(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ処理部は、前記1又は複数のグループのそれぞれについて前記移動方向を算出し、算出した前記移動方向の代表値を前記波の向きとして推定する、請求項1記載の波浪計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば海上無人航走体(ASV:Autonomous Surface Vehicle)のように全長10m程度又はそれ未満の比較的小型の船舶を航走させる際には、海面からの高さが1mに満たないような比較的小さな波であっても、側方から船体に作用した場合には船体に動揺が発生し、航走の安定性が損なわれるおそれがある。このため、そのような小型の船舶を航走させる場合には、船舶の周囲の波浪、特に波の向きを精度良く計測することが求められる。
【0005】
これに対し、データセンターから伝達される海象情報は、広域的な情報に過ぎないため、広域的な航路計画には利用できても、局所的に変化する波浪を精度良く計測することが求められる場合には適していない。また、上記特許文献1に記載の波浪計測装置では、解像度が低い電波式レーダを用いているため、小さな波を安定して精度良く計測することは困難である。さらに、比較的小さな波の形状は数秒程度の間に変化する場合があるが、電波式レーダの毎分当たりの検出回数は数十回程度であるため、数回の検出の間に波の形状が大きく変化してしまい、波浪を精度良く計測することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、船舶の周囲の波の向きを精度良く計測できる波浪計測装置、自動操船装置、及び波浪計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波浪計測装置は、船舶の周囲の海面にレーザ光を出射し、出射したレーザ光の反射光を受光するレーザレーダと、レーザレーダの検出結果に基づいて船舶の周囲の波の向きを推定するデータ処理部と、を備え、データ処理部は、レーザレーダで検出した対象物の位置を時系列で重ね合わせたデータにおいて、互いに所定の範囲内に位置する複数の対象物ごとにグルーピングして1又は複数のグループを形成し、1又は複数のグループにおける複数の対象物の移動方向から波の向きを推定する。
【0008】
この波浪計測装置では、レーザレーダにより、船舶の周囲の波を含む対象物の位置が検出される。レーザレーダは、電波式のレーダに比べて解像度が高いため、小さな波をも安定して検出することができる。レーザレーダは、例えば毎秒10回以上の検出回数ともなる短い検出周期で対象物を検出できるため、波の形状が変化するまでの間に、波の向きを計測するのに十分な量のデータを得ることができる。そして、この波浪計測装置では、例えば船舶の周囲に1つの波が生じた場合には、対象物の位置を時系列で重ね合わせたデータにおいて、この波が複数の対象物として表されてグループ化され、グループ化された複数の対象物の移動方向から波の向きが推定される。すなわち、高い解像度、かつ短い検出周期で検出されたレーザレーダの検出結果を空間的及び時間的に処理することにより、波の向きを推定することができる。したがって、船舶の周囲の波の向きを精度良く計測することが可能となる。
【0009】
本発明の波浪計測装置では、データ処理部は、1又は複数のグループのそれぞれについて移動方向を算出し、算出した移動方向の代表値を波の向きとして推定してもよい。この構成によれば、複数の波の移動方向を代表する方向が船舶の周囲の波の向きとして推定されるので、船舶の周囲の波の向きを更に精度良く計測することが可能となる。
【0010】
本発明の波浪計測装置では、データ処理部は、レーザレーダで検出した対象物のうち、反射光が検出された領域の面積が所定面積よりも大きい対象物を、グルーピングの対象から除外してもよい。この構成では、他の船舶、海面上の浮遊物や固定物、及び堤防等は波と比較して反射光が検出された領域の面積が大きくなることから、それらに対応する対象物についてはグルーピングの対象から除外される。その結果、波に対応する対象物のみがグルーピングの対象となるように対象物を特定することができ、船舶の周囲の波の向きを一層精度良く計測することが可能となる。
【0011】
本発明の自動操船装置は、上記波浪計測装置と、船舶の操舵を行う操舵装置と、操舵装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、推定された波の向きと船舶の進行方向との間の角度、又は推定された波の向きとは反対の向きと船舶の進行方向との間の角度が所定角度よりも小さくなるように、操舵装置を制御する。この自動操船装置によれば、船舶の進行方向と波の向き又は波の向きとは反対の向きとの間の角度が所定角度よりも小さくなるように船舶が操舵されるため、波が側方から船体に作用して船体に動揺が発生することを抑制でき、航走の安定化が可能となる。
