(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の通信装置と、前記第1の通信装置との間で通信を行う第2の通信装置と、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置に電力を供給するための電力伝送線と、を備えている通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
前記第2の通信装置に電力を供給するための送電用電源部と、
前記送電用電源部が印加する電圧を切り替える切替部と、
を備えており、
前記第2の通信装置は、
前記送電用電源部から、前記電力伝送線を介して電力を供給される受電用電源部と、
前記受電用電源部に印加される電圧を識別する識別部と、
を備えており、
前記第1の通信装置は、前記切替部による切り替え状態に基づいて、ペアリング処理を開始し、
前記第2の通信装置は、前記識別部による識別状態に基づいて、ペアリング処理を開始する、
ことを特徴とする通信システム。
前記第1の通信装置は、ペアリング処理を失敗したときは、所定の番号に基づいたディレイ時間後に、再度、前記切替部による切り替えを行って、ペアリング処理を開始する、請求項1に記載の通信システム。
第1の通信装置と、前記第1の通信装置との間で通信を行う第2の通信装置と、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置に電力を供給するための電力伝送線と、を備えている通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
前記第2の通信装置に電力を供給するための送電用電源部と、
前記送電用電源部が印加する電圧を切り替える切替部と、
を備えており、
前記第2の通信装置は、
前記送電用電源部から、前記電力伝送線を介して電力を供給される受電用電源部と、
前記受電用電源部に印加される電圧を識別する識別部と、
を備えており、
前記第1の通信装置は、自身の識別情報に基づいて、前記切替部による切り替えを行い、
前記第2の通信装置は、前記識別部による識別状態に基づいて、前記識別情報を復元して記録する、
ことを特徴とする通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
図1〜3は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図である。
図1は、溶接システムA1の全体構成を示すものである。
図2は、ガス配管を説明するための断面図である。
図3は、溶接用電源部および送電用電源部の内部構成の一例を示すものである。
【0032】
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電力伝送線51,52、ガスボンベ6、および、ガス配管7を備えている。溶接システムA1は、実際には、ワイヤ電極が巻回されたワイヤリールなどを備えているが、図への記載や説明を省略している。
【0033】
溶接電源装置1の溶接電力用の一方の出力端子aは、パワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の溶接電力用の他方の出力端子bは、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
【0034】
溶接システムA1は、溶接時にシールドガスを用いる。ガスボンベ6のシールドガスは、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2を通るように設けられているガス配管7によって、溶接トーチ3の先端に供給される。ガス配管7は、ガスボンベ6と溶接電源装置1とを接続する配管、溶接電源装置1の内部に配置されている配管、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する配管、および、ワイヤ送給装置2の内部に配置され溶接トーチ3の先端に接続する配管を備えている。
図2は、ガス配管7のうち、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する配管が、溶接電源装置1の内部に配置されている配管に接続された接続金具1a、および、ワイヤ送給装置2の内部に配置されている配管に接続された接続金具2aに接続されている部分の断面図である。例えばゴム製のガス配管7は、接続金具1a(2a)に嵌め込むようにして、接続されている。なお、ガス配管7の素材は限定されず、各区間によって異なっていてもよいが、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する部分は、ゴムなどの絶縁体としている。
【0035】
ワイヤ電極を送り出すための送給モータ24(後述)などを駆動するための電力は、電力伝送線51,52を介して、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に供給される。溶接電源装置1が備える、ワイヤ送給装置2の駆動電力用の電源(後述する送電用電源部12)の一方の出力端子は、電力伝送線51を介して、ワイヤ送給装置2の電源(後述する受電用電源部21)の一方の入力端子に接続されている。
【0036】
電力伝送線51は、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間では、ガス配管7の内側に配置されている。
図2に示すように、溶接電源装置1の内部で、電力伝送線51は導電性の接続金具1aに接続しており、ワイヤ送給装置2の内部で、電力伝送線51は導電性の接続金具2aに接続している。そして、ガス配管7の内側に配置された電力伝送線51が、ガス配管7と接続金具1a(2a)との間に挟まれて固定され、接続金具1a(2a)と電気的に接続されている。つまり、接続金具1aが、溶接電源装置1の内部の電力伝送線51と、ガス配管7の内側に配置された電力伝送線51とを接続するコネクタとして機能し、接続金具2aが、ワイヤ送給装置2の内部の電力伝送線51と、ガス配管7の内側に配置された電力伝送線51とを接続するコネクタとして機能している。
【0037】
また、送電用電源部12の他方の出力端子とパワーケーブル41とが、溶接電源装置1の内部で、電力伝送線52によって接続されており、受電用電源部21の他方の入力端子とパワーケーブル41とが、ワイヤ送給装置2の内部で、電力伝送線52によって接続されている。つまり、送電用電源部12の他方の出力端子と受電用電源部21の他方の入力端子とが、一部の区間がパワーケーブル41になる電力伝送線52により、電気的に接続されている。送電用電源部12から出力される電力は、電力伝送線51,52によって、受電用電源部21に供給される。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う。
【0038】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための直流電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、溶接用電源部11、送電用電源部12、制御部13、通信部14、スイッチ15、および、切替部16を備えている。
【0039】
溶接用電源部11は、電力系統から入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力するものである。
図3(a)に示すように、溶接用電源部11に入力される三相交流電力は、整流回路111によって直流電力に変換され、インバータ回路112によって交流電力に変換される。そして、トランス113によって降圧(または昇圧)され、整流回路114によって直流電力に変換されて出力される。なお、溶接用電源部11の構成は、上記したものに限定されない。
【0040】
送電用電源部12は、ワイヤ送給装置2の送給モータ24などを駆動するための電力を出力するものである。送電用電源部12は、電力系統から入力される単相交流電力をワイヤ送給装置2での使用に適した直流電力に変換して出力する。送電用電源部12は、いわゆるスイッチングレギュレータである。
図3(a)に示すように、送電用電源部12に入力される交流電力は、整流回路121によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ回路122によって降圧(または昇圧)されて出力される。送電用電源部12は、電圧が例えば48Vに制御された直流電力を、電力伝送線51,52を介して、ワイヤ送給装置2に供給する。なお、送電用電源部12の構成は、上記したものに限定されない。例えば、溶接用電源部11と同様の構成であってもよいし、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路121で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0041】
