特許第6672361号(P6672361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6672361木材の改質のためのリアクタシステムおよびプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672361
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】木材の改質のためのリアクタシステムおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/00 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   B27K5/00 B
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-52669(P2018-52669)
(22)【出願日】2018年3月20日
(62)【分割の表示】特願2015-513336(P2015-513336)の分割
【原出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-134869(P2018-134869A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】12168973.1
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514200534
【氏名又は名称】タイタン ウッド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラデマケルス,カルリジン
(72)【発明者】
【氏名】ポル,ベルナルドゥス・ジョゼフ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブッセマケル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】カッペン,テオドルス・ゲラルドゥス・マリヌス・マリア
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−510842(JP,A)
【文献】 特開平05−084709(JP,A)
【文献】 特開昭58−155906(JP,A)
【文献】 特開昭61−040104(JP,A)
【文献】 特開昭61−209210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0331531(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0091736(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/095824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 3/34,5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース材料のアセチル化のためのリアクタシステムであって、
前記システムは、リグノセルロース材料の導入に好適な閉鎖可能なアパーチャを有する反応容器と、
反応容器において真空を生成するのに好適な真空接続と、
アセチル化流体のための液体入口および/または液体出口と、
第1のガス流ループに接続されたガス入口およびガス出口とを備え、
前記第1のガス流ループは、前記ガス入口と前記ガス出口とを接続するガス流線を含み、前記ガス流線は、熱交換器および少なくとも1つのファンに接続され、
前記第1のガス流ループの前記入口および前記出口は、前記反応容器の長手方向を横切る、前記反応容器の所定の横断方向にわたるガス循環を可能にするように位置決めされ、
高圧のアセチル化流体の液体を前記ガス流線および前記ファンから離して保持し、
記ガス流線は、前記高圧のアセチル化流体の液体を前記ガス流線および前記ファンから離して保持するように、前記ガス流線を前記反応容器から分離させるバルブを含む、リアクタシステム。
【請求項2】
前記第1のガス流ループのための前記入口は、前記反応容器の入口と内側との間に位置決めされた、分散プレートなどのガス分散装置に接続され、
前記リアクタシステムは、前記反応容器の内部と前記ガス流ループの出口との間のガス分散装置を含む、請求項1に記載のリアクタシステム。
【請求項3】
前記反応容器のさらなる入口と出口とを接続する複数のガス流ループを備え、
前記さらなる入口および出口は、前記反応容器の前記所定の横断方向にガス循環を可能にするように位置決めされ、
