【文献】
田河 千博,高速化,低遅延,周波数利用効率改善を実現する技術と測定 3.9G/LTE携帯電話の徹底研究 第4章 測定の概要と使用する計測機器,送信試験,受信試験 LTE基地局の測定,RFワールド No.17 トランジスタ技術 2012年2月号増刊,日本,CQ出版株式会社,2013年 1月 1日,第17号,P. 38-44
【文献】
大橋 健二,高速化,低遅延,周波数利用効率改善を実現する技術と測定 3.9G/LTE携帯電話の徹底研究 第6章 コンフォーマンス試験,サービス・アプリケーション試験,通信事業者受入試験など LTE端末の測定/評価/試験,RFワールド No.17 トランジスタ技術 2012年2月号増刊,日本,CQ出版株式会社,2013年 1月 1日,第17号,P. 51-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信部は、前記測定用フレームとして、IEEE802.11規格に準拠したフレームを送信するものであることを特徴とする請求項1ないし3までのいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の試験装置は、M×Nの伝搬路を経由した信号と等価な信号を1つの装置内で生成して試験対象に与えるMIMO方式を採用しているため、例えば、SISO(Single Input Single Output)方式を採用した試験装置に比べて回路構造が複雑化し、装置コストも高くならざるを得なかった。また、今日の無線LANの高速化技術の著しい進展を背景に試験対象についてもアンテナ本数がより多くなる傾向にある。こうした中、上記従来の試験装置では、回路構造が複雑なことから改造には不向きであり、フレキシブルな対応ができないばかりか、改造したとしても装置のコストが高騰することとなった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、MIMO方式の被測定装置の測定を安価な構成により実現でき、アンテナ本数が変更された被測定装置の測定にも柔軟に対応可能な測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る測定装置は、
統合制御装置(55)と、SISO方式の複数の測定機器
であって主測定機器(51A)と副測定機器(51B)をなす当該複数の測定機器とを含み、MIMO方式による通信を
前記統合制御装置による所定の制御無く行う
1の被測定装置(DUT1)の測定を行う測定装置(50)であって、
前記統合制御装置は、前記主測定機器のみに指令信号を送るようになっており、前記各測定機器は、単一ストリームの信号を処理する信号処理部(70A、71A)(70B、71B)と、前記単一ストリームの信号の送信部(73A、73B)及び受信部(74A、74B)を有する送受信部(72A、72B)と、をそれぞれ有し、前記各測定機器のうちの
前記主測定機器は、
前記統合制御装置からの指令信号に基づき、自測定機器と
前記副測定機器のそれぞれの前記送信部の送信動作タイミングを同期させつつ当該各送信部からそれぞれ前記単一ストリームの信号を送信させることにより前記各測定機器と前記被測定装置とを無線LANにより接続する接続制御手段(61A)と、前記無線LANの接続中、前記被測定装置から送信される複数ストリームの信号を、自測定機器と前記
副測定機器のそれぞれの前記受信部の受信動作タイミングを同期させつつ当該各受信部によりそれぞれ受信させる受信制御手段(62A)と、前記無線LANの接続中に前記各送信部から送信した測定用データを含む測定用フレームに対する前記被測定装置からの前記測定用データを受信したことを示す受信確認信号(ACK)に基づいて前記被測定装置の受信特性を測定する測定制御手段(63A)と、をさらに有する構成を有している。
【0008】
この構成により、本発明の請求項1に係る測定装置は、SISO方式の複数の測定機器を用いて、MIMO方式の測定装置を用いる場合に比べて安価にMIMO方式の被測定装置の受信特性を測定でき、被測定装置のアンテナ本数が変更されてもSISO方式の測定機器の数を増減させることで当該被測定装置の測定に柔軟に対応できる。
【0009】
本発明の請求項2に係る測定装置は、前記測定制御手段は、予め設定された所定の回数に達するまで前記測定用フレームを送信する送信制御部(64A)と、前記測定用フレームを送信するごとに前記受信確認信号を受信したか否かを判定する判定部(65A)と、前記測定用フレームの送信回数が前記所定の回数に達するまでの間に前記受信
確認信号が受信されたと判定された回数の割合に基づいて前記測定用フレームのエラー率を算出するエラー率算出部(66A)と、前記エラー率を前記測定用フレームの送信時の前記送信部の送信レベルと関連付けて表示部(76A)に表示する表示制御部(67A)と、を有する構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項2に係る測定装置は、測定用データを含む測定用フレームを所定の回数送信し、そのうちの測定用データが被測定装置で受信されたことを示す受信確認信号を受信した回数の割合をエラー率として算出することができ、当該エラー率に基づいて被測定装置の受信特性を評価することができる、よって、本発明の請求項2に係る測定装置では、SISO方式の複数の測定機器を用いて被測定装置の受信特性を安価に測定可能になる。
【0011】
本発明の請求項3に係る測定装置は、前記送信制御部は、前記送信部の送信レベルを段階的に変更しながら前記所定の回数単位で前記測定用フレームの送信を繰り返し実行し、前記表示制御部は、前記エラー率と前記測定用フレームの送信レベルとを対応付けて前記表示部に表示する構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の請求項3に係る測定装置は、被測定装置での測定用フレームの受信に関するエラー率を、送信部の送信レベルと関連づけて目視確認することができ、SISO方式の複数の測定機器を用いて被測定装置の受信特性を安価に測定できるとともに測定結果の確認が容易になる。