溶接用電源部11は、出力端子aが出力端子bより電位が高くなるようにして、パワーケーブル41の電位がパワーケーブル42の電位より高くなるように、電圧を印加する。送電用電源部12は、電力伝送線51の電位が電力伝送線52の電位より低くなるように、電圧を印加する。電力伝送線52はパワーケーブル41に接続しているので、電力伝送線51の電位は、パワーケーブル41の電位より低くなる。つまり、電力伝送線51およびパワーケーブル42の電位をどちらもパワーケーブル41より低くすることで、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差があまり大きくならないようにしている。例えば、溶接用電源部11が出力する無負荷電圧が90V、送電用電源部12が出力する電圧が48Vの場合、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差は42Vになる。仮に、電力伝送線51の電位を電力伝送線52の電位より高くした場合は、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差は132Vになる。なお、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差を気にしない場合は、送電用電源部12が印加する電圧を逆極性(電力伝送線51の電位が電力伝送線52の電位より高くなるように、電圧を印加する)にしてもよい。
【0042】
制御部13は、溶接電源装置1の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部13は、溶接電源装置1から出力される溶接電圧および溶接電流が設定電圧および設定電流になるように、溶接用電源部11のインバータ回路112を制御する。また、送電用電源部12から出力される電圧が所定電圧になるように、送電用電源部12のDC/DCコンバータ回路122を制御する。制御部13は、図示しない設定ボタンの操作に応じて溶接条件の変更を行ったり、図示しない起動ボタンの操作に応じて溶接用電源部11を起動させたりなどの制御を行う。また、制御部13は、図示しないセンサによって検出された溶接電圧や溶接電流の検出値を図示しない表示部に表示させたり、異常が発生した場合に図示しない報知部に報知させたりする。
【0043】
また、制御部13は、通信部14から入力される信号に基づいても、溶接条件の変更や溶接用電源部11の起動を行い、検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号、ワイヤ送給装置2に対するワイヤ送給指令やガス供給指令などのための信号を通信部14に出力する。
【0044】
また、制御部13は、溶接電源装置1の通信相手となるワイヤ送給装置2を特定するために、ペアリング処理を行う。また、本実施形態においては、制御部13は、ペアリング処理を開始するタイミングをワイヤ送給装置2に知らせるためのタイミング通知処理を行う。タイミング通知処理の詳細については後述する。
【0045】
通信部14は、電力伝送線51,52を介して、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部14は、ワイヤ送給装置2から受信した信号を復調して、制御部13に出力する。ワイヤ送給装置2から受信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号や、溶接用電源部11の起動を指示する起動信号などがある。また、通信部14は、制御部13から入力される信号を変調して、通信信号としてワイヤ送給装置2に送信する。ワイヤ送給装置2に送信する信号には、例えば、検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号、ワイヤ送給指令やガス供給指令などのための信号などがある。なお、ワイヤ送給装置2との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。
【0046】
通信部14は、直接スペクトル拡散(Direct Sequence Spread Spectrum:DSSS)通信方式を用いて通信を行う。直接スペクトル拡散通信方式では、送信側は、送信する信号に対して拡散符号による演算を行い、元の信号のスペクトルをより広い帯域に拡散して送信する。受信側は、受信した信号を共通する拡散符号を用いて逆拡散することで、元の信号に戻す。通信信号にノイズが重畳された場合でも、逆拡散によってノイズのスペクトルが拡散されるので、フィルタリングによって元の通信信号を抽出することができる。したがって、高い通信品質で通信を行うことができる。また、ペアリング処理を行った後に、ペアリングされた溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とに同じ拡散符号を設定し、当該拡散符号を溶接システムA1毎に異なるように設定すれば、別の溶接システムA1で送受信される通信信号を誤って受信したとしても、当該通信信号は異なる拡散符号で逆拡散されて、ノイズとして除去される。したがって、混信を抑制することができる。しかし、溶接電源装置1は、いずれのワイヤ送給装置2に接続されるか解らないので、初めはすべて同じ拡散符号が設定されている。したがって、ペアリングされる前の通信では、混信が発生する場合がある。
【0047】
通信部14は、結合回路を備えている。当該結合回路は、通信部14の入出力端に接続されたコイルと、電力伝送線51,52に並列接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部14が出力する通信信号を電力伝送線51,52に重畳し、また、電力伝送線51,52に重畳された通信信号を検出する。通信部14は、制御部13より入力される信号に応じてキャリア信号をBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調し、変調信号にスペクトル拡散を行い、アナログ信号に変換して送信する。なお、変調方法はBPSK変調に限られず、ASK変調やFSK変調を行うようにしてもよい。また、スペクトル拡散は直接拡散方式に限られず、周波数ホッピング方式を用いてもよい。なお、本実施形態では、スペクトル拡散を行っているが、これに限定されず、スペクトル拡散を行わないようにしてもよい。また、通信部14は、電力伝送線51,52に重畳された通信信号を検出し、デジタル信号に変換して、逆拡散およびフィルタリングを行い、復調を行って、制御部13に出力する。溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に送信する信号と、ワイヤ送給装置2から溶接電源装置1に送信する信号とでは、時間をずらして送受信を行う。なお、異なる周波数帯域を利用するようにしてもよい。
【0048】
スイッチ15は、電力伝送線52に配置されており、電力伝送線52を導通させる状態(オン状態)と電力伝送線52を遮断する状態(オフ状態)とを切り替える。スイッチ15がオン状態の場合、送電用電源部12が出力する電圧がワイヤ送給装置2の受電用電源部21に印加される。一方、スイッチ15がオフ状態の場合、送電用電源部12が出力する電圧はワイヤ送給装置2の受電用電源部21に印加されない。スイッチ15は、切替部16からの指示に基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替える。本実施形態では、スイッチ15として、切り替えを速くするために、トランジスタなどの半導体スイッチを用いている。なお、スイッチ15は、オン状態とオフ状態とを切り替えられればよいので、機械式のスイッチとしてもよい。なお、スイッチ15は、電力伝送線51に配置されていてもよい。
【0049】
切替部16は、制御部13からの指示に基づいて、スイッチ15の状態を切り替える。通常時、切替部16は、スイッチ15をオン状態としている。制御部13は、ペアリング処理を開始するときに、そのタイミングをワイヤ送給装置2に伝えるために、切替部16に切り替えの指示として、ペアリング開始信号を出力する。ペアリング開始信号は、所定のハイレベル期間を有するパルス信号である。スイッチ15および切替部16が、本発明の「切替部」に相当する。また、送電用電源部12、制御部13、通信部14、スイッチ15および切替部16をまとめたものが、本発明の「第1の通信装置」に相当する。なお、溶接電源装置1が、本発明の「第1の通信装置」に相当すると考えることもできる。
【0050】
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出すものである。また、ワイヤ送給装置2は、ガスボンベ6のシールドガスを溶接トーチ3の先端に供給する。ワイヤ送給装置2は、受電用電源部21、制御部22、通信部23、送給モータ24、ガス電磁弁25、電圧センサ26、および、電圧比較部27を備えている。
