(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記経路変更部は、前記第2搬送経路に前記シートを搬送するタイミングを、前記画像形成部で画像を前記シートに形成する前と、又は、前記画像形成部で画像を前記シートに形成した後と、に切替可能である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるプリンタを実現する実施形態を、図面に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1におけるプリンタは、昇華型熱転写方式のプリンタに適用される。
【0012】
[昇華型熱転写方式のプリンタの構成]
図1は、実施例1のプリンタを示す斜視図である。
図2は、実施例1のプリンタのカバーが開いた状態を示す斜視図である。
図3は、実施例1のプリンタを示す断面図である。
図4は、実施例1の経路変更部が第1ポジションにある状態を示す断面図である。
図5は、実施例1の経路変更部が第2ポジションにある状態を示す断面図である。以下、
図1〜
図5に基づいて、実施例1のプリンタの構成を説明する。
【0013】
プリンタ1は、
図1及び
図2に示すように、箱状の筺体2と、筺体2の上面に形成された上開口2aに設けられる上カバー3と、筺体2の前面に形成された前開口2bに設けられる前カバー4と、を備える。
【0014】
筺体2の内部には、
図3に示すように、主要構成要素として、記録媒体としてのシートSを供給するロール紙Rと、インクリボンTと、画像形成部としてのサーマルヘッド5と、プラテンローラ6と、切断部としてのカッターユニット7と、駆動ローラ21と、シートSの搬送経路を変更する経路変更部30と、シートSのカールを矯正するカール矯正部40と、を備える。
【0015】
ロール紙Rから繰り出されたシートSは、駆動ローラ21と、従動ローラ23とに架け回されて、第1搬送経路X1を繰出方向D1に搬送され、排出口8から、シートSを排出する。また、シートSは、第1搬送経路X1から分岐した第2搬送経路X2に搬送され、シートSのカールが矯正される。
【0016】
ロール紙Rには、例えば、普通紙より厚みのある写真用紙が用いられる。ロール紙Rは、モータに接続されたロール紙ホルダ11により、回転可能に保持される。
【0017】
駆動ローラ21は、第1搬送経路X1に沿って配置される。駆動ローラ21は、駆動部51に接続され、正方向と、正方向とは逆の負方向との何れかに回転可能とする。
【0018】
対向ローラ22は、第1搬送経路X1に沿って、駆動ローラ21に対向するように配置される。対向ローラ22は、駆動ローラ21に対して移動可能に構成される。シートSの搬送時には、対向ローラ22は、駆動ローラ21に当接し、駆動ローラ21に従動して回転する。駆動ローラ21が正方向に回転することで、駆動ローラ21と対向ローラ22がシートSを挟んだ状態で、シートSを繰出方向D1へ搬送する。駆動ローラ21が正方向とは反対の負方向に回転することで、駆動ローラ21と対向ローラ22がシートSを挟んだ状態で、シートSを引戻方向D2へ搬送する。シートSの搬送時以外には、対向ローラ22は、駆動ローラ21から離間する。
【0019】
サーマルヘッド5は、第1搬送経路X1に沿って配置され、シートSの繰出方向D1において、駆動ローラ21の下流に配置される。プラテンローラ6は、第1搬送経路X1に沿ってサーマルヘッド5に対向するように配置される。プラテンローラ6は、サーマルヘッド5に対して移動可能に構成される。印画時には、プラテンローラ6は、サーマルヘッド5に近づく方向に移動して、シートSとインクリボンTとを介して、サーマルヘッド5を押圧する押圧位置に位置する。サーマルヘッド5は、シートSとインクリボンTとを介して、プラテンローラ6に押圧された状態で、発熱することによって、インクリボンTに塗布された昇華性染料インクをシートSの同一領域上に転写することで、シートSに画像を形成する。印画しない時には、プラテンローラ6は、サーマルヘッド5から離れる方向に移動した離間位置に位置する。
【0020】
経路変更部30は、断面で先端が先細りした板状の部材であり、シートSの繰出方向D1において、サーマルヘッド5の下流に配置される。経路変更部30は、第1搬送経路X1と第2搬送経路X2との分岐点に配置される。経路変更部30は、
図4に示すように、第1搬送経路X1にシートSを搬送する第1ポジションP1と、
図5に示すように、第2搬送経路X2にシートSを搬送する第2ポジションP2との間を移動可能とする。すなわち、搬送されるシートSに対する経路変更部30の角度を変化させることにより、サーマルヘッド5を通過したシートSの搬送経路を、第1搬送経路X1と第2搬送経路X2との間で切り替える。
【0021】
カッターユニット7は、
図3に示すように、第1搬送経路X1に沿って、繰出方向D1において経路変更部30の下流に配置される。カッターユニット7は、第1搬送経路X1を搬送されるシートSを切断する。
【0022】
インクリボンTは、例えば、イエローY、マゼンタM及びシアンCの各インク領域、並びにオーバーコートOPの領域が、長手方向に繰り返し配置された帯状のシートである。インクリボンTは、インクリボンTを繰り出すリボン供給リール12と、インクリボンTを巻き取るリボン巻取リール13と、により保持される。
【0023】
リボン巻取リール13は、モータに接続され、回転方向E1に回転する。リボン巻取リール13が、回転方向E1に回転すると、インクリボンTが、リボン供給リール12から繰り出される。リボン供給リール12から繰り出されたインクリボンTは、リボン搬送方向D3に搬送され、従動ローラ25,26を介して、サーマルヘッド5とプラテンローラ6との間を通過して、リボン巻取リール13に巻き取られる。
【0024】
プリンタ1は、LAN(Local Area Network)を介して、各種指示を行うホストコンピュータ(ユーザ端末)90と接続される。プリンタ1は、ホストコンピュータ90からの印刷の指示に応じて処理を実行する。また、ホストコンピュータ90は、ロール紙Rを交換した日時の情報や、ロール紙RからシートSを繰り出した長さの情報等を記憶し、これらの情報から、シートSのカール量を推定する。
