【実施例】
【0054】
本発明の内容を実施例及び比較例を参照してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜実施例10]
本実施形態の効果を実証するために、ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物セラミックス材料の例として、Li
7.10La
3.00(Zr
1.90A
0.10)O
12(A=Y、Nd、Gd、Ho、Yb)のそれぞれを置換した組成(実施例1−実施例5)、さらにそれぞれの組成に対しAl
2O
3の1.0wt%添加した組成(実施例6−実施例10)を取り上げた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、Y
2O
3、Nd
2O
3、Gd
2O
3、Ho
2O
3、Yb
2O
3及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1100℃から1150℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0055】
[実施例11〜実施例26]
さらに、Li
7.35La
3.00(Zr
1.65A
0.35)O
12、(A=Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)のそれぞれを置換した組成(実施例11−18)と、さらにそれぞれの組成に対しAl
2O
3の1.0wt%添加した組成(実施例19−実施例26)を取り上げた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、Gd
2O
3、Tb
2O
3、Dy
2O
3、Ho
2O
3、Er
2O
3、Tm
2O
3、Yb
2O
3、Lu
2O
3及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1075℃から1125℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0056】
[実施例27〜実施例29]
さらにLi
7.05La
3.00(Zr
1.95Gd
0.05)O
12、Li
7.25La
3.00(Zr
1.75Gd
0.25)O
12、Li
7.50La
3.00(Zr
1.50Gd
0.50)O
12のそれぞれにAl
2O
3を1.0wt%添加した。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、Gd
2O
3及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1100℃から1125℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0057】
[実施例30〜実施例32]
さらにLi
7.05La
3.00(Zr
1.95Ho
0.05)O
12、Li
7.25La
3.00(Zr
1.75Ho
0.25)O
12、Li
7.50La
3.00(Zr
1.50Ho
0.50)O
12のそれぞれにAl
2O
3を1.0wt%添加した。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、Ho
2O
3及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1050℃から1125℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0058】
[実施例33〜実施例35]
さらにLi
7.05La
3.00(Zr
1.95Yb
0.05)O
12、Li
7.25La
3.00(Zr
1.75Yb
0.25)O
12、Li
7.50La
3.00(Zr
1.50Yb
0.50)O
12のそれぞれにAl
2O
3を1.0wt%添加した。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、Yb
2O
3及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1050℃から1100℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0059】
[実施例36〜実施例41]
さらにLi
7.35La
3.00(Zr
1.65Yb
0.35)O
12に対してAl
2O
3含有量(ywt%)を0.2wt%、0.3wt%、0.7wt%、1.5wt%、2.0wt%、2.1wt%となるようにを添加した。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、Yb
2O
3及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1100℃から1150℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0060】
[比較例1]
Li
7.00La
3.00Zr
2.00O
12組成を用いた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1150℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0061】
[比較例2]
また、Li
7.00La
3.00Zr
2.00O
12、にAl
2O
3の1.0wt%添加した組成を取り上げた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1100℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0062】
[比較例3]
さらに、Li
7.53La
3.00(Zr
1.67Gd
0.53)O
12にAl
2O
3を1.0wt%添加した組成を用いた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2 、Gd
2O
3、及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1050℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0063】
[比較例4]
さらに、Li
7.52La
3.00(Zr
1.68Ho
0.52)O
12にAl
2O
