特許第6672530号(P6672530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672530
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】クレーン装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/08 20060101AFI20200316BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B66C13/08 Q
   B66C13/08 U
   B66C19/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-528387(P2019-528387)
(86)(22)【出願日】2018年5月16日
(86)【国際出願番号】JP2018018938
(87)【国際公開番号】WO2019008914
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-131987(P2017-131987)
(32)【優先日】2017年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 伸郎
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−176217(JP,A)
【文献】 特開平10−152289(JP,A)
【文献】 特開2014−144836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66C 19/00
B66C 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた領域にコンテナを載置可能なコンテナヤード上において前記コンテナの搬送を行うクレーン装置であって、
前記コンテナを係止可能であり、前記コンテナを係止して吊り上げることにより前記コンテナを吊コンテナとし当該吊コンテナの荷役を行う荷役部と、
前記吊コンテナを載置しようとする前記領域のヤード表面の水平面に対する傾斜角度を認識する傾斜角度認識部と、
前記荷役部の位置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記領域に載置された前記コンテナである積み付けコンテナの上面に前記吊コンテナを載置する際、前記傾斜角度認識部により認識された前記傾斜角度に基づき、前記吊コンテナの下面の中心を、前記積み付けコンテナの上面の中心に対して前記上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように前記荷役部の位置を制御する、クレーン装置。
【請求項2】
前記コンテナヤードは、前記領域を複数有し、
予め測定された前記領域それぞれのヤード表面の前記傾斜角度を記憶する記憶部を更に備え、
前記傾斜角度認識部は、前記吊コンテナを載置しようとする前記領域に対応する前記傾斜角度を前記記憶部から読み出すことにより、前記吊コンテナを載置しようとする前記領域に対応する前記傾斜角度を認識する、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
前記荷役部は、前記傾斜角度認識部により認識される前記傾斜角度に相当する自身の水平面に対する傾斜角度を測定する傾斜角度測定部を有し、
前記制御部は、
前記吊コンテナの下面の中心を前記積み付けコンテナの中心に対して一致させるように前記吊コンテナを前記積み付けコンテナ上に載置させ、
前記傾斜角度測定部により前記自身の水平面に対する傾斜角度を測定させ、
前記傾斜角度測定部により測定された前記自身の水平面に対する傾斜角度に基づき、前記吊コンテナの下面の中心を、前記積み付けコンテナの上面の中心に対して前記上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように前記荷役部の位置を制御する、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吊コンテナの下面の中心を、前記積み付けコンテナの上面の中心に対して次の数式(1)で示す水平距離Δずらす、請求項1〜3の何れか一項に記載のクレーン装置。
【数1】

(ただし、Lを前記コンテナの高さとし、θを前記ヤード表面の前記傾斜角度とする。)
【請求項5】
予め定められた領域にコンテナを載置可能なコンテナヤード上において前記コンテナの搬送を行うクレーン装置であって、
前記コンテナを係止可能であり、前記コンテナを係止して吊り上げることにより前記コンテナを吊コンテナとし当該吊コンテナの荷役を行う荷役部と、
前記吊コンテナを載置しようとする前記領域のヤード表面の水平面に対する傾斜角度を認識する傾斜角度認識部と、
前記荷役部の位置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記領域に載置された前記コンテナである積み付けコンテナの上面に前記吊コンテナを載置する際、前記傾斜角度認識部により認識された前記傾斜角度が予め定められた許容角度よりも大きい場合には、前記積み付けコンテナの下面の中心を通り前記水平面に対する鉛直方向へ延びる直線上に前記吊コンテナの下面の中心を位置させて、前記積み付けコンテナの上面に前記吊コンテナを載置させるように前記荷役部の位置を制御する、クレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、クレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め定められた領域にコンテナを載置可能なコンテナヤード上に、コンテナの搬送を行うクレーン装置が知られている。例えば特許文献1には、クレーン本体からワイヤを介して吊り下げられ、コンテナを係止して吊り上げることによりコンテナの荷役を行うスプレッダと、コンテナヤードに載置されたコンテナの位置を検出する位置検出部と、を備えたクレーン装置が記載されている。このクレーン装置は、位置検出部により検出された結果に基づき、スプレッダにより吊り上げられたコンテナを、コンテナヤードに載置されたコンテナの上に載置する。
