(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672487
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】測量用マーカ、及び測量システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20200316BHJP
G01C 11/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C11/04
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-565539(P2018-565539)
(86)(22)【出願日】2018年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2018002849
(87)【国際公開番号】WO2018143151
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-15104(P2017-15104)
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】永元 直樹
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】池原 基博
(72)【発明者】
【氏名】内山 英昭
【審査官】
池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−218021(JP,A)
【文献】
特開2016−121450(JP,A)
【文献】
特開2014−102246(JP,A)
【文献】
特開2003−214851(JP,A)
【文献】
特開平10−206159(JP,A)
【文献】
特開2003−269960(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0093882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00−11/30
G01C 1/00− 1/14
5/00−15/14
G06T 1/00− 1/40
3/00− 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量するために測量対象物に取り付けられて撮影手段で撮影される測量用マーカにおいて、
測量用のターゲットを表示する領域であるターゲット表示領域と、
少なくとも自身のID情報をコード画像として表示する領域であるコード画像表示領域と、
を備え、
前記ターゲット表示領域は、交差するように略十字状又は略X字状に配置された2つの帯状表示領域により形成され、
前記ターゲット表示領域には、複数の色分け模様及び/又は濃淡模様が表示され、それら模様が示す複数の角部が示す一点により前記ターゲットが表示されていることを特徴とする測量用マーカ。
【請求項2】
前記コード画像表示領域は、前記ターゲット表示領域を基準とした所定の位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の測量用マーカ。
【請求項4】
前記コード画像表示領域は、前記2つの帯状表示領域に挟まれる位置にそれぞれ配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の測量用マーカ。
【請求項5】
前記ターゲット表示領域の上方、下方、左方及び右方のうちの少なくとも一方に配置されて前記測量用マーカを前記測量対象物に取り付ける際に該測量用マーカの上下左右を識別できるようにする識別用マーク、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測量用マーカ。
【請求項6】
自身の中心を指し示すと共に前記ターゲット表示領域を挟むように表示された補助線、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の測量用マーカ。
【請求項7】
前記コード画像表示領域は、色分け模様及び/又は濃淡模様により少なくとも自身のID情報を表示する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の測量用マーカ。
【請求項8】
測量対象物に取り付けられてなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の測量用マーカと、
該測量用マーカに表示されてなる前記ターゲット表示領域と前記コード画像表示領域とを撮影する撮影手段と、
該撮影手段が撮影した画像に基づいて前記ターゲットの位置を算出するターゲット位置算出手段と、
前記撮影手段が撮影した画像に基づいて前記測量用マーカのIDを取得するID取得手段と、
該ターゲット位置算出手段が算出した前記ターゲットの位置を前記ID取得手段が取得したIDに関連付けたデータとして保存するターゲット位置保存手段と、
を備えたことを特徴とする測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量するために測量対象物に取り付けられる測量用マーカ、及び該測量用マーカを備えた測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測量するために測量対象物に取り付けられる測量用マーカや、該測量用マーカを使った測量システムについては種々の構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3(a)は、測量用マーカの従来例の一例を示す平面図であり、同図(b)は、該測量用マーカを使用した測量システムの構成の一例を示すブロック図である。この測量システムにおいては、測量対象物102に複数の測量用マーカ101を取り付け、該複数の測量用マーカ101をカメラ103で撮影して測量(例えば、各測量用マーカ101に表示されるターゲットの3次元位置の測定)を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5051493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した複数の測量用マーカ101は同じ模様で同じ形状のために測量用マーカどうしを区別することができず、測量ができない場合があった。例えば、2台のカメラで二方向から撮影するような場合は、一方のカメラで撮影した複数の測量用マーカ101と他方のカメラで撮影した複数の測量用マーカ101とを対応させることができず、測量ができないおそれがあった。また、1台のカメラで複数の測量用マーカ101を連続撮影するような場合でも、該測量用マーカ101が何らかの理由で画面から外れてしまった場合には、該外れる前に映っていた測量用マーカ101と該外れた後に映っている測量用マーカ101とを対応付けることが困難となり測量ができない場合があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる測量用マーカ及び測量システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、
