(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正係数は、前記自動再生成ステップの開始時および終了時における、前記フィルタアウトレット温度と、燃焼が生じない場合に前記粒子フィルタが有しているであろう前記温度の前記差の平均値の関数として計算される、
請求項6に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンからの粒子排出を低減することは、汚染物質の排出に関連する現在および将来の規制に適合するための重要な課題である。粒子排出制限を順守すべく、機械的な障壁として機能するディーゼル粒子フィルタ(DPF)またはトラップを特に含む排気ガス処理システムを用いて、内部に形成されたセラミックス溝構造による粒子の通過を防止することが必要である。上述のトラップは、エンジンの排気ラインに統合されるとともに、燃焼処理中に生成された粒子を、100%に近い効率で中に保持できる。しかしながら、フィルタの表面上の粒子堆積がエンジンの排気時の圧力を上げ、これがエンジンの効率の減少を引き起こす。結果的に、中に堆積した粒子の燃焼(点火)によりトラップを定期的に再生成することが必要となる。この目的を達成するために、エンジンのシリンダと関連付けられた燃料噴射器の電子エンジン制御ユニット(ECU)が、フィルタ内の粒子堆積の推定量が閾値を超えた場合に燃料噴射器制御モードを起動し、フィルタに送られた排気ガスの温度を、フィルタ内の粒子を燃焼させるのに十分に上昇させることによるフィルタの自動再生成を引き起こすようにプログラムされる。この温度上昇は、例えば、部分的に燃焼した燃料を排気ラインに直接導入するように排気ステップ中の燃焼チャンバ内の複数回の燃料噴射(後噴射)を制御することにより得られる。排気ラインに沿って燃焼するこの部分的に燃焼した燃料がDPF内の高温を誘起し、堆積粒子の燃焼を可能にする。
【0003】
添付図面のうちの
図1は、現代のディーゼルエンジンの噴射制御システムおよび排気システムを概略的に示す。この図において、参照番号1は、電子制御ユニットEにより制御される電磁燃料噴射器2が各々に設けられた複数のシリンダを有するエンジンを示す。参照番号4は、流量計5と、バタフライバルブ6と、排気ガス再循環(EGR)バルブ7と、過給コンプレッサ8とが挿入された、空気の吸気ダクトを示す。参照番号9は、エンジン排気ラインの全体を示す。エンジン内で、プレ触媒11と、触媒コンバータ12と、粒子フィルタ13とに沿って過給コンプレッサ8に機械的に接続されたタービン10が相互接続される。参照番号14は、エンジンアウトレットからの排気ガスをEGRバルブ7に再循環させるための管路を示す。センサ15が、粒子フィルタ13の上流側と下流側に存在する圧力差を検出する。電子制御ユニットEは、上記センサ15を出た信号を、排気ガス処理デバイスと関連付けられた、粒子フィルタ13の上流側および下流側にそれぞれ位置する温度センサT5およびT6から、かつ、流量計5から、それぞれ受信し、制御信号をバタフライバルブ6、EGRバルブ7および噴射器2に伝送する。そのようなシステムの例が欧州特許第2963271 B1号である。
【0004】
電子エンジン制御ユニットEは、フィルタ13に送られた排気ガスの温度を一時的に600℃以上の値に至らせるように、エンジンの各サイクルでの複数回の燃料噴射を制御することにより、フィルタの自動再生成モードを起動することができる。これにより、粒子の(点火)燃焼が引き起こされる。
【0005】
従来技術に従って、フィルタ内に存在する粒子の量は、統計モデルを用いて電子制御ユニットにより、またはマップベースモデルを用いることにより評価される。ここで、エンジンの各動作条件について、例えば必要なエンジンの回転および負荷の関数として、エンジンの煙さを評価することが可能である。エンジンおよび車両の各動作条件について、制御ユニットは、例えばマップに基づいて、時間毎のグラム(g/h)で表される、フィルタ内の粒子の特定の堆積(「スートローディング」)の推定を実行する。当該推定は平均統計測定値に基づく。
【0006】
この既知の解決手段の不利な点は、実際値から比較的遠い推定値を生じさせ得ることである。実際には、粒子排出は、例えば噴射の経時的な位置決め、排気ガス再循環(EGR)の割合および噴射器のタイプなど、多くの異なる要因に依存する。エンジンの較正は、それぞれの変動帯域の平均値に対応する、すなわち、予想仕様に正確に対応する、有効な様々なパラメータの値で実行されなければならない。しかしながら、異なるコンポーネントの製造時の許容差に起因して、それらの様々なパラメータは、各コンポーネントについての最大値と最小値との間のガウス分布で広範囲に異なり得る。
