特許第6672559号(P6672559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672559
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】気象データ図作成システム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   G01W1/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-20532(P2016-20532)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-138252(P2017-138252A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年11月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本地図学会による平成27年度定期大会における地図展示公益社団法人日本測量協会発行の「測量2015年8月号」に掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】本間 信一
【審査官】 多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−054006(JP,A)
【文献】 特開2007−048185(JP,A)
【文献】 特開2008−170415(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/075067(WO,A1)
【文献】 特開2014−202609(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0057580(US,A1)
【文献】 特開2011−133952(JP,A)
【文献】 特開2013−221836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00 − 1/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域における気象データの分布を表す気象データ図を作成するシステムにおいて、
前記所定領域を平面分割して得られる多数の単位区画によって構成されるメッシュデータを記憶するメッシュデータ記憶手段と、
前記単位区画ごとに付与された2種類の前記気象データを読み出す気象データ読み出し手段と、
前記2種類の前記気象データのうち第1の種類の前記気象データに応じた色情報を、当該単位区画に割り当てて段彩図を作成する段彩図作成手段と、
前記2種類の前記気象データのうち第2の種類の前記気象データに応じたグレースケール値を、当該単位区画に割り当てて濃淡図を作成する濃淡図作成手段と、
前記段彩図と前記濃淡図を合成して、気象データ図を作成する合成図作成手段と、
を備えたことを特徴とする、気象データ図作成システム。
【請求項2】
周辺の前記単位区画の前記気象データに基づいて、当該単位区画の気象データ傾斜度を算出する気象データ傾斜度算出手段を、さらに備え、
前記気象データ傾斜度算出手段は、第2の種類の前記気象データに基づいて当該単位区画の前記気象データ傾斜度を算出し、
前記濃淡図作成手段は、前記気象データ傾斜度に応じたグレースケール値を、当該単位区画に割り当てて濃淡図を作成する、
ことを特徴とする請求項1記載の気象データ図作成システム。
【請求項3】
前記第1の種類の前記気象データが気温であって、前記第2の種類の前記気象データが気圧であり、
前記段彩図作成手段は、気温に応じた色情報を、当該単位区画に割り当てて前記段彩図を作成し、
前記濃淡図作成手段は、気圧に応じたグレースケール値を、当該単位区画に割り当てて前記濃淡図を作成する、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の気象データ図作成システム。
【請求項4】
