特許第6672392号(P6672392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6672392ダイナミックスキップファイアリングエンジンにおける安全な弁活動化のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672392
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ダイナミックスキップファイアリングエンジンにおける安全な弁活動化のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/06 20060101AFI20200316BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20200316BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20200316BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20200316BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20200316BHJP
   F02P 9/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F02D13/06 E
   F02D13/06 B
   F02D43/00 301A
   F02D43/00 301Z
   F02D45/00 345
   F02D45/00 362
   F02D13/02 J
   F01L13/00 301M
   F02P9/00 304H
   F02P9/00 305Z
【請求項の数】24
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-139247(P2018-139247)
(22)【出願日】2018年7月25日
(62)【分割の表示】特願2016-543951(P2016-543951)の分割
【原出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-200051(P2018-200051A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2018年7月26日
(31)【優先権主張番号】61/879,481
(32)【優先日】2013年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/890,671
(32)【優先日】2013年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/897,686
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/925,157
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/002,762
(32)【優先日】2014年5月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511001747
【氏名又は名称】トゥラ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TULA TECHNOLOGY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パーセルス,ジョン,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤンキンス,マシュー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シクイ ケヴィン
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−100487(JP,A)
【文献】 米国特許第05377631(US,A)
【文献】 国際公開第2012/073366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D13/00 − 28/00
F02D41/00 − 45/00
F01L 1/34 − 1/356
F01L 9/00 − 9/04
F01L13/00 − 13/08
F02P 1/00 − 3/12
F02P 7/00 − 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連する吸気弁および関連する排気弁を各々有する少なくとも1つのシリンダを有する内燃エンジンの動作を制御する方法において、前記方法が、
選択した作動サイクルで点火させるとともに選択した作動サイクルでスキップさせるエンジンのスキップファイア動作を指図するステップであって、
各点火作動サイクルごとに、点火作動サイクルの間は対応するシリンダに関連する前記吸気弁を稼働させて、前記対応するシリンダ内への空気の吸入を開始し、前記点火作動サイクルの間に前記対応するシリンダに燃料を供給して点火させ、
各点火作動サイクルごとに、前記対応するシリンダ内に空気を吸入したあとで、前記対応するシリンダに関連する前記吸気弁を休止させて、前記吸気弁が積極的に再稼働されない限りにおいては、前記対応するシリンダの後続の作動サイクルにおいて、前記吸気弁を稼働させずに空気が前記対応するシリンダ内に吸入されないようにするステップと、
選択されたシリンダに関連する前記排気弁が、前記エンジンの前記スキップファイア動作の間における選択された作動サイクルの間に正しく開くことに失敗する、排気弁の作動失敗が生じたかどうかを判定するステップと、を含み、
排気弁の作動失敗が生じたと判定された場合に、前記排気弁の作動失敗の検出に応じて、そのままでは前記吸気弁が稼働してしまう後続の作動サイクルの間に、前記選択されたシリンダに関連する前記吸気弁を稼働させないことにより、前記シリンダが高圧燃焼ガスを含んでいるときには前記吸気弁が開かないことを確実にすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、スキップされる前記作動サイクルの少なくとも一部の間に、前記対応するシリンダを通して空気が吸排気されないように、前記対応するシリンダに関連する前記吸気弁を稼働させないままにすることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記排気弁の作動失敗が、クランク軸の回転速度、前記クランク軸の角加速度、および前記クランク軸の角躍度のうちの少なくとも1つの分析に少なくとも一部基づいて検出されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、前記排気弁の作動失敗が、前記排気弁の動きを感知する近接センサの出力の分析に少なくとも一部基づいて検出されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、前記排気弁の作動失敗が、
前記排気弁を駆動するカム軸の角速度、加速度もしくは躍度、
前記選択されたシリンダ内のガスの電気特性、
排気マニホールド圧、
排気流量、および
排気ガス酸素含有量、
からなる群から選択される少なくとも1つの分析に少なくとも一部基づいて検出されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、そのままでは前記吸気弁が稼働してしまう前記後続の作動サイクルが、前記排気弁の作動失敗が検出された前記作動サイクルの直後に続く作動サイクルであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、そのままでは前記吸気弁が稼働してしまう前記後続の作動サイクルが、前記排気弁の作動失敗が検出された前記作動サイクルに続く2番目の作動サイクルであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、そのままでは高圧燃焼ガスをむくむシリンダの内側へ向かって開いてしまう、前記選択されたシリンダに関連する前記吸気弁が、各後続の作動サイクルの間に休止されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記吸気弁が、高圧燃焼ガスを含むシリンダの内側へ開かないことを確実にすることを補助するために、前記吸気弁が、前記対応するシリンダ内における直前の点火作動サイクルに関連する排気作動イベントが検出された後にのみ、点火作動サイクルのために稼働されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記吸気弁および前記排気弁が、ほとんどのスキップされる作動サイクルの間に、このようなスキップされる作動サイクルの間に空気が、前記対応するシリンダを通して吸排気されることを防ぐために、休止されることを特徴とする方法。
【請求項11】
内燃エンジンにおいて、
前記エンジンをスキップファイアモードで動作させるように構成されたエンジンコントローラと、
関連する吸気弁および関連する排気弁を各々有する少なくとも1つの選択的に稼働可能なシリンダであって、選択された作動サイクルの間に選択的に稼働可能なシリンダに関連する前記排気弁が、選択的に開放されるか、または閉鎖されて保持されることが可能であり、前記エンジンのスキップファイア動作の間に起こるスキップされる作動サイクルの間に前記シリンダの休止の達成を補助し、前記スキップされる作動サイクルの間に前記シリンダを通して吸排気されないようにするシリンダと、
