(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、内因性応答の活性化を刺激するか、または内因性応答の抑制を阻害する、内因性免疫応答を増強する治療有効量の化合物または薬剤を含む組成物を対象に投与することを含む、疾患、例えば、癌または感染病に罹患している対象の免疫療法のための方法に関する。さらに具体的には、本出願は、阻害性免疫レギュレーターからのシグナル伝達を破壊するか、または阻害する治療有効量の薬剤、例えば、Abまたはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象における内因性免疫応答を増強し、それにより患者を処置するための方法を提供する。1つの態様において、阻害性免疫レギュレーターはPD−1/PD−L1シグナル伝達経路の成分である。したがって、本発明の1つの態様は、PD−1受容体およびそのリガンドであるPD−L1間の相互作用を破壊する治療有効量のAbまたはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法を提供する。1つの好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分はPD−1に特異的に結合する。他の好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分はPD−L1に特異的に結合する。1つの態様は、癌を処置するために、別の抗癌剤、好ましくは抗−CTLA−4 Abと組み合わせての抗−PD−1 Abの使用を含む。1つの他の態様において、対象は、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルにおけるPD−L1の表面発現を測定すること、例えば、試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を決定すること、および、PD−L1が試験組織サンプルにおける細胞の表面上に発現される評価に基づく免疫療法のための患者を選択することを含む方法において、免疫療法のために適当であるとして選択される。
【0036】
用語
本願明細書がより容易に理解され得るために、特定の用語を最初に定義する。本願において使用されるとき、本明細書において明示的に別段提供される場合を除き、以下の用語のそれぞれは、以下に説明されている意味を有する。さらなる定義は、本願中に説明されている。
【0037】
「投与」は、当業者に知られている種々の方法および送達系のいずれかを使用する、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入を示す。本発明のAbのための好ましい投与経路は、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄内または他の非経口投与経路を含む。本明細書において使用される「非経口投与」なるフレーズは、通常注射による腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。あるいは、本発明のAbは、例えば、鼻腔内に、経口に、膣内に、経直腸的に、舌下的に、または局所的に、非経口でない経路、例えば、局所、表皮または粘膜投与経路を介して投与することができる。投与はまた、例えば、1回、複数回および/または長期間にわたって1回以上で行われ得る。
【0038】
本明細書において使用される「有害事象」(AE)は、医学的処置の使用と関連する、あらゆる好ましくない、および一般的に意図されない、または望ましくない徴候(検査所見異常を含む)、症状、または疾患である。例えば、有害事象は、処置に対する応答における免疫系の活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の拡張と関連し得る。医学的処置は1つ以上の関連したAEを有し得、それぞれのAEは同じか、または異なっているレベルの重症度を有し得る。「有害事象を変化する」ことができる方法の言及は、異なる処置レジメンの使用と関連する1つ以上のAEの発生率および/または重症度を減少させる処置レジメンを意味する。
【0039】
「抗体」(Ab)は、限定はしないが、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含み、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、またはその抗原結合部分を含む。それぞれのH鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてV
Hと省略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてV
Lと省略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つの定常ドメイン、C
Lを含む。V
HおよびV
L領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存されている領域が組み入れられている相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに分類することができる。それぞれのV
HおよびV
Lは、以下の順番でアミノ末端からカルボキシ末端に配置されている、3つのCDRおよび4つのFRを含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。Abの定常領域は、宿主組織または因子、例えば、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)への免疫グロブリンの結合を介在し得る。
【0040】
抗体は、一般的に、10
−5から10
−11M
−1以下の解離定数(K
D)により反映される高親和性でその同種抗原に特異的に結合する。約10
−4M
−1以上の任意のK
Dが、一般的に、非特異的結合を示すと考えられる。本明細書において使用されるとき、抗原に「特異的に結合する」Abは、10
−7M以下、好ましくは10
−8M以下、よりさらに好ましくは5x10
−9M以下、およびより好ましくは10
−8Mから10
−10M以下のK
Dを有することを意味する高親和性で、抗原および実質的に同一の抗原に結合するが、高親和性で関連しない抗原に結合しないAbを示す。抗原は、所定の抗原と高度の配列同一性を示すとき、例えば、所定の抗原の配列と少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%、またはよりさらに好ましくは少なくとも99%配列同一性を示すとき、所定の抗原と「実質的に同一」である。一例として、ヒトPD−1に特異的に結合するAbはまた、特定の霊長類種由来のPD−1抗原と交差反応性を有し得るが、特定の齧歯動物種由来のPD−1抗原またはPD−1以外の抗原、例えば、ヒトPD−L1抗原と交差反応し得ない。
【0041】
免疫グロブリンは、一般的に知られているアイソタイプのいずれか由来であってよく、限定はしないが、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含む。IgGサブクラスはまた、当業者によく知られており、限定はしないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされるAbクラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)を示す。「抗体」なる用語は、一例として、天然および非天然Abの両方;モノクローナルおよびポリクローナルAb;キメラおよびヒト化Ab;ヒトまたは非ヒトAb;完全合成Ab;および一本鎖Abを含む。非ヒトAbは、ヒトにおけるその免疫原性を減少させるために、組換え方法によりヒト化され得る。明示的に記載されている場合を除き、文脈上他の意味を示す場合を除き、「抗体」なる用語はまた、前記免疫グロブリンのいずれかの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分を含み、一価および二価のフラグメントまたは部分、および一本鎖Abを含む。
【0042】
「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他のAbを実質的に含まないAbを示す(例えば、PD−1に特異的に結合する単離されたAbは、PD−1以外の抗原に特異的に結合するAbを実質的に含まない)。しかしながら、PD−1に特異的に結合する単離されたAbは、他の抗原、例えば、異なる種由来のPD−1分子に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離されたAbは、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。比較すると、「単離された」核酸は、天然に存在するときの核酸と著しく異なる、すなわち、独特の化学的同一性、性質および有用性を有する物質の核酸組成物を示す。例えば、単離されたDNAは、天然DNAとは違って、天然DNAの自立部分であり、自然界に見られるより大きな構造的複合体、染色体の不可欠な部分ではない。さらに、単離されたDNAは、天然ゲノムDNAとは違って、天然ゲノムDNAが不適当である適用または方法において、例えば、とりわけ、疾患を診断するか、または治療の有効性を評価するために、遺伝子発現を測定する、およびバイオマーカー遺伝子または突然変異を検出するための、PCRプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして、一般的に使用され得る。単離された核酸は、当分野でよく知られている標準技術を使用して、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質を実質的に含まないように精製され得る。単離された核酸の例は、ゲノムDNA、PCR−増幅されたDNA、cDNAおよびRNAのフラグメントを含む。
【0043】
「モノクローナル抗体」(「mAb」)なる用語は、単一の分子組成のAb分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であるAb分子の調製物を示し、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。mAbは単離されたAbの例である。MAbは、ハイブリドーマ、組換え、トランスジェニックまたは当業者に知られている他の技術により生産され得る。
【0044】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有するAbを示す。さらに、Abが定常領域を含むとき、定常領域もまた、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒトAbは、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」なる用語は、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上にグラフトされているAbを含むことを意図しない。「ヒト」Abおよび「完全ヒト」Abなる用語は同義的に使用される。
【0045】
「ヒト化」抗体は、非ヒトAbのCDRドメイン外のいくつか、ほとんど、または全てのアミノ酸がヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置換されているAbを示す。Abのヒト化形態の1つの態様において、CDRドメイン外のいくつか、ほとんど、または全てのアミノ酸は、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されているが、1つ以上のCDR領域内のいくつか、ほとんど、または全てのアミノ酸は変化していない。Abが特定の抗原に結合する能力を破棄しない限り、アミノ酸のいくつかの付加、欠失、挿入、置換または修飾は許容される。「ヒト化」Abは、元のAbと同様の抗原特異性を保持する。
【0046】
「キメラ抗体」は、可変領域がある種に由来であり、定常領域が別の種に由来であるAb、例えば、可変領域がマウスAbに由来であり、定常領域がヒトAbに由来であるAbを示す。
【0047】
Abの「抗原結合部分」(「抗原結合フラグメント」とも称される)は、完全Abにより結合される抗原に特異的に結合する能力を保持するAbの1つ以上のフラグメントを示す。
【0048】
「癌」は、身体における異常細胞のコントロールされない増殖により特徴付けられる種々の疾患の広範なグループを示す。制御されていない細胞分裂および増殖分裂および増殖は、隣接組織に浸潤し、リンパ系または血流を介して身体の遠隔部分に転移さえし得る悪性腫瘍の形成を引き起こす。
【0049】
「免疫応答」は、侵入性病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌性もしくは他の異常細胞、または、自己免疫もしくは病的炎症の場合において、正常ヒト細胞もしくは組織に対する選択的標的化、結合、損傷、破壊および/または脊椎動物の体からの除去を引き起こす、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞および好中球)および肝臓の任意のこれらの細胞により生産される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、および補体を含む)の作用を示す。
【0050】
「免疫レギュレーター」は、免疫応答を調節する物質、薬剤、シグナル伝達経路またはそれらの成分を示す。免疫応答を「制御」、「修飾」または「調節」は、免疫系の細胞またはかかる細胞の活性におけるあらゆる変化を示す。このような制御は、種々の細胞型の数における増加または減少、これらの細胞の活性における増加または減少、または免疫系内で生じることができるあらゆる他の変化により現れ得る免疫系の促進または抑制を含む。阻害性および促進性免疫レギュレーターの両方が同定されており、そのうちのいくつかは、癌微小環境において増強された機能を有し得る。
【0051】
「免疫療法」なる用語は、免疫応答を誘導、増強、抑制または修飾することを含む方法による、疾患に罹患している、または疾患に罹患する危険性を有する、または疾患の再発を有する対象の処置を示す。対象の「処置」または「療法」は、疾患と関連する症状、合併症、状態または生化学的徴候の発症、進行、発達、重症度または再発を逆転、緩和、改善、阻害、遅延または予防する目的を有する対象に対して実施されるあらゆる型の介入またはプロセス、または、該対象への活性剤の投与を示す。
【0052】
「内因性免疫応答を増強」は、対象において存在する免疫応答の有効性または効力を増加させることを意味する。この有効性および効力における増加は、例えば、内因性宿主免疫応答を抑制するメカニズムを克服することにより、または内因性宿主免疫応答を増強するメカニズムを刺激することにより、なし遂げられ得る。
【0053】
細胞表面PD−L1発現に関する「あらかじめ決定された閾値」は、サンプルが細胞表面PD−L1発現に対してポジティブであるとスコア化される腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む試験組織サンプルにおける細胞の割合を示す。mAb28−8でIHCによりアッセイされた細胞表面発現において、細胞表面上でPD−L1を発現する細胞に対するあらかじめ決定された閾値は、細胞の総数の少なくとも約0.01%から少なくとも約20%の範囲である。好ましい態様において、細胞表面上でPD−L1を発現する細胞に対するあらかじめ決定された閾値は、細胞の総数の少なくとも約0.1%から少なくとも約10%の範囲である。さらに好ましくは、あらかじめ決定された閾値は少なくとも約5%である。よりさらに好ましくは、あらかじめ決定された閾値は少なくとも約1%、または1−5%の範囲である。
【0054】
「プログラム死−1(PD−1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体を示す。PD−1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上で主に発現され、PD−L1およびPD−L2の2つのリガンドに結合する。本明細書において使用される「PD−1」なる用語は、ヒトPD−1(hPD−1)、変異体、アイソフォームおよびhPD−1の種ホモログ、およびhPD−1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。完全なhPD−1配列は、GenBank受入番号U64863の下に見いだすことができる。
【0055】
「プログラム死リガンド−1(PD−L1)」は、PD−1に結合したときT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方調節するPD−1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つである(他のものはPD−L2である)。本明細書において使用される「PD−L1」なる用語は、ヒトPD−L1(hPD−L1)、変異体、アイソフォームおよびhPD−L1の種ホモログ、およびhPD−L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。完全なhPD−L1配列は、GenBank受入番号Q9NZQ7の下に見いだすことができる。
【0056】
「シグナル変換経路」または「シグナル伝達経路」は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達における役割を果たす種々のシグナル変換分子間の生化学的関係を示す。「細胞表面受容体」は、例えば、細胞の表面に位置し、シグナルを受け、細胞の細胞膜を通してかかるシグナルを伝達することができる分子および分子の複合体を含む。本発明の細胞表面受容体の例は、活性化T細胞、活性化B細胞および骨髄細胞の表面に位置し、腫瘍浸潤リンパ球における減少およびT細胞増殖における減少を引き起こすシグナルを伝達するPD−1受容体である。シグナル伝達の「インヒビター」は、シグナル伝達経路の任意の構成要素、例えば、受容体またはそのリガンドによって促進性または阻害性に伝達するシグナルの開始、受入または伝達を拮抗または低下する化合物または薬剤を示す。
【0057】
「対象」は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」なる用語は、限定はしないが、脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギおよびフェレット、齧歯動物、例えば、マウス、ラットおよびモルモット、鳥類、例えば、ニワトリ、両生動物、およびは虫類を含む。好ましい態様において、対象は、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレットまたは齧歯動物である。より好ましい態様において、対象はヒトである。「対象」、「患者」および「個体」なる用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0058】
薬物または治療剤、例えば、本発明のAbの「治療有効量」または「治療有効用量」は、単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用されるとき、疾患症状の重症度における減少、疾患症状のない期間の頻度および期間における増加、または疾患苦痛による損傷または能力障害の予防により証明される、疾患の発症に対して対象を保護するか、または疾患の退縮を促進する、薬物のあらゆる量である。治療剤が疾患の退縮を促進する能力は、例えば、臨床試験中でヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデルシステムにおいて、当業者に知られた種々の方法を使用して、または、インビトロアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることにより評価することができる。
【0059】
一例として、抗癌剤は対象における癌の退縮を促進する。好ましい態様において、治療有効量の薬物は、癌を排除する時点への癌の退縮を促進する。「癌の退縮を促進」は、有効量の薬物の投与が、単独で、または抗腫瘍剤と組み合わせて、腫瘍増殖または腫瘍サイズにおける減少、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度における減少、疾患症状のない期間の頻度および期間における増加、または疾患苦痛による損傷または能力障害の予防を引き起こすことを意味する。加えて、処置に関して「有効」および「有効性」なる用語は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、薬物が患者における癌の退縮を促進する能力を示す。生理学的安全性は、薬物の投与による細胞、臓器および/または生物体レベルでの、毒性または他の有害な生理学的効果(副作用)のレベルを示す。
【0060】
腫瘍の処置のための一例として、治療有効量の薬物は、好ましくは、未処置対象と比較して、少なくとも約20%、さらに好ましくは少なくとも約40%、よりさらに好ましくは少なくとも約60%、なおさらさらに好ましくは少なくとも約80%、細胞増殖または腫瘍増殖を阻害する。本発明の他の好ましい態様において、腫瘍退縮は、少なくとも約20日間、さらに好ましくは少なくとも約40日間、よりさらに好ましくは少なくとも約60日間、観察および持続され得る。治療効果のこれらの最終的な測定にもかかわらず、免疫治療薬物の評価はまた、「免疫関連」応答パターンを考慮に入れなければならない。
【0061】
「免疫関連」応答パターンは、癌特異的免疫応答を誘導すること、または天然の免疫プロセスを修飾することによる抗腫瘍効果を生じる免疫療法剤で処置された癌患者においてしばしば観察される臨床反応パターンを示す。この応答パターンは、従来の化学療法剤の評価において、疾患進行に分類され、薬物障害と同義である、腫瘍組織量における初期増加または新規の病変の出現に続く、有益な治療効果により特徴付けられる。したがって、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれらの薬剤の効果の長期モニタリングを必要とし得る。
【0062】
薬物の治療有効量は、癌を発症する危険性がある対象(例えば、前悪性状態を有する対象)または癌の再発を有する対象に、単独で、または抗腫瘍剤と組み合わせて、投与されたとき、癌の発生または再発を阻害する、薬物のあらゆる量である「予防有効量」を含む。好ましい態様において、予防有効量は、完全に癌の発生または再発を予防する。癌の発生または再発を「阻害」は、癌の発生または再発の可能性を減少させる、または完全に癌の発生または再発を予防するのいずれかを意味する。
【0063】
「腫瘍浸潤炎症性細胞」は、一般的に対象における炎症応答に参加し、腫瘍組織に浸潤するあらゆる型の細胞である。このような細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、単球、好酸球、組織球および樹状細胞を含む。
【0064】
代替(例えば、「または」)の使用は、代替の1つ、両方またはそれらの組合せのいずれかを意味すると理解されるべきである。本明細書において使用されるとき、不定冠詞「a」または「an」は、「1つ以上の」の任意の記載または列挙された成分を示すと理解されるべきである。
【0065】
「約」または「本質的に含む」なる用語は、当業者により決定されるとき、特定の値または組成に対して許容される誤差の範囲内であり、値または組成の測定または決定される方法、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する値または組成を示す。例えば、「約」または「本質的に含む」は、当分野での実施を通じて1以内または1以上の標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」または「本質的に含む」は、最大20%の範囲を意味することができる。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに対して、該用語は、値の最大一桁違いまたは最大5倍を意味することができる。特定の値または組成が本出願および特許請求の範囲において提供されるとき、特に明記されていない限り、「約」または「本質的に含む」の意味は、特定の値または組成に対して許容される誤差の範囲内であると考えるべきである。
【0066】
本明細書に記載されているとき、あらゆる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、他に記載のない限り、記載の範囲内のあらゆる整数の値、および、適当なとき、その分数(例えば、整数の十分の一および百分の一)を含むと理解すべきである。
【0067】
本発明の様々な局面は、以下のサブセクションでさらに記載されている。
【0068】
本発明の抗体
本発明のAbは、PD−1またはPD−L1それぞれへの高アフィニティー結合を含む、本明細書に記載されている構造および機能特性を有する種々のAbを含む。これらのAbは、例えば、疾患に罹患している対象を処置するための治療用Abとして、またはそれらの同種抗原を検出するための診断アッセイにおける試薬として使用され得る。高親和性でPD−1に特異的に結合する(例えば、ヒトPD−1に結合し、他の種、例えば、カニクイザル由来のPD−1と交差反応し得る)ヒトmAb(HuMAb)は、米国特許第8,008,449号に記載されており、高親和性でPD−L1に特異的に結合するHuMAbは、米国特許第7,943,743号に記載されている。本発明のAbは、限定はしないが、米国特許第8,008,449および7,943,743号のそれぞれに記載されている抗−PD−1および抗−PD−L1 Abの全てを含む。他の抗−PD−1 mAbは、例えば、米国特許第6,808,710、7,488,802および8,168,757号、およびPCT公開第WO 2012/145493号に記載されており、抗−PD−L1 mAbは、例えば、米国特許第7,635,757および8,217,149号、米国公開第2009/0317368号、およびPCT公開第WO 2011/066389およびWO 2012/145493号に記載されている。これらの抗−PD−1および抗−PD−L1 mAbが本発明の抗体に対して本明細書に記載されている構造および機能特性を示す範囲において、それらもまた本発明の抗体として含まれる。
【0069】
本発明の抗−PD−1抗体
米国特許第8,008,449号に記載されているそれぞれの抗−PD−1 HuMAbは、1つ以上の以下の特性:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴により決定されるとき、1x10
−7M以下のK
DでヒトPD−1に結合する;(b)ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT−細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ生産を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる;(f)ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する;(g)PD−1へのPD−L1および/またはPD−L2の結合を阻害する;(h)抗原特異的メモリー応答を刺激する;(i)Ab応答を刺激する;および(j)インビボでの腫瘍細胞増殖を阻害する、を示すことが証明されている。本発明の抗−PD−1 Abは、ヒトPD−1に特異的に結合し、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの前記特性を示すmAbを含む。
【0070】
米国特許第8,008,449号は、7つの抗−PD−1 HuMAb:17D8、2D3、4H1、5C4(本明細書においてニボルマブまたはBMS−936558とも称される)、4A11、7D3および5F4を例示する。これらのAbの重鎖および軽鎖可変領域をコードする単離されたDNA分子は配列決定されており、可変領域のアミノ酸配列が推定された。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のV
Hアミノ酸配列はそれぞれ、本明細書において配列番号1、2、3、4、5、6および7として提供される。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のV
Lアミノ酸配列はそれぞれ、本明細書において配列番号8、9、10、11、12、13および14として提供される。
【0071】
本発明の好ましい抗−PD−1 Abは、抗−PD−1 HuMAb 17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4を含む。これらの好ましいAbは、ヒトPD−1に特異的に結合し、(a)配列番号:1に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:8に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:2に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:9に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:3に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:10に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:4に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:11に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:5に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:12に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:6に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:13に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(g)配列番号:7に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:14に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む。
【0072】
これらのAbのそれぞれがPD−1に結合することができるとき、V
HおよびV
L配列は、本発明の他の抗−PD−1 Abを調製するように「混合および適合(matched)」され得る。このような「混合および適合」されたAbのPD−1結合は、当分野でよく知られている結合アッセイ、例えば、酵素免疫吸着法アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、放射免疫測定法およびBiacore分析(例えば、米国特許第8,008,449号参照)を使用して試験することができる。好ましくは、V
HおよびV
L鎖が混合および適合されるとき、特定のV
H/V
L対からのV
H配列は構造的に類似のV
H配列と置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のV
H/V
L対からのV
L配列は構造的に類似のV
L配列と置き換えられる。したがって、本発明の抗−PD−1 Abは、(a)配列番号1、2、3、4、5、6および7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および(b)配列番号8、9、10、11、12、13および14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたmAbまたはその抗原結合部分であって、該AbはPD−1、好ましくはヒトPD−1に特異的に結合するmAbまたはその抗原結合部分を含む。
【0073】
上記AbのCDRドメインは、Kabatシステムを使用して現されており、これらのAbはまた、それらの3つの重鎖および3つの軽鎖CDRの組合せにより定義され得る(米国特許第8,008,449号参照)。これらのAbのそれぞれがPD−1に結合することができ、抗原結合特異性がCDR1、CDR2およびCDR3領域により主に提供されるため、V
H CDR1、CDR2およびCDR3配列およびV
κ CDR1、CDR2およびCDR3配列は、本発明のAbもまた構成する他の抗−PD−1 Abを調製するように、「混合および適合」され得る(すなわち、異なるAbからのCDRは混合および適合され得るが、それぞれのAbはV
H CDR1、CDR2およびCDR3およびV
κ CDR1、CDR2およびCDR3を含まなければならない)。このような「混合および適合」されたAbのPD−1結合は、上記結合アッセイ(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、放射免疫測定法およびBiacore分析)を使用して試験され得る。
【0074】
本発明のAbはまた、PD−1に特異的に結合し、特定の生殖細胞系列重鎖免疫グロブリン由来の重鎖可変領域および/または特定の生殖細胞系列軽鎖免疫グロブリン由来の軽鎖可変領域を含む単離されたAbを含む。具体的には、1つの態様において、本発明のAbは、(a)ヒトV
H3−33または4−39生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、および/またはヒトV
κL6またはL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む単離されたAbを含む。V
H3−33、V
H4−39、V
κL6およびV
κL15生殖細胞系列遺伝子によってコードされるV
HおよびV
κ領域のアミノ酸配列は、米国特許第8,008,449号に提供される。
【0075】
本明細書において使用されるとき、Abは、ヒトAbのアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を比較すること、およびヒトAbの配列と配列において最も近い(すなわち、配列同一性の最も良いパーセント)ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することにより、特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン「由来の」重または軽鎖可変領域を含むとして同定することができる。特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン「由来の」ヒトAbは、例えば、天然に起こる体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意図的導入によって、生殖細胞系列配列と比較して、アミノ酸の違いを含み得る。しかしながら、選択されたヒトAbは、一般的に、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較したとき、ヒトであるとヒトAbを同定するアミノ酸残基を含む。ある場合において、ヒトAbは、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0076】
1つの態様において、特定のヒト生殖細胞系列配列由来のヒトAbの配列は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と最大10個のアミノ酸の違いを示す。他の態様において、ヒトAbは、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と最大5、またはさらに最大4、3、2または1個のアミノ酸の違いを示し得る。
【0077】
本発明の好ましいAbはまた、(a)ヒトV
H3−33生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL6生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;または(b)ヒトV
H4−39生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたAbまたはその抗原結合部分を含む。V
H3−33およびV
κL6生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κを有するAbの例は、17D8、2D3、4H1、5C4および7D3を含む。V
H4−39およびV
κL15生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κ領域を有するAbの例は、4A11および5F4を含む。
【0078】
さらに他の態様において、本発明の抗−PD−1 Abは、本明細書に記載されている好ましい抗−PD−1Abのアミノ酸配列と高度に類似または相同であるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、該Abは本発明の好ましい抗−PD−1 Abの機能特性を保持する。例えば、本発明のAbは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むmAbであって、該重鎖可変領域が配列番号1、2、3、4、5、6および7からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含み、該軽鎖可変領域が配列番号8、9、10、11、12、13および14からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むmAbを含む。他の態様において、V
Hおよび/またはV
Lアミノ酸配列は、上記の配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を示し得る。
【0079】
本明細書において使用されるとき、2つの配列(アミノ酸またはヌクレオチド配列)間のパーセント配列同一性(パーセント配列相同性としても称される)は、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、2つの配列間の配列同一性の程度を最大化するように導入される、比較される配列の長さに対する配列で共有される同一位置の数の関数(すなわち、%同一性=同一位置の数/比較される位置の総数x100)である。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当業者によく知られている数学アルゴリズムを使用して成し遂げることができる(例えば、米国特許第8,008,449号参照)。
【0080】
