未満)とし、汚泥が沸騰しない温度に抑える。熱媒加熱機6は、熱媒が上記範囲内の所定の温度(ないしは範囲内)となるように、温度センサで熱媒の温度を監視しながら、熱媒を加熱する。あるいは、熱媒加熱機6は、100℃以上の熱媒(水又は水蒸気)に冷水を加水することで熱媒の温度を目標とする温度(ないしは温度範囲内)となるように制御してもよい。熱媒は、温水、又は真空下の減圧蒸気であってよい。
【0058】
また、スクリュー軸13及びスクリュー羽根15の内部に熱媒を導入することにより、スクリュー軸13及びスクリュー羽根15の表面が伝熱面となって汚泥に接触し、これによって脱水機4は、汚泥を加熱しながら脱水することになる。このように伝熱面を広く確保することで、上記のように低温の熱媒(例えば温水、すなわち100℃未満の水)であっても十分に汚泥を加熱させて、脱水汚泥の低含水率化を達成できる。
【0059】
図5は、熱媒の流路の他の例を説明する図である。この例では、スクリュー軸13の外管131の内部には、投入口22に対応する位置に、軸心方向に内部空間を仕切る仕切板132が設けられており、スクリュー軸13の外管131の内部の空間は、この仕切板132によって軸芯方向に二分されている。
【0060】
仕切板132の一方側(
図5の左側)には、端部から仕切板132の手前まで、軸芯方向に平行な内管133が設けられている。また、仕切り板132の他方側(
図5の右側)にも、端部から仕切板132の手前まで、軸芯方向に平行な内管134が設けられている。即ち、スクリュー軸13の外管131の内部は、仕切板132の両側で、内管133、134と外管131とからなる二重管構造になっている。外管131と内管133との間の外側流路135は、仕切板132の手前で、内管133内の内側流路137と連通している。
【0061】
スクリュー羽根15は中空構造を有する。スクリュー羽根15の内部空間は、往路(外側)と復路(内側)に分かれている。往路と復路は、スクリュー羽根15の螺旋形状に沿って螺旋状に形成されており、スクリュー羽根15の左端が折り返し箇所となって往路から復路につながっている。スクリュー羽根15の往路は、仕切板132の右側で、外管131と内管134との間の外側流路136と連通しており、復路は仕切板132の右側で内管134内の内側流路138と連通している。
【0062】
熱媒は、スクリュー軸13の両側からそれぞれスクリュー軸13の内部に供給される。仕切板132の左側では、熱媒は、外側流路135に供給されて、外側流路135を汚泥の搬送方向と逆方向に流れ、仕切板132で止められて、内側流路137を通って汚泥の搬送方向と同方向に流れ、排出される。
【0063】
仕切板132の右側では、熱媒は、外側流路136に供給されて、スクリュー羽根15の往路を通ってスクリュー羽根15の内部を汚泥の搬送方向に向かって流れ、端部で折り返して復路を通って戻ってきて、内側流路138を通って排出される。即ち、スクリュー軸13の一方側から供給された熱媒は一方側から排出され、スクリュー軸13の他方側から供給された熱媒は他方側から排出される。
【0064】
熱媒加熱機6とスクリュー軸13との間は、回転継手(ロータリージョイント)を介して接続されている。熱媒加熱機6から移送された熱媒は、回転継手を介してスクリュー軸13の内部に注入される。
【0065】
この例においても、仕切板132の左側でスクリュー軸13に供給する熱媒と、仕切り板132の右側からスクリュー羽根15に供給する熱媒とを、スクリュー軸13の内部で所定の量に分配する必要がなく、複雑な構造を必要としない。
【0066】
本実施の形態の脱水機4では、さらに、外筒スクリーン12にも、加熱用ジャケット51が設置されて、その内部に熱媒が供給される。
図2の例の加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の外周を囲む環状の中空部材である。熱媒を内部に流通させて加熱用ジャケット51を加熱することで、外筒スクリーン12内の汚泥を加熱する。加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の外周面の一部に沿って、外筒スクリーン12に接触するように設けることができる。
