特許第6672528号(P6672528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6672528ソルビトールトリアセタールおよびモノアセタールを含む透明核剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672528
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ソルビトールトリアセタールおよびモノアセタールを含む透明核剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20200316BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20200316BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20200316BHJP
   C07D 319/06 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
   C07D493/04 106B
   C08L23/04
   C08L23/10
   C08K5/053
   !C07D319/06
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-520183(P2019-520183)
(86)(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公表番号】特表2019-525953(P2019-525953A)
(43)【公表日】2019年9月12日
(86)【国際出願番号】CN2016098059
(87)【国際公開番号】WO2018040093
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】518459031
【氏名又は名称】呈和科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GCH TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 文林
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/018108(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102675331(CN,A)
【文献】 特開昭51−067395(JP,A)
【文献】 特公昭48−043748(JP,B1)
【文献】 特開昭63−267777(JP,A)
【文献】 国際公開第93/009121(WO,A1)
【文献】 米国特許第06121332(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物および式(IV)の化合物を含む核剤組成物。
(式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)中、nは1または2であり、RはC1-C8アルキル基、C1-C4アルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、水素、ハロゲンおよびC1-C6アルキルチオ基からなる群より選択され、式(I)の化合物の重量と、式(II)の化合物の重量と、式(III)および式(IV)の化合物の重量の和との重量比は(97.00-99.90):(0.20-8.00):(0.02-1.00)である。)
【請求項2】
Rは-Cl、-Br、-CH3または-CH2-CH3である請求項1に記載の核剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の核剤組成物の製造方法であって、
容器に、必要とされる芳香族アルデヒドの三分の一および全てのソルビトールを加え、撹拌して混合物とするステップ1)と、
ステップ1)の混合物にシクロヘキサンを加えるステップ2)と、
ステップ2)の生成物に複合触媒を加えるステップ3)と、
ステップ3)の生成物を、シクロヘキサンが還流してアルドール縮合脱水反応が起こるまで加熱し、引き続き0.4-1.0時間加熱するステップ4)と、
ステップ4)の生成物に、必要とされる芳香族アルデヒドの三分の一とシクロヘキサンの混合物を加えるステップ5)と、
ステップ5)の生成物を0.4-1.0時間加熱し、加熱混合物を得るステップ6)と、
加熱混合物に、必要とされる芳香族アルデヒドの三分の一とシクロヘキサンの混合物を加え、油水分離器が収集した水とソルビトールとのモル比が1.5-2.0:1.0になるまで加熱を続けるステップ7)と、
降温し、シクロヘキサンおよび水を減圧蒸留することで粗生成物を得るステップ8)と、
得られた粗生成物を水に加えて分散させ、さらに水酸化ナトリウムおよび過酸化水素水を加え、撹拌するステップ9)と、