【0003】
一般にスプレッダは、平面視略矩形状のスプレッダ本体部と、スプレッダ本体部の外側に設けられ、スプレッダ本体部を目標のコンテナ上に案内する案内部と、を有している。案内部は、目標のコンテナと当該目標のコンテナに隣接するコンテナとの隙間に進入しつつ、スプレッダ本体部を目標のコンテナ上に位置させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/121973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンテナヤードのヤード表面は、水平面に対して傾斜している部分を有する場合がある。コンテナを載置しようとする領域のヤード表面が水平面に対して傾斜している場合、当該ヤード表面上にコンテナが載置されると、当該ヤード表面上に載置されたコンテナの下面及び上面も水平面に対して傾く。そして、当該ヤード表面上に載置されたコンテナの位置は、コンテナを載置しようとする領域における正常な積み付け位置に対して水平方向にずれる。
【0006】
コンテナを載置しようとする領域のヤード表面が水平面に対して傾斜している場合に上記特許文献1に記載されているようなクレーン装置を用いてコンテナの荷役を行うと、ヤード表面上に載置されることにより傾斜したコンテナの上にコンテナが次々と載置されて積み上げられていくこととなる。よって、このような領域に積み上げられたコンテナの位置の正常な積み付け位置に対する水平方向のずれ量は、コンテナの積み上げ数が多くなるほど大きくなる。当該水平方向のずれ量が大きくなることにより、このような領域に積み上げられたコンテナと当該コンテナに隣接する領域に積み上げられたコンテナとの隙間が小さくなる可能性がある。当該隙間が小さくなると、コンテナをスプレッダにより吊り上げる際にスプレッダの案内部を当該隙間に進入させることができず、スプレッダ本体部をコンテナ上に位置させることができなくなる。その結果、スプレッダによりコンテナを係止して吊り上げることが困難となってしまう。
【0007】
そこで本発明の一態様は、コンテナの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができるクレーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様のクレーン装置は、予め定められた領域にコンテナを載置可能なコンテナヤード上においてコンテナの搬送を行うクレーン装置であって、コンテナを係止可能であり、コンテナを係止して吊り上げることによりコンテナを吊コンテナとし当該吊コンテナの荷役を行う荷役部と、吊コンテナを載置しようとする領域のヤード表面の水平面に対する傾斜角度を認識する傾斜角度認識部と、荷役部の位置を制御する制御部と、を備え、制御部は、領域に載置されたコンテナである積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部により認識された傾斜角度に基づき、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部の位置を制御する。
【0009】
このクレーン装置では、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部により認識された傾斜角度に基づき、制御部によって、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して当該上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部の位置が制御される。これにより、吊コンテナの下面の中心は、積み付けコンテナの上面の中心に対して当該上面の水平面に対する高さが高い方向にずれる。よって、吊コンテナの下面の中心が積み付けコンテナの上面の中心と一致している場合と比較して、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線上の位置に近づけることができる。その結果、鉛直方向へ延びる直線上に沿ってコンテナを積み上げることができ、コンテナの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の一態様のクレーン装置において、コンテナヤードは、領域を複数有し、予め測定された領域それぞれのヤード表面の傾斜角度を記憶する記憶部を更に備え、傾斜角度認識部は、吊コンテナを載置しようとする領域に対応する傾斜角度を記憶部から読み出すことにより、吊コンテナを載置しようとする領域に対応する傾斜角度を認識してもよい。この場合、傾斜角度認識部によって、予め測定された領域それぞれのヤード表面の傾斜角度が記憶部から読み出されることにより、吊コンテナを載置しようとする領域に対応する傾斜角度が認識される。よって、ヤード表面の水平面に対する傾斜角度をその都度測定することなく、記憶部から読み出された傾斜角度に基づき制御部による荷役部の位置の制御を行うことができる。
【0011】
また、本発明の一態様のクレーン装置において、荷役部は、傾斜角度認識部により認識される傾斜角度に相当する自身の水平面に対する傾斜角度を測定する傾斜角度測定部を有し、制御部は、吊コンテナの下面の中心を積み付けコンテナの中心に対して一致させるように吊コンテナを積み付けコンテナ上に載置させ、傾斜角度測定部により自身の水平面に対する傾斜角度を測定させ、傾斜角度測定部により測定された自身の水平面に対する傾斜角度に基づき、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部の位置を制御してもよい。この場合、制御部によって、吊コンテナの下面の中心が積み付けコンテナの中心に対して一致するように吊コンテナが積み付けコンテナ上に載置される。そして、傾斜角度認識部により認識される傾斜角度に相当する荷役部の水平面に対する傾斜角度が傾斜角度測定部により測定される。さらに、傾斜角度測定部により測定された荷役部の水平面に対する傾斜角度に基づき、制御部によって、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して当該上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部の位置が制御される。この場合、ヤード表面の水平面に対する傾斜角度を測定することなく、傾斜角度測定部により測定された荷役部の水平面に対する傾斜角度に基づき、制御部による荷役部の位置の制御を行うことができる。
