【文献】
SOURAV CHAKRAVARTY, RAJ MITTRA AND NEIL RHODES WILLIAMS,APPLICATION OF A MICROGENETIC ALGORITHM (MGA) TO THE DESIGN OF BROAD-BAND MICROWAVE ABSORBERS USING MULTIPLE FREQUENCY SELECTIVE SURFACE SCREENS BURIED IN DIELECTRICS,IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION,IEEE ANTENNAS AND PROPAGATION SOCIETY,2002年 3月,VOL. 50, NO. 3,PP. 284 TO 296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周波数選択板をM×Nセルに分割したM×Nセルモデルの各セル領域を導体セルまたは非導体セルにそれぞれ指定し、前記M×Nセルモデルにおける前記導体セルおよび前記非導体セルの配置を特定することにより前記周波数選択板を設計する設計方法であって、
Kを任意の自然数とした(M/K)×(N/K)セルモデルにおける前記導体セルおよび前記非導体セルの配置ジオメトリ群を作成する縮小セルモデル作成ステップと、
前記配置ジオメトリ群からBrute−force法を用いて所定の周波数特性が良好な優良解を抽出する優良解抽出ステップと、
前記優良解の単位セル長さを1/K倍して前記M×Nセルモデルに変換し、前記優良解のM×Nセルモデルに対して最適化処理を行い、前記周波数特性に合致する前記配置ジオメトリを抽出する最適化ステップと、
を含んだことを特徴とする周波数選択板の設計方法。
前記配置ジオメトリ群のうち、当該配置ジオメトリを連続して配列した際に、他の配置ジオメトリと同一のジオメトリが出現する配置ジオメトリを、前記他の配置ジオメトリと縮約し、前記配置ジオメトリ群に含まれる配置ジオメトリ数を低減するジオメトリ縮約ステップを更にそなえることを特徴とする請求項1記載の周波数選択板の設計方法。
前記優良解抽出ステップは、前記配置ジオメトリ群に含まれる各配置ジオメトリについて、前記(M/K)×(N/K)セルモデルの1辺の長さである配列周期を所定の範囲内で変更して、各配列周期における前記周波数特性を算出する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の周波数選択板の設計方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スペクトル領域モーメント法では、通常M×Nセルモデルの各セルを導体セルまたは非導体セルに設定する。なお、通常、計算の高速化のために高速フーリエ変換を利用するので、MおよびNは2
mや2
n(mおよびnは任意の自然数)のように設定される。
この場合、例えば16×16セルモデルでは、偏波対称性を考慮しても1層で2
36(700億通り)の変数空間となるため Brute−force法(総当り法)はおろか遺伝的アルゴリズムを用いても多大な進化ステップと時間を必要とする。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、周波数選択板の設計を効率的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる周波数選択板の設計方法は、周波数選択板をM×Nセルに分割したM×Nセルモデルの各セル領域を導体セルまたは非導体セルにそれぞれ指定し、前記M×Nセルモデルにおける前記導体セルおよび前記非導体セルの配置を特定することにより前記周波数選択板を設計する設計方法であって、Kを任意の自然数とした(M/K)×(N/K)セルモデルにおける前記導体セルおよび前記非導体セルの配置ジオメトリ群を作成する縮小セルモデル作成ステップと、前記配置ジオメトリ群からBrute−force法を用いて所定の周波数特性が良好な優良解を抽出する優良解抽出ステップと、前記優良解の単位セル長さを1/K倍して前記M×Nセルモデルに変換し、前記優良解のM×Nセルモデルに対して最適化処理を行い、前記周波数特性に合致する前記配置ジオメトリを抽出する最適化ステップと、を含んだことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる周波数選択板の設計方法は、前記配置ジオメトリ群のうち、当該配置ジオメトリを連続して配置した際に、他の配置ジオメトリと同一のジオメトリが出現する配置ジオメトリを、前記他の配置ジオメトリと縮約し、前記配置ジオメトリ群に含まれる配置ジオメトリ数を低減するジオメトリ縮約ステップを更にそなえることを特徴とする。