加圧濾過、水洗、乾燥、粉砕して白色粉末の核剤組成物を得るステップ10)と、を含み、
芳香族アルデヒドの構造式は、
であり、
ここで、nは1または2であり、RはC1-C8アルキル基、C1-C4アルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、水素、ハロゲンおよびC1-C6アルキルチオ基からなる群より選択され、複合触媒はp-トルエンスルホン酸およびアルコールエーテルを含む混合物である方法。
【請求項4】
前記アルコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルまたはエチレングリコールジブチルエーテルであり、p-トルエンスルホン酸とアルコールエーテルとのモル比は3-5:8-10である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ5)で加えるシクロヘキサンとステップ1)で加えるシクロヘキサンとの体積比は1:3であり、ステップ7)で加えるシクロヘキサンとステップ1)で加えるシクロヘキサンとの体積比は1:3であり、ステップ5)とステップ7)で加えるシクロヘキサンの体積は同じである請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の核剤組成物の、性能が向上したポリマーの製造における使用であって、
上記ポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンであり、上記性能は、(a)低下した押出温度、(b)向上した透明性、(c)向上した光沢度、(d)向上した曲げ弾性率、(e)向上した引張強度、(f)向上した製品の熱変形温度、(g)改善された寸法安定性、(h)短縮された成形サイクル、(i)向上したポリマー製品の生産効率のうちの1種または複数種である使用。
【請求項7】
請求項1または2に記載の核剤組成物の、改善された透明性および低下した押出温度を有するポリマーの製造における使用。
【請求項8】
ポリマーおよび請求項1または2に記載の核剤組成物を含むポリマー組成物であって、
前記核剤組成物の前記ポリマー組成物における重量パーセントは0.03-0.3%あるポリマー組成物。
【請求項9】
ポリマーは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレンは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、またはエチレン共重合体であ請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリマーの形態は、ポリマーフィルム、ポリマーシート、ポリマー成形品またはポリマー製品である請求項6または7に記載の使用。
【請求項12】
前記ポリマーの形態は、ポリマーフィルム、ポリマーシート、またはポリマー成形品であり、性能の向上は、ポリマーフィルム、ポリマーシートまたはポリマー成形品の曲げ弾性率および引張強度の向上である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記ポリマーの形態は、ポリマー製品であり、性能の向上は、ポリマー製品の熱変形温度の向上および/または寸法安定性の改善である請求項11に記載の使用。
【請求項14】
改善された性能を有するポリマーの製造方法であって、
請求項1または2に記載の核剤組成物を請求項1または2に記載の核剤組成物を含まないポリマーに加えることで性能が改善されたポリマーを得るステップを含み、
上記ポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンであり、核剤組成物を加えていない出発ポリマーに比べて、上記ポリマーは、(a)低下した押出温度、(b)向上した透明性、(c)向上した光沢度、(d)向上した曲げ弾性率、(e)向上した引張強度、(f)向上した製品の熱変形温度、(g)改善された寸法安定性、(h)短縮された成形サイクル、(i)向上したポリマー製品の生産効率のうちの少なくとも1つの性能を有する方法。
【請求項15】
前記改善された性能は、向上した透明性および低下した押出温度である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーの形態は、ポリマーフィルム、ポリマーシート、ポリマー成形品またはポリマー製品である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーの形態は、ポリマーフィルム、ポリマーシート、またはポリマー成形品であり、改善された性能は、ポリマーフィルム、ポリマーシートまたはポリマー成形品の曲げ弾性率および引張強度の向上である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーの形態は、ポリマー製品であり、改善された性能は