特許第6672642号(P6672642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672642
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】冷凍フリッターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20200316BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20200316BHJP
【FI】
   A23L7/157
   A23L5/10 E
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-169255(P2015-169255)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-42130(P2017-42130A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】593204214
【氏名又は名称】三菱ケミカルフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】片平 亮太
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−017768(JP,A)
【文献】 特開2004−057041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00 − 5/30
A23L 7/117− 9/20
A23L 29/00 −29/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材に有機酸モノグリセリドを含有する分散液Aを含む下処理液を塗布し、
次いで、有機酸モノグリセリドを含有する分散液Bと小麦粉とを混合して得られたバッター液を塗布した後、
該具材を油ちょうして得られるフリッターを冷凍することを特徴とする、冷凍フリッターの製造方法。
【請求項2】
前記有機酸モノグリセリドを含有する分散液A及び有機酸モノグリセリドを含有する分散液Bが、それぞれ、糖類及び/又は乳化剤を含有する、請求項1に記載の冷凍フリッターの製造方法。
【請求項3】
前記具材を前記有機酸モノグリセリドを含有する分散液Aに浸漬することにより、該具材に該下処理液を塗布する、請求項1または2に記載の冷凍フリッターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣を付けた具材を油ちょうして得られるフリッターを冷凍して冷凍フリッターを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手軽に調理でき、保存が可能な冷凍食品の需要が高まり、様々な種類の冷凍食品が販売されている。中でも魚介類などに衣をつけて油ちょうして得られるフリッターを冷凍した冷凍フリッターはお弁当用や外食産業などで高い需要がある。
【0003】
冷凍フリッターは電子レンジやオーブントースターなどで加熱調理して食されるが、油ちょう直後に比べて味や食感が劣るという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、粒状やフレーク状の融点30℃以上の油脂含有物をバッター液に含有させることにより、油ちょう後の冷凍保存期間及び解凍調理後においても、フリッターの食感を保持する方法を開示している。
また、特許文献2では、バッター用のミックス粉中に食用油脂と有機酸モノグリセリドを一定量含有させることにより、油ちょうした際の衣の食感が軽くサクミがあり、電子レンジで再加熱しても食感の劣化の少ないフライ食品を開示している。
また、特許文献3では、フリッターを乾燥剤とともに水蒸気不透過性のフィルムで密封し冷凍することにより、解凍後も調理したての良好な食感を維持する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来の方法においては、冷凍フリッターの衣のサクミについて検討されているものの、フリッターの具材自体の食感及び具材も含めたフリッターの食感については十分に検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−206015号公報
【特許文献2】特開2002−142699号公報
【特許文献3】特開平5−64574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、解凍・加熱調理後の冷凍フリッターの具材自体の食感及び具材も含めたフリッターの食感を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、まず、具材自体に有機酸モノグリセリドを含有する分散液を塗布し、その後、有機酸モノグリセリドを含有する分散液と小麦粉とを混合して得られたバッター液を塗布して、油ちょう、冷凍することにより、上記課題が解決できることがわかり、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0010】
[1] 具材に有機酸モノグリセリドを含有する分散液Aを塗布し、次いで、有機酸モノグリセリドを含有する分散液Bと小麦粉とを混合して得られたバッター液を塗布した後、該具材を油ちょうして得られるフリッターを冷凍することを特徴とする、冷凍フリッターの製造方法。
[2] 前記有機酸モノグリセリドを含有する分散液A及び有機酸モノグリセリドを含有する分散液Bが、それぞれ、糖類及び/又は乳化剤を含有する、[1]に記載の冷凍フリッターの製造方法。