前記合成図作成手段は、前記段彩図の不透明度と、前記濃淡図の不透明度と、を異なる不透明度とするとともに、前記濃淡図の不透明度に比して前記段彩図の不透明度を小さい値として、気象データ図を作成する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象データ図作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、気象データ(気圧、気温、気圧面高度、降水量、風向、風速、湿度、雲量、日照時間、及び積雪深など)の分布状況を表す図(以下、「気象データ図」という。)を作成する技術に関するものであり、より具体的には気象データに応じて作成した段彩図と濃淡図を合成することで、気象状況の理解が容易な気象データ図を作成するシステムと方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に天気図は、気圧のデータを等圧線として図示した気圧配置図である。この気圧配置図によって、台風を含む低気圧や、高気圧、各種前線を把握し、今後の天気が予想さる。
【0003】
特許文献1でも、台風や前線の配置を手がかりとして類型の天気図型を選定する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−107189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、等圧線や等温線など、気象データに基づく等値線を描いただけで表される図では、気象の状況を把握することは容易ではない。例えば、空気の流れを理解するためには、中心気圧や等圧線の間隔、あるいは等圧線の方向などを総合的に理解する必要があり、ある程度専門的な知識を必要とする。
【0006】
本願発明の課題は、従来が抱える問題を解決することであり、すなわち誰でも直感的に気象状況を把握できる図を作成する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、気象データに基づいて段彩図と濃淡図を作成し、これら段彩図と濃淡図を合成することで、気象状況を直感的に把握できる気象データ図を作成する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0008】
本願発明の気象データ図作成システムは、所定領域における気象データ(気圧、気温、気圧面高度、降水量、風向、風速、雲量、湿度、日照時間、及び積雪深を含むデータのいずれか)の分布を表す気象データ図を作成するシステムであり、メッシュデータ記憶手段と、気象データ読み出し手段、段彩図作成手段、気象データ傾斜度算出手段、濃淡図作成手段、合成図作成手段を備えたものである。このうちメッシュデータ記憶手段は、多数の単位区画(所定領域を平面分割して得られる小領域)よって構成されるメッシュデータを記憶し、気象データ読み出し手段は、単位区画ごとに付与された気象データを読み出す。段彩図作成手段は、気象データに応じた色情報を単位区画に割り当てて段彩図を作成し、気象データ傾斜度算出手段は、周辺の単位区画の気象データに基づいてその単位区画の気象データ傾斜度を算出し、濃淡図作成手段は、気象データ傾斜度に応じたグレースケール値を単位区画に割り当てて濃淡図を作成する。そして合成図作成手段は、段彩図と濃淡図を合成して気象データ図を作成する。
【0009】
本願発明の気象データ図作成システムは、段彩図作成に用いる気象データと、濃淡図作成に用いる気象データが、相異なるものとすることもできる。この場合、気象データ読み出し手段は、単位区画ごとに付与された2種類の気象データ(第1の気象データと、第2の気象データ)を読み出す。そして段彩図作成手段は、2種類の気象データのうち第1の気象データに応じた色情報を単位区画に割り当てて段彩図を作成し、濃淡図作成手段は、2種類の気象データのうち第2の気象データに応じたグレースケール値を単位区画に割り当てて濃淡図を作成する。
【0010】
本願発明の気象データ図作成システムは、2種類の気象データを利用し、かつ気象データ傾斜度算出手段を備えたものとすることもできる。この場合、気象データ傾斜度算出手段は、第2の気象データに基づいて当該単位区画の前記気象データ傾斜度を算出し、濃淡図作成手段は、気象データ傾斜度に応じたグレースケール値を単位区画に割り当てて濃淡図を作成する。
【0011】
本願発明の気象データ図作成システムは、気温と気圧によって気象データ図を作成するシステムとすることもできる。この場合、段彩図作成手段は、気温に応じた色情報を単位区画に割り当てて段彩図を作成し、濃淡図作成手段は、気圧に応じたグレースケール値を単位区画に割り当てて濃淡図を作成する。
【0012】
本願発明の気象データ図作成システムは、段彩図と濃淡図の不透明度が異なるものとして気象データ図を作成するシステムとすることもできる。この場合、合成図作成手段は、段彩図の不透明度と濃淡図の不透明度を異なる不透明度とするとともに、濃淡図の不透明度に比して段彩図の不透明度を小さい値として気象データ図を作成する。