【0051】
受電用電源部21は、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25に電力を供給するものである。受電用電源部21は、電力伝送線51,52を介して溶接電源装置1から電力を供給され、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25のそれぞれに適した電圧に変換を行って出力する。受電用電源部21は、溶接電源装置1から供給される電力を蓄積するコンデンサ、コンデンサから電力伝送線51,52に電流が逆流するのを防ぐためのダイオード、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25に出力する電圧を調整するためのDC/DCコンバータを備えている。なお、受電用電源部21の構成は、上記したものに限定されない。
【0052】
制御部22は、ワイヤ送給装置2の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部22は、溶接トーチ3に設けられている図示しないトーチスイッチより入力される起動のための操作信号に応じて、溶接電源装置1の溶接用電源部11を起動するための起動信号を通信部23に出力する。また、図示しない操作部より入力される溶接条件を変更するための操作信号に応じて、図示しない記憶部に記憶されている溶接条件を変更する。また、制御部22は、通信部23より入力される溶接電圧または溶接電流の検出値を、図示しない表示部に出力して表示させたり、通信部23より入力される異常発生を示す信号に基づいて、図示しない報知部に異常の報知(例えば、スピーカによる警告音や振動による報知)をさせたりする。また、制御部22は、通信部23からワイヤ送給指令を入力されると、送給モータ24にワイヤ電極の送給を行わせて、溶接トーチ3にワイヤ電極を送り出す。また、通信部23からガス供給指令を入力されると、ガス電磁弁25を開放して、ガスボンベ6のシールドガスを溶接トーチ3の先端から放出させる。
【0053】
また、制御部22は、ワイヤ送給装置2の通信相手となる溶接電源装置1を特定するために、ペアリング処理を行う。また、本実施形態においては、制御部22は、溶接電源装置1から通知されたタイミングに応じて、ペアリング処理を開始する。
【0054】
通信部23は、電力伝送線51,52を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。通信部23は、溶接電源装置1から受信した信号を復調して、制御部22に出力する。溶接電源装置1から受信する信号には、例えば、溶接電源装置1においてセンサで検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号、ワイヤ送給指令やガス供給指令などのための信号などがある。また、通信部23は、制御部22から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号や、溶接用電源部11の起動を指示する起動信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。通信部23も、通信部14と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。
【0055】
通信部23は、結合回路を備えている。当該結合回路は、電力伝送線51,52に並列接続されたコイルと通信部23の入出力端に接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部23が出力する通信信号を電力伝送線51,52に重畳し、また、電力伝送線51,52に重畳された通信信号を検出する。
【0056】
送給モータ24は、溶接トーチ3にワイヤ電極の送給を行うものである。送給モータ24は、制御部22からのワイヤ送給指令に基づいて回転し、送給ローラを回転させて、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出す。
【0057】
ガス電磁弁25は、ガスボンベ6と溶接トーチ3とを接続するガス配管7に設けられており、制御部22からのガス供給指令に基づいて開閉される。制御部22からガス供給指令が入力されている間、ガス電磁弁25は開放され、溶接トーチ3へシールドガスの供給が行われる。一方、制御部22からガス供給指令が入力されていないときは、ガス電磁弁25は閉鎖され、溶接トーチ3へのシールドガスの供給が停止される。
【0058】
電圧センサ26は、受電用電源部21の入力端子間の電圧を検出するものである。なお、電圧センサ26は、受電用電源部21のコンデンサの端子間電圧を検出するようにしてもよい。電圧センサ26は、検出した電圧を電圧比較部27に出力する。
【0059】
電圧比較部27は、電圧センサ26より入力される検出電圧Vを所定の閾値V
0と比較して、受電用電源部21の電圧が低下していることを検出するものである。閾値V
0は、電圧低下を判断するために設定された電圧値であり、送電用電源部12より印加される電圧(例えば48V)と0Vとの間の電圧値が設定される。閾値V
0として大きい値を設定すると、電圧低下を速く検出することができるが、誤検出する可能性が高くなる。一方、閾値V
0として小さい値を設定すると、電圧低下を誤検出する可能性が低くなるが、検出が遅くなる。本実施形態では、閾値V
0として例えば30〜40Vの値が設定されている。電圧比較部27は、比較結果を電圧低下検出信号として、制御部22に出力する。電圧比較部27は、検出電圧Vが所定の閾値V
0以上の場合、電圧は低下していないと判断して、電圧低下検出信号をローレベルとする。一方、検出電圧Vが所定の閾値V
0より小さい場合、電圧が低下していると判断して、電圧低下検出信号をハイレベルとする。制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号に基づいて、ペアリング処理を開始する。電圧センサ26および電圧比較部27は、本発明の「識別部」に相当する。また、受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26および電圧比較部27をまとめたものが、本発明の「第2の通信装置」に相当する。なお、ワイヤ送給装置2が、本発明の「第2の通信装置」に相当すると考えることもできる。また、ワイヤ送給装置2は、本発明の「溶接周辺装置」に相当する。
【0060】
次に、タイミング通知処理について説明する。タイミング通知処理は、ペアリング処理の開始のタイミングを知らせるための処理である。
【0061】
ペアリング処理は、通信相手を特定するための処理であり、共通の識別情報をそれぞれに設定するものである。送信側が送信する信号に当該識別情報を付与して送信し、受信側が当該識別情報が付与された信号だけを処理することで、通信相手以外から送信されて混信により受信した信号を排除することができる。上述したように、本実施形態では、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、電力伝送線51,52によって接続されており、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う。溶接作業が行われる現場には複数の溶接システムA1が存在し、電力伝送線51が配置されたガス配管7や、電力伝送線52の一部であるパワーケーブル41は、束ねて配置される場合がある。この場合、磁気結合により、他の溶接システムA1で送受信される信号が混信して重畳されてしまう場合がある。したがって、正確に通信を行うためには、ペアリング処理が必要になる。また、無線通信を行う場合は、接続された接続線で通信を行わないので、ペアリング処理を行わないと通信が成り立たない。
【0062】
ペアリング処理を通信で行う場合、当該機器はペアリングされる前なので、混信が発生しうる。したがって、ペアリングする機器間で、ペアリング処理の開始タイミングを一致させる必要がある。本実施形態では、溶接電源装置1が、タイミング通知処理によって、ワイヤ送給装置2にペアリング処理の開始タイミングを伝える。具体的には、溶接電源装置1は、切替部16によるスイッチ15の切り替えを利用して、ワイヤ送給装置2にペアリング処理の開始タイミングを伝える。また、ペアリング処理の開始のタイミングが、複数の溶接システムA1で一致してしまった場合、溶接電源装置1は、次の開始のタイミングにディレイ時間を設け、設定されるディレイ時間を溶接システムA1によって異なるようにすることで、タイミングをずらすようにしている。
【0063】
図4は、タイミング通知処理により、ペアリング処理の開始をワイヤ送給装置2に伝えるときの、各信号の波形を示すタイムチャートである。
【0064】
図4(a)は、制御部13が切替部16に出力するペアリング開始信号を示している。制御部13は、溶接電源装置1が起動されると、所定のハイレベル期間を有するパルス信号をペアリング開始信号として、切替部16に出力する。
