特許第6672473号(P6672473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特許6672473高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極及びこの製造方法
<>
  • 特許6672473-高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極及びこの製造方法 図000002
  • 特許6672473-高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極及びこの製造方法 図000003
  • 特許6672473-高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極及びこの製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672473
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20200316BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20200316BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20200316BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   H01M4/86 M
   H01M4/86 H
   H01M4/86 B
   H01M4/88 K
   H01M8/10 101
   B01J23/42 M
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-545637(P2018-545637)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公表番号】特表2019-508853(P2019-508853A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】KR2017003264
(87)【国際公開番号】WO2017171328
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年8月30日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0038437
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ハン ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ス
(72)【発明者】
【氏名】コ,ギョン ボム
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−172887(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0116463(US,A1)
【文献】 特開2016−001568(JP,A)
【文献】 特開2015−228378(JP,A)
【文献】 特開2015−048543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
B01J 23/42
H01M 4/88
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)及び前記エアロゲルの表面を覆うアイオノマーを含む3次元ナノ構造体と、
前記3次元ナノ構造体に分散された触媒と、
を含み、
前記エアロゲルの表面は、疏水性官能基で置換された電極。
【請求項2】
前記3次元ナノ構造体は、前記エアロゲルを複数個で含み、
前記エアロゲルは、互いに連結されて3次元ナノ構造を形成し、
前記アイオノマーは、前記3次元ナノ構造の形状を有するエアロゲルの表面を覆う請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記エアロゲルは、シリカエアロゲルである請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記エアロゲルは、表面積が100〜1000m2/gであり、細孔サイズが1〜20nmである請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記エアロゲルは、前記電極の全体に対して1〜8重量%で含まれる請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記疏水性官能基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つである請求項に記載の電極。
【請求項7】
前記アイオノマーは、前記疏水性官能基を介して前記エアロゲルに結合される請求項に記載の電極。
【請求項8】
前記アイオノマーは、疏水性主鎖と親水性側鎖を含み、
前記アイオノマーの疏水性主鎖が前記エアロゲルの疏水性官能基に向かい、
前記アイオノマーの親水性側鎖が前記触媒に向かうように配置される請求項に記載の電極。
【請求項9】
前記アイオノマーの親水性側鎖は、スルホン酸基、カルボキシル酸基、リン酸基、ホスホニン酸基、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれるカチオン伝導性基を含む請求項に記載の電極。
【請求項10】
前記触媒は、前記3次元ナノ構造体に結合された請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記触媒は、触媒金属粒子単独または担体に担持された触媒金属粒子を含む請求項1に記載の電極。
【請求項12】
表面が疏水性官能基で置換されたナノ多孔性エアロゲル(aerogel)を用意するステップと、
前記エアロゲルアイオノマーとを混合して混合物を製造するステップと、