【0013】
本願発明の気象データ図作成方法は、所定領域における気象データの分布を表す気象データ図を作成する方法であり、段彩図作成工程と、気象データ傾斜度算出工程、濃淡図作成工程、合成図作成工程を備えた方法である。なお、多数の単位区画によってメッシュデータが構成され、単位区画ごとに気象データが付与されている。段彩図作成工程では、気象データに応じた色情報を単位区画に割り当てて段彩図を作成し、気象データ傾斜度算出工程では、周辺の単位区画の気象データに基づいて単位区画の気象データ傾斜度を算出し、濃淡図作成工程では、気象データ傾斜度に応じたグレースケール値を単位区画に割り当てて濃淡図を作成する。そして合成図作成工程では、段彩図と濃淡図を合成して気象データ図を作成する。
【0014】
本願発明の気象データ図作成システムは、相異なる2種類の気象データ(第1の気象データと、第2の気象データ)によって気象データ図を作成する方法とすることもできる。この場合のメッシュデータは、単位区画ごとに2種類の気象データが付与されている。そして段彩図作成工程では、2種類の気象データのう第1の気象データに応じた色情報を単位区画に割り当てて段彩図を作成し、濃淡図作成工程では、2種類の気象データのうち第2の気象データに応じたグレースケール値を単位区画に割り当てて濃淡図を作成する。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法には、次のような効果がある。
(1)気圧をはじめ気象データの直感的な理解を助けることができ、その結果、専門的な知識がない者でも、風の流れや、発達した台風の規模を一目で捉えることが可能となる。
(2)従来の等圧線図とともに提示することで、気象に関する教育や災害教育の現場において有効活用することができる。
(3)気象状況が極めて把握しやすいことから、従来にもまして異常気象に対する防衛意識が向上し、災害事故を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】メッシュデータと単位区画を説明するモデル図。
図2】気象データ傾斜度について説明するモデル図。
図3】第1の実施形態における本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法の主な処理(工程)の流れを示すフロー図。
図4】第1の実施形態における本願発明の気象データ図作成システムの主な構成を示すブロック図。
図5】第2の実施形態における本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法の主な処理(工程)の流れを示すフロー図。
図6】第2の実施形態における本願発明の気象データ図作成システムの主な構成を示すブロック図。
図7】日本国土を縦断する台風の遷移状況を、本願発明によって表現した気象データ図。
図8】日本国土周辺における温帯低気圧の発達状況を、本願発明によって表現した気象データ図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法の実施形態の一例を、図を参照しながら説明する。
【0018】
1.定義
はじめに、説明に用いる用語について定義する。
【0019】
(メッシュデータと単位区画)
図1は、メッシュデータと単位区画を説明するモデル図である。この図に示すように、メッシュデータMSは所定領域AR(例えば、日本全国や都道府県など)を平面分割した網目状のものであり、単位区画BLは平面分割された結果得られる小領域のことである。言い換えれば、メッシュデータMSは多数の単位区画BLによって構成される。例えば、図1左側の破線領域は、24個の単位区画BLで構成されていることが分かる。なお、この図にも示すように、それぞれの単位区画BLには識別番号(図ではBL323〜BL824)が付与されることが多い。またメッシュデータMSは、平面座標(あるいは緯度経度)が付与されており、通常は単位区画BLの格子点に平面座標等が付与されている。
【0020】
このようなメッシュデータMSとして代表的なのが、DEM(Digital Elevation Model)やDSM(Digital Surface Model)である。地表モデルとも言われるDEMは、メッシュデータMSを構成する個々の単位区画BLに地盤高が付与され、一方表層モデルとも言われるDSMは、メッシュデータMSを構成する個々の単位区画BLに被覆物等の高さが付与される。なお図1では所定領域ARが略正方格子状に区切られ、単位区画BLの形状も略正方形となっているが、これに限らず、単位区画BLの形状を長方形やひし形、あるいは長円形など任意の形状とすることが可能で、さらにそれぞれの単位区画BLの形状や大きさを変えることもできる。