請求項3の発明にかかる周波数選択板の設計方法は、前記最適化ステップでは、前記優良解のM×Nセルモデルを遺伝子として遺伝的アルゴリズムを適用して前記周波数特性に合致する前記配置ジオメトリを抽出する、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかる周波数選択板の設計方法は、前記最適化ステップでは、前記周波数特性に基づくペナルティ関数を用いて前記周波数特性に合致しない前記配置ジオメトリの発現確率を低減させる、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかる周波数選択板の設計方法は、前記優良解抽出ステップは、前記配置ジオメトリ群に含まれる各配置ジオメトリについて、前記(M/K)×(N/K)セルモデルの1辺の長さである配列周期を所定の範囲内で変更して、各配列周期における前記周波数特性を算出する、ことを特徴とする。
請求項6の発明にかかる周波数選択板の設計プログラムは、請求項1から請求項5のいずれか1項記載の周波数選択板の設計方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、設計対象のM×Nセルモデルよりも小さいセルモデルでBrute−force法解析を行い、この優良解に対して最適化処理を行うので、単純な初期解を用いるよりも短時間で有効な設計解を得ることができる可能性が高くなり、周波数選択板の設計時における計算時間を短縮する上で有利となる。
請求項2の発明によれば、連続して配置した際に実質的に同一となる配置ジオメトリを縮約することができ、Brute−force法解析の計算時間を短縮する上で有利となる。
請求項3の発明によれば、遺伝的アルゴリズムを用いて効率的に合目的的な設計解を得ることができる。また、遺伝的アルゴリズムの要素数および世代数を少なくしても有効な設計解を得ることができ、周波数選択板の設計時における計算時間を短縮する上で有利となる。
請求項4の発明によれば、遺伝的アルゴリズム実行時に目的の周波数特性に基づくペナルティ関数を用いて周波数特性に合致しない配置ジオメトリの発現確率を低減させるので、周波数特性に合致した有効な配置ジオメトリを得られる確率を向上させる上で有利となる。
請求項5の発明によれば、セルモデル上の導体セル、非導体セルの配置のみならず配列周期を変更するので、目的の周波数特性により適合する周波数選択板を設計する上で有利となる。
請求項6の発明によれば、コンピュータを用いて上記の周波数選択板の設計方法を実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる周波数選択板の設計方法および周波数選択板設計プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態で説明する各処理は、
図9に示すコンピュータ20が周波数選択板設計プログラムを実行することによって実現する。
図9に示すように、コンピュータ20は、CPU2002、ROM2004、RAM2006、ハードディスク装置(HDD)2008、ディスク装置2010、キーボード2012、マウス2014、ディスプレイ2016、プリンタ2018、入出力インターフェース(I/F)2020などを有している。
ROM2004は制御プログラムなどを格納し、RAM2006はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置2008は、周波数選択板を設計するための専用のプログラム(周波数選択板設計プログラム)を格納している。
ディスク装置2010はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード2012およびマウス2014は、計測者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ2016はデータを表示出力するものであり、プリンタ2018はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ2016およびプリンタ2018によってデータを出力する。
入出力インターフェース2020は、他のコンピュータ等との間でデータの授受を行うものである。
なお、以下に示す各処理を1台のコンピュータ20で実行するとは限らず、複数台のコンピュータ20で実行するようにしてもよい。例えばステップS10〜S20は第1のコンピュータ20で、ステップS22〜S26は第2のコンピュータ20で、それぞれ行うようにしてもよい。また、後述するBrute−force法解析や遺伝的アルゴリズム演算のみを処理能力が高い高性能コンピュータで行うようにしてもよい。
【0009】
図1は、実施の形態にかかる周波数選択板の設計方法の手順を示すフローチャートである。
