特許第6672847号(P6672847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6672847-吸収式ヒートポンプ装置 図000002
  • 特許6672847-吸収式ヒートポンプ装置 図000003
  • 特許6672847-吸収式ヒートポンプ装置 図000004
  • 特許6672847-吸収式ヒートポンプ装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672847
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】吸収式ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/02 20060101AFI20200316BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F25B27/02 K
   F25B39/04 Q
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-18764(P2016-18764)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-138048(P2017-138048A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】坪内 修
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/099726(WO,A1)
【文献】 特開2002−349990(JP,A)
【文献】 特開2013−019613(JP,A)
【文献】 特開2014−142103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/02
F25B 39/04
F25B 15/00
F25B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、
吸収液を加熱するための排熱を回収する排熱回収部と、
前記排熱回収部に設けられ、前記排熱回収部により回収された排熱を利用して加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を分離する気液分離部と、を備え
前記排熱回収部は、回収された排熱を利用して吸収液を加熱する熱交換部を有し、
前記熱交換部では、排熱の熱源となるガスが流れるガス流路と吸収液が流れる吸収液通路とが伝熱壁を隔てて交互に積層されており、
前記ガス流路は、前記熱交換部の内部で向きを変えられて前記熱交換部の底面部からガスを排出するように構成されている、吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項2】
吸収液から分離された冷媒蒸気を凝縮させる凝縮器をさらに備え、
前記気液分離部は、前記排熱回収部により加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を前記凝縮器側に透過させる冷媒蒸気透過膜を有する、請求項1に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記凝縮器は、前記気液分離部に隣接して配置されている、請求項2に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記冷媒蒸気透過膜は、前記排熱回収部と前記凝縮器との境界に設けられている、請求項2または3に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記排熱回収部に設けられ、加熱前の吸収液が貯留される吸収液貯留部をさらに備え、
加熱前の吸収液が前記吸収液貯留部から前記排熱回収部に導入されるとともに、前記排熱回収部内を流通して加熱された吸収液が前記排熱回収部から前記気液分離部における前記吸収液貯留部の上部空間に気液二相流の状態で流入するとともに、前記気液二相流に含まれる冷媒蒸気が前記冷媒蒸気透過膜を透過して前記凝縮器に移動されるように構成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒蒸発時の蒸気を吸収可能な吸収液を用いた吸収式ヒートポンプ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、吸収液の加熱を担う再生器、気液分離器、凝縮器、蒸発器および吸収器を備えた車載用吸収式ヒートポンプ装置(吸収式ヒートポンプ装置)が開示されている。この特許文献1に記載の車載用吸収式ヒートポンプ装置では、吸収器から再生器に戻された吸収液は、エンジンの排気ガスの排熱を利用して加熱されるように構成されている。また、再生器は、車両床下部の車外空間に配置される一方、再生器により加熱された吸収液から水蒸気を分離して吸収液の濃度を相対的に高める気液分離器は、再生器よりも上方となるエンジンルーム内に配置されている。そして、再生器と気液分離器とは、吸収液が流通する通路(配管部材)により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−19613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車載用吸収式ヒートポンプ装置では、車両床下部の車外空間に配置された再生器と、エンジンルーム内に配置された気液分離器とが通路(配管部材)により接続されるため、再生器により吸収液に回収された排熱が、吸収液が配管部材を流通する際に外部(系外)に放熱されてしまう(熱損失が生じてしまう)と考えられる。