前記第1およびさらなる入口および出口は、前記反応容器の前記長手方向に沿って間隔を空けて配置される、請求項1または2に記載のリアクタシステム。
【請求項4】
前記反応容器は、付加的なガス流線に接続された出口を含み、
前記付加的なガス流線は、凝縮器システムに接続される、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のリアクタシステム。
【請求項5】
前記リアクタは、前記凝縮器システムの下流に位置決めされた、凝縮された液体のための入口を含む、請求項4に記載のリアクタシステム。
【請求項6】
前記真空接続は、前記反応容器上、前記第1のガスループ上、または両方上に配置される、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のリアクタシステム。
【請求項7】
前記熱交換器は、前記リアクタ内部において、好ましくはガス入口側の少なくとも1つの熱交換器および前記リアクタのガス出口側の少なくとも1つの熱交換器の形態で配置される、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のリアクタシステム。
【請求項8】
ガス流の方向の逆転を可能にするように設計された、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のリアクタシステム。
【請求項9】
リグノセルロース材料のアセチル化のためのプロセスであって、
(a)前記リグノセルロース材料にアセチル化流体を含浸させて、余分なアセチル化液体を除去するステップと、
(b)前記リグノセルロース材料のアセチル化を生じさせるように、加熱されたガスの流れによって、含浸された前記リグノセルロース材料を加熱するステップと、
(c)残留アセチル化流体を前記リグノセルロース材料から移動させるように、前記リグノセルロース材料が受ける圧力を低下させるステップと、
(d)そのようなガスを凝結させることによって、移動させた前記残留アセチル化流体のためのストリッピングガスとしてガスを作用させるステップとを含み、
凝結されるガスは、反応容器の長手方向を横切る、前記反応容器の所定の横断方向に従って循環する加熱されたガス流の一部分であり、
前記ガス流は、高圧のアセチル化流体の液体を前記ガス流および前記ガス流れに設けられたファンから離して保持するように、前記ガス流を前記反応容器から分離させるバルブを含む、プロセス。
【請求項10】
アセチル化流体による含浸は、木材または他のリグノセルロース材料で充填されると、まず反応容器を真空下に配置し、次いで真空を維持しつつ、好ましくは木材または他のリグノセルロース材料すべてを完全に浸漬するようにアセチル化流体を導入することによって行われる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リグノセルロース材料は、少なくとも1つの寸法において、少なくとも1mのサイズを有する無垢材である、請求項9または請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リグノセルロース材料、特に無垢材のアセチル化の分野である。本発明は、リグノセルロース材料のアセチル化のためのリアクタシステムと、リグノセルロース材料のアセチル化のプロセスとに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
耐用年数が長い木材ベースの材料を生成するために、木材を化学的に改質すること、および特に木材をアセチル化することが知られている。それによって、材料特性、たとえば寸法安定性、硬度、耐久性等が向上した材料が得られる。
【0003】
この点について国際公開第2009/095687号を参照する。ここには木材のアセチル化のためのプロセスが記載されており、当該プロセスは、木材を反応圧力容器内のアセチル化液体に浸漬するステップと、含浸処置を行うステップと、余分なアセチル化流体を除去するステップと、不活性流体(典型的に窒素ガス、場合によっては非不活性の無水酢酸および/または酢酸を含む不活性流体)を容器に導入するステップと、木材の好適なアセチル化をもたらすように加熱レジームに従って不活性流体を循環させて加熱するステップと、流通流体を除去し、アセチル化された木材を冷却させるステップとを含む。当該プロセスは、効果的な木材のアセチル化を実現するのに非常に好適である一方、それを実行するための標準的な設備の使用により、いくつかの欠点がもたらされる。
【0004】
このように、とりわけ、反応容器内の条件は、処置全体のいくつかの段階において、概ね高温および高圧の条件下で侵食性のアセチル化液体で充填されることである。これは、国際公開第2009/095687号に記載されるように酢酸および/または無水物を含む流体などの流体を効果的に循環させるための、ファンなどの設備の使用に制限を課す。これらは耐用年数が比較的短く、費用のかかる動作につながる。