3を1.0wt%添加した組成を用いた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2 、Ho
2O
3、及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1050℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0064】
[比較例5]
さらに、Li
7.52La
3.00(Zr
1.68Yb
0.52)O
12にAl
2O
3を1.0wt%添加した組成を用いた。出発原料にはLi
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2 、Yb
2O
3、及びAl
2O
3を用いた。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本焼結前粉末を得た。次にそれらの本焼結前粉末に対して有機系バインダーを添加し顆粒を作製した。その顆粒をφ10mmの金型を用い、7kNにて円盤状に成型した。成形体は白金板上で1050℃の焼結温度で2時間大気中本焼結を行い、円盤状の焼結試料を得た。
【0065】
[相対密度の算出]
前記円盤状焼結体を形成するリチウムイオン伝導性酸化物セラミックスの焼結密度は、該円盤状焼結体の体積をマイクロメータにより計測した後、該円盤状焼結体の乾燥重量を該体積で除することにより焼結密度を算出した。そして、その焼結密度を理論密度で除し百分率を算出したものが相対密度(単位:%)である。各実施例、比較例の相対密度は、後述する表1〜8中に示した。
【0066】
[導電率の測定とイオン伝導度の見積もり]
恒温槽中にてACインピーダンスアナライザー(ソーラトロン社製1260)を用い、測定温度を25℃、測定周波数を0.05Hz〜30MHz、振幅電圧:50mVとしてインピーダンスと位相角を測定した。これらの測定値をもとにナイキストプロットを描きその円弧より抵抗値を求め、この抵抗値から導電率を算出した。ACインピーダンスアナライザーで測定する際のブロッキング電極にはAu電極を用いた。Au電極は、φ3mm円状でスパッタ法によって形成した。
上記測定から
図1に示すようなナイキストプロットを得た。このナイキストプロットから得られた抵抗値は、その円弧の種類により結晶内部の抵抗と粒界抵抗を含めた抵抗とに分けることで出来る。本特許では結晶内部の抵抗をもとに算出したイオン伝導度を表1〜表6に示した。
【0067】
(表1)
【0068】
実施例1〜実施例5で得られた試料は、Zrサイトへよりイオン半径の大きな希土類元素を置換することでLiイオン移動空間が広がり、Liイオン濃度も高くなったため1.00×10
―3S/cm以上の高いイオン伝導度を示すことを確認できた。それに対して、希土類元素を置換していない比較例1で得られた試料は、7.90×10
―4S/cmという低いイオン伝導度を示すことが確認できる。
【0069】
(表2)(Al含有)
【0070】
実施例6〜実施例10では、希土類元素を置換し、さらにAlを含有する事で立方晶を形成し易くなり、さらに高いイオン伝導度が得られることが確認できた。すなわち、1.18×10
―3S/cm以上の高いイオン伝導度を示した。それに対して、Alは含有しているが、希土類元素が置換されていない比較例2では、8.23×10
―4S/cmという低いイオン伝導度を示すことが確認できる。
【0071】
(表3)
【0072】
特に希土類元素中のGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luに限定し、さらに、その置換量を増やした実施例11〜実施例18では、Liイオン移動空間がさらに最適化されたため、2.81×10
―3S/cm以上の高いイオン伝導度を示すことが確認できた。
【0073】
(表4)(Al含有)
【0074】
実施例19〜26では、さらにAlを含有する事で立方晶を形成し易くなり、高いイオン伝導度が得られることが確認できる。すなわち2.93×10
―3S/cm以上の高いイオン伝導度を示した。
【0075】
(表5)(Gd,Al含有)
【0076】
(表6)(Ho,Al含有)
【0077】
(表7)(Yb,Al含有)
【0078】
Zrサイト置換元素の中でGd、Ho、Ybを代表例として、その置換量を変化させ粒内のイオン伝導度への効果を確認した。実施例8、9、10及び実施例27〜実施例35で示したように置換量xが0.05から0.50までは、9.50×10
―4S/cm以上の高いイオン伝導度を示すことを確認した。特に実施例8、9、10、28、29、31、32、34、35(置換量xが0.10〜0.50)で得られた試料は、1.45×10
―3S/cm以上の高いイオン伝導度を示した。それに対して、比較例2(x=0)では、8.23×10
―4S/cmという低いイオン伝導度を示した。さらに置換量xを0.52、0.53とした比較例3、4、5でもイオン伝導度が低下し、3.48×10
―4S/cm、3.63×10
―4S/cm、3.64×10
―4S/cmという低いイオン伝導度を示すことが確認できた。
【0079】
(表8)(Yb,Al含有)
【0080】
焼結性を向上させ、立方晶形成を安定化させるためのAlを含有させた効果を確認した。実施例37〜実施例40で示したAlの含有量が0.3wt%から2.0wt%までは、9.90×10
−4S/cm以上の高いイオン伝導度を示した。特に実施例32〜34(置換量で0.3wt%〜1.5wt%)で得られた試料は、3.33×10
−3S/cm以上の高いイオン伝導度を示した。それに対して、Alの含有量が0.2wt%と少ない実施例36や、2.1wt%と多量に含有させた実施例41では、それぞれ9.97×10
−4S/cm、9.65×10
−4S/cmと0.3wt%〜2.0wt%Alを含有した実施例よりも低いイオン伝導度を示すことが確認できた。
【0081】
[生成相の確認]
各試料について、XRD測定結果から相同定を行い、ほぼ単相であることを確認しており、置換のために用いた希土類元素はZrサイトに置換されていると判断した。XRD測定器はPANalytical社製X‘Pert PROを用い、試料粉末をCuKα、2θ:10〜90°、0.01°step/1sec.の条件で測定した。
【0082】
[組成分析]
各試料について、ICP発光分析法(測定装置:島津製作所製、商品名:ICP−7500)により、化学組成を分析したところ、評価試料組成と仕込み組成では変化の無いことを確認した。
【0083】
[実施例42]
以下に、全固体リチウム二次電池の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、部表示は、断りのない限り、質量部である。