【0025】
ユーザは、ホストコンピュータ90のシートSのカール量の情報や、シートSに形成する画像の色に基づいて、シートSの搬送速度や、カール矯正ローラ41に対する案内部材42の位置や、カール矯正をするタイミングや回数等を、選択できるようになっている。
【0026】
[カール矯正部の構成]
図6は、実施例1のカール矯正部40の構成を示す断面図である。
図7は、実施例1の移動後のカール矯正部40の構成を示す断面図である。以下、
図6及び
図7に基づいて、実施例1のカール矯正部40の構成を説明する。
【0027】
カール矯正部40は、
図6に示すように、第2搬送経路X2に沿って配置される。カール矯正部40は、カール矯正ローラ41と、案内部材42と、を備える。
【0028】
カール矯正ローラ41は、第2搬送経路X2に沿って、シートSの表面側に配置される。カール矯正ローラ41は、シートSの幅以上の長さを有する円柱状に形成される。
【0029】
案内部材42は、第2搬送経路X2に沿って、シートSの裏面側に配置される。案内部材42は、第1斜面42aと、第2斜面42bと、第1斜面42aと第2斜面42bとを接続する接続曲面42cと、を備え、断面で、対称軸Uに対して対称形状に形成される。第1斜面42aと、第2斜面42bとがなす角度αは、80度とする。
【0030】
接続曲面42cは、第1斜面42aと第2斜面42bと、を断面円弧状の曲面で接続する。接続曲面42cは、カール矯正ローラ41の外周面の一部を覆うように形成される。
【0031】
シートSは、カール矯正ローラ41と、案内部材42との間に形成された隙間を通過する。シートSは、この隙間を通過する際に、第1斜面42aと、接続曲面42cと、第2斜面42bとに接触して、進行方向を角度100度変更する。第1斜面42aと、接続曲面42cと、第2斜面42bとで構成されるシートSが通過する経路は、カール矯正経路を構成する。カール矯正部40におけるシートSの搬送経路(カール矯正経路)は、曲率半径が12.5ミリに形成される。
【0032】
カール矯正ローラ41は、
図7に示すように、案内部材42に対して、対称軸Uの軸線方向に移動可能に構成される。すなわち、カール矯正ローラ41は、案内部材42に対して、近づく方向と、遠ざかる方向に移動可能とする。
【0033】
[プリンタの動作]
このように構成されたプリンタ1は、
図3に示すように、ロール紙ホルダ11が回転すると共に、駆動ローラ21が正方向に回転することで、ロール紙Rから繰り出されたシートSが、第1搬送経路X1にて繰出方向D1に搬送される。経路変更部30は第1ポジションP1にあり、シートSの先端は、サーマルヘッド5を超えた位置まで搬送される。この際、プラテンローラ6は、離間位置に停止している。次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、離間位置から押圧位置に移動する。
【0034】
(イエローの画像形成工程)
次いで、駆動ローラ21が負方向に回転し、シートSが引戻方向D2に搬送される。また、リボン巻取リール13が回転方向E1に回転して、インクリボンTがリボン搬送方向D3に搬送される。この際、サーマルヘッド5は、シートSとインクリボンTとを介して、プラテンローラ6に押圧された状態で発熱して、シートSにイエローYの画像を形成する。
【0035】
(マゼンタ画像形成工程)
次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、押圧位置から離間位置に移動すると共に、リボン巻取リール13が回転を停止する。次いで、駆動ローラ21が正方向に回転し、シートSが繰出方向D1に搬送される。シートSの先端は、サーマルヘッド5を超えた位置まで搬送される。次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、離間位置から押圧位置に移動する。
【0036】
次いで、駆動ローラ21が負方向に回転し、シートSが引戻方向D2に搬送される。また、リボン巻取リール13が回転方向E1に回転して、インクリボンTがリボン搬送方向D3に搬送される。この際、サーマルヘッド5は、シートSとインクリボンTとを介して、プラテンローラ6に押圧された状態で発熱して、シートSにマゼンタMの画像を形成する。
【0037】
(シアン画像形成工程)
次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、押圧位置から離間位置に移動すると共に、リボン巻取リール13が回転を停止する。次いで、駆動ローラ21が正方向に回転し、シートSが繰出方向D1に搬送される。シートSの先端は、サーマルヘッド5を超えた位置まで搬送される。次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、離間位置から押圧位置に移動する。
【0038】
次いで、駆動ローラ21が負方向に回転し、シートSが引戻方向D2に搬送される。また、リボン巻取リール13が回転方向E1に回転して、インクリボンTがリボン搬送方向D3に搬送される。この際、サーマルヘッド5は、シートSとインクリボンTとを介して、プラテンローラ6に押圧された状態で発熱して、シートSにシアンCの画像を形成する。
【0039】
(オーバーコート形成工程)
次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、押圧位置から離間位置に移動すると共に、リボン巻取リール13が回転を停止する。次いで、駆動ローラ21が正方向に回転し、シートSが繰出方向D1に搬送される。シートSの先端は、サーマルヘッド5を超えた位置まで搬送される。次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、離間位置から押圧位置に移動する。
【0040】