、ポリマー製品の熱変形温度の向上および/または寸法安定性の改善であ請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記核剤組成物の前記ポリマー組成物における重量パーセントは0.05-0.25%である請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、塩素化ポリプロピレンおよびグラフトポリプロピレンからなる群より選択される請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記エチレン共重合体は、エチレン-プロピレン共重合体、EVA、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体またはエチレン不飽和エステル共重合体である請求項10に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを製造する核剤およびその核剤の使用に関し、特に、ソルビトールトリアセタール、ソルビトールジアセタールおよびモノアセタールを含む核剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工業で用いられているソルビトール系核剤は、基本的にジアセタールを基本成分としており、トリアセタール生成物およびモノアセタールを不純物として製品から分離するか、または製造工程においてトリアセタールおよびモノアセタールが生成されないように反応条件を制御するようにしている。例えば、中国特許出願CN200410026622.8には、核剤を精製することでモノメチレンベンジリデンソルビトールおよびトリメチレンベンジリデンソルビトールを除去することにより製品の純度が向上することが開示されているが、同出願においては、処理された製品の純度は100%に達することができず、その中の不純物およびその不純物の含有量も確定できない。
【0003】
また、ソルビトール系核剤に含まれるトリアセタールの含有量が高すぎるか、またはトリアセタールが存在しない場合もある。例えば、中国特許出願CN200810219978.1に開示された核剤の製造方法では、製造工程において芳香族アルデヒドの添加量、反応時間および温度が制御されるが、原料投入順序および投入量が慎重に制御されないため、反応生成物におけるジアセタールおよびトリアセタール生成物は制御できず、生成物の正確な含有量の範囲が明らかではなく、特定の含有量でトリアセタールが含まれる核剤の製品性能に対する作用も明らかではない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するために、ソルビトールジアセタールとの間に特定の比率関係があるソルビトールトリアセタールおよびモノアセタールを含むことができる核剤組成物を提供する。該組成物は、ポリマーの核形成に特別な作用を奏することができる。さらに、本発明では、濃度の異なるソルビトールトリアセタールおよびモノアセタールが含まれる核剤の、異なるポリマー核形成における特定の作用が確定される。
【0005】
本発明において、核剤は、核を形成するための製剤であって、ポリマーの核形成に用いられるものである。
【0006】
第1の態様では、本発明は核剤組成物を提供する。該組成物は、下記式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物および式(IV)の化合物を含む。
式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)中、nは1または2であり、RはC1-C8アルキル基、C1-C4アルコキシカルボキシ基、ヒドロキシ基、水素、ハロゲンおよびC1-C6アルキルチオ基からなる群より選択される。該組成物において、式(I)の化合物の重量と、式(II)の化合物の重量と、式(III)および式(IV)の化合物の重量和との重量比は(97.00-99.90):(0.20-8.00):(0.02-1.00)である。
【0007】
好ましくは、式(I)の化合物の重量と、式(II)の化合物の重量と、式(III)および式(IV)の化合物の重量和との重量比は(97.00-99.90):(0.20-5.00):(0.02-0.80)である。
【0008】
好ましくは、式(I)の化合物の重量と、式(II)の化合物の重量と、式(III)および式(IV)の化合物の重量和との重量比は(97.00-99.90):(0.20-3.00):(0.02-0.15)である。
【0009】
上記組成物において、Rは-Cl、-Br、-CH3または-CH2-CH3であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明は、組成物を提供する。該組成物は、上記式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物および式(IV)の化合物からなる。
