特許第6672975号(P6672975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000002
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000003
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000004
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000005
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000006
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000007
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000008
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000009
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000010
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000011
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000012
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000013
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000014
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000015
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000016
  • 特許6672975-脈波検出装置及び生体情報測定装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6672975
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】脈波検出装置及び生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   A61B5/02 310M
   A61B5/02 310P
【請求項の数】2
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-81950(P2016-81950)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-189502(P2017-189502A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】北川 毅
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】小椋 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】福塚 正幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】松村 直美
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 広幸
(72)【発明者】
【氏名】若宮 祐之
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−288228(JP,A)
【文献】 特開2001−161650(JP,A)
【文献】 特開平5−184548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/02 − 5/03
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向に並ぶ複数の圧力検出素子からなる2つの素子列が前記第一の方向に直交する第二の方向に間隔を空けて配列されたセンサ部と、
前記第一の方向が生体の体表面下の動脈の伸びる方向と交差する状態で前記体表面に前記センサ部を押圧する押圧部と、
前記第一の方向に伸びる第一の軸と前記第二の方向に伸びる第二の軸の各々の周りに前記センサ部を回転させる回転機構と、を備え、
前記2つの素子列の前記第二の方向の配列間隔が、5mm以上15mm以下であり、
前記第二の軸の周りの回転角度が最適角度に制御され、且つ、前記第一の軸の周りの回転角度が最適角度に制御された状態で前記圧力検出素子が検出する圧力信号の交流成分の大きさに基づいて前記複数の圧力検出素子の中から最適圧力検出素子が決定され、前記最適圧力検出素子の検出する圧力信号から生体情報が算出される脈波検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の脈波検出装置と、
前記最適圧力検出素子により検出された圧力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備える生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波検出装置及び生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手首の橈骨動脈等の動脈が通る生体部位の体表面に圧力センサを接触させた状態で、この圧力センサにより検出される情報を用いて脈拍、心拍、又は、血圧等の生体情報を測定することのできる生体情報測定装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、複数の圧力検出素子からなる複数の素子列を有する圧力センサを、この複数の素子列の配列方向と直交する方向(動脈と直交する方向)に伸びる軸の周りに回転させる駆動部を有する生体情報測定装置が開示されている。