【0013】
本発明の請求項4に係る測定装置は、前記送信部は、前記測定用フレームとして、IEEE802.11規格に準拠したフレームを送信するものである構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の請求項4に係る測定装置は、IEEE802.11規格に準拠した測定用フレームで送信するデータの被測定装置での受信状況をSISO方式の複数の測定機器を用いて安価に測定することができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る測定方法は、請求項1に記載の測定装置を用い
、MIMO方式による通信を
前記統合制御装置による所定の制御無く行う
1の被測定装置
(DUT1)の測定を行う測定方法であって、前記複数の測定機器のうちの1の測定機器を主測定機器、前記主測定機器以外の測定機器を副測定機器としてそれぞれ設定する設定段階(S11)と、
前記統合制御装置が前記主測定機器のみに指令信号を送る指令送信段階(S12)と、前記各測定機器のうちの前記主測定機器が、前記統合制御装置からの指令信号に基づき、自測定機器と前記副測定機器のそれぞれの前記送信部の送信動作タイミングを同期させつつ当該各送信部からそれぞれ前記単一ストリームの信号を送信させることにより
自測定機器及び前記副測定機器と前記被測定装置とを無線LANにより接続する接続制御段階(S14)と、前記無線LANの接続中、前記各送信部から、測定用データを含む測定用フレームを送信させる送信制御段階(S15)と、前記測定用フレームに対する前記被測定装置からの前記測定用データを受信したことを示す受信確認信号(ACK)に基づいて前記被測定装置の受信特性を測定する測定制御段階(S19)と、を有する構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の請求項5に係る信号測定方法は、SISO方式の複数の測定機器を用いて、MIMO方式の測定装置を用いる場合に比べて安価にMIMO方式の被測定装置の受信特性を測定でき、被測定装置のアンテナ本数数が変更されてもSISO方式の測定機器の数を増減させることで当該被測定装置の測定に柔軟に対応できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、MIMO方式の被測定装置の測定を安価な構成により実現でき、アンテナ本数が変更された被測定装置の測定にも柔軟に対応可能な測定装置及び測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る測定装置及び測定方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る測定装置50は、被測定装置としてのDUT1と無線LANによる接続を行って該DUT1の測定を行うものである。本実施形態では、測定装置50は、例えば、無線LAN親機(AP:Access Point)として動作し、DUT1は無線LAN子機(STA:STAtion)として動作する。また、測定装置50は、IEEE802.11nや、IEEE802.11acなどに準拠する通信規格に基づいて、DUT1と通信するものとする。
【0021】
本実施形態において、測定装置50は、2つの測定機器51A及び51Bと、ルータ54と、統合制御装置55とを有している。測定機器51Aと測定機器51Bとは、ルータ54を介して例えばイーサネット(登録商標)等のネットワーク56により統合制御装置55と接続されている。
【0022】
統合制御装置55は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)によって構成される。統合制御装置55は、ルータ54を介してネットワーク56経由で測定機器51A、51Bと通信し、両者を統括的に制御するものである。具体的に、統合制御装置55は、測定機器51A及び51Bのいずれか一方をマスター(主測定機器)、他方をスレーブ(副測定機器)として設定する他、マスター側に対してDUT1の測定開始の指令を与える等の制御を行う。なお、
図1には、統合制御装置55によって、測定機器51Aが主測定機器(以下、主測定機器51Aということがある。)、測定機器51Bが副測定機器(以下、副測定機器51Bということがある。)として設定された例を示している。
【0023】
本実施形態において、測定装置50の測定対象となるDUT1は、MIMO方式の通信を行うものであり、アンテナ本数は例えば2本である。これに対して、測定装置50を構成する主測定機器51A、副測定機器51Bは、それぞれ、SISO方式の通信を行う構成を有している。
【0024】
すなわち、測定装置50は、2つのSISO方式の測定機器51A、51Bが、所定の変調方式(例えば、BPSK、QPSK等)で変調した互いに一系列の情報、つまり、単一ストリームの信号をそれぞれのアンテナから同時に並行して送信し、これをDUT1側で複数(この例では2本)のアンテナであたかもMIMO方式の情報であるかのように受信させ、該受信に応答したフレームをMIMO方式で測定装置50側に返送することでDUT1の測定を成立させるようになっている。
【0025】
また、測定機器51A、51Bが互いに単一ストリームの信号を同時に並行して送信可能にするため、これらのうちの主測定機器51Aが、当該主測定機器51Aと副測定機器51Bとの送受信動作タイミングを互いに同期させる制御を行うようになっている。このため、測定装置50において、統合制御装置55は、主測定機器51Aに対してDUT1の測定開始の指令を与えた後は、副測定機器51Bを制御する必要はない。この測定装置50の構成によれば、DUT1とMIMO方式による通信は行えないが、SISO方式の2系統の情報を並行して送受信しながら、MIMO方式のDUT1の測定を実現することができる。
【0026】