【0011】
好ましくは、本発明において、式(I)で表される化合物はソルビトールジアセタール、式(II)で表される化合物はソルビトールトリアセタール、式(III)および式(IV)で表される化合物はソルビトールモノアセタールと略称される。
【0012】
第2の態様では、本発明は、上記核剤組成物の製造方法を提供する。該製造方法は、
容器に、必要とされる芳香族アルデヒドの三分の一および全てのソルビトールを加え、撹拌して混合物とするステップ1)と、
ステップ1)の混合物にシクロヘキサンを加えるステップ2)と、
ステップ2)の生成物に複合触媒を加えるステップ3)と、
ステップ3)の生成物を、シクロヘキサンが還流してアルドール縮合脱水反応が起こるまで加熱し、引き続き0.4-1.0時間加熱するステップ4)と、
ステップ4)の生成物に、必要とされる芳香族アルデヒドの三分の一とシクロヘキサンの混合物を加えるステップ5)と、
ステップ5)の生成物を0.4-1.0時間加熱し、加熱混合物を得るステップ6)と、
加熱混合物に、必要とされる芳香族アルデヒドの三分の一とシクロヘキサンの混合物を加え、油水分離器が収集した水とソルビトールとのモル比が1.5-2.0:1.0になるまで加熱を続けるステップ7)と、
降温し、シクロヘキサンおよび水を減圧蒸留することで粗生成物を得るステップ8)と、
得られた粗生成物を水に加えて分散させ、さらに水酸化ナトリウムおよび過酸化水素水を加え、撹拌するステップ9)と、
加圧濾過、水洗、乾燥、粉砕して白色粉末の核剤組成物を得るステップ10)と、を含む。
【0013】
上記方法では、上記芳香族アルデヒドの構造式は、
である。
ここで、nは1または2であり、RはC1-C8アルキル基、C1-C4アルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、水素、ハロゲンおよびC1-C6アルキルチオ基からなる群より選択される。
【0014】
上記複合触媒は、p-トルエンスルホン酸およびアルコールエーテルを含む混合物である。
【0015】
好ましくは、ステップ5)で加えるシクロヘキサンとステップ1)で加えるシクロヘキサンとの体積比は1:3であり、ステップ7)で加えるシクロヘキサンとステップ1)で加えるシクロヘキサンとの体積比は1:3であり、ステップ5)とステップ7)で加えるシクロヘキサンの体積は同じである。
【0016】
好ましくは、芳香族アルデヒドは、p-クロロベンズアルデヒド、p-ブロモベンズアルデヒド、p-メチルベンズアルデヒド、p-エチルベンズアルデヒド、3,4ジメチルベンズアルデヒド、3,4-ジエチルベンズアルデヒド、3,4-ジクロロベンズアルデヒドまたは3,4-ジブロモベンズアルデヒドである。
【0017】
好ましくは、酸エーテル複合触媒はp-トルエンスルホン酸およびアルコールエーテルを含む混合物である。アルコールエーテルは、エチレングリコールのエーテル、好ましくはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルまたはエチレングリコールジブチルエーテルである。特に好ましくは、アルコールエーテルはエチレングリコールメチルエーテルである。混合物におけるp-トルエンスルホン酸とアルコールエーテルとのモル比は3-5:8-10である。
【0018】
第3の態様では、本発明は、向上した性能を有するポリマーの製造における上記製造された核剤組成物の使用をさらに提供する。上記ポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンである。上記性能の改善は、押出温度の低下、ポリマーフィルム、ポリマーシートおよびポリマー成形品の透明性、光沢度、曲げ弾性率および/または引張強度の向上、ポリマー製品の熱変形温度および/または寸法安定性の向上、ポリマー製品成形サイクルの短縮、ポリマー製品の生産効率、のうちの1種または複数種を含む。
【0019】
さらに、本発明は、向上した性能を有するポリマーの製造における上記製造された核剤組成物の使用を提供する。上記ポリマーは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。改善された性能は、(a)押出温度の低下、(b)透明性の向上、(c)光沢度の向上、(d)曲げ弾性率の向上、(e)引張強度の向上、(f)熱変形温度の向上、(g)寸法安定性の向上、(h)成形サイクルの短縮、(i)ポリマー製品生産効率の向上のうちの1種または複数種を含む。
【0020】
好ましくは、本発明は、透明性が向上し、押出温度が低下したポリマーの製造における上記核剤組成物の使用を提供する。
【0021】
上記使用では、ポリマーの形態は、ポリマーフィルム、ポリマーシート、ポリマー成形品またはポリマー製品である。
【0022】