また、配管部材を介在させて再生器の上方に気液分離器が配置されるため、再生器と気液分離器とが高さ方向に離間される分、エンジンルーム内における吸収式ヒートポンプ装置の高さ方向に占める割合が大きくなる。この点において、吸収式ヒートポンプ装置を構成する再生器、気液分離器および吸収器などの機器配置に関するレイアウトの自由度が損なわれる要因になる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、排熱回収時の熱損失を抑制しつつ、車両搭載時の機器配置に関するレイアウトの自由度を確保することが可能な吸収式ヒートポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における吸収式ヒートポンプ装置は、吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、吸収液を加熱するための排熱を回収する排熱回収部と、排熱回収部に設けられ、排熱回収部により回収された排熱を利用して加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を分離する気液分離部と、を備え、排熱回収部は、回収された排熱を利用して吸収液を加熱する熱交換部を有し、熱交換部では、排熱の熱源となるガスが流れるガス流路と吸収液が流れる吸収液通路とが伝熱壁を隔てて交互に積層されており、ガス流路は、熱交換部の内部で向きを変えられて熱交換部の底面部からガスを排出するように構成されている
【0008】
この発明の一の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記のように、排熱回収部に設けられ、排熱回収部により回収された排熱を利用して加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を分離する気液分離部を備える。これにより、排熱回収部と気液分離部との間に排熱回収された吸収液を移送するための通路(配管部材)を設ける必要がないので、加熱された吸収液に外部(系外)への熱損失を極力生じさせることなく吸収液から冷媒蒸気を分離することができる。また、排熱回収部に気液分離部を設けることによって、排熱回収部と気液分離部とが一体化される分、吸収式ヒートポンプ装置の高さ方向の寸法を小さくすることができるので、車両(エンジンルームなど)への搭載位置を柔軟にアレンジすることができる。これらの結果、排熱回収時の熱損失を抑制しつつ、吸収式ヒートポンプ装置を車両に搭載する際の機器配置に関するレイアウトの自由度を確保することができる。
【0009】
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、吸収液から分離された冷媒蒸気を凝縮させる凝縮器をさらに備え、気液分離部は、排熱回収部により加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を凝縮器側に透過させる冷媒蒸気透過膜を有する。
【0010】
このように構成すれば、冷媒蒸気透過膜が加熱された吸収液からの冷媒蒸気の分離機能を担うので、気液分離部自体に吸収液と冷媒蒸気とを互いに分離するための大きな空間(容積部分)を設ける必要がなくなる。したがって、気液分離部を含む排熱回収部(再生器)の小型化を図ることができる。また、冷媒蒸気透過膜を設けることによって、凝縮器への吸収液の流入を遮断することができるので、従来では再生器(気液分離部)および凝縮器側の圧力と吸収器側の圧力との差を利用して吸収液(濃液)を再生器から吸収器に送液(圧送)していた場合と異なり、排熱回収部(再生器)と吸収器との間を循環する吸収液の流量制御を送液ポンプを用いて容易に(柔軟に)行うことができる。加えて、従来では再生器(気液分離部)での吸収液の液面を一定にして凝縮器への流入を防止する制御を行っていた場合と異なり、このような液面を一定に保つ制御を省略することもできる。また、冷媒蒸気透過膜によって凝縮器への吸収液の流入が遮断されるので、凝縮器を排熱回収部と同等の高さ位置に配置することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置の高さ方向の寸法をさらに小さくすることができ、車両搭載時の機器配置に関するレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0011】
上記凝縮器をさらに備える構成において、好ましくは、凝縮器は、気液分離部に隣接して配置されている。
【0012】
このように構成すれば、気液分離部(冷媒蒸気透過膜)で分離された冷媒蒸気を迅速に凝縮器に導入して冷媒蒸気を凝縮(液化)させて蒸発器へ導入することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置における冷房運転時の応答性を高く維持することができる。また、凝縮器と排熱回収部(再生器)とを一体化させることができるので、車両に搭載される吸収式ヒートポンプ装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0013】
上記凝縮器をさらに備える構成において、好ましくは、冷媒蒸気透過膜は、排熱回収部と凝縮器との境界に設けられている。