測定装置50において、主測定機器51Aは、制御部60A、送信データ生成部70A、フレーム生成部71A、送受信部72A、測定部75A、表示部76Aを備えている。主測定機器51Aは、例えば
図2に示すように、CPU31、ROM32、RAM33、各種インターフェースが接続される入力インターフェース(I/F)部34及び出力インターフェース(I/F)部35を備えたマイクロコンピュータを含む。主測定機器51Aは、ROM32に予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを主測定機器51Aの上述した各機能部として機能させるようになっている。
【0027】
主測定機器51Aにおいて、制御部60Aは、主測定機器51A全体の制御を行うとともに、副測定機器51Bを自測定機器に同期させるための制御を行う。制御部60Aは、以下、主制御部60Aと称するものとする。
【0028】
送信データ生成部70Aは、ユーザが設定した送信データを生成し、フレーム生成部71Aに出力するようになっている。
【0029】
フレーム生成部71Aは、送信データ生成部70Aからのデータを含めたフレームを生成(構成)し、送受信部72Aに出力するようになっている。フレーム生成部71Aは、上述した送信データ生成部70Aとともに本発明の信号処理部を構成する。
【0030】
送受信部72Aは、送信部73A及び受信部74Aを備え、例えば、IEEE802.11acに準拠する通信規格に基づいて、DUT1との間で無線接続を確立するようになっている。また、送受信部72Aは、無線接続の確立後に、DUT1に対して、測定に関する各種データを送受信するようになっている。
【0031】
送信部73Aは、図示を省略したが、符号化処理回路、変調回路、DAC(デジタルアナログコンバータ)、アップコンバータ、送信アンテナ等を備え、フレーム生成部71Aが生成したフレームに対してデジタル変調やアップコンバート等の処理を行い、アンテナを介してDUT1に送信するようになっている。
【0032】
受信部74Aは、図示を省略したが、受信アンテナ、ダウンコンバータ、ADC(アナログデジタルコンバータ)、復調回路、復号化処理回路等を備え、DUT1から受信したフレームから、例えば、後述のACK等を抽出して測定部75Aに出力するようになっている。
【0033】
同様に、副測定機器51Bは、制御部60B、送信データ生成部70B、フレーム生成部71B、送受信部72B、測定部75B、表示部76Bを備えている。制御部60Bは、主制御部60Aの制御下で副測定機器51B全体の制御を行う。以下、制御部60Bを、副制御部60Bと称するものとする。
【0034】
副測定機器51Bにおいて、送信データ生成部70B、フレーム生成部71B、送受信部72B、測定部75B、表示部76Bは、基本的には、主測定機器51Aにおけるそれぞれ同一な機能部、すなわち、送信データ生成部70A、フレーム生成部71A、送受信部72A、測定部75A、表示部76Aとそれぞれ同様の構成を有している。ここで、送信データ生成部70Aとフレーム生成部71Aとは本発明の信号処理部を構成する。
【0035】
副測定機器51Bも、主測定機器51Aと同様、例えば
図2に示すように、CPU31、ROM32、RAM33、各種インターフェースが接続される入力インターフェース(I/F)部34及び出力インターフェース(I/F)部35を備えたマイクロコンピュータを含む。副測定機器51Bにおいても、ROM32に予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを副測定機器51Bの上述した各機能部として機能させるようになっている。
【0036】
図1に示す測定装置50において、主測定機器51Aと副測定機器51Bとの違いは、前者が、マスターとなって主測定機器51Aの送信部73Aと副測定機器51Bの送信部73Bとの送信動作タイミングを同期させる制御を行い、かつ、主測定機器51Aの受信部74Aと副測定機器51Bの受信部74Bとの受信動作タイミングを同期させる制御を行う一方で、後者がスレーブとして前者による同期制御に従う点にある。
【0037】
上述したマスターとスレーブの関係を実現すべく、主制御部60Aは、主測定機器51A全体の制御を行う他、副制御部60Bに対して送信同期トリガ信号、受信同期トリガ信号を与える制御を行う。送信同期トリガ信号は、副制御部60Bが送信部73Bを送信部73Aと同期させて送信動作させるための制御信号であり、受信同期トリガ信号は、副制御部60Bが受信部74Bを受信部74Aと同期させて受信動作させるための制御信号である。
【0038】
ここで、SISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを用いてMIMO方式のDUT1の測定が行える理由について説明する。
【0039】
図3は、IEEE802.11nの通信規格に対応する送信部4の構成をブロック図で示したものである。
図3に示すように、送信部4は、データ処理機能部2とRF無線機能部3により構成され、測定装置50の測定対象となるDUT1にも採用されている。特に、
図3は、
DUT1への適用例を示したものである。
【0040】
IEEE802.11nの送信部4は、その動作については周知の通りであり、詳しい説明は割愛するが、概略以下のような処理を行う。
【0041】
まず、データ処理機能部2では、周波数変換器5を通して取込んだ送信データをエンコーダパーサ6で2系統に振り分けてそれぞれFECエンコーダ7a、7bによりエンコードする。その後、エンコードされた送信データをストリームパーサ8で4系統に振り分け、それぞれ、インターリーバ9aとコンステレーションマッパ10aの組、インターリーバ9bとコンステレーションマッパ10bの組、インターリーバ9cとコンステレーションマッパ10cの組、インターリーバ9dとコンステレーションマッパ10dの組によって処理を行う。
【0042】
