特許第6672400号(P6672400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672400
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   F04D15/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-155428(P2018-155428)
(22)【出願日】2018年8月22日
(65)【公開番号】特開2020-29811(P2020-29811A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智大
(72)【発明者】
【氏名】川本 彰三
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有する複数のポンプ装置と、
前記モータを駆動するインバータと、
前記ポンプにそれぞれ設けられる複数の吐出管と、
前記複数の吐出管を合流する合流管と、
前記吐出管にそれぞれ設けられ、検出した給水量をパルス信号として出力する流量検出器と、
前記合流管又は前記合流管の二次側に設けられる圧力検出器と、
定格流量Q1時の設定圧力P1、前記設定圧力P1よりも低い、停止流量時の推定末端圧力P2、前記ポンプの停止流量Q0が初期設定値として記憶された記憶部と、
前記流量検出器で出力されたパルス信号の単位時間あたりのパルス数、又は、前記流量検出器から出力されたパルス信号の1周期あたりのON時間、OFF時間若しくはON時間及びOFF時間の双方の時間を計測して逆数を取ることで周波数Xを求め、停止流量Q0から定格流量Q1までの周波数Xとの関係式Q=aXから、係数k=(a/Q1)を求め、目標圧力P=k(P1−P2)X+P2から求めた目標圧力Pに基づいて推定末端圧一定制御を行い、前記流量検出器で検出した流量が前記停止流量Q0以下となると、前記ポンプ装置を停止する制御部と、
を備え
前記制御部は、給水量が前記定格流量Q1以上の場合には、前記設定圧力P1により吐出圧力一定制御を行うとともに、前記インバータの出力周波数が最高周波数に到達した流量以上においては、最高回転速度一定で前記モータを駆動する、給水装置。
【請求項2】
前記制御部は、試運転時に建造物の最上階の給水栓を開いた状態で電源を投入後に、一定時間、前記記憶部に記憶された前記設定圧力P1及び前記推定末端圧力P2で推定末端圧一定制御を行った後に前記ポンプ装置を停止し、吐出圧力が低下して一定時間経過後に吐出圧力を測定し、末端器具必要圧力P0を加算した値を、前記記憶部に記憶された前記推定末端圧力P2に書き換え、書き換えた前記推定末端圧力P2により推定末端圧一定制御を行う、請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記推定末端圧力P2を書き換えた後、前記推定末端圧力P2の書き換えを禁止するフラグを立てる、請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記設定圧力P1をP1=(P2−P0)×係数k+P0から求めた値に書き換えて、書き換えた前記設定圧力P1及び前記推定末端圧力P2に基づいて前記ポンプ装置を制御する、請求項2又は請求項3に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定末端圧一定制御を行うポンプ装置を有する給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、ポンプ装置を推定末端圧一定制御によりポンプ装置を制御する給水装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、給水装置として、例えば、逆流防止装置と、逆流防止装置の二次側に設けられた縦型多段タービンポンプ等の2台のポンプ装置、を備える技術も知られている。
【0003】
このような、給水装置は、逆流防止装置の一次側に設けられた第1圧力センサにより吸込圧力を検出し、ポンプ装置の二次側に設けられた第2圧力センサにより吐出圧力を検出し、インバータを内蔵した制御盤により吐出圧力が目標圧力となるよう、モータへの出力周波数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−123962号公報
