(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が固定される値の範囲が上限として13kHzの逆数を有する請求項1に記載の電気モータの制御方法。
前記一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が固定される値の範囲が下限として19kHzの逆数を有する請求項1又は2に記載の電気モータの制御方法。
前記電気モータには測定レシーバが備えられ、前記測定レシーバが所定の測定時間を有し、前記一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計が前記測定レシーバの前記測定時間以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の電気モータの制御方法。
【背景技術】
【0002】
これは、特に、自動車で使用されて前記自動車のキャビンのファンを推進するタイプのブラシレス電気モータを伴う場合があり、これらの電気モータは一般に永久磁石同期モータであり、多くの場合に三相である。
【0003】
ブラシを備える電気モータでは、回転コレクタが、ブラシを介してコイル(電磁石を形成する)を駆動するのに必要な整流を確保する。ブラシは整備問題及び性能問題を引き起こすため、ブラシレス電気モータが設計されてきた。
【0004】
ブラシレス電気モータ(電子整流モータとも呼ばれる)の駆動は、ブラシと回転コレクタとがないため、巻線(コイル)内の電流の整流を確保するための電子制御システムを伴う。電子制御システムは、通常、電気信号発生器を備える。電気モータに電力を伝えることを意図したこれらの電気信号は、通例、パルス幅変調(「パルス幅変調」の場合のPWM)される。PWMは、固定されてもよい周期を伴うが可変デューティサイクルを伴う論理信号(0又は1)を生成することにある。出力信号の平均はデューティサイクルに等しい。このようにうまく選択された持続時間にわたって一連の離散状態を適用することにより、ある持続時間にわたって平均化された任意の中間値を得ることができる。
【0005】
PWMはEMC(電磁的適合性)に伴う問題を引き起こし易い。実際に、所定の周波数で信号を変調するという事実は、この周波数に起因する電磁的グリッチをもたらす傾向がある。特に、固定周期PWMは、PWMを駆動する基本周波数の倍数である周波数で電磁波を生成する。したがって、[0MHz;1MHz]範囲内の帯域、特に(特定のセンサに関連するRFIDチップにより使用される)[0kHz;125kHz]帯域及びAM周波数の帯域のラジオホン放出の受信を妨害する電磁的なグリッチは、PWMによって駆動される自動車のHVACファンモータに関して留意されてきた。HVACは、「暖房、換気及び空調」という表現を表わす頭字語である。
【0006】
そのようなグリッチを低減するために、EMCを改善するためのスペクトル拡散技術がValeo社により(特に、この会社の特許出願である米国特許出願第20050069301号明細書「PWMモータによる干渉の低減」において)提案されてきた。したがって、PWMは、特にAM周波数で及び[0kHz;125kHz]帯域でグリッチを低減するように改善され得る。AM周波数は、通例、3つの周波数帯域を使用する傾向がある。LW(長波)と称される第1の帯域、MW(中波)と称される第2の帯域、及び、SW(短波)と称される第3の帯域。妨害される可能性が最も高いLW帯域及びMW帯域は、150kHz〜2MHzの間にある。RFIDチップに関連する(タイヤ空気圧センサのような)特定のセンサによって使用される[0kHz;125kHz]帯域も同様に妨害され易い。しかしながら、この技術は、従来では20Hz〜20kHzに及ぶ可聴スペクトルの周波数において(人がこのスペクトルの全体に気付くほどにそれが並はずれている場合であっても)音響グリッチをもたらし易い。実際に人に聞こえる音響スペクトルは、考慮される人に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特に、電気モータの制御方法であって、
電子制御回路によって電気モータのための電気制御信号を生成することを含み、
前記電気制御信号が一連のパルスシーケンスを備え、
一連のパルスシーケンスの各パルスが、その幅によって及びその周期によって規定され、このパルスの周期に対するパルスの幅の比が、このパルスによって電気モータに供給される平均電力を規定し、
一連のパルスシーケンスのパルスの全てのシーケンスが同一のパルス数を備え、
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの任意の位置に位置されるパルスの周期が、一連のパルスシーケンスのその他のパルスシーケンスの前記位置に位置されるパルスの周期に等しく、