前記混合物に触媒を添加して電極形成用組成物を製造するステップと、
前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造するステップと、
を含む電極の製造方法。
【請求項13】
前記電極を製造するステップの後に、前記電極を高分子電解質膜に転写するステップをさらに含む請求項12に記載の電極の製造方法。
【請求項14】
前記転写は、100〜150℃、1〜10MPaでなされる請求項13に記載の電極の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の電極を含む燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極、この製造方法、及びこれを含む燃料電池に関し、より詳細には、アイオノマーのナノ構造化と均一な触媒分散、及び触媒利用率の増加により触媒性能が向上し、比較的少ない量の触媒でも優れた電流密度と電力密度とを得ることができ、触媒使用量の減少によって価格低減の効果も得ることができ、物質伝達効率及び低加湿性能に優れた高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極、この製造方法、及びこれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然ガスといった炭化水素系の燃料物質内に含有されている水素と酸素の酸化/還元反応といった化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる発電システムを備えた電池であって、高いエネルギー効率性と汚染物排出の少ない、環境にやさしいという特徴から、化石エネルギーに取って代わることができる次世代清浄エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
このような燃料電池は、単位電池の積層によるスタック構成で様々な範囲の出力を出すことができるという長所を有しており、小型リチウム電池に比べて4〜10倍のエネルギー密度を示すので、小型及び移動用携帯電源として注目を受けている。
【0004】
燃料電池において電気を実質的に発生させるスタックは、膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly、MEA)とセパレータ(separator)(または、バイポーラプレート(Bipolar Plate)ともいう)からなる単位セルが数個ないし数十個で積層された構造を有し、膜−電極接合体は、一般的に電解質膜を隔ててその両側に酸化極(Anode、または、燃料極)と還元極(Cathode、または、空気極)とが各々形成された構造をなす。
【0005】
燃料電池は、電解質の状態及び種類によってアルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)などに区分されうるが、その中で高分子電解質燃料電池は、100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性、及び優れた耐久性などの長所から、携帯用、車両用、及び家庭用の電源装置として脚光を浴びている。
【0006】
高分子電解質燃料電池の代表的な例では、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、液状のメタノールを燃料として使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、DMFC)などを挙げることができる。
【0007】
高分子電解質燃料電池において起こる反応を要約すれば、まず、水素ガスといった燃料が酸化極に供給されれば、酸化極では水素の酸化反応により水素イオン(H)と電子(e)とが生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質膜を介して還元極に伝達され、生成された電子は、外部回路を介して還元極に伝達される。還元極では、酸素が供給され、酸素が水素イオン及び電子と結合して、酸素の還元反応により水が生成される。
【0008】
燃料電池の電極は、触媒、アイオノマー、及び溶媒で構成される電極形成用組成物を介して製造されることができるが、これらの間の結合及び分散度が電池の性能及び耐久性に大きな影響を及ぼすようになる。
【0009】
一方、ナノ気孔性エアロゲルは、80〜99体積%程度の気孔率と1〜100nmの範囲の気孔サイズを有する超多孔性の高比表面積物質であって、現在まで人類が開発した素材の中で最も軽く、最も優れた超軽量/超断熱/超低誘電等の特性を有するので、エアロゲル素材の開発研究はもちろん、スーパーキャパシタ、海水淡水化用電極材料、極低誘電性材料、光学及び音響材料としての研究も活発に進められている。
【0010】
特に、シリカエアロゲルは、建物用、産業用、宇宙航空用、造船用などのエネルギー節約素材、吸音材、防火材等、エネルギー/環境/電気電子分野に無限な応用性を有した有望な素材であって、新規市場の拡大とともに、新しい応用製品及び技術開発が必要である。
【0011】
しかし、今までこのようなシリカエアロゲルを電極素材として利用した事例はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アイオノマーのナノ構造化と均一な触媒分散、及び触媒利用率の増加により触媒性能が向上し、比較的少ない量の触媒でも優れた電流密度と電力密度とを得ることができ、触媒使用量の減少によって価格低減効果も得ることができ、物質伝達効率及び低加湿性能に優れた高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記電極の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記電極を含む燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)及び前記エアロゲルの表面を覆うアイオノマーを含む3次元ナノ構造体、そして、前記3次元ナノ構造体に分散された触媒を含む電極を提供する。