【特許文献2】特許第3360007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような給水装置を水道管に直結する場合には、吸込側に水道配管の圧力が加わる一方で、逆流防止装置を内蔵しているため、給水装置内部に損失が生じる。このため、ポンプ装置の吸込側の圧力は、給水装置の吸込側の圧力より低くなる。
【0006】
例えば、インバータの出力周波数に比例した推定末端圧一定制御を行う給水装置では、制御部において予め最高周波数が定められており、最初の試運転時に小水量停止した時点で検出した出力周波数を最低周波数とし、出力周波数が最低周波数になる運転点で、最低値である推定末端圧力となり、出力周波数が最高周波数になる運転点で、最高値である設定圧力となる。
【0007】
また、吸込圧力の変動に対応するため、毎回の小水量停止時に最低周波数を検出し、更新すると、運転中に前回の停止時よりも吸込圧力が変動した場合には、最低周波数に誤差が生じることになる。
【0008】
このため、吸込圧力が上昇するほど、定格流量時の吐出圧力が低下していくといった問題があった。また、省エネルギーの効果を増すために、推定末端圧力を低く設定するほど、定格流量時の吐出圧力が低下する。この問題は、推定末端圧一定制御によって生じるが、吐出圧力一定制御においては生じない。
【0009】
また、特許文献1には、推定末端目標圧、最大周波数及び最小周波数を推定する技術も開示されているが、口径及び出力の異なる複数のポンプについて、各流量の吐出圧力とインバータ周波数のデータを取得しなければならない。特に、推定末端圧一定制御の精度を向上させるためには、計測する流量の点数を多くする必要があり、大量のデータを記憶部に記憶させる必要がある等、実用的ではなかった。
【0010】
また、特許文献2には、最大水量仕様点の吐出圧力を式に従い推定末端圧一定曲線を得る技術が開示されているが、配管損失という推定値と定義されていない係数を用いられるため、実用的ではない。また、変動する吸込圧力に対して的確な補正を行うことが困難であり、定格流量以上では、不要な高圧運転となる虞もあった。
【0011】
そこで本発明は、好適な推定末端圧一定制御が可能な給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様として、給水装置は、ポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有する複数のポンプ装置と、前記モータを駆動するインバータと、前記ポンプにそれぞれ設けられる複数の吐出管と、前記複数の吐出管を合流する合流管と、前記吐出管にそれぞれ設けられ、検出した給水量をパルス信号として出力する流量検出器と、前記合流管又は前記合流管の二次側に設けられる圧力検出器と、定格流量Q1時の設定圧力P1、前記設定圧力P1よりも低い、停止流量時の推定末端圧力P2、前記ポンプの停止流量Q0が初期設定値として記憶された記憶部と、前記流量検出器で出力されたパルス信号の単位時間あたりのパルス数、又は、前記流量検出器から出力されたパルス信号の1周期あたりのON時間、OFF時間若しくはON時間及びOFF時間の双方の時間を計測して逆数を取ることで周波数Xを求め、停止流量Q0から定格流量Q1までの周波数Xとの関係式Q=aXから、係数k=(a/Q1)を求め、目標圧力P=k(P1−P2)X+P2から求めた目標圧力Pに基づいて推定末端圧一定制御を行い、前記流量検出器で検出した流量が前記停止流量Q0以下となると、前記ポンプ装置を停止する制御部と、を備え、前記制御部は、給水量が前記定格流量Q1以上の場合には、前記設定圧力P1により吐出圧力一定制御を行うとともに、前記インバータの出力周波数が最高周波数に到達した流量以上においては、最高回転速度一定で前記モータを駆動する
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、好適な推定末端圧一定制御が可能な給水装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の構成を一部断面で示す正面図。