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が擬似ランダムに固定され、その場合、そのようにして擬似ランダムに固定される周期の逆数が人に聞こえる音響スペクトルを超えるような値の範囲内で周期が擬似ランダムに固定され、
一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスのパルスの数は、一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計の逆数が人に聞こえる音響スペクトル未満であるように固定される、
電気モータの制御方法に関する。
【0010】
本発明は、特に、一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が固定される値の範囲が上限として13kHzの逆数を有する、電気モータの制御方法に関する。
【0011】
本発明は、特に、一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が固定される値の範囲が下限として20kHzの逆数を有する、電気モータの制御方法に関する。
【0012】
本発明は、特に、電気モータには測定レシーバが備えられ、測定レシーバが所定の測定時間を有し、一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計が測定レシーバの測定時間以上である、電気モータの制御方法に関する。
【0013】
本発明は、特に、一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスが810個のパルスを備える、電気モータの制御方法に関する。
【0014】
本発明は、特に、電気モータのための幾つかの電気制御信号の並列生成を含み、各電気信号が本発明に係る方法によって生成される、電気モータの制御方法に関する。
【0015】
本発明は、特に、電気モータのための6つの制御信号の並列生成を含む、電気モータの制御方法に関する。
【0016】
本発明は、特に、電気モータのための電子制御回路であって、電気モータのための電気制御信号発生器を備え、
前記電気制御信号が一連のパルスシーケンスを備え、
一連のパルスシーケンスの各パルスが、その幅によって及びその周期によって規定され、このパルスの周期に対するパルスの幅の比が、このパルスによって電気モータに供給される平均電力を規定し、
一連のパルスシーケンスのパルスの全てのシーケンスが同一のパルス数を備え、
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの任意の位置に位置されるパルスの周期が、一連のパルスシーケンスのその他のパルスシーケンスの前記位置に位置されるパルスの周期に等しく、
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が擬似ランダムに固定され、その場合、そのようにして擬似ランダムに固定される周期の逆数が人に聞こえる音響スペクトルを超えるような値の範囲内で周期が擬似ランダムに固定され、
一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスのパルスの数は、一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計の逆数が人に聞こえる音響スペクトル未満であるように固定される、
電子制御回路に関する。
【0017】
本発明は、特に、プロセッサによって実行されるときに本発明に係る方法を実施する一連の命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0018】
本発明は、特に、本発明に係るコンピュータプログラムを記憶するコンピュータによって読み取り可能な持続性記憶媒体に関する。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むと明らかになる。以下の説明は、単なる例示にすぎず、添付図面に関して読まれるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、既知の電気モータの電子制御回路1の機能的特性を概略的態様で表わす。同期モータの制御は、良く知られているFOC(磁界方向制御)方式にしたがったベクトル制御によって行なわれる。モータの速度を調整できるように、電子回路は、所定の時間間隔で
図1の長方形により表わされる一組の数学的処理を実行するソフトウェアを備える。
図1の例では、この間隔が61psである。この61psの時間間隔は、PWM出力によって命令される。これらのPWM出力はこの61psの周期でリフレッシュされるため、PWM出力の各更新の前に新たなコマンドを実施する必要がある。