【0067】
上述のように、外筒スクリーン12には、圧搾された汚泥から分離した水分を外筒スクリーン12の外部に排出するための小孔14が複数設けられている。加熱用ジャケット51が被せられた外筒スクリーン12の外周面では、この小孔14が塞がれて汚泥から分離した水分を排出することができず、濾過面積が減少することになるが、脱水処理に影響はない。その理由は以下のとおりである。
【0068】
脱水処理には、汚泥から水分を分離する(汚泥から濾液を絞り出す)分離工程と、濾液を外筒スクリーン12外に排出する排出工程とがあり、それぞれの工程における濾液の量は同じである。しかしながら、濾液が処理する(絞り出す/排出する)時間はそれぞれの工程で異なり、分離工程の方が長くなる。よって、排出工程では時間に余裕ができるため、外筒スクリーン12に形成されている小孔14による濾過面積を減少しても、脱水工程には影響しない。換言すれば、排出工程では、その濾過面積が小さくても、分離工程で汚泥から分離された水分を十分に排出できる。
【0069】
一方、スクリュー軸13及びスクリュー羽根15の内部に熱媒を供給してスクリュー軸13及びスクリュー羽根15から汚泥を加熱するのだけでなく、加熱用ジャケット51内にも熱媒を供給して加熱用ジャケット51から外筒スクリーン12を介して汚泥を加熱することで、従来の脱水機に比べて伝熱面が広くなり、より低温の熱媒であっても十分に汚泥を加熱することが可能となる。
【0070】
図2に示すように、本実施の形態の脱水機4では、汚泥の搬送方向(スクリュー軸13の軸芯方向)に間隔をあけて3つの加熱用ジャケット51が設けられている。このように、複数の加熱用ジャケット51が汚泥の搬送方向に間隔をあけて設置されるので、外筒スクリーン12の外周面は、搬送方向に濾過面(小孔14が露出している面)と加熱面(加熱用ジャケット51が取り付けられた面)とが交互に繰り返し配置され、汚泥は加熱と濾過を繰り返しながら搬送される。
【0071】
このような加熱と濾過の繰り返すことで脱水効果が向上することが、実験で確認されている。すなわち、搬送方向の長さLの加熱用ジャケット51を1つだけ設置するよりも、搬送方向の長さL/nのn枚の加熱用ジャケット51を搬送方向に離間して設置したほうが脱水効果が高いことが分かっている。これは、汚泥は、加熱面で加熱されることで粘度が低下し、また、熱変性によって保水力が低下するので、脱水されやすい状態となり、汚泥がそのような状態で濾過面に達すると十分に濾過されるとともに、水分が離脱したことで汚泥量が減少し、加熱に必要な熱量が減少するため次の加熱用ジャケット面で加熱されやすくなり、さらに脱水されやすい状態となるからである。
【0072】
複数の加熱用ジャケット51には、いずれも同一の熱媒加熱機6から熱媒が供給される。複数の加熱用ジャケット51は、それぞれ配管で熱媒加熱機6に接続されており、熱媒加熱機6から複数の加熱用ジャケット51に並列に熱媒が供給されてもよいし、熱媒加熱機6と複数の加熱用ジャケット51とが配管で一連に(直列に)接続されて、熱媒が複数の加熱用ジャケット51に順に供給されるようにしてもよい。
【0073】
複数の加熱用ジャケット51を直列に熱媒加熱機6に接続する場合には、複数の加熱用ジャケット51を並列に熱媒加熱機6に接続する場合と比較して、配管を少なくすることができる。複数の加熱用ジャケット51を直列に接続する場合には、加熱用ジャケット51には、脱水汚泥の排出側から供給側に向けて、熱媒加熱機6からの熱媒を流通させることが望ましい。この場合には、排出側で熱媒と汚泥の温度差をより大きくとることができるため、汚泥の温度をより高くすることができ、より低含水率化を達成できる。
【0074】
加熱用ジャケット51内には、図示しない迂流板を設けて、加熱用ジャケット51の内部に熱媒の流路を形成してもよい。このようにすることで、熱媒の短絡流や滞留を防止して、均一な熱伝導を達成でき、さらに、加熱用ジャケット51の内部の熱媒を乱流状態にして熱伝達効率を向上できる。
【0075】