図2】同給水装置の構成を一部断面で示す平面図。
図3】同給水装置に用いられる流量検出器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る給水装置1を、図1乃至図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る給水装置1の構成を一部断面で示す正面図であり、図2は、給水装置1の構成を一部断面で示す平面図である。図3は、給水装置1に用いられる流量検出器20の構成を示す断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、給水装置1は、吸込管11と、逆流防止装置12と、分岐管13と、複数のポンプ装置14と、複数の吐出管15と、複数の逆止弁16と、合流管17と、蓄圧装置18と、第1圧力検出器19と、流量検出器20と、第2圧力検出器21と、制御盤22と、を備えている。
【0017】
また、給水装置1は、各構成品を内部に保持するフレーム25と、フレーム25を覆う化粧板26とを含むカバー24を備える。
【0018】
図2に示すように、吸込管11は、給水装置1の一次側が水道配管に接続される。逆流防止装置12は、吸込管11に設けられる。逆流防止装置12は、例えば、第1逆止弁、第2逆止弁、第1逆止弁及び第2逆止弁を収容するとともに、中間室33aを構成する外郭体、並びに、中間室33aに配置される逃がし弁を含む、所謂減圧式逆流防止装置である。また、逆流防止装置12は、例えば、漏水検出器を有していても良い。
【0019】
図2に示すように、分岐管13は、吸込管11の二次側に設けられ、流路を複数に分岐する。例えば、分岐管13は、吸込管11に接続され、吸込管11の二次側の複数の流路を構成する。本実施形態において、分岐管13は、吸込管11からの流路を2つに分岐する。
【0020】
図1に示すように、ポンプ装置14は、例えば、2台設けられる。ポンプ装置14は、分岐管13の分岐された二次側の端部にそれぞれ設けられる。ポンプ装置14は、モータ14aと、ポンプ14bと、を備えている。ポンプ装置14は、例えば、回転軸が重力方向に沿って延設され、モータ14aがポンプ14bの上部に配置された、所謂縦型多段タービンポンプである。
【0021】
モータ14aは、回転軸を介してポンプ14bと接続される。モータ14aは、制御盤22に電気的に接続される。ポンプ14bは、モータ14aにより駆動される。ポンプ14bは、多段ポンプである。ポンプ14bは、一次側が分岐管13に接続され、二次側が吐出管15に接続される。例えば、ポンプ14bは、下端に吸込口が形成され、ポンプ14bの上端側の側面に吐出口が形成される。
【0022】
図1に示すように、吐出管15は、各ポンプ14bの吐出口にそれぞれ接続される。吐出管15は、ポンプ14bの吐出口に隣接する位置において下方に曲折し、重力方向に沿って延設されるベンド管である。吐出管15は、例えば、複数の管を組み合わせることで構成される。
【0023】
図1に示すように、逆止弁16は、吐出管15にそれぞれ設けられる。逆止弁16は、ポンプ14bの二次側であって、且つ、合流管17の一次側に、即ち吐出管15内に設けられる。逆止弁16は、吐出管15のポンプ14bの吐出口に隣接する位置に設けられる。例えば、逆止弁16は、スイング式逆止弁であり、吐出管15に一軸周りに回転可能に固定された弁体が、吐出管15内に設けられた座部と当接することで、吐出管15内の流路を閉塞する。
【0024】
図1及び図2に示すように、合流管17は、各ポンプ14bに接続された複数の吐出管15を合流する。合流管17は、建造物の蛇口やシャワーヘッド等の給水先に接続される配管に接続される。蓄圧装置18は、合流管17に設けられたアキュムレータである。
【0025】
第1圧力検出器19は、吸込管11に設けられる。第1圧力検出器19は、逆流防止装置12の一次側の圧力を検出する。第1圧力検出器19は、信号線を介して制御盤22に電気的に接続され、検出した圧力を信号に変換し、制御盤22に送信する。
【0026】