【0022】
電流センサ2がステータの相内で流れる電流を測定する。電流の測定は、様々な既知の処理(座標系の変更、ロータ内の電流の推定、前記電流の座標の変化など)の対象を形成する。
【0023】
モータの速度を制御するためのインタフェース3は、速度設定点を受けて、それらを回路1に送信する。
【0024】
回路1は、一方では電流測定によって推定されるロータ位置に基づいて、他方では受けた設定点に基づいて、MOSFETトランジスタ4を駆動するための回路に制御信号を送出する。
【0025】
回路1は、61psの規則的な時間間隔で動作し、それにより、電磁的なグリッチを発生する。
【0026】
図2は、本発明の1つの実施形態に係る電気モータの電気制御信号を表わす。表わされる信号は概略的である。この信号はシーケンス毎に3つのパルスのみを備えており、これは現実的ではない(シーケンス当たり810個のパルスの数は、より適切ではあるが、容易にグラフで表わすことができない)。したがって、
図2は、少なくとも3つのシーケンスS
l,S
2及びS
K(S
2とS
Kとの間の中間シーケンスは表わされない)を備える一連のシーケンスを表わす。各シーケンスは3つのパルスを備える。シーケンスS
1は3つのパルスI
1,1,I
2,1及びI
3,1を備え、シーケンスS
2は3つのパルスI
1,2,I
2,2及びI
3,2を備え、シーケンスS
Kは3つのパルスI
1,K,I
2,K及びI
3,Kを備える。各パルスI
i,jは、その幅W
i,jによって及びその周期T
i,jによって特徴付けられ、iは1と3との間にあり、jは1と無限大との間にある(Kは表示される最後の値であるが、モータは、持続時間の制限なく、それが摩耗されない限り回転できる)。
【0027】
周期T
i,jの周期性が観測される。したがって、T
1,1=T
1,2=T
1,Kであること、T
2,1=T
2,2=T
2,Kであること、及び、T
3,1=T
3,2=T
3,Kであることに留意されたい。一方、変調された情報(デューティサイクW
i,j/T
i,jによってそれぞれのパルスI
i,j毎に規定される)は、特定の周期性を何ら示さない。
【0028】
図3は、本発明の1つの実施形態に係る電気モータの制御方法を概略的態様で表わす。
【0029】
この方法は、初めに、初期化ステップINITを備える。このステップは、特に、モータの電源投入中又は再始動の際に実施され得る。この初期化中、方法は、一連の基準パルスに関してランダム周期のテーブルを生成することができる。
図2に表わされるケースにおいて、これは、3つの乱数R
1,R
2及びR
3を生成することに相当し、この場合、R
1=T
1,1=T
1,2=T
1,K,R
2=T
2,1=T
2,2=T
2,K及びR
3=T
3,1=T
3,2=T
3,Kである。しかし、もう1つの方法として、これらの乱数は、予め生成されてしまっていて、電気モータの製造中に例えば電気モータに組み込まれるROMメモリ内に記憶されていてもよい。また、初期化ステップは、カウンタiを例えばゼロ(これはその単純化のために選択される任意の値であるが、アルゴリズムがそれに応じて変更されるという条件で他の値も想定し得る)に初期化することも含む。
【0030】
その後、方法は、モータ制御設定点を受けるステップRCVで始まる無限ループを開始する。
【0031】
その後、インデックスi+1において、ランダム周期のテーブル内の周期を読み取るステップRD_Tを行なう。したがって、最初のパス中に、方法は値R
1=T
1,1=T
1,2=T
1,Kを読み取る。
【0032】
このステップの後に、パルス幅変調パルスを生成するPWMステップが続き、このステップの過程で、方法は、ステップRCVで受けられる設定点とステップRD_Tで読み取られる電流周期とに応じてパルスの幅を決定する。簡単なシナリオでは、設定点が所望のデューティサイクルを直接に定める。その後、方法は、ステップRCVで受けられるデューティサイクルとステップRD_Tでテーブルから読み取られる使用されるべき周期とを乗じることで済ます。他の計算手段も想定し得る。その後、方法は、それがパワートランジスタ用であると決定したパルスを、関連する場合にはトランジスタ駆動回路を介して生成する。
【0033】
その後、インデックスiのモジュール増分のステップINCRを行なう。方法はi=i+1 mod Nを計算し、Nはシーケンス当たりのパルス数を示す(
図2ではN=3)。その後、反復手順がステップRCVに戻ることによって無限に繰り返す。
【0034】