図4(a)においては、ペアリング開始信号は、時刻t1のときにハイレベルとなり、時刻t3のときにローレベルになっている。
【0065】
図4(b)は、スイッチ15の状態を示している。
図4(b)に示すように、スイッチ15は、ペアリング開始信号がローレベルの間はオン状態であり、ペアリング開始信号がハイレベルの間はオフ状態になっている。つまり、スイッチ15は、時刻t1のときにオフ状態に切り替えられ、時刻t3のときにオン状態に切り替えられている。
【0066】
図4(c)は、電圧センサ26が検出した検出電圧Vを示している。
図4(d)は、電圧比較部27が出力する電圧低下検出信号を示している。
【0067】
時刻t1までは、スイッチ15がオン状態なので、電力伝送線52が導通状態になっている。したがって、送電用電源部12が出力する電圧が受電用電源部21に印加されて、電圧センサ26の検出電圧Vは所定の電圧(例えば48V)になっている。このとき、検出電圧Vは所定の閾値V
0以上なので、電圧低下検出信号はローレベルになっている。
【0068】
時刻t1において、スイッチ15がオフ状態に切り替えられている。このため、電力伝送線52が遮断状態になり、受電用電源部21に電圧が印加されなくなるので、電圧センサ26の検出電圧Vは低下している。時刻t2において、検出電圧Vが閾値V
0より小さくなったので、電圧低下検出信号はハイレベルになっている。
【0069】
検出電圧Vは、その後も低下するが、時刻t3でスイッチ15がオン状態に切り替えられたことで、上昇に転じている。スイッチ15をオフ状態とする時間、すなわち、ペアリング開始信号のハイレベル期間は、受電用電源部21の電圧(検出電圧V)が、制御部22を駆動できるレベルを維持できるように、設定されている。つまり、ハイレベル期間は、送電用電源部12から受電用電源部21に電圧が印加されなくなってから、受電用電源部21の電圧が制御部22を駆動できる最低限の電圧になるまでの時間より短く設定されている。
【0070】
そして、時刻t4において、検出電圧Vが閾値V
0以上になったので、電圧低下検出信号はローレベルになっている。検出電圧Vは、その後も上昇して、所定の電圧になり、当該電圧が維持されている。
【0071】
以上のように、溶接電源装置1の制御部13が切替部16に出力したペアリング開始信号に応じた波形が、ワイヤ送給装置2の制御部22に電圧低下検出信号として入力される。電圧低下検出信号は、ローレベルからハイレベルに切り替わる立ち上がりのタイミングがペアリング開始信号より遅く、ハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下がりのタイミングがペアリング開始信号とほぼ同じであるパルス波形になっている。受電用電源部21のコンデンサの容量が小さい場合や、閾値V
0が大きい場合、電圧低下検出信号は、ペアリング開始信号と同様の波形になる。電圧低下検出信号は、ワイヤ送給装置2のペアリング開始信号として用いられる。溶接電源装置1の制御部13は、ペアリング開始信号の立ち下がりのタイミングで、ペアリング処理を開始する。また、ワイヤ送給装置2の制御部22は、電圧低下検出信号の立ち下がりのタイミングで、ペアリング処理を開始する。ペアリング処理の開始のタイミングに微小な差(
図4においては時刻t3と時刻t4との間の時間差)があるが、ほぼ同様のタイミングになる。本実施形態では、制御部13のペアリング処理におけるペアリング開始から終了までの時間を、この時間差分だけ、制御部22のペアリング処理よりも長くしている。なお、制御部13でのペアリング処理の開始タイミングを、この時間差だけ遅らせるようにしてもよい。
【0072】
なお、ペアリング処理の開始タイミングとして、ペアリング開始信号および電圧低下検出信号の立ち下がりのタイミングを用いるのではなく、立ち上がりのタイミングを用いるようにしてもよい。ただし、ペアリング開始信号の立ち上がりのタイミングと電圧低下検出信号の立ち上がりのタイミングとの時間差(
図4においては時刻t1と時刻t2との間の時間差)は、ペアリング開始信号の立ち下がりのタイミングと電圧低下検出信号の立ち下がりのタイミングとの時間差(
図4においては時刻t3と時刻t4との間の時間差)より長くなるので、立ち下がりのタイミングを用いる方が望ましい。
【0073】
図5は、ペアリング処理の開始のタイミングが、複数の溶接システムA1で一致してしまった場合に、次の開始のタイミングをずらすことを説明するためのタイムチャートである。
【0074】
図5は、4台の溶接電源装置1のペアリング開始信号を示している。各溶接電源装置1には、それぞれ異なる識別番号が、予め設定されている。同図(a)はディレイ時間を設けなかった場合を示しており、同図(b)はディレイ時間を設けた場合を示している。
【0075】
溶接作業の現場では、複数の溶接電源装置1を同時に起動する場合がある。識別番号100〜103の溶接電源装置1を同時に起動した場合、識別番号100〜103の溶接電源装置1のペアリング開始信号は、同じタイミングでハイレベルに切り替わる(t11参照)。そして、各ペアリング開始信号は、同じタイミングでローレベルに切り替わるので(t12参照)、識別番号100〜103の溶接電源装置1は同じタイミングでペアリング処理を開始する。識別番号100の溶接電源装置1が対応するワイヤ送給装置2にペアリングのための識別情報を送信したとしても、識別番号101〜103の溶接電源装置1に対応するワイヤ送給装置2も当該識別情報を受信する。したがって、各ワイヤ送給装置2から応答が帰ってきて、ペアリング処理は失敗する。この場合、再度ペアリング処理を行うが、
図5(a)に示すように、ディレイ時間を設けなかった場合、識別番号100〜103の溶接電源装置1のペアリング開始信号は、また、同じタイミングでハイレベルに切り替わる(t13参照)。したがって、ペアリング処理の失敗が繰り返される。
【0076】
本実施形態においては、
図5(b)に示すように、ペアリング処理に失敗した場合は、ペアリング開始信号をハイレベルに切り替えるタイミングを、溶接電源装置1によって異なるようにしている。具体的には、各溶接電源装置1に設定されている識別番号に基づいてディレイ時間を設定し、ペアリング開始信号をハイレベルに切り替えるタイミングを当該ディレイ時間だけ遅らせるようにしている。ディレイ時間は、例えば、識別番号を10で除算したときの余りに、最小ディレイ時間Tdを乗算した値を用いる。最小ディレイ時間Tdは、ペアリング処理を成功させるために必要な最小の時間であり、例えば10秒程度としている。
【0077】
識別番号100の溶接電源装置1のディレイ時間は「0」になるので、
図5(b)に示すように、ペアリング開始信号がディレイ時間のない時刻t13でハイレベルに切り替わる。識別番号101の溶接電源装置1のディレイ時間は「Td」になるので、ペアリング開始信号が時刻t13よりディレイ時間Tdだけ遅れた時刻t14でハイレベルに切り替わる。識別番号102の溶接電源装置1のディレイ時間は「2Td」になるので、ペアリング開始信号が時刻t13よりディレイ時間2Tdだけ遅れた時刻t15でハイレベルに切り替わる。識別番号103の溶接電源装置1のディレイ時間は「3Td」になるので、ペアリング開始信号が時刻t13よりディレイ時間3Tdだけ遅れた時刻t16でハイレベルに切り替わる。したがって、識別番号100〜103の溶接電源装置1は、それぞれ時間をずらしてペアリング処理を開始することができる。
【0078】
なお、ディレイ時間の設定に用いる識別番号は、ユーザが任意に設定した番号でもよいし、溶接電源装置1の製造番号やシリアル番号、MACアドレスなどとしてもよい。また、識別番号の代わりに、発生させた乱数を用いるようにしてもよい。また、ディレイ時間の算出方法も限定されない。
【0079】
図6は、タイミング通知処理に応じてペアリング処理が行われる一連の制御処理を説明するためのフローチャートである。同図(a)は、溶接電源装置1で行われる制御処理を示しており、同図(b)は、ワイヤ送給装置2で行われる制御処理を示している。
【0080】
同図(a)に示す溶接電源装置1の制御処理は、溶接電源装置1が起動したときに開始される。まず、制御部13は、図示しないメモリから、溶接電源装置1に設定されている識別番号を取得する(S1)。そして、制御部13は、1回目のペアリング処理であるか否かを判別する(S2)。ペアリング回数はカウントされて、メモリに記録されている。
【0081】
