(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672890
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20200316BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
F28F1/32 R
F28F1/32 X
F28D1/053 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-38266(P2016-38266)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155988(P2017-155988A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌春
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊太郎
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−185479(JP,A)
【文献】
特開2007−024426(JP,A)
【文献】
実開昭58−107480(JP,U)
【文献】
実開昭51−098860(JP,U)
【文献】
米国特許第03223153(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配列される複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管と交差させ、左右に配列される板状の複数のフィンと、
上下に隣り合う前記伝熱管と、左右に隣り合う前記フィンに囲まれた複数の通風路を有する熱交換器であって、
前記フィンには隣接するフィンに接するタブ部と、孔部があり、
前記タブ部はその一端部と他端部が前記フィンと連続し、また前記一端部と前記他端部以外の部分は前記フィンと離間し、
前記タブ部は、前記一端部を含む一端側タブ部と、前記他端部を含む他端側タブ部を有し、
前記孔部は前記一端部が連続する一端側孔部と、前記他端部が連続する他端側孔部を有し、
前記一端側孔部と前記他端側孔部が孔部頂部で連続し、
前記一端側タブ部と前記他端側タブ部がタブ部頂部で連続し、
前記一端側タブ部の幅と前記他端側タブ部の幅が異なり、
前記タブ部頂部の位置が、前記孔部頂部の位置よりも前記一端側孔部と前記他端側孔部のうち幅が狭い方に寄っていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記タブ部が、通風方向に沿って形成され、
前記一端側タブ部または前記他端側タブ部のどちらか一方が、
前記タブ部と前記フィンが連続する端を底辺とし、前記タブ部の中央付近を頂部とした多角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管とフィンとを備え、伝熱管内を流れる流体を空気と熱交換させる熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝熱管とフィンとを備えた熱交換器が知られている。この熱交換器では、複数の板状のフィンが互いに所定の間隔をおいて平行に左右方向に積層されている。この積層されたフィン夫々に直交するように挿入された複数の伝熱管が、互いに一定の間隔をおいて上下に並んで配置されている。フィンの表面の風上側と風下側には、フィン同士の間隔を整えるために、フィンの一部を切り起こして形成されるタブ部が設けられている。このタブ部が隣接するフィンと接することで、フィン同士の間隔を整えることができる。
【0003】
さらに、熱交換器の熱交換能力を上げるために、タブ部をスリット形状にしたいわゆるスリットフィンがある。このタブ部は、フィンの上下方向に1対の切り込みを入れて、タブ部の一端と他端がフィンと接続した状態で切り起こされている。このタブ部を切り起こした後のフィンには孔が形成される。上述のようにフィンを積層すると、このタブ部が孔に入り込むため、フィンの間隔を整えることができない。そこで、特許文献1では、隣接するフィンに形成されるタブ部同士を向い合せにして、このタブ部同士を接触させることでタブ部が孔に入り込むことを防ぎフィンの間隔を整えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−114307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法ではタブ部同士を向い合せにするために、2種類のフィンを用意する必要がある。そのため、コストが増加し、生産性も悪くなる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、フィンの間隔を整えるタブ部をスリット形状にすると共に、1種類のフィンだけでフィンピッチを確保できるようにした熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するために、本発明は、上下に配列される複数の伝熱管と、複数の伝熱管と交差させ、左右に配列される板状の複数のフィンと、上下に隣り合う伝熱管と、左右に隣り合うフィンに囲まれた複数の通風路を有する熱交換器であって、フィンには
隣接するフィンに接するタブ部と
、孔部があり、タブ部はその一端部と他端部がフィンと連続し、また一端部と他端部以外の部分はフィンと離間し、タブ部は、一端部を含む一端側タブ部と、他端部を含む他端側タブ部を有し、孔部は一端部が連続する一端側孔部と、他端部が連続する他端側孔部を有し、一端側孔部と他端側孔部が孔部頂部で連続し、一端側タブ部と他端側タブ部がタブ部頂部で連続し、一端側タブ部の幅と他端側タブ部の幅が異なり、タブ部頂部の位置が、孔部頂部の位置よりも一端側孔部と他端側孔部のうち幅が狭い方に寄っていることを特徴とする。
【0008】
また、タブ部が、通風方向に沿って形成され、一端側タブ部または他端側タブ部のどちらか一方が、タブ部とフィンが連続する端を底辺とし、タブ部の中央付近を頂部とした多角形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱交換器によれば、フィンの間隔を整えるタブ部をスリット形状に形成させると共に、1種類のフィンだけでフィンピッチを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明にかかる熱交換器の全体を示した斜視図である。
【
図2】本発明にかかる熱交換器の全体を示した正面図である。
【
図4】(a)は
図3の切断線B−Bにおける断面図である。(b)は(a)が切り起こされる前の断面図である。
【
