【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するための本発明の一態様は、真菌類及び食中毒誘発細菌に特異的抗菌活性を有する、受託番号KCCM11528Pの新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBV(Bacillus velezensis CJBV)菌株を提供する。
【0024】
本発明における用語「バチルス」とは、自然界に広く分布する好気性又は通性嫌気性のグラム陽性バチルス属を意味し、バチルス属に属する微生物にはバチルス・ベレゼンシスなどがある。本発明者らは、真菌類及び食中毒誘発細菌に特異的抗菌活性を有するバチルス菌であってバチルス・ベレゼンシスに属する新規な菌株を下記の通り解明した。
【0025】
まず、在来式味噌玉麹からバチルス菌株を分離して病原性カビ、酵母などの真菌類及び食中毒細菌類を検定して抗菌活性に優れた菌株を選別し、選別した菌株を同定するために16S rDNA及びgyrA遺伝子塩基配列分析を行った。前記選別した菌株の16S rDNA遺伝子塩基配列を配列番号1とするが、これは、バチルス・ベレゼンシスと99%の相同性を示す。また、前記選別した菌株のgyrA遺伝子塩基配列を配列番号2とするが、これは、バチルス・ベレゼンシスと100%の相同性を示す(実施例1)。よって、前記菌株をバチルス・ベレゼンシス(Bacillus velezensis)と同定してバチルス・ベレゼンシスCJBVと命名し、ブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2014年4月17日付けで寄託し、受託番号KCCM11528Pが付与された(実施例1)。
【0026】
よって、前記バチルス・ベレゼンシスCJBVは、配列番号1で表される16s rDNA塩基配列を有する。
【0027】
本発明の一態様によれば、前記新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVは、植物病原性カビ、及び酵母などの真菌に対する抗菌活性に優れるだけでなく、食中毒誘発細菌を抑制し、様々な真菌類及び食中毒誘発細菌に同時に作用することのできる抗菌活性を示す(実施例3、
図3及び
図4)。
【0028】
一具体例として、前記真菌類は、コレトトリカム・オルビクラレ(Colletotrichum orbiculare)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及びジゴサッカロマイセス・バイリ(Zygosaccharomyces bailii)からなる群から選択される病原性真菌であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明における用語「コレトトリカム・オルビクラレ」とは、キュウリ、マクワウリ、スイカなどのウリ科の野菜作物に炭疽病(Anthracnose)を引き起こす真菌を意味する。
【0030】
本発明における用語「フザリウム・オキシスポラム」とは、キュウリ、マクワウリ、スイカなどのウリ科の野菜作物につる割病(Fusarium wilt)を発生させる病原性真菌を意味する。
【0031】
本発明者らは、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記コレトトリカム・オルビクラレ及びフザリウム・オキシスポラムに対する抗菌効果を有することを確認した。よって、前記新規菌株により、キュウリ、マクワウリ、スイカなどのウリ科の野菜作物において炭疽病やつる割病などの植物感染病を抑制することができるので、植物病防除用微生物製剤として用いることができる。
【0032】
よって、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVを環境にやさしい無公害生物農薬として用いると、有機合成農薬による生態系破壊及び毒性問題の解決に有用であり、各農家の金銭的負担を低減することができる。また、微生物の特性上、持続性可能であるので、今後長期的な利益が期待される。
【0033】
なお、前記生物農薬とは、農作物の植物病原菌を防除するために自然環境から分離採集した微生物を製品化したものと定義される。
【0034】
本発明における用語「カンジダ・アルビカンス」とは、不完全菌類に属する真菌の属名であって、皮膚真菌症、口腔カンジダ症、腸疾患、膣炎(Candida vaginitis)などを引き起こす。特に、カンジダ膣炎は、約75%の女性が生涯に1回以上膣や外陰部のカンジダ膣炎にかかり、45%の女性が1年に2回以上再発する一般的な疾患であり、ほとんどがカンジダ・アルビカンスにより発生するが、健康なヒトの口腔、腸、膣などに正常に存在するカンジダ・アルビカンスにより、女性ホルモンの状態が異常になったときや免疫が極度に低下したときに感染する。
【0035】