【0021】
(色情報と段彩図)
本来、色は人の視覚で認識するものであり、個人差が伴うものである。近年、この色をコンピュータ(電式計算機)で扱うべくモデル化するようになった。色をモデル化する手法にも種々あり、赤(Red)・緑(Green)・青(Brue)の3色を基本色とするRGB、シアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)・ブラック(Key color)の4色を基本色とするCMYK、黄・赤・青・緑・黒・白の6色を基本色とするNCSやオストワルト表色系などが知られている。また色は、色相、彩度、明度からなる3つの属性を備えており、例えばRGBでは赤・緑・青の3原色を混ぜ合わせて(加法混色)種々の色相、彩度、明度を表現する。
【0022】
ここでいう色情報とは、RGBや、CMYK、NCS、オストワルト表色系といった色のモデル化によって規定される、「色を特定するための値」を指す。例えばRGBを採用した場合、純色の赤の色情報は(255、0、0)であり、純色の緑の色情報は(0、255、0)、純色の青の色情報は(0、0、255)となる。
【0023】
画素単位にそれぞれ色情報を付与して作成されるのが段彩図である。種々の色で表現されることからカラー段彩図と呼ばれることもある。例えば、図1に示すメッシュデータMSを構成する単位区画BLを1画素とし、これらの画素にそれぞれ個別の色情報を付与すれば、所定領域ARを対象とする段彩図が作成される。
【0024】
(グレースケール値と濃淡図)
グレースケールとは白から黒まで複数の段階に分けるモデルであり、これによって規定される「濃淡の程度を特定する値」がグレースケール値である。例えば、白から黒まで256段階に分けたとすると、白を255というグレースケール値で表し、黒を0というグレースケール値で表すことができる。そして、画素単位にそれぞれグレースケール値を付与して作成されるのが濃淡図である。グレースケールによって表現されることからグレースケール図と呼ばれることもある。例えば、図1に示すメッシュデータMSを構成する単位区画BLを1画素とし、これらの画素にそれぞれ個別のグレースケール値を付与すれば、所定領域ARを対象とする濃淡図が作成される。
【0025】
(画像合成と不透明度)
色情報を備えた2つの画像を重ね合わせて1つの画像とする(以下、「画像合成」という。)場合、両者を透過することなく画像合成するケースと、一方もしくは両方を透過したうえで画像合成するケースがある。透過しない例としては、2つの画像のうち対応する2つの画素が持つそれぞれの色情報をそのまま掛け合わせて所定値で除した値を、合成画像の色情報とする乗算合成が挙げられる。一方、透過する例としては、2つの画像のうち対応する2つの画素が持つそれぞれの色情報に不透明度(透過係数ともいう)を乗じたうえで加算し、その値を合成画像の色情報とする加算合成や、そのほか半透明合成、スクリーン合成、(不透明度を乗じた)乗算合成などが知られている。なお、一方の画像の色情報にのみ不透明度を乗じ、一方の画像の色情報には不透明度を乗じない(あるいは不透明度1.0を乗じた)うえで、画像合成することもできる。
【0026】
(気象データと気象データ傾斜度)
ここでいう気象データとは、気象状態を示す物性値のことであり、例えば、気圧、気温、気圧面高度、降水量、風向、風速、湿度、雲量、日照時間、及び積雪深が挙げられる。なおここでいう気圧面高度とは、任意の平面位置における特定の気圧面(同一気圧となる面)が存在する高度(標高)であり、位置ごとに気圧面高度をプロットしていくと、指定した気圧面を3次元で表現することができる。また、気圧や気温などは、同じ平面位置でも高度(標高)によってその値が異なることから、ある標高で統一したうえで気象データを用いるとよい。一般的には、高度を海面高で統一した気象データ(以下、「海面更正された気象データ」という。)が用いられる。
【0027】
広範囲の気象データとして最も利用されているひとつがGPV(Grid Point Value)である。GPVは文字通り「格子点値」であり、地球上を一定の距離で格子状に区切り、コンピュータで多岐にわたるシミュレーションを行って、格子点ごとに種々の気象データ(主に、海面更正された気象データ)を推定したものである。すなわち、メッシュデータMSの格子点に種々の気象データが付与されたものであり、換言すれば単位区画BLごとに種々の気象データを備えたデータである。