【0012】
本発明の波浪計測方法は、レーザレーダにより、船舶の周囲の海面にレーザ光を出射し、出射したレーザ光の反射光を受光する工程と、レーザレーダで検出した対象物の位置を時系列で重ね合わせたデータにおいて、互いに所定の範囲内に位置する複数の対象物ごとにグルーピングして1又は複数のグループを形成する工程と、1又は複数のグループにおける複数の対象物の移動方向から波の向きを推定する工程と、を含む。
【0013】
この波浪計測方法では、レーザレーダにより、船舶の周囲の波を含む対象物の位置が検出される。レーザレーダは、電波式のレーダに比べて解像度が高いため、小さな波をも安定して検出することができる。レーザレーダは、例えば毎秒10回以上の検出回数ともなる短い検出周期で対象物を検出できるため、波の形状が変化するまでの間に、波の向きを計測するのに十分な量のデータを得ることができる。そして、この波浪計測方法では、例えば船舶の周囲に1つの波が生じた場合には、対象物の位置を時系列で重ね合わせたデータにおいて、この波が複数の対象物として表されてグループ化され、グループ化された複数の対象物の移動方向から波の向きが推定される。すなわち、高い解像度、かつ短い検出周期で検出されたレーザレーダの検出結果を空間的及び時間的に処理することにより、波の向きを推定することができる。したがって、船舶の周囲の波の向きを精度良く計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、船舶の周囲の波の向きを精度良く計測できる波浪計測装置、自動操船装置、及び波浪計測方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
図1に示される自動操船装置1は、例えば海上無人航走体Vに搭載され、海上無人航走体Vの航走を制御する。海上無人航走体Vは、例えば全長10m程度又はそれ未満の船体2を備える比較的小型の船舶である。海上無人航走体Vは、自動操船装置1によって自動制御されることで、海面S上を自律航走する。
【0018】
自動操船装置1は、波浪計測装置4と、推進操舵装置5と、を備えている。波浪計測装置4は、レーザレーダ10と、制御装置20のデータ処理部21と、を含んで構成されている。波浪計測装置4は、レーザレーダ10を用いて海上無人航走体Vの周囲の波浪を計測する(例えば、波の向き及び速度等を計測する)。
【0019】
レーザレーダ10は、レーザ光を利用して検出対象の位置情報を検出するセンサである。レーザレーダ10は、船体2の所定の箇所に取り付けられている。レーザレーダ10は、データ処理部21と電気的に接続されており、検出結果をデータ処理部21に出力する。レーザレーダ10は、例えば毎秒10回以上の検出回数を有している。
【0020】
レーザレーダ10は、海上無人航走体Vの周囲の海面Sにレーザ光Lを出射し、出射した当該レーザ光Lの反射光を受光する。これにより、レーザレーダ10は、海面S上の複数の測定点における反射強度を検出する。ここでのレーザレーダ10は、水平方向及び鉛直方向についての3次元的な検出が可能な3次元レーダとなっている。つまり、レーザレーダ10は、海上無人航走体Vの周囲の所定の測定空間において、位置及び反射強度に関する情報を検出する。
【0021】
そのようなレーザレーダ10は、例えば、互いに交差する2軸回りに回転し、レーザ光Lを水平方向及び鉛直方向のそれぞれに走査するスキャナにより構成される。なお、レーザレーダ10の構成はこれに限定されず、レーザレーダ10は、例えば回転プリズム等を用いて構成されてもよい。
【0022】
制御装置20は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)等を含むコンピュータにより構成されている。制御装置20は、その機能的構成として、データ処理部21と、航走制御部22と、を含んでいる。
【0023】
データ処理部21は、レーザレーダ10から受け付けた検出結果を、検出時刻と関連付けてRAM(記憶部)に記憶する。データ処理部21は、RAMに記憶されたレーザレーダ10の検出結果に基づいて、海上無人航走体Vの周囲の波の向きを推定する。航走制御部22は、推進操舵装置5と電気的に接続されており、データ処理部21により推定された波の向きを利用して海上無人航走体Vの推進及び操舵に関する制御を実行する。データ処理部21及び航走制御部22による処理の詳細については後述する。
【0024】
推進操舵装置5は、海上無人航走体Vに推進力を与えて推進させると共に、海上無人航走体Vの操舵を行う装置である。推進操舵装置5は、例えば、推進装置としての推進器と、操舵装置としての舵と、を含んで構成されている。推進操舵装置5は、例えば船体2の船尾に取り付けられている。