このように、スクリュー軸13及びスクリュー羽根15の内部に熱媒を供給するとともに加熱用ジャケット51内にも熱媒を供給することで、汚泥を加熱するための伝熱面を十分に確保できるので、廃熱を利用して得られる温水のような低温熱媒を用いた場合にも、十分に汚泥を加熱して加熱脱水を行うことができる。
【0076】
また、スクリュー軸13、スクリュー羽根15、及び加熱用ジャケット15によって汚泥を加熱しながら脱水すると、上述のように、汚泥の粘度が低下し、また、熱変性によって汚泥の保水力が低下するので、濾液が分離しやすくなる。このようにして、脱水汚泥の含水率を低減して、焼却炉5における汚泥の焼却に要するエネルギーを抑えることができる。分離できる濾液は加熱後速やかに分離し、それを分離しないことで余計なエネルギーを使用することを防ぐことができる。
【0077】
さらに、本実施の形態の脱水装置8では、濃縮機3で汚泥の濃度を十分に高くし、加熱する汚泥量を減少させてから脱水機4で加熱をするので、脱水機4で汚泥を加熱するのに必要なエネルギー(加熱エネルギー)を抑えることができるとともに、脱水機4では濾過面積を小さくすることができ、その分、加熱用ジャケット51の面積を広くすることができる。
【0078】
また、加熱用ジャケット51の面積を広くとることで、熱媒の温度が低くても(低温熱媒であっても)十分な加熱ができる。低温熱媒としては、温水を用いることができ、温水は、
図1に示したように、焼却炉5や発電機7の廃熱を用いて生成できる。脱水機4では、汚泥の温度は、平均で45℃以上100℃未満とし、好ましくは55℃以上100℃未満とし、汚泥に含まれる水分が沸騰しない温度に抑える。
【0079】
なお、上記の脱水システム100において、脱水機4の落下路28の下部にシュート等で接続された乾燥機を設けてもよい。このように乾燥機を脱水機4の落下路28の下部に設けることで、脱水汚泥を乾燥機に移送する機器などを省略することができ、また、熱を持っている脱水汚泥を冷却することなく乾燥できるので、乾燥機で使用する熱量が小さくて済む。
【0080】
以下、加熱用ジャケット51の変形例を説明する。
図6〜11は、加熱用ジャケット51の変形例を示す図である。
図6〜11では、外筒スクリーン12と加熱用ジャケット51との関係を模式的に示している。
図6の例は、加熱用ジャケット51が格子状に外筒スクリーン12の外周に設けられる例を示している。この例によれば、外筒スクリーン12では、濾過部を確保できるとともに加熱用ジャケット51によって万遍なく加熱することができる。外筒スクリーン12のサポートを加熱用ジャケット51としてもよい。
【0081】
図7の例では、加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の搬送方向の中段に設けられる。加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の外周を囲む円筒形状を有している。汚泥は、加熱ジャケット51が設けられた加熱部に到達する前にある程度水分が除去され、加熱部で十分に加熱され、その後の水分が離脱しやすくなった汚泥に対して再度濾過が行われる。
【0082】
図8の例では、加熱用ジャケット51は、上下で分割されている。外筒スクリーン12の上側には、円弧形状の複数の加熱用ジャケット51が互いに離間して配置され、外筒スクリーン12の下側にも、円弧形状の複数の加熱用ジャケット51が互いに離間して配置されている。各加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の周方向の一部のみを覆う半円形状を有している。
【0083】
また、上側の複数の加熱用ジャケット51と下側の複数の加熱用ジャケット51とは互いに搬送方向にずれており、搬送方向に上側の加熱用ジャケット51と下側の加熱用ジャケット51とが交互に配置される。なお、上下に分割する位置は、外筒スクリーン12の高さの中央でなくてもよい。
【0084】
図9の例では、
図2の例と同様に、複数の環状の加熱用ジャケット51が搬送方向に互いに離間して配置される。
図9の例では、