処理後の4系統の送信データは、STBC回路11を通って空間マッピング回路13に入力し、それぞれ、空間マッピングの処理が行われる。その際、例えば3系統の送信データについては、それぞれ、CSD回路12b、CSD回路12c、CSD回路12dを経由した後に空間マッピング回路13による空間マッピング処理が行われる。
【0043】
空間マッピング回路13により空間マッピング処理された4系統の送信データは、RF無線機能部3に入力され、RF無線処理が行われる。RF無線処理では、空間マッピング処理後の4系統の送信データのうちの1系統の送信データが、IDFT回路14a、インサートGI(Insert GI and Window)回路15a、アナログRF(Analog And RF)回路16aを経由して無線送信される。他の3系統の送信データも、それぞれ、IDFT回路14bとインサートGI回路15bとアナログRF回路16bの組、IDFT回路14cとインサートGI回路15cとアナログRF回路16cの組、IDFT回路14dとインサートGI回路15dとアナログRF回路16dの組によって無線送信される。
【0044】
このように、IEEE802.11nの通信規格に適合するDUT1の送信部4(
図3参照)は、単一の送信データ列から複数系統の送信信号、すなわちMIMO送信信号を生成するようになっている。送信部4の構成において、空間マッピング回路13までを含むデータ処理機能部2の処理は各送信機に共通であり、IDFT回路14a、14b、14c、14d以降のRF無線機能部3については各送信機が独立して処理可能である。
【0045】
一方、
図4は、本実施形態の測定装置50における主測定機器51A及び副測定機器51Bの送信処理部80A及び80Bの構成を伝搬路モデルで表している。
図4に示すように、測定装置50における主測定機器51Aの送信処理部80Aは、データ処理部81AとRF無線部82Aとにより構成されている。データ処理部81Aは、データ生成部83A、ストリーム解析部84A、空間マッピング処理部85Aを有し、RF無線部82Aは、IDFTやIFFTの演算並びに送信処理を行う無線処理部86Aを有している。
【0046】
同様に、測定装置50における副測定機器51Bの送信処理部80Bは、データ処理部81BとRF無線部82Bとにより構成されている。データ処理部81Bは、データ生成部83B、ストリーム解析部84B、空間マッピング処理部85Bを有し、RF無線部82Bは無線処理部86Bを有している。
【0047】
図4における主測定機器51Aの送信処理部80Aの構成中、データ処理部81AとRF無線部82Aは、それぞれ、
図3におけるDUT1のデータ処理機能部2とRF無線機能部3に対応するものである。同様に、副測定機器51Bの送信処理部80Bの構成中、データ処理部81BとRF無線部82Bも、それぞれ、DUT1のデータ処理機能部2とRF無線機能部3に対応するものである。
【0048】
ここで、DUT1のデータ処理機能部2では、上述したように、単一の送信データ列から複数系統のMIMO送信信号を生成するようになっているのに対し、本実施形態に係る測定装置50では、主測定機器51Aの送信処理部80Aを構成するデータ処理部81A、及び副測定機器51Bの送信処理部80Bを構成するデータ処理部81Aでは、共に、単一ストリームの送信信号(SISO信号)を生成するようになっている。主測定機器51AのRF無線部82A、及び副測定機器51BのRF無線部82Aは、それぞれ対応するデータ処理部81A、及びデータ処理部81Bが生成した単一ストリームの送信信号を独立して送信するようになっている。
【0049】
ここまでの説明で言えることは、IEEE802.11nの送信部4(
図3参照)を採用するDUT1等にあっては、単一の送信データ列から複数の送信信号(MIMO送信信号)を生成するため、本来は複数の送信信号を独立して生成することができない。一方、SISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを備える本実施形態に係る測定装置50では、
図4に示す構成中、主測定機器51Aのデータ処理部81Aと副測定機器51Bのデータ処理部81Bとにおいて、本来は単一のデータを複数ストリームにして送信することが可能となる。
【0050】
具体的に、データ処理部81Aでは、データ生成部83Aで生成した送信データをストリーム解析部84Aがストリーム1処理若しくはストリーム2処理を行い、その後、空間マッピング処理部85Aが空間マッピング処理を行う一方で、データ処理部81Bでは、データ生成部83Bで生成したデータ生成部83Aで生成したものと同一の送信データを、ストリーム解析部84Bがストリーム1処理若しくはストリーム2処理を行い、その後、空間マッピング処理部85Bが空間マッピング処理を行う。
【0051】
このようなストリーム処理の場合、SISO方式の主測定機器51Aの送信処理部80Aと、副測定機器51Bの送信処理部80Bとによって同一データから複数ストリームを生成する必要があるが、送信処理部80A、80BにおけるRF無線部82A、82B以降、すなわち、OFDM変調のIFFT処理以降は対応するアンテナ分だけ実施することで対応できる。
【0052】
上述した複数ストリームの生成処理の例としては、例えば、
図4に示す構成において、送信処理部80A及び80Bに対して既知の送信データ列を入力する。この送信データの例としては、例えば、周知の擬似ランダム信号等を用いた測定用データが挙げられる。このとき、SISO方式の送信機、すなわち、主測定機器51Aの送信処理部80Aと、副測定機器51Bの送信処理部80Bとが同期して上記送信データに対して同一のベースバンド処理を実施し、最終段の無線処理部86A、86Bで出力したい信号を取り出すことにより、MIMO送信機のように振る舞うことができる。
【0053】