【0025】
図2〜
図6を参照して、海上無人航走体Vの周囲の波の向きを計測し、海上無人航走体Vの操舵制御を実行する際の処理を説明する。
図2は、当該処理を実行する際の処理フローを示すフローチャートである。
図2に示される処理は、例えば海上無人航走体Vの航走中に逐次に実行されてもよいし、或いは所定の条件が満たされた際(例えば、船体2の揺れが所定量よりも大きくなったとき)に実行されてもよい。
【0026】
まず、レーザレーダ10により、海上無人航走体Vの周囲における所定の測定空間の位置及び反射強度に関する情報を検出する(ステップS1)。次いで、データ処理部21は、レーザレーダ10で検出された情報に基づいて、反射光が検出された領域を表す画像データD1を生成する(ステップS2)。
【0027】
図3に示されるように、画像データD1においては、反射光が検出された領域が、水平面に沿う2次元座標上に表されている。換言すると、画像データD1は、海上無人航走体Vの周囲における所定の測定空間を俯瞰した俯瞰画像として表されている。データ処理部21は、反射強度が所定の閾値以上である測定点については反射光が検出されたと判断する一方で、反射強度が当該閾値よりも小さい測定点については反射光が検出されなかったと判断し、反射光が検出された測定点を当該座標上にプロットすることで、画像データD1を生成する。画像データD1において、反射光が検出された領域は、レーザレーダ10により検出された対象物6の位置及び大きさを表している。
【0028】
レーザレーダ10によって検出される対象物6としては、海上無人航走体Vの周囲の波7の他、他の船舶8、海面S上の浮遊物、及び堤防等の固定物等が挙げられる。通常、レーザ光Lは海面Sにおいて鏡面反射するため、波7からの反射光がレーザレーダ10により受光されるのは、波7の頂点部において気泡が広がっている箇所にレーザ光Lが入射した場合に限られる。このような気泡の広がりは、波頂線と呼ばれる場合もある。波頂線は、例えば波の進行方向と略直交する方向に略連続的に延びる波頭、又は当該波頭によって生じる水泡である。一方、他の船舶8、海面S上の浮遊物、及び固定物等は、波7よりも大きな広がりを有して検出される。
【0029】
次いで、データ処理部21は、画像データD1において、反射光が検出された領域の面積が所定面積よりも大きい対象物6を特定し、特定した対象物6を処理対象から除外する(ステップS3)。所定面積の大きさは、例えば、経験則に基づいて、波7の頂点部に生じる気泡の広がりよりも大きく、かつ他の船舶8、海面S上の浮遊物、及び固定物等の投影面積よりも小さくなるように設定される。所定面積は、例えば1m2程度の値に設定される。
【0030】
次いで、データ処理部21は、画像データD1を時系列で重ね合わせた画像データD2を生成する(
図4及び
図5参照、ステップS4)。例えばステップS4では、1秒間隔で取得された時間的に連続する5個の画像データD1を重ね合わせることにより、画像データD2を生成する。
図5に示される例では、取得された時刻tが0秒、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒の5個の画像データD1が重ね合わされることで、0.5秒の時間幅の画像データD2が生成されている。画像データD1は、絶対座標が互いに一致するように位置決めして重ね合わされている。なお、重ね合わせられる画像データD1の個数及び時間間隔は任意に変更されてよく、例えば0.3秒間隔で取得された10個の画像データD1が重ね合わせられることで、3秒の時間幅の画像データD2が生成されてもよい。また、データ処理部21は、重ね合わせに必要な量の画像データD1がRAMに記憶されていない場合には、ステップS2の処理に戻ってもよい。
【0031】
次いで、データ処理部21は、画像データD2において、互いに所定の範囲内に位置する複数の対象物6ごとにグルーピングして1又は複数のグループ30を形成する(ステップS5)。例えば、画像データD2の座標上において、予め定められた規定数以上の対象物6を囲い、かつ所定の範囲に対応する所定半径を有するサークルを探索する。そして、当該探索により得られたサークル内に所在する複数の対象物6を、1つのグループとしてグルーピングする。これにより、
図5に示されるように、波7は通常一定の向きAに移動していることから、1つの波7が逐次に検出されて表れた複数の対象物6が1つのグループ30を構成するように、グルーピングがなされることとなる。
【0032】
所定の範囲は、予め設定された値であり、固定値であってもよいし、変動値であってもよい。所定の範囲は、例えば経験、理論又はシミュレーション等に基づき得ることができる。所定の範囲としては、例えば、通常の波が画像データD2の時間幅の間に進む距離に対応する範囲とすることができる。所定の範囲としては、例えば、半径5m程度の円領域とすることができる。
