(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特定部は、前記作業機械が走行する前記走行経路の傍らの領域の内、マップデータの完成度が高い第1のエリア又はマップデータの完成度が高い第1の走行経路と、マップデータの完成度が低い第2のエリア又はマップデータの完成度が低い第2の走行経路とを特定し、
前記走行経路生成部は、前記位置検出装置が有効な場合に、前記作業機械に優先的に前記第2のエリアを傍らに有する走行経路又は前記第2の走行経路を通過させるように走行経路を生成する、
請求項2に記載の作業機械の管理システム。
前記マップデータの完成度が低い第2のエリアは、前記マップデータにおいて傍らに前記物体が検出されていないエリア、前記走行経路において傍らに前記物体が検出された領域の割合が所定値以下のエリア、前記作業機械が走行した回数が所定回数以下の走行経路の傍らの領域、の少なくとも一つを含む、
請求項2又は請求項3に記載の作業機械の管理システム。
前記マップデータの完成度が低い第2の走行経路は、前記非接触センサが前記物体を検出不可能な走行経路、前記マップデータを作成不可能な走行経路、傍らに前記物体が検出された領域の割合が所定値以下の走行経路、前記作業機械が走行した回数が所定回数以下の走行経路、の少なくとも一つを含む、
請求項2又は請求項3に記載の作業機械の管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0013】
実施形態1.
<鉱山機械の管理システムの概要>
図1は、実施形態1に係る鉱山機械4の管理システム1の一例を示す図である。
図2は、実施形態1に係る鉱山機械4の管理システム1が適用される鉱山の一例を示す平面図である。
【0014】
管理システム1は、鉱山機械4の管理を行う。鉱山機械4の管理は、鉱山機械4の運行管理、鉱山機械4の生産性の評価、鉱山機械4のオペレータの操作技術の評価、鉱山機械4の保全、及び鉱山機械4の異常診断の少なくとも一つを含む。
【0015】
鉱山機械4とは、鉱山における各種作業に用いる機械類の総称である。鉱山機械4は、積込機械、運搬機械、破砕機、及び作業者が運転する車両の少なくとも一つを含む。積込機械は、運搬機械に積荷を積み込むための鉱山機械である。積込機械は、油圧ショベル、電気ショベル、及びホイールローダの少なくとも一つを含む。運搬機械は、鉱山において移動可能なダンプトラック等の移動体を含み、積荷を運搬可能な鉱山機械である。積荷は、採掘により発生した土砂及び鉱石の少なくとも一方を含む。破砕機は、運搬機械から投入された排土を破砕する。
【0016】
実施形態1においては、管理システム1により、鉱山を走行可能な運搬機械であるダンプトラック2が管理される例について説明する。
図1に示すように、ダンプトラック2は、鉱山の作業場PA及び作業場PAに通じる搬送路HLの少なくとも一部を走行する。作業場PAは、積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方を含む。搬送路HLは、交差点ISを含む。ダンプトラック2は、搬送路HL上や作業場PA上に設定された走行経路を走行する。搬送路HLの傍らには物体が設けられる。実施形態1においては、搬送路HLの傍らに設けられる物体が土手BKであることとする。なお、搬送路HLの傍らに設けられる物体は、側壁又は人工的に製造された構造物でもよい。例えば、物体が金属又はコンクリートを含んでもよい。
【0017】
ダンプトラック2は、鉱山において移動可能な移動体である。走行経路は、積込場LPA、排土場DPA、及び搬送路HLの少なくとも一部に設定される。
【0018】
積込場LPAは、ダンプトラック2に積荷を積み込む積込作業が実施されるエリアである。排土場DPAは、ダンプトラック2から積荷が排出される排出作業が実施されるエリアである。排土場DPAの少なくとも一部に破砕機CRが設けられてもよい。
【0019】
実施形態1において、ダンプトラック2は、管理装置10からの指令信号に基づいて走行経路を自律走行する、所謂、無人ダンプトラックである。ダンプトラック2の自律走行とは、作業者の操作によらずに管理装置10からの指令信号に基づいて走行することをいう。なお、ダンプトラック2は、作業者の操作により走行してもよい。
【0020】
図1において、管理システム1は、鉱山に設置される管制施設7に配置された管理装置10と、通信システム9と、ダンプトラック2と、ダンプトラック2とは異なる他の鉱山機械4である鉱山機械3と、を備える。管理装置10は、鉱山の管制施設7に設置され、基本的には移動しないが、管理装置10が移動可能でもよい。通信システム9は、管理装置10とダンプトラック2と他の鉱山機械3との間においてデータ又は指令信号を無線通信する。通信システム9は、管理装置10とダンプトラック2との間、管理装置10と他の鉱山機械3との間、及びダンプトラック2と他の鉱山機械3との間を、双方向に無線通信可能にする。実施形態1において、通信システム9は、データ又は指令信号(電波等)を中継する中継器6を複数有する。
【0021】
実施形態1において、ダンプトラック2の位置及び他の鉱山機械3の位置が、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して検出される。GNSSとは、全地球航法衛星システムをいう。全地球航法衛星システムの一例として、上述したGPSが挙げられる。GNSSは、複数の測位衛星5を有する。GNSSは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定される位置を検出する。GNSSにより検出される位置は、グローバル座標系において規定される絶対位置である。GNSSにより、鉱山におけるダンプトラック2の位置及び他の鉱山機械3の位置が検出される。なお、本明細書中において「絶対位置」とは、真のダンプトラック2の位置そのものを示すものではなく、真のダンプトラック2の位置に対して精度のよい推定位置であることを示している。
【0022】
以下の説明においては、GNSSによって検出される位置を適宜、GPS位置、と称する。GPS位置は、絶対位置であり、緯度、経度、及び高度の座標データである。GNSSにおいては、測位衛星5の配置、データを受信した測位衛星5の数、電離層、対流圏、及び測位衛星5からのデータを受信するアンテナ周辺の地形の少なくとも一つの影響により、測位の状態(位置の精度)が変化する。測位の状態は、Fix解(精度±1cmから2cm程度)、Float解(精度±10cmから数m程度)、Single解(精度±数m程度)、及び非測位(測位計算不能)を含む。
【0023】
管理システム1は、水平面内のX軸方向及びX軸方向と直交する水平面内のY軸方向で規定されるXY座標系において、鉱山におけるダンプトラック2の位置及び方位(向き)と、他の鉱山機械3の位置及び方位とを管理する。ダンプトラック2の方位とは、走行するダンプトラック2の進行方向である。
【0024】
<管理装置>
次に、管制施設7に配置される管理装置10について説明する。管理装置10は、ダンプトラック2に対してデータ及び指令信号を送信し、ダンプトラック2からデータを受信する。
図1に示すように、管理装置10は、コンピュータ11と、表示装置16と、入力装置17と、無線通信装置18とを備える。
【0025】
コンピュータ11は、処理装置12と、記憶装置13と、入出力部(入出力インターフェース)15とを備える。表示装置16、入力装置17、無線通信装置18は、入出力部15を介して、コンピュータ11と接続される。
【0026】
処理装置12は、ダンプトラック2の管理に関する各種の処理及び他の鉱山機械3の管理に関する各種の処理を実行する。処理装置12は、各種処理を行うため、通信システム9を介してダンプトラック2の位置データ及び他の鉱山機械3の位置データを取得する。
【0027】
図2は、搬送路HLを走行するダンプトラック2を示す模式図である。処理装置12は、ダンプトラック2が走行する走行経路RPを設定する。走行経路RPは、コースデータCSによって規定される。コースデータCSとは、絶対位置(緯度、経度、及び高度の座標データ)がそれぞれ規定された複数のポイントPIの集合体である。すなわち、複数のポイントPIを通過する軌跡が走行経路RPである。処理装置12は、ダンプトラック2の走行経路RPを規定するコースデータCSを生成するコースデータ作成部として機能する。処理装置12は、コースデータCSを作成して、走行経路RPを設定する。
【0028】
記憶装置13は、処理装置12と接続され、ダンプトラック2の管理に関する各種のデータ及び他の鉱山機械3の管理に関する各種のデータを記憶する。記憶装置13は、ダンプトラック2の位置データ及び他の鉱山機械3の位置データを記憶する。
【0029】
表示装置16は、鉱山内の搬送路HL等を含んだ地図、ダンプトラック2の位置データ及び他の鉱山機械3の位置データを表示可能である。入力装置17は、キーボード、タッチパネル、及びマウスの少なくとも一つを含み、処理装置12に操作信号を入力可能な操作部として機能する。
【0030】
無線通信装置18は、アンテナ18Aを有し、管制施設7に配置され、入出力部15を介して、処理装置12と接続される。無線通信装置18は、通信システム9の一部である。無線通信装置18は、ダンプトラック2及び他の鉱山機械3の少なくとも一方から送信されたデータを受信可能である。無線通信装置18で受信したデータは、処理装置12に出力され、記憶装置13に記憶される。無線通信装置18は、ダンプトラック2及び他の鉱山機械3の少なくとも一方にデータを送信可能である。
【0031】