一般的なMIMO方式の通信機では送信データ列が既知ということはあり得ない。しかしながら、本実施形態では、あえてSISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを採用することで、既知のデータから複数ストリームを生成可能にしている。より具体的に、本実施形態では、主測定機器51A及び副測定機器51Bで、共に、DUT1の感度測定用の固定データパターンのフレームを送信する一方で、DUT1をそのフレームに対してMIMO信号でフレームを返すよう振る舞わせるようにしている。
【0054】
SISO方式の主測定機器51A、副測定機器51BがMIMO送信機のように振る舞うことができれば、その振る舞い、すなわち主測定機器51A及び副測定機器51Bからのそれぞれ単一ストリームでの送信に対して、測定対象であるDUT1をMIMO方式のフレームを応答送出させるよう誘導することが可能になる。そして、DUT1からの上記フレームを受信することができれば、当該フレームに基づいてDUT1の測定を行うことが可能となる。
【0055】
本実施形態に係る測定装置50に適用する主測定機器51A、副測定機器51Bとしては、例えば、アンリツ株式会社製の無線LAN用測定器であるMT8862A等の製品が想定される。
【0056】
本実施形態に係る測定装置50の構成によれば、主測定機器51A及び副測定機器51B共に単一の送信データから複数の送信信号を生成する機能を有しないため、本来の無線LANのMIMO通信は行えないものの、以下に詳しく述べるDUT1の感度測定などの限定された用途のための通信であれば問題なく対応可能である。
【0057】
なお、
図4に示す主測定機器51Aの構成中、データ生成部82A、ストリーム解析部84A、空間マッピング処理部85Aは、
図1における主測定機器51Aの送信データ生成部70A及びフレーム生成部71Aの機能部分に相当し、無線処理部86Aは送信部73Aに相当する。同様に、副測定機器51Bの構成中、データ生成部82B、ストリーム解析部84B、空間マッピング処理部85Bは、
図1における主測定機器51Bの送信データ生成部70B及びフレーム生成部71Bの機能部分に相当し、無線処理部86Bは送信部73Bに相当する。したがって、
図1における主測定機器51A及び副測定機器51Bの送信に関する機能構成と、
図4における主測定機器51A及び副測定機器51Bの伝搬路モデルとの間の構成上の矛盾はない。
【0058】
次に、主制御部60Aと副制御部60Bの構成について
図5を参照して説明する。
図5に示すように、主制御部60Aは、接続制御部61A、受信制御部62A、測定制御部63Aを有している。
【0059】
接続制御部61Aは、自測定機器である主測定機器51Aと副測定機器51Bのそれぞれの送信部73A、73Bの送信動作タイミングを同期させつつ当該各送信部73A、73Bからそれぞれの系統に対応する単一ストリームの信号を送信させることにより各測定機器51A、51BとDUT1とを無線LANにより接続する接続制御を行う。
【0060】
受信制御部62Aは、無線LANの接続中、DUT1からMIMO方式で送信される複数ストリームの信号を、主測定機器51Aと副測定機器51Bのそれぞれの受信部74A、74Bの受信動作タイミングを同期させつつ当該各受信部74A、74Bによりそれぞれ受信させる受信制御を行う。
【0061】
測定制御部63Aは、無線LANの接続中に各送信部73A、73Bから測定用データを含む測定用フレームをそれぞれ送信させるとともに、測定用フレームに対してDUT1から通知(応答送出)される上記測定用データを受信したことを示す受信確認信号(後述のACKに相当)に基づいてDUT1の受信特性を測定する制御を行う。
【0062】
上述したDUT1の受信特性の測定を可能とすべく、主測定機器51Aにおける測定制御部63Aは、
図5に示すように、データ送信制御部64A、判定部65A、エラー率算出部66Aを有して構成される。
【0063】
データ送信制御部64Aは、DUT1の受信特性の測定を行うのに用いる測定用データを含む測定用フレームを送信データ生成部70A、フレーム生成部71Aにて生成させ、送信部73Aによって、DUT1に送信させる制御を行う。その際、測定用フレームは、接続制御部61Aの上述した同期制御により、副測定機器51Bの送信データ生成部70B、フレーム生成部71Bでも生成され、送信部73Bによって、DUT1に送信される。つまり、データ送信制御部64Aは、副測定機器51Bの測定制御部63Bのデータ送信制御部64Bと協働(同期)して、各々1ストリーム分の測定用フレームを並行してDUT1に送信させるように制御する。データ送信制御部64A、64Bは、本発明の送信制御部に相当する。
【0064】
また、データ送信制御部64Aは、予め設定された回数、例えば、500回に達するまで上記測定用フレームを繰り返し送信するように制御する。ここでデータ送信制御部64Aは、上記測定用フレームの送信を送信部73Aの送信レベルを順次変更しながら行うようにしてもよい。具体的に、データ送信制御部64Aは、送信部73Aの送信レベルを段階的に変更しながら上述した所定の回数単位で測定用フレームを繰り返し実行する構成とすることができる。これらの構成については、データ送信制御部64Bにおいても同様である。
【0065】
判定部65Aは、データ送信制御部64Aが測定用フレームを送信するごとに受信確認信号を受信したか否かを判定する処理を行う。これを実現するために、DUT1は、測定装置50から送られてくる測定用フレームを受信し、その中に含まれる測定用データを受信できた場合にはその旨を示す受信確認信号としてACKを測定装置50に対して応答送出する構成となっている。このため、判定部65Aは、測定用フレームを送信するごとにDUT1からACKが送られてきたか否かを判定する。
【0066】
エラー率算出部66Aは、データ送信制御部64Aでの測定用フレームの送信回数が上述した所定の回数に達するまでの間にACKが受信されたと判定された回数の割合を求め、この割合を測定用フレームのエラー率として算出する。エラー率算出部66Aは、上記エラー率として、例えば、パケットエラーレート(PER)を算出する構成とすることができる。
【0067】