【0033】
次いで、データ処理部21は、1又は複数のグループ30のそれぞれについて、対象物6の速度ベクトル31を算出する(ステップS6)。速度ベクトル31の向きは、グループ30に含まれる複数の対象物6の移動方向を表し、速度ベクトル31の大きさは、グループ30に含まれる複数の対象物6の移動速度を表す。データ処理部21は、例えば、1つのグループ30に含まれる複数の対象物6に対して最小二乗法等により一次直線をフィッティングし、得られた近似式と各時刻における対象物6の位置とから速度ベクトル31を算出する。
【0034】
次いで、データ処理部21は、各グループ30の速度ベクトル31を代表する代表速度ベクトルを算出し、算出した代表速度ベクトルの向きを海上無人航走体Vの周囲の波7の向きとして推定する(ステップS7)。データ処理部21は、例えば、速度ベクトル31の向きと大きさのそれぞれについて代表値(平均値、中央値、又は最頻値等)を算出することで、代表速度ベクトルを算出する。なお、平均値とは、データの総和をデータの個数で除して得られる値である。中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたときに順番が中央となる値である。最頻値とは、データにおいて最も頻繁に現れる値である。
【0035】
次いで、航走制御部22は、推定された波7の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度、又は推定された波7の向きとは反対の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度が所定角度(例えば、30度)よりも小さくなるように、推進操舵装置5を制御する(
図6、ステップS8)。前者の制御は、
図6に実線で示されるように海上無人航走体Vの船首を進行方向Bに向ける場合に採用され、後者の制御は、
図6に破線で示されるように海上無人航走体Vの船尾を進行方向Bに向ける場合に採用される。
【0036】
例えば、
図6に実線で示される例では、航走制御部22は、推定された波7の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度θが所定角度よりも小さくなるように、推進操舵装置5を制御している。この場合、推定された波7の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとを大まかに一致(所定角度までの偏差を許容しつつ一致)させることができる。所定角度は、予め設定された値であり、固定値であってもよいし、変動値であってもよい。所定角度は、例えば経験、理論又はシミュレーション等に基づき得ることができる。
【0037】
以上、本実施形態の波浪計測装置4は、海上無人航走体Vの周囲の海面Sにレーザ光を出射し、出射したレーザ光の反射光を受光するレーザレーダ10と、レーザレーダ10の検出結果に基づいて海上無人航走体Vの周囲の波7の向きを推定するデータ処理部21と、を備えている。データ処理部21は、レーザレーダ10で検出した対象物6の位置を時系列で重ね合わせた画像データD2において、互いに所定の範囲内に位置する複数の対象物6ごとにグルーピングして1又は複数のグループ30を形成し、1又は複数のグループ30における複数の対象物6の移動方向から波7の向きを推定する。
【0038】
本実施形態の波浪計測方法は、レーザレーダ10により、海上無人航走体Vの周囲の海面Sにレーザ光を出射し、出射したレーザ光の反射光を受光する工程(ステップS1)と、レーザレーダ10で検出した対象物6の位置を時系列で重ね合わせた画像データD2において、互いに所定の範囲内に位置する複数の対象物6ごとにグルーピングして1又は複数のグループ30を形成する工程(ステップS5)と、1又は複数のグループ30における複数の対象物6の移動方向から波7の向きを推定する工程(ステップS7)と、を含んでいる。
【0039】
本実施形態の波浪計測装置4及び波浪計測方法では、レーザレーダ10により、海上無人航走体Vの周囲の波7を含む対象物6の位置が検出される。レーザレーダ10は、電波式のレーダに比べて解像度が高いため、小さな波7をも安定して検出することができる。レーザレーダ10は、例えば毎秒10回以上の検出回数ともなる短い検出周期で対象物6を検出できるため、波7の形状が変化するまでの間に、波7の向きを計測するのに十分な量の画像データD1を得ることができる。そして、本実施形態の波浪計測装置4及び波浪計測方法では、例えば海上無人航走体Vの周囲に1つの波7が生じた場合には、対象物6の位置を時系列で重ね合わせた画像データD2において、この波7が対象物6として表されてグループ化され、グループ化された複数の対象物6の移動方向から波7の向きが推定される。すなわち、高い解像度、かつ短い検出周期で検出されたレーザレーダ10の検出結果を空間的及び時間的に処理することにより、波7の向きを推定することができる。したがって、海上無人航走体Vの周囲の波7の向きを精度良く計測することが可能となる。