【0014】
このように構成すれば、排熱回収部(再生器)と凝縮器との間に冷媒蒸気を移送するための蒸気配管を設ける必要がなくなるとともに、排熱回収部と凝縮器とを確実に一体化させることができる。これにより、車両に搭載される吸収式ヒートポンプ装置の小型化を図りつつ、吸収式ヒートポンプ装置の構成を簡素化させることができる。
【0015】
上記凝縮器をさらに備える構成において、好ましくは、排熱回収部に設けられ、加熱前の吸収液が貯留される吸収液貯留部をさらに備え、加熱前の吸収液が吸収液貯留部から排熱回収部に導入されるとともに、排熱回収部内を流通して加熱された吸収液が排熱回収部から気液分離部における吸収液貯留部の上部空間に気液二相流の状態で流入するとともに、気液二相流に含まれる冷媒蒸気が冷媒蒸気透過膜を透過して凝縮器に移動されるように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、再生器としての排熱回収部を構成する気液分離部(冷媒蒸気透過膜)および吸収液貯留部と、冷媒蒸気のみが移送される凝縮器とを一体化させて、コンパクトな機能ユニットを構成することができる。また、冷媒蒸気透過膜により冷媒蒸気が分離された後の吸収液(濃液)を吸収液貯留部の上部領域に一時的に貯留しつつ、冷媒蒸気が分離された吸収液(濃液)を迅速に吸収器に供給(送液)することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置における冷房運転時の応答性を高く維持することができる。
【0017】
なお、上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、以下の構成も考えられる。
【0018】
(付記項)
すなわち、上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、排熱回収部は、プレート式熱交換器を含み、プレート式熱交換器は、エンジンの排気ガスによる熱交換を利用して吸収液を加熱するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の構成を示した模式図である。
図2】本発明の第1実施形態における排熱回収部および凝縮器の内部構造を概略的に示した斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態における排熱回収部(熱交換部)の内部構造を示した図である。
図4】本発明の第2実施形態における排熱回収部および凝縮器の内部構造を概略的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。
【0022】
(吸収式ヒートポンプ装置の構成)
本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100では、冷媒としての水と、吸収液としての臭化リチウム(LiBr)水溶液とが用いられており、エンジン90を備えた乗用車およびバスなどの車両(図示せず)に搭載されるように構成されている。また、吸収式ヒートポンプ装置100では、エンジン90から排出される高温の排気ガスの熱を利用(回収)して、吸収液(希液)が加熱(昇温)されるように構成されている。
【0023】
吸収式ヒートポンプ装置100は、図1に示すように、排熱回収部10(二点鎖線枠内の構成に相当する)と、凝縮器20と、蒸発器30と、吸収器40とを備える。ここで、排熱回収部10は、いわゆる再生器の役割を担っている。また、凝縮器20は、冷房運転時に、冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有する。蒸発器30は、冷房運転時に、凝縮水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させる役割を有する。そして、吸収器40は、冷房運転時に、濃液状態で供給された吸収液(濃液)に蒸発器30で気化した冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収させる役割を有する。
【0024】
また、吸収式ヒートポンプ装置100には、冷媒および吸収液がそれぞれ循環可能な配管が設けられている。具体的には、吸収式ヒートポンプ装置100は、吸収液循環路51aおよび51bからなる循環通路51と、冷媒蒸気通路52と、冷媒蒸気通路53と、冷媒通路54と、吸収液通路55および56と、冷媒供給路57および58とを備える。
【0025】
循環通路51は、吸収液を排熱回収部10内(後述する熱交換部10aおよびマニホールド部10b)で循環させる役割を有しており、吸収液循環路51aにポンプ71が設けられている。冷媒蒸気通路52は、暖房運転時に弁64が開かれる(弁65は閉状態になる)ことにより、マニホールド部10bで分離された高温の冷媒蒸気を蒸発器30(この場合は凝縮器の役割を果たす)に流入させる役割を有する。冷媒蒸気通路53は、蒸発器30と吸収器40とを接続しており、冷房運転時に弁65が開かれる(弁64は閉状態になる)ことにより、蒸発器30で蒸発した冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収器40に供給する役割を有する。冷媒通路54は、冷房運転時に弁66が開かれることにより、凝縮器20に貯留された冷媒(水)を蒸発器30に供給する役割を有する。
【0026】