この生体情報測定装置は、複数の素子列の各々により検出された脈波のうちの最大振幅値同士を比較し、これらの振幅値が一致するように圧力センサを回転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−288228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の生体情報測定装置は、複数の素子列を有するため、脈波の検出精度を向上させる効果が期待できる。しかし、特許文献1には、複数の素子列の間隔をどの程度に設定するかについて具体的に記載されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、脈波の検出精度を向上させることのできる脈波検出装置とこれを備える生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の脈波検出装置は、第一の方向に並ぶ複数の圧力検出素子からなる2つの素子列が前記第一の方向に直交する第二の方向に間隔を空けて配列されたセンサ部と、前記第一の方向が生体の体表面下の動脈の伸びる方向と交差する状態で前記体表面に前記センサ部を押圧する押圧部と、前記第一の方向に伸びる第一の軸と前記第二の方向に伸びる第二の軸の各々の周りに前記センサ部を回転させる回転機構と、を備え、前記2つの素子列の前記第二の方向の配列間隔が、5mm以上15mm以下であり、前記第二の軸の周りの回転角度が最適角度に制御され、且つ、前記第一の軸の周りの回転角度が最適角度に制御された状態で前記圧力検出素子が検出する圧力信号の交流成分の大きさに基づいて前記複数の圧力検出素子の中から最適圧力検出素子が決定され、前記最適圧力検出素子の検出する圧力信号から生体情報が算出されるものである。
【0008】
本発明の生体情報測定装置は、前記脈波検出装置と、前記圧力検出素子により検出された圧力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脈波の検出精度を向上させることのできる脈波検出装置とこれを備える生体情報測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である生体情報測定装置の脈波検出部100の外観構成を示す模式図である。
図2図1に示す脈波検出部100の拡大図である。
図3図1に示す装着状態での脈波検出部100を利用者の肘側から見た図である。
図4図1に示す装着状態での脈波検出部100を手首との接触部位側から見た図である。
図5】本実施形態の生体情報測定装置の脈波検出部100以外の部分のブロック構成を示す図である。
図6】本実施形態の生体情報測定装置の連続血圧測定モードの動作を説明するためのフローチャートである。
図7図6に示すステップS3の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8図7のステップS38で選択された選択素子列において橈骨動脈上に位置する注目素子により検出される圧力信号の変化を示す図である。
図9図6に示すステップS5の詳細を説明するためのフローチャートである。
図10図1に示す脈波検出部100のロール角を3つの値に制御した状態を示す図である。
図11図10に示すようにロール角が制御された状態で選択素子列の各圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルと、この各圧力検出素子の位置との関係を示すグラフである。
図12図6に示すステップS8の詳細を説明するためのフローチャートである。
図13】第一注目素子と第二注目素子により検出される圧力信号の一例を示す図である。
図14】第一注目素子と第二注目素子により検出される圧力信号の一例を示す図である。
図15図6に示すステップS5の詳細処理の変形例を示すフローチャートである。
図16】素子列の動脈方向の位置を変えながら脈波を検出した実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である生体情報測定装置の脈波検出部100の外観構成を示す模式図である。本実施形態の生体情報測定装置は、図示しないバンドにより、生体情報の測定対象となる動脈(図1の例では橈骨動脈T)が内部に存在する生体部位(図1の例では利用者の左手の手首)に装着して用いられる。
【0013】
図2は、図1に示す脈波検出部100の拡大図である。図3は、図1に示す装着状態での脈波検出部100を利用者の肘側から見た図である。図4は、図1に示す装着状態での脈波検出部100を手首との接触部位側から見た図である。図1図4は、脈波検出部100を模式的に示したものであり、各部の寸法や配置等を限定するものではない。
【0014】
脈波検出部100は、空気袋2を内蔵する筐体1と、空気袋2に固定された平面状の部材である平板部3と、平板部3に対して2軸回転機構5aにより2つの軸の各々を中心に回転可能に支持された回動部5と、回動部5の平板部3側とは反対側の平面に設けられたセンサ部6とを備える。
【0015】
空気袋2は、図1に示すように、脈波検出部100が手首に装着された状態で、センサ部6の押圧面6bを生体部位(手首)の体表面に対して押圧する押圧部として機能する。押圧部は、センサ部6を動脈に対して押圧できる機構であれば何でもよく、空気袋を用いたものには限定されない。
【0016】
空気袋2は、図示しないポンプにより、内部の空気量が制御されることで、空気袋2に固定された平板部3を平板部3の表面(回動部5側の平面)に垂直な方向に移動させる。
【0017】
図1に示す装着状態では、脈波検出部100に含まれるセンサ部6の押圧面6bが利用者の手首の皮膚に接触する。この状態で空気袋2に注入される空気量が増えることで、空気袋2の内圧が増加し、センサ部6は体表面に向けて押圧される。以下、センサ部6による体表面への押圧力は、空気袋2の内圧と等価であるとして説明する。
【0018】
図4に示すように、センサ部6は、一方向である方向Bに並ぶ複数個の圧力検出素子6aからなる素子列60と、方向Bに並ぶ複数個の圧力検出素子7aからなる素子列70と、を有する。素子列60と素子列70は方向Bと直交する方向Aに配列されている。脈波検出部100が手首に装着された状態では、素子列60が末梢側に配置され、素子列70が中枢側に配置される。
【0019】