各所望の吸気イベントにおいて積極的に前記吸気弁を稼働させ、各吸気イベントの後で積極的に前吸気弁を休止させるように構成された弁制御システムであって、当該弁制御システムが、スキップファイア動作の間は、前記選択的に稼働可能なシリンダが高圧燃焼ガスを含む時には前記吸気弁が開放しないことを確実にするようにさらに構成され、燃焼ガスを排出するための前記排気弁の開放を検出するように構成された排気弁運動検証モジュールを含む弁制御システムと、
を備えることを特徴とする内燃エンジン。
【請求項12】
請求項11に記載のエンジンにおいて、前記排気弁運動検証モジュールが前記排気弁の前記開放を検出した後にのみ、前記弁制御システムが前記吸気弁を稼働させるように構成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項13】
請求項11または12に記載のエンジンにおいて、前記排気弁運動検証モジュールが、排気弁の開放を検出するために、クランク軸回転速度、またはその時間に基づく微分を用いることを特徴とするエンジン。
【請求項14】
内燃エンジンにおいて、
前記エンジンをスキップファイアモードで動作させるように構成されたエンジンコントローラと、
吸気弁および排気弁を作動させるように構成された少なくとも1つのカム軸と、
少なくとも1つの選択的に稼働可能なシリンダであって、選択的に稼働可能なシリンダは、関連する吸気弁、関連する排気弁、および前記関連する吸気弁と前記関連する排気弁との選択的休止を促進するように構成された関連する空動き装置を有し、選択された作動サイクルの間に選択的に稼働可能なシリンダに関連する前記排気弁が、選択的に開放されるか、または閉鎖されて保持されることが可能であり、前記エンジンのスキップファイア動作の間に起こるスキップされる作動サイクルの間に前記シリンダの休止の達成を補助し、前記スキップされる作動サイクルの間に前記シリンダを通して吸排気されないようにするシリンダと、
各所望の吸気イベントにおいて積極的に前記吸気弁を稼働させ、各吸気イベントの後で積極的に前吸気弁を休止させるように構成された弁制御システムであって、スキップファイア動作の間は、前記選択的に稼働可能なシリンダが高圧燃焼ガスを含む時には前記吸気弁が開放しないことを確実にするようにさらに構成された弁制御システムと、
を備えることを特徴とする内燃エンジン。
【請求項15】
請求項14に記載のエンジンにおいて、各空動き装置が、油圧によって制御される収縮可能リフタであることを特徴とするエンジン。
【請求項16】
請求項14または15に記載のエンジンにおいて、前記弁制御システムが、
前記排気弁の動きを検証するための信号を生成する排気弁近接センサ、および
前記排気弁近接センサからの信号を受信する安全回路であって、前記排気弁近接センサから受信された前記信号に少なくとも部分的に基づいて排気弁の作動失敗を検出し、排気弁の作動失敗の前記検出時に前記吸気弁を休止させるように構成された安全回路、
を含むことを特徴とするエンジン。
【請求項17】
請求項14または15に記載のエンジンにおいて、前記排気弁の運動を示す信号を生成するように構成された排気弁近接センサをさらに備え、
前記エンジンコントローラが、
前記排気弁近接センサの信号を受信し、
前記排気弁近接センサの信号の少なくとも一部に基づいて前記排気弁が開放したことを検証した後にのみ、吸気弁の稼働を指図することを特徴とするエンジン。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれか1項に記載のエンジンにおいて、
前記弁制御システムが吸気弁ソレノイドおよび吸気弁収縮可能リフタを含み、
前記吸気弁ソレノイドを開放することにより、前記吸気弁収縮可能リフタは圧縮可能状態に入り、それにより、前記吸気弁が休止することを特徴とするエンジン。
【請求項19】
請求項14乃至17のいずれか1項に記載のエンジンにおいて、前記弁制御システムが、
吸気弁収縮可能リフタ、
排気弁収縮可能リフタ、および
前記吸気弁収縮可能リフタおよび前記排気弁収縮可能リフタの両方を稼働および休止させるために用いられるソレノイド、
を含むことを特徴とするエンジン。
【請求項20】
スキップファイアモードで動作する内燃エンジン内で使用するための弁制御システムにおいて、前記エンジンは複数の休止可能なシリンダおよびカム軸を含み、各シリンダは、関連する吸気弁および関連する排気弁を有し、前記カム軸は、前記吸気弁および前記排気弁を作動させるように構成され、前記弁制御システムが、各所望の吸気イベントにおいて積極的に前記吸気弁を稼働させて、各吸気イベントの後で前記吸気弁を積極的に休止させるように構成され、
休止可能なシリンダごとに、前記弁制御システムが、
前記シリンダに関連する前記吸気弁および前記排気弁を稼働および休止させることによって前記シリンダを稼働および休止させるように構成された収縮可能リフタであって、油圧により作動可能である収縮可能リフタと、
前記収縮可能リフタへの高圧作動油の適用を制御するように構成されたソレノイド弁と、
を含み、
前記ソレノイド弁および収縮可能リフタは、前記排気弁の開放後にのみ前記吸気弁の開放を可能にするように構成されていることを特徴とする弁制御システム。
【請求項21】
請求項20に記載の弁制御システムにおいて、休止可能なシリンダごとに、関連するエンジンサイクル中の指定された部分は、前記シリンダの稼働が禁止されることを特徴とする弁制御システム。
【請求項22】
請求項20または21に記載の弁制御システムにおいて、燃焼ガスを排出するための前記排気弁の開放を検出するように構成された排気弁運動検証モジュールをさらに備えることを特徴とする弁制御システム。
【請求項23】
請求項22に記載の弁制御システムにおいて、前記排気弁運動検証モジュールが、前記吸気弁の稼働の前に前記排気弁の開放を検出することを要求されることを特徴とする弁制御システム。
【請求項24】
請求項22または23に記載の弁制御システムにおいて、前記排気弁運動検証モジュールが、排気弁の開放を検出するために、クランク軸回転速度またはその時間微分を用いることを特徴とする弁制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、両者とも「SYSTEM FOR INHIBITING INTAKE VALVE ACTIVATION」と題する、2013年9月18日に出願された、米国仮特許出願第61/879,481号明細書、および2013年10月14日に出願された、米国仮特許出願第61/890,671号明細書の優先権を主張する。本出願はまた、2014年1月8日に出願された、「DETERMINATION OF A HIGH PRESSURE EXHAUST SPRING IN A CYLINDER OF AN INTERNAL COMBUSTION ENGINE」と題する、米国仮特許出願第61/925,157号明細書、2014年5月23日に出願された、「EXHAUST VALVE FAULT DETECTION」と題する、米国仮特許出願第62/002,762号明細書、および2013年10月30日に出願された、「MISFIRE DETECTION SYSTEM」と題する、米国仮特許出願第61/897,686号明細書の優先権を主張する。上述の出願は各々、本明細書において参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、スキップファイア制御を用いた内燃エンジンの吸気弁および排気弁の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃エンジンの燃料効率は、エンジンの排気量を変更することによって大幅に改善することができる。これは、必要な時にはフルトルクを利用できることを可能にしつつ、さらに、フルトルクが必要でない時には、より少ない排気量を用いることによって、吸排気損失を大きく低減し、熱効率を改善することができる。可変排気量エンジンを実現する今日最も一般的な方法は、一群のシリンダを実質的に同時に休止させることである。このアプローチでは、燃焼イベントをスキップすることが望まれる時には、休止されたシリンダに関連付けられた吸気弁および排気弁は閉鎖されたまま維持され、燃料は噴射されない。例えば、8気筒可変排気量エンジンは、シリンダのうちの半分(即ち、4つのシリンダ)を休止させてもよく、それにより、エンジンが残りの4つのシリンダのみを用いて動作しているようにする。今日利用可能な商用の可変排気量エンジンは通例、2つまたは多くても3つの排気量にしか対応していない。
【0004】
エンジンの実効排気量を変更する別のエンジン制御アプローチは、「スキップファイア」エンジン制御と呼ばれる。概して、スキップファイアエンジン制御は、選択された点火機会の間に一部のシリンダの点火を選択的にスキップすることを企図する。それゆえ、特定のシリンダは、1つのエンジンサイクルの間には点火されてもよく、その後、次のエンジンサイクルの間にはスキップされ、その後、次の間には選択的にスキップされるか、または点火されてもよい。このように、実効エンジン排気量のよりいっそう細かい制御が可能になる。例えば、4気筒エンジン内のシリンダを2つおきに点火させると、全エンジン排気量の1/3の実効排気量を提供するであろう。これは、単にシリンダのセットを休止させるだけでは得られない部分排気量である。米国特許第8,131,445号明細書(本出願の譲受人によって出願され、その全体が全ての目的のために本明細書において参照により組み込まれる)が種々のスキップファイアエンジン制御の実装形態を教示している。
【発明の概要】
【0005】