【0040】
波浪計測装置4では、データ処理部21は、1又は複数のグループ30のそれぞれについて移動方向を算出し、算出した移動方向の代表値を波7の向きとして推定している。これにより、複数の波7の移動方向を代表する方向が海上無人航走体Vの周囲の波7の向きして推定されるので、海上無人航走体Vの周囲の波7の向きを更に精度良く計測することが可能となる。
【0041】
波浪計測装置4では、データ処理部21は、レーザレーダ10で検出した対象物6のうち、反射光が検出された領域の面積が所定面積よりも大きい対象物6を、グルーピングの対象から除外している。これにより、他の船舶8、海面S上の浮遊物や固定物、及び堤防等は波7と比較して反射光が検出された領域の面積が大きくなることから、それらに対応する対象物6についてはグルーピングの対象から除外される。その結果、波7に対応する対象物6のみがグルーピングの対象となるように対象物6を特定することができ、海上無人航走体Vの周囲の波7の向きを一層精度良く計測することが可能となる。すなわち、レーザレーダ10による検出結果から波7の向きを精度良く計測するためには、検出された対象物6の中から波7とそれ以外とを識別する画像処理が必要となるが、本実施形態の波浪計測装置4では、レーザレーダ10の空間分解能及び時間分解能が高いため、対象物6の中から波7とそれ以外とを容易に且つ精度良く識別することができる。
【0042】
また、本実施形態の自動操船装置1は、上記波浪計測装置4と、海上無人航走体Vの操舵を行う推進操舵装置5と、推進操舵装置5を制御する航走制御部22と、を備えている。自動操船装置1において、航走制御部22は、推定された波7の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度、又は推定された波7の向きとは反対の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度が所定角度よりも小さくなるように、推進操舵装置5を制御する。これにより、海上無人航走体Vの進行方向Bと波7の向き又は波7の向きとは反対の向きとの間の角度が所定角度よりも小さくなるように海上無人航走体Vが操舵されるため、波7が側方から船体2に作用して船体2に動揺が発生することを抑制でき、航走の安定化が可能となる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、海上無人航走体Vに波浪計測装置4を搭載したが、有人の船舶に波浪計測装置4を搭載してもよく、この場合、当該船舶は人により操船されてもよい。
【0044】
上記実施形態では、海上無人航走体Vの周囲の波7の向きを海上無人航走体Vの操舵制御に利用したが、これに加えて、代表速度ベクトルの大きさから推定される波7の速度を海上無人航走体Vの操船制御に利用してもよい。例えば、波7の速度に応じて海上無人航走体Vの航走速度を変更する等の制御を実行してもよい。
【0045】
上記実施形態では、グループ30に含まれる複数の対象物6から速度ベクトル31を算出することにより当該複数の対象物6の移動方向及び移動速度を算出したが、速度ベクトル31を算出することなく移動方向のみを算出してもよい。例えば、グループ30に含まれる複数の対象物6に対して一次直線をフィッティングし、得られた近似式から当該グループ30に含まれる複数の対象物6の移動方向を算出してもよい。
【0046】
上記実施形態では、領域の面積が所定面積よりも大きい対象物6を除外した後、当該画像データD1を時系列で重ね合わせて画像データD2を生成したが、領域の面積が所定面積よりも大きい対象物6を除外していない画像データD1を重ね合わせて画像データD2を生成した後、画像データD2において領域の面積が所定面積よりも大きい対象物6を除外してもよい。
【0047】
上記実施形態のステップS8では、航走制御部22は、推定された波7の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度、又は推定された波7の向きとは反対の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとの間の角度が現在値よりも小さくなるように、推進操舵装置5を制御してもよい。この場合、推定された波7の向き又は波7の向きとは反対の向きと海上無人航走体Vの進行方向Bとが完全に一致するように、推進操舵装置5を制御してもよい。これらの場合においても、波7が側方から船体2に作用して船体2に動揺が発生することを抑制でき、航走の安定化が可能となる。