図3は、管理装置10の機能ブロック図である。管理装置10は、ダンプトラック2が走行する走行経路を生成する走行経路生成部19と、ダンプトラック2が走行する走行経路の傍らの領域の内、マップデータの完成度が高い第1のエリアと、マップデータの完成度が低い第2のエリアとを特定する特定部14と、マップデータを記憶する記憶装置13と、無線通信装置18とを備える。
【0032】
コンピュータ11は、通信用の入出力部15と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)のような外部記憶装置と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(内部記憶装置)と、CPUによりデータが登録される不揮発性メモリのような外部記憶装置(補助記憶装置)とを備える。処理装置12の機能は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを読み込んでRAMの作業領域で実行することにより実現される。記憶装置13の機能は、ROMが制御プログラムを記憶すること、及びCPUによりデータが不揮発性メモリに登録されることにより実現される。不揮発性メモリは、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含み、データベース13Bを実現する。なお、複数の処理回路が連携して、処理装置12及び記憶装置13の機能を実現してもよい。
【0033】
<他の鉱山機械>
次に、他の鉱山機械3について説明する。他の鉱山機械3は、ダンプトラック2以外の鉱山機械であり、作業者の操作により作動する。他の鉱山機械3は、CPUを含みかつ作業内容に関する各種の処理を実行する処理装置と、GPS位置を検出するGPS受信器と、管制施設7の無線通信装置18とデータを送受信する無線通信装置とを備える。他の鉱山機械3は、所定時間毎に自機のGPS位置を管制施設7の無線通信装置18に送信する。
【0034】
<ダンプトラック>
次に、ダンプトラック2について説明する。
図4は、実施形態1に係るダンプトラック2の制御ブロック図である。
図5は、実施形態1に係るダンプトラック2のハードウエア構成図である。
図6は、実施形態1に係るダンプトラック2の非接触センサ24の正面図である。
図7は、非接触センサ24のレーザセンサ24Bの検出エリアを示す平面図である。
図8は、非接触センサ24のレーザセンサ24Bの検出エリアを示す側面図である。
【0035】
図4に示すように、制御システム30は、少なくとも走行コントローラ20、走行経路決定装置32、照合航法位置計測コントローラ33、安全コントローラ40を備える。また、走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26、速度センサ27から信号を受信することができる。走行経路決定装置32は、GPS受信器31、無線通信装置34から信号を受信することができる。照合航法位置計測コントローラ33は、非接触センサ24、マップ保存用データベース36から信号又はデータを受信することができる。安全コントローラ40は、非接触センサ24から信号を受信することができる。また照合航法位置計測コントローラ33は、判定部33A、照合航法位置演算部33B、マップデータ作成部33C,記憶部33D、診断部33E、観測点座標変換部38、及び観測点利用可能判断部39を備える。
【0036】
図5に示すように、ダンプトラック2は、車両本体21と、ベッセル22と、車輪23と、非接触センサ24と、制御システム30とを備える。車両本体21に、ディーゼルエンジンのようなエンジン2E、エンジン2Eにより作動する発電機2G、及び発電機2Gで発生した電力により作動する電動機23Mが設けられる。車輪23は、前輪23F及び後輪23Rを含む。電動機23Mにより、後輪23Rが駆動される。なお、エンジン2Eの動力が、トルクコンバータを含むトランスミッションを介して後輪23Rに伝達されてもよい。また、車両本体21に、前輪23Fを操舵する操舵装置2Sが設けられる。ベッセル22には、積込機械により積荷が積み込まれる。排出作業においてベッセル22が持ち上げられ、ベッセル22から積荷が排出される。
【0037】
図6に示すように、非接触センサ24は、車両本体21の前部の下部に配置される。非接触センサ24は、ダンプトラック2の周囲の物体を非接触で検出する。ダンプトラック2の周囲の物体は、走行経路RPの傍らに存在する物体(土手BK、側壁等)を含む。非接触センサ24は、ダンプトラック2の前方の障害物を非接触で検出する障害物センサとして機能する。
【0038】
非接触センサ24は、非接触センサ24(ダンプトラック2)に対する物体の相対位置を検出可能である。非接触センサ24は、レーダ24A及びレーザセンサ24Bを含む。レーザセンサ24Bの分解能は、レーダ24Aの分解能よりも高い。
【0039】
レーダ24Aは、電波を発射して、その電波を物体に照射し、物体で反射した電波を受信する。これにより、レーダ24Aは、レーダ24Aに対する物体の方向及び距離を検出可能である。実施形態1において、レーダ24Aは、車両本体21の左右方向に間隔をあけて3つ設けられる。
【0040】
レーザセンサ24Bは、レーザ光線を発射して、そのレーザ光線を物体に照射し、物体で反射したレーザ光線を受信する。これにより、レーザセンサ24Bは、レーザセンサ24Bに対する物体の方向及び距離を検出可能である。実施形態1において、レーザセンサ24Bは、車両本体21の左右方向に間隔をあけて2つ設けられる。
【0041】
2つのレーザセンサ24Bは、それぞれ上下方向(鉛直方向)の方位が異なる複数のレーザ光線を発射し、複数のレーザ光線のそれぞれを左右方向(水平方向)におけるレーザ光線の照射エリアIAHが所定角度になるように、レーザ光線を左右方向に揺動させる。
図7に示すように、2つのレーザセンサ24Bは、左右方向の中央で2つのレーザセンサ24Bから照射されるレーザ光線の照射エリアIAHが重なるようにレーザ光線を揺動させる。
図8に示すように、レーザセンサ24Bは、車両本体21から下方に傾斜した照射エリアIAVにレーザ光線を照射する。レーザ光線の照射エリアIAH,IAVは、レーザセンサ24Bによる物体等の検出エリアである。ダンプトラック2の走行において、走行経路RPの傍らの物体(土手BK)がレーザセンサ24Bの検出エリアに配置されるように、レーザセンサ24Bの設置位置及びレーザ光線の照射エリアが定められる。なお、レーダ24Aも照射範囲が規定されているが、
図7,8においては照射範囲の図示を省略している。
【0042】
レーダ24A及びレーザセンサ24Bを含む非接触センサ24は、制御システム30の第2通信線37制御システムを介して照合航法位置計測コントローラ33に接続される。
【0043】
<制御システム>
次に、制御システム30を説明する。
図9は、実施形態1に係る、GPS走行モードにおいて制御システム30の走行コントローラ20が位置及び方位を演算する方法を説明する図である。
図10は、実施形態1に係る、照合航法走行モードにおいて制御システム30の照合航法位置計測コントローラ33の照合航法位置演算部33Bが位置及び方位を検出する方法を説明する図である。
図13は、実施形態1に係る制御システム30のマップ保存用データベース36に記憶されるマップデータMIの一部を示す図である。
図14は、
図13中のXIV部を拡大して示す図である。
【0044】
制御システム30は、ダンプトラック2に設置される。制御システム30は、走行経路RPに従ってダンプトラック2を自律走行させる。
図5に示すように、制御システム30は、ジャイロセンサ26と、速度センサ27と、GPS受信器31と、走行経路決定装置32と、照合航法位置計測コントローラ33と、走行コントローラ20と、非接触センサ24と、無線通信装置34と、マップ保存用データベース36とを備える。また、制御システム30は、第1通信線35と、第2通信線37と、安全コントローラ40とを備える。
【0045】
図5に示すように、走行コントローラ20、走行経路決定装置32、照合航法位置計測コントローラ33、マップ保存用データベース36、安全コントローラ40は、第1通信線35に接続され、第1通信線35を介して、データ通信する。走行コントローラ20及び安全コントローラ40は、第2通信線37にも接続され、第2通信線37を介して、データ通信する。
【0046】
ジャイロセンサ26は、ダンプトラック2の方位(方位変化量)を検出する。ジャイロセンサ26は、走行コントローラ20と接続され、検出データを走行コントローラ20に出力する。走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26の検出データに基づいて、ダンプトラック2の方位(方位変化量)を算出する。
【0047】
速度センサ27は、車輪23の回転速度を検出して、ダンプトラック2の走行速度を検出する。速度センサ27は、走行コントローラ20と接続され、検出データを走行コントローラ20に出力する。走行コントローラ20は、速度センサ27の検出データと、走行コントローラ20に内蔵されているタイマーで計測される時間データとに基づいて、ダンプトラック2の移動距離を算出する。
【0048】
GPS受信器31は、ダンプトラック2に設けられ、ダンプトラック2の絶対位置(GPS位置)を検出する。GPS受信器31に、測位衛星5からのデータを受信するアンテナ31Aが接続される。アンテナ31Aは、測位衛星5から受信したデータに基づく信号をGPS受信器31に出力する。GPS受信器31は、測位衛星5からのデータを用いて、アンテナ31Aの位置(GPS位置)を検出する。
【0049】
GPS受信器31は、アンテナ31Aの位置を検出する過程において、検出したGPS位置が、その精度を示すFix解、Float解、又はSingle解のいずれかであるかを検出する。
【0050】