【0012】
また、本発明の一態様のクレーン装置において、制御部は、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して次の数式(1)で示す水平距離Δずらしてもよい。
【数1】
(ただし、Lをコンテナの高さとし、θをヤード表面の傾斜角度とする。)
積み付けコンテナの高さがLでありヤード表面の傾斜角度がθである場合に、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線に対する吊コンテナの下面の中心の水平方向のずれ量は上記数式(1)で示される。よって、吊コンテナの下面の中心を上記数式(1)で示される量ずらすことにより、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線上に位置させることができる。その結果、鉛直方向へ延びる直線上にコンテナを積み上げることができ、コンテナの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の一態様のクレーン装置は、予め定められた領域にコンテナを載置可能なコンテナヤード上においてコンテナの搬送を行うクレーン装置であって、コンテナを係止可能であり、コンテナを係止して吊り上げることによりコンテナを吊コンテナとし当該吊コンテナの荷役を行う荷役部と、吊コンテナを載置しようとする領域のヤード表面の水平面に対する傾斜角度を認識する傾斜角度認識部と、荷役部の位置を制御する制御部と、を備え、制御部は、領域に載置されたコンテナである積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部により認識された傾斜角度が予め定められた許容角度よりも大きい場合には、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線上に吊コンテナの下面の中心を位置させて、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置させるように荷役部の位置を制御する。
【0014】
このクレーン装置では、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部により認識された傾斜角度が予め定められた許容角度よりも大きい場合には、積み付けコンテナが水平方向に許容範囲以上にずれるとして、制御部によって、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線上に吊コンテナの下面の中心を位置させて、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置させるように荷役部の位置が制御される。これにより、吊コンテナの下面の中心が、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線上に位置するように、吊コンテナが積み付けコンテナの上面に載置される。その結果、鉛直方向へ延びる直線上にコンテナを積み上げることができ、コンテナの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、コンテナの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができるクレーン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置を示す斜視図である。
図2図2は、コンテナ荷役用クレーン装置を走行方向から見た図である。
図3図3は、コンテナヤードを示す斜視図である。
図4図4は、コンテナ荷役用クレーン装置の構成を機能的に示すブロック図である。
図5図5は、スプレッダを示す斜視図である。
図6図6は、補正部により算出される自動積付目標補正値を説明するための図である。
図7図7は、コンテナ荷役用クレーン装置によるコンテナの積み付けの動作を示すフローチャートである。
図8図8は、図7に続くフローチャートである。
図9図9は、本実施形態の作用及び効果を説明するための図である。
図10図10は、従来の場合に隣り合うコンテナ同士の隙間が狭くなることを説明するための図である。
図11図11は、第2実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置の構成を機能的に示すブロック図である。
図12図12は、コンテナ荷役用クレーン装置によるコンテナの積み付けの動作を示すフローチャートである。
図13図13は、図12に続くフローチャートである。
図14図14は、図13に続くフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るクレーン装置の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るクレーン装置の概要を説明する。図1は、第1実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置を示す斜視図、図2は、コンテナ荷役用クレーン装置を走行方向から見た図、図3は、コンテナヤードを示す斜視図である。図1及び図2に示されるコンテナ荷役用クレーン装置1は、例えば図3に示されるように、接岸したコンテナ船Sに対してコンテナCの移載等が行われるコンテナターミナルにおいて、コンテナヤードCYに配されてコンテナCの荷役を行う。
【0019】
コンテナCは、ISO規格コンテナ等のコンテナである。コンテナCは、長尺の直方体状を呈し、その長手方向において例えば20フィート、40フィートといった所定の長さを有している。また、コンテナCは、その高さ方向において例えば8.5フィート、9.5フィートといった所定の高さを有している。