吸収液通路55は、弁61の開閉動作に応じて吸収器40に吸収液(濃液)を供給する役割を有する。吸収液通路56は、ポンプ72と弁62との連動時に吸収器40において冷媒蒸気が吸収された吸収液(希液)を循環通路51に供給する役割を有する。冷媒供給路57は、暖房運転時にポンプ73と弁63とが連動することによって、蒸発器30(この場合は凝縮器の役割を果たす)に貯留された冷媒(凝縮水)を循環通路51に供給する役割を有する。冷媒供給路58は、結晶化防止を目的として弁67の開閉動作に応じて凝縮器20に貯留された凝縮水を直接的に吸収器40に供給する役割を有する。熱交換器59においては、吸収液通路55および56を流通する吸収液同士の熱交換が行われる。
【0027】
また、図1に示すように、エンジン90に接続された排気管91は、排熱回収部10を経由する排熱供給路91aと、迂回路91bとを含む。また、排熱供給路91aには弁92が設けられている。そして、冷房運転時および暖房運転時に弁92が開かれることによって、エンジン90からの排気ガスの一部が排熱供給路91aを経由して排熱回収部10に流通されるように構成されている。
【0028】
ここで、第1実施形態では、図2に示すように、排熱回収部10は、エンジン90から排出される排気ガスの熱(排熱)を回収するとともに、回収された排熱を利用して吸収液(希液)を加熱する熱交換部10aを有する。また、排熱回収部10は、熱交換部10aのX2側の側面に接続された箱型形状を有するマニホールド部10bをさらに有する。マニホールド部10bは、吸収器40からの吸収液(希液)の熱交換部10aへの導入と、熱交換部10aにより加熱された気液二相流状態の吸収液の導出とを担っている。構造的に説明すると、マニホールド部10bは、排熱回収部10に設けられている。そして、熱交換部10aとマニホールド部10bとが一体化されて排熱回収部10が構成されている。
【0029】
また、マニホールド部10bは、冷媒蒸気透過膜11(気液分離部の一例)と、希液貯留領域12(吸収液貯留部の一例)と、濃液貯留領域13とによって構成されている。希液貯留領域12は、吸収器40からの吸収液(希液)を一時的に受け入れる役割を有する。また、濃液貯留領域13は、吸収液(希液)が加熱された後に冷媒蒸気のみが、後述する冷媒蒸気透過膜11を透過することによって濃縮された状態の吸収液(濃液)を一時的に受け入れる役割を有する。また、希液貯留領域12は、吸収液循環路51a(図1参照)に接続されるとともに、濃液貯留領域13は、吸収液循環路51b(図1参照)に接続されている。また、希液貯留領域12および濃液貯留領域13は、マニホールド部10bの内部において、隔壁14により互いに隔てられている。
【0030】
そして、第1実施形態では、冷媒蒸気透過膜11は、排熱回収部10(熱交換部10a)により加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気(高温水蒸気)を後述する凝縮器20側に透過させる役割を有している。すなわち、熱交換部10aにより加熱された高温/高圧の吸収液は、冷媒蒸気透過膜11によって、冷媒蒸気(高温水蒸気)と吸収液(濃液)とに分離されるように構成されている。また、冷媒蒸気透過膜11は、冷媒蒸気しか透過しないので、凝縮器20への吸収液(濃液)の流入を遮断する役割をさらに有している。
【0031】
ここで、冷媒蒸気透過膜11としては、たとえば、水(溶媒)は浸透する一方、食塩などの低分子量物質を透過させない半透膜である逆浸透膜(RO膜)などが用いられる。すなわち、希液貯留領域12から熱交換部10aに流通されて加熱された吸収液が流入する濃液貯留領域13は、高温高圧になるので、濃液貯留領域13の内部圧力を利用して吸収液に含まれる水分のみがこの逆浸透膜(冷媒蒸気透過膜11)を透過するようになる。そして、水分が分離されて臭化リチウムの濃度が相対的に高められた吸収液(濃液)が、濃液貯留領域13に一時的に貯留されるようになる。
【0032】
また、図1および図2に示すように、凝縮器20は、箱型形状を有して外形が形成されており、箱型形状を有するマニホールド部10bのX2側の側壁部分10dに隣接して配置されている。この場合、冷媒蒸気透過膜11は、排熱回収部10と凝縮器20との境界となる側壁部分10dに設けられている。したがって、排熱回収部10(マニホールド部10b)と凝縮器20とは、冷媒蒸気透過膜11を介して直接的に接続されている。
【0033】
また、図2に示すように、冷媒蒸気透過膜11は、上下方向(Z軸方向)にシート状に延びた状態で、マニホールド部10bのX2側の側壁部分10d(境界の一例)に取り付けられている。そして、マニホールド部10bと凝縮器20とは、冷媒蒸気透過膜11によって隔てている。これにより、排熱回収部10(再生器)と凝縮器20との間に冷媒蒸気を移送するための蒸気配管は設けられていない。したがって、冷媒蒸気透過膜11(マニホールド部10b)において分離された冷媒蒸気(高温水蒸気)は、迅速に凝縮器20に導入されるように構成されている。
【0034】
また、排熱回収部10を構成する熱交換部10aは、耐腐食性を有する金属材料を用いたプレート式熱交換器からなる。また、熱交換部10aは、エンジン90の排気管91(排熱供給路91a(図1参照))の途中に接続される複数のガス流路15(破線で示す)と、吸収液が流通される複数の吸収液通路16(破線で示す)とを有する。
【0035】