GPS受信器31は、検出したGPS位置の精度を示すFix解、Float解、又はSingle解のいずれかを検出した場合、検出されたGPS位置の精度とともに、GPS位置が測位計算されたことを示す測位信号を出力する。GPS受信器31は、GPS位置が測位計算不能である場合、非測位であることを示す非測位信号を出力する。測位信号又は非測位信号は、走行経路決定装置32を介して、走行コントローラ20及び照合航法位置計測コントローラ33に出力される。実施形態1において、GPSの位置精度がFix解であった場合、検出されたGPS位置に基づいてダンプトラック2が自律走行を行うことができる。GPSの位置精度がFloat解及びSingle解であった場合、もしくはGPS位置が測位計算不能であった場合は、検出されたGPS位置に基づいてダンプトラック2が自律走行を行うことができない。
【0051】
図4に示すように、走行経路決定装置32は、アンテナ34Aが接続された無線通信装置34と接続される。無線通信装置34は、管理装置10及び自車両以外の鉱山機械4の少なくとも一つから送信された指令信号又はデータを受信可能である。自車両以外の鉱山機械4は、ボーリング機械、掘削機械、積込機械、運搬機械、及び作業者が運転する車両のようなダンプトラック2以外の鉱山機械4と、自車両以外のダンプトラック2とを含む。
【0052】
無線通信装置34は、管制施設7の無線通信装置18から送信された指令信号を受信して、走行経路決定装置32を介して走行コントローラ20及び照合航法位置計測コントローラ33に出力する。指令信号は、自車両であるダンプトラックの走行条件を示す走行条件データを含む。走行条件データは、処理装置12で生成されたコースデータ及びダンプトラック2の走行速度データを含む。自車両のコースデータは、XY座標系で規定される。走行経路決定装置32は、無線通信装置34からコースデータを受信し、経路位置記憶部32Aに記憶する。また、走行経路決定装置32は、自車両であるダンプトラック2の位置データ及び方位データを、無線通信装置34を介して、管制施設7の無線通信装置18に送信する。また、走行経路決定装置32は、第1通信線35と接続され、照合航法位置計測コントローラ33や走行コントローラ20等の各種コントローラに指令信号を送信する。
【0053】
走行経路決定装置32は、通信用の入出力部と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、演算処理装置の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(内部記憶装置)と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)のような外部記憶装置(補助記憶装置)と、演算処理装置によりデータが登録される不揮発性メモリのような外部記憶装置(補助記憶装置)と、を備える。走行経路決定装置32の機能は、演算処理装置が外部記憶装置に記憶された制御プログラムを読み込んで主記憶装置の作業領域で実行することにより実現される。経路位置記憶部32Aは、外部記憶装置及び外部記憶装置により実現される。外部記憶装置は、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。なお、複数の処理回路が連携して、走行経路決定装置32の機能を実現してもよい。
【0054】
<走行コントローラ>
走行コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、不揮発性メモリと、を備える。走行コントローラ20は、後述するが、GPS受信器31で検出されたダンプトラック2のGPS位置を示す位置データ及び照合航法位置計測コントローラ33の照合航法位置演算部33Bで算出されたダンプトラック2の絶対位置を示す位置データを受信し、両者の少なくとも一方に基づいて、コースデータによって規定された走行経路RPに従ってダンプトラック2を自律走行させる。
【0055】
走行コントローラ20は、走行経路RPに従ってダンプトラック2を自律走行させるため、ダンプトラック2の位置データのみならず、ジャイロセンサ26の検出データであるダンプトラック2の方位(方位変化量)を示す方位データ及び速度センサ27の検出データであるダンプトラック2の走行速度を示す走行速度データを取得する。
【0056】
実施形態1において、ダンプトラック2は、専ら2つの走行モードで、走行経路RPに従って走行する。第1の走行モードは、
図9に示すように、GPS受信器31の検出データと、ジャイロセンサ26の検出データと速度センサ27の検出データ27を用いた推測航法により推測した位置及び方位データとに基づいて、ダンプトラック2を自律走行させるGPS走行モードである。GPS走行モードでダンプトラック2を走行させる場合、後述するマップデータ作成処理が実施され、マップデータ作成処理において作成されたマップデータMIがマップ保存用データベース36に随時記憶・更新されていく。第2の走行モードは、
図10に記載されているように、GPS走行モード時に作成・更新されたマップデータMIとレーザセンサ24Bの検出データとに基づいて、Scan Matching Navigation(照合航法)という手法を用いてダンプトラック2の絶対位置を示す位置及び方位データを算出し、算出されたダンプトラック2の位置及び方位データに基づいてダンプトラック2を自律走行させる照合航法走行モードである。照合航法走行モードにおいて、ダンプトラック2の位置及び方位データは、照合航法位置演算部33Bにおいて算出される。
【0057】
推測航法とは、既知の位置からの方位(方位変化量)と移動距離(速度)とに基づいて、対象物(ダンプトラック2)の現在位置及び方位を推測する航法をいう。ダンプトラック2の方位(方位変化量)は、ダンプトラック2に配置されたジャイロセンサ26を用いて検出される。ダンプトラック2の移動距離(速度)は、ダンプトラック2に配置された速度センサ27を用いて検出される。ジャイロセンサ26の検出信号及び速度センサ27の検出信号は、ダンプトラック2の走行コントローラ20に出力される。
【0058】
走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26からの検出信号及び速度センサ27からの検出信号に基づいて、推測航法の手法を用いて所定期間毎にダンプトラック2の推定される現在位置を更新し続けながら、ダンプトラック2が走行経路RPに設定されたコースデータに従って走行するように、ダンプトラック2の走行に関する制御量を生成する。制御量は、アクセル信号、制動信号、及び操舵信号を含む。走行コントローラ20は、操舵信号、アクセル信号及び制動信号に基づいて、ダンプトラック2の走行(操作)を制御する。
【0059】
しかし、推測航法による自車両の位置及び方位の推測は、タイヤのわずかなスリップ等により誤差が生じやすい。つまり、推測航法によるダンプトラック2の走行距離が長くなると、ジャイロセンサ26及び速度センサ27の一方又は両方の検出誤差の蓄積により、推測された位置(推測位置)と実際の位置との間に大きな誤差が生じる可能性がある。その結果、ダンプトラック2は、処理装置12によって生成されたコースデータから外れて走行してしまう可能性がある。
【0060】
GPS走行モードにおいては、走行コントローラ20は、推測航法により算出(推測)されたダンプトラック2の位置(推測位置)を、所定期間毎にGPS受信器31により検出されたGPS位置データ及び方位データ(例えば、今回検出されたGPS位置データと前回検出されたGPS位置データとを結んだ直線が示す方向を方位データとして用いることができる)を使って補正することにより、推測航法により蓄積された誤差が大きくなりすぎないようにしつつ、ダンプトラック2を走行させる。照合航法走行モードにおいても、走行コントローラ20は、推測航法により算出(推測)されたダンプトラック2の位置(推測位置)及び方位(推測方位)を、所定期間毎に照合航法位置演算部33Bが算出した照合航法位置データ及び方位データを使って補正することにより、推測航法により蓄積された誤差が大きくなりすぎないようにしつつ、ダンプトラック2を走行させる。
【0061】
図11及び
図12における下方に示されるように、走行コントローラ20が、ジャイロセンサ26及び速度センサ27の検出結果に基づいて推測航法によりダンプトラック2の現在位置を推定する周期をta[msec]とする。また、
図11に示すように、走行コントローラ20には、GPS受信器31の検出結果であるGPS位置を示す検出信号が、tb[msec]毎で入力される。
図11が示すように、推測航法による位置の推定頻度は、GPS検出器31の検出信号が走行コンロローラ20に入力される頻度、すなわち、GPS位置が検出される頻度よりも高い。そのため、推測航法による位置推定を数回行う毎にGPS位置が走行コントローラ20に入力されダンプトラック2の現在位置が補正されるため、推測航法による誤差が大きくなりすぎない。
【0062】
また、
図12に示すように、走行コントローラ20には、照合航法位置演算部33Bの演算結果であるダンプトラック2の位置及び方位を示す位置データが、tc[msec]毎に入力される。
図11が示すように、推測航法による位置の推定頻度は、照合航法位置演算部33Bの演算結果が走行コントローラ20に入力される頻度、すなわち、照合航法位置が算出される頻度よりも高い。そのため、推測航法による位置推定を数回行う毎に照合航法位置演算部33Bによる位置データが走行コントローラ20に入力されダンプトラック2の現在位置が補正されるため、推測航法による誤差が大きくなりすぎない。
【0063】
なお、
図11及び
