(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すレンズ駆動装置1は、携帯用電話機や携帯用情報端末装置などに撮像素子と共に搭載される。レンズ駆動装置1のレンズホルダ30には、図示省略しているが前記撮像素子に対向するレンズ体(レンズバレル)が搭載可能である。レンズホルダ30がレンズ体の光軸に沿って駆動されて自動焦点調整が行われ、またレンズホルダ30が光軸と交差する方向へ駆動されて手振れ補正が行われる。
【0011】
各図では、Z1方向がレンズ駆動装置1の上方であり、Z2方向がレンズ駆動装置1の下方である。Z1方向は、撮像素子で撮影すべき対象物が存在する前方であり、Z2方向は撮像素子が存在する後方である。また、X1―X2方向が第1の方向で、Y1−Y2方向が第2の方向である。第1の方向と第2の方向は互いに直交しており、第1の方向と第2の方向はZ1−Z2方向とも直交している。
【0012】
図1にはレンズ駆動装置1の全体構造が示されており、
図2にはカバー4を外した状態のレンズ駆動装置1が示されている。
図2に示すよう、レンズ駆動装置1は、カバー4とカバー4の内部に配置された本体部2を含む。
図3は本体部2を構成する各部材を示す本体部2の分解斜視図である。
図4は、
図3に示す第1の板ばね40の4つの角部62のうちの1つを示す拡大平面図である。
図5は、
図4に示す角部62にサスペンションワイヤ8が連結された状態を示す拡大斜視図である。
【0013】
図1ないし
図3には、レンズ駆動装置1の中心線Oが示されている。レンズ駆動装置1のレンズホルダ30にレンズ体が搭載されると、前記中心線Oはレンズ体(レンズ)の光軸と一致する。以下では、中心線Oを「光軸O」と呼ぶことがある。
【0014】
図3に示すように、レンズ駆動装置1の本体部2は基台構造部10を有している。基台構造部10には合成樹脂製の基台11が設けられており、この基台11に、複数に分割された金属板製の金属ベース13が埋設されている。金属ベース13と基台11はいわゆるインサート成形法で一体化されている。4本のサスペンションワイヤ8はそれぞれの基端部(下端部)8aが半田付けなどで金属ベース13に固定され光軸Oに沿って起立しており、サスペンションワイヤ8の先端部(上端部)8bによって可動ユニット20がZ軸(光軸O)と交差する方向(直交する方向)へ動作自在に支持されている。可動ユニット20は、レンズホルダ30と、軸駆動コイル(フォーカスコイル)32と、可動支持部材(可動ベース)21と、磁石28x,28yと、押え部材47と、第1の板ばね40及び第2の板ばね50とを有している。
【0015】
サスペンションワイヤ8は、例えば銅合金等の導電性を有し且つ弾性に優れた金属材料で形成されている。4本のサスペンションワイヤ8で、可動ユニット20を、光軸Oと交差する方向である第1の方向(X1−X2方向)と第2の方向(Y1−Y2方向)へ移動自在に支持する弾性支持部材が構成されている。
【0016】
図3に示すように、可動ユニット20は可動支持部材21を有している。可動支持部材21は合成樹脂材料で形成されている。
図2と
図3に示すように、可動支持部材21は、平面視が矩形状(ほぼ正方形状)の枠部22と、枠部22の4つの角部から光軸に沿った下方向(Z2方向)に延び出る4つの脚部23とを有する。枠部22と脚部23は一体に形成されている。枠部22の下側には、それぞれ隣り合う脚部23と脚部23との間に4箇所の磁石保持凹部が形成されており、第1の方向(X1−X2方向)に対向する磁石保持凹部に磁石28x,28xが保持されて固定され、第2の方向(Y1−Y2方向)に対向する磁石保持凹部に磁石28y,28yが保持されて固定されている。
【0017】
それぞれの磁石28x,28x,28y,28yは、可動支持部材21の内方に向く内側対向部と外側に向く外面部とが互いに逆の磁極となるように着磁されている。例えば内側対向部がN極で、外面部がS極である。
【0018】
可動ユニット20では、可動支持部材21の内側にレンズホルダ30が設けられている。レンズホルダ30は、合成樹脂製であり、中央部に上下方向に(Z軸に沿って)貫通する円形の保持穴31が開口して、筒状に形成されている。撮像用のレンズは鏡筒に保持され、レンズを保持した鏡筒(レンズ体)が保持穴31に装着可能となっている。そのため、レンズホルダ30の保持穴31には、レンズ体を取り付けるためのネジ溝が設けられている。レンズ体のレンズホルダ30への保持(固定)形態は、ネジ止めに限られず、接着固定でも構わない。なお、実施の形態ではレンズと鏡筒の図示を省略している。