この場合、図3に示すように、エンジン90(図1参照)からの排気ガスは、熱交換部10aにおけるX1側の側面部10cから矢印X2方向に沿ってガス流路15に流入される。そして、内部で矢印Z2方向に向きを変えられて熱交換部10aにおけるZ2側の底面部10dから排気管91(排熱供給路91a(図1参照))に排出されるように構成されている。なお、図3では、熱交換部10aをガス流路15の部分でのX−Z平面に沿った断面構造を示している。また、図2に示すように、複数の吸収液通路16は、上流側が希液貯留領域12に接続されるとともに下流側が濃液貯留領域13に接続されている。そして、熱交換部10aでは、図3に示したガス流路15と、図2に破線で示した吸収液通路16とが伝熱壁17を隔てて横方向(Y軸方向)に交互に積層された構造を有する。
【0036】
また、図2に示すように、吸収液通路16は、吸収液流入口16a(破線で示す)を介して希液貯留領域12に接続されるとともに、吸収液流出口16b(破線で示す)を介して濃液貯留領域13に接続されている。なお、吸収液流出口16bは、希液貯留領域12と濃液貯留領域13とを隔てる隔壁14よりも上方(Z1側)の位置に設けられている。
【0037】
そして、第1実施形態では、熱交換部10aにおいては、図2に示すように、下方側(Z2側)の吸収液流入口16aから流入されるとともに吸収液通路16内を往復蛇行しながら上方側(Z1側)の吸収液流出口16bに向かって流通される吸収液(希液)と、ガス流路15内を流入する高温の排気ガスとが伝熱壁17を介して熱交換されるように構成されている。この際、加熱前の吸収液(希液)が排熱回収部10における希液貯留領域12から熱交換部10aに導入されるとともに、熱交換部10a内を流通して加熱された吸収液が熱交換部10aからマニホールド部10bにおける希液貯留領域12の上部空間(濃液貯留領域13)に気液二相流の状態で流入される。そして濃液貯留領域13に流入する気液二相流に含まれる冷媒蒸気が冷媒蒸気透過膜11を透過して凝縮器20に移動されるように構成されている。これにより、吸収式ヒートポンプ装置100には、再生器としての排熱回収部10を構成する熱交換部10aおよびマニホールド部10b(冷媒蒸気透過膜11、希液貯留領域12および濃液貯留領域13)と、冷媒蒸気のみが移送されて凝縮される凝縮器20とが一体化されて、1つの機能ユニット25が構成されている。
【0038】
なお、排熱回収部10において熱交換部10aおよびマニホールド部10b(冷媒蒸気透過膜11)が一体化されていることによって、濃液貯留領域13の濃液が隣接する凝縮器20に流入するのが常に遮断されている。したがって、運転制御上、濃液貯留領域13に貯留される濃液の液面を一定のレベルに保ちながらポンプ71および72を作動させる必要がない。さらには、マニホールド部10b(排熱回収部10)および凝縮器20側の高圧圧力と吸収器40側の圧力(真空状態)との圧力差を利用して吸収液(濃液)を濃液貯留領域13から吸収器40に圧送する必要もない。すなわち、吸収式ヒートポンプ装置100では、濃液貯留領域13に貯留される濃液の液面を液面センサなどを用いて検出することなく、ポンプ71および72の回転数のみで吸収液を排熱回収部10と吸収器40との間で循環させることが可能に構成されている。
【0039】
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、冷房運転時に駆動される冷却水回路80を備える。冷却水回路80は、凝縮器20における冷媒蒸気の冷却と、吸収器40における冷媒の吸収液(濃液)への吸収時に発生する吸収熱の除去とに用いられる。詳細には、冷却水回路80は、冷却水(熱交換流体の一例)が流通する冷却水循環路81と、ポンプ82と、凝縮器20に配置された熱交換部83と、吸収器40に配置された熱交換部43(図4参照)と、放熱部84とを含む。放熱部84では、熱交換部84aを流通する冷却水が送風機84bにより送風された空気(外気)によって冷却(放熱)される。
【0040】
蒸発器30は、図1に示すように、内部を絶対圧力で1kPa以下の真空状態に保持する容器31と、容器31内部に設置された熱交換部33および噴射器34とを含む。蒸発器30の外部には、冷媒貯留部31aと噴射器34とを接続する通路35にポンプ36が設けられている。これにより、冷媒貯留部31aの冷媒(水)がポンプ36により汲み上げられて噴射器34から熱交換部33に噴霧される。また、熱交換部33は、容器31の側壁部を貫通して循環水回路85および熱交換部86に接続されている。これにより、冷房運転時には、循環水回路85から流入した空調用循環水は、熱交換部33内を流通する際に熱交換部33に噴霧された冷媒が冷媒蒸気(低温水蒸気)になる際の蒸発潜熱により冷却されて循環水回路85に戻される。熱交換部86では、送風機88からの空気が熱交換器87を流通する空調用循環水により冷却されるとともに、冷風が車内に吹き出される。
【0041】
吸収器40は、図1に示すように、吸収器40は、内部が真空状態(絶対圧力で1kPa以下)に保たれた容器41と、熱交換部43と、容器41の内部の天井部近傍に取り付けられた噴射器44と、吸収器40の外部に設けられた吸収液移送管路45およびポンプ46とを含む。また、容器41は、吸収液(濃液に冷媒が吸収されて希釈された希液)が主に貯留される吸収液貯留部41cを有する。吸収液移送管路45は、吸収液貯留部41cと噴射器44とを接続している。これにより、吸収液貯留部41cの吸収液がポンプ46により汲み上げられて噴射器44から熱交換部43に向けて霧状に噴射される。したがって、冷房運転時には、蒸発器30で発生するとともに冷媒蒸気通路53を介して吸引された冷媒蒸気(低温水蒸気)と、噴霧された吸収液(濃液)とが、吸収器40内で混ざり合って希液状態の吸収液(希液)が作られる。また、希液状態の吸収液は、吸収液貯留部41cに貯留される。以上の構成によって、吸収式ヒートポンプ装置100は、以下のように動作される。