図12によると、推測航法を数回行う毎に、GPS位置を示す検出信号及び照合航法位置演算部33Bによる位置データが走行コントローラ20に入力されるような頻度となっているが、推測航法を行う頻度と、GPS位置を示す検出信号及び照合航法位置演算部33Bによる位置データが走行コントローラ20に入力される頻度を同程度に設定してもよい。
【0064】
図9において、具体的なGPS走行モードについて説明する。走行コントローラ20は、速度センサ27の検出データ、及びジャイロセンサ26の検出データを用いて推測航法によりダンプトラック2の位置及び方位を算出する。また、GPS受信器31の検出データが走行コントローラ20に入力された場合には、推測航法により算出された位置及び方位とGPS受信器31の検出データとをカルマンフィルタKF(Kalman Filter)により統合してより正確なダンプトラック2の位置及び方位を算出し、その位置及び方位をダンプトラック2の現在位置及び方位として採用する。
【0065】
<照合航法位置計測コントローラ>
図4に示すように、照合航法位置計測コントローラ33は、判定部33Aと、照合航法位置演算部33Bと、マップデータ作成部33Cと、記憶部33Dと、診断部33Eとを備える。
【0066】
照合航法位置計測コントローラ33は、第1通信線35と接続され、第1通信線35及び走行コントローラ20を介して、ジャイロセンサ26の検出データ及び速度センサ27の検出データを取得する。また、照合航法位置計測コントローラ33は、無線通信装置34、走行経路決定装置32、及び第1通信線35を介して、GPS受信器31と接続され、GPS受信器31の検出データを取得する。
【0067】
判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置の精度が所定の精度を超えているか否かを判定する。判定部33Aは、例えばGPS位置の解がFix解であるか否かを判定する。GPS位置の解がFix解である場合、判定部33Aは、検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が高精度であると判定する(この場合、走行コントローラ20において走行モードとしてGPS走行モードが選択される)。GPS位置の解がFloat解、Single解、又はGPS位置が非測位である場合、判定部33Aは、検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が低精度であると判定する(この場合、走行コントローラ20において走行モードとして照合航法走行モードが選択される)。なお、所定の精度は、ダンプトラック2が、後述する推測航法により走行経路RPに従って自律走行することができるGPS位置の精度である。実施形態1において、GPS受信器31がGPS位置及び解の検出を行うが、解の検出を他の機器(例えば、判定部33A)が行ってもよい。
【0068】
マップデータ作成部33Cは、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が所定の精度を超えている、すなわち高精度であると判定部33Aが判定すると(GPS走行モード時)、上述した方法により算出したダンプトラック2の位置及び方位、及びレーザセンサ24Bの検出結果に基づいて、積込場LPAの外側、排土場DPAの外側、搬送路HLの外側の少なくとも一以上に設けられた土手BKの有無及び位置を検出し、土手BKの有無及び位置データを走行経路RPのマップデータMIとしてマップ保存用データベース36に随時記憶、蓄積していく。マップデータ作成部33Cは、ダンプトラック2の位置及び方位と、レーザセンサ24Bの検出結果とを統合し、統合したデータから土手BK以外の検出結果(例えば各種ノイズや地面など)を削除して、土手BKの有無及び位置を検出する。また、マップデータ作成部33Cがマップ保存用データベース36に保存する。なお、マップ保存用データベース36を管理装置10における記憶装置13に格納するようにしてもよい。その場合、ダンプトラック2におけるマップデータ作成部33Cが作成したマップデータを、通信システム9を介してマップ保存用データベース36に送信することになる。
【0069】
図12にあるマップデータMIは、搬送路HL周辺の領域における土手BKの検出結果を示している。搬送路HLは
図12のx方向に延びている中央部にある空白領域であり、土手BKは
図12の上部及び下部にある白黒が疎らになっている領域である。
図13及び
図14に示すように、マップデータMIは、平面視において、鉱山を所定の大きさで区切ったグリッドGRのXY座標系における位置と、各グリッドGRに土手BKが存在するか否かを示す。マップデータMIの各グリッドGRは、土手BKが存在するか否か、すなわち、「0」か「1」かのバイナリデータ(1ビットデータ)を含む。
図13及び
図14に示すように、実施形態1においては、マップデータMIの各グリッドGRは、土手BKが有ると「1」として図中に黒四角で示し、土手BKが無いと「0」として図中に白四角で示す。なお、「0」と「1」のみのバイナリデータではなく、0から1の連続値(例えば0.5等)データとしてマップデータを用意してもよい。例えば、あるグリッドGRにおいて土手BKを検出した回数等に基づいて0から1を上限として数値を徐々に増加させるようにしてもよい。
【0070】
マップ保存用データベース36は、土手BKの位置データをマップデータMIとして記憶する。マップ保存用データベース36は、第1通信線35と接続される。マップ保存用データベース36は、ROM、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つにより構成される外部記憶装置(補助記憶装置)である。マップ保存用データベース36は、土手BKに関する検出結果をマップデータ作成部33Cが検出する度にマップデータMIとして記憶する。実施形態1において、マップ保存用データベース36に記憶されるマップデータMIは、マップデータ作成部33Cが土手BKを検出する度に上書きされる。上書きとは、「0」のグリッドにおいて土手BKが検出されれば「1」に変更し、「1」のグリッドにおいて土手BKが検出されなくても「1」を維持することを意味するが、この実施例に限定されず、「1」のグリッドを「0」に変更できるようにしてもよい。
【0071】
記憶部33Dは、マップ保存用データベース36よりも動作速度が速い主記憶装置(内部記憶装置)である。
【0072】
判定部33Aが、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が所定の精度以下、すなわち低精度であると判定すると(照合航法走行モード時)、照合航法位置演算部33Bは、ジャイロセンサ26の検出結果、速度センサ27の検出結果、レーザセンサ24Bの検出結果、及びマップ保存用データベース36から記憶部33Dに読み込まれ記憶されたマップデータMIに基づいて、ダンプトラック2の位置及び方位を算出する。なお、照合航法位置演算部33Bは、記憶部33Dを用いずにマップ保存用データベース36から直接マップデータMIを呼び出してダンプトラック2の位置及び方位を算出してもよい。
【0073】
診断部33Eは、後述するように、GPS受信器31の検出データ、及び照合航法位置演算部33Bの算出データを取得する。診断部33Eは、GPS検出器31の検出データから導出されるダンプトラック2のGPS位置(絶対位置)と照合航法位置演算部33Bで算出されたダンプトラック2の絶対位置とを比較して、GPS検出器31の検出データの精度を診断する。
【0074】
図10に示すように、照合航法位置演算部33Bは、照合航法走行モード時に、ジャイロセンサ26の検出データ、速度センサ27の検出データ、レーザセンサ24Bの検出データ、及びマップ保存用データベース36に記憶されているマップデータMIをパーティクルフィルタPF(Particle Filter)により統合して、ダンプトラック2の位置及び方位を算出する。具体的な算出方法は後述する。
【0075】
また、
図4に示すように、照合航法位置計測コントローラ33は、観測点座標変換部38と、観測点利用可能判断部39とを備える。観測点座標変換部38は、レーザセンサ24Bからの方向及び距離で規定された座標で示されたレーザセンサ24Bの検出結果の位置を、自車両の位置及び方位に基づいて、XY座標系に変換する。観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果の位置は、X軸方向とY軸方向とに加え、X軸方向及びY軸方向と直交する高さ方向(Z軸方向)により規定される。観測点利用可能判断部39は、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から、上述のとおり各種のノイズ、地表から所定高さ以下の検出結果(地面)等を除去する。観測点利用可能判断部39は、合成した検出結果をマップデータ作成部33C(GPS走行モード時にマップデータ作成のために用いる)と、照合航法位置演算部33B(照合航法走行モード時に自車両の位置及び方位を算出するために用いる)との双方に出力する。
【0076】
安全コントローラ40は、レーダ24A及びレーザセンサ24Bの検出信号に基づいて、ダンプトラック2と物体(土手BK、側壁又は障害物等)との相対位置を求める。安全コントローラ40は、物体との相対位置情報に基づいて、障害物の有無を走行コントローラ20に出力する。走行コントローラ20は、安全コントローラ40から取得した信号に基づいて、アクセル、制動装置23B、及び操舵装置2Sの少なくとも1つを制御するための指令を生成し、当該指令に基づいてダンプトラック2を制御して、ダンプトラック2が物体に衝突することを回避する。
【0077】
<走行モードの決定方法>
次に、実施形態1に係るダンプトラック2の走行モードの一例について説明する。