【0019】
レンズホルダ30の中心軸はこれに保持されるレンズの光軸と一致しており、且つ前記中心線Oに一致している。
【0020】
図2と
図3に示すように、可動支持部材21の上側に第1の板ばね40が固定され、可動支持部材21の脚部23の下側に第2の板ばね50が固定されており、第1の板ばね40と第2の板ばね50によって、レンズホルダ30が可動支持部材21の内部において、中心線Oに沿って(光軸Oに沿って)移動できるように支持されている。
【0021】
図3に示すように、第1の板ばね40は、互いに独立している2つの分割ばね部41,41で構成されている。それぞれの分割ばね部41は、銅合金板やリン青銅板などの導電性のばね性金属板で形成されている。それぞれの分割ばね部41は、ばね本体60とばね本体60に連設する2つの角部62から成る。ばね本体60と2つの角部62とは一体に形成されている。ばね本体60は、外側固定部42、内側固定部43、及び外側固定部42と内側固定部43を連結するばね変形部44を有している。外側固定部42には固定穴42aが開口し、内側固定部43には固定穴43aが開口している。
【0022】
図4に示すように、第1の板ばね40の4つの角部62のそれぞれは、対応するサスペンションワイヤ8を固定するワイヤ固定部63と、それぞれがばね本体60から対応するサスペンションワイヤ8に交差する方向に延出してワイヤ固定部63に連結する2つの梁部64,64(第1の梁部、第2の梁部)により構成されている。ワイヤ固定部63は、先端部63aと、先端部63aからばね本体60側に突出する熱伝達部63bとを有する。先端部63aには、ワイヤ連結穴65が形成されている。
図2に示すように、第1の板ばね40の4つの角部62は、四角形の可動支持部材21のそれぞれの角部から突出している。
【0023】
図5に示すように、基台構造部10と可動ユニット20とを組み立てるときは、それぞれのサスペンションワイヤ8の先端部8bが、ワイヤ固定部63のワイヤ連結穴65に挿入される。このとき、サスペンションワイヤ8の先端部8bとワイヤ固定部63の先端部63aとの間にペースト半田(クリーム半田)を塗布し、ワイヤ固定部63の熱伝達部63bにレーザを照射してワイヤ固定部63を加熱する。これにより、熱伝達部63bから先端部63aに熱が伝達して半田が溶融し、サスペンションワイヤ8の先端部8bとワイヤ固定部63とが半田付けされて固定される。
【0024】
図3に示すように、可動支持部材21の枠部22の上面に、固定突起22aが一体に形成されている。可動ユニット20の最上部に押え部材47が設けられている。押え部材47は四角形(矩形状)の枠状であり、それぞれの角部は固定穴48が2箇所ずつ開口している。
【0025】
第1の板ばね40の分割ばね部41に形成された外側固定部42は、可動支持部材21の枠部22の上面に設置され、外側固定部42の上に押え部材47が設置される。可動支持部材21の枠部22の上面から突出する固定突起22aが、分割ばね部41の外側固定部42に形成された固定穴42aに挿入され、さらに押え部材47の固定穴48に挿入される。固定突起22aの先部が固定穴48内で冷間かしめ加工または熱かしめ加工、あるいは接着処理により押え部材47に固定される。その結果、分割ばね部41の外側固定部42が、可動支持部材21と押え部材47とで挟まれて固定される。
【0026】
図3に示すように、レンズホルダ30の上部には固定突起36が一体に形成されている。分割ばね部41に設けられた内側固定部43はレンズホルダ30の上面に設置され、固定突起36が固定穴43aに挿入され、冷間かしめ加工または熱かしめ加工で内側固定部43に固定される。すなわち、レンズホルダ30の上部において、第1の板ばね40(分割ばね部41,41)は、レンズホルダ30と可動支持部材21とを連結するように設けられる。これにより、レンズホルダ30の上部が、第1の板ばね40を介して可動支持部材21に支持される。
【0027】
図2を参照すれば、分割ばね部41の外側固定部42が可動支持部材21の枠部22の上面に固定されると、分割ばね部41のワイヤ連結部(ワイヤ固定部63)が、可動支持部材21と押え部材47の4箇所の角部から外側へ突出する。基端部8aが基台11に固定されたサスペンションワイヤ8の先端部8bは、ワイヤ連結部(ワイヤ固定部63)に形成されたワイヤ連結穴65に挿通され、分割ばね部41と半田付けで固定される。これにより、可動支持部材21と押え部材47およびレンズホルダ30を含む可動ユニット20が、基台11上で中心線(光軸)Oと交差する方向へ移動自在になる。