図2の例と比較して、各加熱用ジャケット51の搬送方向の幅が狭く、互いの間隔も狭く、より多くの加熱用ジャケット51が配置されている。
【0085】
図10の例では、加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の搬送方向に亘って、外筒スクリーン12の外周の高さ方向の中段の一部のみを覆うように設けられる。加熱用ジャケット51は帯状であり、搬送方向に平行に、外筒スクリーン12に取り付けられる。
図10に示す加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の反対側の面にも設けられる。
【0086】
図11の例では、加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の搬送方向に亘って、外筒スクリーン12の上側の部分を覆うように設けられる。加熱用ジャケット51は、半 円筒形状を有している。この例では、外筒スクリーン12の上側に加熱面が形成され、下側に濾過面が形成される。
【0087】
図10、
図11の例では、ジャケットの分割数を少なくできるとともに、熱媒の制御も容易であり、製造コストを低減できる。スクリュープレス方式では、汚泥は外筒スクリーン12内を回転しながら排出方向に向けて搬送されるので、搬送方向に平行な加熱用ジャケットであっても、汚泥に均一に熱を与えることができる。
【0088】
また、図示はしないが、外筒スクリーン12の搬送方向の後方にのみ、
図2及び
図6〜11のいずれかの例に示すような加熱用ジャケット51を設けてもよい。加熱の効果はある程度脱水が進んだスクリュープレスの後段で顕著となるため、搬送方向の後方に加熱用ジャケット51を集中させることで、効果的な加熱脱水効果を得ることができる。また、前段で水分を出した後、後段で加熱するので、必要な熱量を低減でき、省エネルギーを実現できる。
【0089】
(実施例)
下水処理場で発生する消化汚泥を使用して、本実施の形態の脱水システム100を用いて脱水試験を実施した。汚泥処理量は、固形物換算で10kg−DS/hとし、脱水方式はスクリュープレス方式を採用し、スクリュー軸13の内部と加熱用ジャケット51の内部に熱媒として温水を注入して脱水しながら汚泥を加熱した。脱水機4に投入する汚泥の温度は20℃とし、その量は100kg/hとし、熱媒としての温水の流量は1.5m
3/hとした。
【0090】
脱水機4に汚泥を投入する前に、凝集槽2でポリ硫酸第二鉄とポリマを添加し、凝集させた後、濃縮機3で10%程度まで濃縮した。濃縮汚泥にはポリマを再度添加した。ポリマ添加率は1.2〜1.5%とし、ポリ硫酸第二鉄の添加率は10〜15%とした。
【0091】
外筒スクリーン12加熱面の配置方法は、以下の条件(1)及び(2)とした。条件(1)では、
図7に示すように、外筒スクリーン12に対して、汚泥の搬送方向に、加熱面(加熱用ジャケット51)を1つ配置した。条件(2)では、
図2に示すように、外筒スクリーン12における汚泥の搬送方向に、濾過面と加熱面(加熱用ジャケット51)を交互に複数回配置した。なお、条件(1)と条件(2)とで加熱面の総面積は同じになるようにした。
【0092】
脱水汚泥の到達温度及び含水率を測定し、脱水機4にて必要な熱量は、それらの測定結果から計算して求めた。具体的には、必要熱量Eは、熱媒としての温水の流量Qと、その温水を脱水機4に注入する際の温度T1と、温水が脱水機4から出てくる際の温度T2を測定して、E=α×Q×(T1−T2)として求めた(αは単位換算のための係数である)。
【0094】
条件(1)では、汚泥は十分に加熱され、脱水汚泥の含水率も72%となった。その時に必要な熱量は6.3MJ/hであった。条件(2)では、汚泥をさらに十分に加熱でき、脱水汚泥の含水率も70%まで下げることができた。その時に必要な熱量は5.0MJ/hであり、小さく抑えることができた。このように、条件(2)では、加熱面と濾過面を複数回配置することで、加熱しながら脱水する効果を高くすることができ、必要熱量は条件(1)より小さくできた。
【0095】
