特許第6672956号(P6672956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧 ▶ 三菱自動車エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6672956-添加剤容器 図000002
  • 特許6672956-添加剤容器 図000003
  • 特許6672956-添加剤容器 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672956
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】添加剤容器
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20200316BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   B60K13/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-68274(P2016-68274)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-180277(P2017-180277A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】國井 謙一
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−533989(JP,A)
【文献】 特開2009−144644(JP,A)
【文献】 特開2015−131611(JP,A)
【文献】 特許第6177922(JP,B2)
【文献】 米国特許第9732654(US,B2)
【文献】 特開2015−063242(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0114505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を浄化する添加剤を貯留し、車両に搭載される添加剤容器において、
下面に固定され、前記添加剤を外部へ送出するポンプと、
前記下面に突設され、前記ポンプから放射状に延設された補強リブと、
前記補強リブに隣接して配置され、前記ポンプの下方を被覆する保護カバーが固定されるカバー固定部と、
を備えることを特徴とする、添加剤容器。
【請求項2】
前記ポンプが、すり鉢状に形成された前記下面の底に配置される
ことを特徴とする、請求項1記載の添加剤容器。
【請求項3】
下面視で前記補強リブの延長線上に配置され、前記車両に固定されるタンク固定部を備える
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の添加剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン排気浄化用の添加剤を貯留する添加剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス成分を還元して浄化する排気浄化システムを備えた車両において、浄化対象物質に対する還元作用を持った添加剤のタンクを搭載したものが知られている。浄化対象物質が窒素酸化物(NOx)である場合、タンクの内部には尿素水溶液やアンモニア水溶液といった添加剤が貯留されている。タンク内の添加剤はポンプで吸い上げられ、排気通路に介装された選択還元触媒よりも上流側で、インジェクタを介して排ガス中に噴射される。これにより、窒素酸化物が選択還元触媒で還元され、排気が浄化される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-092114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンク内の添加剤をインジェクタへ送出するポンプの多くは、タンク近傍の車体に固定される。例えば、特許文献1に記載の技術では、タンクを車体に固定する複数のブラケット(フレーム側ブラケット,タンク側ブラケット)の間にポンプが設置されている。しかしながら、タンクと車体との間に十分な隙間がなければ、ポンプを設置できない。そのため、タンクを車体から離れた位置にレイアウトする必要が生じ、空間利用効率を高めにくい。特に、車両のフロア下にタンクを設置したい場合には、このようなレイアウト上の制約が大きな問題となる。
【0005】