【0042】
(冷房運転時の動作)
冷房運転時には、図1に示すように、弁61および62を閉じた状態でポンプ71が始動されて吸収液を循環通路51に矢印P方向に循環させる。吸収液(希液)は、希液貯留領域12から熱交換部10a(吸収液通路16)を流通して昇温されるとともに気液二相流の状態で濃液貯留領域13に流出される。また、濃液貯留領域13に流出した吸収液(希液)に含まれる冷媒蒸気は、冷媒蒸気透過膜11を迅速に透過して凝縮器20に移動される。一方、冷媒蒸気が分離された吸収液は濃液(LiBr濃液)となって濃液貯留領域13に一時的に貯留される。
【0043】
そして、冷媒蒸気透過膜11で分離された冷媒蒸気が所定温度(約100℃)に達した時点で弁61および62が開かれてポンプ72が始動される。これにより、濃液貯留領域13に一時的に貯留されていた吸収液(LiBr濃液)が、吸収液通路55および56にも矢印Q方向に流通される。また、冷媒蒸気透過膜11で分離された冷媒蒸気は、凝縮器20に流入される。そして、弁64が開かれるとともに凝縮器20で凝縮された冷媒蒸気が冷媒蒸気通路52を介して蒸発器30に流入される。
【0044】
これにより、蒸発器30と熱交換部86との間を循環する空調用循環水によって車内空気が冷却される。また、熱交換部33で蒸発した冷媒蒸気は、冷媒蒸気通路53を流通して吸収器40に吸引される。吸収器40では、熱交換部43に供給(噴射)された吸収液(濃液)に冷媒蒸気が吸収されて希液となり吸収液貯留部41cに貯留される。吸収液貯留部41cに貯留された希液は、吸収液通路55を流通して循環通路51に戻される。
【0045】
(暖房運転時の動作)
暖房運転時には、弁61および62は常に閉じられており吸収器40は使用されない。すなわち、冷却水回路80も駆動されない。また、弁64が開かれるとともに、弁65および66が閉じられる。運転開始直後に循環通路51を循環させて吸収液(希液)の昇温が行われる。そして、冷媒蒸気透過膜11で分離された冷媒蒸気(高温水蒸気)は、単なる容器としての凝縮器20および下流の冷媒蒸気通路52を介して蒸発器30(この場合は凝縮器の役割を果たす)に流入される。これにより、熱交換部86を介して車内空気が暖められる。また、蒸発器30で車内空気との熱交換によって冷やされた凝縮水は、ポンプ73と弁63との連動により冷媒供給路57を介して循環通路51に還流される。第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100は、上記のように構成されている。
【0046】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
第1実施形態では、上記のように、排熱回収部10において、エンジン90の排気ガスから回収された排熱を利用して熱交換部10aで加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を分離する冷媒蒸気透過膜11を排熱回収部10におけるマニホールド部10bに設ける。これにより、排熱回収部10とマニホールド部10bとの間に熱回収された吸収液を移送するための配管を設ける必要がないので、加熱された吸収液に外部(系外)への熱損失を極力生じさせることなく吸収液から冷媒蒸気を分離することができる。また、排熱回収部10にマニホールド部10bを設けることによって、排熱回収部10内にマニホールド部10bが一体化される分、吸収式ヒートポンプ装置100の高さ方向の寸法を小さくすることができるので、車両(エンジンルームなど)への搭載位置を柔軟にアレンジすることができる。これらの結果、排熱回収時の熱損失を抑制しつつ、吸収式ヒートポンプ装置100を車両に搭載する際の機器配置に関するレイアウトの自由度を確保することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、排熱回収部10において熱交換部10aより加熱された吸収液に含まれる冷媒蒸気を凝縮器20側に透過させる冷媒蒸気透過膜11を有するようにマニホールド部10bを構成する。これにより、冷媒蒸気透過膜11が加熱された吸収液からの冷媒蒸気の分離機能を担うので、マニホールド部10b自体に吸収液と冷媒蒸気とを互いに分離するための大きな空間(容積部分)を設ける必要がなくなる。したがって、冷媒蒸気透過膜11を含む排熱回収部10(再生器)の小型化を図ることができる。また、冷媒蒸気透過膜11を設けることによって、凝縮器20への吸収液の流入を遮断することができるので、従来では再生器(気液分離部)および凝縮器側の圧力と吸収器側の圧力との差を利用して吸収液(濃液)を再生器から吸収器に送液(圧送)していた場合と異なり、吸収器40と排熱回収部10との間を循環する吸収液の流量制御をポンプ71および72を用いて容易に(柔軟に)行うことができる。加えて、従来では再生器(気液分離部)での吸収液の液面を一定にして凝縮器への流入を防止する制御を行っていた場合と異なり、このような液面を一定に保つ制御を省略することもできる。また、冷媒蒸気透過膜11によって凝縮器20への吸収液(濃液)の流入が遮断されるので、凝縮器20を排熱回収部10と同等の高さ位置に配置することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置100の高さ方向の寸法をさらに小さくすることができ、車両搭載時の機器配置に関するレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0049】