【0020】
コンテナCは、図2に示されるように、コンテナヤードCYに一段又は複数段積み上げられて複数のロウ12を形成している。各ロウ12は、当該ロウ12を構成するコンテナC(すなわち、当該ロウ12に載置されるコンテナC)の長手方向が他のロウ12を構成するコンテナCの長手方向に対して平行となるように、縦横に整列している。互いに隣り合う各ロウ12は、1段目のコンテナC同士の間の距離が所定のコンテナ間最小距離(閾値)以上となるように位置している。所定のコンテナ間最小距離とは、例えば後述するスプレッダ10のガイド17が進入可能な距離である。
【0021】
図3では、コンテナCの長手方向をX方向、コンテナCの短手方向をY方向、コンテナCの高さ方向をZ方向とするXYZ直交座標系を示している。図3に示されるように、コンテナヤードCYはXY平面上に延在しており、コンテナCは例えば当該XY平面上の何れかの位置においてZ方向に積み上げられる。コンテナヤードCYにおいては、コンテナCを積み付ける位置が三次元空間に仮想的に設定されており、このコンテナCの仮想的な積み付け位置は番地(X,Y,Z)として定義されている。すなわち、コンテナヤードCYは、コンテナCを載置可能な領域として、予め定められた複数の番地(X,Y,Z)を有している。番地(X,Y,Z)の内、「X」はベイ番号、「Y」はロウ番号、「Z」は積み段数を示している。コンテナ荷役用クレーン装置1は、このような複数の番地(X,Y,Z)を有するコンテナヤードCYにおいてコンテナCの搬送を行う。
【0022】
図2に示されるように、コンテナヤードCYには、トレーラやAGV(AutomatedGuided Vehicle)等の搬送台車13の走行路14が敷設されている。コンテナ荷役用クレーン装置1は、搬送台車13によって搬送されて来るコンテナCを取得して、当該コンテナCをコンテナヤードCYの所定の番地(X,Y,Z)で示される位置に載置する。また、コンテナ荷役用クレーン装置1は、コンテナヤードCYに載置されているコンテナCを取得して、当該コンテナCを搬送台車13に移載し、搬送台車13によってコンテナCを外部に搬出させる。
【0023】
次に、コンテナ荷役用クレーン装置1の構成について、図1図3に加えて図4を更に参照して説明する。図4は、コンテナ荷役用クレーン装置1の構成を機能的に示すブロック図である。図1図4に示されるように、コンテナ荷役用クレーン装置1は、本体部2と、スプレッダ10(荷役部21)と、制御部40と、記憶部37と、を備えている。
【0024】
本体部2は、タイヤ付車輪を有する走行装置4により走行可能とされている。走行装置4は、走行モータの駆動によって走行する。また、本体部2は、走行装置4に立設された一対の脚部5,5を二組備え、これら脚部5,5の上端部同士を繋ぐクレーンガーダ6,6を備える略門形に形成されている。更に、本体部2は、走行方向に直交する方向にクレーンガーダ6上を横行可能なトロリー7を備えている。トロリー7は、横行モータの駆動によって横行する。トロリー7は、ドラム駆動モータにより正逆回転するドラム8を備え、ワイヤ9を介してスプレッダ10を吊り下げている。上記の走行モータ、横行モータ、及びドラム駆動モータは、駆動部20として機能し、制御部40によってその動作が制御される。
【0025】
スプレッダ10は、コンテナCを吊り上げるための吊具である。スプレッダ10は、コンテナCを上面側から係止可能であり、コンテナCを係止して吊り上げることによりコンテナCの荷役を行う。スプレッダ10は、ドラム8からのワイヤ9が掛け回されたシーブ18を介して吊り下げられ、ドラム8の正逆回転により昇降可能である。スプレッダ10は、コンテナCの荷役を行う荷役部21として機能し、制御部40によってその動作及び位置が制御される。
【0026】
図5は、スプレッダ10を示す斜視図である。なお、図5において二点鎖線で示す傾斜角度測定部30は、後述する第2実施形態に係るスプレッダ10が備える構成であって、本実施形態に係るスプレッダ10は備えていない。図5に示されるように、スプレッダ10は、スプレッダ本体部15と、ガイド(案内部)17と、ロックピン16と、位置検出部22と、を有している。
【0027】
スプレッダ本体部15は、平面視においてコンテナCの上面の形状と略同一の形状を呈している。スプレッダ本体部15は、長手方向における中央部の上側に、ワイヤ9が掛け回されるシーブ18を有している。スプレッダ本体部15は、コンテナCをスプレッダ10が係止する際に当該コンテナC上に位置する。
【0028】
ガイド17は、スプレッダ10により取得されるべき目標のコンテナC(以下、「目標コンテナ」という。)をスプレッダ10が取得する場合において、スプレッダ10が下降する際に、スプレッダ本体部15を目標コンテナ上に案内する。ガイド17は、水平方向におけるスプレッダ本体部15の短手方向の一端部及び他端部のそれぞれにおいて、長手方向の両端付近のそれぞれに設けられている。すなわち、ガイド17は、スプレッダ本体部15の四隅でスプレッダ本体部15の短手方向の外側に設けられている。
【0029】
ガイド17は、その先端部17aにテーパ面17bを有する。ガイド17は、目標コンテナと当該目標コンテナに対して水平方向に隣り合って載置された別のコンテナCとの隙間に進入することにより、目標コンテナの上面の縁部にテーパ面17bを当接させ、当該縁部からの反力を受けて(案内されて)スプレッダ本体部15を目標コンテナの直上に案内する。
【0030】
ロックピン16は、コンテナCを係止するための機構である。ロックピン16は、スプレッダ本体部15の下面側に、スプレッダ本体部15から下側に突出して設けられている。ロックピン16は、スプレッダ10がコンテナCを係止する際に当該コンテナCの孔部(不図示)に対応する位置であって、且つ、ガイド17の位置よりも水平方向におけるスプレッダ本体部15の中央側に設けられている。ロックピン16は、例えばツイストピンであって、上下方向に延在する軸線回りに回動可能な係止片(不図示)を下端に含む。ロックピン16は、コンテナCの上面の四隅に形成された孔部を通して進入すると共に係止片を回動させることにより、コンテナCに係合可能である。