実施の形態にかかる周波数選択板の設計方法は、周波数選択板をM×Nセルに分割したM×Nセルモデルの各セル領域を導体セルまたは非導体セルにそれぞれ指定し、M×Nセルモデルにおける導体セルおよび非導体セルの配置を特定することにより周波数選択板を設計する。
本実施の形態では、周波数選択板内の単位ジオメトリを16×16セルに分割した16×16セルモデル(M,N=16)を用いる場合について説明する。また、積層構成は1層であるものとする。
【0010】
また、設計する周波数選択板は、所定の周波数特性が良好なことが要求される。例えば、透過帯域をαGHz±βGHzとし(αおよびβは任意の正の数)、遮蔽帯域をαGHz±βGHz以外の帯域とすることが要求される場合、この仕様をより具体的にすると、例えば(α−β)GHzから(α+β)GHzにおける透過損失がγdB以下(γは任意の正の数)、(α−δ
1)GHz以下および(α+δ
2)GHz以上(δ
1,δ
2はβより大きい正の数)の帯域における透過損失がεdB以上(εはγよりも大きい正の数)という目標性能(目標周波数特性)を設定することができる。
【0011】
さらに具体的に目標性能について例示すると、例えば要求仕様として透過帯域を9.4±0.05GHz、遮蔽帯域を9.4±0.05GHz外の範囲とする場合、目標性能を、9.35〜9.45GHzにおいて透過損失1dB以下(透過帯域性能)かつ8GHz以下及び11GHz以上で透過損失が10dB以上(遮蔽帯域性能)と設定することができる。
【0012】
まず初めに、Kを任意の自然数とした(M/K)×(N/K)セルモデルにおける導体セルおよび非導体セルの配置ジオメトリ群を作成する縮小セルモデル作成ステップを実施する(ステップS10)。
本実施の形態では、K=2として、8×8セルモデル中の64個のセルそれぞれについて、導体セルおよび非導体セルであるかを決定して配置ジオメトリ群を作成する。
ここで、周波数選択板の偏波対象性を考慮すると、8×8セルモデルは上下・左右がそれぞれ対称なジオメトリとするのが好ましい。
よって、
図2に示すように、8×8セルモデルにおいては10個のセルをそれぞれ導体セルまたは非導体セルのいずれかに決定すればよい。すなわち、配置ジオメトリ群内の配置ジオメトリは最大2
10=1024個となる。
【0013】
つぎに、8×8セルモデルでの劣等解を消去する(ステップS12)。
劣等解とは、明らかに目標性能を満たさないと予測される配置ジオメトリである。具体的には、例えば8×8セルモデル中の全セルが導体セルまたは非導体セルの場合や、導体セルの割合が極端に小さい場合(例えば64セル中導体セルが1個など)が挙げられる。
【0014】
つづいて、配置ジオメトリ群のうち、当該配置ジオメトリを連続して配列した際に、他の配置ジオメトリと同一のジオメトリが出現する配置ジオメトリを、当該他の配置ジオメトリと縮約し、配置ジオメトリ群に含まれる配置ジオメトリ数を低減するジオメトリ縮約ステップを実施する(ステップS14)。
具体的には、例えば
図3Aに示す8×8セルモデルの配置ジオメトリ30を、
図3Bのように正方形状に4つ並べると、四角で囲った領域Pに
図3Cに示す他の配置ジオメトリ32が出現する。
よって、これら
図3Aの配置ジオメトリ30と
図3Cの配置ジオメトリ32とは実質的に同一であり、いずれかに縮約可能となる。
ステップS12およびS14を経ると、ユニークな配置ジオメトリは386個に集約することができる。
【0015】
つぎに、配置ジオメトリ群からBrute−force法を用いて所定の周波数特性(目標性能)が良好な優良解を抽出する優良解抽出ステップを実施する。
優良解抽出ステップは、Brute−force法解析を実施するステップ(ステップS16)と、解析結果から優良解を抽出するステップ(ステップS18)とを含んでいる。
ステップS16では、配置ジオメトリ群に含まれる各配置ジオメトリについて、(M/K)×(N/K)セルモデルの1辺の長さである配列周期を所定の範囲内で変更ながら、各配列周期における周波数特性を算出する。すなわち、Brute−force法解析時における演算パラメータには、計算周波数および配置ジオメトリの配列周期が含まれる。
計算周波数は、透過帯域の中心周波数を中心に所定範囲、すなわちαGHz±ζ(ζはε以上の正の数)の範囲を所定周波数刻み(例えば1/ηGHzステップなど)に指定する。具体的には、例えば2.0〜18.0GHz帯を0.2GHzステップで指定する。この場合、計算対象となる周波数は計81波となる。
また、配列周期は、所定寸法範囲を所定寸法刻みで指定する。具体的には、例えば3〜50mmの範囲を1mmステップで指定する。この場合、計算対象となる配列周期は計48寸法となる。
Brute−force法解析は、上記各配置ジオメトリに対して、これらのパラメータを変化させながら全てのパターンについて透過特性を算出する。
この他、周波数選択板を多層構造にする場合には、積層構成を解析パラメータに含める。