図15は、実施形態1に係る制御システム30のフローチャートの一例である。
図16は、
図15のステップST4のフローチャートの一例である。
図17は、実施形態1に係るマップ保存用データベース36から記憶部33Dに読み込まれたマップデータMIの一部領域の一例を示す図である。
図18は、実施形態1に係る制御システム30のレーザセンサ24Bが現実に検出した検出結果の一例を示す図である。
図19は、実施形態1に係る制御システム30のレーザセンサ24Bが現実に検出した検出結果に基づいて照合航法位置演算部33Bが自車両の位置及び方位を算出した状態の一例を示す図である。
【0078】
以下、
図15のフローチャートについて説明する。制御システム30の走行コントローラ20は、走行経路RPに設定されたコースデータに従ってダンプトラック2を推測航法により走行させるステップST1を実行する。なお、
図11,11に記載されているように、推測航法による位置推定の頻度が、GPS受信器31からのGPS位置検出頻度よりも高い場合、ステップST1において複数回の推測航法を実施する。
【0079】
次に、GPS受信器31がGPS位置を検出した後、照合航法位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS位置の精度が高精度であるか否かを判定するステップST2を実行する。具体的には、照合航法位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解であるか否かを判定する。照合航法位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解であると判定する、すなわち、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が所定の精度を超えていると判定する(ステップST2:Yes)と、その判定結果を走行コントローラ20に送信し、走行コントローラ20は、GPS走行モードに移行する、もしくはすでにGPS走行モードであった場合にはGPS走行モードを継続する(ST3)。
【0080】
次に、マップデータ作成部33Cにより、マップデータ作成処理が実施され(ステップST4)、マップデータ作成部33Cは、マップデータMIを作成する。具体的には、照合航法位置計測コントローラ33は、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置及び推測航法により算出された位置及び方位に基づいて経路位置記憶部32Aが記憶したコースデータに従ってダンプトラック2を自律走行させるとともに、レーザセンサ24Bの検出結果から土手BKに関する検出結果を抜き出して、抜き出した土手BKに関する検出結果を走行経路RPのマップデータMIとしてマップ保存データベース36に記憶するステップST4を実行する。
【0081】
図16のフローチャートについて説明する。まず、観測点座標変換部38は、ダンプトラック2の位置及び方位に基づいて、レーザセンサ24Bから方向及び距離で規定された座標で示されたレーザセンサ24Bの検出結果の位置を、X−Y座標で示された座標の位置に変換する(ステップST41)。
【0082】
観測点利用可能判断部39は、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から土手BKに関する検出結果を抜き出す(ステップST42)。観測点利用可能判断部39は、土手BKに関する検出結果を抜き出す際には、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から、例えばレーザ光線が埃を検出したと思われる検出結果、地面によりレーザ光線が反射されたと思われる検出結果、レーザ光線が地面上の土の塊を検出したと思われる検出結果等の各種のノイズを除去するようにしてもよい。
【0083】
観測点利用可能判断部39は、各種のノイズなどが除去された検出結果をマップデータ作成部33Cに出力し、マップデータ作成部33Cは、XY座標系で位置が示された上記検出結果である土手BKの位置をグリッドGRで構成されるマップデータMIとしてマップ保存用データベース36に上書き記憶する(ステップST43)。「上書き」とは、上述のとおり、それまで「0」(存在しない)状態であったグリッドに新たに土手BKが検出されたという検出結果が入力されれば「1」(存在する)状態に変更し、それまで「1」の状態であったグリッドに新たに土手が存在しないという検出結果が入力されても「1」の状態を維持することである。また、制御システム1は、ステップST1からステップST4を実行することで、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が所定の精度を超えておりGPS走行モードを継続する間は、レーザセンサ24Bの検出結果から土手BKに関する検出結果を抜き出して、抜き出した土手BKに関する検出結果を走行経路RPのマップデータMIに随時上書き記憶し続ける。
【0084】
また、照合航法位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解ではないと判定する、すなわち、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が所定の精度以下と判定する(ステップST2:No)と、その判定結果を走行コントローラ20に送信し、走行コントローラ20は、照合航法走行モードに移行する、もしくはすでに照合航法走行モードであった場合には照合航法走行モードを継続する(ST5)。
【0085】
具体的には、照合航法位置演算部33Bは、レーザセンサ24Bの検出データと、マップ保存用データベース36に記憶され記憶部33Dに読み込まれたマップデータMIとに基づいて、ダンプトラック2の位置及び方位を算出して、走行経路RPに従ってダンプトラック2を走行させる(ステップST6)。すなわち、照合航法位置計測コントローラ33は、レーザセンサ24Bの検出結果とマップ保存用データベース36が記憶したマップデータMIとを照合することにより、ダンプトラック2の位置及び方位を演算する。なお、照合航法走行モード時であっても、推測航法と照合航法位置演算部33Bによる位置及び方位の演算頻度が
図12のように、推測航法を数回した後に照合航法位置演算部33Bによる位置及び方位の演算を行うような場合、それまで推測航法により推定していたダンプトラック2の位置及び方位に代えて、照合航法位置演算部33Bにより演算された位置及び方位を、ダンプトラック2の現在位置及び方位として採用するようにしてもよい。
【0086】
図17から
図19において示すように、照合航法位置演算部33Bは、マップ保存用データベース36から記憶部33Dに読み込まれたマップデータMIに基づいて、レーザセンサ24Bの検出結果からダンプトラックの現在位置及び方位を算出するものである。照合航法位置演算部33Bによる計算においては、ある時点でダンプトラック2が存在すると予想される範囲内に仮想的に配置した複数の点(パーティクル)PAを用いることにより、計算コストを抑えた上で真の値に近いダンプトラック2の位置及び方位を算出するようにしている。パーティクルを用いた自己位置推定は公知の手法であるため、具体的な説明は割愛する。
【0087】
図17に示されるマップデータMIにおいて、一つ一つの四角はグリッドGRである。そして、色塗りされたグリッドDR1は、土手BKが検出されたグリッドであり、白塗りのグリッドDR3は土手BKが検出されていないグリッドDR3を示している。
図18は、レーザセンサ24Bが現実に検出した検出データDR2を示している。
【0088】
図17に示されるマップデータMIと、
図18に示されるレーザセンサ24Bの検出結果とを照合し、パーティクルを用いた自己位置推定の手法により
図19に示されるように、最終的にダンプトラック2が最も存在する確率が高いであろう位置及び方位の最終推定値(期待値)POを算出する。すなわち、最終推定値POは、必ずしもいずれかのパーティクルPAが存在していた位置から選ばれるわけではない。上記手法により、
図19に示すように、照合航法位置演算部33Bは、マップデータMIにおける土手BKが検出されているグリッドDR1がレーザセンサ24Bが現実に検出した検出データDR2に最も似るダンプトラックの位置及び方位(最終推定値PO)を算出する。照合航法位置演算部33Bは、最終推定値POを算出した際に、最終推定値POとダンプトラック2の絶対位置との差の小ささを表す推定精度、最終推定値POのもっともらしさ(尤度)を表す信頼度も算出する。なお、
図17から
図19では、土手BKが存在するグリッドGRを密な平行斜線で示し、実際の土手BKの検出結果を粗な平行斜線で示している。
【0089】
また、照合航法位置演算部33Bは、算出したダンプトラック2の位置及び方位が、ダンプトラックの現在位置及び方位であるとみなし、再度走行コントローラ20は、推測航法(ステップST1)を実行し、ダンプトラック2が走行経路RPに従って走行するように、ダンプトラック2の走行(操作)を制御する。このように、制御システム30は、ステップST1、ステップST2、ステップST5、及びステップST6を実行することで、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が所定の精度以下であり、照合航法走行モードを継続する間は、レーザセンサ24Bの検出結果とマップ保存用データベース36が記憶した走行経路RPのマップデータMIとを照合することによりダンプトラック2の位置及び方位を算出することを継続しつつ、走行コントローラ20は、照合航法位置計測コントローラ33が算出したダンプトラック2の位置及び方位に基づいて、走行経路RPに従ってダンプトラック2を推測航法により走行させる。