本発明者らは、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記カンジダ・アルビカンスに対する抗菌効果を有することを確認した。よって、前記新規菌株により、皮膚真菌症、カンジダ膣炎、口腔微生物感染、腸疾患を効果的に予防又は治療することができる。
【0036】
本発明における用語「ジゴサッカロマイセス・バイリ」とは、サッカロマイセス属の酵母である。また、変敗性酵母であり、飲料製品、デンプン加工製品において、アルコール発酵と共に多量の二酸化炭素ガスを生成して食品の品質を低下させる。
【0037】
本発明者らは、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記ジゴサッカロマイセス・バイリに対する抗菌効果を有することを確認した。よって、前記新規菌株により、飲料製品、デンプン加工製品などの食品の保存性を向上させることができ、それらから発生し得る食中毒などの微生物感染疾患を予防又は治療することができる。
【0038】
他の具体例として、前記食中毒誘発細菌は、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)又はリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明における用語「バチルス・セレウス」とは、グラム陽性菌であり、耐熱性胞子を形成するが、感染すると下痢及び嘔吐を引き起こす。好気性細菌であり、土壌、穀類などの自然界に広く分布している。この菌株の胞子は他の菌株の胞子に比べて表面付着能に優れるので、洗浄及び消毒が難しいという特徴がある。また、前記バチルス・セレウスは、調理後に数時間常温に放置した肉、野菜、ご飯、麺などにおいて胞子の発芽により増殖することがあり、低温殺菌後の牛乳、チーズなどにおいても発芽することがあり、耐熱性毒素を産生して熱に対する抵抗性を示すので、その抑制が容易でない。
【0040】
本発明者らは、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記バチルス・セレウスに対する抗菌効果を有することを確認した。よって、前記新規菌株により、感染による食中毒、下痢、嘔吐を予防又は治療することができる。
【0041】
本発明における用語「リステリア・モノサイトゲネス」とは、人獣共通感染症病原菌であり、牛乳やチーズなどの畜産食品を介してヒトに伝染することがあり、近年、全世界的に注目されている病原性食中毒菌の1つである。前記菌に感染してリステリア症を発症すると、死亡率が約30%と非常に高い。特に、ヒト感染の場合、幼児、臓器移植患者、リンパ腫、AIDS患者など、免疫力の弱い人や免疫不全の人が感染しやすく、敗血症、脳炎及び髄膜炎を誘発することがある。前記病原菌は、他の病原性菌とは異なり、低温でも成長可能であるという特性を有し、37℃で成長した菌より4℃で成長した菌の病原性のほうが強いことが知られている。これらの菌の特性により、家庭において安全であると考えられる冷蔵保管中の食品、冷蔵食品、保存食品にもリステリア・モノサイトゲネスによる食中毒が発生し得るので大きな問題となっている。
【0042】
本発明者らは、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記リステリア・モノサイトゲネスに対する抗菌効果を有することを確認した。よって、前記新規菌株により、食中毒、リステリア症などの微生物感染疾患を予防又は治療することができる。
【0043】
特に、本発明者らは、本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)を同時に抑制できるという効果があるだけでなく、発酵食品において有用なジャン(醤)類発酵細菌であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)に対しては抗菌活性がないことを確認した(実施例3及び
図4)。
【0044】
さらに他の具体例として、前記バチルス・ベレゼンシスCJBVは、抗生物質であるバシロマイシンD(Bacillomycin D)、並びに化学式1で示すバシロマイシンD類似体(アナログ)、すなわち、C14−バシロマイシンD、C15−バシロマイシンD、及びC16−バシロマイシンDからなる群から選択される少なくとも1つのバシロマイシンD類似体を産生、分泌することができる。
【0045】
【化1】
【0046】
前記化学式において、前記Rは、C14−バシロマイシンDの場合はCH3であり、C15−バシロマイシンDの場合はCH2−CH3であり、C16−バシロマイシンDの場合はCH2−CH2−CH3である。
【0047】
本発明における用語「バシロマイシンD」とは、環状ペプチド(cyclic peptide)群の1つであるイツリン系に属する物質であり、7つのアミノ酸(2Asn,Glu,Tyr,Pro,Ser,Thr)と1つのβ−アミノ酸とからなる環状構造を有し、抗生活性を有する。