【0007】
「最悪のケース」のシナリオでは、エンジンが、全く「未較正の」噴射器を有し得る。これらの噴射器は、電子制御ユニットにより予測されるものよりも多量の燃料を噴射する。これにより、このエンジンは、予想値に対応する量の燃料を噴射する「理想的な」噴射器を有するエンジンと比較して、より大きな煙さを有することになる。理想的な条件から外れたこれらのコンポーネントの全てにおいて効果が重複していると、各コンポーネントが製造許容差により許容される最大分散内のままの場合であっても、エンジンの煙さを増加させる効果をもたらし得る。
【0008】
既知のシステムにおいて用いられる統計モデルは、「開ループ」モードで動作し、従って、コンポーネントの分散を考慮に入れることは不可能なので、機能不全が考えられる。機能不全は、自動車の耐用期間中に生じ得る。実際には、この統計モデルは、そのような条件において、g/hで表されるスートローディングは、全ての自動車について、それらの自動車の各々の特定の特徴にかかわらず、固有かつ予め定められたものであると仮定して、例えば「都市」サイクルに関与するn台の自動車に、同じ都市「ミッションプロファイル」を割り当てる。
【0009】
これに加えて、燃料噴射後の原因で、再生成ステップは、一方で、排気温度の迅速な上昇を可能にするが、他方で、潤滑油を劣化させて燃料消費を増加させる傾向がある。これらの理由から、再生成ステップ頻度および持続時間の両方が、フィルタ内に堆積した粒子の正確かつ完全な燃焼のために厳密に必要な値を超えるべきではない。
【0010】
従って、これらの統計モデルは、最悪のケースのシナリオにおいてさえ、すなわち、個々のコンポーネントの予想条件からのずれがエンジンのより厄介な状況を伴う場合においても、製造業者により、エンジンおよびそのコンポーネントの一体性を保護するような態様で較正されなければならない。これにより、車両は、フィルタの完全な排出を再生成するために可能な限り重要な条件を有することで、フィルタ自体の進行的および段階的な目詰まりを回避することが可能になる。
【0011】
従って、車両の可能な最も幅広い範囲で問題を回避すべく、これらのモデルは、非常に控えめでなければならない。これが再生成の高い頻度および持続時間をもたらし、燃料の無駄およびエンジンオイルの質のより速い低下をもたらす。
【0012】
本発明の目的は、粒子フィルタを当該フィルタ内の粒子堆積のより正確な評価に基づいて再生成するための制御システムが備えられたディーゼルエンジンを生産し、それにより、上述の不利な点の克服を可能にすることである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、上述の目的を簡易かつ安価な手段で実現することである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の基本的な考え方は、粒子フィルタの再生成ステップを制御して、それらの頻度および持続時間の両方に介入することである。
【0019】
添付図面のうちの
図2は、
図1の電子制御ユニットEに実装されるような、本発明の基礎となる原理を示すブロック図である。一般的に、制御ユニットEは、フィルタ13内の推定堆積粒子質量M
acc,iが、予め定められたレベルTH1に達した場合に、粒子フィルタDPFの自動再生成を起動するように、プログラムされる。従来技術の場合、この堆積質量M
acc,iは、上述のように、専ら堆積モデル100を用いることにより、評価される。堆積モデル100では、グラム/時で表される、フィルタ13内の粒子の堆積(スートローディング)を、制御ユニットEが、エンジン回転数、エンジン負荷、ラムダ、周囲圧力、環境温度およびエンジン水温ならびに/または車両の「ミッションプロファイル」MP(例えば、「都市サイクル」、「追加都市サイクル」、「混合サイクル」)など、エンジン動作条件に関連するインレット値に基づいて計算する。次に、堆積モデル100は、スートローディング情報、すなわち、瞬間堆積(粒子)質量m
siに関する情報を出力する。次に、スートローディング情報は、積分ブロック101において他の瞬間堆積質量へと合計され、推定堆積質量M