図4は、本発明の1つの実施形態に係る電気モータのための電子制御回路を概略的態様で表わす。電子回路は、マイクロプロセッサPROCと、本発明の1つの実施形態に係るコンピュータプログラムを記憶するメモリMEMとを1つの同じハウジング内に備える。また、電子回路は、この同じハウジング内に、モータ制御設定点を受けるための入力−出力10インタフェース及びパワートランジスタ駆動回路DRVも備える。プロセッサPROC、メモリMEM、入力−出力回路10、及び、駆動回路DRVは、ハウジング内のバスBUSによってリンクされる。入力−出力回路10及び駆動回路DRVはそれぞれハウジングのピンに接続され、それにより、ハウジングを外界との相互接続が可能となる。
【0035】
プロセッサPROCは、それがメモリMEM(例えば、「リードオンリーメモリ」の頭字語であるROMタイプのメモリ)に記憶されるプログラムを実行するときに、入力−出力10インタフェースを介して周期的に設定点を受けるように指示され、これらの設定点に応じて、電気モータの動作を制御するべく本発明にしたがって制御信号をパワートランジスタに駆動回路DRVを介して送出する。
【0036】
想定し得る変形例によれば、前述のメモリは、マイクロコントローラ内で、前述のプロセッサと一体化される。この変形例の想定し得る実施によれば、1つのハウジングの代わりに2つのハウジングが設けられ、そのうちの一方はマイクロコントローラを備え、他方は(電気モータを制御するMOSFETトランジスタを駆動するための)駆動回路DRVを備える。
【0037】
図5は、制御回路5が入力−出力インタフェース7を介して外部コマンド6を受ける実施形態を表わす。このインタフェース7は、その後、内部コマンド8をマイクロコントローラ9に送出する。内部コマンド8は、マイクロコントローラの入力−出力インタフェース10によって受けられる。このインタフェース10は、電気モータを駆動する信号を規定するパルス幅変調(PWM)を制御できるようにするコマンド11を発するようになっている。インタフェース10はマイクロコントローラ9のメモリ12(リードオンリーメモリなど)と通信し、該メモリはコンピュータプログラムを備える。このメモリ12は、それ自体、マイクロコントローラのプロセッサ13と通信する。このプロセッサ13は、メモリ12に記憶されるコンピュータプログラムを実行するようになっている。インタフェース10によって発せられるコマンド11は、電気モータ16用のモータコマンド15を発する駆動回路14によって受けられる。
【0038】
図6は2つの曲線を示し、一方の曲線は、従来技術に係る制御方法で測定される寄生放出を示し、他方の曲線は、本発明の実施形態に係る制御方法で測定される寄生放出を示す。16.4kHzでチョッピングを含む従来技術に係る方法で得られる曲線17が16.4kHzの高調波を示し、(それらの高調波のうちの2つに関して)ほぼ30dBμVを達成することが観察される。一方、一実施形態にしたがって得られる曲線18では、実施されたスペクトル拡散が高調波を除去する。
【0039】
第1の実施形態は、電気モータの制御方法に関する。電気モータは例えばPMSMモータ(永久磁石同期モータを表わす)である。電気モータは位置センサを除外することができる(また、例えば電流の測定値に基づいてアルゴリズム態様でロータの位置を推定する)。電気モータは例えば三相である。電気モータには例えば4対の極が備えられる。電気モータは例えば325Wモータ(12.5Vで26A)である。そのようなモータは、例えば、自動車のキャビンファンを作動させるように適切に適合される。
【0040】
方法は、電子制御回路によって電気モータのための電気制御信号を生成することを含む。想定し得る実施によれば、電子制御回路が単一の構成要素から構成される。想定し得る実施によれば、電子制御回路が1組の構成要素から構成される。想定し得る実施によれば、電子制御回路は、例えばFPGAタイプのプログラム可能な電子回路である。想定し得る実施によれば、電子制御回路は、プロセッサ(DSPなど)と、プログラムを含むメモリとを備え、プログラムは、それがプロセッサによって実行されるときに、本発明にしたがって電子制御回路の機能を実施するようにプロセッサに指示する。後者の実施は、それが従来技術の特定のモータにおいてこのモータのメモリに新たなコンピュータプログラムをロードするだけで本発明を実施できるようにするという点で有利である。
【0041】
電気制御信号は、例えばPWM信号である。
【0042】
電気制御信号は、例えば、パワートランジスタ(MOSFETパワートランジスタなど)を制御して、電気制御信号が論理レベル1(想定し得る実施によれば、12Vの物理レベルに対応する)にあるときにモータに電力を供給できるようにするとともに電気的制御信号が論理レベル0にあるときにモータに電力を供給できないようにする。
【0043】
電気制御信号は一連のパルスシーケンスを備える。
【0044】