【0005】
さらに、アセチル化媒体を木材から効果的に除去することが望ましい。これを行うための一般的な方法は、凝縮させるストリッピングガスでリアクタをストリップすることによるものであり、その結果、液体薬品を抽出することができる。この除去(化学的回収)による問題点は、必要とされるエネルギ入力が高い点である。
【0006】
背景参考文献は、米国特許第5,525,721号である。ここでは、アセチル化流体を独占的に気相において加えることによって、木材がアセチル化される。当該方法は、表面積対体積比が比較的大きい木繊維および木簡に適用可能である。記載されている方法および装置は、無垢材、特に、たとえば寸法が比較的大きい梁や厚板の形態の無垢材のアセチル化には適していない。当該参考文献は、化学的回収には対処していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
前述の要求の1つ以上によりよく対処するために、本発明は、一局面において、リグノセルロース材料のアセチル化のためのリアクタシステムの使用法を提示する。当該システムは、リグノセルロース材料の導入に好適な閉鎖可能なアパーチャを有する反応容器と、アセチル化流体のための液体入口および/または液体出口と、第1のガス流ループに接続されたガス入口およびガス出口とを備え、第1のガス流ループは、ガス入口とガス出口と
を接続するガス流線を含み、ガス流線は、熱交換器および少なくとも1つのファンに接続され、当該使用法は、無垢材が液体アセチル化媒体に浸漬されるアセチル化プロセスのためのものである。
【0008】
別の局面において、本発明は、リグノセルロース材料のアセチル化のためのリアクタシステムを提供し、当該システムは、リグノセルロース材料の導入に好適な閉鎖可能なアパーチャを有する反応容器と、反応容器において真空を生成するのに好適な真空接続と、アセチル化流体のための液体入口および/または液体出口と、第1のガス流ループに接続されたガス入口およびガス出口とを備え、第1のガス流ループは、ガス入口とガス出口とを接続するガス流線を含み、ガス流線は、熱交換器および少なくとも1つのファンに接続され、第1のガス流ループの入口および出口は、反応容器の直径にわたるガス循環を可能にするように位置決めされる。
【0009】
さらなる局面において、本発明は、リグノセルロース材料のアセチル化のためのプロセスを提供し、当該プロセスは、上で規定したように反応容器にリグノセルロース材料を導入することと、リグノセルロース材料を浸漬するように、反応容器をアセチル化流体で充填することと、リグノセルロース材料にアセチル化流体を含浸させることと、余分なアセチル化液体を除去することと、リグノセルロース材料のアセチル化を生じさせるように、加熱されたガスを第1のガス流ループを介して、かつ該当する場合はさらなるガス流ループを介してリアクタを通って循環させることによって、含浸されたリグノセルロース材料に熱を加えることとを含む。
【0010】
さらに別の局面において、本発明は、本発明は、リグノセルロース材料のアセチル化のためのプロセスを提供し、当該プロセスは、(a)リグノセルロース材料にアセチル化流体を含浸させて、余分なアセチル化液体を除去するステップと、(b)リグノセルロース材料のアセチル化を生じさせるように、加熱されたガスの流れによって、含浸されたリグノセルロース材料を加熱するステップと、(c)残留アセチル化流体をリグノセルロース材料から移動させるように、リグノセルロース材料が受ける圧力を低下させるステップと、(d)そのようなガスを凝結させることによって、移動させた残留アセチル化流体のためのストリッピングガスとしてガスを作用させるステップとを含み、凝結されるガスは、循環する加熱されたガス流の一部分である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発明に係るプロセスのためのフロー図である。
図2】発明に係る代替的なプロセスのためのフロー図である。
図3】リサイクルヒータを含む発明の代替的なプロセスのためのフロー図である。
図4】ガス流を送るための異なる可能性および/またはガスループのための完全もしくは部分的な熱交換のための可能性を模式的に示す図である。
図5】ガス流を送るための異なる可能性および/またはガスループのための完全もしくは部分的な熱交換のための可能性を模式的に示す図である。
図6】ガス流を送るための異なる可能性および/またはガスループのための完全もしくは部分的な熱交換のための可能性を模式的に示す図である。