主制御部60Aは、表示制御部67Aをさらに有している。表示制御部67Aは、エラー率算出部66Aが算出したエラー率を、測定用フレームの送信時の送信部73Aの送信レベルと関連付けて表示部76Aに表示する表示制御を行う。表示制御部67Aは、送信部73Aの送信レベルを段階的に変更しながら所定の回数単位で測定用フレームを繰り返し実行するデータ送信制御部64Aの構成に対応して、例えば、測定用フレームのエラー率が所定の回数単位で算出されるごとに、当該エラー率とそのときの測定用フレームの送信レベルとを対応付けて表示部76Aに表示する(
図9参照)構成としてもよい。
【0068】
上記のように構成される主制御部60Aに対し、副制御部60Bは、主制御部60Aにおける接続制御部61A、受信制御部62A、測定制御部63Aとそれぞれ同等の機能を有する接続制御部61B、受信制御部62B、測定制御部63Bを有している。ここで、接続制御部61A、61Bは本発明の接続制御手段に相当する。また、受信制御部62A、62Bは本発明の受信制御手段に相当し、測定制御部63A、63Bは本発明の測定制御手段に相当する。
【0069】
また、副制御部60Bにおける測定制御部63Bは、主制御部60Aにおける測定制御部63Aのデータ送信制御部64A、判定部65A、エラー率算出部66Aとそれぞれ同等のデータ送信制御部64B、判定部65B、エラー率算出部66Bを有している。さらに、副制御部60Bには、主制御部60Aの表示制御部67Aと同等の表示制御部67Bが設けられている。主測定機器51A、副測定機器51Bは、主制御部60A及び副制御部60Bの構成についても、例えばROM32に予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータ(
図2参照)を主制御部60A及び副制御部60Bの上記各機能部として機能させるようになっている。
【0070】
次に、本実施形態に係る測定装置50の動作について
図6〜
図8を参照して説明する。
【0071】
図6は、本実施形態に係る測定装置50におけるDUT1の受信特性測定処理を示すフローチャートである。この受信特性測定処理については、主測定機器51A及び副測定機器51Bにおいて、データ送信制御部64A及び64Bが、それぞれ、送信部73A及び73Bの送信レベルを所定の送信レベルとしたうえで測定用フレームを所定の回数(例えば、500回)に達するまで送信し、判定部65Aが、測定用フレームを送信するごとにDUT1からACKを受信したか否かを判定し、エラー率算出部66Aが、測定用フレームの送信回数が所定の回数に達するまでの間にACKが受信されたと判定された回数の割合を測定用フレームのエラー率(BER)として算出する例について述べる。
【0072】
なお、この例では、500回の測定用フレームの判定期間における送信部73A、73Bの送信レベルは所定の一定のレベルであるものとする。この他、本実施形態では、500回単位の測定用フレームの判定期間を複数回設け、しかも、単位ごとに送信部73A、73Bの送信レベルを段階的に挙げていきつつエラー率を算出するようにしてもよい。
【0073】
図6に示すDUT1の受信特性測定処理においては、まず、マスター(主測定機器)及びスレーブ(副測定機器)を設定する処理を行う(ステップS11)。この処理において、統合制御装置55は、例えば測定機器51Aにネットワーク56を介してマスターとする旨の指令を送出する。一方、測定機器51Aは、上記指令に基づいて自測定機器をマスター(主測定機器)として設定する処理を行う。以後、主測定機器51Aは、自測定機器をマスター、副測定機器51Bをスレーブとして認識こととなる。
【0074】
次に、統合制御装置55は、主測定機器51Aに対して測定開始指令を送出する(ステップS12)。
【0075】
主測定機器51Aは、上記測定開始指令を受信することにより、当該主測定機器51Aと、スレーブである副測定機器51Bの送受信タイミングを同期させる制御を行う(ステップS13)。この制御においては、例えば、主測定機器51Aの主制御部60Aが、送受信部72Aを駆動制御してDUT1の受信特性の測定を開始するタイミングに合わせて副測定機器51Bの副制御部60Bに対して同期トリガ信号を送信する。一方、副制御部60Bでは、上記同期トリガ信号を受信すると、送受信部72Bの送受信タイミングを主測定機器51Aの送受信部72Aの送受信タイミングに同期させるように制御する。
【0076】
なお、ステップS13では、DUT1の受信特性の測定を開始するタイミングに合わせて副測定機器51Bに対して1回だけ同期トリガ信号を送信することにより、主測定機器51Aと副測定機器51Bとの送受信動作を同期させる例を挙げたが、これに限らず、例えば、
図7に示すように、DUT1の測定中、必要に応じて送信同期トリガ信号、若しくは、受信同期トリガ信号を逐次送信して両者の同期を図るようにしてもよい。
【0077】
図7に示す例では、主測定機器51Aは、例えば、主制御部60A(特に、接続制御部61A)によって、DUT1の受信特性の測定処理中の何等かの送信処理である送信イベントがあるか否かを判定する(ステップS31)。ここで、送信イベントがあると判定された場合(ステップS31でYES)、主制御部60Aは、副測定機器51Bに対して送信同期トリガ信号を送出する(ステップS32)。これにより、副測定機器51Bは、上記送信同期トリガ信号に基づき、例えば、接続制御部61Aが、送受信部72Bにおける送信部73Bの送信動作を主測定機器51Aの送受信部72Aにおける送信部73Aの送信動作と同期させるように制御することとなる。
【0078】
また、送信イベントがないと判定された場合(ステップS31でNO)、主制御部60A(特に、受信制御部62A)は、次いで、測定処理中の何等かの受信処理である受信イベントがあるか否かを判定する(ステップS33)。ここで、受信イベントがあると判定された場合(ステップS33でYES)、主制御部60Aは、副測定機器51Bに対して受信同期トリガ信号を送出する。これにより、副測定機器51Bは、上記受信同期トリガ信号に基づき、例えば、受信制御部62Bが、送受信部72Bにおける受信部74Bの受信動作を主測定機器51Aの送受信部72Aにおける受信部74Aの送信動作と同期させるように制御することとなる。