【0048】
本発明者らは、本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが産生、分泌する抗菌物質を分離してUVスペクトルと分子量を測定した結果、分離した物質が前記バシロマイシンD類似体3種であることを確認した(実施例2、
図1及び
図2)。
【0049】
前記目的を達成するための本発明の他の態様は、前記新規バチルス・ベレゼンシスCJBV菌株から産生されたバシロマイシンD類似体を提供する。
【0050】
前記バシロマイシンD類似体は下記の化学式1で表される。
【0051】
【化2】
【0052】
前記化学式において、前記Rは、CH3、CH2−CH3、CH2−CH2−CH3であり、CH3の場合をC14−バシロマイシンDと命名し、CH2−CH3の場合をC15−バシロマイシンDと命名し、CH2−CH2−CH3の場合をC16−バシロマイシンDと命名した。
【0053】
本発明者らは、本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが産生、分泌する抗菌物質を分離してUVスペクトルと分子量を測定した結果、分離した物質が前記バシロマイシンD類似体3種であることを確認した(実施例2、
図1及び
図2)。
【0054】
前記新規バチルス・ベレゼンシスCJBV菌株から産生されたバシロマイシンD類似体を、炭疽病の原因となるコレトトリカム・オルビクラレ、つる割病の原因となるフザリウム・オキシスポラムなどを含む植物病原菌、感染すると皮膚真菌症、カンジダ膣炎、腸炎、口腔炎症などを引き起こし得るカンジダ・アルビカンス、変敗性酵母であるジゴサッカロマイセス・バイリ、食中毒細菌であるバチルス・セレウス、リステリア・モノサイトゲネスに処理した結果、前記真菌及び細菌に対する優れた抗菌効果を有することが確認された(
図3及び
図4)。よって、前記新規なバチルス・ベレゼンシスCJBV菌株から産生されたバシロマイシンD類似体を抗菌組成物として用いることができ、これを微生物感染疾患の予防、改善又は治療のための飼料、薬学組成物、健康機能食品、医薬部外品組成物、抗菌活性を有する食品、植物作物用抗菌剤、及びそれを用いた防除方法に効果的に用いることができる。
【0055】
前記目的を達成するためのさらに他の態様として、本発明は、前記新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBV菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、その濃縮物、その抽出物、及びその乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む抗菌組成物を提供する。菌株の状態は液状状態又は乾燥状態であるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明における用語「胞子」とは、細菌などの生殖細胞をいい、本発明の目的上、前記胞子はバチルス・ベレゼンシスCJBVの生殖細胞を意味する。本発明において、前記バチルス・ベレゼンシスCJBVの胞子は、真菌及び食中毒細菌に対する抗菌活性を示すので、植物病防除用微生物製剤、抗菌活性のある食品、飼料、医薬品、医薬部外品、健康機能食品に含有させて用いることができる。
【0057】
本発明における用語「培養物」とは、前記菌株を培養して得られた産物を意味し、菌体を含む培養原液であってもよく、また、培養菌株、培養上清を除去した菌体や濃縮した菌体であってもよい。前記培養物の組成は、通常のバチルス培養に必要な成分だけでなく、バチルスの生長に相乗的に作用する成分をさらに含んでもよく、それらの組成は当業界の通常の知識を有する者が容易に選択することができる。
【0058】
本発明における用語「濃縮物」とは、前記培養物を濃縮したものを意味する。
【0059】
本発明における用語「抽出物」とは、前記培養物又はその濃縮物から抽出したものを意味し、本発明の真菌類及び食中毒誘発細菌に特異的抗菌効果を示す抽出物であれば、これらに限定されるものではなく、抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はそれらの調製物もしくは精製物、それらの分画の全てが含まれる。
【0060】