また、第1実施形態では、凝縮器20をマニホールド部10bに隣接して配置するように機能ユニット25を構成する。これにより、マニホールド部10b(冷媒蒸気透過膜11)で分離された冷媒蒸気を迅速に凝縮器20に導入して冷媒蒸気を凝縮(液化)させて蒸発器30へ導入することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置100における冷房運転時の応答性を高く維持することができる。また、凝縮器20と排熱回収部10(再生器)とを一体化させることができるので、車両に搭載される吸収式ヒートポンプ装置100のさらなる小型化を図ることができる。
【0050】
また、第1実施形態では、排熱回収部10と凝縮器20との境界に冷媒蒸気透過膜11を設けるように構成する。これにより、排熱回収部10(再生器)と凝縮器20との間に冷媒蒸気を移送するための蒸気配管を設ける必要がなくなるとともに、排熱回収部10と凝縮器20とを確実に一体化させることができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置100の小型化を図りつつ、車両に搭載される吸収式ヒートポンプ装置100の構成を容易に簡素化させることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、加熱前の吸収液が希液貯留領域12から熱交換部10aに導入されるとともに、熱交換部10a内を流通して加熱された吸収液が熱交換部10aからマニホールド部10bにおける希液貯留領域12の上部空間(濃液貯留領域13)に気液二相流の状態で流入するとともに、気液二相流に含まれる冷媒蒸気が冷媒蒸気透過膜11を透過して凝縮器20に移動されるように構成する。これにより、再生器としての排熱回収部10を構成するマニホールド部10b(冷媒蒸気透過膜11)および希液貯留領域12と、冷媒蒸気のみが移送される凝縮器20とを一体化させて、コンパクトな機能ユニット25を構成することができる。また、冷媒蒸気透過膜11により冷媒蒸気が分離された後の吸収液(濃液)を希液貯留領域12の上部の濃液貯留領域13に一時的に貯留しつつ、冷媒蒸気が分離された吸収液(濃液)を迅速に吸収器40に供給(送液)することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置100における冷房運転時の応答性を高く維持することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、熱交換部10aにプレート式熱交換器を適用して、エンジン90の排気ガスによる熱交換を利用して吸収液を加熱するように構成する。これにより、プレート式熱交換器を用いてエンジン90の排熱を効率よく回収して車載用の吸収式ヒートポンプ装置100の熱源に適用することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、希液貯留領域12と濃液貯留領域13とを隔てる隔壁14よりも上方(Z1側)の位置に吸収液流出口16bを設ける。これにより、濃液貯留領域13に一時的に貯留された濃液が吸収液通路16に逆流するのを防止することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、冷媒蒸気透過膜11をマニホールド部10bと凝縮器20との境界において上下方向(Z軸方向)にシート状に延ばして配置するように機能ユニット25を構成する。これにより、冷媒蒸気(高温水蒸気)が冷媒蒸気透過膜11を水平方向に凝縮器20側に透過する一方、分離された吸収液(濃液)を冷媒蒸気透過膜11の内面(マニホールド部10b側の内面)に沿って迅速に濃液貯留領域13に流下させることができる。したがって、加熱された吸収液から濃液を効率よく分離することができる。
【0055】
[第2実施形態]
図1および図4を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、冷媒蒸気透過膜211の配置構成を上記第1実施形態と異ならせた例について説明する。なお、図中において上記第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して図示する。
【0056】
第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置においては、図4に示すように、機能ユニット225を備える。機能ユニット225は、排熱回収部210と凝縮器220とが一体化されて構成されている。また、排熱回収部210は、回収された排気ガスの熱を利用して吸収液(希液)を加熱する熱交換部10aと、マニホールド部210bとを含む。そして、マニホールド部210bは、冷媒蒸気透過膜211(気液分離部の一例)と、希液貯留領域12と、濃液貯留領域213とによって構成されている。
【0057】
ここで、第2実施形態では、冷媒蒸気透過膜211は、マニホールド部210bのZ1側の天井部分210e(境界の一例)に水平方向(X−Y平面)にシート状に延ばされた状態で設置されている。また、凝縮器220は、冷媒蒸気透過膜211の上面と、上下方向(Z軸方向)に延びるマニホールド部210bのX2側の側壁部分210dとに直接的に接続されるように逆さL字形状を有して形成されている。