一方、ポンプをタンクから離れた位置に配置して、ポンプとタンクとの間を吸引用配管材で接続すれば、レイアウト上の制約が解消されうる。しかしこの場合、吸引用配管材の折れ曲がり変形や破損の可能性が生じるほか、圧力損失によるポンプ負荷が増大する。したがって、添加剤供給システムの保護性を向上させる上では、ポンプとタンクとを近接配置することが望まれる。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、空間利用効率を高めつつ、添加剤供給システムの保護性を向上させることのできる添加剤容器を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する添加剤容器は、エンジンの排気を浄化する添加剤を貯留し、車両に搭載される添加剤容器である。本添加剤容器は、その下面に固定され、前記添加剤を外部へ送出するポンプを備える。また、前記下面に突設され、前記ポンプから放射状に延設された補強リブを備える。さらに、前記補強リブに隣接して配置され、前記ポンプの下方を被覆する保護カバーが固定されるカバー固定部を備える。
(2)前記ポンプが、すり鉢状に形成された前記下面の底に配置されることが好ましい。
(3)下面視で前記補強リブの延長線上に配置され、前記車両に固定されるタンク固定部を備えることが好ましい
【発明の効果】
【0008】
ポンプを下面に固定することで、タンクと車体との隙間寸法を任意に設定することが可能となり、空間利用効率を高めることができる。また、ポンプまわりに放射状の補強リブを設けることで、タンクの保護性やポンプの安定性を向上させることができる。したがって、空間利用効率を高めつつ、添加剤供給システムの保護性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のタンク(添加剤容器)が適用された車両の下面図である。
図2】タンクを拡大して示す下面図である。
図3】(A)は図2のA方向矢視図、(B)は図2のB−B拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態としての添加剤容器を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
[1.構成]
本実施形態のタンク1(添加剤容器)は、図1に示す車両10に適用される。車両10のフロア下には、複数のブラケットを介してタンク1が車体に固定される。このタンク1は、排気浄化用の尿素SCRシステム(Urea Selective Catalytic Reduction System)で使用される添加剤(例えば、尿素水溶液,アンモニア水溶液など)を貯留する容器である。尿素SCRシステムとは、エンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するための排気浄化システムの一種である。本実施形態の尿素SCRシステムでは、排気通路上に介装されたNOx選択還元触媒の上流側で尿素水溶液がインジェクタから噴射され、尿素の加水分解によって生成されるアンモニアを還元剤として、窒素酸化物が触媒上で窒素に還元される。この種の尿素SCRシステムは、ディーゼルエンジンやリーンバーンエンジンを搭載した自動車や作業機械,船舶,発電施設などにおいて広く普及している。
【0012】
タンク1の固定対象となる車体は、サイドメンバ11やクロスメンバ12,フロアパネル13(リヤフロアパネル)などである。サイドメンバ11,クロスメンバ12は、車両10のフレーム部材として機能する部位であり、フロアパネル13との間に閉断面の構造を形成する。サイドメンバ11は車幅方向(左右方向)に間隔を空けて配置され、車両10の車長方向(車両前後方向)に延設される。また、クロスメンバ12は左右のサイドメンバ11に接続され、車幅方向に延設される。図1中のタンク1は、前端部がクロスメンバ12に固定され、左端部がサイドメンバ11に固定される。また、後端部はフロアパネル13やその補強材に対して固定される。
【0013】
タンク1の下方は保護カバー2で被覆され、路面からの跳ね石によるチッピング摩耗や泥水による汚損が防止される。この保護カバー2は、少なくともタンク1に対して固定され、必要に応じてサイドメンバ11やクロスメンバ12,フロアパネル13に対して固定される。なお、タンク1及び保護カバー2は金属や樹脂を成形して製造される。保護カバー2を取り外した状態におけるタンク1の下面図を、図2に示す。
【0014】
タンク1の下面4には、タンク1内の添加剤を吸い込んで外部へと送給するためのポンプ3が固定される。ポンプ3から吐出された添加剤は、添加剤配管を介してインジェクタに供給され、エンジンの運転状態に応じてインジェクタから排ガス中へと噴射される。ポンプ3の位置は、タンク1のほぼ中央部とされる。タンク1の下面4には、少なくとも周囲よりも下方にへこんだ形状の凹部が形成される。好ましくは、この凹部の形状がすり鉢状に形成される。
【0015】
ここでいう「すり鉢状」とは、タンク1の内側において中央部が最も低く、外縁に向かって徐々に高くなるようにへこんだ形状を意味する。したがって、タンク1の下面4の形状は、円錐状のへこみ(いわゆる蟻地獄の巣の形状)には限定されない。本実施形態の下面4の形状は、図3(A)に示すように、断面が二段階の階段状となるへこみ形状とされる。また、ポンプ3は、タンク1の内側において最も低い位置に配置される。このように、すり鉢状の下面4の底にポンプ3を配置することで、水平な面にポンプ3を配置した場合と比較して、添加剤の無効残量が減少する。また、ポンプ3の吸込み口から液面までの高さの平均値が増大し、ポンプ3に流入する添加剤の平均圧力(静圧)が上昇する。