次いで、駆動ローラ21が負方向に回転し、シートSが引戻方向D2に搬送される。また、リボン巻取リール13が回転方向E1に回転して、インクリボンTがリボン搬送方向D3に搬送される。この際、サーマルヘッド5は、シートSとインクリボンTとを介して、プラテンローラ6に押圧された状態で発熱して、シートSにオーバーコートOPを形成する。
【0041】
(カール矯正工程)
次いで、駆動ローラ21は、回転を停止し、プラテンローラ6が、押圧位置から離間位置に移動すると共に、リボン巻取リール13が回転を停止する。また、経路変更部30は、第1ポジションP1から第2ポジションP2に移動する。
【0042】
次いで、駆動ローラ21が正方向に回転し、シートSが繰出方向D1に搬送され、経路変更部30により、シートSの搬送経路は、第1搬送経路X1から第2搬送経路X2に切り替わる。次いで、シートSは、第2搬送経路X2を搬送されて、カール矯正部40を通過する。次いで、駆動ローラ21が正方向の回転から負方向の回転に変化し、シートSが引戻方向D2に搬送されて、再びカール矯正部40を通過する。
【0043】
(シート排出工程)
次いで、駆動ローラ21は、回転を停止する。また、経路変更部30は、第2ポジションP2から第1ポジションP1に移動する。次いで、駆動ローラ21が正方向に回転し、シートSが繰出方向D1に搬送され、経路変更部30により、シートSの搬送経路は、第2搬送経路X2から第1搬送経路X1に切り替わる。次いで、駆動ローラ21が回転を停止し、シートSはカッターユニット7により切断される。次いで、切断されたシートSが排出口8から排出される。
【0044】
なお、カール矯正工程は、画像形成工程(イエローの画像形成工程、マゼンタ画像形成工程、シアン画像形成工程、オーバーコート形成工程)の直後に設けても、画像形成工程の直前に設けても、画像形成工程の直前と直後に設けてもよい。また、カール矯正工程は、画像形成工程の途中(例えば、シアン画像形成工程の直後)に設けてもよい。また、シートSのカール量が少ないなどでカール矯正が不要な場合、カール矯正工程を実施しなくてもよい。
【0045】
[カール矯正効果]
図8は、カール矯正効果を説明する図である。以下、
図8に基づいて、カール矯正効果について説明する。
【0046】
カール矯正の効果は、
図8に示すように、「カール矯正部40におけるシートSの搬送経路の曲率(デカール曲率)A」×「カール矯正部40をシートSが通過する際、シートSの進行方向の変更角度(デカール角度)B」×「シートSがカール矯正部40を通過する時間(用紙滞在時間)t」に比例する。
【0047】
デカール曲率Aと、デカール角度Bと、用紙滞在時間tとをシートSのカール高さに応じて変化(シート矯正効果を変化)させることで、しわや折り目等の傷を付けずにシートSを真直ぐ(平坦)な姿勢にすることができる。
【0048】
[カール矯正効果確認試験]
図9は、実施例1のカール矯正効果の確認試験の結果を示す表である。以下、
図9に基づいて、カール矯正効果の確認試験の結果について説明する。
【0049】
実施例1のカール矯正部40は、カール矯正経路の曲率半径が12.5[mm]で、デカール角度Bが100度とする。比較例1のカール矯正部は、カール矯正経路の曲率半径が12.5[mm]で、デカール角度Bが45度とする。
【0050】
シートの長さが6[インチ]で、シートの幅が2[インチ]で、カール高さ(シートがカールした際のシートの高さ)が42[mm]の用紙を、カール矯正部に通過させて、カール高さ計測し、カール矯正効果を確認した。
【0051】
カール矯正効果は、カール矯正部を3秒かけて通過させたシートと、カール矯正部を6秒かけて通過させたシートと、について確認した。すなわち、カール矯正効果は、用紙滞在時間tを3秒としたものと、6秒としたものについて確認した。
【0052】
図9に示すように、実施例1のカール矯正部40を3秒かけて通過させたシートSでは、カール高さが約21ミリ低くなり、実施例1のカール矯正部40を6秒かけて通過させたシートSでは、カール高さが約24ミリ低くなった。
【0053】
比較例1のカール矯正部を3秒かけて通過させたシートでは、カール高さが約8ミリ低くなり、比較例1のカール矯正部を6秒かけて通過させたシートでは、カール高さが約12ミリ低くなった。
【0054】
図10は、実施例1のカール矯正効果の別の確認試験の結果を示す表である。以下、
図10に基づいて、カール矯正効果の別の確認試験の結果について説明する。
【0055】
この試験では、カール矯正経路の曲率半径を8.5[mm]とした。印画する画像は、白色のベタ画像とし、光沢仕上げとした。印画する画像のサイズは、4[mm]×6[mm]とした。
【0056】
図10では、横軸に、カール矯正時のシートSの搬送速度[ips]を示し、縦軸に、カール高さの絶対値[mm]を示している。また、試験体A1は、イエローYの画像の形成前(印画前)のシートSについて、カール矯正工程を実施したものである。試験体A2は、オーバーコートOPの形成前(転写前)のシートSについて、カール矯正工程を実施したものである。試験体A3は、オーバーコートOPの形成後(転写後)のシートSについて、カール矯正工程を実施したものである。試験体A4は、画像を形成していないシートSについて、カール矯正工程を実施したものである。試験体A5は、画像を形成したシートについて、カール矯正工程を実施していないものである。
【0057】
試験体A1は、シートSの搬送速度が2[ips]の場合に、カール高さが26[mm]で、シートSの搬送速度が6[ips]の場合に、カール高さが26[mm]で、シートSの搬送速度が10[ips]の場合に、カール高さが26[mm]であった。
【0058】
試験体A2は、シートSの搬送速度が2[ips]の場合に、カール高さが24[mm]で、シートSの搬送速度が6[ips]の場合に、カール高さが25[mm]で、シートSの搬送速度が10[ips]の場合に、カール高さが27[mm]であった。
【0059】
試験体A3は、シートSの搬送速度が2[ips]の場合に、カール高さが19[mm]で、シートSの搬送速度が6[ips]の場合に、カール高さが20[mm]で、シートSの搬送速度が10[ips]の場合に、カール高さが23[mm]であった。