【0016】
前記3次元ナノ構造体は、前記エアロゲルを複数個で含み、前記エアロゲルは、互いに連結されて3次元ナノ構造を形成し、前記アイオノマーは、前記3次元ナノ構造の形状を有するエアロゲルの表面を覆うものでありうる。
【0017】
前記エアロゲルは、シリカエアロゲルでありうる。
【0018】
前記エアロゲルは、表面積が100〜1000m/gであり、細孔サイズが1〜20nmでありうる。
【0019】
前記エアロゲルは、前記電極の全体に対して1〜8重量%で含まれうる。
【0020】
前記エアロゲルの表面は、疏水性官能基で置換されうる。
【0021】
前記疏水性官能基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つでありうる。
【0022】
前記アイオノマーは、前記疏水性官能基を介して前記エアロゲルに結合されうる。
【0023】
前記アイオノマーは、疏水性主鎖と親水性側鎖を含み、前記アイオノマーの疏水性主鎖が前記エアロゲルの疏水性官能基に向かい、前記アイオノマーの親水性側鎖が前記触媒に向かうように配置されうる。
【0024】
前記アイオノマーの親水性側鎖は、スルホン酸基、カルボキシル酸基、リン酸基、ホスホニン酸基、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれうる。
【0025】
前記触媒は、前記3次元ナノ構造体に結合されうる。
【0026】
前記触媒は、触媒金属粒子単独または担体に担持された触媒金属粒子を含むことができる。
【0027】
本発明の他の一実施形態によれば、ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)とアイオノマーとを混合して混合物を製造するステップ、前記混合物に触媒を添加して電極形成用組成物を製造するステップ、そして、前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造するステップを含む電極の製造方法を提供する。
【0028】
前記電極を製造するステップの後に、前記電極を高分子電解質膜に転写するステップをさらに含むことができる。
【0029】
前記転写は、100〜150℃、1〜10MPaでなされうる。
【0030】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記電極を含む燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電極は、アイオノマーのナノ構造化と均一な触媒分散、及び触媒利用率の増加により触媒性能が向上し、比較的少ない量の触媒でも優れた電流密度と電力密度とを得ることができ、触媒使用量の減少によって価格低減効果も得ることができ、物質伝達効率及び低加湿性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る電極物質を示す模式図である。
図2】本発明の実験例1において測定した膜−電極接合体の加湿性能評価結果を示すグラフである。
図3】本発明の実験例2において測定した膜−電極接合体の性能評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは、例示として提示されるものであり、これにより本発明が制限されず、本発明は、後述する請求の範囲の範疇のみにより定義される。
【0034】
本発明の一実施形態に係る電極は、ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)及び前記エアロゲルの表面を覆うアイオノマーを含む3次元ナノ構造体、そして、前記3次元ナノ構造体に分散された触媒を含む電極物質を含む。
【0035】
前記電極は、前記エアロゲルと、前記アイオノマーと、前記触媒との間の有機的結合を通じて、比較的少ない量の触媒物質でも優れた電流密度と電力密度とを得ることができる。
【0036】
具体的に、前記電極は、前記エアロゲルを、ナノ構造を形成するための枠組として用い、前記アイオノマーが前記エアロゲルの表面を覆うことで3次元立体構造を有するようにする。
【0037】
これとともに、前記3次元立体構造を有したアイオノマーに前記触媒が分散されるようにして、前記触媒を均一に分散させることにより、触媒利用率を増加させて、少ない量の触媒でも優れた電流密度及び電力密度を得ることができる。
【0038】
また、前記電極は、前記エアロゲルの気孔を追加的な物質伝達通路として用いることにより、物質伝達効率に優れ、前記エアロゲルの気孔を通じて水分を確保することによって低加湿性能が向上する。
【0039】
前記エアロゲルは、ナノ多孔性構造を有したものであれば、いかなるエアロゲルも利用可能であり、具体的に、シリカエアロゲルを使用でき、特に、シリカエアロゲルを使用する場合、前記電極の低加湿性能をさらに向上させることができる。
【0040】
前記エアロゲルの表面積及び細孔サイズは、本発明において限定されず、商用化(市販)されたエアロゲルであれば、いかなる表面積及び細孔サイズを有しても使用可能である。一例として、前記エアロゲルは、表面積が100〜1000m/gであり、細孔サイズが1〜20nmでありうる。
【0041】
前記エアロゲルは、前記電極の全体に対して1〜8重量%で含まれうる。前記エアロゲルの含量が1重量%未満である場合、その含量が微小であり、添加効果が微小でありうるし、8重量%を超過する場合、前記エアロゲルの含量が高くて、前記触媒を十分に含むことが困難でありうる。
【0042】
前記エアロゲルの表面は、疏水性処理されたものでありうる。前記疏水性処理されたエアロゲルの表面は、疏水性官能基で置換されたものでありうる。前記疏水性官能基は、炭素数1〜5のアルキル基でありうるし、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つでありうる。
【0043】