図1及び図3に示すように、流量検出器20は、吐出管15にそれぞれ設けられ、垂直方向に延びる吐出管15内の下降流を検出可能に構成される。流量検出器20は、羽根車41と、羽根車41の回転を検出する検出部42と、を備えている。羽根車41は、吐出管15内を流れる水の水流によって回転可能に、吐出管15に設けられる。例えば、羽根車41は、回転軸と複数の羽根により構成され、吐出管15内であって、且つ、逆止弁16の二次側に設けられる。
【0027】
図3に示すように、検出部42は、例えば、羽根車41の回転軸に設けられた磁石と、磁石の回転を検出するセンサと、当該センサと電気的に接続される検出基板と、により構成される。具体例として、センサは、磁気検出素子である交番検知タイプのホールICである。検出部42は、信号線を介して制御盤22に接続される。検出部42は、吐出管15内を流れる水の水流に比例する磁石の回転をパルス信号に変換し制御盤22に送信する。例えば、検出部42は、羽根車41が一回転したときに、ON信号を3パルス、OFF信号を3パルス出力する。
【0028】
第2圧力検出器21は、合流管17に設けられ、複数のポンプ装置14の二次側の圧力を検出可能に構成される。第2圧力検出器21は、信号線等を介して制御盤22に電気的に接続され、検出した圧力を信号に変換し、制御盤22に送信する。
【0029】
図1に示すように、制御盤22は、インバータ51と、記憶部52と、表示部53と、制御部54と、を備えている。
【0030】
インバータ51は、信号線を介してモータ14a及び制御部54に電気的に接続される。本実施形態において、インバータ51は、モータ14aと同数設けられる。インバータ51は、モータ14aの回転数を可変させる。
【0031】
記憶部52は、ポンプ装置14を起動する起動圧力、定格流量時の設定圧力P1、設定圧力P1よりも低い、停止流量時の推定末端圧力P2、給水を停止する停止流量Q0、及び、吸込側の圧力Hsを0mとしたときの定格流量Q1を記憶する。また、記憶部52は、これら起動圧力、設定圧力P1、推定末端圧力P2、停止流量Q0及び定格流量Q1を、例えば、入力手段によって入力された書き換え可能に構成される。
【0032】
また、記憶部52は、給水運転時に制御部54によりインバータ51を制御する制御プログラム、給水量や目標圧力を演算する演算プログラム等の各種プログラムが記憶されている。
【0033】
表示部53は、給水量等を表示可能に構成される。
【0034】
制御部54は、流量検出器20及び第2圧力検出器21で検出された圧力及び流量に基づいて、推定末端圧力一定となるように、各インバータ51を制御する。
【0035】
具体例として、制御部54は、以下の(1)及び(2)の機能を有する。なお、制御部54の各機能は、ポンプ装置14の駆動状況や記憶部52に記憶された各値やプログラムに基づいて生じる。
【0036】
(1) 給水運転を行う機能。
(2) 目標圧力Pを求める機能。
次に、制御部54が有する(1)乃至(2)の機能について説明する。
【0037】
(1)の機能は、給水装置1の二次側の給水先に、ポンプ装置14の二次側の圧力及び流量に基づいてポンプ装置14を駆動及び停止を行い、給水を行う機能である。具体例として、(1)の機能は、制御部54が、第2圧力検出器21で検出した圧力が起動圧力以下となった場合に、一台のポンプ装置14を駆動し、ポンプ装置14の駆動後に駆動中のポンプ装置14の二次側の流量検出器20で検出した流量が停止流量以下となった場合に、駆動しているポンプ装置14を停止する機能である。また、(1)の機能は、制御部54が、ポンプ装置14の駆動後に、第2圧力検出器21で検出する圧力が(2)の機能で求めた目標圧力Pとなるように、推定末端圧一定制御でポンプ装置14を制御する機能である。さらに、(1)の機能は、給水量が定格流量Q1以上となった場合に、制御部54が、目標圧力Pを設定圧力P1にて吐出圧力一定制御とし、加えて、インバータ51の出力周波数が最高周波数に到達した流量以上では、最高回転速度一定運転を行う機能である。
【0038】
(2)の機能は、定格流量時の設定圧力P1、停止流量時の推定末端圧力P2、吸込側の圧力Hsを0mとしたときの定格流量Q1、及び、検出部42で検出された検出値から、目標圧力Pを演算する機能である。
【0039】