スキップファイア動作の最中における内燃エンジン内の吸気弁および排気弁の動作を制御するための種々の方法および機器が説明される。様々な実施形態では、排気弁の作動障害を検出するために、排気弁モニタまたは他の好適な機構が用いられる。排気弁の作動障害が特定のシリンダについて検出されると、対応する吸気弁は、本来であれば活動化されるであろうという状況において、吸気弁が、高圧燃焼ガスを包含するシリンダ内へ開放することを阻止するために、休止される(または活動化されない)。上述のアプローチは、スキップファイア動作をシリンダの休止と組み合わせ、それにより、スキップされる作動サイクルの間は空気がシリンダを通して吸排気されないようにすると、とりわけ有利になる。
【0006】
排気弁の作動失敗は種々の異なるパラメータに基づいて検出されてもよい。いくつかの実施形態では、失敗は、分析、クランク軸の回転速度、またはクランク軸の角加速度もしくは角躍度などの、その時間に基づく微分に基づいて検出される。他の実施形態では、排気弁の作動失敗は、排気弁の動きを感知する近接センサの出力の分析に基づいて検出されてもよい。さらに他の実施形態では、種々の他の入力および/または複数の異なる入力が、排気弁の作動失敗を推測するために用いられてもよい。状況によっては、最も懸念される作動サイクルは、排気弁の作動失敗後のすぐ次の作動サイクルになり得、その一方で、他の状況では、その次に続く、および/または後続の作動サイクルが、より大きな、または重大な懸念となり得る。
【0007】
上述の弁制御方式を実現するために好適である種々の弁制御システムが説明される。いくつかの実施形態では、各休止可能弁は、弁の休止を促進するように構成される、関連付けられた空動き装置を有してもよい。例として、空動き装置は油圧作動式収縮可能リフタの形態を取ってもよい。1つの細目では、吸気弁収縮可能リフタおよび排気弁収縮可能リフタの両方を活動化および休止させるために、単一のソレノイドが用いられてもよい。
【0008】
本発明およびその利点は、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって最も深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、エンジンシステムの一部を示す例示的概略図である。図1Bは、吸気弁および排気弁の開放および閉鎖を示す例示的なタイミング図である。図1Cは、エンジン制御システムを示す例示的概略図である。
図2図2Aは、第1の実施形態に係る、高圧ガスを包含するシリンダ内への吸気弁の開放を抑止する弁制御システムの概略図である。図2Bは、一実施形態に係る、排気弁ソレノイド内に組み込まれる安全回路の概略図である。図2Cは、一実施形態に係る、吸気弁ソレノイドおよび排気弁ソレノイドの両方を有するアセンブリ内に組み込まれる安全回路の概略図である。図2Dは、一実施形態に係る、複数の吸気弁ソレノイドおよび排気弁ソレノイドを有するアセンブリ内に組み込まれる安全回路の概略図である。
図3図3は、特定の実施形態に係る、高圧ガスを包含するシリンダ内への吸気弁の開放を抑止する弁制御システムの概略図である。
図4図4Aは、特定の実施形態に係る、高圧ガスを包含するシリンダ内への吸気弁の開放を抑止する弁制御システムの概略図である。図4Bは、本発明の特定の実施形態に係る、低圧スプリングモードにおけるスキップファイア動作のタイミング図である。図4Cは、本発明の特定の実施形態に係る、高圧スプリングモードにおけるスキップファイア動作のタイミング図である。
図5図5は、特定の実施形態に係る、高圧ガスを包含するシリンダ内への吸気弁の開放を抑止する弁制御システムの概略図である。
図6図6は、本発明の特定の実施形態に係る、高圧ガスを包含するシリンダ内への吸気弁の開放を抑止するために独立したゲート制御を用いる弁制御システムの概略図である。
図7図7は、本発明の特定の実施形態に係るタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面において、同様の参照符号は時として、同様の構造要素を指定するために用いられる。また、図内の描写は概略的なものであり、原寸に比例していないことも理解されたい。
【0011】
スキップファイア制御を用いて動作する時には、一般的に、シリンダが常時活動化されている場合よりも複雑な仕方で吸気弁および排気弁を制御することが望まれる。特に、様々な用途において、吸気弁および/または排気弁は、吸排気損失を最小限に抑えるために、スキップされる作動サイクルの間に閉鎖されたままとどまってもよい。これは、作動サイクルごとに吸気弁および排気弁が開放および閉鎖する、全てのシリンダを動作させるエンジンとは対照的である。カム動作式の弁の場合、弁を休止させるための方法は、収縮可能弁リフタを制御するソレノイドを動弁装置内に組み込むことである。弁を活動化させるためには、リフタはその完全に伸長した状態でとどまり、弁を休止させるためには、リフタは収縮される。
【0012】
この種の制御に関する潜在的問題は、何らかの理由で、シリンダ点火に付随する燃焼ガスがシリンダから排出されていなければ、吸気弁を開放しようと試みると、シリンダ内に包含された高圧のために弁または押し棒を損傷する可能性があることである。これらの状況において吸気弁を不注意に開放してしまうことを阻止するための制御方法および装置を考案することができれば、望ましいことである。
【0013】
本発明は概して、スキップファイア動作の間における内燃エンジンの吸気弁および排気弁の動作を制御するための方法および機器に関する。様々な実施形態では、弁は、弁を開放および閉鎖するための偏心カムを用いて制御される。スキップされる点火サイクルの間における弁の休止を可能にするために、収縮可能弁リフタが動弁装置内に組み込まれる。収縮可能リフタはソレノイドを用いて制御される。ソレノイドは収縮可能リフタ内への作動流体(モータ油など)の導入を可能にし、リフタをその完全に伸長した(固定状態)位置に強制的にとどまらせるか、またはリフタが収縮すること(圧縮可能状態)を可能にし、弁を閉鎖位置にとどめる。圧油をソレノイドから収縮可能リフタへ送出するために、複数の油路を含むオイルギャリが用いられてもよい。多くの場合、作動流体は収縮可能リフタ内のロッキングピンの位置を移動させ、収縮可能リフタをその固定状態と圧縮可能状態との間で移動させる。ピンに印加される圧油は収縮可能リフタの圧縮を可能にし、その結果、弁の休止を生じさせる。即ち、弁に関連付けられた収縮可能リフタに加圧流体が印加されている限り、弁は閉鎖されたままとどまることになる。ロッキングピンの位置を移動させるためには、弁はその閉鎖状態になっていなければならない。弁がその閉鎖位置から動き始めると、即ち、カムのベースサークルを離れ始めると、弁スプリングは、たとえ全油圧が印加されてもロッキングピンが所定位置外へ動くことができなくなるように、ロッキングピンに十分な力を加えていく。油圧はエンジン回転速度(rpm、1分間当たりの回転数)に依存し、3〜4barGに通例設定される圧力逃がし弁によって制限されてもよい。上述の説明は、シリンダの休止を可能にするために収縮可能リフタを用いることを含むが、その他の方法を用いることもできる。収縮可能リフタは、カム回転が弁運動を生じさせない一般的な種類の空動きシステムの一形態である。加えて、カムレスシステムが、弁を動かすために用いられてもよい。弁運動は、電磁的手段、油圧式手段、または空気圧式手段によって達成されてもよい。これらの弁運動システムはどれでも本発明とともに用いることができる。
【0014】
ソレノイドおよび収縮可能リフタを用いる弁制御システムの場合、吸気弁または排気弁を休止させるために必要な時間は以下の4つの構成要素で構成される。
1.ソレノイド弁を開放位置内へ動かし始めるために十分な電流を生成するために必要な時間
2.ソレノイドを完全に開放するための時間
3.オイルギャリに圧油を充填するための時間
4.ロックピンに十分な圧力を加え、それをロック解除位置内へ動かすための時間。
【0015】
全てのこれらのステップに関連付けられる時間は、ソレノイドを駆動するために利用可能な油圧および供給電圧に応じて変わり得る。時間は様々あってもよいが、既存の弁休止システムについては、10msが代表的な活動化時間τactである。ソレノイドを休止させ、かくして弁を活動化させるために必要な時間は、活動化時間τactと同程度か、またはそれよりもやや短い。クランク軸回転度における弁タイミングは多くの場合、エンジン速度の関数として変化することに留意されたい。エンジン速度がより高ければ、固定時間期間の間により多くのクランク軸回転が生じる。概して、弁の活動化を制御する際には、全てのこれらの活動化ステップに関連付けられる時間、およびそれらの変動性が考慮される。一般的に、コストなどの、他のシステム制約条件に合わせた活動化時間を最小限に抑えることが望ましい。活動化時間が短ければ、急速なシステム応答が可能になる。これは、高いエンジン速度で動作する際には、特に重要である。
【0016】
概して、スキップファイアエンジン制御は、選択された点火機会の間に一部のシリンダの点火を選択的にスキップすることを企図する。それゆえ、例えば、特定のシリンダは、1つの点火機会の間には点火されてもよく、その後、次の点火機会の間にはスキップされ、その後、次の間には選択的にスキップされるか、または点火されてもよい。点火/スキップの決定は点火機会ごとに行われてもよい。この決定は通例、エンジンをスキップまたは点火のどちらかのイベントのために正確に構成するための時間を制御システムに与えるために、点火イベントより、数回の点火機会、先に行われる。スキップファイア制御は、特定の低負荷動作条件の間にシリンダの固定セットが休止される従来の可変排気量エンジン動作とは対照的である。
【0017】