以上のように、上記の脱水システム100は、下水、し尿、生ごみ消化汚泥などの有機性汚泥を加熱しながら脱水するシステムであるが、この加熱のための熱源として消化ガス、焼却廃熱(炭化・乾燥を含む)、発電廃熱を利用しているので、新たなエネルギー源を必要としないで、汚泥の含水率を低減し、焼却処理のための補助燃料(油やガス)を低減もしくはなくすことができるので、省エネルギーや創エネルギーを実現できる。
【0096】
また、上記の脱水システム100では、消化ガス、焼却廃熱、発電廃熱を利用して加熱された温水を熱媒として用いている。一般的に、温水は、温度が低いために熱交換速度が低く、利用先が限られるが、本実施の形態の脱水システム100では、脱水機4にてスクリュー軸13内だけでなく、スクリュー羽根15の内部、外筒スクリーン12に取り付けた加熱用ジャケット51の内部にも熱媒を供給するので、熱媒の温度は比較的低くてよく(45℃以上100℃未満)、温水を用いることができる。従って、利用先が限られていて捨てられてしまうこともある温水を利用することで、さらに省エネルギーや創エネルギーを促進できる。
【0097】
また、本発明の一態様の脱水方法は、汚泥を濃縮して濃縮汚泥を生成する濃縮工程と、前記濃縮工程にて生成された前記濃縮汚泥を脱水対象汚泥として、前記脱水対象汚泥を間接加熱方式で加熱しながら脱水する脱水工程と前記濃縮汚泥に対して無機凝集剤を添加する添加工程とを含み、前記脱水工程にて前記脱水対象汚泥の加熱に使用する熱媒の温度は100℃未満である構成を有している。ここで、間接加熱方式とは、非加熱物と熱媒とが混合しない状態で加熱する方式をいい、板や布などの遮蔽物の一方側に被加熱物が存在し、他方側に熱媒が存在し、熱媒から被加熱物に遮蔽物を介して熱を移動させる加熱方式である。
【0098】
この構成によれば、脱水工程で汚泥が加熱されながら脱水されるので、汚泥の粘性が低下し、かつ熱変性によって汚泥の保水力が低下して濾液が分離しやすくなり、脱水された汚泥(脱水汚泥)の含水率を低くすることができる。また、脱水濾液の多くは加熱が完了しない段階で速やかに汚泥から分離できるため、脱水濾液に余計な熱エネルギーを使用することを防止できる。また、濃縮工程で汚泥の濃度を高くし、加熱する汚泥量を減少させてから加熱するので、脱水工程で加熱しながら脱水を行う際、脱水工程における汚泥の温度を所望の温度にまで加熱するための熱エネルギー(加熱エネルギー)を低く抑えることができる。さらに、脱水工程で汚泥を加熱するのに間接加熱方式を採用するので、温水等の熱媒を利用して汚泥を加熱できる。
【0099】
また、余剰汚泥や消化汚泥のような柔らかい汚泥では、加熱により凝集が崩れやすいが、濃縮汚泥に無機凝集剤を加えることで、脱水部内での汚泥凝集力を再度高めることができ、加熱による脱水対象汚泥の含水率の低下の効果を大きくできる。また、100℃未満の熱媒を使用することで、加熱面での水分蒸発が生じにくくなり、脱水中に発生する濾液中のスケール成分による加熱面へのスケール付着が生じにくくなる。
【0100】
(実施例)
以下、本実施の形態の脱水システム100の実施例を説明する。本実施例では、下水処理場で発生する消化汚泥を使用して、脱水システム100で脱水試験を実施した。汚泥処理量は、固形物換算で8kg−DS/hとし、脱水機4はスクリュープレス方式を採用し、スクリュー軸13の内部に熱媒を注入して脱水しながら加熱を行った。脱水機4に投入される前に、凝集槽2で汚泥にポリマを添加して凝集させた後に、濃縮機3で10%程度まで汚泥を濃縮した。薬品添加部9では、濃縮汚泥にポリマと無機凝集剤(具体的には、ポリ硫酸第二鉄)を添加した。ポリマの添加率は、2.0〜2.5%とし、ポリ硫酸第二鉄の添加率は20〜25%とした。
【0101】
熱媒加熱機6における熱媒温度条件を80℃(温水)、120℃(蒸気)、および熱媒不使用の3条件とし、それぞれ濃縮汚泥への無機凝集剤の添加有無ごとに、脱水ケーキの含水率を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0102】