【0090】
<走行経路の設定方法>
上述したように、ダンプトラック2が走行経路RPを走行する場合、推測航法により導出されたダンプトラック2の位置及び方位が、GPS走行モードの場合ではGPS受信器31により検出されたGPS位置に基づいて、照合航法走行モードの場合では照合航法位置演算部33Bにより算出された位置及び方位に基づいてダンプトラック2の現在位置及び方位が補正される。以下の説明においては、GPS受信器31により検出された検出データであるGPS位置を使ってダンプトラック2の走行を制御することを適宜、GPS走行、と称し、照合航法位置演算部33Bにより算出された位置及び方位を使ってダンプトラック2の走行を制御することを適宜、照合航法走行、と称する。
【0091】
図2に示したように、搬送路HLの傍らに土手BKが設けられる。ダンプトラック2は、処理装置12により設定された搬送経路RPに従って走行する。
【0092】
図2に示す例においては、レーザセンサ24Bの検出エリアに土手BKが配置されるように、搬送路HLにおける走行経路RPを規定するコースデータCSが設定される。
図2では、レーザセンサ24Bにより搬送路HLにおける一方(進行方向左側)の土手BKのみを検出するようにコースデータCSが設定されているが、搬送路HLの横幅が小さい場合には、搬送路HLの両側の土手BKを検出するようにしてもよい。ダンプトラック2が走行経路RPに従って走行することにより、照合航法位置計測コントローラ33は、マップデータ作成処理及び照合航法走行を実施することができる。
【0093】
図20は、鉱山において搬送路HLとその搬送路HLを走行するダンプトラック2を有する一部領域を模式的に示す平面図である。この平面図は所定の大きさで区切ったグリッドGRによって構成されており、例えば搬送路HLの傍らには、非接触センサにより物体(土手BK等)が検出されることによって色塗りされた複数のグリッドDR1が表示されている。また搬送路HL外の領域であって、色塗りされていないグリッドDR3は、非接触センサにより物体(土手BK等)が検出されていないグリッドである。すなわち、この平面図はマップデータMIを含んでいる。
【0094】
GPS受信器31は、GPSから信号を受信しダンプトラック2の絶対位置を検出することができるが、電離層シンチレーション等が発生している場合は、それらが発生している時間帯にGPSからの信号を受信できないことがある。GPS受信器31が、ダンプトラック2の絶対位置を精度よく検出するためには、上空に存在する複数のGPSから信号を受信する必要がある。しかし、電離層シンチレーション等が発生している時間帯では、GPS受信器31が信号を受信できる衛星数が減少することにより、GPSによる絶対位置検出の精度が低下する。すなわち、電離層シンチレーション等が発生している時間帯では、GPSの位置検出精度が低下するため、ダンプトラック2はGPS走行することができず、照合航法走行しなければならない。採掘の生産性の低下を防止するためには、電離層シンチレーション等が発生する前に、ダンプトラック2が走行する搬送路のマップデータを構築しておく必要がある。
【0095】
照合航法位置演算部33Bにより精度よくダンプトラック2の位置を推定するためには、例えばGPS走行モード(マップデータ作成処理)において、ダンプトラック2により所定の走行経路RPを走行し、その走行経路RPの傍らに位置する物体(土手BK等)を非接触センサにより検出させ、マップデータを作成、すなわち走行経路RPの傍らに色塗りされたグリッドDR1を多く配置させる必要がある。
【0096】
ダンプトラック2により同じ走行経路RPを複数回走行させ、走行経路RPの傍らの色塗りされたグリッドDR1をより多く配置させる程、その走行経路RPにおけるマップデータの完成度を高めることができる。照合航法走行モードによりマップデータの完成度が高い走行経路RPをダンプトラック2が走行した場合、照合航法位置演算部33Bによりダンプトラック2の絶対位置を精度よく演算することができる。なお、複数のダンプトラック2により同じ走行経路RPを走行させ、各ダンプトラック2が作成したマップデータの結果を重ね合わせることにより、マップデータの完成度を高めるようにしてもよい。
【0097】
マップデータの完成度は、走行経路RPの傍らの任意の領域において、色塗りされたグリッドDR1(第1検出データ)と色塗りされていないグリッドDR3(第2検出データ)との割合に基づいて決定することができる。例えば、走行経路RPの傍らの所定の領域において、色塗りされたグリッドDR1の割合が所定値以上(色塗りされていないグリッドDR3の割合が所定値未満も同様)であればマップデータの完成度を高いと特定し、色塗りされたグリッドDR1の割合が所定値未満であればマップデータの完成度を低いと特定するようにしてもよい。
【0098】
なお、マップデータの完成度を特定するにあたり、ある走行経路をダンプトラック2が走行した回数に基づいて判断してもよい。例えば、ダンプトラック2がある走行経路を所定回数以上走行した場合にはその走行経路のマップデータの完成度が高いと判定し、ダンプトラック2の走行回数が所定回数未満の走行経路についてはマップデータの完成度が低いと判定されるようにしてもよい。
【0099】
また、マップデータの完成度を特定するにあたり、ある走行経路をGPS走行により走行する際、GPSを用いてダンプトラック2の位置を計測しながら走行すると同時に、照合航法位置演算部33Bにおいて照合航法により位置演算を行い、位置演算による結果の推定精度又はもっともらしさ(尤度)に基づいて、位置演算を行った走行経路上の位置におけるマップデータの完成度を特定してもよい。その場合、例えば、照合航法による位置演算による結果の推定精度又は尤度が高かった場合、当該位置におけるマップデータの完成度が高いと判断でき、照合航法による位置演算による結果の推定精度又は尤度が低かった場合、当該位置におけるマップデータの完成度が低いと判断できる。マップデータの完成度が低い位置が連続することにより、マップデータの完成度が低いエリア又は走行経路を特定するようにしてもよい。そして、例えばマップデータの完成度が低い位置、エリア又は走行経路を特定した場合に、その位置、エリア又は走行経路を表示装置16に出力し、表示装置16がその位置、エリア又は走行経路を表示することにより、管理者がマップデータの完成度が低い位置、エリア又は走行経路を確認できるようにしてもよい。
【0100】
「マップデータの完成度が高い」と特定する基準として、照合航法走行モードにおいて十分な絶対位置精度によりダンプトラック2が照合航法走行を行える程度に色塗りされたグリッドDR1の割合が大きいか否かに基づいて判断してもよい。
【0101】
図20のように、マップデータの完成度が高いエリアを第1エリアAR1と設定し、マップデータの完成度が低いエリアを第2エリアAR2と設定する。
図20において、第2エリアAR2以外のエリアを第1エリアAR1として設定しているが、特定の領域を第1エリアAR1と特定するようにしてもよい。第1エリアAR1と第2エリアAR2とをそれぞれ特定するのは、例えば管理装置10における特定部14が行う。第1エリアAR1及び第2エリアAR2は、グローバル座標系において規定される。
【0102】
特定部14がマップデータMIにおける走行経路の傍らの領域を第1エリアAR1と第2エリアAR2に判別するにあたっては、上述のように走行経路の傍らの所定領域における色塗りされたグリッドDR1の割合が所定値以上であるか否かに基づいて判別することができる。
図20のマップデータMIの場合、第2エリアAR2と判別された領域における色塗りされたグリッドDR1の割合は所定値よりも小さく、それ以外の第1エリアAR1と判別された領域における色塗りされたグリッドDR1の割合は所定値よりも大きい。
【0103】
ここで、走行経路の傍らの領域は任意に決定することができる。例えば、走行経路の傍らの領域をある区画に分けて各区画ごとに色塗りされたグリッドDR1の割合を判定するようにしてもよい。また、交差点ISを両端とするルート単位で色塗りされたグリッドDR1の割合を判定するようにしてもよい。例えば、
図20における複数の交差点ISをそれぞれIS1,IS2,IS3とした場合に、IS1とIS3を両端とするルートにおける傍らの領域は、ほぼ色塗りされたグリッドDR1で構成されているため、マップデータの完成度が高いエリアであるのに対し、IS1とIS2を両端とするルートにおける傍らの領域は、ほぼ色塗りされていないグリッドDR3で構成されているため、マップデータの完成度が低いエリアである。また、走行経路の傍らの領域における進行方向に対する横幅は適宜設定することができる。
【0104】
なお、管理装置10における入力装置17(指定部)を用いて、管理者が第1エリアAR1又は第2エリアAR2を手動により設定するようにしてもよい。例えば、表示装置16に表示されたマップデータMIを参照しつつ、マウス等の入力装置17を用いてエリアを指定するようにしてもよい。そして、入力装置17(指定部)により指定されたエリア情報は、同じく管理装置10の特定部14に出力され、第1エリアAR1又は第2エリアAR2が特定される。また、入力装置17(指定部)により指定される対象は、走行経路の傍らの領域に限られず、例えば走行経路そのものについて指定されるようにしてもよい。その場合、入力装置17により、マップデータの完成度が高い第1の走行経路と、マップデータの完成度が低い第2の走行経路とが指定される。また、入力装置17(指定部)により指定された第1エリアAR1又は第1走行経路、もしくは第2エリアAR2又は第2走行経路に関する情報を、走行経路生成部19に出力するようにし、走行経路生成部19が入力装置17からの情報に基づいて走行経路を生成するようにしてもよい。
【0105】