[3] 前記具材を前記有機酸モノグリセリドを含有する分散液Aに浸漬することにより、該具材に該分散液Aを塗布する、[1]または[2]に記載の冷凍フリッターの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油ちょう直後、冷凍・加熱調理後のいずれにおいても、具材自体の食感が良好で、味もよく、フリッターとしての食感及び風味も良好な冷凍フリッターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0013】
本発明の冷凍フリッターの製造方法は、具材に有機酸モノグリセリドを含有する分散液Aを塗布し、次いで、有機酸モノグリセリドを含有する分散液Bと小麦粉とを混合して得られたバッター液を塗布した後、該具材を油ちょうして得られるフリッターを冷凍することを特徴とする。
なお、本発明において、「塗布」とは、「こすりつけて付着させる」という狭義の塗布をさすのではなく、様々な方法で「付着させる」という広義の塗布をさし、その付着手段には特に制限はない。
【0014】
1.具材
本発明において、冷凍フリッターを製造する具材としては、例えば、以下のようなものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0015】
野菜類:ナス、カボチャ、エンドウ、インゲン、ズッキーニなどの果菜類;ジャガイモ、ニンジン、サツマイモ等の根菜類;アスパラガス、タマネギなどの茎菜類;ブロッコリー、カリフラワーなどの花菜類
肉類:牛肉、豚肉などの畜肉類;鳥肉類
魚介類:アジ、サケ、タラなどの魚類;ホタテ、カキなどの貝類;イカ、タコ、エビ、カニなど
その他:鶏卵等の卵;ハム、ソーセージ等の加工品
【0016】
具材は必要に応じて、各々前処理が施される。
例えば、野菜は、必要に応じて、洗浄、皮剥き、面取り、その他不要部分の除去といった前処理が施される。
肉類は、必要に応じて、骨の除去、皮剥ぎ、下味付けといった前処理が施される。
魚介類は、必要に応じて、骨、エラの除去、皮剥ぎ、下味付けといった前処理が施される。
【0017】
また、具材は、適当な大きさにカットする。この際、油ちょう時に熱を均一に通すために大きさや切り方を揃えるようにする。
【0018】
2.有機酸モノグリセリドを含有する分散液
本発明で使用する有機酸モノグリセリドを含有する分散液(以下、有機酸モノグリセリド含有分散液という場合がある)について説明する。
【0019】
本発明で用いる有機酸モノグリセリド含有分散液Aと、有機酸モノグリセリド含有分散液Bとは、以下に説明する本発明に係る有機酸モノグリセリド含有分散液の好適組成において、異なる成分組成のものであってもよく、同一の成分組成のものであってもよいが、好ましくは、同一の成分組成の有機酸モノグリセリド含有分散液を調製し、この有機酸モノグリセリド含有分散液に、それぞれの用途(具材に塗布する有機酸モノグリセリド含有分散液Aか、小麦粉と混合してバッター液とする有機酸モノグリセリド含有分散液Bか)に応じて、水で希釈したり、必要な添加成分を添加することが好ましい。
【0020】
本発明に係る有機酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と有機酸1分子が結合した構造を有し、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18のモノグリセリドの反応では、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、その他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物をそのまま使用してもよく、有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用してもよい。また、有機酸部分が一部中和されたものを使用してもよい。
【0021】
有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、乳酸などが挙げられる。これらの中では、食品用途に使用されるコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、特に風味の点からコハク酸が好ましい。
【0022】
上記脂肪酸モノグリセリド由来の、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数8〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では風味の観点からステアリン酸を主成分とする脂肪酸が好ましく、特に構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸であるものが好ましい。
【0023】
有機酸モノグリセリドとしては1種のみを用いてもよく、これを構成する有機酸や脂肪酸が異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0024】
上記の有機酸モノグリセリドと水との混合物は、これらの量比、温度変化により様々な相状態をとることが可能である。これらの相状態のうち、本発明ではラメラ構造体(ラメラ液晶構造体)を利用することが好ましい。
【0025】
ラメラ構造体とは、有機酸モノグリセリドを水に分散させた際に有機酸モノグリセリド2分子が親水基部分を水側に向け、疎水基部分(脂肪酸)が互いに向き合い、これが2次元的に広がった構造のことである。
【0026】