各パルスは、信号が論理レベル1にある信号部分と、信号が論理レベル0にある信号部分とを備える。想定し得る実施によれば、各パルスは、特定の持続時間にわたる論理1信号部分と、それに続く他の持続時間にわたる論理0信号部分とから成る。想定し得る実施によれば、各パルスは、特定の持続時間にわたる論理0信号部分と、それに続く他の持続時間にわたる論理1信号部分とから成る。想定し得る実施によれば、電気制御信号のパルスの全てはそれぞれ、特定の持続時間にわたる論理1信号部分と、それに続く他の持続時間にわたる論理0信号部分とから成る。想定し得る実施によれば、電気制御信号のパルスの全てはそれぞれ、特定の持続時間にわたる論理0信号部分と、それに続く他の持続時間にわたる論理1信号部分とから成る。
【0045】
一連のパルスシーケンスの各パルスは、その幅によって及びその周期によって規定される。パルスの幅は、パルスを表わす信号部分が論理レベル1にとどまる持続時間として規定され得る。パルスの持続時間は、パルスを表わす信号部分の全持続時間として規定することができ、この全持続時間は、パルスの開始を次のパルスの開始から分離する持続時間である。
【0046】
このパルスの周期に対するパルスの幅の比(デューティサイクルと呼ばれる)は、このパルスによって電気モータに供給される平均電力を規定する。より正確には、この平均電力はこのデューティサイクルに比例する。デューティサイクルが高ければ高いほど、すなわち、パルスの幅がパルスの持続時間に近ければ近いほど、パルスがより多くの電力をモータに供給する。
【0047】
一連のパルスシーケンスの全てのパルスシーケンスは、同一のパルス数を備える。例えば、パルスの各シーケンスはN=810パルスを備える。
【0048】
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスS
j={I
1,j;I
2,j;...I
i,j;...I
N,j}の任意の位置P
iに位置されるパルスI
i,jの周期T
i,jは、一連のパルスシーケンスのその他のパルスシーケンスS
k={I
1,k,I
2,k;...I
i,k,...I
N,k}の前記位置P
iに位置されるパルスI
i,kの周期T
i,kに等しい。したがって、任意の三重項{i,j,k}に関してT
i,j=T
i,kを有する。
【0049】
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期は、擬似ランダム態様で固定される。想定し得る実施によれば、前述の周期のランダム擬似固定は、例えばモータの製造中に事前に実行される(したがって、方法はこれらのランダム周期を生成する必要がない)。他の実施によれば、方法は、それが例えば初期化段階中に(例えばモータが電源導入されるたびに)行なうことができる必要なランダム周期自体を生成するようになっている。
【0050】
したがって、前述の表記を再使用すると、2つのランダム擬似値が等しい確率が低いため、i1がi2と異なれば、jに関係なく、T
i1,jは大体の場合にT
i2,jとは異なる。この擬似ランダム文字は、所定の周期の逆数に等しい周波数で(この場合、周期は擬似ランダムではなく固定される)及びこの周波数の倍数でグリッチの生成を避けることができるようにするスペクトル拡散を伴う。これらのグリッチは、パルスによって駆動されるオン状態からオフ状態への(又はその逆の)MOSFETトランジスタのスイッチングによって生じる。これらのグリッチは、MOSFETトランジスタによって生成されるチョッピングの高調波を備えることができる。しかし、音響グリッチを避けることも適切である。
【0051】
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期は擬似ランダムに固定され、その場合、そのようにして擬似ランダムに固定される周期の逆数が人に聞こえる音響スペクトルを超える(又は音響スペクトルの上端にある)ような値の範囲内で周期が擬似ランダムに固定される。「人に聞こえる音響スペクトルを超える」とは、擬似ランダムに固定された周期の逆数が人に聞こえる音響スペクトルの上限よりも大きいことを意味する。想定し得る実施によれば、擬似ランダムに固定される周期の逆数は20kHzよりも大きいが、一変形例によれば、前記逆数が20kHzよりも小さい周波数より大きくてもよい。音響スペクトルは、通常、20kHz(これは音響スペクトルの上限)で終端するが、20kHzのこの周波数は殆どの人に聞こえない。想定し得る実施によれば、音響スペクトルの上端は、13kHz〜19kHzの周波数範囲として規定される。中間の代わりの範囲も想定し得る(例えば15kHz〜20kHz)。音響スペクトルの上端は、人に聞こえる音響スペクトルよりも(周波数で)高いと考えられる。
【0052】