【0058】
これにより、加熱前の吸収液(希液)が排熱回収部210における希液貯留領域12から熱交換部10aに(吸収液通路16)導入されるとともに、熱交換部10a(吸収液通路16)内を流通して加熱された吸収液が熱交換部10aからマニホールド部210bにおける濃液貯留領域213に気液二相流の状態で流入するとともに、気液二相流に含まれる冷媒蒸気が冷媒蒸気透過膜211を透過して凝縮器220に移動されるように構成されている。なお、第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0059】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記のように、冷媒蒸気透過膜211をマニホールド部210bのZ1側の天井部分210eに水平方向(X−Y平面)にシート状に延ばして配置するとともに、冷媒蒸気透過膜211の上面に凝縮器220の一部を配置するように機能ユニット225を構成する。これにより、冷媒蒸気(高温水蒸気)が冷媒蒸気透過膜211を凝縮器220側に透過する一方、分離された吸収液(濃液)を冷媒蒸気透過膜211の下面(マニホールド部210b側の内面)から迅速に下方の濃液貯留領域213に滴下させることができる。したがって、加熱された吸収液から濃液を効率よく分離することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、熱交換部10aのX2側にマニホールド部10b(210b)を隣接配置するとともに、マニホールド部10b(210b)のX2側に凝縮器20(220)を隣接配置したが、本発明はこれに限られない。たとえば、マニホールド部10b(210b)を中心に見た場合の熱交換部10aと凝縮器20(220)との位置関係は、互いに直交する方向に配置されていてもよい。
【0062】
また、上記第1および第2実施形態では、排熱回収部10(210)を、構造上、熱交換部10aとマニホールド部10b(210b)とに分割して構成していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、マニホールド部10b(210b)をなくすとともに、熱交換部10a自体を本発明の「排熱回収部」として構成してもよい。この場合、冷媒蒸気透過膜11(211)を熱交換部10aにおける吸収液通路16の吸収液流出口16bに直接的に設けるように構成するとともに、冷媒蒸気透過膜11(211)の直前の吸収液流出口16bの部分から吸収液(濃液)を吸収液循環路51bに導出するように熱交換部10aを構成すればよい。
【0063】
また、上記第1および第2実施形態では、ガス流路15と吸収液通路16とが伝熱壁17を隔てて横方向に交互に積層されたプレート式熱交換器を用いて熱交換部10aを構成したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スパイラル式熱交換器、二重管式熱交換器、および、多管式熱交換器などを用いて熱交換部10aを構成してもよい。
【0064】
また、上記第1および第2実施形態では、マニホールド部10b(210b)および凝縮器20(220)を共に箱型形状にして機能ユニット25(225)を構成したが、本発明はこれに限られない。マニホールド部10b(210b)および凝縮器20(220)を箱型形状以外の形状(たとえば円筒形状)にして機能ユニットを構成してもよい。
【0065】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を、乗用車やバスなどの空調システムに適用したが、本発明はこれに限られない。車両のみならず商業施設向け(据置型)の吸収式ヒートポンプ装置にも、本発明を適用することができる。
【0066】
また、上記第1および第2実施形態では、排気ガスの熱を利用して吸収液(希液)を加熱したが、本発明はこれに限られない。たとえば、排気ガスの熱に加えてエンジン冷却水やオイルクーラから排出される排熱を併用して吸収液の加熱熱源にしてもよい。また、ハイブリッド自動車や電気自動車の空調用に、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。また、吸収液の加熱熱源として、電気自動車のバッテリやモータ排熱や燃料電池における発電時の排熱を利用して、燃料電池システムを備えた乗用車の空調に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。
【0067】
また、上記第1および第2実施形態では、冷媒および吸収液として、水および臭化リチウム水溶液を用いていたが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷媒および吸収液として、それぞれ、アンモニアおよび水を用いて吸収式ヒートポンプ装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、210 排熱回収部
10a 熱交換部
10b、210b マニホールド部
10d 側壁部分(境界)
11、211 冷媒蒸気透過膜(気液分離部)
12 希液貯留領域(吸収液貯留部)
13、213 濃液貯留領域
20、220 凝縮器
25、225 機能ユニット
30 蒸発器
40 吸収器
100 吸収式ヒートポンプ装置
210e 天井部分(境界)
図1
図2
図3
図4