可変排気量エンジン内でシリンダが休止されると、そのピストンは通例、依然として往復運動するが、空気も燃料もシリンダへ送出されないため、ピストンはその動力行程の間に燃焼から生じる出力を全く送出しない。「シャットダウンされた」シリンダは正味出力を全く送出しないため、残りのシリンダへの比例負荷が増大され、これにより、残りのシリンダは、改善した熱力学的効率で動作することが可能になる。スキップファイア制御を用いると、スキップされる作動サイクルの間は、空気はシリンダを通して吸排気されず、燃料は送出されないという意味で、シリンダは同様に、好ましくは、スキップされる作動サイクルの間に休止される。これは、作動サイクルの間にシリンダの吸気弁および排気弁が閉鎖されたままとどまる弁休止機構を必要とする。この場合には、スキップされる作動サイクルの間に、空気は、休止されたシリンダへ引き入れられず、これにより、吸排気損失が低減される。
【0018】
休止サイクルでは、吸気弁は閉鎖されたままとどまるため、空気は吸気マニホールドからシリンダ内へ流れることができない。燃料も、休止されたシリンダに燃料が供給されないように、無効にされる。これは、燃料がシリンダ内へ直接噴射される直接噴射エンジンにおいて特に重要である。直接噴射エンジンでは、シリンダ内の未燃焼の液体流体はハイドロロックを生じさせる可能性があり、エンジンに永久的な損傷を与える。休止されたシリンダ内では、排気弁も閉鎖されたままとどまることができる。しかし、それが閉鎖される場合には、吸気弁の閉鎖に対するその閉鎖タイミングが重要である。燃焼イベント後に排気弁が閉鎖されたままとどまる場合には、高圧燃焼ガスはシリンダ内に閉じ込められ、高圧スプリングを形成する。これは、吸気弁が閉鎖されたままとどまっている限りにおいて容認可能であってもよい。排気弁が燃焼イベントの後に開放され、その後、閉鎖される場合には、燃焼ガスは排出され、シリンダ内に残っているガスは低圧になり、低圧スプリングを形成する。燃焼ガスがシリンダ内に閉じ込められたまま残ると、吸気弁またはその関連付けられた機械的機構は、閉じ込められた燃焼ガスの高圧に抗して開放しようと試みることによって、損傷を受ける場合がある。安全な吸気弁の開放は、シリンダ圧力が低い時にのみ生じることができるが、これは、シリンダが吸気前に排気弁を通してガス抜きされた場合に確実にされる。以下の実施形態は、高圧スプリングに抗した吸気弁の活動化を回避するための吸気弁および排気弁の制御のためのシステムおよび方法を説明する。
【0019】
図1Aは、シリンダ161、ピストン163、吸気マニホールド165および排気マニホールド169を含む例示的な内燃エンジンを示す。空気は吸気弁185を通してシリンダ161内へ引き入れられる。燃焼ガスは排気弁187を通してシリンダ161から排出される。絞り弁171は、エアフィルタまたはその他の空気源から吸気マニホールド内への空気の流入を制御する。燃焼から生じる膨張ガスはシリンダ内の圧力を増大させ、ピストンを下方へ駆動する。ピストンの往復直線運動は、クランク軸183に接続された連接棒189によって回転運動に変換される。4ストロークエンジンは、作動サイクルを完了するために、2回のクランク軸回転、720度を要する。
【0020】
図1Bは、エンジンシリンダの3つのサイクルに関連付けられる吸気弁191および排気弁192の開放および閉鎖を示す例示的なタイミング図を示す。本例では、シリンダは全てのサイクルにおいて点火されているが、スキップファイア動作では必ずしもそうとは限らない。図1Bでは、高位置は、弁が開放していることに対応し、低位置は、弁が閉鎖していることに対応する。実際には、弁はアナログ式に開放および閉鎖するため、弁開放期の開始および終了付近では、弁の開放は小さいことを理解されたい。また、弁の開放の開始/終了時における弁加速度/減速度は、弁座に対する弁の衝撃を最小限に抑えるために、小さくてもよい。気体動力学のゆえに、吸気弁および排気弁開放ドエルタイムは、シリンダ内へ入り、そこから出ていくガス交換を最大化するために、多くの場合、180度よりも大きい。吸気弁191は、吸気行程の間に約240度のクランク軸回転の期間の間、開放してもよい。4ストロークエンジンの場合、吸気行程の後に、シリンダは次に圧縮および動力行程を経験する。その時間の間、吸気弁および排気弁は両方とも閉鎖される。排気弁192は、動力行程に続く排気行程の間に約240度のクランク軸回転の期間の間、開放してもよい。実際には、弁開放ドエルタイムは240度を上回ってもよく、それを下回ってもよい。吸気弁191は、ピストンのTDC(top dead center、上死点)位置付近、またはその少し前で開放してもよい。排気弁192は、ピストンのTDC(上死点)位置付近、またはその少し後で閉鎖してもよい。それゆえ、かりにシリンダがその次の点火機会において点火されるとすれば、吸気弁191は、図1Bに示されるように、排気弁192の閉鎖と同時に開放するか、またはその後、すぐに開放してもよい。このため、吸気弁を開放する前の排気弁の正確な動作の検証を追求する任意の制御システムは複雑になる。3000rpmで動作している4ストロークエンジンの場合、任意の所与のシリンダ上の点火機会間の時間は40ミリ秒であり、吸気弁および排気弁は各々約13msの間、開放する。上述された制御ソレノイドおよび収縮可能リフタの有限の応答時間のために、吸気弁を高圧シリンダ内へ開放することを阻止しつつ正しい弁動作を確実にする制御システムおよび方法を提供することは困難である。
【0021】
図1Bに示されるように、吸気弁の開放は排気弁の閉鎖と実質的に同時であるか、またはその直後に行われる。これら、およびその他の理由のために、アクティブフューエルマネジメント(Active Fuel Management、AFM)、ディスプレイスメントオンデマンド(Displacement on Demand、DOD)、マルチディスプレイスメントシステム(Multi−Displacement System、MDS)、およびバリアブルシリンダマネジメント(Variable Cylinder Management、VCM)など、シリンダの休止を用いている様々な生産システムでは、高圧排気ガスの閉じ込め(排気イベント前の休止)が一般的に採用されている。これらの可変排気量エンジンは概して、高圧シリンダ内への開放から生じる吸気弁の損傷には関心がない。なぜなら、活動状態と休止状態との間のシリンダの切り替えはまれにしか生じない、即ち、多数のエンジンサイクルの後にしか生じないからである。最初はシリンダ内に閉じ込められていてもよい高圧排気ガスは、ゆっくりと冷え、ピストンリングを通過して漏れることになり、それにより、吸気弁の開放に対するリスクをもはやもたらさなくなる。
【0022】
次に図1Cを参照して、スキップファイアエンジンコントローラを有するエンジンシステムが説明される。エンジンシステム100は、エンジン制御ユニット(engine control unit、ECU)140内に組み込まれるスキップファイアコントローラ110を含む。ECUはエンジン制御モジュール(Engine Control Module、ECM)と呼ばれてもよい。他の実施形態では、スキップファイア制御ユニット110の機能性はECU 140から独立していてもよい。ECU 140は、所望のエンジン出力を指示する入力信号111を受信する。信号111は、アクセルペダル位置センサ(accelerator pedal position sensor、APP)163、またはクルーズコントローラ、トルク計算器など等の、他の好適な発信源から受信されるか、または引き出されてもよい。スキップファイア制御ユニット110は、エンジン150にスキップファイアアプローチを用いて所望の出力を提供させるための、信号線124に沿って導かれる一連の点火命令122を発生するように構成される。エンジン150は8つのシリンダを有するように図示されているが、本発明は、任意の数のシリンダを有するエンジンに適用可能である。ECU 140および/またはスキップファイア制御ユニット110は1つ以上の時限イベントコントローラ130を包含してもよい。時間イベントコントローラ130は、ECU 140またはスキップファイア制御ユニット110全体を関与させずに、様々なタイムクリティカルな処理タスクを扱うことができる。時限イベントコントローラ130は、時限イベントより約540度のクランク軸回転、先に動作するようにプログラムされてもよい。時限イベントは、吸気弁の開放に大体一致してもよい、作動サイクルの開始に対応してもよい。ECU内には複数の時限イベントコントローラが存在してもよい。例えば、1つの時限イベントコントローラは吸気弁を制御してもよく、別の時限イベントコントローラは排気弁を制御することができる。エンジン150は、様々なステータスインジケータに関する情報を信号線126に沿ってECU 140へ伝達してもよい。信号線126上の情報は、エンジン内の各シリンダに関連付けられた吸気弁および排気弁(図1Cには示されていない)のステータスに関する情報を含んでもよい。それはまた、クランク軸センサ(図1Cには示されていない)から引き出されたクランク軸の位置、およびカム軸センサ(図1Cには示されていない)から引き出されたカム軸の位置に関する情報を含んでもよい。図1Cでは、単一の通信チャネルが指示されているが、ECU 140の様々な部分へ向かう複数の通信チャネルが存在してもよいことを理解されたい。
【0023】