【0016】
タンク1の下面4には、剛性向上のための補強リブ5が突設される。補強リブ5は、下面4をその板厚方向内側(又は外側)に向かって突出させた部位をライン状に延ばしたものである。図2に示すように、補強リブ5の延設方向は、ポンプ3を中心とした放射方向とされる。これにより、下面4の剛性が高まり、ポンプ3の荷重がタンク1の下面4の全体に分散しやすくなるとともに、タンク1自体の変形が抑制される。図2に示す例では、ポンプ3を中心として、左前,右前,左後,右後の四方向へ延びる補強リブ5が形成されている。本実施形態では、図3(B)に示すように、下面4を部分的にタンク1の内側に向かって突出させることによって、補強リブ5が形成されている。これにより、タンク1の下面4のうちポンプ3が取り付けられた部位よりも下方へと、補強リブ5が飛び出すことがなく、タンク1の下方スペースが確保される。
【0017】
タンク1の下面視で補強リブ5の延長線上には、タンク1と車体との接続箇所となるタンク固定部6が配置される。タンク固定部6には、締結具が挿通される締結孔8が穿孔される。締結孔8に挿通された締結具を車体側のブラケットなどに締結することで、タンク1が車体に固定される。図2に示す例では、四本の補強リブ5のそれぞれを延長した先にタンク固定部6が配置されている。これにより、タンク1のうち剛性の高い部位が車体に固定されることになり、タンク1の固定状態が安定化する。
【0018】
図2に示すように、補強リブ5の近傍には、保護カバー2をタンク1の下方に吊り下げて固定するためのカバー固定部7が設けられる。カバー固定部7には、締結具が螺合するネジ穴9が形成される。ネジ穴9に取り付けられた締結具で保護カバー2を固定することで、タンク1の下方に保護カバー2が固定される。図2に示す例では、四本の補強リブ5のそれぞれにおいて、補強リブ5に隣接する位置にカバー固定部7が配置されている。これにより、タンク1のうち剛性の高い部位でカバー固定部7が支えられることになり、カバー固定部7の固定状態が安定化する。
【0019】
[2.作用,効果]
[1]添加剤のポンプ3をタンク1の下面4に固定することで、タンク1と車体との隙間寸法を任意に設定することが可能となる。すなわち、タンク1と車体とを接続するブラケットの隙間にポンプ3を設置するような既存の構造と比較して、スペース効率(空間利用効率)を高めることができる。また、ポンプ3のまわりに放射状の補強リブ5を設けることで、下面4の剛性を高めることができ、タンク1の保護性やポンプ3の安定性を向上させることができる。したがって、簡素な装置構成で添加剤供給システムの保護性を向上させることができる。
【0020】
[2]ポンプ3をすり鉢状の下面4の底に固定することで、下面4を平坦にした場合と比較して無効残量を削減することができる。また、ポンプ3に流入する添加剤の静圧を高めることができる。これにより、ポンプ3内でのキャビテーションの発生を抑制することができ、ポンプ3や添加剤配管の保護性を向上させることができる。したがって、簡素な装置構成で添加剤供給システムの保護性を向上させることができる。
【0021】
[3]図2に示すように、補強リブ5の延長線上にタンク固定部6を設けることで、補強リブ5が剛性を向上させている部位を利用してタンク1の固定状態を改善することができる。つまり、タンク1の固定状態を安定化することができ、タンク1の保護性をさらに向上させることができる。
[4]図2に示すように、カバー固定部7を補強リブ5に隣接配置することで、補強リブ5が剛性を向上させている部位を利用して保護カバー2の固定状態を改善することができる。つまり、保護カバー2の固定状態を安定化することができ、タンク1の保護性をさらに向上させることができる。
【0022】
[3.変形例]
上述の実施形態では、ブラケットを介して車体に固定されるタンク1を例示したが、これらの取付金具は省略可能である。すなわち、車体に対してタンク1を直接的に固定する構造としてもよい。また、上述の実施形態では、尿素SCRシステムのタンク1について詳述したが、タンク1に貯留される添加剤の種類は尿素水に限定されない。NOx選択還元触媒を利用した排気浄化システムにおいては、尿素の代わりにアンモニアを使用することがある。したがって、アンモニア水溶液を貯留する添加剤容器として、上記のタンク1を用いることができる。また、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)を利用した排気浄化システムにおいては、PM(パティキュレート・マター)の燃焼を促進するために、排気管内に炭化水素(HC,未燃燃料)を噴射することがある。この場合、燃料を貯留する添加剤容器として、上記のタンク1を用いることもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 タンク
2 保護カバー
3 ポンプ
4 下面
5 補強リブ
6 タンク固定部
7 カバー固定部
8 締結孔
9 ネジ穴
10 車両
11 サイドメンバ
12 クロスメンバ
13 フロアパネル
図1
図2
図3