acc,iが生成される。例えば、エンジン動作条件(例えば、ミッションプロファイルMP)の関数として、堆積モデル100は、フィルタ13内の瞬間堆積質量m
siの対応する値をマップ上で読み取り得る。
【0020】
既に示されたように、既知のシステムの動作モードは、フィルタ13内の粒子の堆積(スートローディング)を高精度で推定することを可能にしない。逆に、本発明に従ったシステムは、
図2に例示されるように、既知のシステムにおいて用いられる統計堆積モデル100を依然として用いているが、ブロック104において、フィルタ13の各再生成ステップ中に決定される発熱過程の、燃焼モデル102において実行される解析に基づいて、上記統計モデル100で得られた情報の補正もする。一般的に、燃焼モデル102は、各再生成ステップ中に予め実行された解析に基づく、堆積ステップ中の堆積モデル100の出力での推定瞬間堆積粒子質量m
siの補正を可能にする。
【0021】
特に、再生成の頻度が、制御ユニットEの不揮発性メモリに格納された補正係数kのマップに基づいて決定される1または複数の補正係数kを用いて堆積モデル100を補正することにより、制御される。
【0022】
各々の1回の再生成ステップ中、一時的補正係数k
tmpが計算され、補正係数kのマップが当該一時的補正係数の値に基づいて更新される。これは以下でより詳細に説明される。
【0023】
従って、堆積モデル100の出力での瞬間堆積質量m
siの値は、例えば、ブロック104において、当該値を、補正係数kのマップに基づいて決定される補正係数kにより乗算することにより、補正され得る。
【0024】
一時的補正係数k
tmpの計算は、各再生成ステップ中に行われ得、堆積モデル100により評価される瞬間堆積質量m
siを、本発明の対象である燃焼モデル102に従って計算される、フィルタ13内の実燃焼(粒子)質量M
b,rと比較する。
【0025】
燃焼モデル102は、入力データとして、瞬間堆積質量m
siに加えて、例えば、フィルタDPF13を通過する排気ガスの流量、フィルタT5のすぐ上流側の排気ガスの温度、フィルタT6のすぐ下流側の排気ガスの温度、大気温度T
envおよび車両の速度Vなどの物理パラメータを有する。これらの値は従来、
図1に示されるセンサT5、T6および15などの、エンジンに直接設置されたセンサにより取得されている。
【0026】
燃焼モデルの別の入力データが、本発明の対象ではないブロック106を用いて得られる、DPFフィルタ13の外部での、すなわちDPFフィルタ13の出口でのモデル化温度T6_modである。このモデル化温度T6_modは、DPFフィルタ13の外部での温度、すなわち、フィルタ内で粒子の燃焼がない場合にフィルタが再生成ステップ中にそのアウトレットで有しているであろう温度T6を表し、他の入力パラメータの値と等しい。ブロック106では、この基準モデル化温度T6_modのいくつかのモデルも、異なるエンジン動作条件に応じて格納され得る。
【0027】
各再生成ステップに続いて、計算された一時的補正係数k
tmpが、補正係数kのマップを更新するために用いられる。例えば、それはマップに格納された1または複数の補正係数kにより乗算され得る。これにより、特定の回数の再生成の後、これらの1または複数の補正係数kと、堆積モデル100からの推定瞬間堆積粒子質量m
siとの間の積により、エンジンにより発される粒子の実際の量を正確に推定することが可能になる。このようにして、推定堆積(粒子)質量M
acc,iの値は、堆積(粒子)質量M
acc,rの実際値に本質的に対応し得る。
【0028】
従って、本発明の対象である燃焼モデル102は、上述の堆積モデル100に対する補正フィードバックモデルとして機能し、電子制御ユニットEが、堆積モデル100において製造業者により較正された粒子関連値を各車両で適合させることを可能にする。
【0029】
本発明により、これらの粒子関連値が車両のライフサイクル中に適合されることも可能になり、例えば、それらの経年劣化に起因したコンポーネントのずれを原因とする、DPF13の目詰まりの進行が回避される。
【0030】
燃焼モデル102からのさらなる出力がストップ信号である。ストップ信号により、必要が生じた場合、例えば、実燃焼粒子質量M
b,rの経時的な増加が所与の期間中断された場合(再生成ステップの終了の前に起こり得る、粒子燃焼ステップの終了を示す条件である)、再生成ステップの中断が可能になる。