なお、特定部14が特定する対象は、走行経路の傍らの領域におけるマップデータの完成度を特定するという実施例に限られず、例えば走行経路又は搬送路単位でマップデータの完成度の高低を特定するようにしてもよい。
【0106】
第1エリアAR1は、過去においてマップデータ作成処理のためにダンプトラック2が走行したことにより、色塗りされたグリッドDR1が所定割合以上あるエリアを含む。一方、第2エリアAR2は、過去においてマップデータ作成処理のためにダンプトラック2が走行していないエリアを含む。第2エリアAR2は、過去においてマップデータ作成処理のためにダンプトラック2が走行したけれども、色塗りされたグリッドDR1が所定割合以上に達していないエリアも含む。
【0107】
照合航法位置演算部33Bは、マップデータと、土手BK等の物体を検出したときのレーザセンサ24Bの検出データとを照合して、ダンプトラック2の絶対位置を演算する。しかし、第2エリアA2に設定された走行経路RPに従ってダンプトラック2が照合航法走行しようとしても、第2エリアA2のマップデータにおける完成度が十分に高くないため、照合航法位置演算部33Bは、第2エリアAR2において、ダンプトラック2の絶対位置を演算することができない。そのため、ダンプトラック2が照合航法走行モードにより第2エリアAR2を通過する場合、推測航法による誤差の蓄積が解消されず、例えばダンプトラック2を停車しなければならなくなる。
【0108】
電離層シンチレーション等が発生することにより、GPSの精度が低下してしまいGPS走行モードから照合航法走行モードに切り替わると、鉱山内に第2エリアAR2が存在していた場合、ダンプトラック2が照合航法走行により第2エリアAR2を通過しようとした場合に、最悪ダンプトラック2が停止してしまい生産性が低下してしまう。
【0109】
そのため、電離層シンチレーション等が発生しておらず、GPSの精度が高くGPS走行によりマップデータ作成処理を行える状況では、優先的に第2エリアAR2を傍らに有する走行経路を走行し、第2エリアAR2に存在する土手BK等の物体を検出することにより色塗りされたグリッドDR1の割合を増加させ、当該エリアを第1エリアAR1に切り替えることが望まれる。
【0110】
そこで、特定部14で特定された、第1エリアAR1を示すデータ及び第2エリアAR2を示すデータを、処理装置12における走行経路生成部19に出力させ、走行経路生成部19は、ダンプトラック2を走行させる走行経路RPを、優先的に第2エリアAR2を傍らに有する走行経路に設定する。
【0111】
例えば、GPSの精度が高くGPS走行モードにてダンプトラック2がある積込場LPAaとある排土場DPAaとを往復走行している場合であって、ある積込場LPAaとある排土場DPAaとを結ぶ搬送路HLが複数存在し、その内の1つの搬送路HLaの傍らがすべて第1エリアAR1であり、別の搬送路である搬送路HLbの傍らの一部が第2エリアAR2である場合において、ダンプトラック2を積込場LPAaから排土場DPAaに走行させる場合、走行経路生成部19は、第2エリアAR2を有する搬送路HLbにコースデータCS(走行経路RP)を設定する。
【0112】
走行コントローラ20は、GPS走行モードにより、第2エリアAR2に設定されたコースデータCS(走行経路RP)に沿ってダンプトラック2を走行させる。
【0113】
マップデータ作成部33Cは、第2エリアAR2を走行するダンプトラック2に設けられているGPS検出器31の検出データとレーザセンサ24Cの検出データとに基づいて、第2エリアAR2のマップデータを作成する。作成された第2エリアAR2のマップデータは、マップ保存用データベース36に記憶される。
【0114】
例えば、
図20に示されるような搬送路の形状であった場合、ダンプトラック2がマップデータの完成度が低い搬送路HLbを走行するとなると、目的地まで遠回りすることになり、生産性が一時的に低下してしまう。そのためダンプトラック2は、第2エリアAR2の領域がすべて第1エリアAR1に切り替わるまで、又は所定回数HLbを走行するまで、マップデータの完成度が低い搬送路HLbを走行するように設定してもよい。
【0115】
図21は、
図20と同様に、一方の搬送路HLaにおけるマップデータの完成度は高く、他方の搬送路HLbにおけるマップデータの完成度が低い鉱山の一部領域を模式的に示す平面図である。
図20と異なり、2台のダンプトラック2a、2bが存在しており、それぞれのダンプトラックは、異なる位置から同じ目的地を目指して走行しているとする。このような場合、通常は生産性を考慮し2台のダンプトラック2a、2b共に最短経路となる搬送路HLaを通過するように2台のダンプトラックの走行経路が設定される。
図21におけるダンプトラック2a、2bからそれぞれ延びる実線の走行経路は、2台のダンプトラック2a、2bが共に最短経路である搬送路HLaを通過するための走行経路である。
【0116】
しかし、上述したように、鉱山内に第2エリアAR2が存在していた場合、ダンプトラックを優先的に第2エリアAR2を傍らに有する走行経路を走行させ、当該エリアを第1エリアAR1に切り替えることが望まれるため、例えばダンプトラック2aにマップデータの完成度が高い搬送路HLaを通過させ、ダンプトラック2bにマップデータの完成度が低い搬送路HLbを通過させるようにしてもよい。
【0117】
そのようにすれば、生産性を損なうことなく第2エリアAR2の領域を第1エリアAR1に切り替えることができる。
図21におけるダンプトラック2bから延びる破線の走行経路が搬送路HLbを通過させるための走行経路である。なお、ダンプトラック2a、2b共にマップデータの完成度が低い搬送路HLbを通過させるようにしてもよい。
【0118】
次に、第2エリアAR2のマップデータの作成方法について説明する。
図22は、実施形態1に係る第2エリアAR2のマップデータの作成方法の一例を示すフローチャートである。
【0119】
GPS走行モードにおいて、ダンプトラックを走行させ、マップデータ作成部によってマップデータを作成する(ステップST70)。
【0120】
特定部14は、マップデータの内、走行経路の傍らの任意の領域における色塗りされたグリッドDR1の割合を取得する(ステップST71)。
【0121】
特定部14は、取得した色塗りされたグリッドDR1の割合に基づいて、走行経路の傍らの領域を第1エリアAR1と第2エリアAR2とに判別する(ステップST72)。
【0122】
走行経路生成部19は、ダンプトラック2を走行させるための走行経路RPとして、第2エリアAR2を傍らに有する走行経路を優先的に設定する(ステップST73)。
【0123】
第2エリアAR2を傍らに有する走行経路にコースデータCSが設定された後、走行コントローラ20は、GPS受信器31の検出データと第2エリアAR2に設定されたコースデータCSとに基づいて、第2エリアAR2においてダンプトラック2を走行させる。照合航法位置計測コントローラ33は、第2エリアAR2に設定されたコースデータCSに従って走行するダンプトラック2の走行期間において、レーザセンサ24Bで土手BKを検出する(ステップST74)。
【0124】
マップデータ作成部33Cは、第2エリアAR2を走行するダンプトラック2に設けられているGPS検出器31の検出データとレーザセンサ24Cの検出データとに基づいて、第2エリアAR2のマップデータを作成する(ステップST75)。作成された第2エリアAR2のマップデータは、マップ保存用データベース36に記憶される。
【0125】
なお、GPS精度が高くなく照合航法走行モードにより走行する必要がある場合、走行経路生成部19は、マップデータの完成度が低い第2エリアAR2を傍らに有する走行経路を通過しないような走行経路を設定する。そのような場合に第2エリアAR2を傍らに有する走行経路を通過しようとすると、最悪ダンプトラック2が停止することになり生産性が低下するためである。
【0126】
<作用及び効果>
以上説明したように、実施形態1によれば、鉱山においてマップデータの完成度が低い第2エリアAR2が存在する場合、その第2エリアAR2を特定した後、ダンプトラック2が第2エリアAR2を傍らに有する走行経路を走行する頻度が増えるように、敢えてコースデータCSを第2エリアAR2を傍らに有する走行経路に設定することにより、そのコースデータCSを走行するダンプトラック2によって、第2エリアAR2のマップデータを作成することができる。
【0127】
マップデータの完成度が低い第2エリアAR2は、照合航法位置演算部33Eでダンプトラック2の位置データを取得できないエリアである。鉱山において、照合航法位置演算部33Bによってはダンプトラック2の位置データを取得することができない第2エリアAR2が多数又は広範囲に存在すると、照合航法走行させることができるルートが限られてしまう。
【0128】
また、マップデータの完成度が低い第2エリアAR2が多数又は広範囲に存在する場合において、その第2エリアAR2に走行経路RPが設定されてしまうと、ダンプトラック2は、照合航法走行できず、GPS走行モードで走行せざるを得なくなる。さらにGPS検出器31でダンプトラック2の位置データを精度よく取得することが困難な状況の場合(例えばFix解が得られない場合)、ダンプトラック2は、第2エリアAR2に設定された走行経路RPに従って走行することが困難となり、最悪の場合ダンプトラック2が停止することになる。このように、照合航法走行することができるルートが限定されたり、マップデータの完成度が低い第2エリアAR2に走行経路RPが設定されたりした場合、鉱山におけるダンプトラック2の生産性の低下をもたらす。
【0129】