(2)の機能の具体例としては、例えば、制御部54が、まず、検出部42から出力されたパルス信号であるON信号又はOFF信号を検出し、検出部42の出力する1周期当たりのON時間若しくはOFF時間又はON時間及びOFF時間の双方を計測し、これらの時間の逆数をとることで周波数Xを演算する。なお、周波数Xを演算するにあたり、ON時間若しくはOFF時間又は双方の時間のいずれを計測するかは、適宜設定可能である。例えば、ON時間及びOFF時間の双方の時間を計測して周波数を求める場合には、サンプリング時間が最長となる停止流量時においては、例えば、サンプリング時間が125msとなり、毎秒サンプリングと比較して約8倍の速度で給水量データを出力可能となる。また、大流量時においては、パルス幅が比較的小さくなることから、ON時間又はOFF時間を複数計測して、平均化処理することで、瞬時的な水流の乱れの影響を受けないようにしてもよい。
【0040】
また、(2)の機能の具体例として、制御部54は、停止流量Q0から定格流量Q1までの周波数Xとの関係式Q=aXから、定格流量Q1を代入して、係数k=(a/Q1)を演算するとともに、目標圧力Pを、
P=(P1−P2)×(aX/Q1)+P2=k(P1−P2)X+P2
の式から演算する。
【0041】
このように、(2)の機能は、(1)の機能で推定末端圧一定制御を行うための目標圧力Pを、制御部54が記憶部52に記憶された値及び検出部42で検出された値から求める機能である。
【0042】
例えば、停止流量Q0は、一般的な給水装置1の場合には、10L/minに設定されており、この停止流量Q0時の周波数は4Hzに設定される。
【0043】
また、具体例として、給水装置1の定格流量Q1が330L/min、設定圧力P1が55m、推定末端圧力P2が50mに設定されている場合には、係数k=(a/Q1)の式に、流量Qと周波数Xとの関係式Q=aXの係数a=3.6と、定格流量Q1=330を代入して、K=0.00012を演算する。そして、目標圧力P=0.00012(55−50)X+50とし、この式に周波数Xを導入することで、目標圧力Pを求める。
【0044】
このように構成された給水装置1によれば、流量検出器20の検出部42から出力されるパルス信号の周波数から、単純な二次式で目標圧力を演算するため、目標圧力の演算処理に要する時間が短くてよい。すなわち、目標圧力の演算処理を高速化することが可能となり、過渡応答に優れた推定末端圧一定制御を行うことが可能となる。また、記憶部52や制御部54は、二次式で目標圧力を演算処理できる機能を有していればよく、比較的安価に製造することができる。
【0045】
また、給水装置1は、給水量が定格流量Q1以上となった場合に、目標圧力Pを設定圧力P1にて吐出圧力一定制御とし、インバータ51の出力周波数が最高周波数に到達した流量以上では、モータ14aを最高回転速度で一定運転する最高回転速度一定制御を行うことで、吸込圧力が変動しても変化しない推定末端圧一定曲線に従って、目標圧力を定め、ポンプ装置14を運転することができる。これらのように、給水装置1は、好適な推定末端圧一定制御によりポンプ装置14を制御することができる。
【0046】
上述したように、本実施形態の給水装置1によれば、好適な推定末端圧一定制御が可能となる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。上述した例では、周波数Xを演算するにあたり、ON時間若しくはOFF時間又は双方の時間のいずれを計測する例を説明したがこれに限定されない。例えば、初期設定として、単位時間当たりのパルス数をカウントし、推定末端圧一定制御において、過渡応答性の遅れによりハンチングが生じた場合に、周波数Xを演算するにあたり、ON時間若しくはOFF時間又は双方の時間のいずれを計測する方式に自動的又は手動的に切り替えてもよい。
【0048】
また、上述した例では、制御部54は、記憶部52に初期設定値として起動圧力、設定圧力P1、推定末端圧力P2、停止流量Q0及び定格流量Q1に基づいて目標圧力Pを演算する構成を記載したが、これら初期設定値は、入力によって、又は、給水装置1の設置後の実測値に基づいて書き換える構成であってもよい。例えば、給水装置1の設置現場での試運転時に、建造物の最上階の給水栓を開くとともに、給水装置1の電源投入後、初期設定値にて、設定圧力P1及び推定末端圧力P2を推定末端圧一定制御で運転したのちに、ポンプ装置14を停止し、吐出圧力が低下して一定時間経過後に測定した吐出圧力に末端器具必要圧力P0、例えば、P0=15を加算した値を新たな推定末端圧力P2としてもよい。また、新たな推定末端圧力P2に書き換えた後、書き換え禁止のフラグを立てて、例えば、停電後の複電時に、試運転を行わないようにしてもよい。