【0028】
図2は、気象データ傾斜度について説明するモデル図であり、網掛けされた単位区画BLの気象データ傾斜度を算出するケースを示している。またこの図では、気象データ傾斜度を求める単位区画(以下、「当該単位区画」という。)をBL0で表し、その周辺にある8つの単位区画(以下、「周辺単位区画」という。)をBL1〜BL8で表している。
【0029】
当該単位区画BL0の気象データ傾斜度は、周辺単位区画の気象データを用いて求める。例えば図2の場合、周辺単位区画BL2と周辺単位区画BL7の気象データの差を求め、これを周辺単位区画BL2から周辺単位区画BL7までの距離で除した勾配Vを、当該単位区画BL0の気象データ傾斜度とすることができる。なお、既述したとおりメッシュデータMS(単位区画BL)には平面座標や緯度経度が与えられているため、周辺単位区画BL2から周辺単位区画BL7までの距離は容易に算出することができる。
【0030】
あるいは、周辺単位区画BL4と周辺単位区画BL5に着目して求めた勾配Hを当該単位区画BL0の気象データ傾斜度とすることもできるし、勾配Vと勾配Hを合成した値(二乗和の平方根)を気象データ傾斜度とすることもできる。そのほか、周辺単位区画BL1と周辺単位区画BL8に着目した勾配S1や、周辺単位区画BL3と周辺単位区画BL6に着目した勾配S2、もしくはこれらを含めて合成した値を当該単位区画BL0の気象データ傾斜度とすることもできる。
【0031】
(気象データ図)
気象データ図は、所定領域における気象データの分布を表す図である。例えば、メッシュデータMSを構成する単位区画BLそれぞれに気象データを付与し、さらに気象データに相当する(対応する)色情報を求め、単位区画BLを単位とする画素に色情報を割り当てることで作成される段彩図は、気象データ図の一例である。この場合、あらかじめ気象データを段階的に複数の範囲(レンジ)に分割しておき、レンジごとに色情報を対応させておくとよい。
【0032】
また、単位区画BLに付与された気象データに相当する(対応する)グレースケール値を求め、単位区画BLを単位とする画素にグレースケール値を割り当てることで作成される濃淡図も、やはり気象データ図の一例である。この場合も、あらかじめ気象データを段階的に複数の範囲(レンジ)に分割しておき、レンジごとにグレースケール値を対応させておくとよい。さらに、気象データに基づく段彩図と濃淡図を、合成(乗算合成や、加算合成、半透明合成、スクリーン合成、乗算合成など)して得られる図を気象データ図とすることもできる。
【0033】
2.第1の実施形態
以下、本願発明の実施形態の一例について詳しく説明する。なお本願発明は、利用する気象データの違いによって2つの形態に大別できる。第1の実施形態は、1種類の気象データを用いて気象データ図を作成する形態であり、第2の実施形態は、2種類の気象データを用いて気象データ図を作成する形態である。以下、第1の実施形態、第2の実施形態の順でそれぞれ詳しく説明する。なお第1の実施形態では、気象データを気圧とした例で説明するが、もちろん気温や降水量など気圧以外の気象データを用いて本願発明を実施することもできる。
【0034】
図3は、第1の実施形態における本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法の主な処理(工程)の流れを示すフロー図であり、まずはこの図に沿って説明する。はじめにメッシュデータMSを読み出し(Step10)、気象データとして気圧を読み出す(Step20)。このとき、GPVのようにメッシュデータMSを構成する単位区画BLごとに気象データが付与されているものであれば、メッシュデータMSと気象データを個別に読み出す必要はなく、GPVのみを読み出せばよい。当然ながらメッシュデータMSと気象データが別に記憶されている場合は、それぞれ個別に読み出すとともに、読み出した気象データと単位区画BLとの対応関係を示す対応情報(テーブルなど)を読み出したうえで、単位区画BLに気象データを関連付け(紐付け)てもよい。いずれにしろ、読み出したメッシュデータMSを構成する単位区画BLがそれぞれ気象データ(気圧)を具備した状態で、次のステップに進む。
【0035】
単位区画BLごとの気圧が得られると、この気圧に相当する(対応する)色情報を求める。この場合、あらかじめ気圧を段階的に複数の範囲(レンジ)に分割するとともに、それぞれのレンジに色情報を対応させた対応表(テーブル)を用意しておくとよい。そして、例えば単位区画BLを1画素とし、それぞれの画素に色情報を割り当てることで、所定領域の段彩図を作成する(Step30)。