【0060】
試験体A4は、シートSの搬送速度に関わらず、カール高さが43[mm]であった。試験体A5は、カール高さが49[mm]であった。
【0061】
印画前に、シートSをカール矯正部40に搬送した場合、搬送速度に関わらず、カール矯正効果が認められることが分かる。印画後に、シートSをカール矯正部40に搬送した場合、搬送速度が遅い方が、カール矯正効果が高いことが分かる。オーバーコートOPの形成前のシートSをカール矯正部40に搬送した場合より、オーバーコートOPの形成後にシートSをカール矯正部40に搬送した場合の方が、カール矯正効果が高いことが分かる。
【0062】
[プリンタの作用]
実施例1のプリンタの作用を説明する。実施例1のプリンタ1は、ロール紙Rから繰り出されるシートSが搬送される第1搬送経路X1と、第1搬送経路X1に配置される、シートSを、シートSの繰出方向D1と、繰出方向D1とは逆の引戻方向D2と、に搬送可能な駆動ローラ21と、第1搬送経路X1に配置される、シートSに画像を形成する画像形成部(サーマルヘッド5)と、第1搬送経路X1から分岐する第2搬送経路X2と、シートSの搬送経路を、第1搬送経路X1と、第2搬送経路X2との何れかに切り替える経路変更部30と、第2搬送経路X2に設けられる、シートSのカールを矯正するカール矯正部40と、第1搬送経路X1に設けられる、シートSを切断する切断部(カッターユニット7)と、を備え、カール矯正部40は、カール矯正ローラ41と、カール矯正ローラ41に対向して配置される案内部材42と、で所定の曲率半径の搬送経路を形成し、カール矯正部40をシートSが通過する際、シートSの進行方向は、100度以上変更される(
図3)。
【0063】
これにより、シートSがカール矯正部40でカールが矯正される長さを長くすることができる。そのため、カール矯正部40におけるシートSの搬送経路の曲率半径を大きくして、シートSにしわや折り目等の傷を付けることなく、シートSのカール矯正効果を向上させることができる。
【0064】
例えば、シートSとして写真用のものを使用する場合、カール矯正経路の曲率半径を12.5ミリより小さくしてしまうと、カール矯正部40においてシートSに対して摩擦による負荷が増え、シートSにしわや折り目等の傷がついてしまう虞がある。実施例1では、写真用のシートSを使用した場合であっても、カール矯正部40におけるシートSの搬送経路の曲率半径を大きくすることができるので、シートSにしわや折り目等の傷を付けることなく、シートSのカール矯正効果を向上させることができる。
【0065】
また、切断部(カッターユニット7)でシートSを切断する際に、シートSの搬送を一旦停止することになる。この際、カール矯正部40にシートSが通された状態で、シートSの搬送が停止されてしまうと、シートSに折しわ等の傷がついてしまう。実施例1では、切断部(カッターユニット7)が存在しない第2搬送経路X2にカール矯正部40を有する。そのため、切断部(カッターユニット7)でシートSを切断する際に、シートSの搬送を一旦停止しても、カール矯正部40にシートSが通された状態でシートSの搬送が停止されてしまうことがなく、シートSにしわや折り目等の傷がついてしまうことを防止することができる。
【0066】
また、第2搬送経路X2に搬送されたシートSは、繰出方向D1に搬送された後に、引戻方向D2に搬送される。そのため、シートSが繰出方向D1に搬送される際と、シートSが引戻方向D2に搬送される際とで、シートSは、カール矯正部40を2度通過することになる。そのため、1度の第2搬送経路X2へのシートSの搬送で、カール矯正効果を向上させることができる。
【0067】
実施例1のプリンタ1では、シートSを第2搬送経路X2に搬送する際に、駆動ローラ21は、シートSの搬送速度を変更可能とする(
図3)。
【0068】
これにより、シートSがカール矯正部40を通過する時間を変更することができる。ここで、カール矯正部40を通過するシートSの速度が遅い方が、カール矯正効果が高くなる。また、ロール紙Rの保存期間や、新品のロール紙Rの中でシートSが巻かれている位置(内側又は中心側)等により、シートSのカール量が異なる。すなわち、ロール紙Rの保存期間が長ければ、シートSのカール量が強くなる。また、新品のロール紙Rの中でシートSが巻かれている位置が内側であるほど、シートSのカール量は強くなる。さらに、シートSに印画される色によって、シートSのカール量が異なる。例えば、黒色の画像を形成したシートSは、白色の画像を形成したシートSより、カール矯正効果が向上する。
【0069】
そのため、シートSのカール量や、シートSに形成する画像の色によって、第2搬送経路X2を搬送するシートSの速度を調整することができる。その結果、シートSのカールを矯正し過ぎてしまったりすることを防止して、シートSを真直ぐな姿勢にすることができる。
【0070】
実施例1のプリンタ1では、カール矯正ローラ41と、案内部材42と、の少なくとも一方は、他方に対して相対移動可能である(
図4及び
図5)。
【0071】
これにより、カール矯正部40におけるシートSの搬送経路の曲率を変更することができる。ここで、カール矯正部40におけるシートSの搬送経路の曲率
半径が大きくなれば、カール矯正効果は向上することになる。そのため、シートSのカール量や、シートSに形成する画像の色によって、カール矯正部40におけるシートSの搬送経路の曲率を変更し、シートSを真直ぐ(平坦)な姿勢にすることができる。
【0072】
また、第2搬送経路X2に搬送されたシートSは、シートSが繰出方向D1に搬送される際と、シートSが引戻方向D2に搬送される際との何れか一方だけ、カール矯正ローラ41と案内部材42との相対距離を縮めてカールを矯正することもできるし、両方ともカールを矯正することもできる。その結果、シートSのカール量や、シートSに形成する画像の色によって、カール矯正をする回数を変え、シートSを真直ぐな姿勢にすることができる。なお、カール量が少ないときは、カール矯正をさせないようにしてもよい。