非常に類似のアミノ酸配列を有する抗体は、配列の違いが保存的修飾である場合、本質的に同じ機能特性を有する可能性がある。本明細書において使用されるとき、「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響しないアミノ酸修飾を示す。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。したがって、例えば、本発明のAbのCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、改変されたAbは、当分野でよく知られている機能アッセイを使用して保持された機能について試験することができる。したがって、本発明の抗−PD−1 Abの1つの態様は、CDR1、CDR2およびCDR3ドメインをそれぞれ含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、1つ以上のこれらのCDRドメインは、本明細書に記載されている好ましい抗−PD−1 Ab(例えば、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4)のCDR配列と同じ配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含み、該Abは本発明の好ましい抗−PD−1 Abの所望の機能特性を保持する。
【0081】
さらに、重鎖CDR3がAbの結合特異性およびアフィニティーの主な決定因子であること、および共通のCDR3配列に基づく同じ結合特性を有する複数のAbが予想通りに作製され得ることが当分野でよく知られている(例えば、Klimkaら, 2000; Beiboerら, 2000; Raderら, 1998; Barbasら, 1994; Barbasら, 1995; Ditzelら, 1996; Berezovら, 2001; Igarashiら, 1995; Bourgeoisら, 1998; Leviら, 1993; Polymenis and Stoller, 1994;およびXu and Davis, 2000参照)。前記文献は、一般的に、所定のAbの重鎖CDR3配列が定義されるとき、他の5つのCDR配列における可変がAbの結合特異性に大きく影響しないことを証明している。したがって、6つのCDRを含む本発明のAbは、重鎖CDR3ドメインの配列を特定することにより定義することができる。
【0082】
本発明の抗−PD−1 Abはまた、ヒトPD−1に特異的に結合し、ヒトPD−1への結合に対して、HuMAb 17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のいずれかと交差競合する単離されたAbを含む。したがって、本発明の抗−PD−1 Abは、PD−1への結合に対して、(a)配列番号:1に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:8に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:2に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:9に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:3に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:10に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:4に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:11に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:5に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:12に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:6に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:13に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(g)配列番号:7に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:14に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む、参照Abまたはその参照抗原結合部分と交差競合する単離されたAbまたはその抗原結合部分を含む。
【0083】
Abが抗原への結合に対して交差競合する能力は、これらのAbが抗原の同じエピトープ領域(すなわち、同じまたは重複または隣接エピトープ)に結合し、特定のエピトープ領域への他の交差競合するAbの結合を立体的に妨害することを示す。したがって、試験AbがヒトPD−1への、例えば、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4の結合を競合的に阻害する能力は、試験Abが17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4のそれぞれとヒトPD−1の同じエピトープ領域に結合することを証明する。HuMAb 17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4とヒトPD−1の同じエピトープ領域に結合する全ての単離されたAbは、本発明のAbに含まれる。これらの交差競合するAbは、同じエピトープ領域へのPD−1の結合の理由によって、非常に類似の機能特性を有すると予期される。例えば、交差競合する抗−PD−1 mAb 5C4、2D3、7D3、4H1および17D8は、類似の機能特性を有することが示されている(米国特許第8,008,449号、実施例3−7参照)。交差競合の程度が高いほど、より類似の機能特性である。さらに、交差競合するAbは、標準PD−1結合アッセイにおいて17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4と交差競合するそれらの能力に基づいて、容易に同定することができる。例えば、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーは、本発明のAbとの交差競合を証明するために使用され得る(例えば、実施例1および2参照)。
【0084】
1つの態様において、ヒトPD−1への結合に対して17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4と交差競合するか、または17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4とヒトPD−1の同じエピトープ領域に結合するAbは、mAbである。ヒト患者への投与において、これらの交差競合するAbは、好ましくはキメラAb、またはさらに好ましくはヒト化またはヒトAbである。このようなヒトmAbは、米国特許第8,008,449号に記載されているとおりに、調製および単離することができる。実施例1において提供されたデータは、5C4またはそのFabフラグメントが、細胞の表面上に発現されるhPD−1への結合に対して、2D3、7D3、4H1または17D8のそれぞれと交差競合することを示し、全ての5つの抗−PD−1 mAbがhPD−1の同じエピトープ領域に結合することを示す(
図1A−1C)。
【0085】
本発明の抗−PD−1 Abは、さらに、出発Abから改変された特性を有し得る修飾されたAbを操作するように、出発物質として本明細書に記載されている1つ以上のV
Hおよび/またはV
L配列を有するAbを使用して、調製することができる。Abは、1つまたは両方の可変領域(すなわち、V
Hおよび/またはV
L)内の、例えば、1つ以上のCDR領域内のおよび/または1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより、操作することができる。さらに、あるいは、Abは、例えば、Abのエフェクター機能を改変するように、定常領域内の残基を修飾することにより、操作することができる。Abに対する特定の修飾は、CDRグラフティング、Abの1つ以上の結合特性(例えば、アフィニティー)を改善するようにV
Hおよび/またはV
κ CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基の部位特異的突然変異、Abの免疫原性を減少させるようにV
Hおよび/またはV
κフレームワーク領域内のアミノ酸残基の部位特異的突然変異、一般的にAbの1つ以上の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞毒性を改変するようにFc領域内の修飾、および、Abの生物学的(例えば、血清)半減期を増加または減少させるように化学修飾、例えば、ペグ化またはグリコシル化パターンにおける改変を含む。Abを操作するこのような修飾および方法の特定の例は、米国特許第8,008,449号の詳細に記載されている。本発明の抗−PD−1 Abは、ヒトPD−1に特異的に結合し、上記抗−PD−1 Abのいずれかの修飾により得られる全てのこのような操作されたAbを含む。
【0086】
本発明の抗−PD−1 Abはまた、上記Abの抗原結合部分を含む。Abの抗原結合機能が全長Abのフラグメントにより実行され得ることが詳細に証明されている。Abの「抗原結合部分」なる用語内に含まれる結合フラグメントの例は、(i)V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)V
HおよびC
H1ドメインからなるFdフラグメント;および(iv)Abの単一のアームのV
LおよびV
HドメインからなるFvフラグメントを含む。
【0087】
酵素、例えば、パパインおよびペプシンでのタンパク質分解を介して最初に得られるこれらのフラグメントは、次に、一価および多価の抗原結合フラグメントに操作されている。例えば、Fvフラグメントの2つのドメインのV
LおよびV
Hが別々の遺伝子でコードされるが、それらは、V
LおよびV
H領域が対となり、一本鎖可変フラグメント(scFv)として知られる一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーペプチドにより、組換え方法を使用して連結され得る。二価(divalent)または二価(bivalent)scFvs(di−scFvまたはbi−scFv)は、2つのV
Hおよび2つのV
L領域を含むタンデムscFvとして知られる単一のペプチド鎖内で2つのscFvを連結することにより、操作することができる。scFvをダイマー化し、ダイアボディを生産するか、または他の多量体を形成するようにさせるように、2つの可変領域に関して一緒に折り畳むためには短すぎる10個未満のアミノ酸のリンカーペプチドを使用して、ScFvダイマーおよびそれ以上の多量体も作製することができる。ダイアボディは、scFvに対するK
D値よりも最大40倍低い解離定数を有する、対応するscFvよりもはるかに高いアフィニティーで同種抗原に結合することが示されている。非常に短いリンカー(≦3つのアミノ酸)は、ダイアボディよりも抗原に対してさらに高いアフィニティーを示す三価のトリアボディまたは四価のテトラボディの形成を生じた。他の変異体は、scFv−C
H3ダイマーであるミニボディ、およびより大きなscFv−Fcフラグメント(scFv−C
H2−C
H3ダイマー)を含み、さらに、単離されたCDRは抗原結合機能を示し得る。これらのAbフラグメントは、当業者に知られている慣用の組換え技術を使用して操作され、該フラグメントは、無傷なAbと同じ方法において有用性についてスクリーニングされる。Abおよび関連変異体の上記タンパク質分解フラグメントおよび操作されたフラグメントの全て(さらなる詳細のために、Hollinger and Hudson, 2005; Olafsen and Wu, 2010参照)は、Abの「抗原結合部分」なる用語内に包含されることを意図する。
【0088】
本発明の抗−PD−L1抗体
米国特許第7,943,743号に記載されている抗−PD−L1 HuMAbのそれぞれは、1つ以上の以下の特性(a)1x10
−7M以下のK
DでヒトPD−L1に結合する;(b)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT−細胞増殖を増加させる;(c)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ生産を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる;(e)Ab応答を刺激する;(f)PD−1へのPD−L1の結合を阻害する;および(g)T細胞エフェクター細胞および/または樹状細胞に対するT調節性細胞の抑制効果を逆転する、を示すことが証明されている。本発明の抗−PD−L1 Abは、ヒトPD−L1に特異的に結合し、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも4つの前記特性を示すmAbを含む。
【0089】
米国特許第7,943,743号は、10個の抗−PD−1 HuMAb:3G10、12A4(本明細書においてBMS−936559とも称される)、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4を例示している。これらのAbの重鎖および軽鎖可変領域をコードする単離されたDNA分子は配列決定されており、可変領域のアミノ酸配列が推定された。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のV
Hアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23および24において示され、それらのV
Lアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号25、26、27、28、29、30、31、32、33および34において示される。
【0090】
本発明の好ましい抗−PD−L1 Abは、抗−PD−L1 HuMAb 3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4を含む。これらの好ましいAbは、ヒトPD−L1に特異的に結合し、(a)配列番号:15に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:25に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:16に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:26に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:17に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:27に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:18に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:28に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:19に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:29に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:20に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:30に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(g)配列番号:21に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:31に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(h)配列番号:22に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:32に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(i)配列番号:23に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:33に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(j)配列番号:24に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:34に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む。
【0091】
これらのAbのそれぞれがPD−L1に結合することができるとき、V
HおよびV
L配列は、本発明の他の抗−PD−L1 Abを調製するように「混合および適合」され得る。このような「混合および適合」されたAbのPD−L1結合は、当分野でよく知られている結合アッセイ、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、放射免疫測定法およびBiacore分析(参照、例えば、米国特許第7,943,743号)を使用して試験することができる。好ましくは、V
HおよびV
L鎖が混合および適合されるとき、特定のV
H/V
L対からのV
H配列は構造的に類似のV
H配列と置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のV
H/V
L対からのV
L配列は構造的に類似のV
L配列と置き換えられる。したがって、本発明のAbはまた、配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のいずれかに記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、および配列番号25、26、27、28、29、30、31、32、33または34のいずれかに記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含むmAbまたはその抗原結合部分であって、該AbはPD−L1、好ましくはヒトPD−L1に特異的に結合するmAbまたはその抗原結合部分を含む。
【0092】
上記抗−PD−L1 HuMAbのCDRドメインは、Kabatシステムを使用して現されており、これらのAbはまた、それらの3つの重鎖および3つの軽鎖CDRの組合せにより定義され得る(米国特許第7,943,743号参照)。Since これらのAbのそれぞれがPD−L1に結合することができ、抗原結合特異性がCDR1、CDR2およびCDR3領域により主に提供されるため、V
H CDR1、CDR2およびCDR3配列およびV
κ CDR1、CDR2およびCDR3配列は、本発明のAbもまた構成する他の抗−PD−1 Abを調製するように、「混合および適合」され得る(すなわち、異なるAbからのCDRは混合および適合され得るが、それぞれのAbはV
H CDR1、CDR2およびCDR3およびV
κ CDR1、CDR2およびCDR3を含まなければならない)。このような「混合および適合」されたAbのPD−L1結合は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、放射免疫測定法およびBiacore分析を使用して試験され得る。
【0093】
本発明の抗体はまた、PD−L1に特異的に結合し、特定の生殖細胞系列重鎖免疫グロブリン由来の重鎖可変領域および/または特定の生殖細胞系列軽鎖免疫グロブリン由来の軽鎖可変領域を含む単離されたAbを含む。具体的には、1つの態様において、本発明のAbは、(a)ヒトV
H1−18、1−69、1−3または3−9生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、および/またはヒトV
κL6、L15、A27またはL18生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含むAbを含む。V
H1−18、V
H1−3、V
H1−69、V
H3−9、V
κL6、V
κL15およびV
κA27生殖細胞系列遺伝子によってコードされるV
HおよびV
κ領域のアミノ酸配列は、米国特許第7,943,743号に提供される。
【0094】
本発明の好ましいAbは、(a)ヒトV
H1−18生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL6生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(b)ヒトV
H1−69生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL6生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(c)ヒトV
H1−3生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(d)ヒトV
H1−69生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κA27生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(e)ヒトV
H3−9生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;または(f)ヒトV
H3−9生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL18生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたAbまたはその抗原結合部分を含む。
【0095】
V
H1−18およびV
κL6生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κを有するAbの例は、3G10である。V
H1−69およびV
κL6生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κ領域を有するAbの例は、12A4、1B12、7H1および12B7を含む。V
H1−3およびV
κL15生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κを有するAbの例は、10A5である。V
H1−69およびV
κA27生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κ領域を有するAbの例は、5F8、11E6および11E6aを含む。V
H3−9およびV
κL15生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κを有するAbの例は、10H10である。V
H1−3およびV
κL15生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κを有するAbの例は、10A5である。V
H3−9およびV
κL18生殖細胞系列配列それぞれ由来のV
HおよびV
κを有するAbの例は、13G4である。
【0096】
1つの態様において、本発明の抗−PD−L1 Abは、本明細書に記載されている好ましい抗−PD−L1 Abのアミノ酸配列と高度に類似または相同であるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、該Abは本発明の前記抗−PD−L1 Abの機能特性を保持する。例えば、本発明のAbは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むmAbであって、該重鎖可変領域が配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23および24からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含み、該軽鎖可変領域が配列番号25、26、27、28、29、30、31、32、33および34からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むmAbを含む。他の態様において、V
Hおよび/またはV
Lアミノ酸配列は、上記の配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を示し得る。
【0097】
本発明の抗−PD−L1 Abの1つの態様は、CDR1、CDR2およびCDR3ドメインをそれぞれ含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、1つ以上のこれらのCDRドメインは、本明細書に記載されている好ましい抗−PD−L1 Ab(例えば、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4)のCDR配列と同じ配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含み、該Abは本発明の好ましい抗−PD−L1 Abの所望の機能特性を保持する。
【0098】
重鎖CDR3がAbの結合特異性およびアフィニティーの主な決定因子であるという証拠に基づいて、一般的に、所定のAbの重鎖CDR3配列が定義されるとき、他の5つのCDR配列における可変がAbの結合特異性に大きく影響しないことを証明している。したがって、本発明の抗−PD−L1 Abは、6つのCDRを含み、重鎖CDR3ドメインの配列を特定することにより定義される単離されたAbを含む。
【0099】
本発明の抗−PD−L1 Abはまた、ヒトPD−L1に特異的に結合し、ヒトPD−L1への結合に対して、HuMAb 3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のいずれかと交差競合する単離されたAbを含む。したがって、本発明の抗−PD−L1 Abは、PD−L1への結合に対して、(a)配列番号:15に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:25に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:16に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:26に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:17に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:27に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:18に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:28に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:19に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:29に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:20に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:30に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(g)配列番号:21に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:31に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(h)配列番号:22に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:32に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(i)配列番号:23に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:33に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(j)配列番号:24に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:34に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む、参照Abまたはその参照抗原結合部分と交差競合する単離されたAbまたはその抗原結合部分を含む。
【0100】
AbがヒトPD−L1への結合に対して3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のいずれかと交差競合する能力は、かかるAbが3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のそれぞれの同じエピトープ領域に結合することを証明する。HuMAb 3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7または13G4とヒトPD−L1の同じエピトープ領域に結合する全ての単離されたAbは、本発明のAbに含まれる。これらの交差競合するAbは、同じエピトープ領域へのPD−L1の結合の理由によって、非常に類似の機能特性を有すると予期される。例えば、交差競合する抗−PD−L1 mAb 3G10、1B12、13G4、12A4(BMS−936559)、10A5、12B7、11E6および5F8は、類似の機能特性を有することが示されているが(米国特許第7,943,743号、実施例3−11参照)、異なるエピトープ領域に結合するmAb 10H10は、異なって機能する(米国特許第7,943,743号、実施例11)。交差競合の程度が高いほど、より類似の機能特性である。さらに、交差競合するAbは、当業者によく知られている標準PD−L1結合アッセイ、例えば、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーにおいて同定することができる。好ましい態様において、ヒトPD−1への結合に対して3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7または13G4と交差競合するか、または3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7または13G4とヒトPD−L1の同じエピトープ領域に結合するAbは、mAb、好ましくはキメラAb、またはさらに好ましくはヒト化またはヒトAbである。このようなヒトmAbは、米国特許第7,943,743号に記載されているとおりに、調製および単離することができる。
【0101】
実施例2において提供されたデータは、抗−PD−L1 HuMAb 5F8、7H1、1B12、3G10、10A5、11E6、12A4、12B7および13G4のそれぞれ、すなわち、10H10を除く試験されたHuMAbの全てが、PD−L1細胞を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へのmAb 3G10、10A5、11E6、12A4および13G4の結合を実質的にブロックしたことを示す。HuMAb 10H10は、CHO/PD−L1細胞へのそれ自体の結合のみを実質的にブロックした。これらのデータは、3G10、10A5、11E6、12A4および13G4が、ヒトPD−L1の同じエピトープ領域への結合に対して、10H10を除く試験されたHuMAbの全てと交差競合することを示す(
図2A−F)。
【0102】
実施例3において提供されたデータは、PD−L1細胞を発現するES−2卵巣癌腫細胞へのHuMAb 12A4の結合が、12A4それ自体により、または1B12および12B7により実質的にブロックされ、mAb 5F8、10A5、13G4および3G10により穏やかから有意にブロックされたが、mAb 10H10によりブロックされなかったことを示す。実施例2におけるデータと大きく一致するこれらのデータは、12A4それ自体、ならびに2つの他のHuMab、12B7および1B12が、ヒトPD−L1の同じエピトープ領域、恐らく同じエピトープへの結合に対して、12A4と実質的に交差競合する;5F8、10A5、13G4および3G10が、より低いレベルであるが有意なレベルで12A4との交差競合を示し、これらのmAbが12A4エピトープと重複するエピトープに結合し得ることを示唆する;ところが、10H10が12A4と全く交差競合せず(
図3)、このmAbが12A4と異なるエピトープ領域に結合することを示唆することを示す。
【0103】
本発明の抗−PD−L1 Abはまた、本明細書に記載されている1つ以上のV
Hおよび/またはV
L配列を有するAbから出発して操作されたAbであって、出発Abから改変された特性を有し得る操作されたAbを含む。抗−PD−L1 Abは、本発明の修飾された抗−PD−1 Abの操作のために、上記の種々の修飾により操作することができる。
【0104】
本発明の抗−PD−L1 Abはまた、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織標本におけるPD−L1に結合する能力に対して選択された単離されたAbを含む。FFPEサンプルの使用は、腫瘍におけるPD−L1発現および疾患の予後または進行間の相関関係の長期間追跡調査分析のために重要である。さらに、PD−L1発現を測定することにおける試験は、一般的にIHCによりFFPE標本におけるPD−L1を染色するために使用することができる抗−ヒトPD−L1 Ab(Hamanishiら, 2007)および、特に、これらの組織における膜のPD−L1に特異的に結合するAbを単離することにおける困難性のために、凍結標本においてしばしば行われている。凍結 対 FFPE組織におけるPD−L1を染色するための異なるAbの使用、および特定のAbがPD−L1の膜形態および/または細胞質形態を区別する能力は、PD−L1発現が疾患の予後と関連している文献において報告されているいくつかの異なるデータを説明し得る(Hamanishiら, 2007; Gadiot et al., 2011)。本出願は、腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含むFFPE組織サンプルにおける膜のヒトPD−L1に高親和性で特異的に結合するいくつかのウサギmAbを提供する。
【0105】
ウサギおよびマウス抗−hPD−L1 mAbは、実施例9に記載されているとおりに生産された。スクリーニングされた約200個のAbマルチクローンのうち、10個のみのウサギマルチクローンAbがPD−L1の膜形態を特異的に検出することが見出され、上位5つのマルチクローン(指定された番号13、20、28、29および49)を次にサブクローニングした。膜のPD−L1の特異的に最も強力な検出を生じたクローン、ウサギクローン28−8は、IHCアッセイに関して選択された。mAb28−8の可変領域の配列はそれぞれ、配列番号35および36に記載されている。Kabatシステムを使用して現されているとき、mAb28−8の重鎖および軽鎖CDRドメインの配列は、配列番号37−42に記載されている。ウサギクローン28−1、28−12、29−8および20−12は、FFPE組織における膜のPD−L1の強力な検出に関して次に良いmAbであった。
【0106】
本発明の抗−PD−L1 Abはまた、Fab、F(ab’)
2、Fd、Fv、およびscFv、di−scFvまたはbi−scFv、およびscFv−Fcフラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、および単離されたCDRを含む上記Abの抗原結合部分を含む(さらなる詳細のためにHollinger and Hudson, 2005; Olafsen and Wu, 2010参照)。
【0107】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本願明細書の別の局面は、本発明のAbのいずれかをコードする単離された核酸分子に関する。これらの核酸は、全細胞において、細胞溶解物において、または部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態において存在し得る。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでいても、含んでいなくてもよい。好ましい態様において、核酸はcDNAである。
【0108】
本発明の核酸は、標準分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、さらに以下に記載されているヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されるハイブリドーマ)により発現されるAbにおいて、ハイブリドーマにより作製されるAbの軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ技術を使用する)から得られるAbをコードする核酸は、ライブラリーから回収することができる。
【0109】
本発明の好ましい核酸分子は、抗−PD−1 HuMAb、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のV
HおよびV
κ配列をコードするもの(米国特許第8,008,449号に記載されている)、および抗−PD−L1 HuMAb、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のV
HおよびV
κ配列をコードするもの(米国特許第7,943,743号に記載されている)である。V
H領域をコードする単離されたDNAは、V
HをコードするDNAを、当分野で知られており、標準PCR増幅により得ることができる配列である重鎖定常領域(C
H1、C
H2およびC
H3)をコードする別のDNA分子に、作動可能に連結することにより、全長重鎖遺伝子に変換することができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、好ましくはIgG1またはIgG4定常領域である。同様に、V
L領域をコードする単離されたDNAは、V
LをコードするDNAを、当分野で知られており、標準PCR増幅により得ることができる配列である軽鎖定常領域(C