【0036】
一方、段彩図とは別に所定領域の濃淡図を作成するため、気象データ傾斜度を算出する(Step40)。それぞれの単位区画BLに着目し、周辺単位区画の気圧に基づいて気象データ傾斜度を算出していき、さらに得られた気象データ傾斜度に相当する(対応する)グレースケール値を求める。この場合も、あらかじめ気象データ傾斜度を段階的に複数の範囲(レンジ)に分割するとともに、それぞれのレンジにグレースケール値を対応させた対応表(テーブル)を用意しておくとよい。そして、例えば単位区画BLを1画素とし、それぞれの画素にグレースケール値を割り当てることで、所定領域の濃淡図を作成する(Step50)。
【0037】
所定領域の段彩図と濃淡図が得られると、これらを合成した気象データ図を作成する(Step60)。このとき、乗算合成により気象データ図を得ることもできるし、不透明度(透過係数)を用いた加算合成(あるいは、半透明合成やスクリーン合成、乗算合成など)により気象データ図を得ることもできる。また、不透明度を用いて合成する場合、段彩図と濃淡図ぞれぞれの不透明度を異なる値とし、かつ濃淡図の不透明度に比して段彩図の不透明度を小さい値とするとよい。もともと濃淡図よりも段彩図の方が強調されているため、段彩図をより透過することで合成された図が見やすいものとなるからである。
【0038】
図4は、第1の実施形態における本願発明の気象データ図作成システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示す気象データ記憶手段101は、メッシュデータMSと気象データ(気圧)を記憶するものであり、この気象データ記憶手段101から気象データ読み出し手段102がメッシュデータMSと気圧を読み出す。なお、メッシュデータMSを記憶するためのメッシュデータ記憶手段を、気象データ記憶手段101とは別に設けてもよく、この場合、気象データ読み出し手段102はメッシュデータ記憶手段からメッシュデータMSを読み出すことになる。
【0039】
段彩図作成手段103は、気象データ読み出し手段102によって読み出されたメッシュデータMSと気圧を用いて段彩図を作成する。一方、気象データ傾斜度算出手段104は、気象データ読み出し手段102によって読み出されたメッシュデータMSと気圧を用いて、個々の単位区画BLの気象データ傾斜度を算出し、ここで求められた気象データ傾斜度を用いて、濃淡図作成手段105が濃淡図を作成する。そして気象データ図作成手段106が、段彩図と濃淡図を合成して気象データ図を作成する。ここで作成した気象データ図は、ディスプレイやプリンタといった出力手段107によって出力することができる。
【0040】
3.第2の実施形態
次に、第2の実施形態の一例について詳しく説明する。なお、第1の実施形態と重複する内容の説明は避け、第2の実施形態に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、第1の実施形態で記載したものと同様である。また、ここでは2種類の気象データを、気温と気圧とした例で説明するが、もちろん降水量や風速など他の気象データの組み合わせを用いて本願発明を実施することもできる。
【0041】
図5は、第2の実施形態における本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法の主な処理(工程)の流れを示すフロー図であり、まずはこの図に沿って説明する。第1の実施形態と同様、はじめにメッシュデータMSを読み出し(Step10)、気象データとして気温と気圧の2種類のデータを読み出す(Step20)。これら気温と気圧は、第1の実施形態で説明したとおり、単位区画BLごとに関連付けられており、換言すれば、個々の単位区画BLはそれぞれ気温と気圧を具備している。
【0042】
単位区画BLごとの気温が得られると、この気温に相当する(対応する)色情報を求める。この場合、あらかじめ気温を段階的に複数の範囲(レンジ)に分割するとともに、それぞれのレンジに色情報を対応させた対応表(テーブル)を用意しておくとよい。そして、例えば単位区画BLを1画素とし、それぞれの画素に色情報を割り当てることで、所定領域の段彩図を作成する(Step30)。
【0043】