前記3次元ナノ構造体は、前記エアロゲルを、ナノ構造を形成するための枠組(framework)として用いて形成されたものであり、複数個のエアロゲルが互いに連結されて3次元ナノ構造を形成するのであり、前記アイオノマーは、前記3次元ナノ構造の形状を有するエアロゲルの表面を覆うことで前記3次元ナノ構造体が形成される。
【0044】
このとき、前記エアロゲルの表面が疏水性処理された場合、前記アイオノマー3次元構造体は、前記疏水性官能基を介して前記エアロゲルに結合されうる。
【0045】
図1は、前記電極物質を示す模式図である。前記図1に示すように、前記エアロゲル10の表面は、疏水性官能基であるメチル基(CH)で置換されており、前記アイオノマー20が前記エアロゲル10の表面を3次元形状で覆うことで前記3次元ナノ構造体25を形成する。この際、前記アイオノマー20の疏水性部分は、前記エアロゲル10の疏水性官能基に向かい、前記アイオノマー20の親水性部分は、前記触媒30に向かうように配置される。これにより、前記3次元ナノ構造体25は、前記触媒30との結合率が増加し、前記触媒30が前記3次元ナノ構造体25の形状と結合されることにより、前記触媒30の分散及び触媒利用率が増加するようになる。
【0046】
前記アイオノマーは、プロトンのようなカチオン伝導性基を有するカチオン伝導体であるか、またはヒドロキシイオン、カーボネート、またはバイカーボネートのようなアニオン伝導性基を有するアニオン伝導体でありうる。
【0047】
前記カチオン伝導性基は、スルホン酸基、カルボキシル基(カルボン酸基)、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルフォンアミド基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つでありうるし、一般的にスルホン酸基またはカルボキシル基でありうる。
【0048】
前記カチオン伝導体は、前記カチオン伝導性基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン、またはポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0049】
より具体的に、前記カチオン伝導体が水素イオンカチオン伝導体である場合、前記高分子は、側鎖にスルホン酸基、カルボキシル酸基、リン酸基、ホスホニン酸基、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれるカチオン交換基を含むことができ、その具体的な例としては、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボキシル酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン、またはこれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide、S−PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S−PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone、S−PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene、S−PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
また、前記カチオン伝導体は、側鎖末端のカチオン伝導性基においてHをNa、K、Li、Cs、またはテトラブチルアンモニウム基で置換することができる。前記側鎖末端のカチオン伝導性基においてHをNaで置換する場合には、触媒組成物製造の際、NaOHを、テトラブチルアンモニウム基で置換する場合には、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使用して置換し、K、Li、またはCsも適切な化合物を使用して置換することができる。前記置換方法は、当該分野に広く知られた内容であるから、本明細書において詳細な説明は省略する。
【0051】
前記カチオン伝導体は、単一物または混合物の形態で使用可能であり、かつ、選択的に高分子電解質膜との接着力をより向上させる目的で非伝導性化合物とともに使用されうる。その使用量は、使用目的に適するように調節して使用することが好ましい。
【0052】
前記非伝導性化合物では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロ−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレンのコーポリマー(PVdF−HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びソルビトール(sorbitol)からなる群より選ばれた1種以上のものが使用され得る。
【0053】
前記アニオン伝導体は、ヒドロキシイオン、カーボネート、またはバイカーボネートのようなアニオンを移送させることができるポリマーであって、アニオン伝導体は、ヒドロキシドまたはハライド(一般的に、クロライド)の形態が商業的に入手可能であり、前記アニオン伝導体は、産業的浄水(water purification)、金属分離、または触媒工程等に使用されうる。
【0054】
前記アニオン伝導体では、一般に金属水酸化物がドーピングされたポリマーを使用でき、具体的に、金属水酸化物がドーピングされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)、またはポリ(エチレングリコール)などを使用できる。
【0055】
前記アイオノマーの商業的に商用化された例としては、ナフィオン(登録商標)、アクイビオン(登録商標)などを挙げることができる。
【0056】
前記アイオノマーは、前記電極の全体に対して20〜50重量%で含まれうる。前記アイオノマーの含量が20重量%未満である場合には、生成されたイオンがよく伝達され得ないのであり得、50重量%を超過する場合には、気孔が足りなくて、水素または酸素(空気)の供給が難しく、反応できる活性面積が減るのでありうる。