一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスのパルスの数neは、一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計の逆数が人に聞こえる音響スペクトル未満となる(又は音響スペクトルの下端にある)ように固定される。「人に聞こえる音響スペクトル未満」とは、前述の周期の合計の逆数が人に聞こえる音響スペクトルの下限よりも小さいことを意味する。変形例によれば、前述の周期の合計の逆数が20Hzよりも小さい。音響スペクトルは、通常は、20Hzで始まるが、20Hzのこの周波数は、多くの場合に50Hz未満の周波数をほぼ区別できない多くの人に聞こえない。想定し得る実施によれば、音響スペクトルの下端は、20Hz〜50Hzの周波数範囲として規定される。中間の代わりの範囲も想定し得る(例えば20Hz〜35Hz)。音響スペクトルの下端は、人に聞こえる音響スペクトルよりも(周波数で)低いと考えられる。
【0053】
第1の実施形態に係る方法は、音響性能を低下させることなく、LW帯域(
図6に示されるように150kHz〜300kHzの間にあるAM変調の第1の帯域)において3〜5dBを得ることができるようにする。
【0054】
第2の実施形態は、第1の実施形態に係る電気モータの制御方法に関し、この制御方法では、一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が固定される値の範囲が上限として13kHzの逆数を有する。これにより、殆どの人にとって聞こえるグリッチを減らすことができる。
【0055】
第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態に係る電気モータの制御方法に関し、この制御方法では、一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期が固定される値の範囲が下限として19kHzの逆数を有する。この下限は、それが従来技術のモータを制御するためのマイクロコントローラで利用可能な計算能力の限界に対応するため、有利である。そのようなマイクロコントローラは、一般に、モータ制御以外の機能を有し、その機能もまたその計算能力の一部を消費する。したがって、19kHzを超えると、通例は、リアルタイムな制約を順守し難くなる。
【0056】
第4の実施形態は、第1〜第3の実施形態のうちの1つに係る電気モータの制御方法に関する。電気モータには測定レシーバが備えられ、該測定レシーバは所定の測定時間を有する。一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計は、一般に50ms(これも音響スペクトルの下限に対応する)に近いこの測定時間以上である。これは、パルスシーケンスが全て同様の構造を有するため、有利である。より正確には、2つの任意のシーケンスに含まれるパルスの周期は常に同じである(前述のように、任意の三重項{i,j,k}に関してT
i,j=T
i,kである)。各パルスのデューティサイクルは、確かに異なる傾向があるが、それにもかかわらず、それらの発生周波数で及びこの周波数の倍数でグリッチを生成し易い周期的要素(各シーケンスで取り出される)が各シーケンスから現れる。50ms以上の長さのシーケンスを使用することにより、方法は、(その周期性がシーケンスの同一構造に関連付けられる)周期的要素の発生周波数が1/(50*10
−3s)=20Hz未満になるようにする。しかしながら、20Hz未満の周波数は、人に聞こえる音響スペクトルの外側にある。
【0057】
第5の実施形態によれば、第4の実施形態に係る電気モータの制御方法の一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスは、810個のパルスを備える。このパルス数は、パルスの平均周期に対するシーケンスの持続時間の比によってもたらされる。したがって、50msのシーケンス持続時間(これは、音響スペクトルの下端で可聴グリッチを回避するように選択され得るとともに、従来の測定レシーバの一般的な測定時間にも対応する)にわたって及び16.2kHzの平均周波数のパルスに関して(そのような周波数が音響スペクトル内にあっても人は通例はその周波数に気付かないので、同様に可聴グリッチを回避するべく)、シーケンス当たり50*16.2=810個のパルスを有する。これらの810個のパルスのそれぞれの周期は、オンザフライでランダムに生成され得るが、これは、多くの場合、利用可能な計算能力の観点から過度に不利益をもたらし得る。したがって、所定のランダム周期を使用することが有利である。
【0058】