また、周波数選択板の材料定数(比誘電率、誘電正接)、厚さ等も適宜入力する。
【0016】
ステップS18の優良解抽出では、上記目標性能を目的関数化し、各目的関数の値を成分とするベクトルとして各演算結果を表す。そして、このベクトル群をランキング化し、上位所定個の解を優良解として抽出する。
上記目標性能を例にすると、例えば目的関数をv1:9.4GHzの電力透過率(dB)の絶対値、v2:低周波帯2〜8GHzの平均電力透過率(dB)、v3:高周波帯11〜18GHzの平均電力透過率(dB)とし、各演算結果に対応するベクトル[v1;v2;v3]を生成する。そして、全てのベクトル[v1;v2;v3]から目標性能との一致度が高い(すなわちv1は大きく、v2,v3は小さい)ベクトルを上位所定個抽出する。
【0017】
本実施の形態では、例えば
図4に示す12個の解を優良解として抽出した。
図4には、上から順に配置ジオメトリを識別するジオメトリ番号、配置ジオメトリの具体的な形状、配列周期、12個の優良解の通し番号である凡例名を表記している。
12個の解のうち、通し番号5と6および10と11は、同じ配置ジオメトリの寸法違いとなっている。
図5に、
図4に示す優良解の周波数特性を示す。
図5のグラフの縦軸は電力透過率(dB)、横軸は周波数(GHz)である。
なお、
図5には比較のため、基準となるクロスダイポール開口型の周波数特性も示している(凡例名「cross」)。
優良解には、必ずしもクロスダイポール形状よりも優れた解とは言えないものも含まれている。
【0018】
つぎに、Brute−force法解析で得られた優良解の単位セル長さを1/K倍してM×Nセルモデルに変換し、優良解のM×Nセルモデルに対して最適化処理を行い、目標の周波数特性に合致するM×Nセルモデルを抽出する最適化ステップを実施する。
本実施の形態では、上記優良解のM×Nセルモデルを遺伝子として遺伝的アルゴリズム(多目的遺伝的アルゴリズム)を適用することにより、周波数特性に合致する配置ジオメトリを抽出するものとする。
なお、最適化ステップは、上記遺伝的アルゴリズムの他、例えば焼きなまし法(simulated anealing)やPSO(particle swarm optimization)等の大域的最適化手法を用いることができる。
最適化ステップは、(M/K)×(N/K)セルモデルをM×Nセルモデルに変換するステップ(ステップS20)、遺伝的アルゴリズム演算を行うステップ(ステップS22)、優良解を抽出するステップ(ステップS24)、最終設計案を決定するステップ(ステップS26)を含んでいる。
【0019】
ステップS20では、(M/K)×(N/K)セルモデルである優良解の単位セル長さを、1/K倍してM×Nセルモデルに変換する。本実施の形態では、K=2であるため、8×8セルモデルの単位セル長さを1/2倍し、16×16セルモデルに変換した。この優良解の16×16セルモデルが遺伝子の初期値(シード)となる。
【0020】
ステップS22では、要素数および世代数からなるGA(Genetic Algorithm:遺伝子アルゴリズム)パラメータを指定して遺伝的アルゴリズム演算を行う。本実施の形態では、異なるGAパラメータを指定して複数回の遺伝的アルゴリズム演算を行った。
遺伝的アルゴリズム演算では、初期要素集合の生成を始め、選択、交叉、突然異変などの処理を指定された世代数分行う。
また、遺伝的アルゴリズム演算においては、目標の周波数特性に基づくペナルティ関数を用いて、当該周波数特性に合致しない配置ジオメトリの発現確率を低減させるようにしてもよい。ペナルティ関数とは、目標の周波数特性を満たさない(目的関数値が閾値外にある)遺伝子に対してペナルティを与えるものである。
本実施の形態では、複数回実施した遺伝的アルゴリズム演算のうち、ペナルティ関数を用いる場合と、ペナルティ関数を用いない場合とを併用した。
【0021】
ステップS24では、遺伝的アルゴリズム演算における優良解を抽出する。
具体的には、上記複数回行った遺伝的アルゴリズム演算のそれぞれの回において、パレート解を抽出し、それらパレート解から重複解を除き、例えば基準となるクロスダイポール開口型よりも優れた解を優良解として抽出する。
図6に遺伝的アルゴリズム演算における優良解の一例を、
図7に
図6に示す優良解の周波数特性を示す。
図7のグラフの縦軸は電力透過率(dB)、横軸は周波数(GHz)である。また、
図6には、上から順に10個の優良解の識別番号(No.)である凡例名、配置ジオメトリを識別するジオメトリ番号、配置ジオメトリの具体的な形状、配列周期を表記している。
No.1の配置ジオメトリは、クロスダイポール開口型そのものであるが、遺伝的アルゴリズム演算の結果、このような解が抽出された。
No.2〜6,10の配置ジオメトリは、クロスダイポールの変形版であり面内で45°回転されていることが特徴的である。