【0031】
位置検出部22は、測定対象物の三次元座標データを取得可能な装置である。本実施形態では、位置検出部22として、レーザセンサを用いている。より具体的には、位置検出部22は、レーザ光が測定対象物で反射して戻って来るまでの時間に基づいて、測定対象物までの距離を算出する。そして、位置検出部22は、測定対象物までの距離とレーザ光の照射角度とによって着光点の座標を求め、その情報を制御部40に出力する。
【0032】
位置検出部22は、スプレッダ本体部15の側面に設けられている。具体的には、位置検出部22は、水平方向におけるスプレッダ本体部15の短手方向の一端部及び他端部のそれぞれにおいて、長手方向の両端付近のそれぞれに設けられている。従って、各位置検出部22は、何れかのガイド17に対応する位置に設けられている。位置検出部22は、スプレッダ本体部15の下部に位置するコンテナCを検出し、当該コンテナCの位置を計測する。位置検出部22は計測結果を制御部40に送信する。なお、本実施形態では位置検出部22がスプレッダ10に設けられているとしているが、これに限られず、位置検出部22は例えばトロリー7に設けられていてもよい。また、位置検出部22は、測定対象物の三次元座標データを取得できるのであればレーザセンサに限定されず、他の方式のもの(例えば、光学式カメラ等)を用いてもよい。更に、位置検出部22は、複数の方式のものを併用(例えば、レーザセンサと光学式カメラとを併用)してもよい。
【0033】
制御部40は、位置検出部22からの検出結果に基づき、駆動部20及び荷役部21の動作を制御する。具体的には、制御部40は、位置検出部22からの検出結果に基づき、走行モータ、横行モータ、及びドラム駆動モータ等の動作を制御すると共に、荷役部21のガイド17及びロックピン16等の動作を制御する。
【0034】
また、制御部40は、上位システム35からの自動コマンドに基づき、駆動部20の動作を制御することによって荷役部21の位置を制御する。ヤード表面とは、コンテナヤードCYにおけるコンテナCが載置されることとなる表面である。上位システム35は、例えばコンテナヤードCYに設けられコンテナヤードCY全体を制御する管理室である。上位システムからの自動コマンドとは、例えばコンテナCを積み付けする目標の番地(X,Y,Z)を指定する指令である。また、自動コマンドには、例えばコンテナCの高さ(8.5フィート又は9.5フィート)を示す情報が含まれ得る。
【0035】
制御部40は、受信部41と、傾斜角度認識部42と、補正部43と、を有している。受信部41は、上位システム35からの自動コマンドとしてコンテナCを載置しようとする目標の番地(X,Y,Z)及びコンテナCの高さを示す情報を受信する。受信部41は、受信した番地(X,Y,Z)の内、ベイ番号及びロウ番号のみを取り出した番地(X,Y)を取得する。以下、この番地(X,Y)を「積付目標番地(X,Y)」という。
【0036】
傾斜角度認識部42は、荷役部21により吊り上げられたコンテナC(以下、「吊コンテナ」という。)を載置しようとする積付目標番地(X,Y)のヤード表面の水平面に対する傾斜角度を認識する。以下、水平面に対する傾斜角度を単に「傾斜角度」という。具体的には、傾斜角度認識部42は、記憶部37に記憶されている傾斜角度データテーブルを参照し、受信部41により取得された積付目標番地(X,Y)に対応する傾斜角度を読み出すことにより、当該積付目標番地(X,Y)のヤード表面の傾斜角度を認識する。
【0037】
補正部43(制御部)は、積付目標番地(X,Y)に載置されたコンテナC(以下、「積み付けコンテナ」という。)の上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部42により認識されたヤード表面の傾斜角度に基づき、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナCの上面の中心に対して上面の水平面に対する高さが高い方へずらすように荷役部21の位置を制御する。具体的には、補正部43は、駆動部20の動作を制御することにより、荷役部21の位置を制御する。すなわち、走行モータ、横行モータ、及びドラム駆動モータ等の動作を制御することにより、荷役部21の位置を制御する。
【0038】
補正部43は、吊コンテナの下面の中心をずらす距離として自動積付目標補正値を算出する。図6は、補正部43により算出される自動積付目標補正値を説明するための図である。図6に示されるように、コンテナCの高さがLであり、ヤード表面YAが例えばY方向に沿ってθ傾斜している場合、補正部43は、Y方向に沿う傾斜角度θに基づき自動積付目標補正値を算出する。すなわち、傾斜角度θをY方向に沿う傾斜角度θとして、例えば次の数式(1)で示す水平距離Δを自動積付目標値として算出する。
【数1】
なお、自動積付目標補正値は、上記の数式(1)で示す水平距離Δに限られず、積み付けコンテナの上面の水平面に対する高さが高い方へ近づく値であればよい。
【0039】
補正部43は、傾斜角度認識部42により認識されたヤード表面YAの傾斜角度θ及び受信部41により受信したコンテナCの高さLを示す情報に基づき、上記数式(1)で示す水平距離Δを算出する。補正部43は、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して上記数式(1)で示す水平距離Δ分Y方向にずらす。
【0040】
ヤード表面YAがX方向に沿って傾斜している場合も、ヤード表面YAがY方向に沿って傾斜している場合と同様、補正部43は、X方向に沿う傾斜角度θに基づき自動積付目標補正値を算出すると共に、吊コンテナ下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して自動積み付け目標補正値分X方向にずらす。また、ヤード表面YAがX方向及びY方向の両方に沿って傾斜している場合には、各方向に沿う傾斜角度θ,θに基づき自動積付目標補正値をそれぞれ算出すると共に、吊コンテナ下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して各方向に対応する自動積付目標補正値分各方向にずらす。