本発明における用語「乾燥物」とは、前記培養物、その濃縮物、その抽出物、及びその分画物を乾燥させたものを意味する。乾燥方法には、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥及び凍結乾燥を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVは、通常のバチルス菌株の培養方法により培養することができるが、これに限定されるものではない。培地としては、天然培地又は合成培地を用いることができる。培地の炭素源としては、例えば、グルコース、スクロース、デキストリン、グリセリン、デンプンなどを用いることができ、窒素源としては、ペプトン、肉類抽出物、酵母抽出物、乾燥酵母、大豆、アンモニウム塩、ナイトレート、及びその他有機もしくは無機窒素含有化合物を用いることができるが、これらの成分に限定されるものではない。培地に含まれる無機塩としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、鉄、リンなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。前記炭素源、窒素源及び無機塩の成分以外に、アミノ酸、ビタミン、核酸及びそれに関する化合物が培地に添加されてもよい。
【0062】
前記抗菌組成物は、バチルス・ベレゼンシスCJBVを培養する過程で産生される他の副産物を共に含んでもよい。
【0063】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の態様として、本発明は、前記抗菌組成物を含む食品組成物を提供する。
【0064】
前記食品の種類は特に限定されるものではなく、非限定的な意味での食品が全て含まれる。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、及びビタミン複合剤などが挙げられる。前記組成物を食品添加物として用いる場合は、前記組成物をそのまま添加してもよく、他の食品又は食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いてもよい。
【0065】
前記食品組成物は、食品学的に許容可能な担体を含んでもよい。
【0066】
特に、本発明者らは、本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが変敗性酵母であるジゴサッカロマイセス・バイリ、食中毒細菌であるバチルス・セレウス、リステリア・モノサイトゲネスを同時に抑制できるという効果があるだけでなく、発酵食品において有用なジャン(醤)類発酵細菌であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)に対しては抗菌活性がないことを確認した(実施例3及び
図4)。よって、発酵食品を含むあらゆる食品に前記抗菌組成物を直接用いることができる。
【0067】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の態様として、本発明は、前記抗菌組成物を含む飼料組成物を提供する。
【0068】
本発明における用語「飼料」とは、動物が食べて摂取し、消化させるための、又はそれに適した任意の天然又は人工の規定食、一食など、又は前記一食の成分を意味する。
【0069】
前記飼料の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野において通常用いられる飼料を用いることができる。前記飼料用組成物は、飼料添加剤を含んでもよい。本発明の飼料添加剤は、飼料管理法上の補助飼料に該当し、生菌剤を含んでもよい。前記飼料の例としては、穀物類、堅果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ウリ科の植物類又は穀物副産物類などの植物性飼料と、タンパク質類、無機物類、油脂類、ミネラル類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類、又は飲食物などの動物性飼料とを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
ここで、本発明の抗菌組成物を含む飼料組成物は、賦形剤、希釈剤、添加剤をさらに含んでもよい。
【0071】
本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVは、変敗性酵母であるジゴサッカロマイセス・バイリ、食中毒細菌であるバチルス・セレウス、リステリア・モノサイトゲネスを同時に抑制できるという効果があることが確認された。よって、本発明は、抗菌及び抗真菌活性を有する飼料組成物を提供することにより、家畜の食中毒を含む微生物感染疾患を予防することができる。
【0072】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の態様として、本発明は、前記抗菌組成物を含む植物作物用抗菌剤を提供する。
【0073】
本発明者らは、本発明の新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが炭疽病の原因となるコレトトリカム・オルビクラレ、つる割病の原因となるフザリウム・オキシスポラムなどを含む植物病原菌に対する抑制効果があることを確認した(