【0079】
受信イベントがないと判定された場合(ステップS33でNO)、並びに上記ステップS32で送信同時トリガ信号を送信した場合、主制御部60AはステップS31以降の処理を繰り返し実行する。このように、DUT1の測定中、主測定機器51Aから副測定機器51Bに、その都度、送信同期トリガ信号、受信同期トリガ信号を送出することで、主測定機器51Aと副測定機器51Bとの送受信動作の同期を図ることもできる。
【0080】
再び、
図6に戻って受信特性測定処理について説明する。上記ステップS13において、主測定機器51Aと副測定機器51Bの送受信タイミングを同期させる制御を行いつつ、主制御部60Aでは、主測定機器51A及び副測定機器51BをDUT1に対してMIMO方式の無線接続状態とする無線接続処理を行う(ステップS14)。この無線接続処理において、接続制御部61Aは、主測定機器51Aと副測定機器51Bのそれぞれの送信部73A、73Bの送信動作タイミングを同期させつつ当該送信部73A、73Bからそれぞれの系統に対応する単一ストリームの信号を送信させることにより各測定機器51A、51BとDUT1とを無線LANにより接続するよう制御する。
【0081】
ステップS14での無線接続処理の後、データ送信制御部64Aは、送信部73Aを制御し、DUT1の受信特性の測定を行うのに用いる測定用データを含む測定用フレームを送信部73AによってDUT1に送信させる制御を行う。これと同期し、副制御機器51Bのデータ送信制御部64Bにおいて、上記測定用フレームを送信部73BによってDUT1に送信させる制御を行う(ステップS15)。
【0082】
次いで、判定部65Aは、ステップS15で送信した測定用フレームに対するDUT1からの応答状況を判定する処理を行う(ステップS16)。具体的に、判定部65Aは、ステップS16で測定用フレームが送出されるごとに当該測定用フレームに対してDUT1からACKが送信されてきたか否か、つまり、ACKが受信されたか否かを判定し、その判定結果を例えばRAM33等に保持(記憶)させておく(ステップS17)。
【0083】
引き続き、データ送信制御部64Aは、測定用フレームの送信回数が予め設定した所定の回数に達したか否かを判定する(ステップS18)。
【0084】
ここで、所定の回数に達していないと判定された場合(ステップS18でNO)、測定制御部63AはステップS15以降の処理を繰り返し実行する。具体的に、データ送信制御部64Aは、データ送信制御部64Bと協働して次の回の測定用フレームを送出する制御を行い(ステップS15)、その後、判定部65Aは測定用フレームに対するDUT1からの応答状況を判定し(ステップS16)、その判定結果を保持させる(ステップS17)。
【0085】
この間、データ送信制御部64Aによって、測定用フレームの送信回数が所定の回数に達したと判定されると(ステップS18でYES)、エラー率算出部66Aは、ステップS17で保持しておいた判定結果に基づいてエラー率を算出する処理を行う(ステップS19)。
【0086】
さらに表示制御部67Aは、ステップS19で算出されたエラー率を表示部76Aに表示させるように制御する(ステップS20)。具体的に、表示制御部67Aは、上述した所定の回数の測定用フレームの判定期間における送信部73A、73Bの送信レベルと算出したエラー率とを関連づけて表示部76Aに表示させ。ステップS20での表示制御が終了することにより上記一連の受信特性測定処理が終了する。
【0087】
次に、
図6の受信特性測定処理におけるステップS15〜S18の処理について
図8を参照してさらに詳しく説明する。
【0088】
図8は、所定の回数を例えば500回に設定し、主測定機器51A及び副測定機器51Bから測定用フレームを500回連続に送信し、当該各測定用フレームに対するDUT1からの応答状況を判定することを想定した場合における主測定機器51A及び副測定機器51BとDUT1間の制御シーケンスを示している。この制御シーケンスにおいて、主測定機器51A及び副測定機器51Bでは、測定用データ(
図8に示す「Data」)を含む測定用フレームを送信した場合に、DUT1からACK(受信確認信号)が受信されるケースと受信されないケースが混在する。
【0089】
この制御シーケンスの実施中、測定装置50では、エラー率算出部66Aは、測定用フレームの送信回数例えば500回に対するACKが受信されたと判定された回数の割合をエラー率として算出する。これにより、エラー率算出部66Aは、例えば、500回中、450回ACKが受信されたとの判定結果が得られた場合には10パーセントというエラー率を算出し、500回中、400回ACKが受信されたとの判定結果が得られた場合には20パーセントというエラー率を算出する。
【0090】
図9は、DUT1の受信特性の測定結果の表示例を示す図である。
図9は、特に、500回単位の測定用フレームの判定タイミング(図中、黒丸で示している。)を複数設け、各判定タイミングごとに送信部73A、73Bの送信レベルを段階的に挙げていきつつエラー率算出部66Aが各々算出したエラー率に基づく測定結果の表示例を示している。
【0091】
図6におけるS20の処理において、表示制御部67Aは、上述した全ての判定タイミングを含む期間を通したDUT1の受信特性を、
図9に示すように、縦軸をエラー率(PER)、横軸を送信部73A、73Bの送信レベルとする特性として表示部76Aに表示させる。これにより、測定者は、
図9に示す受信特性を見ながら、DUT1がどの程度の送信レベルの低下まで既定のエラー率未満で作動し得る受信特性を有するものであるかを容易に評価することができる。
【0092】
本実施形態の上述した例においては、測定機器51Aをマスター(主測定機器)、測定機器51Bをスレーブ(副測定機器)として設定する運用例(