図7】ガス流を送るための異なる可能性および/またはガスループのための完全もしくは部分的な熱交換のための可能性を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これらの図について以下でさらに議論する。
発明の詳細な説明
木材が浸漬される液体アセチル化媒体による木材、特に無垢材のアセチル化は、一般に化学反応とは異なるプロセスである。これは特に、基板すなわち木材の性質によってもた
らされる。(一般に厚板または梁などの長片として生ずる)無垢材として供給される場合は確実に、アセチル化流体との最適な接触と反応を引起こす処理条件とに寄与するように木材自体を処理することはできないことが理解されるであろう。前者は、最適な含浸を必要とする。これは発明の一部ではなく、当該技術において既知のやり方で行うことができるが、木材のアセチル化流体への好ましい完全な浸漬は、反応容器内の圧力下にある比較的攻撃的な液体薬品の結果として、潜在的に危険な状態を示す。処理条件、特に水との反応および木材内の実際のアセチル化反応を引起こし、かつ/または制御することにつながることになる熱の分布と、それに関連付けられたエネルギ消費と、熱および質量移動の均一性とが本発明によって有益に影響を受ける。
【0013】
本発明で使用されるリアクタシステムは、ここで説明される反応に好適な温度および圧力条件を可能にしつつ、木材の含浸に使用されるものと同様の種類の反応容器を概して備えることになる。そのような容器は、リグノセルロース材料、たとえば無垢材の導入に好適な閉鎖可能なアパーチャを有することになる。特に無垢材の場合、より特定的には厚板または梁などの相対的に大きな断片では、そのようなアパーチャは典型的にハッチまたはドアとなる。
【0014】
広義では、本発明は、液体アセチル化媒体とのファンの接触を回避し、かつファンに対する含浸圧力を回避するような方法で、木材のアセチル化のために、反応容器内において加熱されたガスを循環させるための賢明な洞察に基づく。この目的のために、リアクタシステムは、熱交換器に接続されたガス流線と、リアクタの外部に配置される少なくとも1つのファンとを含むガス流ループにより使用される。後者は、化学リアクタでは珍しいが、ファンのブレードおよび/またはモータに対して加圧されたアセチル化液体が作用するのを回避するための明快な解決法である。熱交換器は、好ましくはガス流ループにおいてガスを加熱するのに好適である。
【0015】
アセチル化流体を含浸させた木材のアセチル化反応を行うようにガスが加熱されることになるが、熱交換器による同じガス流ループを用いて、必要であれば冷却ガスと、化学的回収ステップのための媒体および熱とを供給することもできることが理解されるであろう。
【0016】
ガス流ループの入口および出口は、反応容器の直径以上のガス循環を可能にするように位置決めされることが好ましい。このように、一実施形態では、発明は反応容器のさらなる入口および出口を接続する複数のガス流ループを備える。上で特定したようなリアクタシステムを提供し、上記さらなる入口および出口は、反応容器の直径以上のガス循環を可能にするように位置決めされ、上記第1およびさらなる入口および出口は、反応容器の長さにわたって分割される。これは、リアクタを通って(つまり長手方向ではなくリアクタの長さを横切って)流れるガスの経路を短縮することによって熱の不当な損失を回避し、かつ木材積層を通る均一なガス流を生成するための技術的解決法を提示する。また、リアクタの直径にわたって分割した場合、リアクタの長さにわたる場合と比較して、ガス流の組成の相違が最小となる。さらに、リアクタの長さにわたるガス流下の圧力降下は、リアクタの直径にわたるガス流下よりも小さくなる。
【0017】
これらの利点は、梁または厚板などの比較的大きな無垢材片のアセチル化に好適であるリアクタの場合に特に有効であることが理解されるであろう。典型的に、これらのリアクタは、長さ対直径比(L/D)が2〜20、好ましくは3〜10の含浸容器である。そのような含浸容器は典型的に、概ね直径よりもはるかに長い長さを有する(たとえば長さ6m〜36m、直径たとえば1m〜6m)。
【0018】
特に前述の横断構造で設けられる場合、そのようなガス流ループを複数設けることが好
ましい。好ましくは、これらのガス流ループ(たとえば2〜12個、好ましくは3〜8個のそのようなループ)は、反応容器の長さにわたって分割される。より好ましくは、ガス流ループは、反応容器の入口と内側との間に位置決めされた分散プレートなどのガス分散装置と連通して配置される。ガス分散装置は当業者にとって既知である。好ましい装置は、穴が設けられたプレートである。他の例は、ラメラ、かつら、整形された壁面設計、拘束物、導風板を含む。
【0019】