L)をコードする別のDNA分子に、作動可能に連結することにより、全長軽鎖遺伝子に変換することができる。軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域であり得るが、より好ましくはカッパ定常領域である。
【0110】
医薬組成物
本発明の抗体は、1つのAbまたはAbの組合せ、またはそれらの抗原結合部分、および薬学的に許容される担体を含む組成物、例えば、医薬組成物を構成し得る。本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である、あらゆるおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、該担体は、(例えば、注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与のために適当である。本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される塩、酸化防止剤、水性および非水性担体、および/またはアジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。
【0111】
投与レジメンは、最適な所望の応答、例えば、治療応答または最小の副作用を提供するように調整される。抗−PD−1または抗−PD−L1 Abの投与において、用量は、約0.0001から約100mg/kg対象の体重、通常約0.001から約20mg/kg対象の体重、さらに通常約0.01から約10mg/kg対象の体重の範囲である。好ましくは、用量は、0.1−10mg/kg体重の範囲内である。例えば、用量は、0.1、0.3、1、3、5または10mg/kg体重、さらに好ましくは、0.3、1、3または10mg/kg体重であり得る。投与スケジュールは、一般的に、Abの典型的な薬物動態学的特性に基づく持続的受容体占有(RO)を引き起こす暴露をなし遂げるように設計される。典型的な処置レジメンは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1月に1回、3月に1回または3月から6月に1回の投与を必要とする。用量およびスケジューリングは、処置の経過中に変化され得る。例えば、投与スケジュールは、(i)6週サイクルにおいて2週毎;(ii)6回投与を4週毎、次に、3月毎;(iii)3週毎;(iv)1回の3−10mg/kg体重、次に、2−3週毎に1mg/kg体重で、Abを投与することを含み得る。IgG4 Abが、一般的に、2−3週の半減期を有することを考慮すると、本発明の抗−PD−1または抗−PD−L1 Abに対する好ましい投与レジメンは、完全応答または確立した進行性疾患まで、最大6週または12週サイクルにおいて14日毎で与えられるAbにおいて、静脈内投与を介する0.3−10mg/kg体重、好ましくは3−10mg/kg体重、さらに好ましくは3mg/kg体重を含む。
【0112】
いくつかの方法において、異なる結合特異性を有する2つ以上のmAbは、投与されるそれぞれのAbの用量が指定された範囲内である場合において、同時に投与される。抗体は、通常、複数回投与される。単回投与間の間隔は、例えば、1週毎、2週毎、3週毎、1月毎、3月毎または1年毎であり得る。間隔はまた、患者における標的抗原に対するAbの血液レベルを測定することにより必要を示すとき、不規則であり得る。いくつかの方法において、用量は、約1−1000μg/ml、およびいくつかの方法において、約25−300μg/mlの血漿Ab濃度をなし遂げるように調整される。
【0113】
あるいは、Abは、低頻度の投与が必要とされる場合において、持続放出製剤として投与することができる。用量および頻度は、患者におけるAbの半減期に依存して変化する。一般的に、ヒトAbは、最も長い半減期を示し、ヒト化Ab、キメラAb、および非ヒトAbが続く。投与の用量および頻度は、処置が予防的または治療的であるかに依存して変化され得る。予防的適用において、一般的に、比較的低用量が、長期間にわたって比較的低頻度の間隔で投与される。一部の患者は、余生にわたって処置を受け続ける。治療的適用において、疾患の進行が低下または終結されるまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が、ときどき必要とされる。その後、患者は予防レジメン投与され得る。
【0114】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に過度の毒性を与えることなく、特定の患者、組成物および投与様式に対して所望の治療応答をなし遂げるために有効である活性成分の量を得るように変化され得る。選択される用量レベルは、種々の薬物動態学因子、例えば、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、処置期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康および過去の病歴、および医薬分野においてよく知られた因子などに依存する。本発明の組成物は、1つ以上の種々の当分野でよく知られている方法を使用して、1つ以上の投与経路を介して投与することができる。当業者により理解されるとおり、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変化する。
【0115】
本発明の使用および方法
本発明のAb、Ab組成物、核酸および方法は、多数のインビトロおよびインビボでの有用性、例えば、標的ポリペプチドへAbを結合させること、またはこれらのポリペプチドをコードする核酸の量を測定することを含む、PD−1またはPD−L1の発現を決定および定量する方法、および、阻害性免疫レギュレーターからシグナル伝達を阻害する治療有効量の治療剤を含む組成物を対象に投与することを含む、疾患に罹患している対象の免疫療法のための方法を有する。後者の方法の好ましい態様において、阻害性免疫レギュレーターはPD−1/PD−L1シグナル伝達経路の成分であり、治療剤はこの経路のシグナル伝達を破壊する。さらに好ましくは、治療剤はPD−1およびPD−L1間の相互作用を妨げるAbである。この方法の1つの好ましい態様において、Abは、PD−1に特異的に結合し、PD−1とPD−L1および/またはPD−L2との相互作用をブロックする。他の好ましい態様において、治療剤は、PD−L1に特異的に結合し、PD−L1とPD−1および/またはB7−1(CD80)との相互作用をブロックするAbである。したがって、本出願は、PD−1およびPD−L1間の相互作用を破壊するために抗−PD−1および/または抗−PD−L1 Abを投与することを含む、対象における免疫応答を増強するための方法、および免疫応答のかかる増強によって介在される疾患を処置する方法を提供する。PD−1およびPD−L1に対するAbが共に投与されるとき、該2つは、任意の順序において連続して、または同時に投与することができる。1つの局面において、本出願は、対象における免疫応答が修飾されるように、本発明の抗−PD−1および/または抗−PD−L1 Ab、またはそれらの抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を修飾する方法を提供する。好ましくは、免疫応答は、増強されるか、増大されるか、刺激されるか、または上方調節される。好ましい態様において、本発明のAbはヒトAbである。
【0116】
好ましい対象は、免疫応答の増大を必要とするヒト患者を含む。本明細書に記載されている免疫治療方法は、T細胞介在免疫応答を増強することにより処置することができる障害を有するヒト患者を処置するために特に適当である。1つの態様において、該方法は、感染因子により引き起こされる疾患に罹患している対象の処置のために使用される。好ましい態様において、該方法は、癌に罹患している、または癌に罹患する危険性を有する対象の処置のために使用される。
【0117】
癌免疫療法
PD−1/PD−L1相互作用の遮断は、インビトロで免疫応答を増強する(米国特許第8,008,449および7,943,743号;Fifeら, 2009)および前臨床抗腫瘍活性を介在する(Dongら, 2002; Iwaiら, 2002)ことが示されている。しかしながら、これらの2つのAbによりブロックされる可能性がある分子間相互作用は同一ではない:本発明の抗−PD−1 AbはPD−1/PD−L1を破壊し、PD−1/PD−L2相互作用を破壊する可能性がある;対照的に、本発明の抗−PD−L1 Abはまた、PD−1/PD−L1相互作用を破壊するのに対して、それらはPD−1/PD−L2相互作用をブロックしないが、代わりにPD−1−独立性PD−L1/CD80相互作用を破壊し得、また、インビトロおよびインビボでT−細胞応答を下方調節することが示されている(Parkら, 2010; Patersonら, 2011; Yangら, 2011; Butteら, 2007; Butteら, 2008)。したがって、これらの様々なリガンド−受容体対合の中で、異なる相互作用が異なる癌型で優位を占め、2つのAbに対して異なる活性プロフィールに寄与することもある。
【0118】
アンタゴニスト性AbによるPD−1/PD−L1相互作用の破壊は、患者における癌性細胞に対する免疫応答を増大することができる。PD−L1は、正常ヒト細胞において発現されないが、種々のヒトの癌において豊富である(Dongら, 2002)。PD−1およびPD−L1間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)における減少およびT細胞受容体介在増殖における増加に現れるようにT細胞応答を弱め、T細胞アネルギー、枯渇またはアポトーシス、および癌性細胞による免疫回避を引き起こす(Zou and Chen, 2008; Blankら, 2005; Konishiら, 2004; Dongら, 2003; Iwaiら, 2002)。免疫抑制は、抗−PD−1および/または抗−PD−L1 Abを使用して、PD−L1およびPD−1間の局所的相互作用を阻害することにより逆転することができる。これらのAbは、癌性腫瘍の増殖を阻害するために、単独でまたは組合せにおいて使用され得る。加えて、これらのAbのいずれか、または両方は、他の免疫原性剤および/または抗癌剤、例えば、サイトカイン、標準癌化学療法、ワクチン、放射線療法、外科処置または他のAbと共に使用され得る。
【0119】
抗−PD−1抗体を使用する癌患者の免疫療法
本出願は、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法であって、PD−1とPD−L1および/またはPD−L2との相互作用を破壊する治療有効量のAbまたはその抗原結合部分を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。本出願はまた、腫瘍細胞の増殖を阻害するために有効な量においてPD−1とPD−L1および/またはPD−L2との相互作用を破壊するAbまたはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。好ましい態様において、対象はヒトである。他の好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分は、本発明の抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分である。1つの態様において、Abまたはその抗原結合部分は、IgG1またはIgG4アイソタイプである。他の態様において、Abまたはその抗原結合部分は、mAbまたはその抗原結合部分である。さらなる態様において、Abまたはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトAbまたはその抗原結合部分である。ヒト患者を処置するための好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分は、ヒトAbまたはその抗原結合部分である。
【0120】
実施例に記載されている臨床試験は、癌を処置するために、抗−PD−1 HuMA、ニボルマブ(米国特許第8,008,449号において5C4と称される)を使用した。5C4が臨床試験に参加するためのリードAbとして選択されたが、特筆すべきは、いくつかの本発明の抗−PD−1 Abが、5C4の治療活性に重要である5C4機能特性、例えば、ヒトPD−1に高親和性で特異的に結合すること、MLRアッセイにおいてT−細胞増殖、IL−2分泌およびインターフェロン−γ生産を増加させること、PD−1へのPD−L1および/またはPD−L2の結合を阻害すること、およびインビボで腫瘍細胞増殖を阻害することを共有することである。さらに、本発明の特定の抗−PD−1 Ab、17D8、2D3、4H1および7D3は、それぞれV
H3−33およびV
κL6生殖細胞系列配列に由来の配列を有するV
HおよびV
κ領域を含む5C4と構造的に関連する。加えて、5C4、2D3、7D3、4H1および17D8は全て、hPD−1の同じエピトープ領域への結合に対して交差競合する(実施例1)。したがって、ニボルマブおよび他の抗−PD−1 HuMabの前臨床特性化は、本明細書において提供される癌を処置する方法が本発明の広範な属の抗−PD−1 Abから選択される種々のAbを使用して実施され得ることを示す。
【0121】
したがって、本明細書に記載されている免疫療法方法の1つの態様は、(a)ヒトV
H3−33生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL6生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域、または(b)ヒトV
H 4−39生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分を患者に投与することを含む。
【0122】
1つの他の態様において、患者に投与されるAbまたはその抗原結合部分は、PD−1への結合に対して、(a)配列番号:1に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:8に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:2に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:9に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:3に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:10に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:4に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:11に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:5に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:12に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:6に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:13に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(g)配列番号:7に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:14に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む、参照Abまたはその参照抗原結合部分と交差競合する。好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分は、PD−1への結合に対して、ニボルマブと交差競合する。
【0123】
本明細書に記載されている免疫療法方法の1つの態様において、患者に投与される抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分は、(a)配列番号:1に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:8に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:2に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:9に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:3に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:10に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:4に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:11に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:5に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:12に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:6に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:13に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(g)配列番号:7に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:14に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む。好ましい態様において、抗−PD−1 Abまたは抗原結合部分は、配列番号:4に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:11に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む。他の好ましい態様において、抗−PD−1 Abはニボルマブである。
【0124】
本願の方法の1つの態様において、抗−PD−1 Abは、静脈内投与のために製剤化される。好ましい態様において、該Abは、2週間毎に60分にわたって、3mg/kgの用量で静脈内に投与される。一般的に、処置は、臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで続けられる。
【0125】
以下の実施例に記載されている抗−PD−1免疫療法の臨床試験において、しっかり前処置された患者においてでさえ、持続的な臨床反応での興味深いORが、NSCLC、MELおよびRCC患者のかなり大きな割合を含む多発性腫瘍型にわたって、肝臓、肺、リンパ節および骨を含む転移の種々の部位において観察された。MELおよびRCCは、癌免疫療法、例えば、MELおよびRCCの両方においてインターフェロン−アルファおよびインターロイキン−2(Etonら, 2002; Coppinら, 2005; McDermott and Atkins, 2006)およびMELにおいて抗−CTLA−4 Ab(Hodiら, 2010)に対して応答することが以前に証明されている免疫原性新生物であると考えられる。MEL患者において、有意なORRが、0.1、0.3、1、3または10mg/kgの異なる用量にわたってニボルマブで約31%の全反応率で観察され、同様に、約30%の同等のORRが、1または10mg/kgのニボルマブ用量で処置されたRCC患者において観察された(実施例7参照)。対照的に、免疫療法は、歴史的に、肺癌において非常に低い成功率であった。この失敗は、「非免疫原性」であるNSCLCに起因している(例えば、Holt and Disis, 2008; Holtら, 2011参照)。肺癌が免疫系を阻止する能力は、免疫抑制性サイトカインの分泌、主要組織適合遺伝子複合体抗原発現の喪失、およびT細胞阻害経路の共選択(co-opting)を含む複数の因子に起因する(Dasanuら, 2012; Marincolaら, 2000; Brahmerら, 2012)。
【0126】
肺癌において歴史的に見られる免疫療法の限られた有効性および免疫系攻撃を回避するために肺癌細胞により使用される種々のメカニズムにもかかわらず、種々の腫瘍細胞ワクチン(例えば、ベラゲンプマツセル(belagenpumatucel)−L、TGF−β2の作用をブロックする全細胞ベースのワクチン)および抗原特異的抗腫瘍免疫を増強させる抗原ベースのワクチン(例えば、体液性EGFワクチンおよびMAGE−A3融合タンパク質または腫瘍関連MUC1抗原の一部を包含するワクチン)は、臨床試験において評価されている(Holtら, 2011; Shepherdら, 2011; Dasanuら, 2012; Brahmerら, 2012)。しかしながら、かかる抗原特異的ワクチンはNSCLCの処置のためにいくつか有望であることが示されているが、Holtら(2011)は、非特異的免疫治療介入に関する試験がNSCLCにおける結果を改善することに失敗したことを記載しており、それらを抗原特異的ワクチンと組み合わせる必要性を示唆した。これらの著者は、NSCLCの真に有効な免疫療法が抗腫瘍免疫を増強させる、および腫瘍介在免疫抑制を中和する両方の戦略の実施に起因するのみであるという見解を述べ、NSCLC患者における存在しない、または弱い初期の免疫応答が免疫系の非特異的刺激または免疫抑制の除去が臨床転帰における変化を生じさせることは起こりそうもないと結論付けた。
【0127】
したがって、NSCLCで本明細書において報告された結果は、特に顕著であり、予期し得ないものであり、驚くべきものである。NSCLC患者において、ORが、1、3または10mg/kgのニボルマブ用量でそれぞれ3%、24%および20%の反応率で観察された(実施例7参照)。ORは、NSCLC組織を介して観察された:54人の扁平上皮のうち9人の応答者(17%)、および74人の非扁平上皮のうち13人(18%)。有意な以前の治療で(以前の治療の3ラインで54%)および組織を介してNSCLC患者においてニボルマブで見られる活性のこのレベルは、とりわけ扁平上皮組織患者において前例がなく(Gridelliら, 2008; Miller, 2006参照)、存在する標準治療と比較して、有効性および安全性に関して、非常に好ましい利益/動態的リスク(risk dynamic)を提供する。
【0128】
本願の免疫療法の1つの態様において、抗−PD−1 Abは、白金ベースの治療(維持にかかわらず)および1つの他の処置の後に、進行性または転移性扁平上皮または非扁平上皮NSCLCに局所的に単剤療法として示される。他の態様において、抗−PD−1 Abは、白金を用いた治療および1つの他の以前の化学療法レジメンの失敗後に、進行性または転移性扁平上皮または非扁平上皮NSCLCに局所的に単剤療法として示される。さらなる態様において、抗−PD−1 Abは、白金ベースのレジメンを含まなければならない1つの治療の2つのラインの失敗後に、進行性または転移性扁平上皮または非扁平上皮NSCLCに局所的に単剤療法として示される。さらにさらなる態様において、抗−PD−1 Abは、少なくとも1つの以前の化学療法後に、少なくとも1つの以前の白金ベースの治療の失敗後に、または、少なくとも1つの白金二重(doublet)治療に対する進行後に、進行性または転移性扁平上皮または非扁平上皮NSCLCに局所的に単剤療法として示される。本明細書に記載されている免疫療法方法の全てにおいて、処置は、臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで続けられ得る。
【0129】
しっかり前処置された癌患者における抗−PD−1に対する臨床反応の持続性
最初に実験モデルにおいて示された抗腫瘍免疫を抑制することにおけるPD−1経路の重要な役割は、現在、臨床試験において確認されている。本明細書に記載されているとおり、PD−1をブロックする薬物(ニボルマブ)またはその主なリガンドであるPD−L1をブロックする薬物(BMS−936559)での単剤療法は、処置難治性進行性癌を有する患者において退縮を媒介することができる。標準サルベージ療法が、歴史的に、これらの患者においてわずかな利益を示すため(Scagliottiら, 2011)、扁平上皮組織を有する患者を含む、抗−PD−1 Abを受けるしっかり前処置されたNSCLC患者における客観的応答率(ORR)は、驚くべきものであり、予期し得ないものである。この試験において標準RECISTにより測定されるとき、ORは、129人の応答者のうち22人において約18月の中央応答期間で、長期であった(実施例7参照)。加えて、応答の免疫関連パターンと一致する腫瘍退縮のパターンが観察された。
【0130】
これらの見出したことは、腫瘍学における新規治療的焦点として、PD−1経路を確立している(Pardoll, 2012; Topalianら, 2012c; Hamid and Carvajal, 2013)。患者の54%が3つ以上の以前の全身性レジメン後に進行性疾患を有した現在の試験において、予備的な分析が2013年3月までで行われた。この最新の分析は、以前の2012年2月の分析から得られたデータおよび到達された結論をサポートし、強化している。したがって、慣用のORまたは長期疾患の安定化が、試験された全ての用量にわたって、NSCLC(17%および10%、各々)、MEL(31%、7%)およびRCC(29%、27%)で患者において立証された(実施例7参照)。さらに、13人の患者(4%)は、抗−CTLA−4治療で以前に記載されているとおり、通常とは異なる「免疫関連」応答パターンを示し、このうちの一部の人は持続された(Sharmaら, 2011)。
【0131】
抗−PD−1 Abで処置された患者における多発性癌型にわたるORの持続性は、特に顕著である。最新の分析は再び、一般的に、今まで、化学療法または小分子インヒビターで観察されていないが、イピリムマブおよび高用量のインターロイキン−2を含む免疫療法を受ける進行性黒色腫を有するいくつかの患者において観察されている、ニボルマブ処置患者における臨床活性の持続性を強調した(Topalianら, 2011; Hodiら, 2010)。薬物中止後の部分的な腫瘍退縮の持続は、PD−1遮断が腫瘍および宿主間の免疫平衡をリセットし、OS利益が今まで測定されているものよりも有意に長いことを最終的に証明し得ることを示唆する。さらなる追跡は、これらの臨床試験に対する患者における腫瘍退縮および疾患の安定化の最終的な持続性を決定するために必要とされる。
【0132】
著しく、進行性NSCLC、MELおよびRCCを有するしっかり前処置された患者においてニボルマブにより誘導された持続的な客観的な腫瘍退縮および疾患の安定化は、慣用の化学療法および/またはチロシン−キナーゼインヒビター(TKI)処置で処置されたこれらの患者集団に対する歴史的(historical)データに勝る生存転帰に変わる。NSCLCにおいて、1および2年生存率は、それぞれ、42%および14%であり、扁平上皮および非扁平上皮癌を有する患者それぞれにおいて9.2および10.1月の中央OSであった(実施例7参照)。これらの患者の54%が3つ以上の以前の治療を受けたため、この高レベルの有効性はとりわけ優れている。さらに、多数の肺癌患者の追跡は比較的限定されていたため、これらの数字は、データ成熟に応じて変化し得る。歴史的に、肺癌に対する2L化学療法(すなわち、ドセタキセルおよびペメトレキセド)は、7.5−8.3月の中央OS、および約30%の1年生存率をなし遂げている(Shepherdら, 2000; Hannaら, 2004)。2L/3L集団において、エルロチニブ処置患者は、プラセボ処置患者における4.7月に対して、6.7月の中央生存を有した(Shepherdら, 2005)。治療は、現在、3Lを超える設定で肺癌における使用が承認されておらず、5.8−6.5月の中央生存および25%の1年生存が報告された回顧的(retrospective)レビューを除いて、最小のデータがこの患者集団において生存を評価するために存在する(Girardら, 2009; Scartoziら, 2010)。
【0133】
ニボルマブ処置MEL患者において、16.8月の中央OSは、62%(1年)および43%(2年)の画期的な生存率でなし遂げられた(実施例7参照)。前処置された黒色腫患者における生存転帰は、イピリムマブおよびベムラフェニブの最近のFDA承認をサポートした。転移性疾患に対する少なくとも1つの以前の処置での黒色腫患者が参加する最近のフェーズ3試験において、イピリムマブは、gp100 ペプチドワクチンと比較して、6.4から10.1月の中央OSを増加させた(Hodiら, 2010)。以前に処置された患者におけるイピリムマブのフェーズ2試験において、2年生存率は、24.2−32.8%の範囲であった(Lebbeら, 2012)。ベムラフェニブの大型フェーズ2に参加したBRAF突然変異体黒色腫を有する以前に処置された患者における中央OSは15.9月であり、1年生存は58%であった(Sosmanら, 2012)。
【0134】
したがって、1つの態様において、抗−PD−1 Abでの免疫療法は、ダカルバジンでの治療(維持にかかわらず)および1つの他の処置の後に、進行性または転移性MELに局所的に単剤療法として示される。他の態様において、抗−PD−1 Abは、ダカルバジンベースの治療の失敗後に、進行性または転移性MELに局所的に単剤療法として示される。さらなる態様において、抗−PD−1 Abは、ダカルバジンベースのレジメンを含まなければならない1つの治療の2つのラインの失敗後に、進行性または転移性MELに局所的に単剤療法として示される。さらにさらなる態様において、抗−PD−1 Abは、少なくとも1つの以前の化学療法後に、少なくとも1つの以前のダカルバジンベースの治療の失敗後に、または、少なくともダカルバジン治療に対する進行後に、進行性または転移性MELに局所的に単剤療法として示される。本明細書に記載されている免疫療法方法の全てにおいて、処置は、臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで続けられ得る。
【0135】
RCCを有するニボルマブ処置患者において、3つ以上の以前の治療を受けた45%および以前の抗血管形成治療を受けた71%中において、中央OSは22月で到達された(2013年3月 分析の日)。70%(1年)および50%(2年)の画期的な生存率が観察された(実施例7参照)。抗血管形成治療の後に疾患が進行した腎臓癌患者が参加する最近のフェーズ3試験において、エバロリムスをプラセボと比較した:中央OSはそれぞれ、14.8 対 14.4月であった(Motzerら, 2008; Motzerら, 2010)。スニチニブ難治性腎臓癌集団においてソラフェニブとテムシロリムスを比較する最近のフェーズ3試験は、それぞれ、16.6および12.3月の中央OSを生じた(Hutsonら, 2012)。したがって、NSCLCおよびMELに対して、ニボルマブでのしっかり前処置されたRCC患者集団の処置は、標準治療での乏しい難治性集団の処置よりもかなり長い中央OS(>22月)を生じた。有望な生存評価項目(endpoint)でのコントロールされたフェーズ3試験は、NSCLC、MELおよびRCC(NCT01673867、NCT01721772、NCT01642004、NCT01668784およびNCT01721746において進行中である(Clinical Trials Website、
http://www.clinicaltrials.gov参照)。これらの試験からの結果は、標準治療と比較してこれらの癌におけるニボルマブに対する応答の高い有効性および持続性をさらに証明することが期待される。
【0136】
1つの態様において、抗−PD−1 Abでの免疫療法は、抗血管形成TKIまたはmTORインヒビターでの治療(維持にかかわらず)および1つの他の処置の後に、進行性または転移性RCCに局所的に単剤療法として示される。他の態様において、抗−PD−1 Abは、抗血管形成TKIまたはmTORインヒビターでの治療の失敗後に、進行性または転移性RCCに局所的に単剤療法として示される。さらなる態様において、抗−PD−1 Abは、抗血管形成TKIまたはmTORインヒビターを含まなければならない1つの治療の2つのラインの失敗後に、進行性または転移性RCCに局所的に単剤療法として示される。さらにさらなる態様において、抗−PD−1 Abは、少なくとも1つの以前の化学療法後に、少なくとも1つの以前の抗血管形成TKIまたはmTORインヒビターベースの治療の失敗後に、または、少なくとも抗血管形成TKIまたはmTORインヒビター治療に対する進行後に、進行性または転移性RCCに局所的に単剤療法として示される。抗−PD−1免疫療法は、臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで続けられ得る。
【0137】
著しく、ニボルマブを受ける肺癌、黒色腫および腎臓癌患者におけるOSは、PFSよりもかなり長かった。これらの結果は、イピリムマブに対して報告されているものを映し(Hodiら, 2010)、免疫チェックポイント遮断を受ける一部の患者における早期腫瘍増大または新規病変の発生が疾患の安定化または退縮に進展することができるという観察を反映する。これらの見出したことは、無進行生存がニボルマブおよびこのクラスにおける他の薬剤の有効性を決定するために最適な評価項目でないかもしれないことを示唆する。
【0138】
癌を処置するための抗−PD−1免疫療法の高い有効性、持続性および広範な適用性を証明する本明細書に記載されているデータは、癌のさらなる型に対して試験されるニボルマブに至っている。例えば、増加したPD−L1発現が種々の血液悪性腫瘍で報告されており、悪性細胞に対する有益な影響を及ぼすことから宿主免疫応答を防止し得ることに基づいて、血液悪性腫瘍(多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫/原発性縦隔B細胞リンパ腫、および慢性骨髄性白血病)を有する患者における抗腫瘍活性を介在するニボルマブの能力を確認する試験が開始されている(NCT01592370)。ニボルマブもまた、進行性肝細胞癌腫において単剤療法として試験される(NCT01658878)。
【0139】
要約すれば、本明細書に記載されている抗−PD−1免疫療法の結果は、少なくとも以下の3つの点において顕著である。第1に、抗−PD−1の有効性は、癌に対する標準治療処置における患者に対する歴史的有効性データに勝ることが示されている。著しく、この有効性は、患者の約半分が3つ以上の以前の全身性レジメン後に進行性疾患を有したしっかり前処置された集団における患者において証明されている。進行性、転移性および/または難治性癌に罹患しているこのような患者は、処置することが難しいことで有名である。したがって、本出願は、進行性、転移性および/または難治性癌に罹患している患者の免疫療法のための方法であって、PD−1とPD−L1および/またはPD−L2との相互作用を破壊する治療有効量のAbまたはその抗原結合部分を患者に投与することを含む方法を提供する。本明細書に記載されている治療方法のいずれか1つの態様において、対象は、癌に対して前処置されている;例えば、対象は、癌に対する治療の少なくとも1つ、2つ、または3つ以前のラインを受けた。
【0140】
第2に、本願の治療方法は、広範な属の種々の癌に適用することができることが示されている。「非免疫原性」癌、例えば、NSCLC(Holtら, 2011)および治療が難しい癌、例えば、卵巣および胃癌(ならびに、MEL、RCC、およびCRCを含む処置された他の癌)でさえ、抗−PD−1および/または抗−PD−L1での処置に適用することができるという驚くべきことに見出したことに基づいて(実施例7および14参照)、本出願は、一般的に、非常に広範な範囲の癌のいずれかに実質的に罹患している患者の免疫療法のための方法を提供する。
【0141】
第3に、抗−PD−1または抗−PD−L1 Abでの処置は、癌患者において著しく持続的な臨床活性を生じることが示されている。したがって、本出願は、PD−1とPD−L1および/またはPD−L2との相互作用を破壊する治療有効量のAbまたはその抗原結合部分を患者に投与することを含む、癌患者において持続的な臨床反応を誘導する免疫治療方法を提供する。本明細書に記載されている治療方法のいずれかの好ましい態様において、臨床反応は持続的な応答である。
【0142】
本明細書において使用されるとき、「持続的な」応答は、患者集団における予想される中央OS率を超える治療または臨床反応である。予想される中央OS率は、異なる癌および異なる患者集団で変化する。1つの態様において、持続的な応答は、関連患者集団における予想される中央OS率を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、およびよりさらに好ましくは少なくとも50%超える。PD−1経路遮断に基づく免疫治療アプローチの主な利益は、持続的治療の非存在下でさえ、長年に伸長する長期間、抗腫瘍免疫監視を維持し、腫瘍増殖を阻害し得る記憶T細胞の長期産生での疲弊したT細胞の機能回復であり得る(Kim and Ahmed, 2010)。確かに、ニボルマブ治療の中止後の患者に対する長期追跡試験は、CRCを有する患者が3年後に継続していた完全応答を経験しており;RCCを有する患者が治療を受けていない3年持続している部分応答を経験しており、これは12月で継続していた完全応答に変換され;および、黒色腫を有する患者は治療を受けていない16月間安定であった部分応答をなし遂げ、および再発疾患は再誘導抗−PD−1治療で成功裏に処置されたことを確認している(Lipsonら, 2013)。
【0143】
免疫関連臨床反応
進行性疾患(最初の放射線評価による)が必ずしも治療不全を反映しないため、慣用の応答基準は、免疫療法剤の活性を十分に評価し得ないことが明らかとなっている。例えば、抗−CTLA−4 Abであるイピリムマブでの処置は、4つの別個の応答パターンを生じることが示されており、これらの全ては、良好な生存と関連した:(a)新規病変なしで、ベースライン病変における縮小;(b)持続的な安定な疾患(いくつかの患者において、次にゆっくりと着実な総腫瘍組織量の減少);(c)総腫瘍組織量における増加後の応答;および(d)新規病変の存在下における応答。したがって、免疫療法剤を適切に評価するために、標的疾患に対する長期効果もまた、捕獲しなければならない。この点において、腫瘍組織量および/または新規病変の発生における初期の増加を考慮に入れ、免疫関連応答パターンの特性化を増強しようとする組織的免疫関連応答基準(irRC)が、提案されている(Wolchokら, 2009)。これらの慣用にとらわれない応答パターンの完全な影響が生存評価項目でニボルマブのランダム化試験において依然として明らかにされていないが、本観察はOSの有意な延長が処置患者において観察されたイピリムマブで見出したことを連想させる(Hodiら, 2010; Robertら, 2011)。