【0073】
実施例1のプリンタ1では、経路変更部30は、第2搬送経路X2にシートSを搬送するタイミングを、画像形成部(サーマルヘッド5)で画像をシートSに形成する前と、又は、画像形成部(サーマルヘッド5)で画像をシートSに形成した後と、に切替可能である。
【0074】
これにより、ユーザは、カール矯正をするタイミングを、シートSに画像を形成した後か、又は、シートSに画像を形成する前か、を選択することができる。ここで、シートSに画像を形成する前にシートSにカール矯正をした場合より、シートSに画像を形成した後にシートSにカール矯正をした場合の方が、カール矯正効果が高い。そのため、シートSのカール量や、シートSに形成する画像の色によって、カール矯正をするタイミングを変え、シートSを真直ぐな姿勢にすることができる。
【実施例2】
【0075】
実施例2のプリンタは、第2搬送経路の配置される位置が異なる点と、シートが排出される排出口の位置が異なる点とで、実施例1のプリンタと相違する。
【0076】
[プリンタの構成]
図11は、実施例2のプリンタを示す断面図である。
図12は、実施例2のプリンタを示す斜視図である。以下、
図11及び
図12に基づいて、実施例2のプリンタの構成を説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0077】
実施例2のプリンタ1は、
図11に示すように、第2搬送経路X2は、第1搬送経路X1の後に配置される。第2搬送経路X2は、シートSが排出される排出口3bにつながる。
【0078】
上カバー3には、
図11及び
図12に示すように、凹み部3aと、シートSの排出口3bと、を備える。すなわち、凹み部3aと、排出口3bとは、プリンタ1の上部に設けられる。
【0079】
凹み部3aは、シートSの幅より大きな幅の凹み形状である。排出口3bから排出されたシートSは、プリンタ1の上カバー3の凹み部3aに載置される。
【0080】
カール矯正部40は、第2搬送経路X2に沿って、2つ設けているが、1つであってもよいし、3つ以上設けてもよい。
【0081】
[プリンタの作用]
実施例2のプリンタ1では、ロール紙Rから繰り出されるシートSが搬送される第1搬送経路X1と、第1搬送経路X1に配置される、シートSを、シートSの繰出方向D1と、繰出方向D1とは逆の引戻方向D2と、に搬送可能な駆動ローラ21と、第1搬送経路X1に配置される、シートSに画像を形成する画像形成部(サーマルヘッド5)と、繰出方向D1において、第1搬送経路X1の後に形成される、上部に設けられる排出口3bにつながる第2搬送経路X2と、第2搬送経路X2に設けられるシートSのカールを矯正するカール矯正部40と、を備え、カール矯正部40は、カール矯正ローラ41と、カール矯正ローラ41に対向して配置される案内部材42と、で所定の曲率半径の搬送経路を形成し、カール矯正部40をシートSが通過する際、シートSの進行方向が100度以上変更される(
図11)。
【0082】
これにより、切断されたシートSをプリンタ1の筺体2の上部に排出することができる。そのため、プリンタ1の上面をトレイとして使用することができる。その結果、トレイを別途設ける必要がなくなる。また、画像が形成され、切断されたシートSに対して、カールを矯正することができる。そのため、シートSの搬送時間を短縮することができる。
【0083】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0084】
実施例3のプリンタは、カール矯正量調整部を備える点で、実施例1のプリンタと相違する。
【0085】
[プリンタの機能構成]
図13は、実施例3のプリンタの機能構成を示すブロック図である。
図14は、実施例3のデカール量推定情報を示す表である。
図15及び
図16は、実施例3のカール矯正量調整部によるシートの搬送量について説明する図である。以下、
図13〜
図16に基づいて、実施例3のプリンタの機能構成を説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0086】
ところで、シートSがカールする要因として、ロール紙Rの種類、ロール紙Rの巻き径(巻き外、巻き内)、ロール紙Rの経過年数等による影響が考えられる。また、比較的新しいロール紙Rや、マット仕上げや、黒ベタ等の高濃度の印画時は、印画結果のシートSのカールが小さくなる傾向である。そのため、一様にカール矯正を行うと、シートSが逆反りしてしまう虞がある。
【0087】
実施例3のプリンタ1は、
図13に示すように、ホストコンピュータ90と、入力部50と、制御部60と、駆動部51と、を備える。
【0088】
ホストコンピュータ90は、ロール紙Rを交換した日時の情報や、ロール紙Rの使用量(例えば、所定の長さのシートSの使用枚数)の情報や、ロール紙Rの種類の情報等を記憶する。ロール紙Rの種類には、例えば、SD(標準)やPD(高品質)がある。
【0089】
入力部50には、例えば、ユーザによって、オーバーコートの設定や、高濃度の印画の指示を入力することができる。オーバーコートの設定には、光沢仕上げと、マット仕上げ等がある。
【0090】
制御部60は、記憶部61と、カール矯正量調整部(デカール量調整部)62と、を備える。記憶部61は、デカール量推定情報61aを記憶する。
【0091】
デカール量推定情報61aは、
図14に示すように、ロール紙Rの使用量と、オーバーコート設定や、ロール紙(メディア)Rの種類や、ロール紙Rの経過年数や、高濃度印画の有無と、の関係に基づいた、カール矯正量(デカール量)を数値として記憶する。
【0092】
カール矯正量は、シートSがカール矯正部40に搬送される量である。数値1では、シートSがカール矯正部40に搬送される量が少ない。数値5では、シートSがカール矯正部40に搬送される量が、1枚のシートS(所定の長さシートS)のうち、約半部の長さである。数値10では、シートSがカール矯正部40に搬送される量が、1枚のシートS(所定の長さシートS)のうち、全部の長さである。すなわち、数値が大きくなる程、シートSがカール矯正部40に搬送される量が多くなる。