【0041】
吊コンテナの下面の中心を積み付けコンテナの下面の中心に対して前述した数式(1)で示す水平距離Δずらすことにより、吊コンテナの下面の中心は、積み付けコンテナの下面の中心を通り鉛直方向へ延びる直線A(図6参照:以下、単に「直線A」という。)上に位置する。つまり、補正部43は、直線A上に吊コンテナの下面の中心を位置させて、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置させるように荷役部21の位置を制御する。補正部43は、直線A上に吊コンテナの下面の中心を位置させるのに限らず、直線A近傍に吊コンテナの下面の中心を位置させるように、又は、直線Aに吊コンテナの下面の中心が近づくように、荷役部21の位置を制御してもよい。
【0042】
記憶部37は、各種情報を記憶する部分であり、メモリ等によって構成される。記憶部37は、予め測定された積付目標番地(X,Y)それぞれのヤード表面YAの傾斜角度θをデータテーブルとして記憶する。なお、本実施形態において記憶部37は制御部40の外部に設けられているが、制御部40と一体化されていてもよい。
【0043】
次に、コンテナ荷役用クレーン装置1によるコンテナCの積み付けの動作について図7及び図8を参照して説明する。
【0044】
図7及び図8は、コンテナ荷役用クレーン装置1によるコンテナCの積み付けの動作を示すフローチャートである。図7に示されるように、まず、受信部41は、上位システム35からの自動コマンドとしてコンテナCを載置しようとする目標の番地(X,Y,Z)及びコンテナCの高さLを示す情報を受信する(ステップS1)。受信部41は、受信した番地(X,Y,Z)から積付目標番地(X,Y)を取得する(ステップS2)。続いて、傾斜角度認識部42は、記憶部37における傾斜角度θのデータテーブルを参照し、受信部41により取得した積付目標番地(X,Y)に対応する傾斜角度θを読み出して取得する(ステップS3)。続いて、補正部43は、受信部41により受信したコンテナCの高さLを示す情報と、傾斜角度認識部42により取得された傾斜角度θとに基づき、前述した数式(1)で示す水平距離Δを自動積付目標補正値として算出する(ステップS4)。
【0045】
続いて、図8に示されるように、制御部40は、駆動部20の動作を制御することにより、吊コンテナを積付目標番地(X,Y)近傍まで自動搬送する(ステップS5)。続いて、位置検出部22は、吊コンテナの下部に位置し、先に積付目標番地(X,Y)のヤード表面YA上に載置されたコンテナCの位置を計測する(ステップS6)。続いて、補正部43は、ステップS4において算出した自動積付目標補正値を目標として、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを自動積み付けする(ステップS7)。すなわち、補正部43は、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して前述した数式(1)で示す水平距離Δずらして吊コンテナを積み付ける。
【0046】
続いて、制御部40は、ステップS7において積み付けられた吊コンテナの積み付け精度を判定する(ステップS8)。例えば、制御部40は、吊コンテナの積み付けが許容範囲内か否かを判定する。すなわち、補正部43により算出された自動積付目標値が示す補正量に対し、積み付けられた吊コンテナの位置が適切に補正されているか否かを判定する。ステップS7による積み付けが許容範囲内でない場合(S8;NO)には、制御部40は、積み付けられた吊コンテナを再度巻き上げて、ステップS6に移行して吊コンテナの積み付けを再試行する(ステップS9)。吊コンテナの積み付けが許容範囲内であった場合(S8;YES)には、図7及び図8に示すフローチャートの処理を終了する。
【0047】
次に、本実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置1の作用及び効果について、従来のコンテナ荷役用クレーン装置と比較して説明する。
【0048】
図9は、本実施形態の作用及び効果を説明するための図である。図9の(a)は従来のコンテナ荷役用クレーン装置により積み付けられたコンテナCを示しており、図9の(b)は本実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置により積み付けられたコンテナCを示している。
【0049】
図9の(a)に示されるように、コンテナヤードCYのヤード表面YAが水平面に対して傾斜している場合に従来のコンテナ荷役用クレーン装置を用いてコンテナCを積み上げていくと、ヤード表面YA上に載置されることにより傾斜したコンテナCの上にコンテナCが次々と載置されて積み上げられていくこととなる。吊コンテナの下面の中心は、例えば積み付けコンテナの上面の中心と一致するように積み上げられていく。よって、積み上げられたコンテナCの位置の正常な積み付け位置に対する水平方向のずれ量Dは、コンテナCの積み上げ数が多くなるほど大きくなる。当該水平方向のずれ量が大きくなることにより、ヤード表面YAが傾斜した番地(X,Y,Z)に積み上げられたコンテナCと当該コンテナCに隣接する番地(X,Y,Z)に積み上げられたコンテナCとの隙間(以下、「隣り合うコンテナ同士の隙間」という。)が小さくなる可能性がある。
【0050】
図10は、従来の場合に隣り合うコンテナ同士の隙間が狭くなることを説明するための図である。図10に示されるように、例えば隣り合う番地(X,Y,Z)のヤード表面YA同士が向かい合いV字をなすように傾斜している場合、コンテナCの積み上げ数が多くなるほど、隣り合うコンテナC,C同士の隙間Gが狭くなってしまう。当該隙間Gが狭くなると、コンテナCをスプレッダ10により吊り上げる際にスプレッダ10のガイド17を当該隙間Gに進入させることができず、スプレッダ本体部15を積み付けコンテナ上に位置させることができなくなる。その結果、スプレッダ10により積み付けコンテナを係止して吊り上げることが困難となってしまう。