リアクタの内側と、第1のガス流ループへの出口との間にガス分散装置を含めることも好ましい。これは、特にガスが分散装置を介して入れられる場合に、アセチル化されるべき基板を通るガスの循環を最適化するように機能する。これは、基板が梁または厚板などの大きな断片の無垢材の積層を含む場合に特に利点である。さらに、好ましい実施形態では、本発明のリアクタシステムは、ガス流の方向の逆転を可能にするように設計される。図4は、切替装置Sによってガス流の方向を逆転させる可能性を示す。このように、熱および質量移動の均質性を最適化することができる。この実施形態では、第1のガス流ループへの入口および出口は、流れを逆転させると逆の意味を実質上有することになる(出口が入口となり、入口が出口となる)。この実施形態においてガス分散装置の存在から利益を得ることが望ましい場合、そのような装置は、反応容器の入口(それぞれ出口)側の両方に存在することになる。
【0020】
上記に従って、発明のリアクタシステムにはガスループシステムが設けられる。ガスループシステムは、熱交換器およびファンを有する反応容器をランダムな順序でリアクタに戻るように接続する配管を備える。バルブによって、高圧液体をガスループシステムおよびファンから離して保持することができるように、このガスループを反応容器から分離させることができる。液体とガスシステムとの間の分離が実現されなければ、含浸中に液体によってガスループが不所望に充填されることにつながる。ファンにおいて高圧液体を回避する別の方法は、リアクタ上方の十分な高さにファンを配置することである。
【0021】
さらに別の実施形態では、熱交換器がリアクタの外部に配置される場合、循環ガスの一部分のみを熱交換器を通って導き、ガス流の抵抗性を最小化することができるようにすることが好ましい。これは、必要とされる熱交換が熱交換容量の最大値のほんの一部である場合、処置全体の段階において特に関心対象である。これはエネルギ効率を向上させ、かつ/またはガス速度を最大化する。図5は、ガス流を、熱交換器を通り抜ける部分と、熱交換器を通り抜けない部分とに切替える可能性を示す。これはバルブSPlおよびSP2によって制御される。図6は、ガス流を、熱交換器を通り抜ける部分と、熱交換器を通り抜けない部分とに切替える別の可能性を示す。これはバルブV1およびV2によって制御される。
【0022】
この発明の別の実施形態では、熱交換器をリアクタの内部に配置することができ、ガス分散装置としての二重の機能すら有し得る。リアクタの内部にある場合、リアクタの入口および出口側の両方に熱交換器を有することが好ましい。
【0023】
外部熱交換器に言及されるいずれの他の実施形態についても、リアクタの内部に熱交換器を有するこのオプションが有効である。
【0024】
図7は、木材積層の両側上においてリアクタの内部に熱交換器を有する構造についての図を示す。熱交換器および分散プレートをわずか1枚のプレートに組合せることもできる。
【0025】
関心対象の実施形態では、発明のリアクタシステムは、反応容器および循環ガスループの両方を含むリアクタシステムが、付加的なガス流線に接続された出口を備えるように設
定され、上記付加的なガス流線は、凝縮器システムに接続される。この実施形態では、凝縮器システムを、下流において、非凝縮ガス/蒸気のための反応容器の入口、または凝縮器からの処理ストリームのための出口、たとえばスクラバーに接続することができる。
【0026】
関心対象の実施形態では、リアクタシステムはさらに、付加的なガス、典型的には、反応しなかったアセチル化流体および反応生成物の回収を促進する「スイープガス」として機能する不活性ガスの導入のための入口および出口を備える。この付加的なガスのための入口および出口は、上記循環システムの一体部分として設けることができる(つまりガスの供給原料は、少なくとも1つのファンに接続される同じガス流線によって導入される)。別の実施形態では、付加的なガスのための入口および出口は、リアクタ上に離れて設けられる。付加的な不活性ガスは、典型的に窒素である。
【0027】
なお、アセチル化プロセスにおいて反応容器に圧力および熱を加えるために採用される前述の不活性ガスは、冷却目的で(反応を制御する際に)使用することもできる。リアクタ外部のガスループにおいて熱交換器を含む発明に係る設計は、これを十分に可能にすることが好ましい。
【0028】
本発明は、リグノセルロース材料のアセチル化のためのプロセスにも関し、プロセスは、上で規定したように反応容器にリグノセルロース材料を導入することと、いずれかの実施形態においてリグノセルロース材料を浸漬するように反応容器にアセチル化流体を充填することと、アセチル化流体をリグノセルロース材料に含浸させることと、余分なアセチル化流体を除去することと、リグノセルロース材料のアセチル化を生じさせるように、上記第1のガス流ループを介して、該当する場合は上記さらなるガス流ループを介して、加熱されたガスをリアクタを通って循環させることにより、含浸されたリグノセルロース材料に熱を加えることとを含む。アセチル化中の温度の制御は、60℃と200℃との間、より好ましくは80℃と160℃との間である。