【0028】
図3に示すように、第2の板ばね50はばね性を有する金属板で一体に形成され、外側固定部51、内側固定部52、および前記外側固定部51と前記内側固定部52とを連結するばね変形部53を有する。外側固定部51と内側固定部52とばね変形部53は一体に形成されている。外側固定部51には外側固定穴51aが形成されており、前記可動支持部材21の4箇所の脚部23のZ2方向に向く下端面に設けられた突部(図示せず)に外側固定穴51aが挿通され、前記突部が、かしめ加工されて、外側固定部51が脚部23の下端面に固定されている。内側固定部52は、レンズホルダ30の下面に接着剤などで固定されている。すなわち、第2の板ばね50は、レンズホルダ30の下部と可動支持部材21の下部とを連結するように設けられる。
【0029】
レンズホルダ30は、第1の板ばね40と第2の板ばね50とで上下が支持されて、前記可動支持部材21の内部で中心線O(レンズの光軸)に沿って上下に移動可能となっている。
【0030】
図3に示すように、レンズホルダ30の外周には、筒状のレンズホルダ30を囲むように軸駆動コイル32が巻かれている。軸駆動コイル32は、導線が中心線Oの周囲を周回する方向に巻かれており、軸駆動コイル32に与えられる制御電流は中心線Oと交差する向きに流れる。
【0031】
軸駆動コイル32を形成している導線の一方の端部は、第1の板ばね40の一方の分割ばね部41に半田付けで接続され、導線の他方の端部は、他方の分割ばね部41に半田付けで接続されている。そして、サスペンションワイヤ8から分割ばね部41を経て、軸駆動コイル32に制御電流が与えられる。
【0032】
軸駆動コイル32は、平面形状が八角形状である。軸駆動コイル32は、それぞれの磁石28x,28xに内側から隙間をあけて対向している。同様に、軸駆動コイル32は磁石28y,28yに内側から隙間をあけて対向している。
【0033】
本実施の形態では、軸駆動コイル32と磁石28x,28xおよび磁石28y,28yとで、レンズホルダ30を光軸方向へ移動させる軸方向駆動機構が構成されている。
【0034】
図3に示すように、基台構造部10は、基台11の上に固定された絶縁基板12を有する。絶縁基板12の上面の4箇所に軸交差駆動コイル29が設けられている。軸交差駆動コイル29は絶縁基板12の表面において銅箔などの薄膜で形成されている。それぞれの軸交差駆動コイル29は平面に沿って細長い渦巻パターンとなるように形成されており、中心線Oから離れる位置にある外側電磁作用部29aと、中心線Oに近い位置にある内側電磁作用部29bとを有している。
【0035】
基台11に固定されたサスペンションワイヤ8で可動ユニット20が支持されると、
図2に示すように、可動支持部材21に固定された4個の磁石28x,28x,28y,28yのそれぞれの下端面が、軸交差駆動コイル29の外側電磁作用部29aの上に隙間を有して対向する。軸交差駆動コイル29と磁石28x,28yとで、可動ユニット20を中心線Oと交差する向きに移動させる軸交差駆動機構(磁気駆動機構)が構成されている。すなわち、軸交差駆動機構は、可動支持部材21を光軸Oと交差する方向へ移動させる駆動機構である。軸交差駆動機構は手振れ補正機構である。
【0036】
図示省略されているが、絶縁基板12には位置検知素子が設けられている。位置検知素子はホール素子または磁気抵抗効果素子である。位置検知素子は、絶縁基板12の下面に少なくとも2個実装されており、一方が絶縁基板12を挟んで磁石28xの一方の下端面に対応する位置にあり、他方が絶縁基板12を挟んで磁石28yの一方の下端面に対応する位置にある。
【0037】
図1と
図2に示すように、レンズ駆動装置1には、本体部2を覆うカバー4が設けられている。カバー4は非磁性のステンレス鋼板などで形成されている。カバー4は立方体形状であり、4つの側板4aと上方(Z1方向に)に位置する天井板4bとが一体に形成されている。天井板4bには、光を透過させるためのほぼ円形の窓4cが開口している。それぞれの側板4aの下縁部は、本体部2の基台構造部10を構成している基台11の上面に突き当てられ、基台11とカバー4とが接着剤などで固定されている。