【0093】
例えば、ロール紙Rの使用量(例えば、所定の長さのシートSの使用枚数)が5枚で、オーバーコート設定が光沢仕上げで、ロール紙RがPD(高品質)で、ロール紙Rの経過年数があまり経っていない新しいロール紙Rの場合、シートSのカール量は、それほど大きくない。そのため、カール矯正量は少なくなり、数値4となる。
【0094】
ロール紙Rの使用量(例えば、所定の長さのシートSの使用枚数)が100枚で、オーバーコート設定が光沢仕上げで、ロール紙RがPD(高品質)で、ロール紙Rの経過年数があまり経っていない新しいロール紙Rの場合、シートSのカール量は、使用量が5枚の場合と比較して大きくなる。そのため、カール矯正量は数値8となる。
【0095】
ロール紙Rの使用量(例えば、所定の長さのシートSの使用枚数)が5枚で、オーバーコート設定が光沢仕上げで、ロール紙RがPD(高品質)で、ロール紙Rの経過年数が相当経った古いロール紙Rの場合、シートSのカール量は、新しいロール紙Rと比較して大きくなる。そのため、カール矯正量は数値6となる。
【0096】
ロール紙Rの使用量(例えば、所定の長さのシートSの使用枚数)が100枚で、オーバーコート設定が光沢仕上げで、ロール紙RがPD(高品質)で、ロール紙Rの経過年数が相当経った古いロール紙Rの場合、シートSのカール量は、新しいロール紙Rと比較して大きくなる。そのため、カール矯正量は少なくなり、数値10となる。
【0097】
ロール紙RがSD(普通)の場合、シートSのカール量は、PD(高品質)と比較して、大きくなる。
【0098】
オーバーコート設定がマット仕上げの場合や、高濃度印画の場合は、シートSのカール量によっては、数値を0とし、カール矯正(デカール)を実施しない。
【0099】
カール矯正量調整部62は、ホストコンピュータ90からの情報を基にデカール量推定情報61aを参照して、数値0〜10を決定する。カール矯正量調整部62は、決定した数値0〜10に相当する搬送量を、駆動部51に送信する。
【0100】
駆動部51は、カール矯正量調整部62から送信された数値0〜10に基づいて、シートSをカール矯正部40に搬送する。
【0101】
例えば、カール矯正量調整部62から送信された数値が数値6であった場合、駆動部51は、
図15に示すように、駆動ローラ21を介して、シートSを1枚のシートS(所定の長さシートS)のうち、途中までをカール矯正部40に搬送する。
【0102】
カール矯正量調整部62から送信された数値が数値10であった場合、駆動部51は、
図16に示すように、駆動ローラ21を介して、シートSを1枚のシートS(所定の長さシートS)の全部をカール矯正部40に搬送する。
【0103】
[カール矯正効果]
図17は、実施例3の光沢紙のカール矯正効果を示すグラフである。
図18は、実施例3の普通紙のカール矯正効果を示すグラフである。
図19は、実施例3のロール紙の径の違いによるカール矯正効果を示すグラフである。以下、
図17〜
図19に基づいて、実施例3のカール矯正効果について説明する。
【0104】
光沢紙においては、
図17に示すように、数値0の場合に、カール矯正部40に搬送されて排出口8から排出されたシートSのカール高さは、約26[mm]となった。数値5の場合に、カール矯正部40に搬送されて排出口8から排出されたシートSのカール高さは、約15[mm]となった。数値10の場合に、カール矯正部40に搬送されて排出口8から排出されたシートSのカール高さは、約9[mm]となった。
【0105】
普通紙においては、
図18に示すように、数値0の場合に、カール矯正部40に搬送されて排出口8から排出されたシートSのカール高さは、約20[mm]となった。数値5の場合に、カール矯正部40に搬送されて排出口8から排出されたシートSのカール高さは、約8[mm]となった。数値10の場合に、カール矯正部40に搬送されて排出口8から排出されたシートSのカール高さは、約3[mm]となった。
【0106】
光沢紙においては、カール矯正部40に搬送する前のシートSのカール高さが、例えば10[mm]だった場合、シートSを1枚のシートS(所定の長さシートS)のうち、全部をカール矯正部40に搬送したとする。そうすると、カール矯正効果は約16[mm]あるため、カール矯正部40に搬送した後のシートSは、逆反りしてしまう。逆反りとは、シートSがロール紙Rに巻かれている方向とは逆方向に反ることをいう。
【0107】
普通紙においては、カール矯正部40に搬送する前のシートSのカール高さが、例えば10[mm]だった場合、シートSを1枚のシートS(所定の長さシートS)の全部をカール矯正部40に搬送したとする。そうすると、カール矯正効果は約17[mm]あるため、カール矯正部40に搬送した後のシートSは、逆反りしてしまう。
【0108】
デカール量推定情報61aは、このような逆反りが発生しないように、各数値が決定されている。
【0109】
図19に示すように、数値1で、印画枚数が1枚の場合、すなわちロール紙Rの径が大きい場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約26[mm]であった。数値1で、印画枚数が50枚の場合、すなわちロール紙Rの径が小さくなった場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約28[mm]であった。数値1で、印画枚数が100枚の場合、すなわちロール紙Rの径がさらに小さくなった場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約33[mm]であった。
【0110】
数値5で、印画枚数が1枚の場合、すなわちロール紙Rの径が大きい場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約15[mm]であった。数値5で、印画枚数が50枚の場合、すなわちロール紙Rの径が小さくなった場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約17[mm]であった。数値5で、印画枚数が100枚の場合、すなわちロール紙Rの径がさらに小さくなった場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約22[mm]であった。