本発明は、改善された性能を有するポリマーの製造方法をさらに提供する。該方法は、上記核剤組成物をポリマーに加えるステップを含む。上記ポリマーは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。上記性能の改善は、押出温度の低下、ポリマーフィルム、ポリマーシートおよびポリマー成形品の透明性、光沢度、曲げ弾性率および/または引張強度の向上、ポリマー製品の熱変形温度および/または寸法安定性の向上、ポリマー製品の成形サイクルの短縮、およびポリマー製品の生産効率の向上のうちの1種または複数種である。
【0023】
本発明は、改善された性能を有するポリマーの製造方法をさらに提供する。該方法は、上記核剤組成物を本発明の上記核剤組成物を含まないポリマーに加えることで性能が改善されたポリマーを得るステップを含む。上記ポリマーは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。本発明の核剤組成物を加えていない出発ポリマーに比べて、上記ポリマーは、(a)低下した押出温度、(b)向上した透明性、(c)向上した光沢度、(d)向上した曲げ弾性率、(e)向上した引張強度、(f)向上した製品の熱変形温度、(g)改善された寸法安定性、(h)短縮された成形サイクル、(i)向上したポリマー製品の生産効率の少なくとも1つを有する。
【0024】
好ましくは、上記方法では、向上した性能は、向上した透明性および/または低下した押出温度である。
【0025】
好ましくは、上記方法では、性能が向上したポリマーの形態は、ポリマーフィルム、ポリマーシート、ポリマー成形品またはポリマー製品である。具体的には、性能が改善されたポリマーの形態がポリマーフィルム、ポリマーシート、ポリマー成形品である場合に、性能の改善は、ポリマーフィルム、ポリマーシートまたはポリマー成形品の曲げ弾性率および引張強度の向上である。好ましくは、改善されたポリマーの形態がポリマー製品である場合に、性能の改善は熱変形温度および/または寸法安定性の向上である。
【0026】
本発明は、改善された透明度および低下した押出温度を有するポリマーの製造方法を提供する。該方法は、本発明の上記透明核剤組成物をポリマーに加えるステップを含む。
【0027】
好ましくは、ポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【0028】
第4の態様では、本発明は、ポリマーおよび上記核剤組成物を含むポリマー組成物を提供する。核剤組成物のポリマー組成物における重量パーセントは0.03-0.3%であり、好ましくは、核剤組成物のポリマー組成物における重量パーセントは0.05-0.25%である。好ましくは、上記ポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【0029】
本発明に記載のポリエチレンは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン共重合体を含むが、これらに限定されない。エチレン共重合体は、エチレン-プロピレン共重合体、EVA、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン不飽和エステル共重合体等を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本発明に記載のポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、塩素化ポリプロピレンおよびグラフトポリプロピレン等からなる群より選択される。
【0031】
本発明の上記核剤組成物は、PE(ポリエチレン)およびPP(ポリプロピレン)のある性能を改善することができる。特に、PEおよびPPの加工温度を低下させることができる。ソルビトールトリアセタールおよびソルビトールモノアセタールを含む核剤は、純粋なソルビトールジアセタール、またはソルビトールモノアセタールもしくはソルビトールトリアセタールを含まない透明核剤に比べて、押出温度が10℃以上低下し、加工工程におけるエネルギー消費量が低減される。そして、他の性能の改善にも予測できない効果を有する。例えば、ポリマーフィルム、シートおよび成形品等の製品の透明性、光沢度、曲げ弾性率および引張強度の向上、製品の熱変形温度および寸法安定性の向上、成形サイクルの短縮、生産効率の向上がある。上記ポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の以下の実施例で用いられる複合触媒は、以下の通りである。
複合触媒1:p-トルエンスルホン酸とエチレングリコールモノメチルエーテルとのモル比は3:10である。
複合触媒2:p-トルエンスルホン酸とエチレングリコールジメチルエーテルとのモル比は3:10である。
複合触媒3:ベンゼンスルホン酸と、エチレングリコールジブチルエーテルと、スパン40とのモル比は5:7:10である。
【0033】
実施例1 核剤組成物1