【0038】
次に、前記構造のレンズ駆動装置1の動作を説明する。レンズ駆動装置1では、それぞれのサスペンションワイヤ8から第1の板ばね40のそれぞれの分割ばね部41を通り軸駆動コイル32の導線の両端部に至る個別の通電路が形成されており、前記通電路を経て軸駆動コイル32に制御電流が与えられる。
【0039】
軸方向駆動機構を構成する軸駆動コイル32に制御電流が与えられると、軸駆動コイル32に流れる電流と、磁石28x,28x,28y,28yから発せられる磁界とで、可動支持部材21の内部においてレンズホルダ30が中心線Oに沿って移動させられる。基台構造部10の後方(Z2方向)に撮像素子が設けられており、レンズホルダ30の中心線Oに沿う動きにより、撮像素子に対する焦点合わせが行われる。
【0040】
次に、軸交差駆動機構では、絶縁基板12の表面に形成された軸交差駆動コイル29に制御電流が与えられる。このとき、主に軸交差駆動コイル29の外側電磁作用部29aに流れる電流と、各磁石28x,28x,28y,28yの下方において内側対向部から外面部に至る磁束とによって、サスペンションワイヤ8で支持されている可動ユニット20が中心線Oと交差する方向へ駆動される。可動ユニット20の中心線Oと交差する向きへの移動量は絶縁基板12に設けられた位置検知素子で検知され、その位置検知素子の検知出力がフィードバックされて、軸交差駆動コイル29に与えられる制御電流の電流量が制御される。この制御動作により、撮影時の手振れ補正などが行われる。
【0041】
図4と
図5などに示すように、可動ユニット20は、第1の板ばね40の4つ角部62のワイヤ固定部63に固定されたサスペンションワイヤ8で基台11に支持されて動作する。そのため、レンズ駆動装置1が例えば落下して外部から衝撃を受けると、可動ユニット20が不所望に動いてサスペンションワイヤ8と第1の板ばね40の4つ角部62に大きな力がかかる。このとき、
図5に示すように、第1の板ばね40の角部62には、図示矢印のようなねじれ方向の力がかかり易い。このため、もし角部62のねじれ剛性が大きいと、サスペンションワイヤ8が破断するおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、第1の板ばね40の角部62をねじれ剛性の低い構造とすることで、衝撃時の応力を分散しやすくして、サスペンションワイヤ8や角部62の破断を抑制している。すなわち、
図4と
図5に示すように、第1の板ばね40のそれぞれの角部62に、2つの梁部64,64を形成し、2つの梁部64,64の先部にワイヤ固定部63を一体に形成することで、ワイヤ固定部63がZ方向に撓みやすく、しかも捩じり剛性を低下させて、サスペンションワイヤ8が曲げ変形しやすいようにしている。
【0043】
好ましい構造として、それぞれの梁部64は、ばね本体60に連結する根元部64a(根元側梁部)と、ワイヤ固定部63に連結する先端部64b(先端側梁部)と、根元部64aと先端部64bとの間に位置して根元部64aと先端部64bを連結する屈曲部64cとを有している。ばね本体60は、第1の板ばね40のうちの可動支持部材21に固定される部分である。2つの梁部64,64(第1の梁部、第2の梁部)は、ばね本体60の離間した異なる部分にそれぞれ繋がっており、共通のワイヤ固定部63に向かって延びている。屈曲部64cは、それぞれの梁部64の中間部分に形成され、ばね本体60からワイヤ固定部63に延びる2つの梁部64が互いに近づくように屈曲している。
【0044】
本実施形態のように梁部64に屈曲部64cを設けた場合の作用効果を、梁部に屈曲部64cを設けない場合の比較例と比較しながら説明する。
図6は、比較例に係る第1の板ばね40の角部62の拡大平面図であり、梁部64Aに屈曲部64cを設けない場合を示す。
図7は、
図6に示す角部62にサスペンションワイヤ8が連結された状態を示す拡大斜視図である。
【0045】
本実施形態では、
図4に示すように、梁部64に屈曲部64cが設けられている。この場合、
図5に示すように、角部62に対して、ワイヤ固定部63のワイヤ連結穴65を中心とする捩じりモーメントM1が作用したときに、梁部64に作用する捩じり力を先端部64bと根元部64aおよび屈曲部64cに分散させることができ、それぞれの梁部64のねじれ剛性を低下させることができる。その結果、衝撃などによりサスペンションワイヤ8の曲げ撓み量が大きくなろうとしたときに、梁部64が捩じり変形しやすくなって、サスペンションワイヤ8に作用する曲げ負荷を低下させることができる。その結果、サスペンションワイヤ8の内部応力の増大を抑制し、サスペンションワイヤ8の破断や疲労を低減できるようになる。