【0031】
図3Aは、この再生成が過度に長いか、または過度に短い場合における、再生成ステップ中の堆積および燃焼ステップM
b中の堆積(粒子)質量M
accの挙動を時点tの関数としてそれぞれ示す。実線は推定堆積質量iおよび推定燃焼質量iを表し、一方、破線は実堆積質量rおよび実燃焼質量rを表す。本非限定的例は、推定堆積質量がフィルタ13内の堆積質量の実際値未満である可能性を考慮している。
【0032】
瞬間t=0に、粒子質量堆積ステップがフィルタ13において始まる。各瞬間に、堆積モデル100は、瞬間堆積質量m
siを決定し、ブロック101における他の瞬間堆積質量と共に合計することにより、推定粒子質量M
acc,iの本質的に線形な増加を生じさせる。
【0033】
同時に、フィルタ13は、実際には、各瞬間に実堆積粒子質量M
acc,rを増し、粒子で満たされる。この実質量は、様々な理由で当該推定質量とは異なり得る。なぜなら、例えば、異なる車両に固有である堆積モデル100は、控えめであり得、従って、粒子関連値が実際に閾値TH1に達する前に再生成ステップを開始するように設計され得るからである。重要な状況は、
図3Aおよび3Bに示されるものである。この状況において、実堆積質量は、推定堆積質量よりも大きい可能性がある。
【0034】
瞬間t=t
1に、推定堆積質量M
acc,iは閾値TH1に達する。これは例えば、粒子質量の値がフィルタ13を100%まで満たす、すなわち、フィルタ13を完全に満たす役割を果たしていることを示す。
【0035】
当該瞬間において次に再生成ステップが始まり、燃焼質量M
bが増加する一方で堆積質量M
accが減少する。
【0036】
瞬間t=t
2は、推定堆積質量M
acc,iが完全に燃焼した時点を示すが、実際には、推定燃焼質量M
b,iの値は一定になる。
【0037】
逆に、推定堆積質量M
acc,iよりも大きい実堆積質量M
acc,rは、フィルタ13の実際の再生成が得られる時点である瞬間t
3>t
2に完全に燃焼する。
【0038】
しかしながら、制御ユニットEのプログラミングは、再生成ステップが瞬間t
4まで続いて、再生成ステップが瞬間t
3とt
4との間で余分に長引くことにつながることを想定している。再生成ステップの終了時に、新たな堆積ステップが始まる。新たな堆積ステップは、推定堆積質量M
acc,iが再び閾値TH1に達する瞬間t
5に中断される。
【0039】
再生成ステップは、実堆積質量M
acc,rを燃焼するために必要な時間よりも長い持続時間(t
4>t
3)で設計されるので、不適切な質量堆積はない。しかしながら、再生成ステップの過度の持続時間は、燃料の無駄につながり得る。
【0040】
図3Bにおいて、参照番号は以前に用いられたものと同じであるものの、再生成の持続時間が、推定堆積質量が完全に燃焼するのに必要とする時間と一致しているという、すなわちt
2=t
4であるという事実において、差が存在する。見て分かるように、瞬間t
3とt
4との間にある期間が存在し、燃焼質量が当該期間において一定であり、従って、堆積質量の全てが燃焼している、
図3Aに示される場合とは異なり、
図3Bの場合には、再生成ステップは、フィルタ13に堆積した質量が完全に燃焼し得る前に終了する。これは、後続の堆積ステップの開始時点でゼロ以外の粒子質量があり、従来技術の場合には補正され得ない誤差につながっていることを示唆している。
【0041】
結果として、再生成ステップの持続時間が短いことにより、不適切な燃料消費が防止される。しかしながら、堆積質量M
acc,iの推定に誤差があると、粒子の不完全燃焼につながり得、故に、フィルタ13が時間と共に劣化する可能性があり得る。
【0042】
図4Aおよび4Bは、本発明の方法が適用される場合における、推定(i)堆積質量M
accおよび実(r)燃焼質量M
bの経時的な変動を例示する。簡略化のために、車両の最初の始動が考慮されるか、または例えば、補正係数kのマップが全ての単一補正係数kで予め設定されるリセット条件の後の始動が考慮される。
【0043】
持続時間T1の最初の堆積ステップにおいて、推定瞬間質量m
siは、補正係数kにより乗算され、推定堆積質量M
acc,iを増加させることにより積分される。推定瞬間質量m
siの計算および補正係数kの計算の両方が、マップに基づいて、同様に車両の動作条件に基づいて行われる。
【0044】