実施形態1においては、GPS受信器31の精度が高い場合において、ダンプトラック2を優先的に第2エリアAR2を傍らに有する走行経路において走行させ、その第2エリアAR2のマップデータを積極的に作成する。そのため、照合航法走行させることができるルートの選択肢を増やすことができるので、鉱山におけるダンプトラック2の生産性の低下を抑制することができる。
【0130】
また、実施形態1のように、管理装置10からコースデータを受け取って鉱山を走行するダンプトラック2は座標において予め決められた走行経路を走行することがあるため、GPS走行時におけるマップデータ作成処理においては、ばらつきの少ない精度の良いマップデータを作成することができる。また、照合航法走行時においては、GPS走行時と同一の走行経路を走行するため、GPS走行時に作成したマップデータに基づいて、精度の良い位置演算が可能となる。
【0131】
<その他の実施形態>
なお、上述の実施形態のステップST70からステップST72において、第2エリアAR2においてGPS検出器31の精度が低下する頻度が高い場合(例えばFix解が得られない場合)、コースデータ作成部である走行経路生成部19は、その第2エリアAR2には敢えてコースデータCSを設定しなくてもよい。第2エリアAR2においてGPS受信器31の精度が低下する場合、走行経路生成部19は、コースデータCSをマップデータの完成度が高い第1エリアAR1を傍らに有する走行経路に設定する。GPS受信器31の精度が低下する頻度が高いエリアにはコースデータCSを設定しないようにすることで、ダンプトラック2は円滑に走行されるので、鉱山の生産性の低下が抑制される。
【0132】
なお、管理装置10における記憶装置13は、鉱山において複数のダンプトラック2が走行する場合、第1のダンプトラック2に設けられているGPS検出器31の検出データとレーザセンサ24Bの検出データとに基づいて作成された第1マップデータと、第2のダンプトラック2に設けられているGPS検出器31の検出データとレーザセンサ24Bの検出データとに基づいて作成された第2マップデータとを統合して、統合マップデータを作成してもよい。第1のダンプトラック2のマップデータ作成部33Cによって作成された第1マップデータと、第2のダンプトラック2のマップデータ作成部33Cによって作成された第2マップデータとは、通信システム9を介して、統合部として機能する管理装置10に送信される。これにより、記憶装置13は、第1マップデータと第2マップデータとを統合して統合マップデータを作成することができる。
【0133】
例えば、鉱山の所定エリアに関して、第1マップデータにおいてはその所定エリアが第1エリアAR1であり、第2マップデータにおいてはその所定エリアが第2エリアAR2である場合がある。第1マップデータと第2マップデータとが統合され、統合マップデータが第1のダンプトラック2及び第2のダンプトラック2に配信されることにより、第1のダンプトラック2及び第2のダンプトラック2のそれぞれは、所定エリアが第1エリアAR1であるマップデータを保有し、走行することができる。この場合、第2のダンプトラック2については、第2マップデータの使用から統合マップデータの使用へ切り替えることにより、照合航法走行することができるルートの選択肢が増えることとなる。
【0134】
なお、第1マップデータと第2マップデータとを統合する統合部は、複数のダンプトラック2のうち少なくとも1つの特定ダンプトラック2のコンピュータに設けられてもよい。その場合、特定ダンプトラック2に、他のダンプトラック2からのマップデータが送信される。特定ダンプトラック2は、他の複数のダンプトラック2から送信されたマップデータを統合して統合マップデータを作成した後、他のダンプトラック2に配信する。
【0135】
なお、上述の実施形態においては、走行経路生成部19、特定部14、及び指定部17は、ダンプトラック2とは別の位置に配置される管制施設7の管理装置10に設けられることとした。走行経路生成部19、特定部14、及び指定部17が、ダンプトラック2のコンピュータに設けられてもよい。例えば、走行経路決定装置32が、走行経路生成部19、特定部14、及び指定部17として機能してもよい。
【0136】
なお、上述の各実施形態においては、照合航法走行時及びGPS走行時(マップデータ作成処理)において、非接触センサ24のうちレーザセンサ24Bの検出データを用いることとした。照合航法走行時及びGPS走行時の少なくとも一方において、非接触センサ24のうちレーダ24Aの検出データが用いられてもよい。なお、非接触センサ24は、ダンプトラック2の周囲の物体との相対位置を計測可能な測距センサであればよい。例えば、非接触センサ24として、ダンプトラック2の周囲の物体の光学像を取得するカメラが用いられてもよい。
【0137】
上述した各実施形態の構成要件は、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものを含む。また、上述した各実施形態の構成要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0138】
上記実施形態では、特定部14が、走行経路の傍らの領域を、マップデータの完成度が高い第1エリアAR1又はマップデータの完成度が低い第2エリアAR2のいずれかに特定し、走行経路生成部19が、第1エリアAR1を傍らに有する走行経路を優先的に通過させるように走行経路を生成することとしていたが、その実施形態に限られず、例えば特定部14が、交差点ISを両端とするルート単位でマップデータの完成度が高いルート(広義の第1エリアAR1とする)とマップデータの完成度が低いルート(広義の第2エリアAR2とする)を特定し、走行経路生成部19が、マップデータの完成度が低いルートを優先的に通過させるように走行経路を生成するようにしてもよい。その際、入力装置17(指定部)によりマップデータの完成度が低いルートを指定できるようにしてもよい。
【0139】
また、上記実施形態においては、照合航法位置演算部33Bによるダンプトラック2の位置及び方位の算出方法として、
図15のフローチャートに記載された方法を用いたが、当該方法に限られず、レーザセンサ24Bによる検出結果と保存されたマップデータとを比較してダンプトラック2の現在位置及び方位を算出する方法であれば、どのような方法であっても構わない。
【0140】
また、上述の実施形態においては、GPS位置の精度が高精度であるか否かを判定する際に、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解であるか否かを判定するようにしていたが、それに限られず、例えばFloat解であっても所定の条件を満たせばGPS位置の精度が高精度である、と判定するようにしてもよい。
【0141】
また、上述の実施形態においては、GPS走行モード、照合航法走行モードのいずれの場合にも推測航法による位置及び方位の推定を行うようにしていたが、GPS受信器からの検出信号又は照合航法位置演算部からの検出信号の検出周期が推測航法と同程度であれば、必ずしも推測航法を行う必要はない。
【0142】
また、上述の実施形態においては、マップデータ作成部33Cをダンプトラック2内に設けるようにしたが、それに限られず、例えば、管理装置10内のコンピュータ11やその他の場所に設けられたサーバ上等にマップデータ作成部33Cを設け、レーザセンサ24Bの検出結果と当該ダンプトラック2の現在位置及び方位等の必要な情報をマップデータ作成部33Cに送信するようにしてもよい。
【0143】
さらに、マップ保存用データベース(マップデータ)をダンプトラック2内に設けるようにしたが、それに限られず、例えば、管理装置10内のコンピュータ11やその他の場所に設けられたサーバ上、その他の鉱山機械4等にマップデータを保存しておき、ダンプトラック2の位置及び方位を照合航法により演算する前に、ダンプトラック2の外部からマップデータを受信するようにしてもよい。
【0144】
上述の実施形態では鉱山にて用いられる鉱山機械を例に説明したが、それに限られず、地下鉱山で用いられる作業機械や、地上の作業現場で用いられる作業機械に適用してもよい。作業機械は、鉱山機械を含むものである。また、「作業機械の制御システム」として、上述の実施形態では地上の鉱山におけるダンプトラックの制御システムを例に説明したが、それに限られず、地上の鉱山における他の鉱山機械、地下鉱山に用いられる作業機械又は地上の作業現場で用いられる作業機械(油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダ等)であって、「位置検出装置」、「非接触センサ」及び「位置演算部」を備える作業機械の制御システムも含んでいる。
【0145】
また、上述の実施形態ではGPS検出器を用いて鉱山機械の位置を検出していたが、それに限られず、周知の「位置検出装置」に基づいて鉱山機械の位置を検出できるようにしてもよい。特に、地下鉱山ではGNSSを検出できないため、例えば、既存の位置検出装置であるIMES(Indoor Messaging System)、疑似衛星(スードライト)、RFID(Radio Frequency Identifier)、ビーコン、測量器、無線LAN、UWB(Ultra Wide Band)、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、ランドマーク(走行経路の傍らに設けた目印)を使用した作業機械の自己位置推定等を用いてもよい。これらの位置検出装置を、地上の鉱山における鉱山機械又は地上の作業現場で用いられる作業機械に用いてもよい。
【0146】
なお、「走行経路の傍らの物体」には、鉱山の走行経路に設けられた土手、側壁等だけではなく、例えば、地下鉱山における走行経路の壁面、地上の作業現場における作業機械の走行経路周辺に存在する盛土や建造物、木等の障害物も含まれる。