想定し得る実施によれば、初期化段階において、方法は、パルス周期の810個の値をランダムに生成して、これらの値のそれぞれの逆数が人に聞こえる音響スペクトルを超えるようにする(例えば、13kHzよりも大きい周波数に気付く人が少ないことが受け入れられる場合には13kHzを超える)とともに、これらの値の合計が50msにほぼ等しくなるようにする。想定し得る実施によれば、これらの810個の値はその後にテーブルに記憶される。動作中、方法は、その後、それが生成しなければならない次のパルスの周期を知る必要があるときにテーブルを調べる。したがって、方法は、テーブルに含まれる要素のカウンタを維持することができる。想定し得る実施によれば、方法は、テーブルのサイズを法としてこのカウンタをインクリメントする(それによって所望の周期性を導入し、各シーケンスはテーブルを完全に行き来することに対応する)。他の変形例によれば、810個の値(又は他の適切な数の値)を(不揮発性メモリ、特にROM、EEPROM、又は、フラッシュタイプであってもよいメモリ内の)テーブルに記憶する代わりに、方法は、依然として初期化段階の過程で、810個の値を記憶して各値から次の値への移行を可能にする状態機械を生成する。初期化段階を用いる代わりに、方法は、該方法を実施するようになっている電気モータのための電子制御回路の製造中に工場で予め規定されるパラメータに依存してもよい。
【0059】
第6の実施形態によれば、電気モータの制御方法は、電気モータのための幾つかの電気制御信号の並列生成を含み、各電気信号は、第1〜第5の実施形態のうちの1つに係る方法によって生成される。
【0060】
第7の実施形態によれば、第6の実施形態に係る電気モータの制御方法は、電気モータのための6つの制御信号の並列生成を含む。したがって、並列信号のそれぞれは、例えば、電気モータを駆動するために別個のパワートランジスタを制御することができる。したがって、方法は6つのトランジスタを制御することができ、各トランジスタはそれ自体の電気制御信号を用いて制御される。6つの信号のそれぞれは、モータの相を駆動することによりモータを回転させることができるようにする整流ダイアグラムにしたがって構成される。
【0061】
第8の実施形態によれば、電気モータのための電子制御回路は、電気モータのための電気制御信号発生器を備える。したがって、この発生器は電子制御回路のサブセットである。しかし、変形例によれば、発生器は電子制御回路を構成する。想定し得る実施によれば、発生器が単一の構成要素から構成される。想定し得る実施によれば、発生器が1組の構成要素から構成される。想定し得る実施によれば、発生器は、例えばFPGAタイプのプログラム可能な電子回路である。想定し得る実施によれば、発生器は、プロセッサ(DSPなど)と、プログラムを含むメモリとを備え、プログラムは、それがプロセッサによって実行されるときに、本発明にしたがって発生器の機能を実施するようにプロセッサに指示する。
【0062】
電気制御信号は一連のパルスシーケンスを備える。
【0063】
一連のパルスシーケンスの各パルスは、その幅によって及びその周期によって規定される。
【0064】
このパルスの周期に対するパルスの幅の比は、このパルスによって電気モータに供給される平均電力を規定する。
【0065】
一連のパルスシーケンスの全てのパルスシーケンスは、同一のパルス数を備える。
【0066】
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの任意の位置に位置されるパルスの周期は、一連のパルスシーケンスのその他のパルスシーケンスの前記位置に位置されるパルスの周期に等しい。
【0067】
一連のパルスシーケンスの1つのパルスシーケンスの各パルスの周期は擬似ランダムに固定され、その場合、そのようにして擬似ランダムに固定される周期の逆数が人に聞こえる音響スペクトルを超えるような値の範囲内で周期が擬似ランダムに固定される。
【0068】
一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスのパルスの数は、一連のパルスシーケンスの各パルスシーケンスの全てのパルスの周期の合計の逆数が人に聞こえる音響スペクトル未満となるように固定される。
【0069】
電気モータの制御方法に関する第1〜第7の実施形態の特徴は、第8の実施形態に係る電気モータのための電子制御回路に置き換え可能であり、逆もまた同様である。
【0070】
第9の実施形態によれば、コンピュータプログラムが一連の命令を備え、該命令は、それらがプロセッサにより実行されるときに、第1〜第7の実施形態のうちの1つに係る方法を実施する。コンピュータプログラムは、特に、アセンブラ言語で又はC言語などの低レベル言語で設計され得る。
【0071】
第10の実施形態によれば、コンピュータによって読み取り可能な持続性記憶媒体は、第9の実施形態に係るコンピュータプログラムを記憶する。記憶媒体は、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM、ROMメモリ等のような不揮発性メモリである。