2000Lの反応釜に85kgの固体ソルビトールおよび45kgのp-クロロベンズアルデヒドを加えた後、さらに約600Lのシクロヘキサンを加え、30分間撹拌した。次いで10kgの複合触媒1を加え、溶媒シクロヘキサンが還流するまで加熱しながら撹拌し、反応を30分間維持した後、45kgのp-クロロベンズアルデヒドと200Lのシクロヘキサンの混合物を加え、さらに反応を30分間維持した後、45kgのp-クロロベンズアルデヒドと200Lのシクロヘキサンの混合物を加え、引き続き2.3時間反応させた。油水分離器に収集された縮合反応により生成した水が約14Lに達したときから、シクロヘキサンを回収し始め、その後、降温し、減圧蒸留により残りのシクロヘキサンおよび水を回収した。得られた製品に水を加えて分散させ、3kgの水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、さらに濃度が約30%wtの過酸化水素水20kgを加えて撹拌した後、水洗、加圧濾過、乾燥することで、白色粉末製品1を得た。ガスクロマトグラフ−質量分析計により分析した結果、ビス(p-クロロベンジリデン)ソルビトール190.5 kg、トリ(p-クロロベンジリデン)ソルビトール5.69kg、モノ(p-クロロベンジリデン)ソルビトール0.04kg(重量比は約97.155:2.902:0.0204)であった。
【0034】
実施例2 核剤組成物2
2000Lの反応釜に85kgの固体ソルビトールおよび38.6kgのp-メチルベンズアルデヒドを加え、さらに約600Lのシクロヘキサンを加え、30分間撹拌した。次いで10kgの複合触媒2を加え、溶媒シクロヘキサンが還流するまで加熱しながら撹拌し、反応を30分間維持した後、38.6kgのp-クロロベンズアルデヒドと200Lのシクロヘキサンの混合物を加え、さらに反応を30分間維持した後、38.6kgのp-クロロベンズアルデヒドと200Lのシクロヘキサンの混合物を加え、引き続き2.4時間反応させた。油水分離器に収集された縮合反応により生成した水が約15Lに達してからシクロヘキサンを回収し始め、その後、降温し、減圧蒸留により残りのシクロヘキサンおよび水を回収した。得られた製品に水を加えて分散させ、3kgの水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、さらに濃度が約30%の過酸化水素水20kgを加えて撹拌した後、水洗、加圧濾過、乾燥することで、白色粉末製品2を得た。ガスクロマトグラフ−質量分析計により分析した結果、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール173.2kg、トリ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール0.35kg、モノ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール1.384kg(重量比は約98.90:0.230:0.790)であった。
【0035】
実施例3 核剤組成物3
1000Lの反応釜に37kgの3,4-ジメチルベンズアルデヒドおよび75kgの固体ソルビトールを加え、さらに250Lの溶媒シクロヘキサンを加えた後、反応釜の撹拌器を起動させ、次いで電気加熱炉を起動させて加熱を行い、油温を65℃に維持し、9.6kgの複合触媒3を10分かけてゆっくりと加えた。次いで、チラーシステムを起動させ、油温を100〜120℃に一定に保持するように電気加熱炉の油温を改めて調節し、30分間維持した後、37kgの3,4-ジメチルベンズアルデヒドおよび125Lの溶媒シクロヘキサンを加え、30分間維持した後、さらに37kgの3,4-ジメチルベンズアルデヒドおよび125Lの溶媒シクロヘキサンを加え、シクロヘキサンを還流冷却器において絶えず還流させることでアルドール縮合反応により生成した水を絶えず排出することにより、反応をスムーズに進行させた。水量が14.8Lに達したときから、シクロヘキサンを回収し始め、次いで降温し、減圧蒸留により残りのシクロヘキサンおよび水を回収し、得られた製品に水を加えて分散を行い、3kgの水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、さらに濃度が約30%の過酸化水素水20kgを加えて撹拌し、その後、水洗、加圧濾過、乾燥することで、白色粉末製品3を得た。ガスクロマトグラフ−質量分析計により分析した結果、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール169.1kg、トリ(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール1.029 kg、モノ(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール0.345(重量比は約99.177:0.604:0.148)であった。
【0036】
比較例1 比較核剤組成物1