図5】(a)はタブ部の斜視図である。(b)タブ部の断面図である。(c)はタブ部と孔部を上方から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に関する熱交換器100は、
図1と
図2に示すように、フィン120と扁平管130を備えた熱交換器である。
【0012】
熱交換器100は、第1ヘッダ110aと、第2ヘッダ110bと、複数の扁平管130と、複数のフィン120とを備えている。第1ヘッダ110a、第2ヘッダ110b、扁平管130、フィン120はいずれもアルミニウム合金製の部材であり、各々の接合は蝋付けによって行われている。
【0013】
第1ヘッダ110aと第2ヘッダ110bは、両方とも長手方向の両端が閉鎖された細長い円筒状に形成されている。熱交換器100の一端側に第1ヘッダ110aが配置され、熱交換器100の他端側に第2ヘッダ110bが配置される。なお、第1ヘッダ110aと第2ヘッダ110bのそれぞれの長手方向を熱交換器100の上下方向とする。
【0014】
扁平管130は多孔構造であり、断面形状が長円形あるいは角の丸い矩形となった伝熱管であり、後述するフィン120と直交する方向に延びている。また、扁平管130には、冷媒が流れる冷媒流路が複数本配置され、この冷媒流路は扁平管130の長手方向の一端と他端の間に、長手方向の一端から他端にかけて延びて形成され、扁平管130の幅方向に等間隔で配置されている。熱交換器100において、各扁平管130は、各々の上側の面と下側の面が対向するように、熱交換器100の熱交換能力と通風抵抗などを考慮して決定した間隔である第1の間隔d1をおいて上下に並んで配置されている。各扁平管130は、一端を第1ヘッダ110aに挿入し、他端を第2ヘッダ110bに挿入している。なお、扁平管130の長手方向を左右方向とする。
【0015】
フィン120は、金属板をプレス加工することによって、縦長の板形状に形成されている。フィン120には、
図3に示すように、フィン120の短手方向の一端からフィン120の短手方向の他端に向かって延びる横長の切り欠き部140が、フィン120の長手方向(上下方向)に所定の間隔をおいて多数形成されている。この切り欠き部140に扁平管130が差し込まれることで、扁平管130は上下方向に第1の間隔d1をおいて配置される。また、フィン120は、
図1に示すように、扁平管130の長手方向(左右方向)に熱交換器100の熱交換能力と通風抵抗などを考慮して決定した間隔である第2の間隔d2をおいて複数枚配置される。
図2に示すように、上下に隣り合う扁平管130と、左右に隣り合うフィン120に囲まれた通風路150が、上下方向と左右方向それぞれに複数並んで形成される。なお、
図2では複数の通風路150のうち1つを代表して図示している。フィン120と扁平管130は互いに直交しており、
図3に示すように、フィン120の表面のうち、複数の通風路の一つと接すると共に、上下に隣り合う扁平管130の間に位置する面が、斜線の矢印で示す空気と熱交換する伝熱部121となる。また、フィン120の一部で切欠き部140よりフィン120の他端側にある面が、フィン120の上端120aから下端120bまで連続して形成された流水部(連通部)122となる。なお、斜線の矢印がある側を風上側、反対側を風下側とする。
【0016】
フィン120には、
図3に示すように、フィン120の一部を扁平管130よりも風上側に延長して突き出した突出し部170が設けられている。突出し部170には、フィン120同士の間隔を整えるためのタブ部160が設けられる。このタブ部160はフィン120に通風方向に対して並列に2本の切り込みを入れて切り起こし、通風路150に向けて立ち上げたものである。タブ部160は通風方向の両端でフィン120と連続し、
図5に示すように、タブ部160を立ち上げた後のフィン120には孔部164が形成される。タブ部160は、通風方向の風上側に形成される一端側タブ部161と風下側に形成される他端側タブ部162を有する。一端側タブ部161はタブ部160とフィン120が連続する両端のうち一端部である風上側端部160aでフィン120と連続し、通風方向に細長い長方形状に形成される。他端側タブ部162はタブ部160とフィン120が連続する両端のうち他端部である風下側端部160bでフィン120と連続している。さらに、他端側タブ部162は一端側タブ部161と連続する箇所をタブ部頂部163とし、風下側端部160bを底辺とした三角形状に形成される。一方、孔部164も一端側孔部166と他端側孔部167を有する。一端側孔部166は一端側タブ部161を立ち上げることにより形成された孔であり、通風方向に細長い長方形状に形成される。他端側孔部167は他端側タブ部162を立ち上げることにより形成された孔であり、一端側孔部166と連続する箇所を孔部頂部165とし、他端側タブ部162とフィン120が連続する辺を底辺とした三角形状に形成される。
図5に示すように、フィン120を上下方向から見たとき、他端側タブ部162のタブ部頂部163は、他端側孔部167の孔部頂部165よりも通風方向の風上側に位置するように他端側タブ部162が通風方向に延出されながら、立ち上げられている。つまり、一端側タブ部の幅と他端側タブ部の幅が異なり、タブ部頂部の位置が、孔部頂部の位置よりも一端側孔部166と他端側孔部167のうち幅が狭い方に寄っている。これにより、フィン120を積層してタブ部160が隣接するフィン120に接したとき、このタブ部頂部163より幅が拡がる他端側タブ部162の両側が、一端側孔部166の周縁に当接するため、タブ部160によってフィン120同士の間隔を整えることができる。また、他端側タブ部162が三角形状に形成されることでデルタ翼として機能し、熱交換器100の熱交換効率を向上させることができる。なお、他端側タブ部162に風下側からフィン120に渡ってリブを形成して、タブ部160の強度を上げてもよい。
【0017】
なお、タブ部160がフィン120の間隔を整えやすいように、本実施形態ではフィン120の通風方向の風上側端部近くである突出し部170にタブ部160を形成しているが、本発明はこれに限定したものではなく、タブ部160はフィン120上であればどこでもよく、適宜変更しても良い。また、本実施例のタブ部160は通風方向を向いているが、本発明はこれに限定したものではなく、適宜変更しても良い。
【0018】
なお、本実施形態では、他端側タブ部162が三角形状に形成されているが、本発明はこれに限定したものではなく、一端側タブ部161が三角形状に形成されていてもよい。また、本発明は一端側タブ部161または他端側タブ部162が三角形状であることに限定したものではなく、多角形状に適宜変更してもよい。
【0019】
以上より、本発明は、フィン120に一端側タブ部161と他端側タブ部162を備えたタブ部160を形成することで、1種類のフィン120でフィン同士の間隔を整えることができる。
【符号の説明】
【0020】
100 熱交換器
120 フィン
130 扁平管
160 タブ部