【0057】
前記触媒は、水素酸化反応、酸素還元反応に触媒として使用され得るものはいずれを使用しても構わず、好ましくは、白金系金属を使用することが良い。
【0058】
前記白金系金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金−M合金(前記Mは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、及びロジウム(Rh)からなる群より選ばれるいずれか1つ以上)及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つを含むことができ、より好ましくは、前記白金系触媒金属の群から選ばれた2種以上の金属を組み合わせたものを使用できるが、これに限定されるものではなく、本技術分野において使用可能な白金系触媒金属であれば、制限無しで使用することができる。
【0059】
また、前記触媒は、金属自体(black)を使用することができ、触媒金属を担体に担持させて使用することもできる。
【0060】
前記担体は、炭素系担体、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、ゼオライトなどから選択されることができる。前記炭素系担体は、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nano tube、CNT)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素、及びこれらの1つ以上の組み合わせから選択されることができるが、これに限定されるものではなく、本技術分野において使用可能な担体は、制限無しで使用することができる。
【0061】
前記触媒金属粒子は、前記担体の表面上に位置することができ、前記担体の内部気孔(pore)を満たしつつ担体内部に浸透することもできる。
【0062】
前記担体に担持された触媒金属粒子を触媒として使用する場合には、商用化された市販品を使用することができ、また、前記担体に前記触媒金属粒子を担持させて製造して使用することもできる。前記担体に貴金属を担持させる工程は、当該分野において広く知られた内容であるから、本明細書において詳細な説明は省略しても、当該分野に従事する人々に容易に理解され得る内容である。
【0063】
前記触媒金属粒子は、前記触媒の全体に対して20〜90重量%で含有されうるのであり、前記触媒金属粒子が20重量%未満で含有される場合には、活性が低下しうるのであり、90重量%を超過する場合には、前記触媒金属粒子の凝集により活性面積が減ることになり、触媒活性が逆に低下しうる。
【0064】
前記触媒は、前記電極の全体に対して42〜79重量%で含まれうる。前記触媒の含量が42重量%未満である場合には、触媒の不足のため、活性が低下しうるのであり、79重量%を超過する場合には、アイオノマーが足りなくてイオン伝導に不利でありうる。
【0065】
本発明の他の一実施形態に係る電極の製造方法は、ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)とアイオノマーとを混合して混合物を製造するステップ、前記混合物に触媒を添加して電極形成用組成物を製造するステップ、そして、前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造するステップを含む。
【0066】
まず、前記ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)とアイオノマーとを混合して混合物を製造する。この際、前記エアロゲルは、複数個が添加されうる。
【0067】
前記ナノ多孔性エアロゲルと前記アイオノマーについての具体的な説明は、前記本発明の一実施形態に係る電極についての説明と同様なので、その具体的な説明は省略する。
【0068】
前記ナノ多孔性エアロゲルと前記アイオノマーとの混合は、溶液中でなされることができ、具体的に、商用化されたアイオノマー溶液に前記ナノ多孔性エアロゲルを添加した後、追加溶媒を添加することによってなされることもできる。
【0069】
前記溶液を製造するための溶媒、前記アイオノマー溶液に含まれている溶媒、または前記追加溶媒として使用され得る溶媒としては、水、親水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの1つ以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を用いることができる。
【0070】
前記親水性溶媒は、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状の飽和または不飽和炭化水素を主鎖として含むアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボキシル酸、エーテル、及びアミドで構成された群より選ばれる1つ以上の官能基を有したものでありうるし、これらは、脂環式または芳香環化合物を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。
【0071】
前記有機溶媒は、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0072】
上記のような混合過程を介して、前記アイオノマーとエアロゲルは、3次元ナノ構造体を形成するようになる。
【0073】
一方、前記エアロゲルの表面は、疏水性処理されたものでありうる。これにより、前記疏水性処理されたエアロゲルの表面は、疏水性官能基で置換されたものでありうる。これについての具体的な説明は、上記本発明の一実施形態に係る電極についての説明と同様なので、その具体的な説明は省略する。
【0074】
次に、前記エアロゲルと前記アイオノマーとの混合物に前記触媒を添加して電極形成用組成物を製造する。このとき、前記触媒は、浸(ひた)し溶液に分散させた後、前記混合物に添加するか、固形分状態で前記混合物に添加することもできる。