【0049】
また、ポンプ装置14の停止時の吐出圧力を測定し、記憶する指令を行う操作ボタンを設け、推定末端圧力P2を更新する構成としてもよい。なお、末端器具必要圧力P0は、給水栓での吐出圧力であり、0.15Mpa(=15m)程度が望ましい。
【0050】
また、設定圧力P1についても、P1=(推定末端圧力P2−末端器具必要圧力P0)×係数k+末端器具必要圧力P0に基づいて書き換え、新たな定格流量時の設定圧力P1と推定末端圧力P2によって、ポンプ装置14を駆動する構成としてもよい。なお、係数kは、配管損失の実揚程に対する比率であり、一般的には、1.1〜1.2程度に設定される。
【0051】
即ち、推定末端圧力P2は、試運転時の実測値から求められ、そして、設定圧力P1についても、実測データに基づいた実用的な数値に設定可能である。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]ポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有する複数のポンプ装置と、
前記モータを駆動するインバータと、
前記ポンプにそれぞれ設けられる複数の吐出管と、
前記複数の吐出管を合流する合流管と、
前記吐出管にそれぞれ設けられ、検出した給水量をパルス信号として出力する流量検出器と、
前記合流管又は前記合流管の二次側に設けられる圧力検出器と、
定格流量Q1時の設定圧力P1、前記設定圧力P1よりも低い、停止流量時の推定末端圧力P2、前記ポンプの停止流量Q0が記憶された記憶部と、
前記流量検出器で出力されたパルス信号の単位時間あたりのパルス数、又は、前記流量検出器から出力されたパルス信号の1周期あたりのON時間、OFF時間若しくはON時間及びOFF時間の双方の時間を計測して逆数を取ることで周波数Xを求め、停止流量Q0から定格流量Q1までの周波数Xとの関係式Q=aXから、係数k=(a/Q1)を求め、目標圧力P=k(P1−P2)X+P2から求めた目標圧力Pに基づいて推定末端圧一定制御を行う制御部と、
を備える給水装置。
[2]前記制御部は、給水量が前記定格流量Q1以上の場合には、前記設定圧力P1により吐出圧力一定制御を行うとともに、前記インバータの出力周波数が最高周波数に到達した流量以上においては、最高回転速度一定で前記モータを駆動する、[1]に記載の給水装置。
[3]前記制御部は、試運転時に建造物の最上階の給水栓を開いた状態で電源を投入後に、一定時間、前記記憶部に記憶された前記設定圧力P1及び前記推定末端圧力P2で推定末端圧一定制御を行った後に前記ポンプ装置を停止し、吐出圧力が低下して一定時間経過後に吐出圧力を測定し、末端器具必要圧力P0を加算した値を、前記記憶部に記憶された前記推定末端圧力P2に書き換え、書き換えた前記推定末端圧力P2により推定末端圧一定制御を行う、[1]又は[2]に記載の給水装置。
[4]前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記推定末端圧力P2を書き換えた後、前記推定末端圧力P2の書き換えを禁止するフラグを立てる、[3]に記載の給水装置。
[5]前記制御部は、前記設定圧力P1をP1=(P2−P0)×係数k+P0から求めた値に書き換えて、書き換えた前記設定圧力P1及び前記推定末端圧力P2に基づいて前記ポンプ装置を制御する、[3]又は[4]に記載の給水装置。
【符号の説明】
【0053】
1…給水装置、11…吸込管、12…逆流防止装置、13…分岐管、14…ポンプ装置、14a…モータ、14b…ポンプ、15…吐出管、16…逆止弁、17…合流管、18…蓄圧装置、19…第1圧力検出器、20…流量検出器、21…第2圧力検出器、22…制御盤、24…カバー、25…フレーム、26…化粧板、33a…中間室、41…羽根車、42…検出部、51…インバータ、52…記憶部、53…表示部、54…制御部。
図1
図2
図3