【0046】
これに対し、
図6に示す比較例では、梁部64Aに屈曲部64cが設けられていないため、
図7に示すように角部62に対して、ワイヤ固定部63のワイヤ連結穴65を中心とする捩じりモーメントM2が作用すると、それぞれの梁部64Aに対して、その長さの全長において同じ方向の捩じり力が作用することになる。このときのそれぞれの梁部64Aの曲げ剛性は、
図4と
図5に示す実施の形態に比べて高くなる。そのため、衝撃などによりサスペンションワイヤ8の曲げ撓み量が大きくなろうとしたときに、梁部64Aが捩じり変形しにくく、これに代わって、サスペンションワイヤ8に大きな曲げ負荷が作用するようになる。そのために、サスペンションワイヤ8の内部応力の増大によるサスペンションワイヤ8の破断や疲労の危険性が高くなる。
【0047】
さらに詳しく説明すると、
図4に示すように、各梁部64につき、根元部64aの中心を通る第1仮想線Gaと、先端部64bの中心を通る第2仮想線Gbを想定する。この場合、2本の第1仮想線Gaはばね本体60から離れた位置で交差し、2本の第2仮想線Gbがばね本体60から離れた位置で交差している。そして、2本の第1仮想線Ga,Gaの内側に2本の第2仮想線Gb,Gbが位置している。また、2つの先端部64b,64bの第2仮想線Gb,Gbのなす角度θb(第2角度)は、2つの根元部64a,64aの第1仮想線Ga,Gaのなす角度θa(第1角度)よりも小さい。
【0048】
本明細書での各梁部64に係る第1仮想線Gaとは、根元部64aの長さ方向のそれぞれの箇所で幅方向を二分する中心点を設け、その多数の中心点を結んだ直線である。また前記中心点が直線状に並んでいないときは、それぞれの中心点との距離が最も短くなるように求めた直線である。これは、各梁部64に係る第2仮想線Gbと先端部64bとの関係においても同じである。
【0049】
角部62に対して、ワイヤ固定部63のワイヤ連結穴65を中心とする捩じりモーメントM1が作用すると、ばね本体60に向かって広がるように配置された2つの先端部64b,64bに捩じり力が作用するが、各梁部64につき、先端部64bの中心を通る第2仮想線Gbと根元部64aの中心を通る第1仮想線Gaとの間にX−Y平面内で距離があるため、この距離に対応したモーメントが屈曲部64cと根元部64aに作用する。そのため、根元部64aが比較的捩じり変形しやすくなり、さらには屈曲部64cに曲げ撓みが発生することで、それぞれの梁部64全体の曲げ剛性を低下できるようになる。その結果、衝撃が作用したときなどに、梁部64,64が捩じり変形しやすく、その結果、サスペンションワイヤ8に作用する曲げ応力を低減することができる。
【0050】
また、それぞれの梁部64,64では、根元部64aと先端部64bが共に、先端に向かうにしたがって(ばね本体60から離れるにしたがって)幅寸法が狭くなるように構成されている。この構造では、ワイヤ連結穴65に捩じりモーメントM1が作用したときに、捩じり変形による内部応力を、先端と基部側で均一化でき、梁部64の塑性変形や疲労を防止できるようになる。
【0051】
図4と
図5に示す実施の形態では、ワイヤ連結穴65が、2本の第1仮想線Gaの交差点と、2本の第2仮想線Gbの交差点G'よりもばね本体60側に位置している。この構造では、角部62の交差点G'側への突出寸法を小さくすることができる。
【0052】
図8は、第1実施形態の変形例に係る第1の板ばね40の角部62のうちの一つの拡大平面図であり、角部62の構成を示す。
図8は、
図4に対応している。
【0053】
図8の変形例では、それぞれの根元部64aの中心を通る2つの第1仮想線Ga,Gaの外側に、それぞれの先端部64bの中心を通る2つの第2仮想線Gb,Gbが位置している。よって、第1仮想線Ga,Gaのなす角度θaよりも第2仮想線Gb,Gbのなす角度θbが大きい。また、ワイヤ連結穴65は、第1仮想線Gaの交差点および第2仮想線Gbの交差点G'の双方よりも、ばね本体60に近い位置に形成されている。
【0054】