制御部13は、1回目のペアリング処理である(まだ、ペアリング処理を行っていない)と判別した場合(S2:YES)は、そのままステップS3の処理に進む。一方、1回目のペアリング処理でないと判別した場合(S2:NO)は、ペアリング処理が失敗しているので、ペアリング処理の開始のタイミングをずらすために、ディレイ時間を設ける(S9,S10)。具体的には、制御部13は、識別番号からディレイ時間を算出し(S9)、ディレイ時間が経過するのを待って(S10)、ステップS3の処理に進む。なお、ペアリング処理の失敗の理由が、ペアリング処理の開始のタイミングが他の溶接システムA1と一致していたことに基づく場合だけ、制御部13がステップS9,S10の処理を行うようにしてもよい。この場合、ペアリング処理の失敗の理由が、ペアリング相手がいないことに基づくのであれば、ディレイ時間を設ける必要がないので、制御部13は、ステップS9,S10の処理を行うことなく、ステップS3の処理に進むことができる。
【0082】
ステップS3において、制御部13は、ペアリング開始信号をハイレベルに切り替える。これにより、切替部16がスイッチ15をオフ状態に切り替える(S3)。そして、制御部13は、所定のハイレベル期間が経過するのを待って(S4)、ペアリング開始信号をローレベルに切り替える。これにより、切替部16がスイッチ15をオン状態に切り替える(S5)。そして、制御部13は、ペアリング処理を開始する(S6)。ペアリング処理の具体的な方法は限定されず、周知の方法を用いればよい。
【0083】
そして、制御部13は、ペアリング処理のための時間が経過するのを待って(S7)、ペアリング処理が成功したか否かを判別する(S8)。制御部13は、ペアリング処理が成功したと判別した場合(S8:YES)、当該制御処理を終了する。一方、ペアリング処理が失敗したと判別した場合(S8:NO)、ステップS2の処理に戻って、再度、タイミング通知処理およびペアリング処理を行う。
【0084】
図6(b)に示すワイヤ送給装置2の制御処理は、受電用電源部21に電力が供給されて、ワイヤ送給装置2が起動したときに開始される。まず、制御部22は、受電用電源部21の電圧低下が検出されるのを待つ(S21)。具体的には、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号がハイレベルになったか否かの判別を繰り返し、ハイレベルになった場合に電圧低下が検出されたとして(S21:YES)、ステップS22の処理に進む。次に、制御部22は、受電用電源部21の電圧復帰が検出されるのを待つ(S22)。具体的には、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号がローレベルになったか否かの判別を繰り返し、ローレベルになった場合に電圧復帰が検出されたとして(S22:YES)、ステップS23の処理に進む。ステップS22およびS23は、溶接電源装置1のタイミング通知処理によるペアリング処理開始のタイミングの通知を待つ処理である。そして、制御部22は、ペアリング処理を開始する(S23)。ペアリング処理の具体的な方法は限定されず、周知の方法を用いればよい。
【0085】
そして、制御部22は、ペアリング処理のための時間が経過するのを待って(S24)、ペアリング処理が成功したか否かを判別する(S25)。制御部22は、ペアリング処理が成功したと判別した場合(S25:YES)、当該制御処理を終了する。一方、ペアリング処理が失敗したと判別した場合(S25:NO)、ステップS21の処理に戻って、再度、タイミングの通知を待って、ペアリング処理を行う。
【0086】
なお、
図6のフローチャートに示す各制御処理は一例であって、各制御処理は上述したものに限定されない。
【0087】
また、本実施形態において、ペアリング処理は、溶接電源装置1が起動されたとき以外にも行われる。溶接作業の現場では、溶接電源装置1に接続されているワイヤ送給装置2を取り外して、別のワイヤ送給装置2を取り付ける場合がある。溶接電源装置1の電源が投入されたままで、この取り換えが行われると、溶接電源装置1はペアリングされたワイヤ送給装置2に対して通信を行おうとするので、現在接続されているワイヤ送給装置2と通信することができない。溶接電源装置1が現在接続されているワイヤ送給装置2と通信するためには、再度、ペアリング処理を行う必要がある。本実施形態においては、溶接電源装置1がワイヤ送給装置2と通信できなくなった場合に、接続されていたワイヤ送給装置2が取り替えられたと判断し、再度、ペアリング処理を行うようにしている。
【0088】
図7は、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2が行う、通信接続の確立を確認するための処理(以下では、「通信確認処理」とする)を説明するためのフローチャートである。同図(a)は、溶接電源装置1で行われる通信確認処理を示しており、同図(b)は、ワイヤ送給装置2で行われる通信確認処理を示している。
【0089】
同図(a)に示す溶接電源装置1の通信確認処理は、ペアリング処理が成功して、ワイヤ送給装置2とのペアリングが確立した後に、開始される。まず、制御部13は、所定時間の経過を待って(S31)、通信部14に確認信号の送信を指示する。通信部14は、当該指示に応じて、ペアリングされているワイヤ送給装置2に、確認信号を送信する(S32)。これにより、確認信号が所定時間ごとに、定期的に送信される。次に、制御部13は、ワイヤ送給装置2からの応答があったか否かを判別する(S33)。具体的には、制御部13は、ペアリングされているワイヤ送給装置2からの応答信号を通信部14が受信したか否かを判別する。制御部13は、ワイヤ送給装置2からの応答があったと判別した場合(S33:YES)、ステップS31の処理に戻る。つまり、制御部13は、ワイヤ送給装置2からの応答がある限り、確認信号を定期的に送信する。
【0090】
一方、制御部13は、ワイヤ送給装置2からの応答がないと判別した場合(S33:NO)、応答待ちのための時間が経過したか否かを判別する(S34)。制御部13は、確認信号を送信してからの時間を計時しており、計時された時間が所定の時間を経過したか否かを判別する。制御部13は、応答待ちのための時間が経過していないと判別した場合(S34:NO)、ステップS33の処理に戻り、応答があるか、時間が経過するまで、ステップS33およびS34の判別を繰り返す。
【0091】
制御部13は、応答待ちのための時間が経過したと判別した場合(S34:YES)、ペアリングされているワイヤ送給装置2との間の通信ができなくなったと判断し、新たなワイヤ送給装置2とのペアリングを行うために、ペアリング処理を実施する(S35)。具体的には、制御部13は、
図6(a)に示す制御処理を行う。このとき、溶接電源装置1に接続されたワイヤ送給装置2があれば、当該ワイヤ送給装置2は
図6(b)に示す制御処理を行っているので、ペアリング処理が行われる。ペアリング処理が成功して、新たなワイヤ送給装置2とのペアリングが確立すると、制御部13は、ステップS31の処理に戻り、通信接続の確立を確認するために、確認信号の送信を繰り返す。制御部13は、本発明の「通信不通検出手段」に相当する。
【0092】
図6(b)に示すワイヤ送給装置2の通信確認処理は、ペアリング処理が成功して、溶接電源装置1とのペアリングが確立した後に、開始される。まず、制御部22は、確認信号を受信するのを待つ(S41)。具体的には、制御部22は、ペアリングされている溶接電源装置1からの確認信号を通信部14が受信したか否かを判別し、確認信号を受信していないと判別している間(S41:NO)、ステップS41の判別処理を繰り返す。制御部22は、通信部14が確認信号を受信したと判別した場合(S41:YES)、通信部23に応答信号の送信を指示する。通信部23は、当該指示に応じて、ペアリングされている溶接電源装置1に、応答信号を送信する(S42)。その後、制御部22は、ステップS41の処理に戻って、確認信号を受信するのを待つ。
【0093】
なお、
図7のフローチャートに示す各通信確認処理は一例であって、各通信確認処理は上述したものに限定されない。
【0094】
本実施形態によると、切替部16は、制御部13より入力されるペアリング開始信号がローレベルの場合にスイッチ15をオン状態とし、ハイレベルの場合にスイッチ15をオフ状態とする。オン状態では電力伝送線52が導通状態になるので、受電用電源部21は、送電用電源部12から電圧を印加される。一方、オフ状態では電力伝送線52が遮断状態になるので、受電用電源部21に電圧が印加されなくなる。電圧比較部27は、電圧センサ26が検出した検出電圧Vを閾値V
0と比較して、受電用電源部21が電圧低下状態である場合にハイレベルとなる電圧低下検出信号を生成する。電圧低下検出信号は、ペアリング開始信号に応じた波形になる。したがって、溶接電源装置1の通信部14とワイヤ送給装置2の通信部23とでペアリングが確立する前であっても、溶接電源装置1は、ペアリング開始信号を電圧低下検出信号として、ワイヤ送給装置2に伝達することができる。
【0095】