温度計、撹拌パドル、有機キャリア電気加熱システムおよび油水分離器、還流冷却器を備える2000Lの反応釜で合成を行った。まず、反応釜に115kgのp-クロロベンズアルデヒドおよび70kgの固体ソルビトールを加え、さらに約600Lの溶媒シクロヘキサンを加えた後、点検カバーを締めた。次いで、反応釜の撹拌モータを起動させて撹拌を行い、さらに電気加熱炉を起動させて加熱し、油温を55℃に維持した状態で、30分かけて原料を十分に混合した。p-クロロベンズアルデヒドが完全に溶解したことを確認した後、約10分かけてベンゼンスルホン酸/エチレングリコールメチルエーテル複合触媒(ベンゼンスルホン酸3.5kg/エチレングリコールメチルエーテル3.6kg)をゆっくりと加え、その後、チラーシステムを起動させた。油温を100〜120℃に一定に保持するように電気加熱炉の油温を改めて調節し、シクロヘキサンを還流冷却器中で絶えず還流させた。シクロヘキサンとアルドール縮合反応により生成した水とで形成された最低共沸混合物を還流冷却器により油水分離することにより水を絶えず排出し、反応をスムーズに進行させた。水量が所定値に達した時点で、反応は終了し、粗生成物が生成した。粗生成物をステンレスバケツに移し、水を加え、分散機により分散させた後、コロイドミルで粉砕し、次いで、分離機内でリンスして脱水した。脱水された粗生成物をさらにステンレスバケツに移し、4kgのNaOHを加え、高速撹拌することでスラリー化させた後、35kgのH2O2(H2O2濃度は約30%)を加え、4時間撹拌した後、水洗し、遠心分離により脱水し、これを2回繰り返した。次いで、乾燥、製粉して比較製品1を得た。ガスクロマトグラフ−質量分析計により分析した結果、モノ(p-クロロベンジリデン)ソルビトールは含まれていなかった。
【0037】
比較例2 比較核剤組成物2
温度計、撹拌パドル、有機キャリア電気加熱システム、油水分離器、還流冷却器を備える2000Lの反応釜で合成を行った。まず、反応釜に120kgのp-メチルベンズアルデヒドおよび85kgの固体ソルビトールを加え、さらに約600Lの溶媒シクロヘキサンを加え、点検カバーを締めた。反応釜の撹拌モータを起動させて撹拌を行い、さらに電気加熱炉を起動させて加熱し、油温を55℃に維持した状態で30分かけて原料を十分に混合した。p-メチルベンズアルデヒドが完全に溶解したことを確認した後、約10分かけてベンゼンスルホン酸/エチレングリコールメチルエーテル複合触媒(ベンゼンスルホン酸3.5kg/エチレングリコールメチルエーテル3.6kg)をゆっくりと加えた後、チラーシステムを起動させた。油温を100〜120℃に一定に保持するように電気加熱炉の油温を改めて調節し、シクロヘキサンを還流冷却器中で絶えず還流させた。シクロヘキサンとアルドール縮合反応により生成した水とで形成された最低共沸混合物を還流冷却器により油水分離することにより水を絶えず排出し、反応をスムーズに進行させた。水量が所定値に達した時点で、反応は終了し、粗生成物が生成した。粗生成物をステンレスバケツに移し、水を加え、分散機により分散させた後、コロイドミルで粉砕し、次いで、分離機内でリンスして脱水した。脱水された粗生成物をさらにステンレスバケツに移し、4kgのNaOHを加え、高速撹拌することでスラリー化させた後、35kgのH2O2(H2O2濃度は約30%)を加え、4時間撹拌した後、水洗し、遠心分離により脱水し、これを2回繰り返した。次いで、乾燥、製粉して比較製品1を得た。ガスクロマトグラフ−質量分析計により分析した結果、トリ(p-メチルベンジリデン)ソルビトールは含まれていなかった。
【0038】
比較例3 比較核剤組成物3
温度計、撹拌パドル、有機キャリア電気加熱システム、油水分離器、還流冷却器を備える1000Lの反応釜で合成を行った。まず、反応釜に108kgの3,4-ジメチルベンズアルデヒドおよび73kgの固体ソルビトールを加え、さらに約450Lの溶媒シクロヘキサンを加えた。次いで、反応釜の撹拌器を起動させ、油温を55℃に維持し、3,4-ジメチルベンズアルデヒドと固体ソルビトールとを混合した後、p-トルエンスルホン酸/エチレングリコールモノメチルエーテル/スパン60からなる複合触媒8.3kgを約10分かけてゆっくりと加えた。その後、チラーシステムを起動させ、油温を100〜120℃に一定に保持するように電気加熱炉の油温を改めて調節し、シクロヘキサンを還流冷却器中で絶えず還流させることにより、アルドール縮合反応により生成した水を絶えず排出し、反応をスムーズに進行させた。水量が所定値に達した時点で、反応は終了し、粗生成物が生成した。この反応に1.5-2.0時間かかった。溶媒を回収して反応を終了させた後、電気加熱炉の油温を55℃に調節し、余熱で溶媒シクロヘキサンを蒸留回収した。溶媒の留出量が少なくなったら、真空引きシステムを起動させ、シクロヘキサンを全部留出するまで適宜に減圧した。反応釜に比較製品3が残った。ガスクロマトグラフ−質量分析計により分析した結果、モノ(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールは含まれていなかった。