【0075】
前記触媒及び前記浸し溶液を製造するための溶媒についての具体的な説明は、上述と同様なので、その具体的な説明は省略する。
【0076】
また、前記製造された電極形成用組成物は、前記触媒を前記混合物に添加した後、超音波分散、攪拌、3本ロールミル、遊星攪拌、高圧分散、及びこれらの混合法の中から選ばれるいずれか1つの分散法によって製造されうる。前記分散法によって前記3次元立体構造を有したアイオノマーの表面に前記触媒が分散される。
【0077】
次に、前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造する。
【0078】
前記電極形成用組成物をコーティングするときは、前記触媒が分散された電極形成用組成物を連続的または間歇的にコータ(coater)に移送させた後、基材上に10〜200μmの乾燥厚さで均一に塗布することが好ましい。
【0079】
さらに詳細には、前記電極形成用組成物の粘性によってポンプを介して連続的にダイ(die)、グラビア(gravure)、バー(bar)、コンマコータ(comma coater)などのコータに移送した後、スロットダイコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシなどの方法を使用して、基材上に、電極層の乾燥厚さが10〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmとなるように均一に塗布し、一定の温度に維持された乾燥炉を通過させ、溶媒を揮発させる。
【0080】
前記電極形成用組成物を1μm未満の厚さでコーティングする場合、反応面積が小さくて、活性が落ちうるのであり、200μmを超過する厚さでコーティングする場合には、イオン及び電子の移動度が増加して抵抗が増加しうる。
【0081】
前記乾燥工程は、25〜90℃で6時間以上乾燥させるものでありうる。前記乾燥温度が25℃未満であり、乾燥時間が6時間未満である場合には、十分に乾燥された電極を形成できないという問題が発生しうるのであり、90℃を超過する温度で乾燥させれば、電極の亀裂などが発生しうる。
【0082】
一方、前記電極の製造方法は、前記電極を製造するステップの後に、前記電極を高分子電解質膜に転写するステップをさらに含むことができる。
【0083】
このためには、前記電極形成用組成物を離型フィルム上にコーティングして電極を製造した後、前記電極を高分子電解質膜に転写する必要がある。この際、前記電極形成用組成物を前記離型フィルム上にコーティングする方法は、前記電極形成用組成物のコーティング方法において、前記基材に代えて前記離型フィルムを用いることを除いては同様である。
【0084】
前記離型フィルム上に前記電極形成用組成物をコーティングして前記電極を製造した後には、前記乾燥された電極及び離型フィルムを必要なサイズにカットして、前記高分子電解質膜に転写するステップを行うことができる。
【0085】
前記高分子電解質膜は、イオン伝導体を含む固体ポリマー電解質であって、前記高分子電解質膜は、前記イオン伝導体がシートまたはフィルムとして形成された単一膜の形態であるか、前記イオン伝導体が多孔性支持体の内部に充填された強化膜の形態でありうる。
【0086】
前記イオン伝導体は、プロトンのようなカチオン伝導性基を有するカチオン伝導体であるか、或いはヒドロキシイオン、カーボネートまたはバイカーボネートといったアニオン伝導性基を有するアニオン伝導体でありうる。これにより、前記高分子電解質膜は、カチオン交換膜(Cation Exchange Membrane)またはアニオン交換膜(Anion Exchange Membrane)でありうる。
【0087】
前記カチオン伝導性基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つでありうるし、一般的に、スルホン酸基またはカルボキシル基でありうる。
【0088】
前記カチオン伝導体は、前記カチオン伝導性基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン、またはポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0089】
より具体的に、前記カチオン伝導体が水素イオンカチオン伝導体である場合、前記高分子等は、側鎖にスルホン酸基、カルボキシル酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれるカチオン交換基を含むことができ、その具体的な例としては、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボキシル酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン、またはこれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide、S−PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S−PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone、S−PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene、S−PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
前記アニオン伝導体は、ヒドロキシイオン、カーボネート、またはバイカーボネートといったアニオンを移送させることができるポリマーであって、アニオン伝導体は、ヒドロキシドまたはハライド(一般的に、クロライド)の形態が商業的に入手可能であり、前記アニオン伝導体は、産業的浄水(water purification)、金属分離、または触媒工程などに使用され得る。
【0091】
前記アニオン伝導体では、一般に金属水酸化物がドーピングされたポリマーを使用でき、具体的に、金属水酸化物がドーピングされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)、またはポリ(エチレングリコール)などを使用できる。