図1に例示するものであって、測量するために測量対象物(2)に取り付けられて撮影手段(3)で撮影される測量用マーカ(1)において、
測量用のターゲット(10a)を表示する領域であるターゲット表示領域(10)と、
少なくとも自身のID情報をコード画像として表示する領域であるコード画像表示領域(11,12,13,14)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、前記コード画像表示領域(11,12,13,14)が、前記ターゲット表示領域(10)を基準とした所定の位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、前記ターゲット表示領域(10)が、交差するように配置された複数の帯状表示領域(10b,10c)により形成され、
前記コード画像表示領域(11,12,13,14)は、互いに隣接する一対の前記帯状表示領域(10b,10c)に挟まれる位置に配置されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、前記ターゲット表示領域(10)が、交差するように略十字状又は略X字状に配置された2つの帯状表示領域(10b,10c)により形成され、
前記コード画像表示領域(11,12,13,14)は、それらの帯状表示領域(10b,10c)に挟まれる位置にそれぞれ配置されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、前記ターゲット表示領域(10)の上方、下方、左方及び右方のうちの少なくとも一方に配置されて前記測量用マーカ(1)を前記測量対象物(2)に取り付ける際に該測量用マーカ(1)の上下左右を識別できるようにする識別用マーク(4)、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、自身の中心を指し示すと共に前記ターゲット表示領域(10)を挟むように表示された補助線(5a,5b,5c,5d)、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、前記ターゲット表示領域(10)が、色分け模様及び/又は濃淡模様により前記ターゲット(10a)を表示し、
前記コード画像表示領域(11,12,13,14)は、色分け模様及び/又は濃淡模様により少なくとも自身のID情報を表示する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、
図2に例示するものであって、測量対象物(2)に取り付けられてなる上述した測量用マーカ(1)と、
該測量用マーカ(1)に表示されてなる前記ターゲット表示領域(10)と前記コード画像表示領域(11,12,13,14)とを撮影する撮影手段(3)と、
該撮影手段(3)が撮影した画像に基づいて前記ターゲット(10a)の位置を算出するターゲット位置算出手段(60)と、
前記撮影手段(3)が撮影した画像に基づいて前記測量用マーカ(1)のIDを取得するID取得手段(61)と、
該ターゲット位置算出手段(60)が算出した前記ターゲット(10a)の位置を前記ID取得手段(61)が取得したIDに関連付けたデータとして保存するターゲット位置保存手段(62)と、を備えた測量システム(6)に関する。
【0015】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
上記した第1、7及び8の観点によれば、各測量用マーカはID情報を担持しているため、他の測量用マーカと区別することができ、測量用マーカの混同により測量ができないというような事態を回避することができ、測量を正確に行うことができる。
【0017】
上記した第2乃至4の観点によれば、前記コード画像表示領域の表示位置を正確に特定でき、該コード画像表示領域が担持するデータを短時間で読み取ることができる。
【0018】
上記した第5の観点によれば、作業者は、上下左右が正しくなるように前記測量用マーカを前記測量対象物に取り付けることができる。その結果、測量のための装置(具体的には、前記撮影手段が撮影した画像を解析する装置や、後述するID取得手段などの装置)は前記コード画像表示領域の表示位置を高速で正確に特定でき、該コード画像表示領域が担持するデータを高速で読み取ることができる。
【0019】
上記した第6の観点によれば、前記測量用マーカ自身の水平や垂直やマーカの中心を作業者が容易に知ることができ、作業者は該測量用マーカを測量対象物に適切な状態(つまり、適切な位置や姿勢)に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に係る測量用マーカの構成の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る測量システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、測量用マーカの従来例の一例を示す平面図であり、同図(b)は、該測量用マーカを使用した測量システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1及び
図2に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
本発明に係る測量用マーカは、
図1に符号1で例示するように、
・ 測量用のターゲット10aを表示する領域であるターゲット表示領域10と、
・ 少なくとも自身のID情報(つまり、その測量用マーカ1を他の測量用マーカ1から識別できるマーカ識別情報)をコード画像として表示する領域であるコード画像表示領域11,12,13,14と、
を備えている。この測量用マーカ1は、何らかの測量対象物2に取り付けて使用するものであって、前記ターゲット10aを撮影手段(動画や静止画を撮影するカメラ)3で撮影して該ターゲット10aの位置(2次元位置や3次元位置)を算出することによって該測量対象物2の位置などを特定するためのものである。
【0023】
この測量用マーカ1はシート状(つまり、可撓性を有する薄板状)であることが好ましいが、もちろんこれに限られるものではなく、シート状以外の形状を排除するものではない。また、この測量用マーカ1を前記測量対象物2に取り付ける方法としては、接着剤などを用いた貼着が好ましいが、貼着以外の他の公知の方法を用いても良い。