補正係数kのマップには単一値があるので、最初の堆積ステップにおいて、推定堆積質量M
acc,iは補正されない。推定堆積質量M
acc,iが時点t=t
1でもう一度閾値TH1に達し、以前に説明されたものと同様に、再生成ステップが始まる。
図3Aおよび3Bとは対照的に、このステップ中、一時的補正係数k
tmpは、推定堆積粒子質量M
acc,iおよび実燃焼粒子質量M
b,rの関数として計算される。
【0045】
一度計算されると、一時的補正係数k
tmpは、マップに格納された補正係数kの値を更新するために用いられ得る。例えば、補正係数k
tmpは、堆積ステップ中のエンジン動作条件に対応する位置にマップに格納された補正係数kの値により乗算され得る。この場合、単一補正係数kは、一時的補正係数の値k
tmpにより単に置き換えられる。言い換えると、本発明の方法は、一時的補正係数k
tmpが計算される再生成ステップに対応する堆積ステップ中にエンジンにおいて生じる動作条件に従って、各再生成ステップの後に補正係数kのマップのうちの少なくとも1つの値を更新する段階を含む。
【0046】
特に、
図4Aの場合、補正係数k
tmpは、1よりも大きい値を有し得る。これにより、推定瞬間質量m
siにより乗算することは、実堆積粒子質量M
acc,rを反映するために推定堆積質量M
acc,iの傾きがより急峻になることにつながる。
【0047】
しかしながら、これは、次に続く堆積ステップにおいて、つまり、時点t=t
4で、車両が前の堆積ステップ、すなわち期間T1と同じ動作条件を維持している場合にのみ生じる。そうでなければ、再生成ステップ中に計算された一時的補正係数k
tmpの値は、新たな堆積ステップに影響を及ぼし得ず、また、瞬間堆積質量m
siの推定値は、単一補正係数kにより乗算されるので、補正されない。
【0048】
しかしながら、前の堆積ステップと同じ車両の動作条件を考慮して、ちょうど格納された補正係数kは、推定瞬間堆積粒子質量m
siにより乗算され、堆積粒子質量M
acc,rの実際値に本質的により近い推定堆積粒子質量M
acc,iの補正につながる。このようにして、実堆積粒子質量M
acc,rが推定堆積粒子質量M
acc,iよりも大きい場合には、補正なしに経過した時間と比較してより短い期間T2(すなわち、T2<T1)内に閾値TH1に達することが可能である。
【0049】
従って、この補正により、粒子堆積が回避され、モデル100の出力での瞬間堆積質量m
siおよび燃焼モデル102を用いて計算された実燃焼粒子質量M
b,rの両方に従って、再生成ステップの開始が制御される。
【0050】
図4Bにおいて、実粒子質量M
acc,rが推定質量M
acc,iのものよりも遅い速度(g/h)で堆積した場合が考慮されている。この場合、再生成ステップは、時点t
2から始まる期間生じる。当該期間内に、実燃焼粒子質量M
b,rは、時点t
4で一定になり、その時点で再生成ステップが終了し、再生成ステップが余分になる。なぜなら、燃焼は既に完了しているからである。この条件は、実堆積粒子質量M
acc,rが閾値TH1に達する前に再生成ステップが始まるという事実に起因する。
【0051】
この場合、再生成ステップ中、一時的補正係数k
tmpは、1未満の値で計算され、(エンジンの同じ動作条件が検証された場合は)後続の堆積ステップで、推定瞬間堆積粒子質量m
siの値により乗算され得る。
【0052】
結果的に、推定堆積粒子質量M
acc,iの直線の傾きは、実堆積粒子質量M
acc,rの傾きに本質的に対応し、新たな堆積ステップの持続時間は、前のものよりも大きい値T2を有する。つまり、補正がなされた堆積ステップの期間は、全てが堆積モデル100に基づくものよりも大きくなる、T2>T1である。
【0053】
従って、再生成ステップの頻度は、マップに基づいて決定された1または複数の補正係数kにより乗算され、各再生成ステップに続く燃焼モデル102により更新された、堆積モデル100の出力での推定瞬間堆積粒子質量m
siを補正することにより制御される。
【0054】
従って、補正係数kの使用は車両の動作条件に依存することが理解され得る。エンジンが動作していない限り、補正係数kを計算することは不可能である。従って、補正係数kは単一のまま、つまり、最初に設定された値を維持し続ける。結果的に、補正燃焼モデル102は、補正係数kが更新されるステップに関連する後続の再生成ステップ中、堆積モデル100に影響を及ぼす。