【0144】
抗−PD−1免疫療法の全危険性/利益プロフィールはまた、今まで他の免疫療法剤で一致して観察される特定の事象である、より重度の薬物関連有害事象(AE;>グレード3)の低い発生率で、好ましい。これは、抗−PD−1免疫療法が最小の対症療法での外来患者の場において届けることができることを示唆する。
【0145】
抗−PD−1免疫療法により治療可能な広範囲の癌
本明細書において示されている臨床データは、PD−1遮断に基づく免疫療法が「免疫原性」腫瘍型、例えば、MELおよびRCCのみに限定されず、NSCLCを含む免疫応答されると一般的に考慮されない腫瘍型にまで及ぶということを証明する。処置難治性転移性NSCLCでの予期されない成功は、あらゆる新生物が適当な免疫調節の文脈において「免疫原性」であり得る可能性を強調し、免疫治療アプローチとしてPD−1遮断が非常に種々の範囲の腫瘍型にわたって広範に適用できることを示唆する。したがって、本発明の抗−PD−1 Abを使用して処置され得る癌はまた、免疫療法に対して一般的に応答する癌ならびに従来、非免疫原性と見なされている癌も含む。処置のために好ましい癌の非限定的な例は、NSCLC、MEL、RCC、CRC、CRPC、HCC、頭頸部の扁平上皮癌、食道、卵巣、胃腸管および乳房の癌腫、および血液悪性腫瘍を含む。NSCLCが免疫療法に対して一般的に応答すると考慮されないが、本明細書に記載されているデータは、予想外に、扁平上皮および非扁平上皮NSCLCの両方が抗−PD−1 Abでの処置に対して応答することを証明する。さらに、本出願は、増殖が本発明の抗−PD−1 Abを使用して阻害され得る難治性または再発性悪性腫瘍の処置を提供する。
【0146】
本明細書において提供される抗−PD−1免疫療法の非常に広範な適用性による適応に基づいて、本発明の方法において抗−PD−1 Abを使用して処置され得る癌の例は、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部の癌、乳癌、肺癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、腎臓癌、子宮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、大腸癌、経直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、非ホジキンリンパ腫、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍の血管形成、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、アスベストにより誘発される癌を含む環境誘発の癌、血液悪性腫瘍、例えば、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫/原発性縦隔B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆B−リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、および前駆T−リンパ芽球性リンパ腫、および上記癌の任意の組合せを含む。本発明はまた、転移性癌の処置に適用できる。
【0147】
抗−PD−1 Abの医学的使用
本発明の1つの局面は、PD−1/PD−L1経路からのシグナル伝達を阻害し、それにより癌に罹患している対象における内因性免疫応答を増強するための医薬の製造のための本発明の任意の抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分の使用である。別の局面は、PD−1およびPD−L1間の相互作用を破壊することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための医薬の製造のための、本発明の任意の抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分の使用である。医薬の製造のためのこれらの使用は、本明細書に記載されている癌のすべての範囲に広範に適用できる。これらの使用の好ましい態様において、癌は、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、MEL、RCC、CRC、CRPC、HCC、頭頸部の扁平上皮癌、および、食道、卵巣、胃腸管および乳房の癌腫、および血液悪性腫瘍を含む。本出願はまた、本明細書に記載されている抗−PD−1 Abを使用する処置の方法の全ての態様に対応する本発明の任意の抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分の医学的使用を提供する。
【0148】
本出願はまた、PD−1/PD−L1経路からシグナル伝達を阻害することにより対象における内因性免疫応答を増強することを含む、癌に罹患している対象を処置することにおける使用のための、本発明の抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分を提供する。本出願は、PD−1およびPD−L1間の相互作用を破壊することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法における使用のための、本発明の抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分をさらに提供する。これらのAbは、本明細書に記載されている癌のすべての範囲に対する内因性免疫応答を増強することにおいて、または本明細書に記載されている癌のすべての範囲の免疫療法において使用され得る。好ましい態様において、癌は、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、MEL(例えば、転移性悪性MEL)、RCC、CRC、CRPC、HCC、頭頸部の扁平上皮癌、および、食道、卵巣、胃腸管および乳房の癌腫、および血液悪性腫瘍を含む。
【0149】
抗−PD−1抗体を含む併用療法
抗−PD−1および抗−PD−L1 Abでの単剤療法は、肺癌、黒色腫、腎臓癌、および起こり得る他の悪性腫瘍を有する患者の生存を有意に増加させることが本明細書において示されているが、前臨床データは、PD−1経路遮断に基づく相乗的処置組合せがさらにより強力な効果を有することができることを示す。作用機序が今のところニボルマブと異って似ている(Parryら, 2005; Mellmanら, 2011; Topalianら, 2012c)イピリムマブ(抗−CTLA−4)と組み合わせられたニボルマブの臨床評価は、継続しており、フェーズ1試験からの結果は本明細書において提供される(NCT01024231;NCT01844505;NCT01783938;Wolchokら, 2013a; Wolchokら, 2013b; Hodiら, 2013も参照)。臨床試験はまた、ニボルマブの投与を、黒色腫ワクチン(NCT01176461、NCT01176474;Weberら, 2013)、イピリムマブ(BMS−986015)、ヒトIgG4抗−KIR Abと進行性固形腫瘍を有する患者において(NCT01714739;Sanbornら, 2013)、サイトカイン、例えば、IL−21と進行性または転移性固形腫瘍を有する患者において(NCT01629758;Chowら, 2013)、化学療法薬、例えば、白金を用いた二重化学療法とナイーブな化学療法NSCLC患者において(NCT01454102;Rizviら, 2013)、および、小分子標的療法と転移性RCCを有する患者において(NCT01472081;Aminら, 2013)組み合わせて開始されている。
【0150】
1つの局面において、本出願は、抗−PD−1 Abと、種々の癌の処置のための、化学療法レジメン、放射線療法、外科処置、ホルモン喪失および血管形成インヒビターを含む異なる癌処置との組合せに関する。PD−1遮断はまた、免疫原、例えば、癌性細胞の調製物、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、および炭水化物分子を含む)、抗原提示細胞、例えば、腫瘍関連抗原を有する樹状細胞、免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞(Heら, 2004)、および/または別の免疫治療Ab(例えば、抗−CTLA−4、抗−PD−L1および/または抗−LAG−3 Ab)と有効に組み合わせられ得る。使用することができる腫瘍ワクチンの非限定的な例は、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100のペプチド、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼ、またはサイトカインGM−CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞を含む。
【0151】
進行性黒色腫を処置するための抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せ
免疫学的チェックポイントが非冗長であり、リンパ節内のT細胞活性化、増殖およびエフェクター機能および/または腫瘍内微小環境を阻害することができることを考慮して、抗−CTLA−4および抗−PD−1の組合せがAbのいずれか単独よりもマウス腫瘍モデルにおいてより強い抗腫瘍効果を有したという前臨床データ(米国特許第8,008,449号参照)に基づいて、CTLA−4およびPD−1の組合せ遮断が単剤よりもより良い抗腫瘍活性を生じることができるという仮説が、MEL患者において臨床試験において試験された(実施例15)。
【0152】
この試験において正式に比較されていないが、ニボルマブ/イピリムマブの同時レジメンは、ニボルマブ(実施例7)またはイピリムマブのいずれか単独でし遂げられた割合を超えるORRなし遂げた(Hodiら, 2010)。非常に重要なことには、迅速な、および深い応答が処置患者の相当な割合においてなし遂げられ、「深い」腫瘍応答は、放射線評価によりベースライン基準から80%以上の減少により特徴付けられる標的病変における応答を示す。本試験において、広範な、および巨大な腫瘍組織量を有する患者を含む大多数の応答患者は、最初の腫瘍評価時に、>80%腫瘍退縮をなし遂げた。特に印象を与えることは、同時レジメン((i)抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せ投与、次に、抗−PD−1 Ab単独の投与での誘導投与スケジュール、および(ii)抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの低頻度の組合せ投与を含む維持投与スケジュールを含む)で処置された31%の応答を評価可能な患者が、12週までに>80%腫瘍退縮を証明したという観察であった。同時レジメンに対するMTDで、全9人の応答患者は、3人のCRで、>80%腫瘍退縮を証明した。対照的に、今まで臨床経験において、3mg/kgでニボルマブまたはイピリムマブを受けた<3%のMEL患者はCRをなし遂げた(実施例7;Hodiら, 2010)。したがって、この予備フェーズ1試験におけるこの免疫療法組合せの総活性は、活性化キナーゼの標的化インヒビターを含む、進行性黒色腫に対して承認されたか、または開発されている他の薬剤と比べてほぼ遜色がない(Chapmanら, 2011)。この組合せのさらなる利点は、ニボルマブ(本明細書に記載されているとおり)およびイピリムマブでの本試験ならびに長期免疫療法試験において証明されるとき、応答の持続性である(Wolchokら, 2013d)。
【0153】
これらの最初のデータは、より良い大きさの迅速な応答が、いずれかの薬剤単独の歴史的経験と比較して、ニボルマブ/イピリムマブ組合せで処置された患者においてなし遂げられ得ることを示唆する。応答は、一般的に持続的であり、毒性のため、処置が初期に終結された患者においてさえ観察された。応答患者は、上昇したLDH、M1c疾患および巨大な多発性腫瘍組織量を有する患者を含んだ。イピリムマブまたはニボルマブ単剤療法に関する以前のレポートと同様に、慣用のORRは、多くの患者が長期SDまたは応答の慣用にとらわれない免疫関連パターンのいずれかを経験したという点において、ニボルマブ/イピリムマブレジメン同時で処置された患者における臨床活性および起こり得る利益の範囲を完全にとらえることができない。実際に、最も良いORとしてSD≧24週またはirSD≧24週で同時レジメンにおける7人の患者中、6人は少なくとも19%の意味のある腫瘍退縮を証明し、7番目の患者は長期SD後に腫瘍組織量の低下を有する。チェックポイント遮断単剤療法での以前の経験は、一部の患者が最も良いORとしてSDで長期間生存し得るという観察を支持し、免疫監視の平衡相の回復が望ましい転帰であるという仮説に対する証拠をもたらす(Screiberら, 2011)。
【0154】
患者が、以前のイピリムマブ後にニボルマブで連続して処置されるとき、ORをなし遂げることができる観察は、CTLA−4遮断に対する無反応がPD−1遮断からの臨床的利益を妨げることなく、これらの共阻害経路の非冗長性質をさらに支持することを示す。著しく、本明細書に記載されているデータ(実施例8)は、ニボルマブを受ける患者における応答の発生および腫瘍PD−L1発現間の関連性を示唆し、以前のデータは、イピリムマブで処置された患者におけるOSおよび末梢ALCの増加間の相関関係を示す(Bermanら, 2009; Kuら, 2010; Postowら, 2012; Delyonら, 2013)。ニボルマブ/イピリムマブ組合せの本試験において、臨床反応は、リンパ球数またはベースライン腫瘍PD−L1発現にかかわりなく患者において観察され(実施例17)、併用療法により産生された免疫応答がいずれかの単剤療法と比較してユニークな特性を有することを示唆した。該データは、ベースライン腫瘍PD−L1発現およびリンパ球数が、迅速な、および顕著な腫瘍退縮を誘導することができる活性な組合せレジメンの設定と関連性が低い可能性があることを示唆するが、また特筆すべきは、異なる抗−PD−L1 Ab(ウサギmAb28−8 対 マウス5H1mAb)が、ニボルマブ単剤療法試験と比較して、併用療法試験においてPD−L1発現を測定するために、異なるIHCアッセイにおいて使用されたことである。IHCアッセイおよびAbにおける変化に加えて、異なる結果はまた、生検サンプルおよび腫瘍不均一性における差異を反映し得る。抗−PD−1有効性に対するバイオマーカーとしてのPD−L1発現の有用性は、ランダム化フェーズ3試験においてさらにあらかじめ評価される(例えば、NCT01721772、NCT01668784、およびNCT01721746参照)。
【0155】
同時レジメンで処置された患者中で観察される有害事象の範囲は、ニボルマブまたはイピリムマブ単剤療法での経験と定性的に同様であり、AEの割合は、組合せで処置された患者において増加された。グレード3−4の処置関連AEは、3mg/kgの用量での、イピリムマブ単剤療法で処置された患者において20%(Hodiら, 2010)およびニボルマブ単独で処置された患者において17%(実施例5)の歴史的割合と比較して、ニボルマブ/イピリムマブの同時レジメンで処置された患者の53%において観察された。連続レジメンコホートにおいて、18%の患者がグレード3−4の処置関連AEを経験した。同時および連続レジメンで処置された患者により経験されるAEは、存在する処置アルゴリズムを使用して、管理できる、および/または一般的に可逆的であった。
【0156】
集合的に、これらの結果は、ニボルマブおよびイピリムマブが、管理できる安全性プロフィールで同時に投与することができ、持続的な臨床反応を引き起こすことを示唆する。より迅速な、およびより深い臨床腫瘍応答は、いずれかの単一の薬剤で得られる応答と比較して、組合せで処置された患者において観察された。
【0157】
実施例15に記載されている試験に関する2013年2月の臨床打切日にて、応答に対して評価できる同時レジメンの52人の対象のうち、21人(40%)は、修飾された世界保健機関(mWHO)基準によるORを有した(Wolchokら, 2009)。さらなる2人の対象(4%)において、未確認のORがあった。コホート1(0.3mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブ)において、14人の評価できる対象のうち3人は、mWHOによるORを有した(ORR:21%、1人のCRおよび2人のPRを含む)。コホート2(1mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブ)において、17人の評価できる対象のうち9人は、mWHOによるORを有した(ORR:53%;3人のCRおよび6人のPRを含む)。コホート2a(3mg/kgのニボルマブおよび1mg/kgのイピリムマブ)において、15人の評価できる対象のうち6人は、mWHOによるORを有した(ORR:40%;1人のCRおよび5人のPRを含む)。コホート3(3mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブ)において、6人の評価できる対象のうち3人は、mWHOによる客観的応答を有した(ORR:50%、3人のPRを含む)。これらのデータに基づいて、本明細書に記載されている本発明は、(a)PD−1に特異的に結合し、阻害するAbまたはその抗原結合部分;および(b)CTLA−4に特異的に結合し、阻害するAbまたはその抗原結合部分を対象に投与することを含む癌に罹患している対象を処置する方法であって、それぞれのAbは、同時レジメンにおいて0.1から20.0mg/kg体重の範囲の用量で投与され、該同時レジメンは、(i)少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを少なくとも2、4、6、8または10回投与し、次に、少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1 Abを単独で少なくとも2、4、6、8または12回投与することを含む誘導投与スケジュール;次に(ii)少なくとも8、12または16週間に1回、または少なくとも四半期に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを少なくとも4、6、8、10、12または16回投与することを含む維持投与スケジュールを含む、方法を含む。
【0158】
この方法の1つの態様において、維持投与スケジュールは、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを最大4、6、8、10、12または16回投与することを含む。他の態様において、同時レジメンは、(i)2、3または4週間に1回、または1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを2、4、6または8回投与し、次に、2、3または4週間に1回、または1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1 Abを単独で2、4、6、8または12回投与を含む誘導投与スケジュール;次に(ii)8、12または16週間に1回、または四半期に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを4、6、8、10、12または16回投与することを含む維持投与スケジュールを含む。1つの他の態様において、それぞれの抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abは、個々に、0.1、0.3、0.5、1、3、5、10または20mg/kgの用量で投与される。さらなる態様において、それぞれの抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの用量は、誘導投与スケジュールおよび維持投与スケジュール中、一定に保たれる。さらに他の態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abは、以下の用量:(a)0.1mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(b)0.3mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(c)1mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(d)3mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(e)5mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(f)10mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(g)0.1mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(h)0.3mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(i)1mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(j)3mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;(k)5mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;または(l)10mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Abで投与される。
【0159】
実施例15に記載されているプロトコールにおいて、3mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブの投与レジメンは、MTDを超え(イピリムマブおよび他の抗−PD−1 Abの組合せは、より高いまたはより低いMTDを有し得るが)、コホート2(1mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブ)およびコホート2a(3mg/kgのニボルマブおよび1mg/kgのイピリムマブ)の両方は、同様の臨床活性を有した。加えて、ニボルマブおよびイピリムマブの組合せに対する大多数の応答は、最初の12週に起こった。12週間投与されたイピリムマブが臨床的利益に寄与しているか否かの不確実性、およびイピリムマブに対して米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)で承認されたスケジュールが、3週間に1回で合計4回であるという事実を考慮すると、好ましい態様において、抗−CTLA−4 Abは、3週間に1回、合計4回で誘導投与スケジュール中に投与される。進行まで2週毎に3mg/kgでニボルマブでの単剤療法処置は、持続的な応答と関連することが示されており(実施例4−7)、12週毎のニボルマブの投与を含む維持投与スケジュールは、有効であることが示されている(実施例15)。したがって、4回の組み合わせられたニボルマブおよびイピリムマブの完了後である12週目に開始して、3mg/kgでのニボルマブが、進行まで2から少なくとも12週毎に投与され得る。したがって、同時レジメン方法の好ましい態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abは、(a)1mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Ab;または(b)3mg/kgの抗−PD−1 Abおよび1mg/kgの抗−CTLA−4 Abの用量で投与され、同時レジメンは、(i)3週間に1回の投与頻度で、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを4回投与し、次に3週間に1回の投与頻度で、抗−PD−1を単独で4回投与することを含む誘導投与スケジュール;次に(ii)2から12またはそれ以上の週に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、抗−PD−1および抗−CTLA−4抗体の組合せを最大8回投与することを含む維持投与スケジュールをさらに含む。
【0160】
1mg/kgから10mg/kgの用量範囲にわたるニボルマブ単剤療法の暴露応答分析は、同様の臨床活性を示すが(実施例7)、0.3mg/kg、3mg/kgおよび10mg/kgのイピリムマブ単剤療法の暴露応答分析は、フェーズ2試験において用量の増加に伴って活性が増加することを証明している(Wolchokら, 2010)。したがって、3mg/kgのイピリムマブの用量(コホート2)は、3mg/kgのニボルマブの選択(コホート2a)よりも、より臨床的に影響力が強い可能性がある。したがって、同時レジメン方法のより好ましい態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abは、1mg/kgの抗−PD−1 Abおよび3mg/kgの抗−CTLA−4 Abの用量で投与される。
【0161】
本願の方法の1つの態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abは、静脈内投与のために製剤化される。1つの他の態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abが組合せにおいて投与されるとき、それらは、互いに30分以内に投与される。Abのいずれかが最初に投与され得る、すなわち、1つの態様において、抗−PD−1 Abが抗−CTLA−4 Abの前に投与されるが、他の態様において、抗−CTLA−4 Abが抗−PD−1 Abの前に投与される。一般的に、Abのいずれかが、60分の期間を超えて静脈内に投与される。さらなる態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abは、同時投与のために薬学的に許容される製剤において単一の組成物として混合され同時に、または、薬学的に許容される製剤においてAbのいずれかと別個の組成物として同時に、のいずれかで投与される。
【0162】
実施例7に記載されているデータは、ニボルマブでの免疫療法が、以前のイピリムマブ治療に対して応答しなかったMEL患者において有意な臨床活性を生じたことを証明する。したがって、本出願は、抗−CTLA−4 Abで以前に処置されている、癌に罹患している対象を処置するための連続レジメン方法であって、0.1から20.0mg/kg体重の範囲の用量で、および少なくとも1週間に1回、少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、PD−1に特異的に結合し、阻害するAbまたはその抗原結合部分を対象に最大6から最大72回投与することを含む方法を提供する。この方法の1つの態様において、抗−PD−1 Abの対象への投与は、抗−CTLA−4 Abでの最後の処置後1−24週以内に開始される。他の態様において、抗−PD−1 Abの対象への投与は、抗−CTLA−4 Abでの最後の処置後1、2、4、8、12、16、20または24週以内に開始される。好ましい態様において、抗−PD−1 Abの投与は、抗−CTLA−4 Abでの対象の最後の処置後4、8または12週以内に開始される。方法の1つの態様は、0.1−20mg/kg、例えば、0.1、0.3、0.5、1、3、5、10または20mg/kgの用量で、抗−PD−1 Abを投与することを含む。好ましい態様において、抗−PD−1 Abは、1または3mg/kgの用量で投与される。1つの態様において、連続レジメンは、1週間に1回、2、3または4週間に1回、または1月に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、抗−PD−1 Abを対象に6から72回投与することを含む。好ましい態様において、抗−PD−1は、2週間に1回の投与頻度で、1または3mg/kgの用量で最大48回投与される。他の好ましい態様において、抗−PD−1 Abは静脈内投与のために製剤化される。
【0163】
本願の同時または連続レジメン方法のいずれかの1つの局面において、処置は、腫瘍のサイズおよび/または増殖の減少、腫瘍の除去、時間とともに転移性病変の数の減少、完全応答、部分応答、および安定な疾患から選択される少なくとも1つの治療効果を生じる。ニボルマブが臨床反応を示している広範囲の癌に基づいて、本願の併用療法方法はまた種々の癌に適用できる。これらの方法により処置され得る癌の例は、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部の癌、乳癌、肺癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、腎臓癌、子宮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、大腸癌、経直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、非ホジキンリンパ腫、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、小児固形腫瘍、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、CNSの新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍の血管形成、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、アスベストにより誘発される癌を含む環境誘発の癌、血液悪性腫瘍、例えば、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫/原発性縦隔B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆B−リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、および前駆T−リンパ芽球性リンパ腫、および上記癌の任意の組合せを含む。本発明はまた、転移性、難治性または再発性癌の処置に適用できる。好ましい態様において、処置される癌は、MEL、RCC、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、CRC、CRPC、OV、GC、HCC、PC、頭頸部の扁平上皮癌、食道、胃腸管および乳房の癌腫、および血液悪性腫瘍から選択される。より好ましい態様において、癌はMELである。
【0164】
1つの態様において、対象は、癌に対して前処置されている。例えば、患者は、標準治療として本明細書に記載されている型の1または2またはそれ以上の以前の全身性レジメンで処置されていてもよい。1つの他の態様において、癌は、進行性、再発性、転移性および/または難治性癌である。好ましい態様において、同時または連続レジメン処置は、対象における持続的な臨床反応を誘導する。好ましい態様において、対象はヒトであり、抗−PD−1 AbはヒトPD−1を阻害し、抗−CTLA−4 Abはヒト CTLA−4を阻害する。
【0165】
本願方法において使用される抗−PD−1 Abは、本発明の治療用抗−PD−1 Abのいずれかであり得る。好ましい態様において、抗−PD−1 Abは、mAbであり、これは、キメラ、ヒト化またはヒトAbであり得る。1つの態様において、抗−PD−1 Abは、米国特許第8,008,449号において記載および特徴付けされている17D8、2D3、4Hl、5C4(ニボルマブ)、4A11、7D3または5F4のそれぞれの、重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインおよび軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。さらなる態様において、抗−PD−1 Abは、17D8、2D3、4H1、5C4(ニボルマブ)、4A11、7D3または5F4のそれぞれの重鎖および軽鎖可変領域を含む。さらなる態様において、抗−PD−1 Abは、17D8、2D3、4H1、5C4(ニボルマブ)、4A11、7D3または5F4である。好ましい態様において、抗−PD−1 Abはニボルマブである。
【0166】
本発明の抗−CTLA−4抗体は、CTLA−4とヒトB7受容体との相互作用を破壊するように、ヒトCTLA−4に結合する。CTLA−4とB7との相互作用がCTLA−4受容体を有するT細胞の不活性化を引き起こすシグナルを形質導入するため、該相互作用の破壊は、効果的に、かかるT細胞の活性化を誘導、増大または延長し、それにより、免疫応答を誘導、増大または延長する。抗−CTLA−4 Abは、例えば、PCT出願公開WO00/37504およびWO01/14424における米国特許第6,051,227、7,034,121号において記載されている。典型的な臨床的抗−CTLA−4 Abは、米国特許第6,984,720号に記載されているとおり、ヒトmAb 10D1(現在、イピリムマブとして知られ、YERVOY(登録商標)として市販されている)である。本願の方法のいずれかの1つの局面において、抗−CTLA−4 AbはmAbである。1つの他の態様において、抗−CTLA−4抗体はキメラ、ヒト化またはヒト抗体である。好ましい態様において、抗−CTLA−4抗体はイピリムマブである。
【0167】
本出願はまた、同時レジメンにおける癌に罹患している対象を処置するための共投与される医薬の製造のための、抗−CTLA−4 Abまたはその抗原結合部分と組み合わせての抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分の使用であって、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abはそれぞれ、0.1から20.0mg/kg体重の範囲の用量で投与され、さらに、同時レジメンは、(i)少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを少なくとも2、4、6、8または12回投与し、次に、少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1 Abを単独で少なくとも2、4、6、8または10回投与することを含む誘導投与スケジュール;次に(ii)少なくとも8、12または16週間に1回、または少なくとも四半期に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを最大4、6、8、10、12または16回投与することを含む維持投与スケジュールを含む、使用を提供する。本出願は、本明細書に記載されているこれらのAbを使用する処置の方法の全ての態様に対応する共投与される医薬の製造のための抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せの使用を提供し、本明細書に記載されている癌のすべての範囲に広範に適用できる。
【0168】
本出願はまた、同時レジメンにおける癌に罹患している対象を処置するための抗−CTLA−4 Abまたはその抗原結合部分と組み合わせての使用のための抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分であって、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abはそれぞれ、0.1から20.0mg/kg体重の範囲の用量で投与され、さらに、同時レジメンは、(i)少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1および抗−CTLA−4抗体の組合せを少なくとも2、4、6、8または12回投与し、次に、少なくとも2、3または4週間に1回、または少なくとも1月に1回の投与頻度で、抗−PD−1を単独で少なくとも2、4、6、8または10回投与することを含む誘導投与スケジュール;次に(ii)少なくとも8、12または16週間に1回、または少なくとも四半期に1回の投与頻度で、または臨床的利益が観察される限り、または管理し難い毒性または疾患進行が発生するまで、抗−PD−1および抗−CTLA−4抗体の組合せを最大4、6、8、10、12または16回投与を含む維持投与スケジュールを含む、抗−PD−1 Abまたはその抗原結合部分を提供する。
【0169】
PD−L1バイオマーカーアッセイに基づいて、同時または連続レジメンを使用する抗−PD−1および抗−CTLA−4の組合せでの免疫療法のために適当として、患者集団をスクリーニングする、および患者を選択するための方法、およびAb組合せの有効性を予測する方法は、このバイオマーカーが抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abでの併用療法に適用できる程度で、抗−PD−1単剤療法に対して記載されているとおりに実施される。
【0170】
本出願は、(a)0.1から20.0mg/kg体重の範囲の用量の、PD−1に特異的に結合し、阻害するAbまたはその抗原結合部分;(b)0.1から20.0mg/kgの範囲の用量の、CTLA−4に特異的に結合し、阻害するAbまたはその抗原結合部分;および(c)同時レジメン方法のいずれかにおいて抗−PD−1および抗−CTLA−4抗体の組合せを使用するための指示書を含む、癌に罹患している対象を処置するためのキットをさらに提供する。1つの態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abのいくつかの用量は、同時投与のための単一の医薬製剤以内で混合される。他の態様において、抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの用量は、薬学的に許容される製剤においてAbのいずれかを有する別個の組成物として製剤化される。
【0171】
本出願は、(a)0.1から20.0mg/kg体重の範囲の用量の、PD−1に特異的に結合し、阻害するAbまたはその抗原結合部分;および(b)連続レジメン方法のいずれかにおいて抗−PD−1 Abを使用するための指示書を含む、癌に罹患している対象を処置するためのキットをさらに提供する。
【0172】
組合せPD−1およびCTLA−4遮断はまた、さらに、標準癌処置と組み合わせられ得る。例えば、組合せPD−1およびCTLA−4遮断は、MELの処置のために、化学療法レジメンと有効に組み合わせられ得、例えば、ダカルバジンまたはIL−2とのさらなる組合せであり得る。これらの例において、化学療法薬の用量を減少させることを可能にし得る。科学的論拠は、PD−1およびCTLA−4遮断と化学療法との組合せ使用の後に、多数の化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路において腫瘍抗原の増加したレベルをもたらすはずであるということである。細胞死を介する組合せPD−1およびCTLA−4遮断との相乗効果をもたらし得る他の組合せ治療は、放射線療法、外科処置、またはホルモン喪失を含む。これらのプロトコールのそれぞれは、宿主において腫瘍抗原の源を作製する。血管形成インヒビターはまた、組合せPD−1およびCTLA−4遮断と組み合わせられ得る。血管形成の阻害は腫瘍細胞死を引き起こし、これは、宿主抗原提示経路に送り込まれる腫瘍抗原の源でもあり得る。