有機酸モノグリセリドは低濃度から高濃度領域の広い範囲でラメラ構造を形成し易いことが知られている。例えば、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドは、ナトリウム塩の状態において、濃度が約35〜85重量%のような高濃度領域で且つ温度が50℃以上の条件でラメラ構造体を形成する。この場合、ラメラ構造体が何層にも重なった状態が認められ、水溶液の粘度も高くなる。濃度が85重量%よりも高い場合は固体状態となり、濃度が35重量%よりも低い場合は水溶液にラメラ構造体が分散して粘性が比較的小さい状態となる。作業性などを考慮すると、低濃度かつ高温領域でラメラ構造体を形成させることが好ましい。
【0027】
ラメラ構造体は、有機酸モノグリセリドを水などの分散媒中に分散させ、物理的に撹拌し加熱することにより、分散液として調製することができる。この際の加熱温度は、分散液の温度で、通常45℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。上記の物理的分散には、例えば、気泡の混入を避けるため、アンカーミキサー等を使用してゆっくりと撹拌することが好ましい。
【0028】
このようにして得られるラメラ構造体を製造するための分散液(以下、ラメラ構造体分散液という場合がある)中の有機酸モノグリセリドの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常99.9重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0029】
さらに、ラメラ構造体の安定性を高めるために、又は水中での分散性を向上させるために、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤の1種又は2種以上を用いることができる。安定化されたラメラ構造体は、親水基部分の強い水和力により層間に多量の水を保持する。
【0030】
乳化剤を用いる場合、具体的には、該乳化剤をエタノール、水、糖類の水溶液などの分散媒に分散させた分散液と、上記ラメラ構造体水分散液とを混合させてもよいし、直接、ラメラ構造体水分散液に該乳化剤を添加してもよい。
【0031】
有機酸モノグリセリド含有分散液中の有機酸モノグリセリドの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。有機酸モノグリセリドの含有量が過度に少ない場合は、本発明による食感向上効果が不十分となり、過度に多い場合は、有機酸モノグリセリドが水(分散媒)中に均一に分散しなくなる場合がある。
【0032】
有機酸モノグリセリド含有分散液には、糖類及び/又は乳化剤を含有していてもよい。
有機酸モノグリセリド含有分散液には、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤の1種又は2種以上が含まれていることが好ましい。特に、有機酸モノグリセリドをラメラ構造体として使用する場合は、乳化剤を使用することで上記のとおりラメラ構造体の安定性を高めることができる。
【0033】
有機酸モノグリセリド含有分散液に用いるショ糖脂肪酸エステルとしては、親水性が高く、水分散性に優れ、高温で高粘性の水分散液の状態となるものが好ましい。このようなショ糖脂肪酸エステルとして具体的には、構成脂肪酸として、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数14〜22の飽和または不飽和の脂肪酸を有するショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。これらの中では、炭素数14〜18の飽和脂肪酸を有するものが、風味や酸化安定性の観点から好ましい。また、構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸である脂肪酸を有するものが、風味の点から更に好ましい。また、親水性の点では、HLB値が通常5以上、好ましくは8以上、通常18以下、好ましくは15以下のショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
【0034】
有機酸モノグリセリド含有分散液に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルも、ショ糖脂肪酸エステルと同様に、親水性が高く、水分散性に優れ、高温で高粘性の水分散液の状態となるものが好ましい。斯かるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリリンの平均重合度が通常2〜20、特に3〜10のものが好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が前記ショ糖脂肪酸エステルと同様に炭素数14〜22の飽和または不飽和の脂肪酸を有するポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。また、構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルが風味の点から更に好ましい。また、親水性の点では、HLB値が通常5以上、好ましくは9以上、通常18以下、好ましくは16以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0035】
ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を用いる場合、有機酸モノグリセリド含有分散液中の乳化剤の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。乳化剤の含有量がこの範囲にあることにより、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散性がより向上する。
【0036】