表2に示すように、無機凝集剤の添加の有無にかかわらず、加熱(熱媒温度80〜120℃)した方が、加熱しないより脱水ケーキの含水率が低下した。また、熱媒温度条件にかかわらず、無機凝集剤を添加した条件1〜3では、無機凝集剤を添加しなかった条件4〜6に比べて、脱水ケーキの含水率が低下した。これは無機凝集剤の凝集効果によるものである。さらに、無機凝集剤を添加した条件1〜3では、熱媒温度が80℃の条件2の場合(74%)よりも、120℃の条件3の場合(76%)の方が、ケーキ含水率が上昇した。これは、120℃条件では、スクリュー軸の加熱面へスケール付着が多く、加熱のための伝熱速度が低下し加温効果が良好に表れなかったためである。
【0103】
なお、上記の実施の形態では、熱媒を加熱するのに消化ガス、焼却廃熱、発電廃熱をいずれも利用したが、それらの一部のみを利用してもよく、その他の熱源を利用してもよい。また、上記の実施の形態では、濃縮機3にて汚泥にポリマを添加したが、凝集槽2において汚泥にポリマを添加してもよい。また、凝集槽2において脱水助剤を添加してもよい。
【0104】
上記の脱水システム100の脱水機4は、1つのスクリュー軸13を備えたスクリュープレス方式の脱水機であったが、脱水システム100に用いられる脱水機は、2つのスクリュー軸を備えたスクリュープレス方式の脱水機であってもよい。
【0105】
スクリュー軸を2軸とすることで、軸と汚泥とが接触する面積が増大するので、低温熱媒であっても十分に汚泥を加熱することが可能となる。また、2軸の羽根同士が重なり合う部分で汚泥の攪拌及び混合が進み、汚泥をむらなく加熱することができ、脱水汚泥の含水率を安定して低減できる。なお、2つのスクリュー軸は、上下に並べられても横に並べられてもよい。また、脱水機が3つ以上のスクリュー軸を備えていてもよい。
【0106】
なお、上記の実施の形態では、外筒スクリーン12に対して加熱用ジャケット51を取り付けて、外筒スクリーン12を介して汚泥を加熱したが、加熱用ジャケット51は、外筒スクリーン12の内周面に設けられてもよい。この場合には、外筒スクリーン12の内部での汚泥の流通を妨げることがないように加熱用ジャケット51を設定することが望ましい。加熱用ジャケット51によって汚泥が外筒スクリーン12内で滞留すると、滞留した汚泥が伝熱を妨げて、加熱効率が低下してしまうからである。なお、上記の実施の形態のように加熱用ジャケット51を外筒スクリーン12の外周面に設置すれば、このような懸念は不要である。
【0107】
また、外筒スクリーン12自体を中空としてそこに熱媒を流通させてもよく、この場合には外筒スクリーン12に取り付けられる加熱用ジャケット51は不要であり、外筒スクリーン12において加熱される部分は加熱面にも濾過面にもなる。この場合において、外 筒スクリーン12は、その一部が加熱面とされてもよいし、全面が加熱面とされてもよい。
【0108】
また、上記の実施の形態では、加熱用ジャケット51を中空としてその内部に熱媒を流通させたが、これに加えて、又はこれに代えて、加熱用ジャケット51を電熱ヒータとして、加熱用ジャケット51自体が発熱するようにしてもよい。
【0109】
さらに、加熱用ジャケット51には、その外側、即ち外筒スクリーンに接する面と反対側の面に、断熱材又は断熱板を設置してもよい。これにより、加熱用ジャケット51から外側に放出される熱の量を低減でき、省エネルギーを実現できる。
【0110】
上記の脱水システム100の消化ガス利用方法や焼却廃熱利用方法が異なる脱水システム101を
図12に示す。
図12において、
図1と同じ構成については同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0111】
脱水システム101では、消化槽1で発生した消化ガスが消化ガス発電機71で使用され、電気は場内で有効利用される。消化ガス発電機71における発電廃熱は、消化槽1の加温に利用されるとともに、脱水時の加熱熱源として利用される。また、焼却炉5からの廃熱は、熱媒加熱機6にて白煙防止用空気との熱交換により温水を昇温するのに利用される。また、熱媒加熱機6で生成された温水は脱水機4だけでなく消化槽1にも供給され、消化槽1の加温に用いられる。