【0039】
ガスクロマトグラフ−質量分析計により実施例1-3および比較例1-3の製品を測定する方法は以下の通りである。
約0.5000gの実施例製品を秤量し、10.0mlメスフラスコに入れ、ジメチルスルホキシド超音波溶液で定容し、GCMS面積正規化法により全成分測定を行う。クロマトグラムは原料の不純物(3,4-ジメチルベンズアルデヒド)を積分して比較しない。
【0040】
実験分析により明らかなように、システムにおける試料の残留が比較的大きく、試料注入後の第1回目のブランク測定ではトリアセタールが検出されたが、第2回目のブランク測定ではスペクトルに不純物ピークが検出されなかったため、各試料について1回のシステムブランクプログラムを行うことにより残留を除去し、また、各試料について2回分析を行い、第2回目の分析データを選択して解析する。測定結果は、GCMSsolution 4.11 SU1ソフトウェアにより自動的に算出される。
ガスクロマトグラフィーの条件
注入温度:300℃
注入時間:0.5分間
カラムオーブン温度:120℃
圧力:91.0kPa
総流量:6.0ml/min
カラム流量:3.00ml/min
線速度:65.0cm/sec
パージ流量:3ml/min
昇温プログラム:120℃(1.00min)〜15℃/min〜300℃(17.00min)
質量分析の条件
イオン源温度:260℃
インターフェース温度:300℃
スキャン速度:2000,
スキャン範囲:m/z80〜m/z1000,
溶媒遅延時間:1.50min,
収集開始時間:1.75min,
収集終了時間:30.00min。
【0041】
実験実施例
PP(ポリプロピレン)およびPE(ポリエチレン)の性能に対する実施例1-3の核剤の影響の測定
【0042】
それぞれポリエチレンおよびポリプロピレンに実施例1-3で得られた核剤組成物の白色粉末状製品1-3および比較例の比較製品1-3を加え、ポリマーに対する影響を測定した。
【0043】
核剤組成物をPP、PE樹脂に応用する場合、一般に、その添加量は1.5g~2.5g(/1000g樹脂)、押出温度は180〜210℃であるため、PP、PE製品に対する核剤組成物の影響を測定するため、全ての実施例で、核剤組成物の添加量を0.15~0.25%(PP、PE樹脂に対する質量)、押出温度を180~210℃とした。
【0044】
実施例1-10の核剤組成物および比較例の製品各2gを添加量に従ってそれぞれ1000gの樹脂に加え、高速ミキサー中で5分間混合して樹脂混合物を形成した後、二軸スクリュー混練機により押出温度180~210℃で押出して造粒することでサンプルを得た。
【0045】
上記サンプルの製造方法と同様にブランク核剤の単独重合ポリプロピレンHP500N樹脂組成物およびブランク核剤の線形低密度ポリエチレン7042樹脂組成物を製造し、二軸スクリュー混練機により押出して造粒することでサンプル比較品を得た。
【0046】
ポリプロピレン組成物を230℃で射出成形し、光透過率、ヘイズ試験用サンプルおよび衝撃試験用サンプルを製造した。ポリエチレン組成物を200℃でフィルムに押出ブロー成形し、光透過率、ヘイズ試験用サンプルを製造し、200℃で射出成形し、衝撃試験用サンプルを製造した。ポリプロピレン製の光透過率、ヘイズ試験用サンプルの厚さは1.0mmであり、ポリエチレン製の光透過率、ヘイズ試験用サンプルの厚さは0.030mmであった。
【0047】
実施例で製造された核剤のポリエチレンおよびポリプロピレンの性能に対する影響および加工温度に対する影響を下表に示す。
表1 射出成形ウェハの性能に対する実施例の核剤の影響(核剤添加量はポリマーの0.2%wt)
【0048】
上記の実験結果から分かるように、本発明の実施例1-3の製品をポリオレフィン製品の製造に用いることにより、ポリマーの透明性が改善された。
ポリエチレンでは、ソルビトールモノアセタールおよびトリアセタールを含む透明核剤は、ソルビトールモノアセタールまたはソルビトールトリアセタールを含まない透明核剤よりも、透明性(主に光透過率およびヘイズ)に優れる。
ポリプロピレンでは、ソルビトールトリアセタールおよびソルビトールモノアセタールを含む透明核剤は、ソルビトールトリアセタールまたはソルビトールモノアセタールを含まない透明核剤よりも、透明性(主に光透過率およびヘイズ)に優れる。
加工温度、つまり押出温度では、市販品と比較(市販品にはソルビトールトリアセタールが含まれない、または含有量が0.1%未満である。成分の分析方法は上記と同様である)したところ、市販品の実験条件は実施例1-3および比較例1-3と同じである一方、ポリエチレンおよびポリプロピレンの性能に対する市販品の効果は、本発明の実施例1-3の製品のほど優れておらず、市販品の押出温度は約10-20℃であって、比較的高い。
【0049】
表2 射出成形ウェハの性能に対する市販品核剤の影響(核剤添加量はポリマーの0.2%wt)
表2における市販品(中国市場から購入)にはソルビトールトリアセタールが含まれない。