【0173】
抗−PD−L1抗体を使用する癌患者の免疫療法
PD−L1は、PD−1−ポジティブ、腫瘍浸潤CD4
+およびCD8
+ T細胞のそれぞれのサイトカイン生産および細胞溶解活性を阻害することができる固形腫瘍内で上方調節される主なPD−1リガンドである(Dongら, 2002; Hinoら, 2010; Taubeら, 2012)。これらの特性は、PD−L1を癌免疫療法のための有望な標的とさせる。実施例に記載されている抗−PD−L1免疫療法の臨床試験は、免疫阻害性リガンドであるPD−L1のmAb遮断が、広範な以前の治療を有する患者を含む、転移性NSCLC、MEL、RCCおよびOVを有する患者において、持続的な腫瘍退縮および長期(≧24週)の疾患の安定化の両方を生じることを初めて証明する。ヒト抗−PD−L1 HuMAbであるBMS−936559は、グレード3−4の薬物関連AEの低い(9%)発生率から明らかであるとおり、10mg/kg以下の用量全体で好ましい安全性プロフィールを有した。これらの見出したことは、PD−L1
−/−マウスにおいて見られる軽度の自己免疫性表現型(Dongら, 2004)およびPD−1
−/−マウスと比較して、CTLA−4
−/−マウスにおいて見られるより重度の過剰増殖(Phanら, 2003; Tivolら, 1995; Nishimuraら, 1999)と一致する。患者における抗−PD−L1投与と関連する毒性の多くは免疫関連であり、適格な効果を示唆した。特に興味ある有害事象(AEOSI)の範囲および頻度は、抗−PD−L1および抗−CTLA−4間で若干の差異があり、これらの経路の違った生物学を強調する(Ribasら, 2005)。注入反応がBMS−936559で観察されたが、それらはほとんどの患者において軽度であった。イピリムマブ処置患者において観察される薬物関連AEである重度の大腸炎は(Beckら, 2006)、抗−PD−L1でほとんど示されなかった。
【0174】
抗−PD−1免疫療法に対して上記のとおり、抗−PD−L1治療の別の重要な特性は、多発性腫瘍型にわたる応答の持続性である。これは、現在の試験において患者の進行した疾患および以前の処置を考慮して、特に顕著である。直接比較しないが、この持続性は、これらの癌を処置するために使用されるほとんどの化学療法およびキナーゼインヒビターで観察されるものよりも、より良いようである。
【0175】
末梢血T−細胞がPD−L1を発現するため、薬物動力学基準としてBMS−963559によるインビボROを評価することができる。中央ROは、試験された用量に対して65.8%、66.2%、および72.4%であった。これらの試験は、BMS−936559で処置された患者における標的関与の直接的評価および証拠を提供するが、末梢血におけるROおよび腫瘍内微小環境間の関係は、ほとんど理解されていないままである。
【0176】
本明細書に記載されている臨床データに基づいて、本出願は、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法であって、治療有効量の本発明の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。本出願はまた、本発明の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。好ましい態様において、対象はヒトである。1つの態様において、Abまたはその抗原結合部分は、IgG1またはIgG4アイソタイプである。他の態様において、Abまたはその抗原結合部分は、mAbまたはその抗原結合部分である。さらなる態様において、Abまたはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトAbまたはその抗原結合部分である。ヒト患者を処置するための好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分は、ヒトAbまたはその抗原結合部分である。
【0177】
実施例に記載されている臨床試験は、癌を処置するために、抗−PD−L1 HuMAb BMS−936559を使用した。While BMS−936559(米国特許第7,943,743号においてHuMAb 12A4と称される)が臨床試験に参加するためのリード抗−PD−L1 Abとして選択されたが、特筆すべきは、いくつかの本発明の抗−PD−L1 Abが、12A4の治療活性に重要である12A4機能特性、例えば、ヒトPD−L1に高親和性で特異的に結合すること、MLRアッセイにおいてT−細胞増殖、IL−2分泌およびインターフェロン−γ生産を増加させること、PD−1へのPD−L1の結合を阻害すること、およびT細胞エフェクター細胞および/または樹状細胞に対するT調節性細胞の抑制効果を逆転することを共有することである。さらに、本発明の特定の抗−PD−L1 Ab、すなわち1B12、7H1および12B7は、それぞれV
H1−69およびV
κL6生殖細胞系列配列に由来の配列を有するV
HおよびV
κ領域を含む12A4と構造的に関連する。加えて、少なくとも12B7、3G10、1B12および13G4は、hPD−L1の同じエピトープ領域への結合に対して12A4と交差競合するが、5F8および10A5は、12A4と同じまたは12A4と重複するエピトープ領域に結合し得る(実施例2および3)。したがって、12A4および他の抗−PD−L1 HuMabの前臨床特性化は、本明細書において提供される癌を処置する方法が本発明の広範な属の抗−PD−L1 Abのいずれかを使用して実施され得ることを示す。
【0178】
したがって、本出願は、(a)ヒトV
H1−18生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL6生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(b)ヒトV
H1−69生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL6生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(c)ヒトV
H1−3生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(d)ヒトV
H1−69生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κA27生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;(e)ヒトV
H3−9生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL15生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;または(f)ヒトV
H3−9生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびヒトV
κL18生殖細胞系列配列由来の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分を患者に投与することを含む免疫療法方法を提供する。
【0179】
1つの態様において、患者に投与される抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分は、PD−L1への結合に対して、(a)配列番号:15に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:25に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:16に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:26に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:17に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:27に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:18に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:28に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:19に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:29に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:20に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:30に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(g)配列番号:21に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:31に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(h)配列番号:22に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:32に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(i)配列番号:23に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:33に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(j)配列番号:24に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:34に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む参照Abまたはその参照抗原結合部分と交差競合する。好ましい態様において、Abまたはその抗原結合部分は、PD−1への結合に対して、配列番号:16に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:26に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む参照Abまたはその参照抗原結合部分と交差競合する。
【0180】
本明細書に記載されている免疫療法方法の1つの好ましい態様において、対象に投与される抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分は、(a)配列番号:15に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:25に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(b)配列番号:16に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:26に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(c)配列番号:17に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:27に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(d)配列番号:18に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:28に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(e)配列番号:19に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:29に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(f)配列番号:20に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:30に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(g)配列番号:21に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:31に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(h)配列番号:22に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:32に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;(i)配列番号:23に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:33に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域;または(j)配列番号:24に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:34に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む。より好ましい態様において、抗−PD−L1 Abまたは抗原結合部分は、配列番号:16に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト重鎖可変領域および配列番号:26に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むヒト軽鎖可変領域を含む。
【0181】
抗−PD−L1免疫療法により治療可能な広範囲の癌
NSCLCが免疫ベースの治療に対して乏しい応答すると考えられているため、進行性NSCLCを有する患者における抗−PD−L1の臨床活性は、これらの患者における抗−PD−1の活性と同様に、驚くべきものであり、予期し得ないものであった(Holt and Disis, 2008; Holtら, 2011)。本発明の抗−PD−L1 AbであるBMS−936559で得られる本臨床データは、PD−1遮断に基づく免疫療法が、「免疫原性」腫瘍型、例えば、MELおよびRCCに適用できるだけでなく、一般的に応答すると考慮されない処置難治性転移性NSCLCを含む広範囲の癌で有効でもあるという、抗−PD−1 Abを使用して得られる証拠を立証および拡張する。本発明の抗−PD−L1 Abを使用して処置され得る好ましい癌は、MEL(例えば、転移性悪性黒色腫)、RCC、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、CRC、卵巣癌(OV)、胃癌(GC)、乳癌(BC)、膵臓癌腫(PC)および食道の癌腫を含む。さらに、本発明は、増殖が本発明の抗−PD−L1 Abを使用して阻害され得る難治性または再発性悪性腫瘍を含む。
【0182】
したがって、本明細書において提供される抗−PD−L1免疫療法の非常に広範な適用性による適応に基づいて、本発明の方法において抗−PD−L1 Abを使用して処置され得る癌の例は、骨癌、皮膚癌、頭頸部の癌、乳癌、肺癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、腎臓癌、子宮癌、去勢抵抗性前立腺癌、大腸癌、経直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、卵巣の癌腫、胃腸管および乳房、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、急性骨髄性白血病を含む慢性または急性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍の血管形成、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、アスベストにより誘発される癌を含む環境誘発の癌、転移性癌、および上記癌の任意の組合せを含む。本発明はまた、転移性癌の処置に適用できる。
【0183】
抗−PD−L1 Abとの併用療法
所望により、PD−L1に対するAbは、免疫原、例えば、癌性細胞の調製物、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、および炭水化物分子を含む)、抗原提示細胞、例えば、腫瘍関連抗原を有する樹状細胞、および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞(Heら, 2004)と組み合わせられ得る。使用することができる腫瘍ワクチンの非限定的な例は、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100のペプチド、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼ、またはサイトカインGM−CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞を含む。PD−L1遮断はまた、化学療法レジメン、放射線療法、外科処置、ホルモン喪失および血管形成インヒビターを含む標準癌処置、ならびに別の免疫治療Ab(例えば、抗−PD−1、抗−CTLA−4または抗−LAG−3 Ab)と有効に組み合わせられ得る。
【0184】
抗−PD−L1 Abの使用
本出願は、PD−1/PD−L1経路からのシグナル伝達を阻害し、それにより癌に罹患している対象における内因性免疫応答を増強するための医薬の製造のための本発明の任意の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分の使用を提供する。本出願はまた、PD−1およびPD−L1間の相互作用を破壊することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための医薬の製造のための、本発明の任意の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分の使用を提供する。本出願は、本明細書に記載されている抗−PD−L1 Abを使用する処置の方法の全ての態様に対応する本発明の任意の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分の医学的使用を提供する。
【0185】
本出願はまた、PD−1/PD−L1経路からのシグナル伝達を阻害することにより、癌に罹患している対象における内因性免疫応答を増強することを含む、癌に罹患している対象を処置することにおける使用のための、本発明の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分を提供する。本出願は、PD−1およびPD−L1間の相互作用を破壊することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法における使用のための、本発明の抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分をさらに提供する。これらのAbは、本明細書に記載されている癌のすべての範囲に対する内因性免疫応答を増強することにおいて、または本明細書に記載されている癌のすべての範囲の免疫療法において使用され得る。好ましい態様において、癌は、MEL(例えば、転移性悪性MEL)、RCC、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、CRC、卵巣癌(OV)、胃癌(GC)、乳癌(BC)、膵臓癌腫(PC)および食道の癌腫を含む。
【0186】
免疫チェックポイント遮断による癌免疫療法の検証
免疫チェックポイント遮断の臨床活性の重大な影響は、腫瘍抗原に対する有意な内因性免疫応答が生じ、これらの応答がチェックポイント阻害時に臨床的腫瘍退縮を介在するように治療的に利用され得ることである。実際に、阻害性リガンド、例えば、PD−L1が、免疫攻撃に応答して誘導される、適応耐性と称されるメカニズムの証拠が存在する(Gajewskiら, 2010; Taubeら, 2012)。腫瘍による免疫耐性のこの起こり得るメカニズムは、PD−1/PD−L1−指向治療が、内因性抗腫瘍免疫を増大する他の処置と相乗効果を与え得ることを示唆する。追跡試験は、患者がPD−1/PD−L1経路遮断の中止後に腫瘍コントロールを示し続けるということが立証されている(Lipsonら, 2013)。このような腫瘍コントロールは、持続的抗腫瘍免疫応答および腫瘍増殖の持続的コントロールを可能にする有効な免疫記憶の産生に反映され得る。
【0187】
免疫調節受容体であるPD−1をブロックするAb、およびその同族リガンドの1つであるPD−L1をブロックするAbの臨床試験における本明細書に記載されているデータは、前例がない。これらのデータは、PD−1経路−指向癌免疫療法での今までの最大の臨床経験、および抗−PD−L1−指向剤の安全性、耐容性、および最初の臨床活性を具体的に記載する最初の報告を構成する。これらの見出したことは、抗−PD−1および抗−PD−L1の両方が、好ましい全体的安全性プロフィールを有し、NSCLC、免疫療法に対して応答すると歴史的に考えられていない腫瘍、ならびに、MEL、RCCおよびOVを含む免疫療法に応答することが知られている腫瘍を含む種々の癌にわたって、臨床活性の明確な証拠を提供することを示す。したがって、これらのデータは、癌における治療的介入のための重要な標的として、PD−1/PD−L1経路を強く立証する。
【0188】
今までに分析された腫瘍型中で抗−PD−1および抗−PD−L1 mAbで観察された臨床活性のパターン間で観察された顕著な類似性は、腫瘍免疫耐性における、および治療的介入のための標的としての、PD−1/PD−L1シグナル伝達経路の一般的な重要性を立証する。これらの2つのAbによりブロックされる分子間相互作用は同一ではないが、メカニズムの詳細にかかわりなく、抗−PD−1および本発明の抗−PD−L1 Abの両方が、多種多様の癌に罹患している患者を処置することにおいて有用であることが本明細書において明確に証明されている。
【0189】
感染症
本発明の他の方法は、特定の毒素または病原体に暴露されている患者を処置するために使用される。例えば、本出願の別の局面は、対象が感染病に対して処置されるように、本発明の抗−PD1または抗−PD−L1 Ab、またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における感染病を処置する方法を提供する。好ましくは、Abは、ヒト抗−ヒトPD−1またはPD−L1 Ab(例えば、本明細書に記載されている任意のヒトAb)である。あるいは、Abは、キメラまたはヒト化Abである。
【0190】
上記のとおり腫瘍への適用と同様に、Ab介在PD−1またはPD−L1遮断は、病原体、毒素、および/または自己抗原に対する免疫応答を増強するために、単独、またはアジュバントとしてワクチンと組み合わせて、使用することができる。この治療アプローチが特に有用であり得る病原体の例は、現在、有効なワクチンが存在しない病原体、または慣用のワクチンが完全には有効でない病原体を含む。これらは、HIV、肝炎(A、B、およびC)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を含むが、これらに限定されない。PD−1および/またはPD−L1遮断は、感染の間に変化した抗原を示す薬剤により確立された感染、例えばHIVに対して特に有用である。これらの抗原上の新規エピトープは、抗−ヒトPD−1またはPD−L1投与時に外来物として認識され、したがって、PD−1/PD−L1経路を介するネガティブシグナルにより抑えられない強いT細胞応答を誘導する。
【0191】
上記方法において、PD−1またはPD−L1遮断は、免疫療法の他の形態、例えば、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM−CSF、G−CSFまたはIL−2の投与)と組み合わせることができる。
【0192】
キット
治療的使用のための、本発明の抗−PD−1および/または抗−PD−L1 Ab、or 抗−PD−1および抗−CTLA−4 Abの組合せを含む医薬キット、および免疫療法のために、または免疫療法剤の有効性を予測するために患者をスクリーニングするためのバイオマーカーとして、膜のPD−L1発現をアッセイするための本発明の抗−PD−L1 Abを含む診断キットを含むキットもまた、本発明の範囲内である。キットは、一般的に、キットの内容物の意図される使用を支持するラベルおよび使用のための指示書を含む。ラベルなる用語は、あらゆる文書、またはキット上またはキットと共に提供される記載物質、またはキットに付されている他のものを含む。医薬キットの1つの態様において、抗PD1および/または抗PD−L1 Abは、単位投与形態において他の治療剤と共にパッケージされ得る。診断キットの1つの態様において、抗PD−L1 Abは、PD−L1発現を検出および/または定量するためのアッセイを行うための他の試薬と共にパッケージされ得る。
【0193】
1つの好ましい態様において、医薬キットは、抗−ヒトPD−1 HuMAbであるニボルマブを含む。他の好ましい態様において、医薬キットは、抗−ヒトPD−L1 HuMAbであるBMS−936559を含む。さらに他の好ましい態様において、医薬キットは、抗−ヒトCTLA−4 HuMAbであるイピリムマブを含む。1つの好ましい態様において、診断キットは、アミノ酸配列が配列番号35および36にそれぞれ記載されているV
HおよびV
κ領域を含むウサギ抗−ヒトPD−L1 mAb、28−8を含む。他の好ましい態様において、診断キットは、マウス抗−ヒトPD−L1 mAbである5H1を含む(Dongら, 2002)。
【0194】
抗−PD−1有効性を予測するためのPD−L1バイオマーカー
癌免疫療法における特定の挑戦は、患者選択および処置管理上の指針を可能にするメカニズムに基づく予測バイオマーカーの同定である。以下の実施例に記載されているデータは、腫瘍における細胞表面PD−L1発現が、抗−PD−1および可能性のある他の免疫チェックポイントインヒビターでの免疫療法の有効性を予測するための、または該免疫療法に対して患者を選択するための有用な分子マーカーであることを示す。
【0195】
腫瘍において発現されるPD−L1の臨床的意義についての文献において矛盾した報告がある。いくつかの試験は、腫瘍におけるPD−L1発現が患者に対する予後不良と相関することを結論づけている。例えば、Hinoら (2010)(MEL);Hamanishiら (2007)(OV);Thompsonら (2006)(RCC)参照。これらの見出したことは、腫瘍細胞上のPD−L1およびT細胞上のPD−1の相互作用が腫瘍に対する免疫応答を破棄する手助けをし、腫瘍特異的T細胞からの免疫回避を引き起こすことに基づいて、合理的に説明され得る(Blankら, 2005)。しかしながら、前記試験と対照的に、Gadiotら. (2011)およびTaubeら (2012)は、最近、黒色腫腫瘍におけるPD−L1発現がより良い生存の傾向と相関することを報告している。これらの表面的には矛盾するデータは、比較的少ない分析された患者、異なる試験された組織学的サブタイプ、または異なる使用された方法論、例えば、PD−L1を染色するための異なるAbの使用、IHCに対する凍結 対 パラフィン包埋物質の使用、およびPD−L1の膜および/または細胞質の染色の検出を反映し得る。Taubeら (2012)は、PD−L1がI型膜貫通分子であることを記載しており、PD−L1の細胞質存在が、適当な刺激時に細胞表面に配置され得るこのポリペプチドの細胞内貯蔵を示し得るが、それがPD−1遮断に対する臨床反応を予測するための可能性のあるバイオマーカーとして生物学的に関連する細胞表面PD−L1発現であると仮説を立てている。わずか9人の患者の小さいサンプルサイズにおいて得られた、膜のPD−L1発現および抗−PD−1有効性間の相関関係の予備的証拠を記載している、Brahmerら (2010)も参照。大規模のサンプルの分析から得られた、抗−PD−1有効性のためのバイオマーカーとしての膜のPD−L1発現の使用における以下の実施例に記載されているデータは、PD−L1発現が、抗−PD−1臨床反応を予測するための、および抗−PD−1 Abでの免疫療法に対して適当な候補を同定するために患者をスクリーニングするためのバイオマーカーとして使用され得る仮説を立証する。抗−PD−1免疫療法のために患者をスクリーニングするための、または抗−PD−1免疫療法に対する臨床反応を予測するためのこのバイオマーカーの有用性が証明されたが、PD−L1発現はまた、阻害性免疫レギュレーターのインヒビターの他の型のための併用バイオマーカーとして、より広範に潜在的に適用され得る。
【0196】
具体的には、膜のPD−L1発現は、自動IHCプロトコールおよびウサギ抗−hPD−L1 Abを使用してアッセイされた。著しく、分析されたデータの最初のセットにおいて(実施例8参照)、細胞表面PD−L1−ネガティブ腫瘍(MEL、NSCLC、CRC、RCCおよびCRPC)を有する患者は、抗−PD−1 Abであるニボルマブでの処置後にORを経験しなかった。対照的に、前処置生検における腫瘍細胞上のPD−L1の細胞表面発現は、ニボルマブで処置された患者中でORの増加した比率と関連し得る。PD−L1の腫瘍細胞発現が構成的発癌経路により駆動され得るが、それは、PD−1/PD−L1経路の遮断により解放されない限り維持され得る、宿主炎症応答の一部である内因性抗腫瘍免疫応答に応答して「適応免疫耐性」に反映され得る(Taubeら, 2012)。癌免疫学における適応免疫耐性のこの新しい概念は、阻害性リガンド、例えば、PD−L1が、免疫攻撃に応答して誘導されることを示唆する(Gajewskiら, 2010; Taubeら, 2012)。本明細書に記載されている免疫チェックポイント遮断の臨床活性の重大な影響は、腫瘍抗原に対する有意な内因性免疫応答が生じ、これらの応答がチェックポイント阻害時に臨床的腫瘍退縮を介在するように治療的に利用され得ることである。腫瘍による免疫耐性のこの起こり得るメカニズムは、PD−1/PD−L1−指向治療が、内因性抗腫瘍免疫を増大する他の処置と相乗効果を与え得ることを示唆する。
【0197】
自動IHCによる細胞表面PD−L1発現のアッセイ
実施例に記載されているとおり、自動IHC方法は、FFPE組織標本において細胞の表面上のPD−L1の発現をアッセイするために開発された。本出願は、試験組織サンプルにおいてヒトPD−L1抗原の存在を検出する、またはヒトPD−L1抗原のレベルまたは抗原を発現するサンプルにおける細胞の割合を定量するための方法であって、Abまたはその部分およびヒトPD−L1間の複合体の形成を可能にする条件下で、試験サンプルおよびネガティブコントロールサンプルを、ヒトPD−L1に特異的に結合するmAbと接触させることを含む、方法を提供する。好ましくは、試験およびコントロール組織サンプルはFFPEサンプルである。次に、複合体の形成が検出され、試験サンプルおよびネガティブコントロールサンプル間の複合体形成における差異は、サンプルにおけるヒトPD−L1抗原の存在を示す。種々の方法が、PD−L1発現を定量するために使用される。
【0198】
特定の態様において、自動IHC方法は、(a)自動染色器においてマウントされた組織切片を脱パラフィン化すること、および再水和すること;(b)10分間110℃に加熱される抗原賦活化装置(decloaking chamber)およびpH6バッファーを使用して抗原を賦活化すること(retrieving);(c)自動染色器上に試薬をセットすること;および(d)組織標本において内因性ペルオキシダーゼを中和する工程を含むように、自動染色器を動かすこと;スライド上の非特異的タンパク質結合部位をブロックすること;一次Abとスライドをインキュベートすること;二次(post-primary)遮断薬とインキュベートすること;NovoLink Polymerとインキュベートすること;クロモゲン基質を加え、発色させること;およびヘマトキシリンで対比染色することを含む。
【0199】
腫瘍組織サンプルにおけるPD−L1発現を評価するために、病理学者は、顕微鏡下でそれぞれの地域において膜PD−L1
+腫瘍細胞の数を観察し、ポジティブである細胞のパーセントを心の中で(mentally)概算し、次に、それらを平均し、最終パーセンテージとなる。様々な染色強度は、0/ネガティブ、1+/弱い、2+/中程度、および3+/強いとして定義される。一般的に、パーセンテージ値は、最初に、0および3+バケット(bucket)に割り当てられ、次に、中間の1+および2+強度が考慮される。非常に異種の組織において、標本はゾーンに分類され、それぞれのゾーンは別々にスコア化され、次に、パーセンテージ値の単一セットに組み合わせられる。種々の染色強度に対するネガティブおよびポジティブ細胞のパーセンテージを、それぞれのエリアから決定し、中央値をそれぞれのゾーンに与える。最終パーセンテージ値が、それぞれの染色強度カテゴリー:ネガティブ、1+、2+、および3+に対して組織に与えられる。全ての染色強度の合計は100%である必要がある。
【0200】
染色はまた、腫瘍浸潤炎症性細胞、例えば、マクロファージおよびリンパ球において評価される。ほとんどの場合、染色が大部分のマクロファージにおいて観察されるため、マクロファージは、内部ポジティブコントロールとして役割を果たす。3+強度で染色する必要はないが、マクロファージの染色の非存在は、何らかの技術な失敗を排除することを考慮すべきである。マクロファージおよびリンパ球は、細胞膜染色を評価し、それぞれの細胞カテゴリーに対してポジティブまたはネガティブとして全てのサンプルについて記録されるのみである。染色はまた、外部/内部腫瘍免疫細胞指定にしたがって特徴付けられる。「内部」は、腫瘍細胞中に物理的に挿入されることなく、免疫細胞が腫瘍組織内で、および/または腫瘍領域の境界上であることを意味する。「外部」は、腫瘍と物理的関連なしであることを意味し、免疫細胞は結合または何らかの関連隣接組織と関連する周辺において見られる。
【0201】
これらのスコア化方法の1つの態様において、サンプルは、独立して操作する2人の病理学者によりスコア化され、次にスコアは統合される。1つの他の態様において、ポジティブおよびネガティブ細胞の同定は、適当なソフトウェアを使用してスコア化される。
【0202】
ヒストスコアは、IHCデータのさらなる定量的尺度として使用される。ヒストスコアは以下のとおりに計算される:
ヒストスコア=[(%腫瘍x1(低い強度))+(%腫瘍x2(中程度の強度))+(%腫瘍x3(高い強度)]
【0203】
ヒストスコアを決定するために、病理学者は、標本内のそれぞれの強度カテゴリーにおける染色細胞のパーセントを概算する。多数のバイオマーカーの発現が異種であるため、ヒストスコアは、全発現のより正確な表示である。最終ヒストスコア範囲は、0(発現なし)から300(最大発現)である。
【0204】
試験組織サンプルIHCにおいてPD−L1発現を定量する代替手段は、炎症の密度を腫瘍浸潤炎症性細胞によるPD−L1発現パーセントと乗じることとして定義される調整された炎症スコア(AIS)を決定することである(Taubeら, 2012)。
【0205】
患者選択工程を含む抗−PD−1での癌免疫療法
本出願はまた、(a)(i)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む、(ii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を評価すること、および(iii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるという評価に基づいて、適当な候補として対象を選択することを含む免疫療法、例えば、抗−PD−1 Abの投与のための適当な候補である対象を選択すること;および(b)阻害性免疫レギュレーターからのシグナル伝達を阻害する治療有効量の薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む組成物を、選択された対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法を提供する。
【0206】
膜のPD−L1発現が宿主炎症応答の一部である内因性抗腫瘍免疫応答に対する代替である証拠がある(Gajewskiら, 2010; Taubeら, 2012)。したがって、腫瘍内微小環境において腫瘍および/または炎症性細胞におけるPD−L1の細胞表面発現は、抗−PD−1 Abでの処置のみならず、また、抗−PD−L1 Abでの処置ならびにPD−1/PD−L1経路以外の阻害性免疫調節経路を標的とする処置に対しても利益を得るであろう癌患者を選択するためのマーカーであり得る。例えば、腫瘍および/または腫瘍浸潤炎症性細胞におけるPD−L1の細胞表面発現は、免疫チェックポイント、例えば、PD−L1、細胞毒性T−リンパ球抗原−4(CTLA−4)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン−3(TIM−3)、リンパ球活性化遺伝子−3(LAG−3)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG−1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、およびCD160からのシグナル伝達を標的とし、破壊または阻害する薬剤、例えばAbでの免疫療法から利益を得るであろう適当な癌患者を同定または選択するためのマーカーとして使用され得る(Pardoll, 2012; Baitschら, 2012)。1つの好ましい態様において、阻害性免疫レギュレーターは、PD−1/PD−L1シグナル伝達経路の構成要素である。他の好ましい態様において、阻害性免疫レギュレーターは、本発明の抗−PD−1 Abである。さらに他の好ましい態様において、阻害性免疫レギュレーターは、本発明の抗−PD−L1 Abである。
【0207】