図8に示す変形例でも、ワイヤ連結穴65を中心とする捩じりモーメントM1が作用したときに、梁部64の根元部64aがねじれ変形しやすく、また屈曲部64cに曲げ撓みが発生しやすいため、2本の梁部64,64の全体の捩じり剛性を低くできる。
図4と
図8を比較すると、それぞれの梁部64の先端部64bの中心を通る第2仮想線Gbのなす角度θbは、
図4の方が
図8に比べて小さいため、2本の先端部64b,64bの全体の曲げ剛性は、
図4に示す第1の実施形態の方が、
図8に示す変形例よりもやや小さくなる。角部62を柔軟に変形させたい機種では、
図4に示す第1の実施形態が、
図8に示す変形例よりも好ましい。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態のレンズ駆動装置1における第1の板ばね40の角部62のうちの一つの拡大平面図であり、角部62の構成を示す。
図9は、
図4に対応する。
【0055】
図9に示すように第2実施形態では、2つの梁部64,64の先端部64b,64bの第2仮想線Gb,Gbが交差する交差点G'の位置にワイヤ連結穴65が位置している。
図9に示す第2実施形態と、
図4に示すワイヤ連結穴65が交差点G'の内側に位置する第1実施形態とを比較すると、ワイヤ連結穴65に同じ捩じりモーメントM1を与えたときに、
図4よりも
図9の方が梁部64,64を曲げ変形しやすくなる。その理由は、
図4に示す第1実施の形態でワイヤ連結穴65に与えられる捩じりモーメントM1の作用点が、2つの第2仮想線Gbで作られる三角形の内側に位置しているため、ワイヤ連結穴65に作用する捩じりモーメントM1によって2つの先端部64bに捩じり力を与えにくくなる。これに対し、
図9に示す第2実施形態では、ワイヤ連結穴65が2つの第2仮想線Gbの上にあるため、ワイヤ連結穴65に作用する捩じりモーメントM1によって2つの先端部64bに捩じり力を与えやすくなるからである。
【0056】
図10は、第2実施形態の変形例に係る第1の板ばね40の角部62のうちの一つの拡大平面図であり、角部62の構成を示す。
図10は、
図8に対応している。
【0057】
図10の構成においても2つの梁部64,64の先端部64b,64bの第2仮想線Gb,Gbが交差する交差点G'の位置にワイヤ連結穴65が位置しているため、ワイヤ連結穴65に作用する捩じりモーメントM1によって2つの梁部64を捩じり変形させやすくなる。
【0058】
なお、
図8と
図10では、梁部64が屈曲部64cを有している場合を例示したが、本発明はこの構成に限られず、梁部64Aが屈曲部64cを有していない
図6に示すような構成に、第2実施形態を適用してもよい。例えば
図11に示すように、梁部64が屈曲部64cを有していなくても、それぞれの梁部64,64が延在する方向の仮想線G,Gが交差する交差点G' 'の位置にワイヤ連結穴65を配置することで、交差点G' 'の位置にワイヤ連結穴65を配置しない場合に比較して、ワイヤ固定部63をねじり易くさせることができる。
【0059】
なお、前述した第1実施形態および第2実施形態においては、各梁部64に1つの屈曲部64cが形成されていたが、各梁部64に複数の屈曲部が形成されていてもよい。
【0060】
また、サスペンションワイヤ8を光軸Oに沿って起立するように支持する上述の基台11には金属ベース13が埋設されていたが、本発明の実施形態の基台はこの構成に限られない。例えば、絶縁基板12を基台としても良いし、絶縁基板12に積層されるプリント配線基板を基台としても構わない。また、本発明の一実施形態によれば、基台として、金属ベースを埋設しない板状の絶縁部材を用い、この絶縁部材に積層されたフレキシブルプリント配線基板(FPC基板)に、サスペンションワイヤ8の基端部(下端部)8aを半田付けまたは導電性接着剤で固定した形態としてもよい。この場合には、FPC基板は、絶縁部材とともに基台を構成する。また、FPC基板のみを基台としても構わない。
【0061】
以上、レンズ駆動装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明は具体的に開示された実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変形及び改良がなされ得る。
【0062】
本国際出願は、2017年2月8日に出願した日本国特許出願2017−020974号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。