また、本実施形態によると、溶接電源装置1の制御部13は、ペアリング開始信号がハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下がりのタイミングで、ペアリング処理を開始する。また、ワイヤ送給装置2の制御部22は、電圧低下検出信号がハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下がりのタイミングで、ペアリング処理を開始する。したがって、両者のペアリング処理の開始のタイミングは、ほぼ同様のタイミングになる。これにより、ペアリング処理が失敗することを抑制できる。
【0096】
また、本実施形態によると、溶接電源装置1の制御部13は、ペアリング処理の開始のタイミングが、複数の溶接システムA1で一致してしまった場合に、次の開始のタイミングを、溶接電源装置1の識別番号に基づくディレイ時間だけずらしている。したがって、複数の溶接電源装置1を同時に起動した場合でも、ペアリング処理の失敗が繰り返されることを抑制できる。
【0097】
また、本実施形態によると、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2は、通信確認処理によって、通信接続の確立を確認している。そして、溶接電源装置1は、ペアリングされているワイヤ送給装置2との間の通信ができなくなったと判断した場合は、ペアリング処理を実施して、新たなワイヤ送給装置2とのペアリングを行う。したがって、溶接電源装置1に接続されているワイヤ送給装置2を取り外して、別のワイヤ送給装置2を取り付けた場合でも、新たに取り付けられたワイヤ送給装置2と通信できるようになる。
【0098】
なお、本実施形態においては、通信部14(23)が、コイルによる磁気結合を利用して通信信号を重畳し、重畳された通信信号を検出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、コンデンサによる電界結合を利用するようにしてもよい。
【0099】
本実施形態においては、送電用電源部12が受電用電源部21に直流電力を供給する場合、について説明したが、交流電力を供給するようにしてもよい。この場合、送電用電源部12は、整流回路121およびDC/DCコンバータ回路122に代えてトランスを備えるようにし、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧して出力するようにすればよい。一方、受電用電源部21には、交流電力を直流電力に変換するための整流回路を設ける必要がある。また、この場合は、電圧センサ26を整流回路の出力側に配置すればよい。または、電圧センサ26が電圧実効値を検出して、電圧比較部27が当該電圧実効値を閾値と比較するようにしてもよい。
【0100】
本実施形態においては、溶接用電源部11および送電用電源部12が、電力系統から入力される交流電力を、それぞれ直流電力に変換して出力する場合について説明したが、これに限られない。溶接用電源部11と送電用電源部12とで、構成の一部を共有するようにしてもよい。例えば、
図3(b)に示すように、送電用電源部12に整流回路121を設けずに、溶接用電源部11の整流回路111の出力をDC/DCコンバータ回路122に入力するようにしてもよい。また、溶接用電源部11のトランス113の二次側に巻線を追加して電力を取り出し、整流して出力するようにしてもよいし、送電用電源部12を設けずに、溶接用電源部11の出力の一部を、ワイヤ送給装置2に供給するようにしてもよい。
【0101】
本実施形態においては、溶接電源装置1がアークに直流電力を供給する直流電源である場合について説明したが、これに限られない。例えばアルミなどの溶接を行うために、溶接電源装置1を、交流電力を供給する交流電源としてもよい。この場合、溶接用電源部11にさらにインバータ回路を追加し、整流回路114から出力される直流電力を交流電力に変換して出力するようにすればよい。
【0102】
本実施形態においては、溶接システムA1が消耗電極式の溶接システムである場合について説明した。非消耗電極式の溶接システムの場合、ワイヤ電極を送給するためのワイヤ送給装置は必要ないが、溶加ワイヤを自動送給するためのワイヤ送給装置を用いる場合がある。この場合は、溶接システムA1と同様の構成になり、本発明を適用することができる。
【0103】
上記第1実施形態においては、ペアリング処理の開始のタイミングを一致させる場合について説明した。第1実施形態では、ペアリングされる前でも、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが電力伝送線51,52によって接続されていることを利用し、溶接電源装置1は、スイッチ15をオンオフ操作することで、電圧低下検出信号を変化させ、ワイヤ送給装置2にペアリング処理の開始のタイミングを伝えている。第1実施形態に係る溶接システムA1のハード構成を利用して、より複雑な情報を溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に伝達することも可能である。例えば、ペアリング処理において通信部14から通信部23に送信する識別情報を、スイッチ15のオンオフ操作によって伝達することもできる。ペアリングのための識別情報を、スイッチ15のオンオフ操作によって伝達する場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0104】
第2実施形態に係る溶接システムA2のハード構成は、第1実施形態に係る溶接システムA1(
図1〜3参照)と同様なので、図示および説明を省略する。溶接システムA2は、ペアリング処理において、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2への識別情報の伝達を、通信部14と通信部23との通信で行うのではなく、スイッチ15のオンオフ操作によって行う点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0105】
図8は、溶接システムA2において、溶接電源装置1がワイヤ送給装置2に識別情報の伝達を行うときの、各信号の波形を示すタイムチャートである。
【0106】
図8(a)は、制御部13が切替部16に出力する識別情報信号を示している。識別情報信号は、識別情報を2進数のデータとし、誤り検出データ(例えば、CRCデータ)を付加したビットデータに基づいて生成される。本実施形態においては、ローレベル期間の長さを切り替えたパルス信号を識別情報信号としている。制御部13は、ビットデータが「0」の場合にローレベル期間を短くし、ビットデータが「1」の場合にローレベル期間を長くして、識別情報信号を生成する。
図8(a)に示す識別情報信号は、「00010010…」を示している。なお、識別情報信号は、ビットデータに基づいてハイレベル期間の長さを切り替えたパルス信号としてもよいし、デューティ比を切り替得たパルス信号としてもよい。また、本実施形態においては、識別情報として、溶接電源装置1に設定されているMACアドレスの下位16ビットを用いている。なお、識別情報は、溶接電源装置1を特定できるものであればよく、ユーザが任意に設定した番号でもよいし、溶接電源装置1の製造番号やシリアル番号などとしてもよい。
【0107】
図8(b)は、スイッチ15の状態を示している。
図8(b)に示すように、スイッチ15は、識別情報信号がローレベルの間はオン状態であり、識別情報信号がハイレベルの間はオフ状態になっている。つまり、ビットデータが「0」の場合にスイッチ15のオン状態が短くなり、ビットデータが「1」の場合にスイッチ15のオン状態が長くなっている。
【0108】
図8(c)は、電圧センサ26が検出した検出電圧Vを示している。
図8(d)は、電圧比較部27が出力する電圧低下検出信号を示している。
図4で説明したように、スイッチ15がオフ状態に切り替えられると検出電圧Vは低下し、スイッチ15がオン状態に切り替えられると検出電圧Vは上昇する。そして、電圧比較部27は、検出電圧Vが所定の閾値V
0より小さい場合に、電圧低下検出信号をハイレベルとする。スイッチ15のオン状態が短い場合は、検出電圧Vが閾値V
0以上となる時間が短くなるので、電圧低下検出信号のローレベル期間が短くなる。一方、スイッチ15のオン状態が長い場合は、検出電圧Vが閾値V
0以上となる時間が長くなるので、電圧低下検出信号のローレベル期間が長くなる。つまり、電圧低下検出信号は、識別情報信号に応じた波形になる。したがって、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号に基づいて、識別情報を復元することができる。
【0109】
第2実施形態によると、切替部16は、制御部13より入力される識別情報信号がローレベルの場合にスイッチ15をオン状態とし、ハイレベルの場合にスイッチ15をオフ状態とする。オン状態では電力伝送線52が導通状態になるので、受電用電源部21は、送電用電源部12から電圧を印加される。一方、オフ状態では電力伝送線52が遮断状態になるので、受電用電源部21に電圧が印加されなくなる。電圧比較部27は、電圧センサ26が検出した検出電圧Vを閾値V