PD−L1発現をアッセイする、すなわち、PD−L1発現バイオマーカーを使用することを含む任意の免疫療法方法が、抗−PD−1免疫療法に適当であるか、または適当でない患者の選択を含むときの、または免疫治療目的のために抗−PD−1 Abの投与を含むときの以下に記載される場合、これらの方法が、阻害性免疫レギュレーター(例えば、CTLA−4、BTLA、TIM3、LAG3またはKIR)またはその構成要素またはリガンドのインヒビターの投与での免疫療法または該投与に適当であるか、または適当でない患者の選択にさらに広範に使用すると理解されるべきである。さらに、試験組織サンプルにおけるPD−L1発現の測定を含む任意の方法において、患者から得られる試験組織サンプルの提供を含む工程が任意の工程であると理解されるべきである。すなわち、1つの態様において、方法はこの工程を含み、他の態様において、この工程は方法に含まれない。1つの好ましい態様において、試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の数または割合を同定または決定するための「評価する」工程は、PD−L1発現に対してアッセイする変革(transformative)方法により、例えば、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイまたはIHCアッセイを実施することにより行われることを理解されるべきである。1つの他の態様において、変革工程を含まず、PD−L1発現は、例えば、研究室からの試験結果のレポートを確認することにより評価される。1つの態様において、PD−L1発現を評価する方法またはPD−L1発現を評価することを含む方法の工程は、免疫療法のための適当な候補を選択すること、および/または免疫療法剤を患者に投与することにおける使用のための医師または他の医者に提供され得る中間結果を提供する。1つの態様において、中間結果を提供する工程は、医師または医師の指導の下に行動する人により行われ得る。他の態様において、これらの工程は、独立した研究室により、または、独立した人、例えば、実験助手により行われる。
【0208】
本出願はまた、(a)(i)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(ii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を評価すること;および(iii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満であるという評価に基づいて、阻害性免疫レギュレーターのインヒビター、例えば、抗−PD−1 Abでの免疫療法に適当でないとして対象を選択すること、を含む阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Ab免疫療法での処置に適当でない対象を選択すること;および(b)阻害性免疫レギュレーターのインヒビター、例えば、抗−PD−1 Ab以外の標準治療用治療薬を選択された対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の処置のための方法を提供する。
【0209】
PD−L1発現の測定
本願の方法のいずれかの1つの態様において、PD−L1を発現する細胞の割合は、PD−L1 RNAの存在を決定するためのアッセイを実施することによって評価される。さらなる態様において、PD−L1 RNAの存在は、RT−PCR、インサイチュハイブリダイゼーションまたはRNase保護により決定される。他の態様において、PD−L1を発現する細胞の割合は、PD−L1ポリペプチドの存在を決定するためのアッセイを実施することによって評価される。さらなる態様において、PD−L1ポリペプチドの存在は、免疫組織化学(IHC)、酵素免疫吸着法アッセイ(ELISA)、インビボイメージング、またはフローサイトメトリーにより決定される。好ましい態様において、PD−L1発現は、IHCによりアッセイされる。フローサイトメトリーは、血液学腫瘍の細胞におけるPD−L1発現をアッセイするために特に適当であり得る。全てのこれらの方法の好ましい態様において、PD−L1の細胞表面発現は、例えば、IHCまたはインビボイメージングを使用してアッセイされる。
【0210】
イメージング技術は、癌研究および処置における重要なツールを提供している。分子イメージングシステム、例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単光子放射コンピュータートモグラフィー(SPECT)、蛍光反射イメージング(fluorescence reflectance imaging)(FRI)、蛍光介在トモグラフィー(fluorescence-mediated tomography)(FMT)、生物発光イメージング(BLI)、レーザー走査共焦点顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)における最近の開発は、癌研究におけるこれらの技術のさらにより良い使用の先駆けとなるであろう。いくつかのこれらの分子イメージングシステムは、臨床医が、腫瘍が体内にある場合に見ることだけでなく、治療薬に対する腫瘍動態および/または応答性に影響する特定の分子、細胞、および生物学的プロセスの発現および活性を視覚化することもまた可能にする(Condeelis and Weissleder, 2010)。PETの感度および解像度に加えて、Ab特異性は、組織サンプルにおける抗原の発現をモニタリングおよびアッセイするために、免疫PETイメージングを特に魅力的にさせる(McCabe and Wu, 2010; Olafsenら, 2010)。本願の方法のいずれかの1つの態様において、PD−L1発現は免疫PETイメージングによりアッセイされる。
【0211】
本願の方法のいずれかの1つの態様において、PD−L1を発現する試験組織サンプルにおける細胞の割合は、試験組織サンプルにおける細胞の表面上のPD−L1ポリペプチドの存在を決定するためのアッセイを実施することによって評価される。1つの態様において、試験組織サンプルは、FFPE組織サンプルである。1つの好ましい態様において、PD−L1ポリペプチドの存在は、IHCアッセイにより決定される。さらなる態様において、IHCアッセイは、自動プロセスを使用して実施される。さらなる態様において、IHCアッセイは、PD−L1ポリペプチドに結合する抗−PD−L1 mAbを使用して実施される。
【0212】
FFPE組織において細胞表面に発現されるPD−L1に特異的に結合するAb
Abは、新鮮な組織において抗原に結合し得るが、FFPE組織サンプルにおいて抗原を完全に認識できない。当分野でよく知られているこの現象は、主に、Abにより認識されるエピトープを変化するホルマリン固定により誘導されるポリペプチドの分子内および分子間架橋によると考えられている(Sompuramら, 2006)。加えて、FFPE組織における染色に影響することが知られているいくつかの因子、例えば、固定に対する可変時間、不十分な固定期間、使用される固定剤の差異、組織処理、Abクローンおよび希釈、抗原回復、検出システム、および異なる閾値点を使用する結果の解釈は、組織抗原性およびIHC測定に作用し得る重要な変数である(Bordeauxら, 2010)。特に、FFPE標本においてPD−L1を染色する抗−ヒト PD−L1 Abの欠如が、当分野において気付かれている(Hamanishiら, 2007)。Taubeら (2012)およびGadiotら (2011)はまた、FFPE組織においてPD−L1に特異的に結合する抗−PD−L1 Abを同定することにおける困難性、および同じAbに対する矛盾した試験結果を報告している。5つの市販されている抗−hPD−L1 Abの我々自身の分析は、これらのAbがPD−L1を発現するFFPE細胞とPD−L1を発現しなかった細胞とを区別することができなかったことを示す(実施例9、表7参照)。したがって、腫瘍の予後に対するPD−L1発現の関連における異なるグループにより報告される矛盾する結果は、部分的に、FFPE組織サンプルにおいてPD−L1ポリペプチドを検出するために使用される抗−PD−L1 Abの特異な能力を反映し得る。したがって、FFPE組織においてIHCアッセイを使用して細胞の表面上にhPD−L1を検出するために、FFPE組織サンプルにおいて細胞表面に発現されるPD−L1に特異的に結合する抗−hPD−L1 Abに対する必要性が存在する。
【0213】
本出願は、FFPE組織サンプルにおける細胞表面に発現されるPD−L1抗原に特異的に結合するmAbまたはその抗原結合部分を提供する。好ましい態様において、mAbまたはその抗原結合部分は、FFPE組織サンプルにおいて細胞質PD−L1ポリペプチドに結合しないか、または非常に低いレベルのバックグラウンド結合を示す。1つの他の態様において、細胞表面に発現される、または細胞質のPD−L1ポリペプチドへの特異的結合の存在または非存在は、免疫組織化学的染色により検出される。本発明の1つの好ましい局面において、mAbまたは抗原結合部分は、ウサギAbまたはその部分である。他の好ましい態様において、mAbは、28−8、28−1、28−12、29−8または20−12と称されるウサギmAbである。より好ましい態様において、mAbは、28−8と称されるウサギmAbまたはその抗原結合部分である。さらなる態様において、mAbは、配列番号:35に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域(V
H)および配列番号:36に記載されている配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域(V
κ)を含むAbである。他の態様において、mAbは、配列番号:35に記載されている配列を有するV
HにおけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、および配列番号:36に記載されている配列を有するV
κにおけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。
【0214】
ウサギAbがマウスAbを超える特定の利点を有することが当分野で知られている。例えば、ウサギAbは、一般的に、マウスAbと比較して、さらに種々のエピトープ認識、小サイズのエピトープに対する改善された免疫応答、およびより高い特異性およびアフィニティーを示す(参照、例えば、Fischerら, 2008; Cheangら, 2006; Rossiら, 2005)。例えば、ウサギのより低い免疫優性およびより大きいB細胞レパートリーは、マウスAbと比較して、より良いエピトープ認識を引き起こす。さらに、ウサギ抗体の高い特異性および新規エピトープ認識は、翻訳後修飾の認識の成功につながる(Epitomics, 2013)。加えて、シグナル変換および疾患に関連する多数のタンパク質標的は、マウス、ラットおよびヒト間で高度に保存されており、したがって、マウスまたはラット宿主による自己抗原として認識され得、それらをより低い免疫原性にさせる。この問題は、ウサギにおいてAbを産生することにより回避される。さらに、2つの抗原特異的Abが必要とされる場合における適用において、Abを2つの異なる種に由来させることがより便利である。したがって、例えば、ウサギAb、例えば、28−8をPD−L1も発現する免疫細胞(例えば、マクロファージおよびリンパ球)をマークすることができる他のAb(最も良い免疫マーキングAbがマウスAbであるため、マウスAbである可能性がある)と多重化することが容易である。したがって、ウサギ抗−hPD−L1 mAb、例えば、28−8は、FFPE組織サンプルにおいて表面に発現されるPD−L1を検出するためのIHCアッセイに特に適しており、マウスAb、例えば、5H1を超える明白な利点を潜在的に有する。
【0215】
実施例9に記載されているとおり、ウサギおよびマウス免疫化の両方からの多数(185)のAbマルチクローンをスクリーニングし、マウスAbはなかったが、わずか10個のウサギAbマルチクローンは、hPD−L1の膜形態を特異的に検出した。IHCの複数のラウンドによるさらに広範なスクリーニング後、15個の精製されたウサギサブクローンは、それらの染色の特異性および強度に基づいて選択された(表5参照)。FFPE組織におけるIHCによるスクリーニングならびに表面プラズモン共鳴による結合親和性および交差競合を決定するように抗体のさらなる特性化後、mAb28−8は、高い親和性および特異性で膜のPDF−L1への結合および低いバックグラウンド染色の最も良い組合せを有するAbとして選択された。
【0216】
本発明の1つの局面において、mAbまたは抗原結合部分は、PD−L1への結合に対して、マウスmAb 5H1と交差競合し、これは、これらの抗体がPD−L1の同じエピトープ領域に結合することを示す。1つの他の局面において、mAbまたはその抗原結合部分は、PD−L1への結合に対して、マウスmAb 5H1と交差競合せず、それらは、PD−L1の同じエピトープ領域に結合しないことを示す。
【0217】
本出願はまた、本明細書に記載されている全てのウサギ抗−hPD−L1 Abまたはその部分をコードする核酸を提供する。
【0218】
細胞表面PD−L1発現の測定を含む免疫治療方法
FFPE組織標本において膜のPD−L1に特異的に高親和性で結合するウサギAbの利用可能性は、FFPE組織サンプルにおいて細胞の表面上のPD−L1ポリペプチドを検出する工程を含む方法を容易にする。したがって、本出願はまた、(a)(i)所望により、FFPE組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(ii)PD−L1に結合するウサギ抗−ヒトPD−L1 Ab、例えば、mAb 28−8を使用するIHCにより、試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を評価すること;および(iii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるという評価に基づいて、適当な候補として対象を選択すること、を含む免疫療法のための適当な候補である対象を選択すること;および(b)治療有効量の阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む組成物を選択された対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法を提供する。
【0219】
FFPE組織におけるPD−L1発現をアッセイするためにIHCを使用する方法の1つの態様において、自動IHCアッセイが使用される。自動IHCプロセスは、自動染色器において行われ、(a)FFPEサンプルをキシレンで脱パラフィン化すること、およびサンプルを再水和すること;(b)抗原賦活化装置を使用して抗原を賦活化すること;(c)Protein Blockとのインキュベーションにより非特異的タンパク質結合部位をブロックすること;(d)サンプルを一次抗−PD−L1 Abとインキュベートすること;(e)ポリマー性セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされた二次Abを加えること;(f)3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)クロモゲンで染色することを含む結合した二次Abを検出すること;および/または(g)ヘマトキシリンで対比染色することを含む。この自動IHCプロセスは、工程数の最小化、インキュベーション時間の最適化、および低いレベルのバックグラウンド染色で強い特異的染色を生じる一次Ab、遮断および検出試薬の選択により最適化されている。この自動IHCアッセイの好ましい態様において、一次抗−PD−L1 Abは、ウサギmAb28−8またはマウスmAb5H1である。本発明の1つの態様において、このIHCアッセイ、およびPD−L1発現を測定するために本明細書に記載されている任意の他のIHCアッセイは、免疫療法の方法の一部として使用され得る。他の態様において、本明細書に記載されている任意のIHC方法は、治療薬の投与を必要とする任意の治療プロセスとは独立に、すなわち、PD−L1発現をアッセイするための診断方法として単独で使用される。
【0220】
本明細書に記載されている任意の免疫療法方法の1つの態様において、選択された対象に投与されるAbは、本発明の任意の抗−PD−1または抗−PD−L1 Abまたはその抗原結合部分である。1つの好ましい態様において、対象はヒトである。他の好ましい態様において、AbはヒトAbまたはその抗原結合部分である。より好ましい態様において、抗−PD−1 Abはニボルマブであり、抗−PD−L1 AbはBMS−936559でる。1つの他の態様において、抗−PD−1 AbはPD−1への結合に対して、ニボルマブと交差競合するAbまたはその抗原結合部分であり、抗−PD−L1 AbはPD−L1への結合に対して、BMS−936559と交差競合するAbまたはその抗原結合部分である。1つの好ましい態様において、処置される癌は、MEL、RCC、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、CRC、去勢抵抗性前立腺癌、CRPC、HCC、頭頸部の扁平上皮癌、食道、卵巣、胃腸管および乳房の癌腫、および血液悪性腫瘍からなる群から選択される。
【0221】
記載されている方法の1つの態様において、あらかじめ決定された閾値は、細胞表面上でPD−L1を発現する試験組織サンプルにおける、(a)腫瘍細胞、(b)腫瘍浸潤炎症性細胞、(c)特定の腫瘍浸潤炎症性細胞、例えば、TILまたはマクロファージ、または(d)腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞の組合せの割合に基づく。1つの態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも0.001%の膜のPD−L1を発現する腫瘍細胞である。他の態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも0.01%、好ましくは少なくとも0.1%、さらに好ましくは少なくとも1%の膜のPD−L1を発現する腫瘍細胞である。1つの態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも5%の膜のPD−L1を発現する腫瘍細胞である。1つの態様において、あらかじめ決定された閾値は、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、または少なくとも5%の、IHCにより決定されるとき膜のPD−L1を発現する腫瘍細胞、および/またはIHCにより決定されるとき膜のPD−L1を発現する単一の腫瘍浸潤炎症性細胞である。1つの他の態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、または少なくとも5%の膜のPD−L1を発現する腫瘍浸潤炎症性細胞である。1つの他の態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、または少なくとも5%の膜のPD−L1を発現する腫瘍浸潤リンパ球である。1つの他の態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、または少なくとも5%の膜のPD−L1を発現する腫瘍浸潤マクロファージである。さらに他の態様において、あらかじめ決定された閾値は、IHCにより決定されるとき、少なくとも膜のPD−L1を発現する単一の腫瘍細胞または単一の腫瘍浸潤炎症性細胞である。好ましくは、PD−L1発現は、一次AbとしてmAb28−8または5H1を使用する自動IHCによりアッセイされる。
【0222】
本出願はまた、(a)(i)所望により、複数の対象からの試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(ii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を評価すること;および(iii)細胞表面上でPD−L1を発現する対象の試験組織サンプルにおける細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満であるという評価に基づいて、免疫療法に適当でない候補として対象を選択すること、を含む阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abの対象への投与を含む免疫療法のための適当な候補ではない対象を同定するために複数の対象をスクリーニングすること;および(b)阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Ab以外の標準治療用治療薬を選択された対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の処置のための方法を提供する。
【0223】
本出願は、(a)(i)所望により、複数の対象からの試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(ii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を評価すること;および(iii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるという評価に基づいて、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abでの免疫療法のために適当である候補として対象を選択すること、を含む免疫療法のための適当な候補である対象を同定するために複数の対象をスクリーニングすること;および(b)治療有効量の該薬剤を含む組成物を選択された対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法をさらに提供する。
【0224】
本出願は、(a)(i)所望により、複数の対象からの試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(ii)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を評価すること、ここで、細胞表面上でPD−L1を発現する組織サンプルにおける細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるとき、対象が抗−PD−1 Ab免疫療法のための適当な候補として同定され、試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満であるとき、対象が抗−PD−1 Ab免疫療法のための適当な候補ではない候補として同定される、を含む処置のための適当な候補である対象を同定するために複数の対象をスクリーニングすること;および(b)治療有効量の阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む組成物を、抗−PD−1 Ab免疫療法のための適当な候補として同定された対象に投与すること、または(c)該薬剤以外の標準治療用治療薬を抗−PD−1 Ab免疫療法のための適当な候補ではないとして同定された対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の処置のための方法をさらに提供する。
【0225】
本発明の1つの局面は、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えることを決定すること;および(c)決定に基づく、治療有効量の阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む組成物を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法である。本発明の別の局面は、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満であることを決定すること;および(c)決定に基づく、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Ab以外の標準治療用治療薬を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の処置のための方法である。
【0226】
本発明のさらに別の局面は、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を決定すること;(c)抗−PD−1 Abが、試験組織サンプルが細胞表面上でPD−L1を発現するあらかじめ決定された閾値レベルを超える細胞の割合を含む患者において有効であることの認識に基づく、対象のための処置として阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを選択すること;および(d)治療有効量の該薬剤を含む組成物を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法である。他の態様において、本出願は、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を決定すること;(c)該薬剤が、試験組織サンプル中の細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満である患者において有効でないことの認識に基づく、対象のための処置として阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Ab以外の標準治療用治療薬を選択すること;および(d)標準治療用治療薬を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の免疫療法のための方法を提供する。
【0227】
本出願はまた、(a)PD−L1を発現する試験組織サンプルにおける細胞の割合を評価するために、腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む試験組織サンプルの細胞をアッセイすること;および(b)膜のPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるという評価に基づいて、対象に対して、治療有効量の阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む免疫療法を選択することを含む、癌に罹患している対象に対する免疫療法を選択する方法を提供する。本出願は、(a)PD−L1を発現する試験組織サンプルにおける細胞の割合を評価するために、腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む試験組織サンプルの細胞をアッセイすること;および(b)膜のPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満であるという評価に基づいて、対象に対して、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Ab以外の標準治療処置を選択することを含む、癌に罹患している対象に対する処置を選択する方法をさらに提供する。
【0228】
加えて、本出願は、治療有効量の阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む組成物を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の処置のための方法であって、該対象は、PD−L1を発現する対象由来の試験組織サンプルにおける細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるように決定されることに基づいて選択されており、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む、方法を提供する。本出願はまた、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Ab以外の標準治療処置を対象に投与することを含む、癌に罹患している対象の処置のための方法であって、該対象は、PD−L1を発現する対象由来の試験組織サンプルにおける細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベル未満であるように決定されることに基づいて選択されており、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む、方法を提供する。
【0229】
本出願は、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を決定するために、試験組織サンプルをアッセイすること;(c)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合をあらかじめ決定された閾値割合と比較すること;および(d)表面PD−L1を発現する試験組織サンプルにおける細胞の割合があらかじめ決定された閾値レベルを超えるという評価に基づいて、免疫療法のための患者を選択することを含む、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abでの免疫療法のための癌患者を選択するための方法をさらに提供する。
【0230】
PD−L1発現を評価するための工程を含む本明細書に記載されている任意の方法において、試験組織サンプルはFFPE組織サンプルであり得、細胞表面上でのPD−L1ポリペプチドは、抗−PD−L1 Ab、例えば、mAb28−8または5H1を使用するIHCにより検出される。
【0231】
加えて、対象由来の試験組織サンプルにおける細胞の割合が、あらかじめ決定された閾値レベルを超えるレベルでPD−L1を発現することの評価に基づいて、免疫療法が選択または投与される場合の任意の方法において、対象由来の試験組織サンプルにおける細胞の割合が、あらかじめ決定された閾値レベル未満のレベルでPD−L1を発現することの評価に基づいて、免疫療法以外の標準治療処置が選択または投与される場合、処置の相補的方法が行われ得ることになる。
【0232】
本出願は、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を決定するために、試験組織サンプルをアッセイすること;(c)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合をあらかじめ決定された閾値と比較すること;および(d)該薬剤の治療効果を予測すること、ここで、細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合が閾値割合を超えるとき、薬剤は患者を処置することにおいて有効であると予測され、細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合が閾値割合未満であるとき、薬剤は患者を処置することにおいて有効でないと予測される、ことを含む癌患者を処置するための、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abの治療効果を予測するための方法をさらに提供する。
【0233】
本出願はまた、(a)所望により、組織の癌を有する患者から得られる試験組織サンプルを提供すること、ここで、試験組織サンプルは腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含む;(b)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合を決定するために、試験組織サンプルをアッセイすること;(c)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合をあらかじめ決定された閾値割合と比較すること;および(d)細胞表面上でPD−L1を発現する細胞の割合があらかじめ決定された閾値割合を超えることの決定に基づく、該薬剤を含む免疫治療レジメンを決定することを含む、癌患者を処置するための、阻害性免疫レギュレーターを阻害する薬剤、例えば、抗−PD−1 Abを含む免疫治療レジメンを決定するための方法を提供する。
【0234】
標準治療用治療薬
本明細書に記載されている処置のいくつかの方法は、患者への標準治療用治療薬の投与を含む。本明細書において使用されるとき、「標準治療用治療薬」は、薬物または薬物の組合せ、放射線療法(RT)、外科処置、または、適当なとき医師により認識される、受け入れられる、および/または患者、疾患または臨床状況の1つの型に対して広範に使用される他の医学的介入を含む処置プロセスである。種々の型の癌に対する標準治療は、当業者によく知られている。例えば、USAにおける21の主な癌センターの提携である全米総合癌情報ネットワーク(NCCN)は、多種多様の癌に対する標準治療処置における詳細な最新の情報(NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013参照)を提供する腫瘍学におけるNCCN標準的治療法ガイドライン(NCCN GUIDELINES(登録商標))を公開している。一例として、MEL、RCCおよびNSCLCに対する標準治療処置は、以下に要約されている。
【0235】
黒色腫
MELは、皮膚において主に見られるメラニン生産細胞であるメラニン細胞の悪性腫瘍である。他の皮膚癌よりもあまり一般的ではないが、それは、早期に診断されないと皮膚癌の大多数(75%)を死に至らすという最も危険な皮膚癌である。MELの発生率は、世界中で、白人集団において、とりわけ少量の皮膚色素沈着を有する人々が太陽からの過剰な紫外線暴露を受ける場合において、増加している。発生率は、ヨーロッパにおいて100,000人集団あたり<10−20人;USAにおいて100,000人あたり20−30人;およびオーストラリアにおいて、最も高い発生率が観察される場合で、100,000人あたり50−60人である(Garbeら, 2012)。MELは米国(U.S.)において癌の全ての新たな症例の約5%を占め、発生率は、1年あたり約3%増加し続けている。これは、死と関連した9,480人を有する、2013年のU.S.において推計76,690人の新規症例となる(Siegelら (2013))。
【0236】
インサイチュ(ステージ0)または早期MEL(ステージI−II)において、外科的切除が主な処置である。一般的に、予後は、限局性疾患および腫瘍1.0mm以下の厚さを有する患者に対して、90%以上の5年生存率で良好である(NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−黒色腫)。外科的切除が、併存疾患的または美容的に敏感な腫瘍部位によってインサイチュ黒色腫に対して適していない場合、局所イミキモドおよび放射線治療が、とりわけ悪性黒子に対する処置として新たに出現している。MELを処置するための化学療法剤は、c−KIT突然変異を有する黒色腫のためのダカルバジン、テモゾロマイドおよびイマチニブ、高用量インターロイキン−2、ならびにカルボプラチン有りでの、もしくはカルボプラチン無しでのパクリタキセルを含む。しかしながら、これらの処置は、第1(first-line)(1L)および第2(second-line)(2L)セッティング(setting)において20%未満の反応率と、わずかな成功率である。
【0237】
厚さ1.0mm以上の限局性黒色腫を有する患者において、生存率は50−90%の範囲である。局所リンパ節の病変の可能性は、腫瘍の厚さの増加と共に増加する。ステージIIIのMELで(臨床的にポジティブな結節および/またはイントランジット(in-transit)疾患)、5年生存率は20−70%の範囲である。飛び抜けて最も致死的であるものは、遠隔転移性黒色腫を有する患者における長期生存が10%未満であるステージIVのMELである(NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−黒色腫)。
【0238】
がんから離れた部位に対する切除、病巣内注射、レーザーアブレーション、放射線療法および生化学療法(化学療法および生物学的薬剤、例えば、インターフェロン−アルファおよびIL−2の組合せ)を含む種々の処置が研究されているが、転移性MELに対する最も良い処置について具体的になっていない。転移性MELに対する治療的展望は、最近、新規薬物、例えば、ベムラフェニブおよびイピリムマブの開発にて劇的な改善が見られる。ベムラフェニブは、転移性MELを有する患者の約50%において存在する突然変異した細胞内キナーゼであるBRAFによるシグナル伝達を特異的に阻害する。臨床試験において、ベムラフェニブは、BRAF突然変異−ポジティブ患者においてダカルバジンにて単に1.6月の推定無進行生存(PFS)に対して5.3月の推定無進行生存(PFS)、およびダカルバジンにて5.6−7.8月の中央OSに対してベムラフェニブにて15.9月の中央OSを与える(Chapmanら, 2011; Sosmanら, 2012)。イピリムマブは、免疫チェックポイント受容体であるCTLA−4を阻害し、それによりT細胞免疫応答を刺激するHuMAbである。糖タンパク質100(gp100)ペプチドワクチン有りでの、もしくは糖タンパク質100(gp100)ペプチドワクチン無しでのイピリムマブは、以前に処置された転移性MELを有する患者において、gp100単独を受ける患者において6.4月の中央OSと比較して、10.0−10.1月に中央OSに改善した(Hodiら, 2010)。これらの2つ薬剤の他に、他の薬剤は、フェーズ3ランダム化試験においてOS利益を証明していない。ダカルバジンは、5−20%の報告された客観的応答率および約6.4月の中央OSで転移性MELの処置のためにFDAおよびEMAにより承認されているが、これらの応答は短期間である。他の薬物、例えば、テモゾロマイドおよびフォテムスチンは、ダカルバジンと比較して、生存において有意な改善を引き起こさなかった。IL−2もまた、持続的であり得る4−6%完全応答を含む15−20%反応率と関連しているが、低血圧、心不整脈および肺水腫を含む有意な毒性と関連しているとして、転移性MELの処置のためにFDAにより承認されている。黒色腫に対する標準治療処置のさらなる詳細は、Garbeら(2012)およびNCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−黒色腫により提供される。進行性MELに対するイピリムマブおよびベムラフェニブの最近の承認にもかかわらず、抗−CTLA−4治療およびBRAFインヒビターにおいて(BRAF状態に依存して)前進している患者または、以前に未処置の、切除不能な、または転移性のBRAF野生型MELを有する患者に対して大きな満たされていない要求が未だに存在する。後期MELに対する5年生存率は、現在わずか15%である。
【0239】
腎細胞癌腫
RCCは、80−90%が明細胞腫瘍である腎臓腫瘍の約90%に関与する、成人における最も一般的な型の腎臓癌である(NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−腎臓癌)。それは、全ての尿生殖器腫瘍の最も致死的なものでもある。推定65,150人の患者が腎臓癌を有すると診断され、13,680人が2013の米国において該疾患で死んでいる(Siegelら (2013)。
【0240】