また、有機酸モノグリセリド含有分散液中において、有機酸モノグリセリドに対する乳化剤の含有量(重量比)は、通常500:1〜1:500、好ましくは100:1〜1:100、さらに好ましくは3:1〜1:3の範囲である。有機酸モノグリセリドに対する乳化剤の含有量(重量比)は、1:1であることがより好ましいが、さらには乳化剤よりも有機酸モノグリセリドが多い方が好ましく、乳化剤に対して有機酸モノグリセリドを1.5倍以上含有することが好ましく、2倍以上含有することがより好ましい。
【0037】
本発明で用いる有機酸モノグリセリド含有分散液は、糖類の1種又は2種以上を含んでいてもよく、糖類を含むことにより、ラメラ構造体の分散安定性が良好となる。
【0038】
糖類としては、特に制限されず、砂糖、ブドウ糖、異性化糖、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖及び糖アルコール;各種オリゴ糖;それらの混合物を使用することができる。これらの中ではオリゴ糖が好ましい。
【0039】
上記のオリゴ糖としては、マルトオリゴ糖(好ましくは重合度3〜7)、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、それらのシラップ等が挙げられる。上記の糖類は、目的に応じ、適宜選択して使用され、冷凍耐性を向上させる場合にはオリゴ糖や糖アルコールが好ましく、該オリゴ糖の中ではマルトオリゴ糖が好ましい。
【0040】
糖類は、糖類の水溶液として使用することが好ましく、例えばシラップの場合はそのまま使用することもできる。
【0041】
また、上記乳化剤と糖類を用いる場合は、前述の乳化剤の分散液と糖類の水溶液を混合した後、ラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液と混合してもよいし、乳化剤の分散液に糖類を添加または糖類の水溶液に乳化剤を添加した後に、これらの分散液または水溶液とラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液とを混合してもよい。
【0042】
ラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液と、乳化剤の分散液、糖類の水溶液またはこれらの混合物とを混合する場合は、乳化剤の分散液、糖類の水溶液またはこれらの混合物を通常45℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下に加熱して用いてもよい。
【0043】
糖類を用いる場合、有機酸モノグリセリド含有分散液中の糖類の含有量は、通常35重量%以上、好ましくは40重量%以上、通常85重量%以下、好ましくは60重量%以下である。糖類の含有量が上記下限以上であることにより、よりラメラ構造体の分散安定性が向上し、上記上限以下であることにより、糖の種類によって結晶が析出したり、粘度が高くなるなどの問題点が生じ難くなる。
【0044】
また、有機酸モノグリセリド含有分散液中において、有機酸モノグリセリドに対する糖類の含有量は、有機酸モノグリセリド:糖類(重量比)=10:7〜1:850の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:4〜1:20の範囲である。
【0045】
本発明の効果を損なわない範囲において、有機酸モノグリセリド含有分散液には、前記以外の他の乳化剤、甘味料、香料、ビタミン、抗酸化剤、アルコールなどの公知の配合剤の1種又は2種以上が含まれていてもよい。その他の乳化剤としては、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0046】
有機酸モノグリセリド含有分散液中の水(分散媒)の含有量は、通常30重量%以上、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。水の含有量が少な過ぎると、水分散液の粘度増大により作業性が悪くなり、多過ぎると、相対的にラメラ構造体の量が少なくなるため、本発明による食感向上効果が低下する場合がある。
【0047】
ラメラ構造体が形成されているか否かの確認は例えば偏光顕微鏡による観察によって容易に行うことができる。ラメラ構造体が存在する場合は偏光十字が見られる。更に、ラメラ構造体の微細構造は、電子顕微鏡観察により観察することができる。例えば試料を液体窒素で凍結させ、高真空条件下で割断し、割断表面に金属を蒸着させることにより試料のレプリカを作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察する。これにより層状のラメラ構造体を観察することができる。
【0048】
3.下処理液
上記の有機酸モノグリセリド含有分散液である有機酸モノグリセリド含有分散液Aは、必要に応じて水と、塩、コショウ、醤油等の調味料を添加して調製された下処理液として具材に塗布することが好ましい。
【0049】
この下処理液は、上記の有機酸モノグリセリド含有分散液である有機酸モノグリセリド含有分散液Aを好ましくは水で2〜10倍に希釈すると共に、必要に応じて塩、コショウ、醤油等の調味料を添加して調製される。
【0050】
このようにして調製される下処理液中の有機酸モノグリセリドの含有量は、本発明による食感向上効果を十分に得る上で0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。下処理液の粘度増大抑制(具材への過剰な下処理液の塗布抑制)の観点から、下処理液の有機酸モノグリセリドの含有量の上限は、通常3重量%以下、好ましくは2重量%以下、特に好ましくは、1重量%以下である。
【0051】
4.バッター液