【0051】
これに対し、本実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置1によれば、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部42により認識された傾斜角度θに基づき、補正部43によって、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して当該上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部21の位置が制御される。これにより、吊コンテナの下面の中心は、積み付けコンテナの上面の中心に対して当該上面の水平面に対する高さが高い方向にずれる。よって、上記従来の場合と比較して、図9の(b)に示されるように吊コンテナの下面の中心を直線A上の位置に近づけることができる。その結果、直線A上に沿ってコンテナCを積み上げることができ、コンテナCの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができる。
【0052】
このように、直線A上に沿ってコンテナCを積み上げることができる結果、コンテナCの積み上げ数が多くなったとしても、隣り合うコンテナC,C同士の隙間Gを、前述した所定のコンテナ間最小距離以上とすることができる。よって、コンテナCをスプレッダ10により吊り上げる際にスプレッダ10のガイド17を当該隙間Gに進入させてスプレッダ本体部15を積み付けコンテナ上に位置させることができる。その結果、スプレッダ10により積み付けコンテナCを係止して吊り上げることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、傾斜角度認識部42によって、予め測定された積付目標番地(X,Y)それぞれのヤード表面YAの傾斜角度θが記憶部37から読み出されることにより、積付目標番地(X,Y)に対応する傾斜角度θが認識される。よって、ヤード表面YAの傾斜角度θをその都度測定することなく、記憶部37から読み出された傾斜角度θに基づき補正部43による荷役部21の位置の制御を行うことができる。
【0054】
また、積み付けコンテナの高さがLでありヤード表面YAの傾斜角度がθである場合に、直線Aに対する吊コンテナの下面の中心の水平方向のずれ量は前述した数式(1)で示される。よって、本実施形態によれば、吊コンテナの下面の中心を前述した数式(1)で示される量ずらすことにより、吊コンテナの下面の中心を直線A上に位置させることができる。その結果、直線A上にコンテナCを積み上げることができ、コンテナCの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができる。
【0055】
また、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置する際、傾斜角度認識部42により認識された傾斜角度θが予め定められた許容角度よりも大きい場合には、積み付けコンテナが水平方向に許容範囲以上にずれるとして、制御部40によって、直線A上に吊コンテナの下面の中心を位置させて、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを載置させるように荷役部21の位置を制御してもよい。これにより、吊コンテナの下面の中心が直線A上に位置するように、吊コンテナが積み付けコンテナの上面に載置される。その結果、直線A上にコンテナCを積み上げることができ、コンテナCの正常な積み付け位置に対する位置ずれを抑制することができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置について図11を参照しながら説明する。図11は、第2実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置1Aの構成を機能的に示すブロック図である。以下の説明においては、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0057】
第2実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置1Aは、記憶部37を備えておらず、傾斜角度測定部30を備えている点で第1実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置1と異なっている。
【0058】
傾斜角度測定部30は、例えばスプレッダ本体部15の平面視における略中央の位置に設けられている(図5参照)。すなわち、スプレッダ10は、スプレッダ本体部15に設けられた傾斜角度測定部30を有している。傾斜角度測定部30は、例えば傾斜角センサである。傾斜角度測定部30は、スプレッダ10自身の傾斜角度を測定する。
【0059】
具体的には、傾斜角度測定部30は、吊コンテナを積み付けコンテナ上に載置させた状態でスプレッダ10の傾斜角度を測定する。積み付けコンテナの上面の傾斜角度は、ヤード表面YAの傾斜角度θに相当する。このため、当該積み付けコンテナの上面に載置された吊コンテナの上面、及び、当該吊コンテナを係止したスプレッダ10自身の傾斜角度も、ヤード表面YAの傾斜角度θに相当する。よって、傾斜角度測定部30により測定されるスプレッダ10自身の傾斜角度は、傾斜角度認識部42により認識されるヤード表面YAの傾斜角度θに相当する。傾斜角度測定部30は、測定結果を傾斜角度認識部42に出力する。
【0060】
傾斜角度認識部42は、傾斜角度測定部30によって測定されたスプレッダ10の傾斜角度を、積付目標番地(X,Y)のヤード表面YAの傾斜角度θとして認識する。
【0061】
補正部43は、吊コンテナを積み付けコンテナの上に積み付ける際、まず吊コンテナの下面の中心を積み付けコンテナの中心に対して一致させるように吊コンテナを積み付けコンテナ上に載置させる。ここで、吊コンテナの下面の中心が積み付けコンテナの中心に対して一致するとは、これらの中心が完全に一致することだけでなく、これらの中心のずれが予め設定した微差又は測定誤差等の範囲内であることを含む。