臨床的に限局されたRCC(ステージIAおよびIB)において、根治的腎摘出および腎保存手術を含む外科的切除が有効な治療である。腎部分切除術は、一般的に、局所進行性腫瘍(ステージIIおよびIII)を有する患者に対して適当でなく、この場合、根治的腎摘出が好ましい。腫瘍が腎実質に限定される場合、5年生存率は60−70%であるが、これは、転移が広がっている場合のステージIV疾患においてかなり低い。ステージIVのRCCはRTおよび化学療法に対して比較的に耐性であり、患者は外科処置から利益を得ることができるが、全身療法の前に腫瘍縮小の腎摘出が可能性のある外科的に切除可能な原発性および多発性切除可能な転移を有する患者に対して推奨される。
【0241】
最近までに、サイトカインIL−2およびIFNαは、両方とも5−27%の報告されたORRを提供する、進行性または転移性RCCに対する唯一の活性な全身的処置であった。しかしながら、これらの薬剤のそれぞれの限られた臨床的利益および相当な毒性プロフィールによって、最近の標的薬剤は、広く、進行性または転移性腎細胞癌腫の処置においてサイトカインに置き換えられている。明細胞RCCの病因における低酸素誘導因子アルファ(HIFα)シグナル伝達の重要性の認識は、1Lおよび2L処置において、標的療法の2つのクラスである抗血管形成チロシンキナーゼインヒビター(TKI)および哺乳動物標的のラパマイシン(mTOR)インヒビターの広範囲の試験を引き起こしている(Mulders, 2009)。構成的HIFα活性化が、後に腫瘍増殖および新生血管形成を引き起こし得る血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含むいくつかのタンパク質の上方調節または活性化を引き起こすため、血管形成の標的化は合理的である。上流PI3K/Akt/mTORシグナル伝達経路の活性化が、構成的HIFα活性化または上方調節が起こる1つの方法であるため、mTOR経路の標的化は重要である(Mulders, 2009)。血管形成を標的とする薬剤は、VEGF−受容体(VEGFr)TKI(例えば、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、アキシチニブおよびチボザニブ)およびVEGF結合mAb(例えば、ベバシズマブ)を含むが、mTOR経路を標的とする薬剤はmTORインヒビター(例えば、エバロリムスおよびテムシロリムス)(Mulders, 2009;NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−腎臓癌)を含む。しかしながら、多数の患者は耐性を生じ、OS改善は、危険性の高い患者において1つのフェーズ3試験においてのみ示されている:テムシロリムスは、IFNαと比較して、進行性RCCを有する患者において、OSに対して統計的に有意な利益を示した(10.9月 対 7.3月)(Hudesら, 2007)。エバロリムスは、また、プラセボに対して、OS改善はないが、中央PFSにおいて2.1月の改善が証明されている(Motzerら, 2008)。5つの承認された抗血管形成剤(ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブおよびアキシチニブ)および2つの承認されたmTORインヒビター(テムシロリムス、エバロリムス)のうち、エバロリムスのみが、抗血管形成治療での処置の失敗後の使用のために具体的に承認されている。米国において、エバロリムスは、スニチニブまたはソラフェニブでの処置の失敗後の進行性RCCの処置のために示され、欧州において、エバロリムスは、進行性RCCを有する患者に対してさらに広範に示されるが、この疾患はVEGF−標的療法での処置時または処置後に進行する。
【0242】
非小細胞性肺癌
NSCLCは、米国および世界中で、乳房、大腸および前立腺癌の組合せを超えて、癌の死の主な原因である。米国において、肺および気管支の推定228,190人の新たな症例が米国において診断され、該疾患によって約159,480人の死が起こる(Siegelら, 2013)。大多数の患者(約78%)は、進行性/再発性または転移性疾患と診断される。肺癌から副腎への転移は一般的に起こり、約33%の患者がかかる転移を有する。NSCLC治療はOSを徐々に改善しているが、利益は停滞期に達している(末期患者に対する中央OSはちょうど1年である)。1L治療後の進行はこれらの対象のほぼ全てにおいて起こり、5年生存率は難治性設定においてほんの3.6%である。2005年から2009年に、米国において肺癌に対する全5年相対生存率は15.9%であった(NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−非小細胞性肺癌)。
【0243】
外科処置、RTおよび化学療法は、NSCLC患者を処置するために一般的に使用される3つのモダリティである。クラスとして、NSCLCは、小細胞癌腫と比較して、化学療法およびRTに比較的反応しにくい。一般的に、ステージIまたはII疾患を有する患者において、外科的切除は、手術前および手術後にますます使用される化学療法と一緒に、ケアのための最善の機会を提供する。RTはまた、切除可能なNSCLCを有する患者のためのアジュバント療法、最初の局所処置、または治癒不可能なNSCLCを有する患者のための緩和療法として使用され得る。
【0244】
良い一般状態(PS)を有するステージIV疾患を有する患者は、化学療法から利益を受ける。白金薬剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン類薬剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシド、ペメトレキセドおよびゲムシタビン)を含む多数の薬剤は、ステージIV NSCLCのために有用である。これらの薬物中の多くを使用する組合せは、30%から40%の1年生存率を生じ、単一の薬剤よりも優れている。特定の標的療法もまた、進行性肺癌の処置のために開発されている。例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))は、血管内皮細胞増殖因子A(VEGF−A)をブロックするmAbである。エルロチニブ(タルセバ(登録商標))は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の小分子TKIである。クリゾチニブ(XALKORI(登録商標))は、ALKおよびMETを標的とする小分子TKIであり、突然変異したALK融合遺伝子を有する患者におけるNSCLCを処置するために使用される。セツキシマブ(アービタックス(登録商標))は、EGFRを標的とするmAbである。
【0245】
1L治療後の少ない処置選択肢のため、(全てのNSCLCの最大25%を示す)扁平上皮NSCLCを有する患者に対して特定の満たされていない要求が存在する。単剤化学療法は、白金を用いた二重化学療法(Pt二重)での進行後の標準治療であり、約7月の中央OSを引き起こす。エルロチニブもまた低い頻度で使用され得るが、ドセタキセルは、このラインの治療においてベンチマーク処置を維持している。ペメトレキセドもまた、進行性NSCLCを有する患者の2L処置におけるドセタキセルと比較して有意に少ない副作用で、臨床的に同等の有効性転帰を生じることが示されている(Hannaら, 2004)。3L設定を超える肺癌における使用のために承認されている治療は現在存在しない。ペメトレキセドおよびベバシズマブは扁平上皮NSCLCにおいて承認されておらず、分子標的療法は適用が限定されている。進行性肺癌において満たされていない要求は、フェーズ3試験においてOSを改善するためのOncothyreonおよびMerck KgaAのSTIMUVAX(登録商標)の最近の失敗、生存評価項目を満たすためのArQuleおよび第一三共のc−Met キナーゼインヒビターであるチバンチニブの不能、後期試験においてOSを改善するためのRocheのAVASTIN(登録商標)と組み合わせてのEli LillyのALIMTA(登録商標)の失敗、ならびに、後期試験において小分子VEGF−Rアンタゴニストであるモテサニブで臨床的評価項目を満たすためのAmgenおよび武田薬品の失敗により悪化している。
【0246】
本開示は以下の実施例によりさらに例示され、実施例はさらに限定するものとして解釈されるべきでない。本願を通して言及される全ての文献の内容は、出典明示により本明細書に包含させる。
【0247】
実施例1
ヒトPD−1を発現するCHO細胞への結合に対する抗−PD−1 HuMAb間の交差競合
ヒトPD−1(CHO/PD−1細胞)を発現するようにトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、4℃で30分間で、10μg/mlの抗−PD−1 HuMAb 5C4またはヒトIgG1(hIgG1)アイソタイプ コントロールAbのFabフラグメントとインキュベートし、0.2μg/mlの濃度で抗−PD−1 HuMAbs 2D3、7D3または4H1を加えた。CHO/PD−1細胞への4H1、2D3または7D3の結合を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート ヤギ抗−hIgG、Fc−ガンマ特異的Abにより検出した。5C4および17D8での交差競合アッセイの場合において、CHO/PD−1細胞を5C4の全分子とインキュベートし、FITC標識化17D8を加えた。CHO/PD−1細胞への2D3、7D3、4H1または17D8の結合は、FACScaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson, San Jose, CA)を使用するフローサイトメトリー分析により測定された。
【0248】
結果は
図1に記載されている。染色の平均蛍光強度(MFI)により測定されるとき、データは、5C4 Fabフラグメントが、mAb 5C4それ自体の結合、ならびに2D3、7D3(
図1A)および4H1(
図1B)の結合を実質的にブロックし、5C4 全mAbが、CHO/PD−1細胞への17D8(
図1C)の結合を実質的にブロックしたことを示す。
【0249】
実施例2
ヒトPD−L1を発現するCHO細胞への結合に対する抗−PD−L1 HuMAb間の交差競合
hPD−L1(CHO/PD−L1細胞)を発現するようにトランスフェクトされたCHO細胞を、4℃で20分間で、10μg/mlのそれぞれ10個のコンジュゲートされていないヒト抗−PD−L1 mAb(5F8、7H1、10H10、1B12、3G10、10A5、11E6、12A4、12B7および13G4)またはヒトIgG1(hIgG1)アイソタイプ コントロールAbとインキュベートした。FITC−コンジュゲート 10H10(A)、3G10(B)、10A5(C)、11E6(D)、12A4(E)または13G4(F)を、非結合、コンジュゲートされていないAbのウォッシュアウト(washout)なしに、4℃でさらに20分間、0.09μg/ml(B、D)、0.27μg/ml(A、C)、0.91μg/ml(F)、または2.73μg/ml(E)の最終濃度に細胞に加えた。種々の量の種々のFITC−コンジュゲート HuMAbを、標識化後の結合効率における差異のために使用し、これらのFITC−コンジュゲート HuMAbの最適な量は、CHO/PD−L1細胞への結合の用量滴定分析により以前に決定された。CHO/PD−L1細胞へのFITC−コンジュゲート 10H10、3G10、10A5、11E6、12A4または13G4の結合は、フローサイトメトリーにより測定した。
【0250】
結果は
図2に記載されている。標識化10H10の結合は、10A5、11E6および13G4により部分的にブロックされたが、それ自体のみにより実質的にブロックされた(
図2A)。逆に、10H10は、CHO/PD−L1細胞へのそれ自体のみの結合を実質的にブロックした。抗−PD−L1 HuMAb 5F8、7H1、1B12、3G10、10A5、11E6、12A4、12B7および13G4のそれぞれは、MFIにより測定されるとき、CHO/PD−L1細胞への標識化mAb 3G10(
図2B)、10A5(
図2C)、11E6(
図2D)、12A4(
図2E)および13G4(
図2F)の結合を実質的にブロックし、mAb 5F8および13G4は、度合いが少し減って標識化mAbの結合を一般的にブロックした。
【0251】
実施例3
ヒトPD−L1を発現する卵巣癌腫細胞への結合に対する抗−PD−L1 mAb間の交差競合
抗−PD−L1 HuMAb 5F8、12B7、3G10、1B12、13G4、10H10、10A5および12A4、およびヒトIgG1(huIgG1)アイソタイプ コントロールAbを、10μg/mlから連続希釈し、4℃で20分間、hPD−L1を発現するES−2卵巣癌腫細胞とインキュベートした。洗浄なしに、ビオチン化−12A4 Abを、4℃でさらに20分間、0.4μg/mlの最終濃度に加えた。洗浄後、結合ビオチン−12A4を、蛍光ストレプトアビジン−PE二次試薬を使用して検出し、フローサイトメトリーにより測定した。
図3は、非標識化hPD−L1 HuMAbの濃度に対してプロットされた結合ビオチン−12A4の蛍光を示す。ES−2細胞へのビオチン−12A4の結合は、12A4それ自体ならびに1B12および12B7により実質的にブロックされ、mAb 5F8、10A5、13G4および3G10により中程度に有意にブロックされたが、mAb 10H10によりブロックされなかった。
【0252】
実施例4
抗−PD−1 Abのフェーズ1臨床試験の設計
フェーズ1試験を、選択された進行性固形腫瘍を有する患者において抗−PD−1の安全性、抗腫瘍活性および薬物動態学を評価するために行った。ヒト抗−PD−1 mAbであるBMS−936558(本明細書においてニボルマブとも、米国特許第8,008,449号において5C4とも称される)を、それぞれ8週処置サイクルの2週毎に静脈内注入として投与した。腫瘍状態を、それぞれのサイクル後に再評価した。患者が完全寛解、許容されない毒性、疾患進行を経験するか、または同意を引っ込めるまで、患者に最大2年(12サイクル)間の処置を続けた。他の臨床的に安定であった患者において、提案される免疫応答基準(Wolchokら, 2009)により推奨されるとおり、さらなる進行が現れるまで、試験処置を見かけの最初の疾患進行を超えて続けられた。処置の最後に安定な疾患(SD)または継続客観的応答(OR:完全応答[CR]または部分応答[PR])を有する患者を1年間追跡し、進行の場合においてさらに1年間、再処置を提供した。
【0253】
用量漸増
進行性黒色腫(MEL)、非小細胞性肺癌(NSCLC)、腎細胞癌腫(RCC)、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)および結腸直腸癌(CRC)を有する患者は、登録する(enroll)ために適格であった。用量レベルあたり3−6人の患者のコホートが、1.0、3.0および10.0mg/kgで連続して登録された。用量漸増は、最低3人の患者が与えられた用量レベルで安全性評価期間(56日間)を完了したとき、1/3未満の患者において用量制限毒性で行った。患者内の用量漸増は許されなかった。
【0254】
コホート拡張
最大耐量(MTD)を達しなかった。最初に、約16人の患者の5つの拡張コホートのそれぞれを、MEL、NSCLC、RCC、CRPCおよびCRCに対して10mg/kgで登録した。活性の最初のシグナルおよび次のプロトコールの修正のための6.5月中断に基づいて、約16人の患者のさらなる拡張コホートのそれぞれを、MEL(1.0および3.0mg/kgで、次に、0.1、0.3または1.0mg/kgにランダム化さらたコホート)、NSCLC(1、3または10mg/kgにランダム化された扁平上皮または非扁平上皮組織コホート)、およびRCC(1.0mg/kgで)に対して登録した。1mg/kgへの患者内の用量漸増を、0.1または0.3mg/kgを受けた後に、進行性疾患を有するMEL患者に対して許した。
【0255】
患者
適格な患者は、進行性固形腫瘍;年齢>18歳;平均余命>12週;≦2の米国東海岸(Eastern)共同腫瘍学グループの一般状態;固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)、修正を加えたv1.0による測定可能な疾患(Topalianら, 2012b参照);十分な血液学、肝臓および腎臓機能を証明し;全身的処置レジメン前に1−5を受けた。安定な処置された脳転移を有する患者を登録した。除外基準は、慢性自己免疫疾患の病歴、T細胞を調節するAb(例えば、抗−CTLA−4、抗−PD−1、抗−PD−L1)での以前の治療、免疫抑制薬治療を必要とする状態、および慢性感染症(例えば、HIV、BまたはC型肝炎)を含んだ。
【0256】
MEL(n=104)、NSCLC(n=122)、RCC(n=34)、CRPC(n=17)、およびCRC(n=19)を含む進行性固形腫瘍を有する全296人の患者を、最大2012年2月まで40月間BMS−936558で処置した。2013年3月までに、非小細胞性肺癌(n=129)、黒色腫(n=107)、RCC(n=34)、CRPC(n=17)、およびCRC(n=19)を有する患者を含む306人の患者を、2008年10月から2012年1月までBMS−936558で処置し、全員最低1年観察した。2人の患者は、処置の完全なサイクルを受けず、応答を評価できると考えられなかった。中央年齢は63歳(範囲29−85歳)であった。ECOG行動スコアは、98%の患者において0または1であった。大多数の患者はしっかり前処置され、47%がレジメン前に少なくとも3を受けた。注目すべき以前の治療は、MEL患者において免疫療法(64%)およびB−RAFインヒビター(8%);NSCLC患者において白金を用いた化学療法(94%)およびチロシンキナーゼインヒビター(TKI、34%);およびRCC患者において腎摘出(94%)、免疫療法(59%)および抗血管形成治療(74%)を含んだ。全ての処置された集団(N=306)のベースライン特性は、有効性集団(応答の評価可能な患者、N=270)のものと同様であった。患者の前処置の詳細は、Topalianら(2012b)において提供される。
【0257】
統計分析
全ての処置された患者(N=306)に対するベースライン特性および有害事象、および2013年3月の肺癌、黒色腫および腎臓癌を有する270人の患者に対する有効性結果を、報告する。薬物動態学および分子マーカー集団は、2012年2月の予備的分析の利用できるデータを有する処置された患者からなった。有効性集団は、分析日の少なくとも8月前に処置を開始する応答を評価可能な患者からなった。腫瘍測定を、治験担当医によるそれぞれの処置サイクル(4回)後に回収した。腫瘍測定に基づく個々の最も良い客観的応答は、修正されたRECIST v1.0によってスポンサー(sponsor)により評価された。客観的応答は、少なくとも1つの連続腫瘍評価により確認した。客観的応答および安定な疾患率を、Clopper−Pearson方法を使用して信頼区間で概算した。PFS、OS、生存率、および応答期間を含む時間事象(Time-to-event)評価項目を、Kaplan−Meier方法を使用して概算した。AEは、国際医薬用語集(MedDRA)、version 15.1を使用してコード化された。頻度が高いモニタリングおよび/またはユニークな介入を必要とする有害事象として定義される、「特に興味あるAE」(AEOSI)の「免疫関連有害事象」としても称される、起こり得る免疫学的病因での選択有害事象(Select adverse event)を、MeDRAの用語の予め定義された一覧を使用して同定した。個々の最も良いORは、修正されたRECIST v1.0によって治験担当医報告データ由来であった。ORを少なくとも1つの連続腫瘍評価により確認し、OR率(ORR={[CR+PR]÷n}×100)を計算した。
【0258】
実施例5
抗−PD−1抗体で処置された患者に対する安全性評価
臨床検査および研究室評価を含む安全性評価を、ベースラインおよび薬物の最後の投与後最大100日間一定間隔で全ての処置された患者において行った。AEの重症度は、NCI有害事象共通用語基準(NCI CTCAE)、v3.0に基づいてグレード化した。コンピュータートモグラフィー(CT)または磁気共鳴イメージングを、ベースラインで、およびそれぞれの処置サイクル後に腫瘍評価のために行った。
【0259】
MTDは、この試験に対して試験されたBMS−936558の用量を超えて定義されず、10mg/kgの最も高い計画された用量までであった。90%以上の相対的BMS−936558用量強度が、87%の患者においてなし遂げられた(詳細のためにTopalianら, 2012b;Topalianら, 2013参照)。AEは、国際医薬用語集(MedDRA)、version 14.1を使用してコード化された。AEOSIを、MeDRAの用語の予め定義された一覧を使用して同定した。296人のうち15人(5%)の患者は、BMS−936558−関連AEによって処置を中断した。2012年2月の予備的分析において、62人(21%)の患者は死に、2013年3月までに、195人の患者(64%)が最も一般的な死因である疾患進行で死んだ(Topalianら, 2012b;Topalianら, 2013)。
【0260】
最も一般的な有害事象は、因果関係にかかわらず、疲労、食欲の低下、下痢、嘔吐、咳、呼吸困難、便秘、嘔吐、発疹、発熱および掻痒を含んだ(Topalianら, 2012b; Topalianら, 2013)。一般的なBMS−936558−関連AEは、疲労、発疹、下痢、食欲の低下および嘔吐を含んだ。大多数の事象は低いグレードであり、グレード3−4薬物関連AEが296人のうち41人(14%)の患者において観察された。処置関連AE(あらゆるグレード)が306人のうち230人の患者(75%)において観察され、最も一般的なものは疲労、発疹、下痢および掻痒であった(Topalianら, 2013)。BMS−936558−関連AEの範囲、頻度および重症度は、処置期間に明白な関連なく、処置された用量レベルにわたって一般的に類似であった。306人のうち52人の患者(17%)がグレード3−4の処置関連有害事象を経験し、疲労(2%)、肺炎、リンパ球減少、下痢、腹痛および低リン酸血症(それぞれ1%)が最も一般的であった。処置関連の重篤な有害事象が、306人のうち42人の患者(14%)において起こった(Topalianら, 2013)。
【0261】
可能性のある免疫関連病因を有する薬物関連AEOSIを、頻度のより正確な概算を提供するために臓器障害により分類した。特に肺炎、白斑、大腸炎、肝炎、下垂体炎および甲状腺炎を含んだ。いずれかのグレードの処置関連選択有害事象が306人のうち140人の患者(46%)において観察され、最も一般的なものは発疹(15%)、下痢(13%)および掻痒(11%)(表2)であった。グレード3−4の処置関連選択事象が、19人の患者(6%)において見られた。
【0262】
薬物関連有害事象を有する230人のうち52人の患者(23%)は、全身グルココルチコイドおよび/または他の免疫抑制剤での管理を必要とした。肝臓または消化器AEOSIを、必要なとき、コルチコステロイドの投与と共に、処置妨害で管理した。今まで処置された患者のうち、これらのAEは、全ての場合において可逆性であった。内分泌AEOSIは、補充療法で管理した。306人のうち32人の患者(11%)は、処置関連有害事象によって治療を中断した。処置する医師の裁量で、患者にBMS−936558での処置を成功裏に再開した。21人(40%)が、毒性が解決された後に、再開することができた。
【0263】
薬物関連肺炎(いずれかのグレード)は、306人のうち12人(4%)の患者において起こった(Topalianら, 2013)。臨床提示は、無症候性患者において放射線学的異常から、進行性の、びまん性肺浸潤と関連する症状(咳、発熱、呼吸困難)の範囲であった。グレード3−4の肺炎が4人の患者(1%)において発症し、このうち3人の場合は致死的(2人のNSCLC患者、1人のCRC)であった。肺炎の発生と腫瘍型、用量レベル、または与えられた投与の数間の明確な関連は気付かなかった。12人のうち9人の患者において、肺炎は、処置中止および/または免疫抑制(グルココルチコイド、インフリキシマブ、ミコフェノール酸)で可逆性であった。2011年11月における最新の肺炎関連死の後に、79人の患者は、これの、または他の処置関連原因からさらなる死亡なしで、ニボルマブ(中央29週、範囲2−69週)を受け続けた。
【0264】
実施例6
抗−PD−1抗体に対する薬物動態学/薬物動力学分析
薬物動態学(PK)分析のために、連続血液サンプルを回収し、BMS−936558の血清濃度をELISAを使用して定量した。薬物動力学(PD)分析のために、末梢血単核細胞をベースラインおよびサイクル1後に患者から単離し、フローサイトメトリーによって循環CD3+ T−細胞において、BMS−936558によるPD−1受容体占有(RO)を概算した(Brahmerら, 2010)。
【0265】
BMS−936558の最大濃度を、注入の開始1−4時間後の中央T
maxで観察した。BMS−936558のPKは、0.1−10mg/kgの用量範囲において(n=35)、C
maxおよびAUC
(0−14d)にて用量比例増加で直線であった。BMS−936558 PDは、循環T−細胞上のPD−1 ROにより評価した。BMS−936558の1サイクルで処置された65人のMEL患者からのPBMCは、隔週(biweekly)で0.1−10mg/kgで、64%−70%の範囲であるBMS−936558による循環CD3
+ T−細胞上のPD−1分子の中央占有を証明した(詳細のためにTopalianら, 2012b参照)。
【0266】
実施例7
抗−PD−1抗体により示される抗腫瘍有効性
2012年2月に分析されたデータ
臨床的抗腫瘍活性が、試験された全てのBMS−936558用量で観察された。OR(確認されたCRまたはPR)は、NSCLC、MELおよびRCCを有する患者の相当な割合において(表1および2;
図4)、および、肝臓、肺、リンパ節および骨を含む転移性疾患の種々の部位において(
図5−7および示されていない)観察された。腫瘍退縮が、慣用ならびに応答の「免疫関連」パターン、例えば、新規病変の存在における腫瘍組織量における長期減少に続いた。個々の最も良い全体応答は、修正されたRECIST v1.0によって、治験担当医報告データから得た。ORは、少なくとも1つの連続腫瘍評価により確認した。データ分析時に、10mg/kgで処置されたNSCLCを有する2人の患者は、未確認の応答を有し、8人のさらなる患者(MEL、NSCLCまたはRCCを有する)は、新規病変の存在においてベースライン標的病変において持続的低下を有した(すなわち、「免疫関連」応答パターン)。これらの患者は、OR率を計算する目的のために応答者として分類しなかった。抗腫瘍応答および/または長期疾患の安定化は、受けた以前の治療にかかわりなく、患者において観察された(Topalianら, 2012bの補足添付物4におけるORおよびSDを有する患者に対する無進行期間の要約、参照)。
【0267】
NSCLC患者において、14人のORが、6%、32%および18%の反応率で、それぞれ1、3または10mg/kgのBMS−936558用量で観察された。ORは、NSCLC組織にわたって観察された:18人の扁平上皮の6人の応答者(33%)、56人の非扁平上皮の7人の応答者(13%)、および2人のうち1人不明。ORを有する全14人の患者にデータ分析前に、処置≧24週を開始し、これらのうち8人は応答期間≧24週を有した(表1)。≧24週持続する安定な疾患(SD)が、非扁平上皮組織を有する全てのうち5人(7%)のNSCLC患者において観察された。MEL患者中、26人のORは、0.1−10mg/kgの範囲である用量で、用量レベルによって19%−41%の範囲である反応率で観察された。3mg/kgの用量レベルで、ORは、17人のうち7人(41%)の患者において気付いた。ORをなし遂げた26人のMEL患者のうち17人にデータ分析の前に処置≧1年を開始し、これらのうち13人の患者はOR期間≧1年(yr)を有した。ORを有する残りの8人の患者は試験<1年であり、6人は1.9−5.6月の範囲である応答を有した。≧24週持続するSDは、6人(6%)の患者において観察された。RCC患者において、ORは、1mg/kgのBMS−936558用量で処置された患者の17人のうち4人(24%)および10mg/kgで処置された患者の16人のうち5人(31%)において起こった。データ分析の前に処置≧1年を開始したORを有する8人のRCC患者中、5人(63%)はOR期間≧1yrを有した。≧24週持続するSDは、さらなる9人(27%)の患者において観察された。
【0268】
表1.2012年2月までに評価されたデータの有効性集団
*(N=236)
†におけるBMS−936558の臨床活性
【表1】
【0269】
*有効性集団は、処置が2012年2月におけるデータ分析の少なくとも8月前に開始された応答を評価可能な患者からなり、ベースラインおよび以下の1つで測定可能な疾患を有した:疾患進行または死の少なくとも1つの処置スキャンまたは臨床的証拠。
†CRは完全応答、MELは黒色腫、NSCLCは非小細胞性肺癌、ORRは客観的応答率、PFSRは無進行生存率、PRは部分応答、RCCは腎細胞癌、SDは安定な疾患、nは患者数を示す。
‡客観的応答率({[CR+PR]÷n}×100)は、Clopper−Pearson方法を使用して計算される信頼区間で確認された応答に基づいて計算されている。個々の患者応答は、修飾を備えたRECIST v1.0によって判定された(Topalianら, 2012b参照)。
§無進行生存率は、Greenwood方法を使用する信頼区間でKaplan−Meier方法論により計算される24週生存した、患者の割合であった。
¶1つのCR。
**3mg/kg用量レベルで処置された1人のNSCLC患者は、進行性疾患の最初の評価を有し、次にPRを有し、応答者に分類された。
【0270】
表2.2012年2月までに評価されたBMS−936558
*に対する客観的応答の期間
【表2】
【0271】
*MELは黒色腫、NAは適用できない(not applicable)、NSCLCは非小細胞性肺癌、RCCは腎細胞癌を示す。
†第1の応答から、確認された進行、死までの時間、または打ち切りデータについて、最後の腫瘍評価までの時間。
‡1人の患者は、進行性疾患の最初の評価を超えて処置され、次にPRを有し;該患者は、RECIST v1.0による反応率を計算する目的のために応答者に分類されたが、応答の期間の計算に適していなかった。
【0272】
2013年3月の分析されたデータ
客観的応答は、NSCLC(17%)、MEL(31%)およびRCC(29%)を有する患者において観察されたが、CRCまたはCRPCを有する患者において観察されなかった。応答は、試験された全てのニボルマブ用量にわたって観察された;1mg/kg、対3または10mg/kgを受けるNSCLC患者における反応率は、減少しているようであった(それぞれ3%、対24%および20%)(表3および4)。応答する組織を有する270人のうち13人の患者(4.8%)は、RECIST基準を満たさなかった慣用にとらわれない応答パターンを有した(例えば、最初の進行後の新規病変または退縮の存在における標的病変における持続的低下)(Wolchokら, 2009)。さらなる患者は、24週間またはそれ以上SDを示した(10% NSCLC、7% MEL、27% RCC)。1および2年の画期的なOS率により反映される持続的生存は、以下のとおり、応答する集団のそれぞれにおいて気付いた:NSCLC、42%および14%;MEL、62%および43%;およびRCC、70%および50%(表3)。肺癌に対して9.6月(扁平上皮および非扁平上皮NSCLC組織に対してそれぞれ9.2および10.1月)、MELに対して16.8月、およびRCCに対して22月以上の中央OSが、観察された;中央PFSは、NSCLCにおいて2.3月、MELにおいて3.7月、およびRCCにおいて7.3月であった;および中央応答期間は、それぞれ74、104および56週であった(表4)。疾患進行以外の理由のために治療を中断し、少なくとも24週間追跡された16人の応答者のうち、13人(81%)は、分析時に応答であった(
図8)。
【0273】
表3.2013年3月に評価された有効性集団(N=306)
*におけるニボルマブの臨床活性
【表3】
【0274】
*客観的応答は、結腸直腸癌を有する19人の患者または去勢抵抗性前立腺癌を有する17人の患者において見られなかった。
†客観的応答率({[CR+PR]÷n}×100)は、Clopper−Pearson方法を使用して計算される信頼区間で確認された応答に基づいて計算されている。個々の患者応答は、修飾を備えたRECIST v1.0によって判定された(方法S1および試験プロトコール、NEJM.org、参照)。
‡第1の応答から、確認された進行、死までの時間、または打ち切りデータについて(「+」により示される)、最後の腫瘍評価までの時間。
**非小細胞肺癌を有する129人の患者のうち、1人は未知の組織を有し、客観的応答を示さなかった。他の患者は、示されているとおり、扁平上皮または非扁平上皮組織を有した。
§NR、到達しなかった;応答者が進行する可能性が50%以下に下がる時点は、不十分な数の事象および/または追跡によって、到達されていなかった。
¶追跡の不十分な期間。
【化1】
1人のCRは黒色腫と示され、1人のCRは腎臓癌と示された。
#中央全生存は、この試験において腎臓癌を有する患者の範囲で死までの最も長い時間である、22月で到達しなかった。
^NE、評価できない。
【0275】
表4.2013年3月に評価された用量レベルによるニボルマブの臨床活性
【表4-1】
【表4-2】
【0276】
*客観的応答率({[CR+PR]÷n}×100)は、Clopper−Pearson方法を使用して計算される信頼区間で確認された応答に基づいて計算されている。個々の患者応答は、修飾を備えたRECIST v1.0によって判定された(方法S1および試験プロトコール、NEJM.org、参照)。
†第1の応答から、確認された進行、死までの時間、または打ち切りデータについて(「+」により示される)、最後の腫瘍評価までの時間。
‡NR、到達しなかった;応答者が進行する可能性が50%以下に下がる時点は、不十分な数の事象および/または追跡によって、到達されていなかった。
§1人のCRは黒色腫と示され、1人のCRは腎臓癌と示された。
¶腫瘍進行を有する5人の患者は、0.1から1.0mg/kgに用量増大させ、6人は0.3から1.0mg/kgに用量増大させた。これらの患者は治療に応答しなかった。
#中央全生存は、この試験において腎臓癌を有する患者の範囲で死までの最も長い時間である、22月で到達しなかった。
^NE、評価できない。
【0277】
実施例8
膜のPD−L1発現および抗−PD−1応答間の相関関係
PD−L1のIHC染色は、標準IHCプロトコール(Taubeら, 2012; Supp. Materials)において、マウス抗−ヒトPD−L1 mAb 5H1(Dongら, 2002)を使用して前処置ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍標本において行った。簡潔には、スライドガラス上にマウントした5μm−FFPE切片をキシレンにおいて脱パラフィン化し、抗原賦活化装置(Biocare Medical)において120℃で10分間pH9.0で、Tris−EDTAバッファーを使用して抗原回復を行った。内因性ペルオキシダーゼ、ビオチンおよびタンパク質をブロックし(CAS system K1500, Dako; Avidin/biotin Blocking Kit, SP-2001, Vector Laboratories; Serotec Block ACE)、一次5H1 Abを2μg/mlの濃度で加え、4℃で20時間インキュベートした。二次Ab(ビオチン化抗−マウスIgG1、553441 BD)を、室温(RT)で30分間1μg/mlの濃度で適用した。次に、シグナルを、製造業者のプロトコール(CAS system K1500, Dako)にしたがって増幅で発生させた。切片をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールにおいて脱水し、キシレンにおいてクリアにし、カバースリップを適用した。
【0278】
PD−L1に対して細胞表面染色を示す腫瘍細胞のパーセントを、処置結果が見えなくされた2人の独立した病理学者によりスコア化された。PD−L1陽性を、5%発現閾値(Taubeら, 2012; Thompsonら, 2006)により標本毎に、多数の標本の場合において、標本がこの基準を満たすとき、定義した。Fisherの直接確率検定を、PD−L1発現およびOR間の関連性を評価するために適用した。しかしながら、この分析は、部分的に、集団の非ランダムなサブセットからの任意の生検に基づき、統計的仮説の試験は事前に指定されていなかったことに注意すること。
【0279】
42人の患者(18人MEL、10人NSCLC、7人CRC、5人RCC、および2人CRPC)からの61個の前処置腫瘍標本を、腫瘍細胞表面PD−L1発現について分析した(
図8)。25から42人の患者からの生検標本は、IHCによりPD−L1発現に対してポジティブであった。Fisherの直接確率検定を、post−hoc分析においてPD−L1発現およびOR間の関連性を評価するために適用した。42人の表面−PD−L1
+患者のうち、9人(36%)はORをなし遂げたが、PD−L1
−腫瘍を有する17人の患者は、ORをなし遂げなかった(
図8A)。したがって、患者のサブセットにおいて、前処置生検における腫瘍細胞上のPD−L1の細胞表面発現は、BMS−936558で処置された患者において、OR率の増加と関連するが、立証されたPD−L1−ネガティブ腫瘍を有する患者はORを経験しなかった。これらのデータは、腫瘍PD−L1発現が、抗−PD−1免疫療法に対する患者選択を可能にすることができる分子マーカーであることを示す。
【0280】
実施例9
FFPE組織において膜のhPD−L1抗原を指向するウサギmAbの単離
ヒトPD−L1ポリペプチドに対するウサギAbは、Epitomics, Inc. (Burlingame, CA)によって、組換えヒトPD−L1融合タンパク質を使用するウサギの免疫化により調製した。抗血清力価を、hPD−L1抗原での標準直接ELISAを使用して、およびhPD−L1を過剰発現するトランスフェクト細胞を使用する細胞ELISAを使用して評価した。これらのAbは、FFPE組織切片のIHCアッセイにより、PD−L1に結合する能力についてスクリーニングもした。最も高いAb力価を有するウサギを脾臓摘出術のために選択した。脾臓から単離されたリンパ球を、40x96−ウェルプレートにおいて骨髄腫細胞に融合し、免疫PD−L1抗原に対するELISAにより、およびhPD−L1を過剰発現する細胞に対する細胞ELISAによりスクリーニングした。ポジティブなクローンを24−ウェルプレートに拡張し、確認スクリーニングを直接ELISAおよび細胞ELISAにより行った。スクリーニング抗原に特異的であったクローンの上清(sups)を、IHCにより再スクリーニングした。
【0281】