No.7,8はダイポールの末端にロードが付加されたクロスダイポール変種、No.9はエルサレムクロスと形態分けできる。
図7に示す周波数特性から、例えばピークが鋭すぎる解や形状的に単純すぎる解を除くと、
図6に示した優良解のうちNo.6とNo.7の配置ジオメトリが設計案の候補となる。
【0022】
その後、ステップS26で最終設計案を決定する。
このステップでは、例えばステップS24で抽出した候補の配置ジオメトリについて、Brute−force法解析時よりも更に細かい寸法刻みで配列周期を変更しながら周波数特性を算出し、最終設計案を決定する。
この時、必要があれば、例えば実際に使用される材料に合わせて材料定数の微調整を行ったり、周波数選択板の設置場所に合わせて傾斜角度を適用して再計算を行ってもよい。
より詳細には、上記材料定数や傾斜角度を反映した上で、No.6およびNo.7の配置ジオメトリについて、優良解として抽出された際の厚さに対して±所定厚さの範囲でBrute−force法解析時よりも更に細かい寸法刻みで周波数特性を算出する。
例えば、No.6の配置ジオメトリであれば、優良解における配列周期1.49cm±2mmの範囲である1.29cm〜1.69cmの範囲において、0.1mm刻みで配列周期を変更し、各配列周期における周波数特性を算出する。また、No.7の配置ジオメトリであれば、優良解における配列周期1.38cm±2mmの範囲である1.18cm〜1.58cmの範囲において、0.1mm刻みで配列周期を変更し、各配列周期における周波数特性を算出する。
この結果、9.4GHzにおける最良の配列周期は、No.6の配置ジオメトリでは1.51cm、No.7の配置ジオメトリでは1.33cmであった。また、No.6およびNo.7の周波数特性を比較すると、No.6の方がシャープなフィルタ特性を示していたが、高周波帯で顕著なピークが見られたため、より目的関数に適合しているのはNo.7であった。
よって、最終設計案はNo.7の配置ジオメトリで配列周期1.33cmと決定した。
【0023】
図8は、本願発明および従来技術における計算所要時間を示す表である。
図8の値は、いずれも通常のコンピュータ20(パーソナルコンピュータ)を用いており、プログラミング言語も同一(Scilab)である。
従来技術では、遺伝的アルゴリズムを用いて16×16セルモデルで有効な設計解を得るためには500要素×20世代程度の計算量が必要となる。この計算量は、通常のパーソナルコンピュータを用いておよそ73時間かかる計算量である。
一方、本願発明では、16×16セルモデルの遺伝的アルゴリズム演算を200要素×20世代行えば、ほぼ同等な設計解が得られる。この計算量は、通常のパーソナルコンピュータを用いた場合およそ2時間の計算量である。
また、本願発明では、16×16セルモデルの遺伝的アルゴリズム演算の前に8×8セルモデルの Brute−force法解析を行う必要があるが、これに必要な時間はおよそ7時間である。なお、 Brute−force法解析は個々のパラメータに対して独立であるため、容易に複数のパーソナルコンピュータに振り分けて計算を行うことができる。そのようにすれば、この工程の計算時間は更に短縮することができる。
よって、本願発明を用いた周波数選択板の設計方法では、従来技術のおよそ1/8である計9時間の計算時間で設計解を算出することができ、周波数選択板の設計に必要な計算時間を大幅に短縮することができる。
【0024】
以上説明したように、実施の形態に係る周波数選択板の設計方法は、設計対象のM×Nセルモデルよりも小さいセルモデルでBrute−force法解析を行い、単純な初期解を用いるよりも短時間で有効な設計解を得ることができる可能性が高くなり、周波数選択板の設計時における計算時間を短縮する上で有利となる。
また、実施の形態に係る周波数選択板の設計方法は、連続して配置した際に実質的に同一となる配置ジオメトリを縮約することができ、Brute−force法解析の計算時間を短縮する上で有利となる。
また、実施の形態に係る周波数選択板の設計方法は、遺伝的アルゴリズムを用いて効率的に合目的的な設計解を得ることができる。また、遺伝的アルゴリズムの要素数および世代数を少なくしても有効な設計解を得ることができ、周波数選択板の設計時における計算時間を短縮する上で有利となる。
また、実施の形態に係る周波数選択板の設計方法において、遺伝的アルゴリズム実行時に目的の周波数特性に基づくペナルティ関数を用いて周波数特性に合致しない配置ジオメトリの発現確率を低減させるようにすれば、周波数特性に合致した有効な配置ジオメトリを得られる確率を向上させる上で有利となる。
また、実施の形態に係る周波数選択板の設計方法は、セルモデル上の導体セル、非導体セルの配置のみならず配列周期を変更するので、目的の周波数特性により適合する周波数選択板を設計する上で有利となる。