0と比較して、受電用電源部21が電圧低下状態である場合にハイレベルとなる電圧低下検出信号を生成する。電圧低下検出信号は、識別情報信号に応じた波形になる。したがって、溶接電源装置1の通信部14とワイヤ送給装置2の通信部23とでペアリングが確立する前であっても、溶接電源装置1は、識別情報信号を電圧低下検出信号として、ワイヤ送給装置2に伝達することができる。また、溶接電源装置1は、溶接電源装置1の識別情報を、通信部14および通信部23による通信を用いずに、ワイヤ送給装置2の伝達することができるので、ペアリング処理が失敗することを抑制することができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、識別情報が2進数のデータであって、「1」と「0」とを識別情報信号のローレベル期間の長短で表しているが、これに限られない。例えば、識別情報を10進数のデータとして、識別情報信号のローレベル期間の長さを10段階で切り替えるようにしてもよい。
【0111】
また、本実施形態においては、制御部13が切替部16に識別情報信号を出力する場合について説明したが、これに限られない。制御部13は、ペアリング処理のための識別情報以外の情報に基づく信号を、切替部16に出力するようにしてもよい。切替部16による切り替えに応じて、電圧比較部27より出力される電圧低下検出信号が変化するので、制御部13は制御部22に、任意の情報を伝達することができる。したがって、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2への片側通信だけを行う場合は、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2がそれぞれ通信部14および通信部23を備えないようにして、切替部16による切り替えと電圧比較部27による比較だけで、情報の伝達を行うようにしてもよい。
【0112】
図9〜
図15は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。
【0113】
図9は、第3実施形態に係る溶接システムA3の構成を示す図である。なお、
図9においては、溶接電源装置1の記載を省略している。
【0114】
図9に示す溶接システムA3は、電圧センサ26および電圧比較部27に代えて、電流センサ26’および電流比較部27’を備えている点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0115】
電流センサ26’は、電力伝送線51または電力伝送線52に流れる電流を検出するものである。電流センサ26’は、検出した電流を電流比較部27’に出力する。電流比較部27’は、電流センサ26’より入力される検出電流Iを所定の閾値I
0と比較して、電力伝送線51,52に電流が流れているか否かを検出するものである。閾値I
0は、電流が流れているか否かを判断するために設定された電流値であり、検出誤差を排除するために設けられている。スイッチ15がオン状態の場合、電力伝送線52が導通状態になっており、電力伝送線51,52には電流が流れる。一方、スイッチ15がオフ状態の場合、電力伝送線52が遮断状態になっており、電力伝送線51,52には電流が流れない。電流比較部27’は、比較結果を電流未検出信号として、制御部22に出力する。電流比較部27’は、検出電流Iが閾値I
0未満の場合、電流が流れていないと判断して、電流未検出信号をハイレベルとする。一方、検出電流Iが閾値I
0以上の場合、電流が流れていると判断して、電流未検出信号をローレベルとする。電流未検出信号は、ペアリング開始信号に応じた波形(同様の波形)になり、ワイヤ送給装置2のペアリング開始信号として用いられる。制御部22は、電流未検出信号に基づいて、ペアリング処理を開始する。電流センサ26’および電流比較部27’は、本発明の「識別部」に相当する。
【0116】
第3実施形態によると、溶接電源装置1の通信部14とワイヤ送給装置2の通信部23とでペアリングが確立する前であっても、溶接電源装置1は、ペアリング開始信号を電流未検出信号として、ワイヤ送給装置2に伝達することができる。したがって、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0117】
なお、ワイヤ送給装置2は、受電用電源部21に電圧が印加されているか否かを識別することができればよい。したがって、ワイヤ送給装置2が、電圧センサ26(電流センサ26’)の代わりに、例えば、電力センサを備えて、受電用電源部21に電力が供給されているか否かを識別するようにしてもよい。
【0118】
図10は、第4実施形態に係る溶接システムA4の構成を示す図である。なお、
図10においては、ワイヤ送給装置2の記載を省略している。
【0119】
図10に示す溶接システムA4は、スイッチ15および切替部16を備えておらず、制御部13が送電用電源部12の出力電圧を切り替える点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0120】
制御部13は、ペアリング開始信号に応じて、送電用電源部12のDC/DCコンバータ回路122の出力を切り替える。具体的には、制御部13は、ペアリング開始信号がローレベルの間は、DC/DCコンバータ回路122の出力が所定の電圧(例えば48V)となるように制御し、ペアリング開始信号がハイレベルの間は、DC/DCコンバータ回路122の出力が0Vとなるように制御する。つまり、第3実施形態に係る溶接電源装置1は、スイッチ15で電力伝送線52を遮断状態にする代わりに、送電用電源部12の出力電圧を「0」にする。DC/DCコンバータ回路122は、本発明の「切替部」に相当する。
【0121】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態に係る溶接電源装置1は、スイッチ15および切替部16を備えていない。したがって、従来の溶接電源装置のハードウエアを変更することなく、ソフトウエアを変更するだけで、第4実施形態に係る溶接電源装置1として用いることができる。
【0122】
なお、第4実施形態においては、制御部13が、DC/DCコンバータ回路122の出力を、所定の電圧(例えば48V)と0Vとで切り替える場合について説明したが、これに限られない。例えば、制御部13が、DC/DCコンバータ回路122の出力を、所定の第1電圧(例えば48V)と所定の第2電圧(例えば24V)とで切り替えるようにしてもよい。電圧比較部27で比較するための閾値V
0は、第1電圧と第2電圧との間の電圧値を設定すればよい(例えば36V程度)。この場合、受電用電源部21には電圧が印加され続けるので、電圧が低下し過ぎることを防止することができる。
【0123】
図11は、第5実施形態に係る溶接システムA5の全体構成を示す図である。
【0124】
図11に示す溶接システムA5は、電力伝送線51,52を用いた有線通信ではなく、無線通信を行う点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。溶接電源装置1は、通信部14に代えて通信部14’を備えており、ワイヤ送給装置2は、通信部23に代えて通信部23’を備えている。
【0125】
通信部14’は、ワイヤ送給装置2との間で無線通信を行うためのものであり、アンテナを介して信号の送受信を行う。通信部14’の通信方式は、無線通信であることを除いて、通信部14の通信方式と共通する。通信部23’は、溶接電源装置1との間で無線通信を行うためのものであり、アンテナを介して信号の送受信を行う。通信部23’の通信方式は、無線通信であることを除いて、通信部23の通信方式と共通する。
【0126】
第5実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0127】
図12(a)は、第6実施形態に係る溶接システムA6の全体構成を示す図である。なお、
図12(a)においては、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2の内部構成の一部の記載を省略している(
図12(b)も同様)。
【0128】
図12(a)に示す溶接システムA6は、パワーケーブル42がワイヤ送給装置2の内部を通っており、電力伝送線52の一部の区間がパワーケーブル42になっている点で、
図1に示す溶接システムA1と異なる。また、
図12(b)は第6実施形態に係る溶接システムA6の変形例である。本変形例は、パワーケーブル42をワイヤ送給装置2の内部に通さずに、受電用電源部21に接続する電力伝送線52を被加工物Wに接続したものである。
【0129】
送電用電源部12から受電用電源部21への電力供給にパワーケーブル42を用いる場合(
図12参照)、パワーケーブル41を用いる場合(