【0029】
アセチル化中には、含浸されたリグノセルロース材料は、概ね0bargと6bargとの間、好ましくは0.5bargと4bargとの間の圧力の下で保持されることになることが好ましい。
【0030】
反応しなかったアセチル化流体をリグノセルロース材料から回収し、かつ木材中の水および木材自体との反応に起因する酸性の生成物を回収するように化学的回収プロセスステップを追加することがさらに望ましい。これは、ストリッピングガスによって行われることが好ましい。このストリッピングガスは、加熱されることが好ましい。(過熱された酢酸および/または無水酢酸でもあり得る)ストリッピングガスは、同じガスループ(プロセス中に酢酸および/または無水酢酸で飽和される、窒素などの不活性ガス)、つまりアセチル化中に反応容器内を循環する「循環ガス」から生じることが好ましい。好ましい実施形態では、発明のプロセスは、リグノセルロース材料のアセチル化後に、残留アセチル化流体をリグノセルロース材料から移動させるようにリグノセルロース材料に印加される圧力を低下させることをさらに含む。アセチル化流体の回収のこのプロセスの初期段階は、圧力の低下および加熱の結果としての蒸発による膨張に基づき、ガスは蒸発に影響を及ぼすための熱を供給する役割も果たす。さらに進んで、ガスは、移動させた残留アセチル化流体のためのストリッピングガスとして作用すると考えられる。この回収プロセスで使用されるガスは凝結される。発明のこの局面によれば、凝結されるガスは、上記の循環ガスの一部分である。
【0031】
反応容器において循環する(加熱された)ガス流の一部分のみを凝結のために分離することによって、相当なエネルギ利点が得られる。当該一部分は、乾燥プロセス全体について50容積%未満である。典型的に、凝結のために分離される容積は、化学的回収プロセ
ス中に減少されることになる。たとえば、最終的に、循環ガスの主流に対する分離流の比率は1:30と低くすることができる。平均すると、比率は1:2〜1:8、好ましくは1:4〜1:6となる。
【0032】
発明のアセチル化プロセスは、いずれのリグノセルロース材料にも適用することができる。リグノセルロース材料という用語は、セルロースおよびリグニン(および任意にヘミセルロースなどの他の材料)を含むいずれかの材料を一般に指す。典型的に、これは、たとえば木材、樹皮、ケナフ、麻、サイザル麻、ジュート、作物の藁、堅果の殻、ココナツの殻、草および穀物の皮および茎、トウモロコシの茎葉、バガス、球果植物および硬材樹皮、トウモロコシの穂軸、他の作物残渣、ならびにそれらのいずれかの組合せを指す。
【0033】
リグノセルロース材料は木材であることが好ましい。木材は、硬材または軟材のいずれかの種から選択され得る。いくつかの実施形態では、木材は軟材である。いくつかの実施形態では、木材は、松、モミおよびエゾマツから選択される。いくつかの実施形態では、木材は硬材である。いくつかの実施形態では、木材は、アカガシワ、アメリカハナノキ、ドイツブナ、およびパシフィックアルバス、ポプラ、カシ、楓、はんの木、ならびにブナから選択される。いくつかの実施形態では、木材は松類である。いくつかの実施形態では、松類は、ラジアータパイン、ヨーロッパアカマツ、またはサザンイエローパインである。
【0034】
リグノセルロース材料は、いずれの形態であってもよい。例として、切断された材料(たとえば切断された木材)、繊維化された材料(たとえば繊維化された木材)、木粉、チップ、粒子、かんなくず、フレーク、撚り線、木材粒子、および木、樹幹、または大枝などの材料、樹皮を剥いだ樹幹または大枝、板、ベニヤ、厚板、角材、梁または形材、ならびにいずれかの寸法の他の切断された引材を含む。本発明(リアクタシステムおよびプロセス)は、無垢材に適用されることが好ましい。無垢材は、一般に、厚板または梁などの比較的大きな木片を指す。一般に、少なくとも1つの寸法において、無垢材の長さは少なくとも10センチメートルであり、好ましくは少なくとも1メートルである。好ましい寸法は、長さ0.5m〜6m、厚さ5mm〜200mm、好ましくは10mm〜100mm、幅30mm〜500mm、好ましくは50mm〜250mmである。
【0035】
反応容器中への導入に先立って、リグノセルロース材料の含水量を減少させることが好ましい。アセチル化前の含水量は、好ましくは0.5%〜20%、より好ましくは1%〜10%、最も好ましくは2%〜5%である。
【0036】