一方、段彩図とは別に所定領域の濃淡図を作成するため、気象データ傾斜度を算出する(Step40)。それぞれの単位区画BLに着目し、周辺単位区画の気圧に基づいて気象データ傾斜度を算出していく。つまり、気象データ傾斜度を算出するために用いられる気象データ(ここでは気圧)は、段彩図を作成するために持ちられた気象データ(ここでは気温)とは異なる種類のものとされる。そして、得られた気象データ傾斜度に相当する(対応する)グレースケール値を求め、それぞれの画素(例えば、単位区画BLを1画素とする)にグレースケール値を割り当てることで、所定領域の濃淡図を作成する(Step50)。
【0044】
あるいは、気象データ傾斜度を用いることなく濃淡図を作成することもできる。すなわち、この場合は気象データ傾斜度を算出する処理や工程(Step40)が省略される。具体的には、気圧(段彩図作成用の気温とは異なる気象データ)に相当する(対応する)グレースケール値を求め、それぞれの画素(例えば、単位区画BLを1画素とする)にグレースケール値を割り当てることで、所定領域の濃淡図を作成する(Step50)。この場合も、あらかじめ気圧を段階的に複数の範囲(レンジ)に分割するとともに、それぞれのレンジにグレースケール値を対応させた対応表(テーブル)を用意しておくとよい。
【0045】
所定領域の段彩図と濃淡図が得られると、これらを合成した気象データ図を作成する(Step60)。この場合も第1の実施形態と同様、乗算合成や、加算合成などによって気象データ図を得ることもできるし、段彩図と濃淡図ぞれぞれの不透明度を異なる値とし、かつ濃淡図の不透明度に比して段彩図の不透明度を小さい値として合成した気象データ図を得ることもできる。
【0046】
図6は、第2の実施形態における本願発明の気象データ図作成システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示す気象データ記憶手段101は、メッシュデータMSと2種類以上の気象データを記憶するものであり、この気象データ記憶手段101から気象データ読み出し手段102がメッシュデータMSと2種類の気象データ(気温と気圧)を読み出す。
【0047】
段彩図作成手段103は、気象データ読み出し手段102によって読み出されたメッシュデータMSと第1の気象データである気温を用いて段彩図を作成する。一方、気象データ傾斜度算出手段104は、気象データ読み出し手段102によって読み出されたメッシュデータMSと第2の気象データである気圧を用いて、個々の単位区画BLの気象データ傾斜度を算出し、ここで求められた気象データ傾斜度を用いて、濃淡図作成手段105が濃淡図を作成する。あるいは濃淡図作成手段105は、気圧(第2の気象データ)そのものを用いて濃淡図を作成してもよい。そして気象データ図作成手段106が、段彩図と濃淡図を合成して気象データ図を作成する。ここで作成した気象データ図は、ディスプレイやプリンタといった出力手段107によって出力することができる。
【0048】
(出力例)
図7は、日本国土を縦断する台風の遷移状況を、本願発明によって表現した気象データ図であり、図8は、日本国土周辺における温帯低気圧の発達状況を、本願発明によって表現した気象データ図である。なおこれらの図は、気温(第1の気象データ)に基づいて段彩図を作成し、気圧(第2の気象データ)による気象データ傾斜度に基づいて濃淡図を作成している。これらの図から、台風が日本国土を縦断する様子(図7)や、低気圧の発達に伴う前線の発達や移動の様子(図8)が、専門的な知識がない者でも直感的に(一目で)捉えられることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明の気象データ図作成システム、及び気象データ図作成方法は、報道現場や教育現場など広い範囲で活用することができる。気象状況を的確に把握することで、異常気象に伴う防災意識が向上し、さらには早期の防備を促し、その結果数多くの人々の安全が図られることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献が期待できる発明といえる。
【符号の説明】
【0050】
100 気象データ図作成システム
101 (気象データ図作成システムの)気象データ記憶手段
102 (気象データ図作成システムの)気象データ読み出し手段
103 (気象データ図作成システムの)段彩図作成手段
104 (気象データ図作成システムの)気象データ傾斜度算出手段
105 (気象データ図作成システムの)濃淡図作成手段
106 (気象データ図作成システムの)気象データ図作成手段
107 (気象データ図作成システムの)表示手段
AR 所定領域
MS メッシュデータ
BL 単位区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8