本発明で用いるバッター液は、上記の有機酸モノグリセリド含有分散液である有機酸モノグリセリド含有分散液Bに、小麦粉を混合して調製される。好ましくは、バッター液は、有機酸モノグリセリド含有分散液Bを混合すること以外は、通常、フリッターに用いられるバッター液と同様に、薄力粉を主成分とし、必要に応じて、コーンスターチ、コーンフラワー、粉末全卵又は卵液、マヨネーズ、ケチャップ、牛乳、果汁、野菜汁、食塩、コショウ、味噌、正油、糖類などの調味料、着色剤、香料、食物繊維、増粘剤、膨張剤、更に必要に応じて水を混合して調製される。バッター液には、ネギ、ショウガ、青ノリなどを混合してもよい。
【0052】
有機酸モノグリセリド含有分散液Bは、バッター液中の含有量が0.01重量%以上、特に0.1重量%以上、とりわけ0.5重量%以上で、5重量%以下、特に3重量%以下、とりわけ1重量%以下となるように、小麦粉等と混合される。
【0053】
このようにして調製されるバッター液中の有機酸モノグリセリドの含有量は、本発明による食感向上効果を十分に得る上で0.00035重量%以上が好ましく、0.0035重量%以上がより好ましく、0.0175重量%以上が特に好ましい。具材への過剰なバッター液の塗布抑制の観点から、バッター液の有機酸モノグリセリドの含有量の上限は、通常0.175重量%以下、好ましくは0.105重量%以下、特に好ましくは、0.035重量%以下である。
【0054】
5.具材への適用
本発明の冷凍フリッターの製造方法では、まず、具材に有機酸モノグリセリド含有分散液Aを含む下処理液を塗布する。具材への下処理液の塗布方法には特に制限はなく、具材に対して下処理液を滴下する、スプレーする、刷毛塗りするなどの方法を採用することもできるが、下処理液に具材を浸漬することで下処理液を塗布する方法が、簡便かつ効率的に具材全体に万遍なく下処理液を塗布することができ、好ましい。
【0055】
この場合、具材を下処理液に浸漬した後、必要に応じて所定時間(例えば10分〜一晩程度)保持して下処理液の成分を具材に浸透させるようにしてもよい。用いる下処理液量には特に制限はないが、通常、具材100重量部に対して50〜500重量部程度とすることが好ましい。
【0056】
このようにして、具材に下処理液を塗布した後は、常法に従って具材にバッター液を塗布する。バッター液の塗布量は、具材の種類に応じて適宜調整される。通常、バッター液は具材100重量部に対して、50〜300重量部程度付着させることが好ましい。
【0057】
6.油ちょう
バッター液を塗布した具材は、油温150〜190℃程度の範囲において、30秒〜5分程度、具材の種類に適した温度及び時間で油ちょうしてフリッターを製造する。この油ちょうは、油温を変えて2段階以上の多段に行ってもよい。
【0058】
油ちょうには、一般的な食用油脂を用いることができる。食用油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、ひまわり油、綿実油、落花生油、米油、トウモロコシ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、オリーブ核油、カカオ脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂等の1種又は2種以上を混合したものが挙げられる。
【0059】
7.冷凍
製造されたフリッターを常法に従って−15℃〜−30℃に冷却して冷凍し、保存する。この際、緩慢冷凍、急速冷凍のいずれをも採用することができるが、急速冷凍の方が氷晶の粗大化を抑制できることから好ましい。
【0060】
8.解凍・加熱調理
本発明により製造された冷凍フリッターの解凍方法としては、具材の種類や加熱処理の種類などに応じて、室温での放置による自然解凍、冷蔵庫の中で一晩から一昼夜置く庫内解凍、電子レンジによる解凍、流水や湯煎(沸騰水)による解凍などを採用することができる。また、加熱調理は、電子レンジであってもよく、オーブン加熱で行うこともできる。予め解凍を行うことなく、直接加熱して解凍と共に加熱調理を行うこともできる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「%」及び「部」は何れも重量基準を意味する。
【0062】
[エビフリッターの製造]
(実施例1)
HLB11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製「リョートー(登録商標)シュガーエステルS−1170」)3.5部を室温で糖類の水溶液としてマルトオリゴ糖水溶液(三和澱粉工業社製「オリゴトース」、マルトオリゴ糖固形分72重量%)60部と水8部の混合液68部に分散し、撹拌しながら加温して75℃まで昇温した(以下「オリゴ糖液」と呼ぶ)。
【0063】
一方、コハク酸モノグリセリド(理研ビタミン社製「ポエムB−30」、脂肪酸としてステアリン酸を用いたもの)3.5部を脱塩水25部に分散し、60℃まで昇温しながら撹拌し、ラメラ構造体の水分散液を得た。
前記のオリゴ糖液を55℃まで冷却し、上記のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散液を加えて20分間撹拌した。次いで、45℃まで冷却することにより、ラメラ構造体の水分散液を調製した(以下「組成物I」と呼ぶ)。なお、組成物Iのコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。偏光顕微鏡の写真中に偏光十字が観察され、組成物Iがラメラ構造体を有していることがわかった。
【0064】
この組成物Iは、ショ糖ステアリン酸エステルを3.5重量%、マルトオリゴ糖を43重量%、コハク酸モノグリセリドのラメラ構造体を3.5重量%含むものである。
【0065】