アセチル化流体による含浸は、木材または他のリグノセルロース材料で充填されると、まず反応容器を真空下に配置し、次いで真空を維持しつつ、好ましくは木材または他のリグノセルロース材料すべてを完全に浸漬するようにアセチル化流体(酢酸および/または無水酢酸)を導入することによって行われることが好ましい。この目的のために、反応システムは、反応容器内で真空を生成するのに好適な真空接続、たとえば真空ポンプも備える。真空接続は、反応容器上、ガスループ上、または両方上に配置することができる。真空接続は、凝縮器、ガス液体分離器、および次いで真空ポンプで接続され得る。凝縮器では、蒸気が凝縮される。ガス/液体分離器では、凝縮された液体が不活性ガスから分離される。真空ポンプは、リアクタにおいて低圧を供給し、これによって乾燥速度を向上させる。いずれかの好適な真空ポンプを使用することができる。
【0037】
圧力は、不活性ガス(典型的に窒素または二酸化炭素)によって、または圧力ポンプによって増大される。国際公開第2009/095687号にも記載されるように、これはアセチル化流体の蒸気で部分的にまたは完全に飽和されることになることを当業者は理解するであろう。圧力ポンプによる含浸により、必要とされる付加的なアセチル化流体およ
び圧力が反応容器に供給されるが、アセチル化流体の蒸気で部分的または完全に飽和した大量の高圧不活性ガスを回避する。
【0038】
含浸処置後、余分なアセチル化液体がリアクタから除去され、特定の密度を有する好適な流体で容積が置換され、部分的に飽和した窒素などのリグノセルロース材料との熱伝達が可能となる。
【0039】
上記のように、リアクタを通るガス流を用いて、リグノセルロース材料におけるアセチル化反応をさらに促進するように熱を加えることになる。加熱されたガスの典型的な温度は、60℃〜200℃、好ましくは70℃〜180℃の範囲であり、最も好ましくは循環ガスの温度は80℃〜160℃の範囲にある。圧力は、典型的に0barg〜6barg、好ましくは0.5barg〜4bargの範囲である。反応時間は典型的に、30分と800分との間、好ましくは100分と500分との間、より好ましくは150分と350分との間の範囲である。
【0040】
図1は、発明に係るプロセスのためのフロー図を示す。ここで、(模式的に断面において)示されるシステム要素は、リアクタ(1)、ヒータ(2)、および凝縮器(3)である。リアクタ(1)からのガス流(a)は、ヒータ(2)に送られそこからガス流(c)がリアクタ(1)に戻るように搬送されるガス流(b)と、凝縮器(3)に与えられるガス流(d)とに分割される。任意のスイープガス流が流れ(g)および(h)として示される。
【0041】
図2は、代替的なプロセスのためのフロー図を示す。そこでは、システム要素は図1に示される通りである。ガス流は、リアクタ(1)から凝縮器(3)への流れ(a)、凝縮器(3)からヒータ(2)への流れ(e)、およびヒータ(2)からリアクタ(1)に戻る流れ(f)である。
【0042】
図3は、発明の代替的なプロセスのためのフロー図を示す。これは図1と同様であるが、凝縮器から流れ(i)を受け取り、リアクタ(1)にガス流(j)を加えるリサイクルヒータ(4)を含む。
【0043】
図4図5図6、および図7は、ガス流を送るための異なる可能性、および/またはガスループのための完全または部分的な熱交換についての可能性を模式的に示す。
【0044】
図4には、ファン(左頂部)におけるガス流の方向を変化させることなく、リアクタにおける流れ方向の逆転を可能にするリアクタ(底部)およびガスループシステムが示される。
【0045】
図5には、ガスに対する熱交換が必要とされない段階中のガスループにおける圧力降下の減少を可能にするリアクタおよびガスループシステムが示される。これは、スイッチングプレートSP1およびSP2の位置決めにより、(完全にまたは部分的に)熱交換器を通る経路を回避することによって行うことができる。熱交換器は、たとえば内部配管によって、より高い圧力降下をもたらし、流量を減少させ、かつ/またはエネルギ消費を増大させることになる。
【0046】
図6は、ガスに対する熱交換が必要とされない段階中のガスループにおける圧力降下の減少を可能にするリアクタおよびガスループシステムを示す。これは、バルブVIおよびV2の位置決めにより、部分的にまたは完全に熱交換器を通る経路を越えることによって行うことができる。
【0047】
図7は、リアクタ内部に熱交換器を有するリアクタおよびガスループ設計を示す。これは、別個の多孔性プレート熱交換器(ここに図示)または一体化された多孔性プレート熱交換器およびガス分散プレートの組合せられた機能であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7