図1、
図5参照)について述べたが、本発明においては、マスターとスレーブを入れ替えるように設定してもよい。この入れ替えを実現するためには、測定機器51Aの制御部60Aと測定機器51Bの制御部60Bとが同一の構造を有する(
図5参照)必要がある。なお、例えば、
図1に示すように、測定機器51Bをスレーブ専用として用いる場合には、測定制御部63Bの構成については、表示制御部67Bや他の不用な機能ブロックを削る等、マスター側の測定機器51Aの測定制御部63Aよりも簡略化された構成としてもよい。
【0093】
また、本実施形態の上述した例では、測定装置50を、SISO方式の2つの測定機器51A、51Bで構成する例を挙げたが、本発明はこれに限らず、2つより多い複数の測定機器を用いた構成としてもよい。この構成とした場合には、例えば、アンテナ本数がより多いDUT1の測定に際しても、DUT1のアンテナ本数に合わせた台数の測定機器を用意し、上述したマスター・スレーブ方式での送受信動作タイミングの同期を図ることで、よりフレキシブルな対応が可能となる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態では、測定装置50は、SISO方式の複数の測定機器51A、51Bを有し、各測定機器51A、51Bが、MIMO方式による通信を行なうDUT1との間でそれぞれ単一ストリームの信号を並行して送受信することによりDUT1の測定を行うものである。
【0095】
測定機器51Aは、単一ストリームの信号を処理する信号処理部である送信データ生成部70Aとフレーム生成部71A、単一ストリームの信号の送信部73A及び受信部74Aを有する送受信部72Aを有する一方、測定機器51Bは、単一ストリームの信号を処理する信号処理部である送信データ生成部70Bとフレーム生成部71B、単一ストリームの信号の送信部73B及び受信部74Bを有する送受信部72Bを有する。測定機器51A、51Bのうちの一方、例えば、測定機器51Aが主測定機器として設定され、他方の測定機器51Bが副測定機器として設定される。
【0096】
測定装置50において、主測定機器51Aは、当該主測定機器51Aと副測定機器51Bのそれぞれの送信部73A、73Bの送信動作タイミングを同期させつつ当該各送信部73A、73Bからそれぞれ単一ストリームの信号を送信させることにより当該主測定機器51A及び副測定機器51BとDUT1とを無線LANにより接続する接続制御部61Aと、無線LANの接続中、DUT1から送信される複数ストリームの信号を、主測定機器51Aと副測定機器51Bのそれぞれの受信部74A、74Bの受信動作タイミングを同期させつつ当該各受信部74A、74Bによりそれぞれ受信させる受信制御部62Aと、無線LANの接続中に各送信部73A、73Bから送信した測定用データを含む測定用フレームに対するDUT1からの測定用データを受信したことを示すACKに基づいてDUT1の受信特性を測定する測定制御部63Aと、をさらに有している。
【0097】
この構成により、本実施形態に係る測定装置50は、SISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを用いて、MIMO方式の測定装置を用いる場合に比べて安価にMIMO方式のDUT1の受信特性を測定できる。また、本実施形態に係る測定装置50では、DUT1のアンテナ本数が変更されてもSISO方式の測定機器の数を増減させることでDUT1の測定に柔軟に対応できる。
【0098】
また、本実施形態に係る測定装置50において、測定制御部63Aは、予め設定された所定の回数例えば500回に達するまで測定用フレームを送信するデータ送信制御部64Aと、測定用フレームを送信するごとにACKを受信したか否かを判定する判定部65Aと、測定用フレームの送信回数が500回に達するまでの間にACKが受信されたと判定された回数の割合に基づいて測定用フレームのエラー率(例えば、PER)を算出するエラー率算出部66Aと、エラー率を測定用フレームの送信時の送信部73A、73Bの送信レベルと関連付けて表示部76Aに表示する表示制御部67Aと、を有している。
【0099】
この構成により、本実施形態に係る測定装置50は、測定用データを含む測定用フレームを所定の回数送信し、そのうちの測定用データがDUT1で受信されたことを示すACKを受信した回数の割合を例えばBERとして算出することができ、当該BERに基づいてDUT1の受信特性を評価することができる、これにより、本実施形態に係る測定装置50は、SISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを用いてDUT1の受信特性を安価に測定することができる。
【0100】
本実施形態に係る測定装置50は、データ送信制御部64Aが、送信部73A、73Bの送信レベルを段階的に変更しながら所定の回数例えば500回単位で測定用フレームの送信を繰り返し実行し、表示制御部67Aが、上述したBERと測定用フレームの送信レベルとを対応付けて表示部76Aに表示するようになっている。
【0101】
この構成により、本実施形態に係る測定装置50は、DUT1での測定用フレームの受信に関するエラー率(BER)を、送信部73A、73Bの送信レベルと関連づけて目視確認することができる。したがって、本実施形態では、SISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを用いてDUT1の受信特性を安価に測定でき、しかも、測定結果の確認が容易になる。
【0102】
本実施形態に係る測定装置50は、送信部73A、73Bは、測定用フレームとして、IEEE802.11規格に準拠したフレームを送信するようになっている。
【0103】
この構成により、本実施形態に係る測定装置50は、IEEE802.11規格に準拠した測定用フレームで送信するデータのDUT1での受信状況をSISO方式の主測定機器51A及び副測定機器51Bを用いて安価に測定することができる。