【0111】
数値10で、印画枚数が1枚の場合、すなわちロール紙Rの径が大きい場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約8[mm]であった。数値10で、印画枚数が50枚の場合、すなわちロール紙Rの径が小さくなった場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約9[mm]であった。数値10で、印画枚数が100枚の場合、すなわちロール紙Rの径がさらに小さくなった場合、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは、約14[mm]であった。
【0112】
すなわち、数値1〜10に関わらず、ロール紙Rの径が小さいほど、カール矯正部40に搬送した後のシートSのカール高さは大きくなる傾向にある。デカール量推定情報61aは、このようなロール紙Rの径を考慮して、逆反りが発生しないように、各数値が決定されている。
【0113】
カール矯正量を数値10に設定すると、次の画像形成に使用されるシートSの先端もカール矯正部40に搬送されてしまう。また、次の画像形成に使用されるシートSの先端は、オーバーコート転写前の状態にある。そのため、次の画像形成に使用されるシートSに、シワや折れが発生してしまう場合がある。そのような場合、カール矯正量を数値9に設定することで、オーバーコート転写後のシートSのみカール矯正部40に搬送し、シワや折れの発生を防ぐことができる。
【0114】
シートSのカール高さが高い場合、カール矯正部40に突入する際に、カール矯正ローラ41へのスムーズな搬送ができずに、シートSが座屈し、オーバーコート転写の有無に関わらず、シートSの先端から15[mm]程度の位置にシワが発生する場合がある。
【0115】
これに対し、前回の画像形成時にカール矯正量を数値10に設定すると、シートSの先端から10[mm]程度の位置にはシワが発生するが、シートSの先端のカール高さは低くなり、カール矯正ローラ41へスムーズな搬送ができ、シートSの先端から15[mm]の位置にはシワが発生しない。
【0116】
シワが発生しているシートSの先端から10[mm]の部分は、通常1回行う5.5[mm]幅のカットくずカットを、2回行うことでシートSから取り除く。カール矯正量が数値9の場合においても、次の画像形成に使用されるシートSの先端から5[mm]の位置には、シワが発生しているが、カットくずとしてシートSから取り除かれる。
【0117】
オーバーコート転写後のカール矯正では、シートSがコーティングされているためシワや折れが発生しにくい。
【0118】
[プリンタの作用]
実施例3のプリンタの作用を説明する。実施例3のプリンタ1は、シートがカール矯正部に搬送される搬送量を調整して、カール矯正量を調整可能なカール矯正量調整部を備える(
図13)。
【0119】
これにより、カール高さが大きい場合、カール矯正部に搬送されるシートSの搬送量を多くし、カール矯正効果を高めることができる。一方、カール高さが小さい場合、カール矯正部に搬送されるシートSの搬送量を少なくして、カール矯正をし過ぎてシートSが逆反りしてしまうことを防止することができる。そのため、カール高さに応じて、最適なカール矯正をすることができる。
【0120】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0121】
実施例4のプリンタは、カール付与部を備える点で、実施例1のプリンタと相違する。
【0122】
[プリンタの機能構成]
図20は、実施例4のカール付与部によるシートの動きを説明する図である。以下、実施例4のプリンタの機能構成を説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0123】
図13に示すように、制御部60は、カール付与部63を備える。カール付与部63は、カール矯正部40に搬送されてカールが矯正されたシートSを、引戻方向D2に搬送して、所定の距離(例えば、カール矯正部40に通されて、カールが矯正された部分)まで駆動ローラ21を通過させる指示を、駆動部51に与える。
【0124】
図20に示すように、駆動ローラ21は、搬送されるシートSに対して摩擦力を有するグリップローラとする。グリップローラは、外周面が弾性体で形成され、搬送されるシートSに対して摩擦力を有する。なお、グリップローラは、外周方向に突出した複数の突起を有することで、搬送されるシートSに対して摩擦力を有してもよい
【0125】
シートSが、駆動ローラ21を通過する際、シートSが駆動ローラ21のシートSに対する摩擦力(グリップ力)によって、駆動ローラ21に巻き付けられるように搬送される。この場合、駆動ローラ21は、カール付与ローラとして構成される。なお、駆動ローラ21の径は、カール矯正ローラ41の径と略同じとする。
【0126】
このように構成されたプリンタ1は、シートSが繰出方向D1に搬送されて、カール矯正部40に通されてシートSがカール矯正をされた後に、シートSが引戻方向D2に搬送されて、駆動ローラ21に通される。
【0127】
この際、シートSは、駆動ローラ21に巻き付くように搬送されるため、シートSは、カール矯正がされたシートSに対して、再びカールを付与することになる。次いで、シートSが繰出方向D1に搬送されて、駆動ローラ21に通され、さらにカールが付与されて、排出口8からシートSが排出される。
【0128】
すなわち、シートSが駆動ローラ21に通されるカール工程は、カール矯正工程の後に設けられる。
【0129】