図2Aに、弁制御システム200の第1の実施形態が示される。本実施形態は、吸気弁は各吸気イベント後に休止され、後続の吸気イベントを開始するために再活動化されなければならないことを意味する、プロアクティブ制御を用いる。システムは、弁に隣接するエンジンのバルブカバー内に装着される近接センサを用いて実装されてもよい。エンジンは、任意の数のシリンダを有する、V型、直列型、または対向気筒エンジンなどの、任意の種類のものであってよい。システムは1つのシリンダごとに、一方は吸気弁210の位置を監視し、一方は排気弁220の位置を監視する、2つの近接センサを用いる。近接センサは少量の弁運動を検出することができる。例えば、近接センサは約13mmの総弁揚程のうちの約1.5mmの弁揚程を検出することができる。それゆえ、近接センサは、弁開放ドエルタイムのほとんどを表す信号を提供することができる。
【0024】
近接センサからの信号は、吸気弁ソレノイド234に接続された安全回路222における応答をトリガする。安全回路222はラッチ224およびORゲート226を含んでもよい。動作時、吸気弁近接センサ210からの信号を受信すると、ラッチ出力228は「高」状態になってもよい。ラッチ224は、それを強制的に「低」状態にする排気弁近接センサ220からのリセット信号を受信するまで、この状態のままとどまる。ラッチ出力228は、吸気弁近接センサ210から信号が受信されるまで、低状態のままとどまることになる。ラッチ出力228は、ECUから来る吸気弁制御線232と同様に、ORゲート226の入力に接続される。これらの2本の線のうちのどちらかが「高」であれば、吸気弁ソレノイド234は活動化され、高圧流体貯蔵器と吸気弁収縮可能リフタとの間の接続を開放する。高圧流体の印加によって、収縮可能リフタは圧縮可能になり、吸気弁を休止させる。それゆえ、安全回路222は、ラッチ224が排気弁近接センサ220からの信号によってクリアされるまで、休止されたままとどまるように吸気弁に強制する。排気弁が動かなかった場合には、吸気弁の作動は安全回路222によってブロックされることになり、休止されたシリンダ上で排気イベントが生じるまで吸気弁は休止されたままとどまり、燃焼室内の高圧ガスに抗して開放しようとしないことが保証される。吸気弁は、排気弁の運動の開始を指示する、排気弁近接センサ220からの信号によって再活動化される。以上においては制御論理の特定の実装形態が説明されたが、異なる論理規則、機構および/またはシステムレイアウトを用いて同等または同様の機能性が達成されてもよいことを理解されたい。
【0025】
ECUはまた、排気弁制御線236および排気弁ソレノイド238を通じて排気弁の開放を制御する。本実施形態では、これらのパラメータの情報は安全回路222の動作のために必要ない。安全回路は、排気弁近接センサ220によって測定されるとおりの排気弁の運動の検証のみを必要とする。
【0026】
弁休止機構は、最大安全動作エンジン速度、最小油圧、および最小ソレノイド動作電圧などの他の制約条件を有してもよい。エンジン速度が増大するにつれて、点火機会間の時間は減少するため、弁の休止はより迅速に行われなければならない。例えば3800rpmなどの、あるエンジン速度を超えると、弁を休止させることはもはや安全でなくなる可能性があり、弁の休止は無効にされてもよい。弁の休止のための最大エンジン速度はこの値よりも高いか、または低くてもよく、以下において説明されるとおりの他のエンジンパラメータとともに変化し得る。加えて、供給電圧が低い場合には、弁休止応答は遅くなり、弁を安全に休止させることが可能でなくなり得る。同様に、油圧が低い場合にも、弁休止応答は遅くなり、弁を安全に休止させることが可能でなくなり得る。それゆえ、安全回路は、最大動作エンジン速度、最小供給電圧、および最小動作エンジン油圧ロックアウト(図2Aには示されていない)を含んでもよい。これらの信号が、ハンドシェイク信号に加えて、制御された動作および同期を提供するために、ECUと安全回路との間で交換されてもよい。
【0027】
ロックアウトレベルは様々なパラメータの関数であってもよく、必ずしも固定されたレベルではない。例えば、油圧が高く、高速応答を提供する場合には、休止ロックアウト前の許容可能エンジン速度は増大してもよい。許容可能なエンジン動作速度範囲は、油圧系設計(アキュムレータ挙動)、油への空気混入、油汚染(ピン摩擦)、ピン劣化の懸念事項、製造に起因する油圧対RPMのばらつき、および油ポンプの摩耗変化によって制限され得る。ロックアウトレベルを決定する際には、これらの変量が全て考慮されてもよい。
【0028】
いずれかのロックアウトパラメータを超え、シリンダの休止が無効にされた場合には、安全かつ適切な方法でシステムの無効化を実行する必要がある。1つの可能な方法は、まず、供給電圧を排気弁ソレノイドから切断することである。これは、エンジン内の全ての排気弁ソレノイドのために同時に行うことができる。供給電圧を切断した後に、エンジンは、全てのシリンダが排気イベントを経験したことを確実にするために、少なくとも2回のクランク軸回転を行うことを可能にされる。その後に、吸気弁ソレノイドのための供給電圧が切断されてもよい。これにより、安全な動作、および従来の全シリンダによるエンジン動作の回復のための要求事項として、排気イベントが吸気イベントの前に常に生じることが確実になる。
【0029】
休止モードは、同様のプロセスによって、例えば、上述のイベントのシーケンスを逆にすることによって、有効にされてもよい。このアプローチでは、第1のステップは吸気弁ソレノイドのための供給電圧の活性化である。次に、システムは、排気弁ソレノイドへの供給電圧の活性化の前に、少なくとも2回のクランク軸回転を待つ。休止有効状態と無効状態との間のヒステリシスを用いて、2つの状態の間の過剰な循環を回避してもよい。例えば、弁休止エンジン速度ロックアウトレベルが3800rpmである場合には、弁の休止は、エンジン速度が3500rpm未満にまで戻ると有効にされてもよい。
【0030】
図2Aに示される実施形態の利点は、それは、ECUによって生成される任意の弁休止制御信号から自律的に動作し得ることである。ECU 140が、ハードウェア的失敗であるのか、それともソフトウェア的失敗であるのかにかかわらず、何らかの理由でその制御に失敗すれば、安全回路222が、吸気弁が高圧シリンダ内へ開放しようと試みることから生じる、エンジン内の押し棒または弁の損傷を阻止することになる。
【0031】
図2Aに示されるシステムは様々な仕方で機械的に構成されてもよい。図2Bに、1つの構成240が示される。安全回路242は、排気ソレノイド258上、またはその近傍に物理的に配置され、排気ソレノイドアセンブリ259を形成する。安全回路は、少なくとも3つの電気入力、供給電圧線、ECUからの信号線、および排気弁近接センサ220からの信号線、吸気ソレノイド254へ向かう少なくとも1つの電気出力253、ならびに接地線を有してもよい。線は、コネクタ257を用いて安全回路242に接続されてもよい。安全回路は吸気ソレノイド258またはコネクタ257のどちらかの内部に機械的に統合されてもよい。安全回路242は、排気弁が開放されたとの信号を排気弁近接センサ220から受信した後にのみ、吸気ソレノイド258の休止(およびそれゆえ、吸気弁の開放)を可能にする。
【0032】
図2Cに、代替的な構成290が示される。この構成では、排気ソレノイド298および吸気ソレノイド294は安全回路292とともに機械的に装着されてもよく、シリンダを安全に活動化および休止させるために必要な構成要素を包含する統合パッケージ291を形成する。統合パッケージ291は、単一シリンダソレノイドアセンブリと呼ばれてもよい。構成要素は、リードフレーム、回路板または何らかの種類の機械部材299上にともに装着されてもよい。リードフレームは、互いに電気絶縁された複数の導電部材を有してもよく、全てのソレノイドのための装着面を提供するために十分な機械的剛性を有する。機械部材299上に同様に装着されているのは、コネクタ297と嵌合するレセプタクル295である。コネクタ297は、電源接続および接地接続、ならびに弁近接センサ、エンジン、およびECUからの信号を含んでもよい。
【0033】
多気筒エンジンの場合、図2Dに示されるように、複数の吸気弁ソレノイド、排気弁ソレノイドおよび安全回路が共通の機械的構造体から離れて装着され、ソレノイドアセンブリ281を形成してもよい。図2Dは、共通のフレーム279上に装着された4つの吸気弁ソレノイド274a、274b、274c、274d、および4つの排気弁ソレノイド278a、278b、278c、278dを示す。ソレノイドの各対はシリンダの動作を制御してもよく、ECUによって指図されるとおりにシリンダが活動化および休止されることを可能にする。即ち、ソレノイド274aおよび278aはシリンダ「a」を制御し、ソレノイド274bおよび278bはシリンダ「b」を制御する、などである。対応するシリンダ上の排気弁が、燃焼ガスを排出するために開放されなかった場合に、任意の吸気弁の開放を阻止するための安全回路282がフレーム279上に装着されてもよい。全てのシリンダのための安全回路の機能性は単一のモジュールに収容されてもよいか、またはそれは、フレーム279に沿った様々な場所に分散されてもよい。それぞれの排気弁が開放を有することの検証は、各シリンダに関連付けられた排気弁近接センサ(図2Cには示されていない)からの信号を伝送する信号線280a、280b、280c、および280dを介して得られてもよい。必要とされる制御信号および電力をソレノイドアセンブリ281に提供するために、単一のコネクタ277が用いられてもよい。コネクタ277は、信号線280a、280b、280c、および280d、ならびにECUからの1本以上の信号線、電力線、および接地線を含んでもよい。その他の線もコネクタ277内に含まれてよい。コネクタは、フレーム279上に装着されたレセプタクル275内に差し込まれてもよい。いくつかの実施形態では、ソレノイドアセンブリ281は、排気弁近接センサからの信号線280a、280b、280c、および280dを用いずに動作してもよい。この場合には、排気弁は、関連付けられたシリンダ上の吸気弁を開放する前に、ECUからの指図に応じて開放したと仮定される。いくつかの実施形態では、安全回路282は、エンジン内部のこのようなインタフェースまたはインターコネクト構造上に装着し、ソレノイドアセンブリ281内には組み込まないようにすることができるであろう。ソレノイドアセンブリ281は、4つのシリンダに対応する8つのソレノイドを有するように示されているが、ソレノイドアセンブリ281は、任意の数のシリンダと連動するように構成されてもよい。