【0084】
(正極活物質及び負極活物質の作製)
正極活物質及び負極活物質として、以下の方法で作製したLi
3V
2(PO
4)
3を用いた。その作製方法としては、Li
2CO
3とV
2O
5とNH
4H
2PO
4とを出発材料とし、ボールミルで16時間湿式混合を行い、脱水乾燥した後に得られた粉体を850℃で2時間、窒素水素混合ガス中で仮焼した。仮焼品をボールミルで湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して粉末を得た。この作製した粉体の構造がLi
3V
2(PO
4)
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0085】
(正極活物質ペースト及び負極活物質ペーストの作製)
正極活物質ペースト及び負極活物質ペーストは、ともにLi
3V
2(PO
4)
3の粉末100部に、バインダーとしてエチルセルロース15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、混合・分散して活物質ペーストを作製した。
【0086】
(固体電解質の作製)
固体電解質として、以下の方法で作製したLi
7.35La
3.00(Zr
1.65Yb
0.35)O
12に対しAl
2O
3の1.0wt%添加した組成を用いた。その作製方法とは、Li
2CO
3、La(OH)
3、ZrO
2、Yb
2O
3及びAl
2O
3を出発材料として、ボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離した後、アルミナ製坩堝中にて、900℃、5時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後仮焼粉末を、混合のためエタノール中にてボールミル(120rpm/ジルコニアボール)で16時間処理を行った。粉砕粉末をボールとエタノールから分離し乾燥後、本固体電解質の粉末を得た。作製した粉体の構造がLi
7.35La
3.00(Zr
1.65Yb
0.35)O
12であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0087】
次いで、この粉末に、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合した。その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して固体電解質ペーストを調製した。
【0088】
(固体電解質シートの作製)
この固体電解質ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、厚さ15μmの固体電解質シートを得た。
【0089】
(集電体ペーストの作製)
集電体として用いたNiとLi
3V
2(PO
4)
3とを体積比率で80/20となるように混合した後、バインダーとしてエチルセルロースと、溶媒としてジヒドロターピネオールを加えて混合・分散して集電体ペーストを作製した。Niの平均粒径は0.9μmであった。
【0090】
(端子電極ペーストの作製)
銀粉末とエポキシ樹脂、溶剤とを混合・分散し、熱硬化型の端子電極ペーストを作製した。
【0091】
これらのペーストを用いて、以下のようにしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0092】
(正極活物質層ユニットの作製)
上記の固体電解質シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質層ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。次に、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極集電体層ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質ペーストを再度印刷し、80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質シート上に、正極活物質層ペースト、正極集電体層ペースト、正極活物質ペーストがこの順に印刷・乾燥された正極活物質層ユニットのシートを得た。
【0093】
(負極活物質層ユニットの作製)
上記の固体電解質シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。次に、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極集電体層ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質ペーストを再度印刷し、80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質シート上に、負極活物質ペースト、負極集電体層ペースト、負極活物質ペーストがこの順に印刷・乾燥された負極活物質層ユニットのシートを得た。
【0094】
(積層体の作製)
正極活物質層ユニット一枚と負極活物質層ユニット一枚を、固体電解質シートを介するようにして積み重ねた。このとき、一枚目の正極活物質層ユニットの正極集電体層ペーストが一の端面にのみ延出し、二枚目の負極活物質層ユニットの負極集電体層ペーストが他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねた。この積み重ねられたユニットの両面に厚さ500μmとなるように固体電解質シートを積み重ね、その後、これを熱圧着により成形した後、切断して積層ブロックを作製した。その後、積層ブロックを同時焼成して積層体を得た。同時焼成は、窒素中で昇温速度200℃/時間で焼成温度1075℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。
【0095】
(端子電極形成工程)
積層ブロックの端面に端子電極ペーストを塗布し、150℃、30分の熱硬化を行い、一対の端子電極を形成してリチウムイオン二次電池を得た。
【0096】
(電池の評価)
得られたリチウムイオン二次電池の端子電極にリード線を取り付け、充放電試験を行った。測定条件は、充電及び放電時の電流はいずれも2.0μA、充電時及び放電時の打ち切り電圧をそれぞれ4.0V及び0Vとした。本電池は、良好に充放電し、また、電池特性としても、比較例1の固体電解質を使用した場合には放電容量0.4μAだったものが、2.4μAと非常に良好な電池特性を有することがわかった。