マウス抗−hPD−L1 mAbのセットもまた、ウサギmAbに対して上記されているのと同様のプロトコールを使用して、マウスの免疫化により生産した。
【0282】
スクリーニングされたウサギおよびマウス免疫化の両方からの合計185マルチクローンのうち、10個のみのウサギマルチクローンAbが、hPD−L1の膜形態を特異的に検出した。精製されたマウスサブクローンは、細胞表面hPD−L1を特異的に検出することが見られなかった。トップ5のウサギマルチクローンからの60サブクローン(それぞれ12サブクローンを含む、指定された番号13、20、28、29および49)を、FFPE低密度組織マイクロアレイ(TMA)におけるIHCにより最初にスクリーニングし、次に限られた25サブクローンにおいて確認および特異性検証をした。ウサギIgGをネガティブアイソタイプコントロールとして使用し、mAb 5H1(Dongら, 2002)をポジティブコントロールとして使用した。特異性を、抗原前吸収アッセイにより、さらに検証した。IHCの2ラウンドによって、以下の15個の精製されたサブクローンを、染色の特異性および強度に関して非常に有望なAbとして選択した:13−1、13−3、13−7、13−8;20−5、20−7、20−12、20−6;28−1、28−8、28−12;29−8;49−5、49−7および49−9。これらの選択されたAbに対する免疫反応データは、表5において要約されている。
【0283】
表5.ウサギ抗−hPD−L1 mAbの免疫反応
【表5】
【0284】
*PD−L1を安定にトランスフェクトされたCHO細胞 対 CHO−Sコントロール;
†PD−L1ポジティブ組織は、胎盤および1つの非小細胞性肺癌を含んだ;「非常に高い」発現までの検出は、膜のPD−L1の検出でのより良い感受性を示唆する。
【0285】
さらなるアッセイを、表面プラズモン共鳴により、Ab中の結合親和性および交差競合を決定する(重複 対 異なるエピトープ領域を同定するために)ことを含む、精製されたAbクローンをさらに特徴付けするために行った。全てのAbは、高い結合親和性(K
D<10
−9M)を示した。これらの15の精製されたクローンをまた、PD−L1の細胞表面発現に対してポジティブまたはネガティブであることが知られている種々の細胞および組織型に対する標準切片またはFFPE低密度TMAにおけるIHCにより、再スクリーニングした。ウサギIgGをアイソタイプコントロールとして使用し、mAb 5H1をポジティブコントロールとして使用した。高い濃度(10μg/ml)で、クローン28−xおよび49−xは組織において低いから中程度のレベルのバックグラウンド染色を示したが、クローン13−xはバックグラウンド染色を示さず、13−xクローンは広ダイナミックレンジを有するということを示唆した。20−xクローンは、主に細胞質および拡散であった種々の程度のバックグラウンド染色を示した。膜のPD−L1の非常に強力な特異的な検出を有するクローンである、ウサギクローン28−8(SPRにより決定されるとき、K
D=100pM)、後のIHCアッセイのための主なAbとして選択された。MAb 28−1、28−12、20−12および29−8は、それぞれ、130pM、94pM、160pMおよび1200pMのK
D値を有した。mAb28−8の重鎖可変(V
H)および軽(カッパ)鎖可変(V
κ)領域の配列は、それぞれ、配列番号35および36に記載されている。28−8 Abは、SPR分析に基づいて、マウスmAb 5H1と異なるエピトープを認識することが示された。クローン28−1、28−12、29−8および20−12は、FFPE組織において膜のPD−L1の強力な検出に関して次に良いAbであった。mAb13−1は膜のPD−L1の検出に関して最も良い特異性を有したが、最大検出レベルは、他の主なAbのものよりも低かった。ウェスタンブロッティングもまた、PD−L1に対する上位の選択されたAbの特異性を立証するために、プラス/マイナス抗原競合で行った。
【0286】
異なる腫瘍型からの腫瘍細胞および腫瘍浸潤炎症性細胞を含むFFPE試験組織サンプルにおいて、膜のPD−L1へのmAb 5H1および28−8の結合を比較した。膜のPD−L1発現を、2人の独立した病理学者により行われるヒストスコア方法を使用して評価した。4つのNSCLC、2つのMEL、および2つのRCC腫瘍が、2mg/mlで28−8および5mg/mlで5H1で染色された。データは表6に一覧とされており、
図9にグラフで示されている。ウサギmAb28−8は、2.5倍少ないAbを使用して、10個のうち7個のサンプルに対してより良い検出(より高いヒストスコア)を示し、1つのサンプルのみにおいて、mAb28−8よりもわずかに高い5H1に対するヒストスコアであった。
【0287】
表6.ヒストスコア分析によるmAb 28−8および5H1の比較
【表6】
【0288】
Taubeら (2012)は、mAb 5H1が細胞表面に結合したことを培養細胞におけるフローサイトメトリーにより証明し、PD−L1への結合の特異性を、組織切片への5H1 mAbの結合を競合的にブロックするPD−L1融合タンパク質を使用して確認した。これらの著者らはまた、Gadiotら (2011)により以前に記載されている5H1をウサギポリクローナル抗−hPD−L1 Abである4059と比較し、5H1がFFPEサンプルにおける細胞表面染色パターンを示し、pAb 4059が広範な細胞質染色を証明したことを見出した。さらに、5H1をウェスタンブロット分析によりpAb 4059と比較したとき、グリコシル化PD−L1の50kDaバンドを特異的に検出した5H1と対照的に、Ab 4059は、グリコシル化PD−L1の予期される質量に対応する50kDaタンパク質に加えて、黒色腫細胞の溶解物において複数のタンパク質に結合した(Taubeら, 2012)。Taubeら (2012)の結果および本明細書に記載されている(表7に要約されている)結果に反して、Gadiotら (2011)は、mAb 5H1がFFPE組織サンプルにおいて高レベルのバックグラウンド染色を生じたことを報告し、pAb 4059がFFPEサンプルにおいてPD−L1の十分な特異的染色を生じたことを見出した。Gadiotら (2011)により試験された13個の他のAbはいずれも、高いバックグラウンド染色を与えるFFPE組織を染色しなかったか、またはPD−L1融合タンパク質競合によりブロックされず、FFPE組織においてPD−L1に特異的に結合する抗−PD−L1 Abを得る困難性を強調した。
【0289】
本試験において、自動IHCアッセイ(実施例10参照)を、PD−L1を発現する種々の細胞を含むFFPE組織サンプルへのいくつかの市販されている抗−PD−L1 Abおよび5H1(Dongら, 2002)の結合を評価するために使用した。表7に要約されている結果は、試験された市販されているAbは、PD−L1を発現するか、またはPD−L1を発現するCHO細胞 対 PD−L1を発現しないトランスフェクトされていない親CHO細胞を明確に区別することが知られているヒト組織において、膜のPD−L1発現を特異的に認識しなかったことを示す。特異的に認識された膜のPD−L1に結合するポリクローナル Ab(pAb)4059の無能力は、Taubeら (2012)の発見と一致する。28−8の結合は、このアッセイにおいて5H1のものと同様であるが、ヒストスコア分析は、28−8が5H1よりもより良く働くことを示唆する。
【0290】
表7.PD−L1発現細胞を含むFFPEサンプルへのmAbの結合
【表7】
【0291】
*PD−L1を安定にトランスフェクトされたCHO細胞 対 親CHO−Sネガティブコントロール;
†PD−L1ポジティブ組織は、扁桃腺および/または胸腺を含んだ;
mAb、マウスモノクローナルAb;pAb、ウサギポリクローナルAb。
【0292】
実施例10
PD−L1発現を評価するための自動IHCプロトコールの開発
自動IHCプロトコールを、FFPE標本におけるPD−L1発現をアッセイするために開発した。組織切片(4μm)をスライドにマウントし、キシレンに5分間2回浸すことにより自動染色器(Leica)で脱パラフィン化し、それぞれ2分間で100%EtOHに2回、95%(v/v)EtOHに2回、70%(v/v)EtOHに1回、および脱イオン水(dH
2O)に1回浸すことにより再水和した。抗原回復を抗原賦活化装置(Biocare Medical Decloaking Chamber Plus)およびDako pH6 バッファーを使用して行い、110℃(P1)に10分間加熱し、次に、次の工程(98℃でP2 FAN ON;90℃でFAN OFF)に移した。スライドを室温(RT)で15分間冷却し、約1分間、水で濯いだ。
【0293】
試薬を自動染色器(BioGenex i6000)に設置し、組織領域を、pap penを使用して定義した。自動染色器をリサーチモードにおいて使用して働くIHCアッセイは、以下の工程を含んだ:10分間Peroxidase Block(Leica)を使用して内因性ペルオキシダーゼを中和し、次にIHC洗浄バッファー(Dako)で3回濯ぐ;スライドにProtein Block(Leica)を適用し、RTで10分間インキュベートし、次に洗浄バッファーで3回洗浄する;スライドに一次Ab(2μg/ml)を適用し、RTで1時間インキュベートし、次に洗浄バッファーで6回洗浄する;スライドにPost Primary Block(NovoLink Kit)を加え、30分間インキュベートし、次に洗浄バッファーで6回洗浄する;スライドにNovoLink Polymer(NovoLink Kit)を加え、30分間インキュベートし、次に洗浄バッファーで6回洗浄する;DABクロモゲン基質(NovoLink Kit)を加え、3分間展開し、次にRTでdH
2Oで5回濯ぎ;RTで1分間ヘマトキシリン(NovoLink Kit)で対比染色し、次に、RTで5time間dH
2Oで3回洗浄する。一次Abは、表4に示されているウサギ抗−PD−L1 Abから選択された;mAb28−8が好ましいAbであった。ネガティブコントロールとして、ウサギIgG(Dako)を使用した。組織切片を、70% EtOHに2分間1回、95% EtOHに2分間2回、および70% EtOHに2分間3回洗浄することによりLeica自動染色器を使用して脱水し、キシレンに5分間3回洗浄することによりクリアにした。切片を、スライドにpermountで永久的にマウントし、カバースリップでカバーし、乾燥させるために化学フード(hood)に移した。
【0294】
実施例11
抗−PD−L1抗体のフェーズ1臨床試験の設計
試験設計
フェーズ1試験を、選択された進行性固形腫瘍を有する患者においてBMS−936559(本明細書および米国特許第7,943,743号において12A4とも称される)の安全性および耐容性を評価するために行った。副次的目的は、BMS−936559の抗腫瘍活性の最初の評価および薬物動態学評価を含んだ。薬物動力学測定は予備的目的を含んだ。患者を、それぞれのサイクルの1、15および29日目の2週毎に、60分静脈内注入として投与されるBMS−936559の6週サイクルにおいて処置した。患者が許容されない毒性、疾患進行を経験するか、または同意を引っ込めるまで、最大16サイクルの処置を続けた。臨床的に安定であった数人の患者において、さらなる進行が確認されるまで、最初の疾患進行を超える処置が許された。
【0295】
用量漸増
進行性NSCLC、MEL、CRC、RCC、卵巣(OV)、胃(GC)、乳房(BC)および膵臓(PC)癌腫を有する患者は、登録するために適格であった。速められた滴定設計を使用して、安全性を0.3、1、3および10mg/kgの用量で評価した。サイクル1中≧グレード2薬物関連AEであった、1人の患者をそれぞれの連続コホートに登録した。次に、2人のさらなる患者をその用量レベルで登録し、試験を標準3+3設計に移行した。患者内の用量漸増または段階的縮小は許されなかった。1/3未満の患者が用量制限毒性を有した場合、最大耐量(MTD)を最も高い用量として定義した。
【0296】
コホート拡張
最初に、5つの拡張コホート(n=16/コホート)を、NSCLC、MEL、RCC、OVおよびCRCを有する患者に対して10mg/kgで登録した。活性の最初のシグナルに基づいて、さらなる拡張コホート(最大n=16/コホート)を、MEL(1.0および3.0mg/kgで)、NSCLC(1、3または10mg/kgランダム化された扁平上皮または非扁平上皮組織コホート)、およびPC、BCおよびGCに対して10mg/kgで登録した。
【0297】
患者
患者は、進行性NSCLC、MEL、RCC、OV、CRC、PC、GCまたはBCを立証することが必要であり、進行性/転移性疾患に対する少なくとも1つの以前の腫瘍に適当な治療に失敗した(処置ナイーブであり得るPCまたはGC患者を除いて)。他の試験対象患者基準は、年齢≧18年、平均余命≧12週、≦2の米国東海岸共同腫瘍学グループの一般状態、RECIST v1.0により定義される測定可能な疾患、および十分な血液学、肝臓および腎臓機能を含んだ。処置された脳転移を有する患者は、少なくとも8週間安定であるとき、許容された。主な除外基準は、自己免疫疾患またはステロイドまたは免疫抑制薬治療を必要とする他の疾患の病歴、T細胞を調節するAbでの以前の治療(抗−PD−1、抗−PD−L1および抗−CTLA−4を含む)、HIV、または活動性BまたはC型肝炎の病歴を含んだ。
【0298】
この継続試験において、NSCLC(n=75)、MEL(n=55)、CRC(n=18)、RCC(n=17)、OV(n=17)、PC(n=14)、GC(n=7)またはBC(n=4)を有する207人の患者を、34か月間BMS−936559で処置した。これは安全性データを含む。有効性を、160人の応答を評価可能な患者において特徴付けた。全患者集団および応答を評価可能な患者集団のベースライン人口学的特性は、非常に類似であった(Brahmerら, 2012)。処置された患者中、86%は以前の化学療法を受けており、28%は免疫学または生物学治療を受けている。腫瘍型による以前の治療は、MELを有する患者において免疫療法(56%)およびB−RAFインヒビター(9%);NSCLCを有する患者において白金を用いた化学療法(95%)およびチロシンキナーゼインヒビター(TKI;41%);および、RCCを有する患者において腎摘出(94%)、抗血管形成治療(82%)および免疫療法(41%)を含んだ(患者の前処置の詳細について、Brahmerら, 2012参照)。
【0299】
統計分析
分析日の処置を開始する全207人の患者を、ベースライン特性およびAEの要約のために使用した。有効性集団は、分析日の少なくとも7月前に処置を開始した160人の応答を評価可能な患者からなった。AEは、MedDRA v14.1を使用してコード化された。個々の最も良い全体応答は、修正されたRECIST v1.0による放射線スキャン測定由来であった。ORを少なくとも1つの連続腫瘍評価により確認した。統計方法に関するさらなる詳細は、Brahmerら (2012)において提供される。
【0300】
実施例12
抗−PD−L1抗体で処置された患者に対する安全性評価
安全性評価(臨床検査および研究室評価)を、ベースラインおよび一定間隔(サイクル1の期間、週に1回、およびその後、隔週)で全ての処置された患者において行った。AEの重症度は、NCI CTCAE、v3.0に基づいてグレード化した。コンピュータートモグラフィー(CT)スキャンまたは磁気共鳴イメージングを介する疾患評価を、ベースラインで、およびそれぞれの処置サイクル前に行った。
【0301】
MTDは、BMS−936559の10mg/kgの最も高い試験される用量まで到達しなかった。治療の中央期間は12週(範囲2.0−111.1週)であった。90%≧の相対的用量強度が、86%の患者においてなし遂げられた。207人の患者のうち12人(6%)を、BMS−936559関連AEのための処置を中止した(詳細のために、Brahmerら, 2012参照)。
【0302】
因果関係(あらゆるグレード)にかかわらず、AEが207人の患者の188人において報告された。治験担当医が評価したBMS−936559−関連AEは、207人のうち126人(61%)の患者において観察された。最も一般的な薬物関連AEは、疲労、注入反応、下痢、関節痛、発疹、嘔吐、掻痒および頭痛であった。大多数の事象は低いグレードであり、BMS−936559−関連グレード3−4の事象が207人のうち19人(9%)の患者において観察された(Brahmerら, 2012)。BMS−936559−関連AEの範囲、頻度および重症度は、注入反応を除いて、用量レベルにわたって類似であった。起こり得る免疫関連病因を有する薬物関連AEOSIは、207人のうち81人(39%)の患者において観察され、発疹、甲状腺機能低下、肝炎を含み、サルコイドーシス、眼内炎、糖尿病および重症筋無力症をそれぞれ単独の場合にて含んだ(Brahmerら, 2012)。これらのAEは、主にグレード1−2であり、処置妨害または中止で一般的に可逆性であった。著しく、9人の患者を、AEの管理のためにコルチコステロイドで処置した。AEは、全患者において改善または解決された。さらに、これらの9人のうち4人の患者は、コルチコステロイドでの処置にもかかわらず、疾患コントロールを維持した。内分泌腺AEは、補充療法で管理し、処置する医師の裁量で、患者にBMS−936559での処置を再開した。注入反応が、207人のうち21人(10%)の患者において、主に10mg/kgで観察された。該患者らは、10mg/kgでの1人のグレード3事象を除いて、グレード1−2であった。注入反応は、抗ヒスタミン剤および解熱で、いくつかの場合においてコルチコステロイドで、一般的に迅速に可逆性であった。抗ヒスタミン剤および解熱での予防レジメンを、試験中、実施した。グレード1−2注入反応を有する患者は、予防的抗ヒスタミン剤および解熱と共に、低下させた注入速度で、BMS−936559での処置を続けることができた。BMS−936559−関連の重度のAEが207人のうち11人(5%)の患者において起こった。データ分析日に、45人の患者(22%)は死んでいた(Brahmerら, 2012);薬物関連死は観察されなかった。
【0303】
実施例13
抗−PD−L1抗体に対する薬物動態学/薬物動力学分析
PK分析のために、連続血液サンプルを回収し、BMS−936559の血清濃度をELISAにより定量した。末梢血単核細胞をベースラインおよび1つの処置サイクル後に患者から単離し、フローサイトメトリーによって循環CD3−ポジティブT−細胞において、BMS−936559によるPD−L1 ROをアッセイした(Brahmerら, 2010)。
【0304】
BMS−936559の血清濃度を、1−10mg/kgから用量依存的に増加させた(n=131)。1、3および10mg/kg用量レベルに対する幾何学的平均曲線下面積(0−14日間)はそれぞれ、2210、7750および36620μg/mL・hrであった(変数係数[CV]34−59%);これらの用量レベルでの幾何学的平均ピーク濃度はそれぞれ、27、83および272μg/mLであった(CV 30−34%)(最初の投与後)。BMS−936559の半減期を、集団薬物動態学データから約15日と概算した。CD3−ポジティブ末梢血リンパ球におけるPD−L1 ROを、1−10mg/kgのBMS−936559用量で、処置の1サイクルの最後に、29人のMEL患者において評価した。中央ROは、全グループに対して65%を超えた(Brahmerら, 2012)。
【0305】
実施例14
抗−PD−L1抗体により示される抗腫瘍有効性
処置された207人のうち160人の患者を、2012年2月によって応答について評価でき、NSCLC、MEL、CRC、RCC、OVおよびPCを有する患者を含んだが、GCまたはBCを有する患者を含まなかった。臨床活性は、≧1mg/kgの全ての用量で観察された(Brahmerら, 2012)。OR(確認された完全[CR]または部分[PR]応答)は、典型的なクモ状プロットおよびCTスキャンにより説明されるとおり(
図10−13)、MEL、NSCLC、RCCおよびOVを有する患者(表8)において観察され、多数のORおまた持続的であった(表9)。4人のさらなる患者は、応答の「免疫関連」パターンと一致する、新規病変の存在において標的病変において持続的低下を有した。しかしながら、これらの患者は、反応率を計算する目的のために、応答者として分類しなかった。抗腫瘍応答および/または長期安定な疾患(SD)は、種々の以前の受けた治療を有する患者において観察された。ORは、転移性疾患の広範な負担を有する患者においてさえ観察された。
【0306】
MELを有する患者において、1、3および10mg/kg用量レベルでそれぞれ6%、29%および19%の反応率で9人のORがあった。3人のMEL患者はCRをなし遂げた。ORを経験した全9人のMEL患者は、データ分析の前に処置≧1年を開始した;これらの5人は、応答期間≧1年を有した。さらに、14人のMEL患者(27%)は、≧24週持続するSDを有した。NSCLCを有する患者において、3および10mg/kg用量レベルでそれぞれ、8%および16%の反応率で5人のORがあった。非扁平上皮(n=4)または扁平上皮組織(n=1)を有する患者においてORがあった。全5人のNSCLC応答者は、データ分析の前に処置≧24週を開始した;これらのうち3人は≧24週持続する応答を有した。6人のさらなるNSCLC患者は、≧24週持続するSDを有した。全て10mg/kg用量で、OVを有する17人の患者のうち1人のPR(6%反応率)および≧24週持続するSDを有する3人の患者(18%)であった。RCCを有する患者において、10mg/kgで処置された17人のうち2人(12%)患者において、それぞれ4および18月持続する応答で、ORがあった。7人のさらなるRCC患者は≧24週持続するSDを有した。
【0307】
表8.160人の患者におけるBMS−936559の臨床活性、評価できる応答*
【表8】
【0308】
CIは信頼区間を、MELは黒色腫を、RCCは腎細胞癌腫を、NSCLCは非小細胞性肺癌を、OVは卵巣癌を、RCCは腎細胞癌腫を、N/Aは適用できないを、ORRは客観的応答率(完全応答+部分応答)を、SDは安定な疾患を、PFSRは無進行生存率を示す。
*有効性集団は、分析日の少なくとも7月前に処置を開始し、ベースライン腫瘍評価および少なくとも以下の1つ:試験時の腫瘍評価、臨床的進行または死で、測定可能な疾患を有した応答を評価可能な患者からなる。
†2人のCRを含む
††1人のCRを含む
§客観的応答率({[CR+PR]÷n}×100)は、Clopper−Pearson方法を使用して計算される信頼区間のみで確認された応答に基づく。
**無進行生存率は、Greenwood方法を使用する信頼区間でKaplan−Meier方法論により計算され、進行せず、24週で生存であった患者の割合であった。
【0309】
個々の患者応答は、修飾を備えたRECIST v1.0によって判定された(さらなる情報のために、Brahmerら (2012) N Engl J Med(提出された)における試験プロトコール、参照)。
【0310】
表9.BMS−936559*に対する客観的応答の期間
【表9】
【0311】
*MELは黒色腫、NSCLCは非小細胞性肺癌、RCCは腎細胞癌、OVは卵巣癌を示す。
†第1の応答から、確認された進行、死までの時間、または打ち切りデータについて(「+」により示される)、最後の腫瘍評価までの時間。
【0312】
実施例15
進行性MELにおける抗−PD−1および抗−CTLA−4のフェーズ1臨床試験の設計
試験設計
フェーズ1試験において、患者の連続コホートは、静脈内に同時に投与される上昇する用量のニボルマブおよびイピリムマブで処置され(同時レジメン)、および別に、患者の2つのコホートは、イピリムマブで以前に処置され、ニボルマブ単独を受けた(連続レジメン)。
【0313】
同時レジメンにおいて、患者は、誘導期間中、3週毎にニボルマブおよびイピリムマブを4回、次に3週毎にニボルマブ単独を4回受けた。次に、併用処置は、維持期間中、12週毎に最大8回続けた。両方の薬物が共に投与されたとき、ニボルマブを先に投与した。コホート内で、ニボルマブおよびイピリムマブ用量は、誘導および維持期間中、一定に保った。用量制限毒性評価期間は9週にわたった。腫瘍評価は12、18、24および36週で、その後12週毎であった。
【0314】
連続レジメンにおいて、試験登録の前にイピリムマブで以前に処置された患者は、2週毎にニボルマブを最大48回受けた。ニボルマブ治療は、イピリムマブ単剤療法後に4−12週以内に開始した。腫瘍評価は、8週で、その後8週毎であった。腫瘍応答は、両方のレジメンにおいて、mWHOおよび免疫関連mWHO基準を使用して判定された。
【0315】
治療完了後、確認される疾患進行なしの患者は、最大2.5年追跡された。CR、PRまたはSD≧24週および後の疾患進行を有する患者は、元のレジメンで再処置され得る。安全性評価を、プロトコールごとに行った。AEの重症度を、国立癌研究所有害事象共通用語基準、version 3.0にしたがってグレード化した。適当なときCTおよび/またはMRIを使用して、疾患評価を、プロトコールごとに行った。
【0316】
用量漸増およびコホート拡張
用量漸増フェーズのために標準3+3設計を使用する同時レジメン、次に最大耐量または最大投与用量での合計最大16人の患者に対するコホート拡張を評価するために、試験を最初に計画した。用量漸増のための用量制限毒性(DLT)評価期間は9週であった。患者内用量漸増が認められず、DLTを経験した患者は治療から中断した。薬物関連毒性以外の理由のためにDLT評価期間中に試験から離脱した患者は置き換えることができた。プロトコールは、用量漸増中の任意の同時レジメンコホートの拡張をN=最大12人の患者に可能となるように修正された。2つの連続レジメンコホート(それぞれ6から16人の患者)を後で加えた;患者は、前のイピリムマブを受けた後に、ニボルマブ(1mg/kgまたは3mg/kg)で処置された。
【0317】
患者
適格な患者は、年齢18歳であり、測定可能な切除不能なステージIIIまたはIV黒色腫の診断;0−1の米国東海岸共同腫瘍学グループの一般状態、ここで0が無症候性であり、1が軽度の対症的である;十分な臓器機能;および平均余命≧4月を有した。活性な未処置の中枢神経系転移;自己免疫疾患の病歴;T細胞を調節する抗体(連続レジメンコホートのためのイピリムマブを除く)での以前の治療;HIV;またはBまたはC型肝炎を有する患者を除いた。
【0318】
連続レジメンコホートにおいて、患者は、ニボルマブの開始の4−12週以内に投与される最後の用量で、3つの事前の用量のイピリムマブを受けることが必要であった。CR、臨床的悪化の証拠での進行、またはイピリムマブと関連する高いグレードAEの病歴を有する患者を除いた(プロトコールの詳細のために、Wolchokら 2013a、参照)。
【0319】
86人の患者を2009年12月から2013年2月で処置し、53人が同時レジメンであり、33人が連続レジメンであった。ベースライン患者特性は、Wolchokら (2013a)に詳細に述べられている。同時および連続レジメンにおいて、それぞれ38%および100%の患者が全身療法の前に受けた。大多数の患者はM1c疾患を有し、>30%が血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の上昇を有した。連続レジメンコホートに登録された多数の患者は、前のイピリムマブ処置で放射線進行(73%)を証明した。
【0320】
PD−L1免疫組織化学
前処置PD−L1発現を、ウサギ抗−PD−L1 mAb、28−8を使用するFFPE腫瘍標本におけるIHC、およびDako(Carpinteria, CA)により開発された自動アッセイにより測定した。Ab特異性は、PD−L1を発現する細胞系および発現しない細胞系からの組換えPD−L1タンパク質および溶解物に対するウェスタンブロッティングにより評価した。正常ヒト組織における染色パターンの評価および抗原競合有りおよび無しでのIHCアッセイを行った。免疫組織化学アッセイの分析感度、特異性、再現性、再現性およびロバスト性を試験し、全ての予め指定された受け入れ基準にあった。処置結果が見えなくされた2人の病理学者が、独立して、全ての臨床的標本を読み、スコアを判定した。腫瘍細胞の5%が、100個の評価できる細胞を有する切片において任意の強度の膜PD−L1染色を示したとき、サンプルをPD−L1−ポジティブとして定義した。
【0321】
統計分析
2013年2月の全ての処置された患者(N=86)を、ベースライン特性、安全性、および絶対的リンパ球数(ALC)、およびPD−L1染色の分析を示すために使用した。有効性集団は、少なくとも1つの用量の試験治療を受け、ベースラインで測定可能な疾患を有し、少なくとも以下の1つ:処置時の>1の腫瘍評価、臨床的進行または最初の処置時の腫瘍評価の前の死を有した82人の応答を評価可能な患者からなった。AEは、MedDRA、version 15.1を使用してコード化された。起こり得る免疫学的病因で厳選したAEを、MedDRA用語の以前に定義されたリストを使用して同定した。最も良い全体応答は、修飾されたWHO(mWHO)または免疫関連応答基準(Wolchokら 2009)による試験現場の放射線技師および治験担当医により提供される腫瘍測定からプログラム的に得た。全体応答および部分応答を、少なくとも1つの後の腫瘍評価により確認した。放射線評価によって標的病変の減少の大きさを評価するために、分析も行った。応答は、ベースライン基準から80%の減少を示したとき、強度として特徴付けられた。この分析日の未確認の応答もまた、総臨床活性の概算に含んだ。
【0322】
実施例16
抗−PD−1および抗−CTLA−4で処置されたMEL患者に対する安全性評価
同時レジメン(n=53)において、あらゆるグレードのAEは、属性にかかわりなく、98%の患者において観察された。処置関連AEは、93%の患者において観察され、最も一般的なものは発疹(55%)、掻痒(47%)、疲労(38%)および下痢(34%)であった。グレード3−4のAEは、属性にかかわりなく、72%の患者において観察されたが、グレード3−4の処置関連事象は53%において見られ、最も一般的なものはリパーゼ(13%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(13%)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(11%)の上昇であった。28人のうち6人(21%)の患者は、グレード3−4の用量制限処置関連事象を有した。処置関連の重度のAEは、49%の患者において報告された。一般的なグレード3−4の処置関連厳選AEは、肝臓(15%)、消化器(9%)および腎臓(6%)事象を含んだ。肺炎およびブドウ膜炎の極端な事例が見られ、歴史的単剤療法経験と一致した。11人(21%)の患者は、処置関連AEによって中断した。
【0323】
コホート3(3mg/kg ニボルマブ+3mg/kg イピリムマブ)は、MTDを超えた(6人のうち3人の患者は、3週間持続した、無症候性グレード3−4の上昇したリパーゼを経験した)。コホート2(1mg/kg ニボルマブ+3mg/kg イピリムマブ)は、MTDとして同定された(それぞれ1人の患者において、グレード3のブドウ膜炎、グレード3の上昇したAST/ALT)。
【0324】
連続レジメン(n=33)において、あらゆるグレードのAEが、属性にかかわりなく、29人(88%)の患者において観察された。処置関連AEは、24(73%)人の患者において観察され、最も一般的なものは、掻痒(18%)およびリパーゼ上昇(12%)を含んだ。グレード3−4のAEは、属性にかかわりなく、11人(33%)の患者において観察されたが、グレード3−4の処置関連AEは6人(18%)の患者において観察され、最も一般的な事象としてリパーゼ上昇(6%)であった。処置関連の重度のAEは、7人(21%)の患者において報告された。グレード3−4の内分泌腺事象は、2人の患者において処置関連厳選AEと示された。1人の患者は、グレード2の肺炎を有した。3人(9%)の患者は、処置関連AEによって中断した。
【0325】
同時および連続レジメンの両方において、処置関連AEは、イピリムマブに対して以前に確立されたアルゴリズムによって、免疫抑制剤および/または補充療法(内分泌障害のための)で管理でき、一般的に可逆性であった(YERVOY(登録商標)パッケージの広告(insert)参照)。試験において処置された86人の患者中、薬物関連有害事象を有する73人のうち28人の患者(38%)は、全身性グルココルチコイドでの管理を必要とした。3人の患者は、インフリキシマブ(2人の患者)またはミコフェノール酸モフェチル(1人の患者)でのさらなる免疫抑制療法を必要とした。処置関連死は報告されなかった。AEおよびそれらの管理のさらなる詳細は、(Wolchokら 2013a)において提供される。
【0326】
実施例17
MEL患者において抗−PD−1および抗−CTLA−4の組合せにより示される有効性
臨床活性が、同時および連続レジメンの両方で観察された(表10および11)。同時レジメンコホートにおいて、mWHO基準による確認された客観的応答(OR)は、全ての用量にわたって、応答を評価可能な患者の52人の21人(40%;95% CI:27−55)において観察された。(CRをアプローチする)主な応答を証明したいくつかの患者に気付いた後、完全応答をアプローチする腫瘍退縮のレベルを示すため、選択された経験的閾値である少なくとも80%の腫瘍減少を有する患者数を、評価した。応答のこの深さは、チェックポイント遮断の公開された試験において一般的ではなかった(Hodiら, 2010; Topalianら, 2012b)。16人の患者は12週で≧80%腫瘍減少を有し、5人のCRを含んだ(表10、
図14Aおよび15−17)。mWHO基準によるORを有する21人の患者に加えて、4人の患者は免疫関連応答基準による客観的応答を経験し、2人の患者は未確認の応答を有した。これらの患者は、ORRの計算に含まなかった。同時レジメンにおいて、臨床的活性の総合的な証拠(慣用の、未確認の、または免疫関連の応答またはSD≧24週)が、患者の65%(95% CI:51−78;表10)において観察された。同時組合せの大きな影響は、滝型プロットにおいて最も理解しやすい(
図14B)。応答は、データ分析時に6.1+から72.1+の範囲の週の期間で、21人のうち19人の応答者で継続した(表12)。MTD(コホート2、1mg/kg ニボルマブ+3mg/kg イピリムマブ)で処置された患者において、ORが17人のうち9人(53%;95% CI:28−77)の患者に起こり、3人のCRを含んだ。全9人の応答者は、最初に予定された処置評価で≧80%腫瘍減少をなし遂げた(表10および
図14A)。
【0327】
連続レジメンコホートにおける患者において、30人のうち6人の患者は、1人のCRを含むOR(20%;95% CI:8−39)をなし遂げた。4人(13%)の患者は、8週で80%腫瘍減少をなし遂げた(表11および
図18)。さらなる患者は、免疫関連の応答(n=3)または未確認の応答(n=3)を有した。客観的な、免疫関連の、または未確認の応答またはSD≧24週が考慮されるとき、連続レジメンにおいて臨床活性の証拠が43%(95% CI:26−63)において観察された。滝型プロットは、イピリムマブの前に応答しなかった患者が後のニボルマブに応答することができることを示す(
図18C)。
【0328】
表10.ニボルマブおよびイピリムマブの同時レジメンを受けた患者の臨床活性*
【表10】
【0329】
*CRは完全応答、PRは部分応答、uPRは未確認の部分応答、irPRは免疫関連部分応答、SDは安定な疾患、irSDは免疫関連の安定な疾患を示す。
†応答を評価可能な患者は、試験治療の少なくとも1つの用量を受け、ベースラインで測定可能な疾患を有し、以下の1つ:1)少なくとも1つの処置時の腫瘍評価、2)臨床的進行、または3)最初の処置時の腫瘍評価前の死を有した患者であった。
‡1つの腫瘍評価後にPRを有したが、最初のPRの確認のための十分な追跡時間を有さなかった患者。
§免疫関連PRまたはSDと一致する、新規病変の存在における標的腫瘍病巣減少を有した患者。
¶[(CR+PR)/応答を評価可能な患者数]×100。信頼区間は、Clopper−Pearson方法により概算された。
【化2】
[(CR+PR+uCR+uPR+irPR+SD≧24週+irSD≧24週/応答を評価可能な患者数]×100。
**コホート2において2人のさらなる患者が、12週後に行われた最初に予定された評価で≧80%腫瘍減少をなし遂げた。
【0330】
表11.ニボルマブおよびイピリムマブの連続レジメンを受けた患者の臨床活性*
【表11】
【0331】
*CRは完全応答、PRは部分応答、uPRは未確認の部分応答、irPRは免疫関連部分応答、SDは安定な疾患、irSDは免疫関連の安定な疾患を示す。
†応答を評価可能な患者は、試験治療の少なくとも1つの用量を受け、ベースラインで測定可能な疾患を有し、以下の1つ:1)少なくとも1つの処置時の腫瘍評価、2)臨床的進行、または3)最初の処置時の腫瘍評価前の死を有した患者であった。
‡1つの腫瘍評価後にPRを有したが、最初のPRの確認のための十分な追跡時間を有さなかった患者。
【0332】
表12.個々の患者の確認された客観的応答の期間
【表12】
【0333】
*利用できない;この分析時、確認される客観的応答は報告されていない。
【0334】
腫瘍PD−L1発現および絶対的リンパ球数の評価
腫瘍PD−L1発現および末梢血ALCにおける変化は、それぞれ、ニボルマブおよびイピリムマブ単剤療法に対するバイオマーカーにて研究された(Topalianら, 2012b; Bermanら, 2009; Kuら, 2010; Postowら, 2012; Delyonら, 2013)。腫瘍PD−L1発現はIHC染色を介して特徴付けられ、末梢血ALCにおける薬物動力学変化を分析した。PD−L1陽性を定義するために≧5%カットオフを使用して、56人のうち21人(38%)の患者からの腫瘍標本はPD−L1−ポジティブであった。ORは、同時レジメンで処置された患者中、PD−L1−ポジティブ(6/13)またはPD−L1−ネガティブ(9/22)腫瘍のいずれかを有する患者において見られた(post−hocP値>0.99;Fisherの直接確率検定)。連続レジメンコホートにおいて、全体応答の数値的により高い数が、PD−L1−ネガティブ腫瘍を有する患者(1/13)と比較して、PD−L1−ポジティブ腫瘍サンプルを有する患者(4/8)において見られたが、数は少ない。
【0335】
イピリムマブ単剤療法での観察と対照的に、ベースラインからのALCにおける一貫性のある上昇は、同時組合せで処置された患者またはイピリムマブ治療後にニボルマブで処置された患者において検出されなかった。同時レジメンコホートにおいて、5から7週で低いALCを有する患者(<1000細胞/μL)(Kuら, 2010)は、5から7週で正常ALCを有する患者(40%)と比較して、同様のOR(43%)を有した。同様に、連続レジメンコホートにおいて、低いALCを有する患者の17%はORを有し、正常または高いALCを有する患者の23%はORを有した。
【0337】
参考文献
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】