【0034】
上述の機械的構成は全て、安全回路、またはアセンブリ上のその他の箇所内に追加の機能性を組み込んでもよい。例えば、点火/スキップの決定などの、シリンダ制御の様々な態様は、安全回路内のマイクロプロセッサによって実行されてもよい。このアーキテクチャは、ECUの処理要件、およびECU 140とエンジン150(図1C参照)との間の信号線接続の数を低減することになるであろう。
【0035】
図3に、弁制御システム300の別の実施形態が示される。本実施形態もまた、吸気弁は各吸気イベント後に休止され、後続の吸気イベントを開始するために再活動化されなければならないことを意味する、プロアクティブ制御を用いる。本実施形態は、スキップファイア動作の間におけるシリンダの休止の制御のための弁作動感知および弁休止システムをECU 140内に統合する。本実施形態は各エンジンシリンダの排気弁220上の近接センサを用いるが、吸気弁上に近接センサは必要ない。
【0036】
排気弁近接センサは排気弁モニタ線310によってECU 140に接続される。ECU 140は吸気弁制御線232によって吸気弁ソレノイド234に接続される。ECU 140は排気弁制御線236によって排気弁ソレノイド238に接続される。吸気弁ソレノイド232は高圧流体貯蔵器から吸気弁収縮可能リフタへの作動流体の印加を制御する。排気弁ソレノイド236は高圧流体貯蔵器から排気弁収縮可能リフタへの作動流体の印加を制御する。ECU 140は、吸気弁および排気弁の制御の提供を助ける不揮発性ファームウェア上で動作する。
【0037】
システムは、吸気弁および排気弁制御ソレノイドのソフトウェア制御を用いて実装される。排気弁の運動を検出するために、近接センサ220が装着される。エンジン内の各シリンダが排気弁近接センサ220を有してもよい。吸気弁の活動的使用後に、収縮可能リフタがカムローブのベースサークルへ戻ると、吸気弁制御ソレノイド232は、吸気弁を休止させるために活動化される。吸気弁は、ECUが、そのシリンダのための関連付けられた排気弁近接センサから排気弁の運動を検出するまで、休止されたままとどまる。排気弁の運動が検出されなければ、吸気弁の作動はECUによってブロックされ、休止されたシリンダ上で排気イベントが生じるまで吸気弁は休止されたままとどまり、燃焼室内の高圧ガスに抗して開放しようとしないことが保証される。
【0038】
近接センサ220を通じて排気弁運動信号が検出されると、吸気弁の再活動化を可能にするためのECU 140内の応答がトリガされる。吸気弁は点火イベントのために活動化されるか、または意図されたスキップイベントの場合には、ソレノイドを活動化した状態のままにしておかれてもよい。排気弁上で前の運動が検出されない限り、ECU 140は吸気弁の再活動化を可能にしないため、シーケンスは本質的に安全である。概して、ソレノイドは通電開始よりも高速に通電終了する。ソレノイドの通電終了は、適度に高いエンジン速度における再活動化を可能にするために十分に高速であるため、この制御方法はソレノイドのこの特徴を活用する。次の弁イベントのための時間内に再活動化が行われない場合には、様々な実施形態では、それは単に後のイベント上で活動化されることができるであろう。一般的に、たまに吸気イベントを抜かしても、それでエンジンに対する損傷は生じないため、問題でない。たとえ、燃料がシリンダ内に噴射され、空気の不足のために燃焼されなくても、いずれの作動サイクル上でも、噴射される燃料は、エンジンの損傷を生じさせるには不十分である。
【0039】
加えて、弁休止システム300は、最大安全動作エンジン速度、最小動作電圧、および最小動作エンジン油圧を有してもよい。ECUは、イベントの時間設定、およびスキップファイアモードでの動作が妥当であるかどうかについてのその計算の際に、これらを考慮してもよい。
【0040】
基本的に、スキップが要求された時にシリンダの休止を能動的に命令するのとは対照的に、シリンダは使用後に常に休止され、点火命令時にのみ活動化されるであろう。これは、吸気弁が各吸気イベント後に休止され、後続の吸気イベントを開始するために再活動化されなければならないことを意味する、プロアクティブ制御の一例である。
【0041】
本実施形態の利点は、排気弁を監視するために、シリンダごとに単一の近接センサのみを用いるだけでよいことである。吸気弁の運動を検証するための近接センサは必要ない。これにより、1つのシリンダ当たり2つの近接センサを必要とするシステムと比べて、システムコストを低減し得る。
【0042】
図4Aに、弁制御システム400の別の実施形態が示される。本実施形態は、吸気イベントの前に吸気弁の状態は活動状態または休止状態のどちらであってもよいことを意味する、リアクティブ制御を用いる。吸気弁を損傷することを回避するために、制御システムは、次の吸気イベントの前に排気イベントが生じたことを検証する。排気イベントが生じておらず、吸気弁が休止されていない場合には、吸気弁、押し棒、リフタへの損傷、または運動機構のその他の損失を阻止するために、吸気弁は直ちに休止される。排気イベントを指示する排気弁の動作を検証するために、排気弁近接センサが用いられてもよい。抜けた排気イベントの判定は、カム角度の測定、および近接センサ信号が検出されていなければならない適切なカム角度保護帯によって達成することができる。
【0043】
前の実施形態の場合と同様に、排気弁近接センサは排気弁モニタ線310によってECU 140に接続される。ECU 140は吸気弁制御線232によって吸気弁ソレノイド234に接続される。ECU 140は排気弁制御線236によって排気弁ソレノイド238に接続される。吸気弁ソレノイド232は高圧流体貯蔵器から吸気弁収縮可能リフタへの作動流体の印加を制御する。排気弁ソレノイド236は高圧流体貯蔵器から排気弁収縮可能リフタへの作動流体の印加を制御する。本実施形態と前の実施形態との相違は、カム軸位置信号410がECU 140内に入力されることである。この信号は、ECU 140内に存在するハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアのいずれかを用いた吸気弁のフェールセーフ動作のために必要とされる。
【0044】
本システムは、高圧スプリングモードまたは低圧スプリングモードのどちらでも動作することができる。以下において、図4Bに示される例示的なタイミング図を参照することによって、低圧スプリングモードにおける動作が説明される。本図は、1回の作動サイクルよりも少し長い時間期間にわたる吸気弁の開放461および排気弁の開放462の相対的タイミングを示す。エンジン速度は3000rpmと仮定され、横軸が、図1Bにおいて用いられたとおりのクランク軸の度単位ではなく、時間単位で表されることが可能になっている。排気弁462は、時間Tから開始するドエルタイムτの間、開放している。先に述べたように、代表的な排気弁開放ドエルタイム、τは3000rpmのエンジン速度において13msであってもよい。上述されたように、吸気弁を休止させるために必要な時間は、図4Bにおいて、休止時間τactとして示される、約10msであってもよい。図4Bに示される第2サイクル上で吸気弁が開放する場合には、それは時間Tにおいて開放することになるであろう。吸気弁を開放するための決定はTの前に行われなければならない。ここで、Tは休止時間τactだけ吸気弁開放時間に先行する。Tにおいて吸気弁を開放する決定の前に、システムは、排気弁が開放したことを検証しなければならない。通常の条件下では、Tにおける排気弁の開放が検出されるであろう。ECU 140は、T1におけるその予想される開放前後の時間期間の間、排気近接センサを監視する。開放が検証された場合には、(シリンダが点火される予定であると仮定して)吸気弁は、T2において開放することを可能にされる。排気弁の運動が検証されなかった場合には、ECUは直ちに吸気弁ソレノイド234に活動化するように指示し、吸気弁を休止させ、起こり得る機械的損傷を阻止する。本例では、吸気弁を休止させる決定を行うための決定時間期間、δτは約3msである。この時間は、測定されたシステムパラメータおよびシステム応答のうちの任意のものにおける不確実性を補償するためのあらゆる時間保護帯を含まなければならないことに留意されたい。
【0045】
システムはまた、高圧スプリングモードで動作させることもできる。この場合には、排気弁は燃焼イベントの後に閉鎖されたままとどまり、燃焼ガスはシリンダ内に閉じ込められたままとどまる。高圧スプリングモードにおける動作は、この場合のための例示的なタイミング図を示す、図4Cの助けを借りて説明することができる。本例では、圧縮行程の終了に大体対応する、時間Tf1における吸気弁461の閉鎖後に点火イベントが生じる。図4Bに示される場合と異なり、排気弁462は後続の排気機会において閉鎖されたまま(即ち、休止されたまま)とどまり、高圧ガスをシリンダ内に閉じ込める。吸気弁への損傷を回避するために、開放するべき次の弁は排気弁462であり、それゆえ、吸気弁461は、次に続く吸気機会において閉鎖されたままとどまる。これは、吸気弁および排気弁の両方が閉鎖されたままとどまった、スキップされる作動サイクルに対応する。この場合には、決定時間δτははるかにより長くなり、作動サイクルの長さ、つまり本例では40msに対応する、τskipの程度になる。本例では、時間Tf2において第2の点火が生じる。