図3)。よって、本発明の抗菌組成物は、環境にやさしい無公害生物農薬として用いられ、有機合成農薬による生態系破壊及び毒性問題の解決に有用であり、各農家の金銭的負担を低減することができる。また、微生物の特性上、持続性可能であるので今後長期的な利益が期待される。
【0074】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の態様として、本発明は、前記植物作物用抗菌剤を植物体又は土壌に処理する段階を含む植物病原性真菌の防除方法を提供する。
【0075】
前記植物病原性真菌は、炭疽病の原因となるコレトトリカム・オルビクラレ、つる割病の原因となるフザリウム・オキシスポラムであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記微生物製剤は、作物の定植前に土壌を開墾するときに、定植の15日後から、又は梅雨期と発病直前期に、植物体の地上部に茎葉処理により、及び植物体の根部に灌注により散布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0077】
前記目的を達成するためのさらに他の態様として、本発明は、前記抗菌組成物を含む微生物感染疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0078】
本発明における用語「予防」とは、本発明による微生物感染疾患の予防又は治療用組成物を個体に投与することにより微生物感染疾患の発病を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0079】
本発明における用語「治療」とは、本発明の前記組成物を微生物感染疾患の疑いのある個体に投与することにより微生物感染疾患の症状を好転させたり、好適に変更させるあらゆる行為を意味する。
【0080】
本発明における用語「改善」とは、治療される状態に関するパラメータ、例えば症状の程度を少なくとも減少させるあらゆる行為を意味する。
【0081】
本発明における用語「個体」とは、微生物感染疾患が発病したり、或いは発病する可能性のあるヒトを含むあらゆる動物を意味する。
【0082】
ここで、微生物感染疾患とは、微生物により感染して発生する疾患であり、真菌類又は食中毒誘発細菌により感染して発生する疾患であることが好ましい。
【0083】
一例として、前記真菌類は、コレトトリカム・オルビクラレ、フザリウム・オキシスポラムf.sp.ライコペルシシJCM12575、カンジダ・アルビカンス、及びジゴサッカロマイセス・バイリからなる群から選択してもよい。
【0084】
他の例として、前記食中毒誘発細菌は、バチルス・セレウス又はリステリア・モノサイトゲネスであってもよい。
【0085】
さらに他の例として、前記微生物感染疾患は、食中毒、皮膚真菌症、膣炎、下痢、嘔吐、腸炎、胃腸管炎、便泌、腹痛、腹部膨満、コレラ、リステリア症、蜂窩織炎、尿路感染症、髄膜炎、腹膜炎、膀胱炎、リンパ管炎、ひょう疽、中耳炎、呼吸器疾患、肺炎、化膿性炎症、又は敗血症であってもよい。
【0086】
蜂窩織炎(cellulitis)とは、真皮と皮下組織に現れる急性化膿性炎症を意味し、化膿性炎症が組織内に起きて強い好中球浸潤が組織間隙に慢性的かつ広範囲に拡張した状態であり、充血や水腫を伴う。
【0087】
ひょう疽(felon)とは、指又は足の指の急性化膿炎を意味する。
【0088】
本発明者らは、ヒトを含む動物の口腔、腸、膣に存在して感染すると皮膚真菌症、カンジダ膣炎、腸炎、口腔炎症などを引き起こし得るカンジダ・アルビカンス、変敗性酵母であって感染すると食中毒、嘔吐、下痢、発熱などを引き起こし得るジゴサッカロマイセス・バイリ、感染すると食中毒、下痢、嘔吐などを引き起こし得るバチルス・セレウス、感染すると食中毒、リステリア症、敗血症、脳炎、髄膜炎などを引き起こし得るリステリア・モノサイトゲネスに対する本発明の菌株の優れた抑制効果を確認した(
図3及び
図4)。よって、本発明の抗菌組成物は、微生物感染疾患の予防又は治療用薬学組成物に効果的に用いることができる。
【0089】
本発明による微生物感染疾患の予防又は治療用組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよく、前記担体と共に製剤化して食品、健康機能食品、医薬品、医薬部外品、飼料添加剤及び飲料水添加剤などとして提供してもよい。本発明における用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激することなく、投与される化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤を意味する。
【0090】