図1参照)とは逆に、電力伝送線51の電位が電力伝送線52の電位より高くなるように、送電用電源部12が電圧を印加する。これにより、電力伝送線51およびパワーケーブル41の電位をどちらもパワーケーブル42より高くして、電力伝送線51とパワーケーブル41との電位差があまり大きくならないようにしている。なお、電力伝送線51とパワーケーブル41との電位差を気にしない場合は、送電用電源部12が印加する電圧を逆極性にしてもよい。
【0130】
第6実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0131】
図13(a)は、第7実施形態に係る溶接システムA7の全体構成を示す図である。なお、
図13(a)においては、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2の内部構成の一部の記載を省略している。
【0132】
図13(a)に示す溶接システムA7は、ガスボンベ6およびガス配管7が設けられておらず、電力伝送線51が、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間でむき出しになっている点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。第7実施形態の場合、ガス配管7によって保護されないので、電力伝送線51の被覆を厚くするなどして、断線しにくいように補強する必要がある。
【0133】
第7実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、ガス配管7が設けられていても、電力伝送線51をガス配管7の内側に配置しないようにしてもよい。
【0134】
図13(b)は、第8実施形態に係る溶接システムA8の全体構成を示す図である。なお、
図13(b)においては、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2の内部構成の一部の記載を省略している
【0135】
図13(b)に示す溶接システムA8は、ガスボンベ6およびガス配管7が設けられておらず、電力伝送線51が、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間でむき出しになっている点と、電力伝送線52の一部の区間がパワーケーブル41になっておらず、電力伝送線52が送電用電源部12と受電用電源部21とを直接接続している点とで、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0136】
第8実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、ガス配管7が設けられていても、電力伝送線51をガス配管7の内側に配置しないようにしてもよい。
【0137】
上記第1〜8実施形態においては、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する電力伝送線51,52を用いる場合について説明したが、これに限られない。ワイヤ送給装置2が溶接電源装置1から電力を供給されない溶接システムは、電力伝送線51,52を備えていない。この場合は、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する他の接続線を利用すればよい。以下では、溶接トーチ3に設けられているトーチスイッチが制御線によって溶接電源装置1に接続されている溶接システムにおいて、当該制御線を利用する場合について、第9実施形態として以下に説明する。
【0138】
図14は、第9実施形態に係る溶接システムA9の全体構成を示す図である。なお、
図14においては、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2の内部構成の一部、ガスボンベ6およびガス配管7の記載を省略している。
【0139】
図14に示す溶接システムA9は、ワイヤ送給装置2が溶接電源装置1から電力を供給されていない点と、トーチスイッチ31からの操作信号が制御線8を介して溶接電源装置1に直接入力される点とで、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0140】
トーチスイッチ31は、溶接トーチ3に設けられており、ワイヤ送給装置2の内部を通る制御線8によって、溶接電源装置1の制御部13に接続されている。操作者によるトーチスイッチ31の操作による起動信号が、制御線8を介して溶接電源装置1の制御部13に入力される。制御部13は、制御線8に小な電圧を印加しており、電流が流れたか否かでトーチスイッチ31のオンオフを検出する。
【0141】
本実施形態において、スイッチ15は、制御線8に配置されており、制御線8を導通させる状態(オン状態)と制御線8を遮断する状態(オフ状態)とを切り替える。スイッチ15がオン状態の場合、制御線8には電圧が印加され、スイッチ15がオフ状態の場合、制御線8には電圧が印加されない。また、電圧センサ26は、制御線8に配置されており、制御線8に印加されている電圧を検出する。電圧比較部27は、電圧センサ26より入力される検出電圧Vを所定の閾値V
0と比較して、制御線8に電圧が印加されているか否かを検出して、検出結果の信号を制御部22に出力する。
【0142】
第9実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、ワイヤ送給装置2が電力伝送線51,52によって溶接電源装置1から電力を供給されている場合でも、制御線8を利用するようにしてもよい。また、利用する制御線は、トーチスイッチ31の制御線8に限定されない。例えば、ワイヤ送給装置2に設けられている溶接電流(電圧)設定部と溶接電源装置1とを接続する制御線や、インチングスイッチと溶接電源装置1とを接続する制御線などを利用するようにしてもよい。また、ワイヤ送給装置2にリモコンが接続されており、溶接電流(電圧)設定部またはインチングスイッチが当該リモコンに設けられている場合、溶接電流(電圧)設定部またはインチングスイッチと溶接電源装置1とを接続する制御線を利用するようにしてもよい。
【0143】
上記第1〜9実施形態においては、溶接電源装置1がワイヤ送給装置2と通信を行う場合について説明したが、これに限られない。溶接電源装置1が他の周辺装置と通信する場合にも、本発明を適用することができる。以下では、溶接電源装置1を遠隔操作するためのリモコン9と溶接電源装置1とが通信を行う場合について、第10実施形態として以下に説明する。
【0144】
図15は、第10実施形態に係る溶接システムA10の全体構成を示す図である。なお、
図15においては、ワイヤ送給装置2、ガスボンベ6およびガス配管7の記載を省略している。
【0145】
図15に示す溶接システムA10は、リモコン9を備えている。リモコン9は、溶接電源装置1を遠隔操作するものであり、受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26、および、電圧比較部27を備えている。リモコン9は、駆動のための電力を、溶接電源装置1から供給される。リモコン9の受電用電源部21と溶接電源装置1の送電用電源部12とは、電力伝送線51,52によって接続されている。送電用電源部12から出力される電力は、電力伝送線51,52によって、受電用電源部21に供給される。また、溶接電源装置1とリモコン9とは、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う。受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26および電圧比較部27は、それぞれ、第1実施形態に係るワイヤ送給装置2の受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26および電圧比較部27と同様のものである。なお、リモコン9は、実際には、操作部、表示部および報知部などを備えているが、
図15においては記載を省略している。リモコン9は、本発明の「第2の通信装置」に相当する。
【0146】
第10実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、リモコン9以外の周辺装置(例えば溶接トーチ3、溶接トーチ3に循環させる冷却水を制御する冷却水循環装置、ガスボンベ6のガスの供給を制御する装置など)と溶接電源装置1とが通信する場合にも、同様に、本発明を適用することができる。これらの場合、各周辺装置は、本発明の「第2の通信装置」に相当する。
【0147】
上記第1〜10実施形態においては、本発明を溶接システムに適用した場合について説明したが、これに限られない。その他の通信を行うシステムにおいても、本発明を適用することができる。
【0148】
本発明に係る通信システムおよび溶接システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る通信システムおよび溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。