【0092】
前記電極と電解質膜を接合する転写ステップは、金属プレス単独で、または、金属プレスにシリコンゴム材などといったゴム材の軟質板を重ね合わせて、熱と圧力を加えて行われうる。
【0093】
前記転写工程は、100〜150℃、1〜10MPaでなされうる。100℃、1MPa未満の条件でホットプレッシングする場合、離型フィルム上の電極層の転写が正しくなされないことがあり、150℃を超過する場合には、電解質膜の高分子が焼けながら電極層の構造変性が起こる恐れがあり、10MPaを超過する条件でホットプレッシングする場合、電極の転写よりも電極層を圧着する効果がより大きくなって、転写が正しくなされないことがある。
【0094】
前記転写ステップの後に、離型フィルムを除去して膜−電極接合体を製造できる。
【0095】
前記膜−電極接合体は、互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、及び、前記アノード電極と前記カソード電極との間に位置する高分子電解質膜を含み、前記アノード電極及び前記カソード電極のうちの少なくとも1つは、前述した電極が使用される。
【0096】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記電極を含む燃料電池を提供する。
【実施例】
【0097】
以下では、本発明の具体的な実施形態を提示する。ただし、下記に記載された実施形態等は、本発明を具体的に例示したり説明したりするためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、当該技術分野で熟練された者であれば、十分技術的に類推できるものであって、その説明を省略する。
【0098】
[製造例1:電極形成用組成物の製造]
(実施例)
シリカエアロゲル0.2gと20%アイオノマー溶液(Dupont、D2021)6.5gと追加溶媒9gを混合して溶液1を製造した。市販触媒Pt/C(Tanaka)3gを浸し溶液15gに浸漬させて分散し、溶液2を製造した。混合されたエアロゲル−アイオノマー溶液1に市販触媒の溶液2を投与して、攪拌及び超音波分散法にて均一に混合し、エアロゲル−アイオノマー−触媒混合電極形成用組成物を製造した。
【0099】
(比較例)
市販触媒Pt/C(Tanaka)3gを浸し溶液15gに浸漬させた。浸漬された混合触媒に20%アイオノマー溶液6.5gと追加溶媒9gを添加して電極形成用組成物を製造した。
【0100】
[製造例2−1:膜−電極接合体の製造]
上記実施例及び比較例において製造された電極形成用組成物を、ポリイミド離型フィルムに、コーティング速度10mm/s、コーティング厚さ100μmの条件でバーコーティングした後、60℃で3時間の間乾燥させて電極を製造した。
【0101】
前記乾燥された電極を必要なサイズに切り、高分子電解質膜(Dupont、Nafion 212 Membrane)の両面に、電極面と電解質膜とが互いに接するように整列させた後、100℃、10MPaの熱及び圧力の条件で5分間圧着した後、1分間常温で維持する方法にてホットプレッシングして転写し、離型フィルムを剥離して膜−電極接合体を製造した。
【0102】
前記膜−電極接合体を1つ以上含むスタックを含む燃料電池を製造した。
【0103】
[製造例2−2:触媒含量を減らした膜−電極接合体の製造]
上記実施例において製造された電極形成用組成物をポリイミド離型フィルムにコーティング速度10mm/s、コーティング厚さ50μmの条件でバーコーティングした後、60℃、3時間の間乾燥させて電極を製造した。
【0104】
前記乾燥された電極を上記製造例2−1と同様の方法にて膜−電極接合体を製造した。
【0105】
[実験例1:膜−電極接合体の加湿性能評価]
上記製造例2−1において上記実施例の電極形成用組成物を用いて製造された膜−電極接合体に対して、相対湿度がそれぞれRH100及びRH50である条件で、電極の電圧電流密度の出力特性を評価し、その結果を図2に示した。
【0106】
図2に示すように、前記膜−電極接合体は、相対湿度が変化するにもかかわらず、電圧電流密度が似ているので、低加湿特性に優れていることが確認できる。
【0107】
[実験例2:膜−電極接合体の性能評価]
上記製造例2−1において上記比較例の電極形成用組成物を用いて製造された膜−電極接合体(比較例、触媒含量0.30mg)と、上記製造例2−2において上記実施例の電極形成用組成物を用いて製造された膜−電極接合体(実施例、触媒含量0.15mg)に対して、電極から出力される電圧と電流とを測定し、電圧−電流密度の出力特性(放電性能)を比較評価して、その結果を図3に示した。
【0108】
前記図3に示すように、上記製造例2−2において上記実施例の電極形成用組成物を用いて製造された電極は、上記製造例2−1において前記比較例の電極形成用組成物を用いて製造された電極に比べて少ない量の触媒を含むにもかかわらず、電流密度による電圧性能が似ていることが確認できる。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、上記した実施形態は、本発明の特定の一例として提示されるものであって、これにより本発明が制限されず、本発明の権利範囲は、後述する請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明に係る高分子電解質燃料電池用ナノ構造電極は、ナノ多孔性エアロゲル(aerogel)及び前記エアロゲルの表面を覆うアイオノマーを含む3次元ナノ構造体、そして、前記3次元ナノ構造体に分散された触媒を含むことで、アイオノマーのナノ構造化と均一な触媒分散、及び触媒利用率の増加により触媒性能が向上し、比較的少ない量の触媒でも優れた電流密度と電力密度とを得ることができ、触媒使用量の減少によって価格低減効果も得ることができ、物質伝達効率及び低加湿性能に優れたエネルギー/環境/電気電子分野の有望な素材である。
図1
図2
図3