本発明に使用される前記担体の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野において通常用いられて薬学的に許容可能な担体であれば、いかなるものでも用いることができる。前記担体の例としては、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセリン、エタノールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
また、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液及び/又は静菌剤などの他の通常の添加剤を添加して用いてもよく、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤などをさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤などに製剤化して用いてもよい。
【0092】
本発明による微生物感染疾患の予防又は治療用組成物の投与方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野において通常用いる方法を採用することができる。前記投与方法の例として、組成物を経口投与又は非経口投与方法で投与することができる。本発明の前記微生物感染疾患の予防、改善又は治療用組成物は、目的とする投与方法に応じて様々な剤形に作製することができる。
【0093】
本発明の抗菌物質の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩の形態で用いてもよい。また、単独で用いてもよく、他の薬学的活性化合物との結合だけでなく、適当な組み合わせで用いてもよい。
【0094】
さらに他の態様として、本発明は、前記微生物感染疾患の予防又は治療用組成物を個体に投与する段階を含む微生物感染疾患の予防又は治療方法を提供する。本発明における用語「個体」とは、微生物感染疾患が発病したか、発病する可能性のあるヒトを含むあらゆる動物を意味する。
【0095】
本発明の前記予防又は治療方法は、具体的には、微生物感染疾患が発病した固体や発病する恐れのある個体に前記組成物を薬学的に有効な量で投与する段階を含んでもよい。
【0096】
前記抽出物を含む組成物の好適な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内において担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否かをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と併用されるか又は同時投与される薬物をはじめとする様々な因子と医薬分野で周知の類似因子に応じて異なる量を適用することが好ましい。
【0097】
本発明の抗菌物質は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与することができる。投与におけるあらゆる方法が可能であるが、例えば、経口、直腸、又は静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜もしくは脳室内(intracerebroventricular)注射により投与することができる。
【0098】
さらに他の態様として、本発明は、前記抗菌組成物を含む微生物感染疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0099】
ここで、微生物感染疾患、予防及び改善の意味は前述した通りである。
【0100】
さらに他の態様として、本発明は、前記抗菌組成物を含む医薬部外品組成物を提供する。
【0101】
本発明における用語「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾病を治療、軽減、処置又は予防する目的で用いられる繊維、ゴム製品又はそれに類似するもの、人体に対する作用が弱いか、人体に直接作用せず、器具又は機械でないものとそれに類似するもの、感染型予防のために殺菌、殺虫及びそれに類似する用途で用いられる製剤のいずれかに該当する物品であって、ヒトや動物の疾病を診断、治療、軽減、処置又は予防する目的で用いる物品のうち器具、機械又は装置でないもの、及びヒトや動物の構造と機能に薬理学的影響を与える目的で用いる物品のうち器具、機械又は装置でないものを除く物品を意味する。また、前記医薬部外品には、皮膚外用剤及び個人衛生用品が含まれる。手指消毒薬、シャワーフォーム、口内洗浄液、ウェットティッシュ、洗剤、石鹸、ハンドウォッシュ又は軟膏剤が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0102】
本発明者らは、新たに分離したバチルス・ベレゼンシスCJBVが前記カンジダ・アルビカンスに対する抗菌効果を有することを確認した。よって、前記新規菌株を用いた抗菌組成物は、皮膚真菌症、カンジダ膣炎を含む微生物感染疾患の治療、軽減、処置又は予防のための医薬部外品に効果的に用いることができる。