【0024】
なお、
図1に示す例では、前記ターゲット10aの表示は濃淡模様により行っているが(つまり、黒などの色の濃い部分の複数の角部が一点を指し示すように配置されることにより、その一点でターゲット10aを特定しているが)、もちろんこれに限られるものではなく、
・ 色分け模様によって行うようにしても、
・ 濃淡模様と色分け模様の両方によって行うようにしても、或いは、
・ 材質の違い(例えば、反射率の高い部材と反射率の低い部材との配置状態)によって行うようにしても良い。
【0025】
また、
図1に示す例では、前記コード画像の表示は濃淡模様(つまり、バーコードやQRコード(登録商標)のように色の濃い部分と色の薄い部分とによって形成された模様)により行っているが、もちろんこれに限られるものではなく、
・ 色分け模様によって行うようにしても、
・ 濃淡模様と色分け模様の両方によって行うようにしても、或いは、
・ 材質の違い(例えば、反射率の高い部材と反射率の低い部材との配置状態)によって行うようにしても良い。また、前記コード画像は、測量用マーカ自身のID情報だけでなく、その他の情報(例えば、該測量用マーカが取り付けられる測量対象物2の形状や寸法等についての情報)を担持するようにしても良い。さらに、
図1に示す例では、コード画像表示領域11,12,13,14自体やその内部の模様は矩形状(つまり、長方形状や正方形状)をしているが、もちろんこれに限られるものではなく、矩形以外の形状(例えば、円形)をしていても良い。
【0026】
本発明によれば、各測量用マーカ1はID情報を担持しているため、他の測量用マーカ1と区別することができ、測量用マーカの混同により測量ができないというような事態を回避することができ、測量を正確に行うことができる。
【0027】
ところで、上述したコード画像表示領域11,12,13,14は、前記ターゲット表示領域10を基準とした所定の位置に配置しておくと良い。つまり、該コード画像表示領域は、前記ターゲット表示領域を基準とした位置であって該ターゲット表示領域を基準とすることによって明確に認識できる位置であればどこの位置に配置しても良い。そのようにした場合には、前記ターゲット表示領域を基準とすることによって前記コード画像表示領域の表示位置を正確に特定でき、該コード画像表示領域が担持するデータを短時間で読み取ることができる。ここで、
図1に例示するように、前記ターゲット表示領域10を、交差するように配置された複数の帯状表示領域10b,10cにより形成しておき、前記コード画像表示領域11,12,13,14は、互いに隣接する一対の前記帯状表示領域10b,10cに挟まれる位置に配置しておいても良い。なお、
図1に示す例では、前記コード画像表示領域11,12,13,14は、交差するように配置された2つの帯状表示領域10b,10cによって略十字状に形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、略X字状に形成されても、或いはその他の形状(つまり、3つ以上の帯状表示領域が交差するような形状)に形成されていても良い。また、
図1に示す例では、前記コード画像表示領域11,12,13,14は、前記帯状表示領域10b,10cに挟まれる位置の全て(つまり、4つの部分)にそれぞれ形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、少なくとも1つの部分に形成されていれば良い。
【0028】
一方、前記測量用マーカ1を前記測量対象物2に取り付ける作業者が、前記ターゲット表示領域10や前記コード画像表示領域11,12,13,14と明確に区別できるマーク(以下、“識別用マーク”とする)4を、前記ターゲット表示領域10の上方、下方、左方及び右方のうちの少なくとも一方に配置しておくと良い。そのような識別用マーク4を設けた場合には、その作業者は、上下左右が正しくなるように前記測量用マーカ1を前記測量対象物2に取り付けることができる。その結果、測量のための装置(具体的には、前記撮影手段3が撮影した画像を解析する装置や、後述するID取得手段61などの装置)は前記コード画像表示領域11,12,13,14の表示位置を高速で正確に特定でき、該コード画像表示領域11,12,13,14が担持するデータを高速で読み取ることができる。なお、
図1に示す例では、前記識別用マーク4は色の濃淡の違いによって作業者が識別できるようになっているが、もちろんこれに限られるものではなく、色彩やマーク自体の形状等によって識別できるようにしても良い。
【0029】
一方、前記測量用マーカ自身の中心(好ましくは、上述したターゲット10aの位置)を指し示すと共に前記ターゲット表示領域10を挟むように表示された補助線(水平線や垂直線)5a,5b,5c,5dを設けておくと良い。そのようにした場合には、前記測量用マーカ自身の水平や垂直やマーカの中心を作業者が容易に知ることができ、作業者は該測量用マーカ1を測量対象物2に適切な状態(つまり、適切な位置や姿勢)に取り付けることができる。
【0030】
本発明に係る測量システムは、
図2に符号6で例示するものであって、
・ 測量対象物2に取り付けられてなる上述した測量用マーカ1と、
・ 該測量用マーカ1に表示されてなる前記ターゲット表示領域10と前記コード画像表示領域11,12,13,14とを撮影する撮影手段3と、
・ 該撮影手段3が撮影した画像に基づいて前記ターゲット10aの位置を算出するターゲット位置算出手段60と、
・ 前記撮影手段3が撮影した画像に基づいて前記測量用マーカ1のIDを取得するID取得手段61と、
・ 該ターゲット位置算出手段60が算出した前記ターゲット10aの位置を前記ID取得手段61が取得したIDに関連付けたデータとして保存するターゲット位置保存手段62と、
を備えている。
【0031】
本発明によれば、各測量用マーカ1はID情報を担持しているため、他の測量用マーカ1と区別することができ、測量用マーカの混同により測量ができないというような事態を回避することができ、測量を正確に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る測量用マーカや測量システムは、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)や三角測量や写真測量などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 測量用マーカ
2 測量対象物
3 撮影手段
4 識別用マーク
5a,5b,5c,5d 補助線
6 測量システム
10 ターゲット表示領域
10a ターゲット
10b,10c 帯状表示領域
11,12,13,14 コード画像表示領域
60 ターゲット位置算出手段
61 ID取得手段
62 ターゲット位置保存手段