【0055】
簡略化のために、前述の図面において、堆積ステップの全体が1つのエンジン動作条件に対応する場合が示されていることが理解されるであろう。しかしながら、エンジン動作条件の変動に応じて、ここで示される線形トレンドに対して異なるトレンド、例えば、破線で示される線形増加、または時間の関数としての一般的な増加トレンドが期待され得る。従って、エンジンの異なる動作条件が同じ堆積ステップ中に生じた場合、エンジンのその異なる動作条件に対応する異なる補正係数kも用いられるであろう。
【0056】
同様に、再生成ステップ中に計算された一時的補正係数k
tmpは、堆積ステップ中に検出され生じたエンジンの動作条件に対応する1または複数の補正係数kを更新するために用いられ得る。
【0057】
図5Aおよび5Bは、燃焼した粒子がフィルタ13内に存在している再生成ステップ中のフィルタ13の上流側の温度T5および燃焼した粒子がフィルタ13内に存在していない下流側の温度T6の経時的な変動をそれぞれ示す。破線により例示されるモデル化温度T6_modは、基準として用いられる。
【0058】
見て分かるように、燃焼した粒子がフィルタ13内に存在している場合、フィルタの下流側の温度T6は、再生成ステップT6_mod中に燃焼がない場合におけるフィルタの下流側で得られるであろうものよりも高い。
【0059】
一方、これら2つの温度T6およびT6_modは、粒子燃焼ステップ外で一致し、この非限定的な例において、再生成ステップT
Rと一致する。
【0060】
図5Bに例示されるように、フィルタ13内に堆積した粒子がない場合、燃焼は生じず、これら2つの温度は、再生成ステップT
Rの全体にわたってさえ本質的に一致する(T6=T6_mod)。
【0061】
DPF13内の瞬間燃焼粒子質量を推定すべく、エネルギー保存の原理が、例えばセンサT5、T6および15から得られた値、および/またはモデル化基準温度T6_modを計算するためのブロック106から得られた値を用いて、制御量に適用され得る。
【0062】
フィルタ13の再生成ステップ中に燃焼が生じる堆積粒子質量を有するフィルタ13にこのエネルギー保存の原理を適用することにより、以下の式が得られる。
(H
exh,in−L − H
exh,out−L)×dt + P
HC×dt +P
soot×dt = dE
brick−L + P
air−L×dt (1)
(式中、H
exh,in−LおよびH
exh,out−Lは、排気ガスフィルターからのインレットエンタルピーおよびアウトレットエンタルピーをそれぞれ表し、P
HCは、未燃焼炭化水素の燃焼により放出された熱出力を表し、P
sootは、粒子の燃焼により放出された熱出力を表し、dE
brick−Lは、時点dtでのフィルタの内部エネルギーの無限小増加を表し、P
air−Lは、対流に起因してフィルタにより空気に伝達された出力を表す。)
【0063】
式1の値は以下のように計算され得る。
【数1】
および
【数2】
は、排気ガスフィルターのインレットでのエンタルピーの変化、および排気ガスフィルターのアウトレットでのエンタルピーの変化をそれぞれ表す。これらの値は以下のように計算される。
【数3】
【数4】
(式中、
【数5】
は、当該モデルへの入力として受信される、粒子フィルタ13を通る最大流量であって、電子制御ユニットEにおいて利用可能であり、c
P exhは、ガスの一定の圧力での(当該モデルに入力され、電子制御ユニットEにおいて較正される)比熱を表し、さらに、T
5およびT
6は、(当該モデルへの入力として含まれ、電子制御ユニットEにおいて利用可能でもある)粒子フィルタ13のインレットおよびアウトレットでのガスの温度を表す。)P
HCは、未燃焼炭化水素の燃焼により放出された熱出力を表す。
【数6】
(式中、項は、当該モデルに入力され、電子制御ユニットEにおいて利用可能である。それらは本出願には関連しないので、詳細な説明は提供されない。)P
sootは、粒子の燃焼により放出された熱出力を表す。
【数7】
(式中、H
L−sootは、当該モデルに入力される、電子制御ユニットEにおいて較正可能な値である、粒子のより低い加熱値を表す。)P
air−Lは、対流に起因してフィルタにより空気に伝達された出力である。
【数8】
(式中、h
airは、ブリック/外部環境の熱貫流率を表し、S
brickは、ブリックの表面を表し、
【数9】
および
【数10】