【0046】
高圧スプリングモードで動作する利点は、シリンダ内に閉じ込められた燃焼ガスがクランクケースに対するシリンダ内の正圧を確実にし、油消費を最小限に抑えることである。
【0047】
高圧スプリングモードまたは低圧スプリングモードのどちらでも動作する、リアクティブ型の実施形態のさらなる利点は、それらは、ソレノイドおよび収縮可能リフタロック機構上のサイクル数を低減することである。収縮可能リフタは、活動状態であったのか、それとも休止状態であったのか、どの状態であったのかにかかわらず、ECUによって変化するように指図されるまで、その状態のままとどまる。これにより、収縮可能リフタならびに吸気ソレノイドおよび排気ソレノイド上の摩耗が低減され、システムの動作寿命および信頼性が増大し得る。
【0048】
図5に、弁制御システム500の別の実施形態が示される。本実施形態の重要側面は、シリンダの休止を実施するために、共通の機構、即ち、シリンダごとに単一の休止装置534を利用してシリンダの休止を達成することである。単一の休止装置534は、他の実施形態において説明された吸気弁ソレノイドおよび排気弁ソレノイドの機能を組み合わせる。ただし、それはソレノイド以外の形態を取ってもよい。前の実施形態と同様に、本実施形態は、高圧スプリング動作モードまたは低圧スプリング動作モードのどちらのために用いられてもよい。また、それは、高圧シリンダに抗して吸気弁を開放しようと試みることによって引き起こされ得る押し棒の屈曲または弁従動節の損傷の可能性を回避する安全な再活動化を提供する。
【0049】
排気弁運動検証モジュール520が排気弁モニタ線510によってECU 140に接続される。カム軸位置信号410がECU 140内に入力される。ECU 140は吸気/排気弁制御線532によって休止装置534に接続される。休止装置534は吸気弁および排気弁の両方への制御信号または作動信号の印加を制御する。例えば、作動信号は、高圧流体貯蔵器から吸気弁収縮可能リフタおよび排気弁収縮可能リフタの両方への作動流体の印加であることができるであろう。本実施形態では、吸気弁および排気弁は実質的に同時に活動化または休止されなければならない。ただし、いくつかの実施形態では、クランク角に対する位相ずれに相当する、短い時間遅延がシステム内に組み込まれてもよい。カム作動弁とともに収縮可能リフタを用いる上述の実施形態などの、いくつかの実施形態では、休止は、弁が閉鎖状態になっている時にのみ生じることができる。弁が開放している間に活動化信号が印加された場合には、それは、そのサイクルの最中には、リフタがカムのベースサークルへ戻るまで弁運動に影響を与えない。このことを念頭に置くと、個々の弁の休止は、休止装置534の正確な時間設定を通じて達成することができる。例えば、排気弁が動き始めた後に休止装置534を活動化させると、その結果、吸気弁の休止のみが生じるであろう。
【0050】
低圧スプリングモード休止シーケンスは、排気弁の動きを検出するために排気弁モニタ線510によってECU 140へ送信された信号を利用することによってトリガされてもよい。ソレノイドへの休止信号は、排気弁の動きの検出後、直ちに開始することができる。代替的に、ソレノイド弁の活動化を制御するための独立したゲート制御が用いられてもよい。休止装置534への休止命令のための独立したゲートとして実装される場合には、それはECU内の処理遅延を回避する。即ち、ECUの休止命令出力はあらかじめ準備され、排気弁モニタ線510が休止装置534をトリガするであろう。シリンダ内に高圧燃焼ガスはないため、これは、シリンダが低圧であることを確実にし、したがって、再活動化は本質的に安全である。
【0051】
図6に、独立したゲートおよび単一のソレノイド休止装置を有する一実施形態が示される。ゲーティング制御610が吸気/排気弁制御線532を介してECU 140に接続される。ゲーティング制御610は排気弁センサ信号線510を介して排気弁運動検証モジュール520によってトリガされ、単一のソレノイド534を駆動する。これは、ECU 140内の処理遅延を回避することを助け、ソレノイドが最適な時間にトリガされることを確実にすることを助ける。排気弁の開放を感知し、不適切な時間における休止の送信を阻止するべく適切なタイミングウィンドウを定義することを助けるために、カム軸位置信号410がECU 140内へ入力される。
【0052】
ソレノイドおよびロッキングピン上のサイクル数を低減するために、カムの回転ごとに毎回休止信号が所望されない場合には、休止を維持するためのラッチ機能を有効にすることができる。ECU 140は、ラッチの状態をリセットしてシリンダの再活動化を促進することになるであろう。これは、単に、マイクロコントローラによる制御を通じて実装するか、または独立した回路によって実装されるラッチ機能を用いて実装することもできるであろう(図6には示されていない)。別個のラッチ回路は、ECU 140の誤動作が起きた場合に吸気弁機構を保護するであろうフェールセーフモードを実現する。
【0053】
代替的に、ECU 140が精密なカム角度情報を有する場合には、単一のソレノイドの休止は、排気弁運動の検証を用いずに達成することもできる。カム位相は通例、低分解能(カムの1回転当たり4パルス)センサによって感知される。休止パルスのトリガにおける過度の保守主義またはパディングを回避するためには、より正確なエンコーダが必要になり得る。
【0054】
本実施形態の利点は、シリンダごとに単一のソレノイドのみが必要とされるため、それはより低コストのシステムを提供することである。いくつかの実施形態では、排気弁運動検証システムは必要ない。また、単一のソレノイドが両方の弁を動作させるため、単一のECU駆動回路のみが必要とされる。本実施形態はまた、システムが低圧スプリングモードで動作している場合には、吸気弁のフェールセーフ再活動化を提供する。高圧スプリングモードでは、作動サイクルの特定の部分の間にソレノイドの休止をラッチ解除する適切なECU制御によって、フェールセーフ動作を実現することができる。
【0055】
また、本明細書において説明されている好適な動作またはプロセスはいずれも、実行可能コンピュータコードの形で好適なコンピュータ可読媒体内に記憶されてもよいことも理解されたい。動作は、プロセッサがコンピュータコードを実行すると遂行される。このような動作は、限定するものではないが、安全回路およびECUによって実行される任意の動作を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、近接センサに加えて、またはその代わりに、他の種類のセンサが、弁運動を検証するために用いられてもよい。いくつかのセンサは、運動弁運動、または弁運動に実質的に関連するパラメータを直接感知する。例えば、ソレノイドと収縮可能リフタとの間のオイルギャリ上に圧力スイッチまたは変換器が配置されてもよい。スイッチまたは変換器は、弁の活動化を指示する、ソレノイドを閉鎖したことに関連付けられる圧力の減少を記録してもよい。このスイッチまたは圧力センサは、部品数およびコストを低減するために、ソレノイド内に直接組み込まれてもよい。ソレノイドが開放位置にあるのか、それとも閉鎖位置にあるのかを指示する、ソレノイドコイルのリラクタンスを測定することもできる。また、シリンダ内圧の直接測定を用いて、排気弁はシリンダをガス抜きしたかどうかを推測することもできる。いくつかの実施形態では、弁動作を検証するためのセンサインジケータは必要ない。弁動作は、ECUによって指図されたとおりに行われたと仮定される。それゆえ、吸気弁が高圧シリンダ内へ開放しないことを確実にするために、適切な制御論理のみがECU内に実装される必要がある。
【0057】
他の実施形態では、全体的なエンジン動作に関連するパラメータの測定から、弁運動、またはその欠如が推測されてもよい。例えば、排気弁を上昇させると、カム軸に負荷がかかり、その回転率が少し遅くなる。それゆえ、排気弁の運動を検証するために、カム軸回転速度の変化が用いられてもよい。同様に、閉鎖された排気弁を指示する、高圧排気スプリングが存在すると、クランク軸に負荷がかかる。それゆえ、排気弁の運動を検証するために、クランク軸回転速度の変化が用いられてもよい。具体的には、予想される排気排出の間、およびその少し後におけるクランク軸の回転速度、加速度、および/または躍度の比較を用いて、高圧排気スプリングの存在を推測することができる。クランク軸の回転に対する高圧排気スプリングの影響はTDCの少し前および後において最も大きくなる。なぜなら、シリンダトルクはここで最も高くなるからである。それゆえ、測定はクランク軸角のこれらの領域に焦点を合わせてもよい。
【0058】
排気燃焼ガスは、空気、または未燃焼の燃料/空気混合物と異なる電気特性を有する。それゆえ、燃焼ガスが、開放した排気弁を通してシリンダから排出されたかどうかを判定するために、シリンダ内のガスの電気特性の測定が用いられてもよい。ノックセンサまたは同様の機器などの、エンジンに装着された加速度計またはマイクロホンによって、排気弁の開放および/または高圧スプリングの存在に関連付けられる音響または振動が検出されてもよい。それゆえ、排気弁の開放は、エンジンに装着された加速度計またはマイクロホンを監視することによって推測されてもよい。排気弁を開放すると、高温の燃焼排気ガスが排気マニホールド内へ導入される。それゆえ、排気弁の開放は排気マニホールド圧または流量の測定から推測されてもよい。場合によっては、排気ガスの存在、およびそれゆえ、排気弁の開放は、排気システム内の酸素センサの利用を通じて判定されてもよい。これらの検出方法に関するさらなる詳細が、米国仮特許出願第61/925,157号明細書、第62/002,762号明細書、および第61/897,686号明細書、ならびに米国特許出願第14/207,109号明細書に与えられている。これらの出願は各々、本明細書において参照により完全に組み込まれる。