【0062】
また、補正部43は、傾斜角度測定部30によりスプレッダ10の傾斜角度を測定させる。また、補正部43は、傾斜角度測定部30により測定されたスプレッダ10の傾斜角度(すなわち、傾斜角度認識部42により認識されたヤード表面YAの傾斜角度θ)に基づき、上記第1実施形態と同様にして、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部21の位置を制御する。
【0063】
次に、コンテナ荷役用クレーン装置1AによるコンテナCの積み付けの動作について図12図14を参照して説明する。
【0064】
図12図14は、コンテナ荷役用クレーン装置1AによるコンテナCの積み付けの動作を示すフローチャートである。図12に示されるように、まず、受信部41は、上位システム35からの自動コマンドとしてコンテナCを載置しようとする目標の番地(X,Y,Z)及びコンテナCの高さLを示す情報を受信する(ステップS11)。受信部41は、受信した番地(X,Y,Z)から積付目標番地(X,Y)を取得する(ステップS12)。続いて、制御部40は、駆動部20の動作を制御することにより、吊コンテナを積付目標番地(X,Y)近傍まで自動搬送する(ステップS13)。
【0065】
続いて、図13に示されるように、位置検出部22は、吊コンテナの下部に位置するコンテナCの位置を計測する(ステップS14)。続いて、補正部43は、まず初回の積み付け時にはヤード表面YAの傾斜影響はゼロ(未知)であるとして、積み付けずれがゼロであることを目標に、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを自動積み付けする(ステップS15)。すなわち、補正部43は、自動積付目標補正値がゼロであることを目標として、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心と一致するように吊コンテナを積み付ける。
【0066】
続いて、補正部43は、傾斜角度測定部30によってスプレッダ10の傾斜角度を測定させることにより、コンテナ載置面であるヤード表面YAの傾斜角度θを計測する(ステップS16)。具体的には、補正部43は、傾斜角度測定部30により、吊コンテナを積み付けコンテナに載置した状態におけるスプレッダ10の傾斜角度を測定させる。傾斜角度認識部42は、傾斜角度測定部30によって測定されたスプレッダ10の傾斜角度を、積付目標番地(X,Y)のヤード表面YAの傾斜角度θとして認識する。続いて、補正部43は、受信部41により受信したコンテナCの高さLを示す情報と、傾斜角度測定部30により計測されたヤード表面YAの傾斜角度θとに基づき、前述した数式(1)で示す水平距離Δを自動積付目標補正値として算出する(ステップS17)。
【0067】
続いて、図14に示されるように、制御部40は、ステップS15において積み付けられた吊コンテナの積み付け精度を判定する(S18)。すなわち、補正部43により算出された自動積付目標値が示す補正量に対し、積み付けられた吊コンテナの位置が適切か否かを判定する。吊コンテナの積み付けが許容範囲内でない場合(S18;NO)には、制御部40は、積み付けられた吊コンテナを再度巻き上げて(S19)、ステップS20へ移行する。ステップS20において、位置検出部22は、吊コンテナの下部に位置するコンテナCの位置を計測し、ステップS21へ移行する。ステップS21において、補正部43は、ステップS17において算出した自動積付目標補正値を目標として、積み付けコンテナの上面に吊コンテナを自動積み付けし、ステップS18に移行する。吊コンテナの積み付けが許容範囲内である場合(S18;YES)には、図7及び図8に示すフローチャートの処理を終了する。
【0068】
以上、本実施形態に係るコンテナ荷役用クレーン装置1Aによれば、補正部43によって、吊コンテナの下面の中心が積み付けコンテナの中心に対して一致するように吊コンテナが積み付けコンテナ上に載置される。そして、スプレッダ10の傾斜角度が傾斜角度測定部30により測定される。さらに、傾斜角度測定部30により測定されたスプレッダ10の傾斜角度に基づき、補正部34によって、吊コンテナの下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対して当該上面の水平面に対する高さが高い方向へずらすように荷役部21の位置が制御される。この場合、ヤード表面YAの傾斜角度θを測定することなく、傾斜角度測定部30により測定されたスプレッダ10の傾斜角度に基づき、補正部43による荷役部21の位置の制御を行うことができる。
【0069】
以上、本実施形態の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られず、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用してもよい。
【0070】
例えば、ヤード表面YAがX方向及びY方向の両方に沿って傾斜している場合に、吊コンテナ下面の中心を、積み付けコンテナの上面の中心に対してX方向及びY方向の両方にずらさなくてもよく、X方向及びY方向の何れか一方にずらしてもよい。
【0071】
また、上記第2実施形態において、傾斜角度測定部30により測定されたスプレッダ10の傾斜角度を記憶する記憶部を備えていてもよい。この場合、ある番地に吊コンテナを積載する毎にスプレッダ10の傾斜角度を測定しなくてもよい。傾斜角度認識部42は、当該記憶部により記憶されたスプレッダ10の角度をヤード表面YAの傾斜角度θとして認識してもよい。
【0072】
また、本発明は、門型クレーン装置に限定されず、橋型クレーン装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A…コンテナ荷役用クレーン装置、10…スプレッダ、21…荷役部、30…傾斜角度測定部、37…記憶部、42…傾斜角度認識部、40…制御部、43…補正部、C…コンテナ、CY…コンテナヤード、YA…ヤード表面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14