はそれぞれ、平均ブリック温度および環境温度、つまり、電子制御ユニットEにおいて較正可能および/または利用可能な、当該モデルへの入力である。)dE
brick−Lは、時点dtにおけるフィルタの内部エネルギーの無限小増加である。
【数11】
(式中、m
brickは、ブリックの質量を表し、c
brickは、ブリックの比熱を表し、
【数12】
は、電子制御ユニットEにおいて較正可能/利用可能な、当該モデルへの入力である、ブリック内の平均温度変動を表す。)この式は、フィルタ13の下流側の温度がT6である
図5Aを指している。
【0064】
フィルタ13の下流側の温度がT6_modと等しい
図5Bの場合に対しても、同じエネルギー保存の原理が適用され得る。
(H
exh,in−E − H
exh,out−E)×dt + P
HC×dt +P
soot×dt = dE
brick−E + P
air−E×dt (2)
【0065】
これらの2つの式を項毎に減算することにより、粒子の燃焼により瞬間的に放出された熱出力の推定値が得られる。
P
soot = (dE
brick−L − dE
brick−E)/dt + (P
air−L − P
air−E) + (H
exh,out−L − H
exh,out−E) (3)
【0066】
同様に、式1を並べ替えることにより、粒子の燃焼により瞬間的に放出された熱出力を以下のように得ることが可能である。
P
soot = dE
brick−E/dt +P
air − (H
exh,in − H
exh,out) −P
HC (4)
【0067】
式3と式4との間の差異は、推定がより困難である未燃焼粒子P
HCの燃焼に起因する熱出力を考慮に入れる必要がないので、式3に従った瞬間燃焼熱出力P
sootの推定値がより正確であることである。加えて、内部エネルギーおよび外部環境との熱交換の変動を考慮に入れた項は、粒子の発熱過程に起因する項と比較して無視し得る。しかしながら、両方の式は瞬間燃焼粒子質量の推定値を得るために用いられ得る。従って、両方とも制御ユニットEにより用いられ得る。
【0068】
粒子の燃焼によりにより放出された熱出力P
sootを推定した後、一度粒子のより低い加熱値H
L−sootが認識されると、これら2つの値の間の比dM
b,r(t)=P
soot/H
L−sootとしての瞬間燃焼粒子質量dM
b,r(t)を推定することが可能である。
【0069】
再生成ステップ中の瞬間燃焼粒子質量dM
b,r(t)を積分することにより、DPF13内の実燃焼粒子質量M
b,rの推定値を得ることが可能である。
【0070】
図6Aおよび
図6Bは、温度T6(ここでは破線により例示されている)およびT6_modの変動に対する実燃焼粒子質量M
b,rの経時的な変動の例である。これら2つの温度が時点t
R,iで本質的に対応しなくなったときに、堆積粒子質量の燃焼が始まり、これら2つの温度がもう一度本質的に対応する時点t
R,fで終了する。堆積粒子の総量が燃焼済みなので、この瞬間に実燃焼粒子質量M
b,rが一定になることが理解されるであろう。
【0071】
しかしながら、実燃焼粒子質量M
b,rの計算は、基準モデル化温度T6_modの推定誤差に影響され得る。従って、モデル化温度ΔM_corrの加法的または減法的な補正項が考慮に入れられ得る。
【0072】
図7Aを見て分かるように、モデル化基準温度T6_modは、例えば推定誤差に起因して、理想的なものとは異なる実数値T6_mod,rを有し得る。従って、モデル化温度ΔM_corrの補正係数は、フィルタの下流側の温度T6と実モデル化温度T6_mod,rの差に従って計算され得る。この差は、フィルタ内での粒子の燃焼には起因していないが、モデル化温度T6_modのモデルにより生じる誤差のみに起因していることが比較的確かである時点でのものである。言い換えると、モデル化温度ΔM_corrの補正係数は、再生成ステップの開始中の時点t
R,i(粒子の燃焼の開始をトリガする条件にまだ達していないとき)での差ΔT6_mod,iの関数として、および最終再生成ステップ中の(以前に堆積した粒子が既に完全に酸化されていること、つまり、燃焼ステップが終わっていることが比較的確かである)時点t
R,fでの差ΔT6_mod,fの関数として、計算され得る。
【0073】
次に、モデル化温度ΔM_corrの補正係数は、以下のように計算される。
【数13】
(式中、ΔT6_mod,iは、再生成ステップの最初の時点t