【0059】
加えて、吸気弁が高圧排気スプリングに抗して本当に開放すると、これらの高温排気ガスは吸気マニホールド内へ流れることになる。このイベントは、吸気マニホールド圧センサまたは吸気マニホールド流量センサを用いて検出することができるであろう。この種の検出はカムベースのシステムにおいては有用でない場合があるが、それは、電磁作動弁などの、より高速なアクチュエータを用いるシステムにおいては有用になる場合がある。この場合には、弁運動を迅速に停止させ、弁の損傷を阻止することができるであろう。
【0060】
相対的タイミング、即ち、エンジンサイクル内において、上述の方法の各々が、排気弁が開放に失敗したことを検出する相対的タイミングは、方法によって異なる。排気弁運動の最も早い推測は、排気弁運動を指図するECU 140または同様の制御ユニットからの信号の測定から生まれる。弁運動の最も早い直接測定は、おそらく近接センサの利用によるものである。エラー信号のタイミングおよび弁休止システムによっては、本明細書において説明される安全制御システムは、吸気弁を高圧スプリング内へ開放することを回避するための適切な保護を提供するように適合されてもよい。
【0061】
図7は、高圧スプリングに抗した吸気弁の開放を阻止するための代表的な制御システムの動作を示すタイミング図を示す。図7は、1440°のクランク軸回転、1つの完全なエンジンサイクル、および2つの他のサイクルのうちの半分、にわたる動作を示す。TDCおよびBDCはそれぞれ上死点および下死点を指す。エンジンの4つの行程は、吸気を表す「I」、排気を表す「E」、圧縮を表す「C」、および動力行程の間に燃焼が生じたか、「P」、それともスキップされたか、「S」、に応じて、「P」もしくは「S」のどちらかとして指定される。吸気弁および排気弁の両方を休止させるために用いられる単一のソレノイド弁710の位置が、吸気弁712および排気弁714の位置と同様に示されている。簡単にするために、吸気弁712および排気弁714は、90°のクランク軸回転の間、開放しているように示されているが、実際には、これは必要条件ではない。図7では、トレース710 712、および714についての「高」位置は、弁が開放していることを指示し、その一方で、「低」位置は、弁が閉鎖されていることを指示する。同じく図7に示されているのは、排気弁運動検証信号716である。「高」の時、この信号は、排気弁は開放しており、吸気弁を活動化させても安全であることを指示する。
【0062】
図7は、約0°における点火721により、0°〜90°のクランク軸回転の間隔内に動力行程722が作り出されることから開始する。吸気弁712および排気弁714はこの間隔の間に両方とも閉鎖されたままとどまる。このエンジンサイクルは活動状態であるため、即ち、シリンダは点火されるため、ソレノイド弁710も閉鎖される。本例では、次のサイクル、サイクル2は、スキップされるサイクルであるため、ソレノイド710は高位置へ動き、サイクル2の間は吸気弁712を休止させる(吸気弁の休止は破線712として表される)。ソレノイド710は、約900°のクランク軸回転の後まで開放位置にとどまり、そこで、それは閉鎖し、1080°のクランク軸回転から開始する第3サイクル733上で吸気弁712が開放することを可能にする。排気弁運動検証信号716は低状態で開始し、その後、排気弁のそれ運動が検出されると、高状態に立ち上がる。上述されたように、多くの種類のセンサおよび方法が、排気弁運動を推測するために用いられてもよい。本例では、排気弁運動検証信号716はエッジ718において立ち上がり、弁の運動を指示する。排気弁運動を推測するために用いられる方法によっては、エッジ718は時間ウィンドウtsense内のいずれの場所でも生じることができる。ソレノイド710が低位置へ戻り、シリンダを活動化させると、排気弁運動検証信号716は低にリセットされてもよい。
【0063】
本実施形態では、単一の休止装置が存在するだけなので、吸気弁への損傷は、上述されたとおりの適切なタイミング論理の利用によって阻止されてもよい。吸気弁への損傷は、排気弁が吸気弁の前に開放することを確実にすることによって阻止することができる。制御論理は、ソレノイド710が時間ウィンドウtfor内に開放することを禁止することができる。このウィンドウは、点火されたサイクルの最後に排気弁が開放している時間に大体対応する。制御論理および全ての弁アクチュエータが正確に作動している場合には、このウィンドウ内における吸気弁の活動化を禁止することで、吸気弁の損傷の可能性は取り除かれる。
【0064】
しかし、障害が起こり得る可能性はあるため、吸気弁の損傷のリスクを最小限に抑えるための追加の制御システムを用いることができる。1つの種類の障害は、ソレノイド710の弁が0°において閉鎖されない場合があることである。この場合には、第1サイクルはたいがい点火にならないことになるため(即ち、ソレノイド710が高であるために、シリンダは休止された)、高圧ガスはシリンダ内に閉じ込められないことになり、吸気弁は、たとえ開放しても、損傷を受けないことになる。別の起こり得る障害は、排気弁が点火721の後に開放に失敗することである。この場合には、吸気弁712はソレノイド710によって休止されたため、吸気弁は第2サイクル内では損傷を受けないことになる。吸気弁712への損傷の最初の可能性は、ソレノイド710が低位置へ降下し、吸気弁712を活動化させる、第3サイクル内で生じることになる。しかし、この場合には、排気弁運動が生じたことを検証するために、排気弁運動検証信号716を調べることができる。この信号は、排気弁運動の検証を提供するために、約900°のクランク軸回転までに到着しさえすればよい。単一のソレノイドの動作の重要側面は、排気弁が開放に失敗したことは、排気弁開放ウィンドウの開始時、またはさらに、それと同時に検出される必要がないことである。それは後で第2サイクル内に行うことができる。なぜなら、第2サイクル上の吸気弁712はソレノイド710によってすでに休止されているからである。吸気弁712は、排気弁運動検証信号716が高レベルへ立ち上がり、排気弁の開放およびシリンダのガス抜きを指示するまで、休止状態のままとどまることができる。
【0065】
ソレノイド710が、弁を活動化させるために、900°〜1080°のウィンドウ内で低状態へ動けば望ましいことではあるが、これは必要条件ではない。ソレノイド710が、禁止期間、tfor内、即ち、点火の直後の排気行程内に低状態へ動かない限り、弁の活動化が害を及ぼすことはない。タイミングによっては、排気弁714は吸気弁712の前に開放する場合がある。しかし、シリンダはすでにガス抜きされているため、これは問題ではない。ガスが排気マニホールドからシリンダ内へ流れて戻ることを可能にするために排気弁714を開放することも問題ではない。
【0066】
本発明の少数の実施形態のみが詳細に説明されたが、本発明は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの他の形態で実装されてもよいことを理解されたい。本発明は、電子作動式ソレノイドを用いて一般的に説明されたが、これは必要条件ではない。電子制御式ソレノイドの代わりに、空気圧または油圧活動化式ソレノイドが同様に用いられてもよい。電子制御回路の代わりに、またはそれに加えて、空気圧または油圧回路内に制御論理が実装されてもよい。具体的には、点火イベントの後に、介在排気イベントを行わずに吸気弁の開放が行われないことを確実にする、油圧作動式シャトル弁が用いられてもよい。本明細書において説明する弁制御システムは、エンジン内のシリンダのうちの一部のみの上で用いられてもよい。この場合には、残りのシリンダは従来のエンジン制御と同様に常時活動モードで動作してもよい。ソレノイドの電源を無効にすることにより、エンジンは従来のモードで動作し、休止構成要素上のサイクル数は低減される。
【0067】
本発明は主として、スキップされる作動サイクルの間に空気がシリンダを通して吸排気されることを阻止するために、吸気弁および排気弁の両方を休止させることによって、スキップされる作動サイクルの間にシリンダが休止される、スキップファイア制御構成に関して説明された。しかし、いくつかのスキップファイア弁作動方式は、シリンダを効果的に休止させ、シリンダを通した空気の吸排気を阻止するために、排気弁のみ、または吸気弁のみを休止させることを企図することを理解されたい。上述のアプローチのうちのいくつかは、このような用途においても同様に良好に機能する。さらに、一般的には、シリンダを休止させ、それにより、スキップされる作動サイクルの間は、休止されたシリンダを通した空気の通過を阻止することが好ましいが、選択された、スキップされる作動サイクルの間にシリンダを通して空気を通過させることが望ましくなり得る、いくつかの特定の時機がある。例として、これは、エンジンブレーキが所望される時、および/または特定の排出設備関連の診断または動作上の必要条件のために、望ましい場合がある。上述の弁制御アプローチは、このような用途においても同様に良好に機能する。したがって、本実施形態は、限定ではなく、例示と見なすべきであり、本発明は、本明細書において与えられている詳細に限定されない。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7