カール付与部63による効果が有効な画像は、上部が黒ベタ(高濃度画像)で、下部が白ベタのような、上流側のカール矯正効果が高く、下流側のカール矯正効果が低い画像である。これとは逆に、上部が白ベタで、下部が黒ベタの画像が入力部50から制御部60へ送られた場合、制御部60は画像を自動で判断し、上下を逆にして画像形成する。これにより、カール付与部63の効果が有効な画像となる。
【0130】
上記の画像以外でも、プリンタの構造上、カール矯正部40からシートSを引き戻す際に、カール付与部63からの指示によって、駆動ローラ21を通過しなければならない場合、1枚のシートS(所定の長さのシートS)の全長を駆動ローラ21に通過させ、シートSの全長にカールを付与することで、カールが均一なシートSを得ることができる。
【0131】
カール矯正部40とカール付与ローラとしての駆動ローラ21と間の搬送経路距離を、1枚のシートS(所定の長さのシートS)の全長よりも長くとることで、カール矯正部40からシートSを引き戻しても、カールが付与されずに、よりカール矯正効果の高いプリンタ1とすることもできる。
【0132】
[プリンタの作用]
実施例4のプリンタの作用を説明する。実施例4のプリンタ1は、駆動ローラ21は、搬送されるシートSに対して摩擦力を有するグリップローラであり、シートSがカール矯正部40に搬送された場合に、シートSを引戻方向D2に搬送して、所定の距離までグリップローラを通過させる(
図20)。
【0133】
これにより、グリップローラの駆動力と、シートSに対する摩擦力によって、シートSをグリップローラに巻き付くようにして搬送することができる。そのため、シートSがカール矯正部40にて矯正され過ぎて、逆反りしてしまった場合に、シートSをグリップローラに巻き付かせるように搬送して、シートSの逆反りを矯正することができる。その結果、逆反りのない平坦な姿勢のシートSに矯正することができる。
【0134】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0135】
以上、本発明のプリンタを実施例1及び実施例2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、各実施例の組み合わせや、設計の変更や、追加等は許容される。
【0136】
実施例1〜実施例4では、シートを写真用の写真用紙とする例を示した。しかし、シートは、この態様に限定されず、例えば普通紙であってもよい。
【0137】
実施例1,実施例3,実施例4では、カール矯正部40を1つ設け、実施例2では、カール矯正部40を2つ設ける例を示した。しかし、カール矯正部は、1つであっても、2つ以上であってもよい。
【0138】
実施例1〜実施例4では、シートSのカール量や、シートSに形成する画像の色に基づいて、シートSの搬送速度や、カール矯正ローラ41に対する案内部材42の位置や、カール矯正をするタイミングや回数を、ユーザが選択できる例を示した。しかし、シートSのカール量や、シートSに形成する画像の色に基づいて、シートSの搬送速度や、カール矯正ローラ41に対する案内部材42の位置や、カール矯正をするタイミングや回数を、自動で制御するようにしてもよい。
【0139】
実施例1〜実施例4では、カール矯正経路の曲率を12.5[mm]とする例を示した。しかし、カール矯正経路の曲率は、搬送されるシートの厚みや種類等によって変更されるものである。
【0140】
実施例1〜実施例4では、第1斜面42aと、第2斜面42bとがなす角度αを80度とする例を示した。しかし、第1斜面42aと、第2斜面42bとがなす角度αは、80度以下であってもよい。実施例1及び実施例2では、カール矯正経路で、シートの進行方向が100度変更される例を示した。しかし、カール矯正経路で、シートの進行方向が100度以上変更されてもよい。
【0141】
実施例1〜実施例4では、カール矯正ローラ41が、案内部材42に対して移動可能とする例を示した。しかし、案内部材42が、カール矯正ローラ41に対して移動可能であってもよい。
【0142】
実施例1〜実施例4では、プリンタ1は、ホストコンピュータ90に接続される例を示した。しかし、プリンタは、ホストコンピュータに接続されなくてもよい。
【0143】
実施例1〜実施例4では、サーマルヘッド5は、第1搬送経路X1に沿って配置され、シートSの繰出方向D1において、駆動ローラ21の下流に配置される例を示した。しかし、サーマルヘッド5は、第1搬送経路X1に沿って配置され、シートSの繰出方向D1において、駆動ローラ21の上流に配置されてもよい。
【0144】
実施例3では、デカール量推定情報61aを、ロール紙Rの使用量と、オーバーコート設定や、ロール紙(メディア)Rの種類や、ロール紙Rの経過年数や、高濃度印画の有無と、の関係に基づいて決定する例を示したが、この態様に限定されるものではない。
【0145】
実施例4では、カール矯正部40に通されてシートSは、シートSが引戻方向D2に搬送されて、駆動ローラ21に通された後に、シートSが繰出方向D1に搬送されて、駆動ローラ21に通されるように動作する例を示した。しかし、カール矯正部40に通されてシートSは、駆動ローラ21に複数回通されるようにしてもよい。
【0146】
実施例1〜実施例4では、本発明を昇華型熱転写方式のプリンタに適用する例を示した。しかし、本発明は、インパクトドット方式のプリンタや、サーマル方式のプリンタや、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等にも適用可能である。
【解決手段】 ロール紙Rから繰り出されるシートSが搬送される第1搬送経路X1と、第1搬送経路X1に配置される、シートSを搬送可能な駆動ローラ21と、画像形成部(サーマルヘッド5)と、第1搬送経路X1から分岐する第2搬送経路X2と、シートSの搬送経路を切り替える経路変更部30と、第2搬送経路X2に設けられるカール矯正部40と、第1搬送経路X1に設けられる切断部(カッターユニット7)と、を備え、カール矯正部40は、カール矯正ローラ41と、案内部材42と、で所定の曲率半径の搬送経路を形成し、カール矯正部40をシートSが通過する際、シートSの進行方向は、角度100度以上変更される。