R,iでのフィルタの下流側の温度T6と実モデル化温度T6_mod,rの差を表し、ΔT6_mod,fは、再生成ステップ最後の時点t
R,fでのフィルタの下流側の温度T6と実モデル化温度T6_mod,rの差を表し、M
exhは、再生成ステップ中にフィルタを通り抜けた排気ガスの質量を表し、C
p,exhは、排気ガスの比熱を表し、Hlは、粒子のより低い加熱値を表す。)
【0074】
式5、および従ってモデル化温度ΔM_corrの補正係数の計算により、例えば粒子の燃焼の終了に関連する時点t
R,fでの燃焼粒子質量M
b,rの値の補正が可能になる。
【0075】
燃焼粒子質量M
b,rへと合計された補正係数ΔM_corrにより、補正済みの値が得られ、一時的補正係数k
tmpを計算するために用いられることが可能になる。
【0076】
図7Bは、燃焼粒子質量M
b,rおよび対応する補正済みの燃焼粒子質量M
b,r_corrのトレンド、つまり、モデル化温度T6_modの推定誤差がない場合に燃焼粒子質量M
b,rが有しているであろう経時的なトレンドを示す。時点t
R,fで計算され、
図7Bにおいて基準M
FBで例示される補正済みの最終的な値は、上述のように、堆積モデル100の推定値を補正するために用いられる。
【0077】
補正済み質量の変動および理論上の質量の変動を見て分かるように、モデル化温度T6_modの推定誤差は、燃焼粒子質量M
b,rの推定値を歪め得る。この歪みは、モデル化温度ΔM_corrの補正係数を用いて当該モデルを補正することにより、改善され得る。
【0078】
様々な実施形態において、燃焼モデル102が頻度だけでなく再生成ステップの持続時間も制御するように、燃焼モデル102を構成することが可能である。つまり、再生成ステップの持続時間を、本質的に粒子フィルタDPF13内の堆積粒子M
accの正確かつ完全な燃焼に必要な時間へと調整することが可能になる。再生成の中断は、例えば、現在の再生成ステップの中断を強制し得るストップ信号を用いて起こり得る。再生成ステップの持続時間は、フィルタDFG13の特定の動作条件が再生成ステップ自体の間に検出された場合にシステムが現在の再生成ステップの終了を管理するのを可能にすることにより、補正される。従って、同じ再生成ステップが進行中である一方で、再生成ステップの持続時間は修正され得る。
【0079】
一般的に、再生成ステップの中断は、特定の期間、例えば、フィルタ13内での粒子の正確な燃焼を実現するために経験的に必要とみなされる最小期間が経過した後に、必要とされ得る。
【0080】
再生成ステップの中断につながり得る条件は変化し得、その各々は、例えば以下のことが特定の時間有効なままである場合、再生成ステップの中断を単独で可能にし得る。
瞬間的に燃焼した粒子状物質の量(dM
b,r(t))が閾値未満に低下していること。これは、フィルタ13内でもはや燃焼がなく、従って、再生成ステップのさらなる延長は、燃料消費を増やしてエンジンオイルの劣化を増やす効果を有するのみであろうことを示している。および/または
フィルタの下流側の温度T6とモデル化温度T6_modの差の経時的な導関数が、特定の閾値未満に存在しており、同時に、フィルタの下流側の温度T6とモデル化温度T6_modの差が、特定の限界値以下であること。これは、フィルタの下流側の温度T6が、フィルタ内で粒子の燃焼がない場合にフィルタが有しているであろう温度T6_modと整合されているので、フィルタ内で発熱過程はもはや生じていないことを示している。
【0081】
再生成ステップを中断するこの最後の条件は、モデル化温度T6_modの推定誤差の可能性に起因して、考慮に入れられ得る。例えばΔT6_mod,iまたはΔT6_mod,fといったT6_modにゼロ以外の誤差がある場合、瞬間的に燃焼した粒子状物質の量(dM
b,r(t))の相殺に基づく中断条件は決して生じないであろう。なぜなら、フィルタの下流側の温度T6とモデル化温度T6_modとの間には、(間違った)差が常に存在するであろうからである。これは、燃焼モデル102により、粒子の酸化に起因する熱放出と解釈されるであろう。
【0082】
当然のことながら、単に例として説明され図示されるものに関して、それにより以下の請求項により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、構造の詳細および実施形態は、広範囲に変化し得る。