上記組成物Iと水、食塩、コショウを表1に示した量で混合した下処理液を調製した。チャック付ビニール袋にエビ100部と該下処理液を入れ、密封して冷蔵庫内で1時間半放置した。エビを取り出し余分な水分を切った後、表1に示した組成のバッター液を絡めた。その後、バッター液が絡まったエビを、菜種油とパーム油の混合物を用いて160〜170℃で2分半揚げてフリッターとし、室温まで放冷後に−24℃で急速冷凍した。
【0066】
冷凍保存1日後に冷凍フリッターを電子レンジ(500W、2分)及びオーブントースター(750W、7分半)でそれぞれ解凍・加熱調理して食感及び風味を評価した。評価結果を表2に示す。
【0067】
(比較例1)
表1に示すように、バッター液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷凍フリッターを得て、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表2に示す。
【0068】
(比較例2)
表1に示すように、下処理液中に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷凍フリッターを得て、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表2に示す。
【0069】
(比較例3)
表1に示すように、下処理液及びバッター液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷凍フリッターを得て、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
[鶏ささみフリッターの製造]
(実施例2)
実施例1で調製された組成物Iと水、食塩、コショウを表3に示した量で混合した下処理液を調製した。チャック付ビニール袋に、筋を取り8等分にカットした鶏ささみ150部と上記下処理液を入れ、密封し冷蔵庫内で1時間放置した。鶏ささみを取り出し、余分な水分を切った後、表3に示した組成のバッター液を絡めた。その後、バッター液を絡めた鶏ささみを菜種油とパーム油の混合物を用いて180℃で3分揚げ、室温まで放冷後に−24℃で急速冷凍した。
【0073】
揚げ直後の鶏ささみフリッターと、急速冷凍し、冷凍保存1日後及び1ヶ月後の鶏ささみフリッターを、オーブントースター(750W、7分半)で解凍・加熱調理したものについて、それぞれ食感及び風味を評価した。評価結果を表4に示す。
【0074】
(比較例4)
表3に示すように、バッター液中に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして鶏ささみフリッター及びその冷凍フリッターを得、揚げ直後、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表4に示す。
【0075】
(比較例5)
表3に示すように、下処理液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして鶏ささみフリッター及びその冷凍フリッターを得、揚げ直後、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表4に示す。
【0076】
(比較例6)
表3に示すように、下処理液及びバッター液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして鶏ささみフリッター及びその冷凍フリッターを得、揚げ直後、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表4に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
[イカフリッターの製造]
(実施例3)
チャック付ビニール袋に皮を剥き斜めに切り込みを入れ3cm角に切って水気をとったイカ100部と表5に示した組成の下処理液を入れ、密封して冷蔵庫内で2時間放置した。イカを取り出し余分な水分をとった後、薄力粉を振り表5に示した組成のバッター液に漬けた後、引き上げ、菜種油とパーム油の混合物を用いて160℃で3分揚げ、室温まで放冷後に−24℃で急速冷凍した。
【0080】
揚げ直後のイカフリッターと、冷凍保存1日後及び1ヶ月後のイカフリッターをオーブントースター(750W、7分半)で解凍・加熱調理したものについて、それぞれ食感及び風味を評価した。評価結果を表6に示す。
【0081】
(比較例7)
表5に示すように、バッター液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にしてイカフリッター及びその冷凍フリッターを得、揚げ直後、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表6に示す。
【0082】
(比較例8)
表5に示すように、下処理液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にしてイカフリッター及びその冷凍フリッターを得、揚げ直後、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表6に示す。
【0083】
(比較例9)
表5に示すように、下処理液及びバッター液に組成物Iを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にしてイカフリッター及びその冷凍フリッターを得、揚げ直後、解凍・加熱調理後の食感及び風味を評価した。評価結果を表6に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
以上の結果から、本発明によれば、油ちょう直後、冷凍後のいずれにおいても、具材自体の食感が良好で、味もよく、フリッターとしての食感及び風味も良好な冷凍フリッターを提供することができることが分かる。