各圧力検出素子6aと、この圧力検出素子6aと方向Bでの位置が同じ圧力検出素子7aとがペアを構成し、センサ部6には、このペアが方向Bに複数配列された構成となっている。圧力検出素子6aと圧力検出素子7aは、それぞれ、例えば、歪ゲージ抵抗式、半導体ピエゾ抵抗式、又は、静電容量式等の素子が用いられる。
【0020】
素子列60と素子列70に含まれる各圧力検出素子は同一平面上に形成されており、この平面が樹脂等の保護部材によって保護されている。各圧力検出素子が形成された平面と、この平面を保護する保護部材の表面とは平行になっており、この保護部材の表面が押圧面6bを構成する。
【0021】
各圧力検出素子6a(7a)は、その配列方向が橈骨動脈Tと交差(略直交)するように橈骨動脈Tに対して押圧されることにより、橈骨動脈Tから発生して皮膚に伝達される圧力振動波、すなわち脈波を検出することができる。
【0022】
圧力検出素子6a(7a)の配列方向の間隔は、橈骨動脈T上に必要かつ充分な数が配置されるように充分小さくされている。圧力検出素子6a(7a)の配列長さは、橈骨動脈Tの径寸法より必要かつ充分に大きくされている。
【0023】
図4に示すように、2軸回転機構5aは、空気袋2による平板部3の押圧方向に直交する2つの軸である第一の軸X及び第二の軸Yの各々を中心に回動部5を回転させるための機構である。
【0024】
2軸回転機構5aは、後述する回転駆動部10によって回転駆動されて、平板部3の表面上に設定された互いに直交する第一の軸X及び第二の軸Yの各々を中心に回動部5を回転させる。
【0025】
第一の軸Xは、素子列60又は素子列70における圧力検出素子の配列方向(方向B)に伸びる軸である。第一の軸Xは、図4の例では、素子列60と素子列70との間(図4の例では中間)に設定されている。第一の軸Xの方向Aにおける位置は任意である。
【0026】
第二の軸Yは、素子列60と素子列70の配列方向(方向A)に伸びる軸である。第二の軸Yは、図4の例では、素子列60と素子列70をそれぞれ均等に2分割する直線上に設定されている。第二の軸Yの方向Bにおける位置は任意である。
【0027】
回動部5が第一の軸Xを中心に回転することで、センサ部6は第一の軸Xの周りに回転する。また、回動部5が第二の軸Yを中心に回転することで、センサ部6は第二の軸Yの周りに回転する。
【0028】
以下では、センサ部6の第一の軸Xの周りへの回転をピッチ回転という。また、センサ部6の第一の軸Xの周りの回転角度のことをピッチ角という。また、センサ部6の第二の軸Yの周りへの回転をロール回転という。また、センサ部6の第二の軸Yの周りの回転角度のことをロール角という。
【0029】
ピッチ角は、押圧方向に対して垂直な面と押圧面6bとのなす角度で定義される。押圧面6bが押圧方向に対して垂直になっている状態はピッチ角=0度である。この状態からセンサ部6を回転可能な方向の一方の方向(プラス方向)にピッチ回転させたときのピッチ角をプラスの値とし、センサ部6を該一方の方向の逆方向(マイナス方向)にピッチ回転させたときのピッチ角をマイナスの値とする。
【0030】
以下では、ピッチ角=0度の状態から、素子列60が体表面に近づく方向にセンサ部6が回転する方向(図1において反時計回りの方向)をピッチ回転のプラス方向とし、素子列60が体表面から離れる方向にセンサ部6が回転する方向(図1において時計回りの方向)をピッチ回転のマイナス方向とする。
【0031】
ロール角は、押圧方向に対して垂直な面と押圧面6bとのなす角度で定義される。押圧面6bが押圧方向に対して垂直になっている状態はロール角=0度である。この状態からセンサ部6を回転可能な方向の一方の方向(プラス方向)にロール回転させたときのロール角をプラスの値とし、センサ部6を該一方の方向の逆方向(マイナス方向)にロール回転させたときのロール角をマイナスの値とする。
【0032】
以下では、図3において、ロール角=0度の状態からセンサ部6が反時計回りに回転する方向をロール回転のプラス方向とし、ロール角=0度の状態からセンサ部6が時計回りに回転する方向をロール回転のマイナス方向とする。
【0033】
ピッチ角とロール角は、それぞれ複数の値に制御可能である。
【0034】
図5は、本実施形態の生体情報測定装置の脈波検出部100以外の部分のブロック構成を示す図である。
【0035】
生体情報測定装置は、脈波検出部100と、回転駆動部10と、空気袋駆動部11と、装置全体を統括制御する制御部12と、表示部13と、操作部14と、メモリ15と、を備える。
【0036】
脈波検出部100のセンサ部6には、温度検出部7が設けられている。温度検出部7は、圧力検出素子6a,7a近傍の温度を検出し、検出した温度情報を制御部12に入力する。
【0037】
回転駆動部10は、脈波検出部100の2軸回転機構5aを駆動するアクチュエータである。回転駆動部10は、制御部12の指示にしたがい2軸回転機構5aを駆動して、センサ部6を第一の軸Xの周りに回転させたり、センサ部6を第二の軸Yの周りに回転させたりする。
【0038】
空気袋駆動部11は、ポンプ等により構成され、制御部12の指示のもと、空気袋2に注入する空気量(空気袋2の内圧)を制御する。
【0039】
表示部13は、生体情報等の各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶表示装置等により構成される。
【0040】
操作部14は、制御部12に対する指示信号を入力するためのインターフェースであり、生体情報の測定を含む各種動作の開始を指示するためのボタン等により構成される。
【0041】
メモリ15は、センサ部6により検出されて生体情報の算出に利用される圧力信号及び算出された生体情報等の各種情報を記憶する記憶媒体であり、例えばフラッシュメモリ等により構成される。メモリ15は着脱可能なものであってもよい。
【0042】
制御部12は、プロセッサを主体に構成されており、プロセッサの実行するプログラム等が記憶されるROM(Read Only Memory)、及び、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0043】
このプログラムは、制御プログラムを含む。ROMは、プログラムをコンピュータが読取可能な一時的でない(non−transitory)記憶媒体である。ROMに記憶されたプログラムは、ネットワークを介して別の機器からダウンロードされて記憶されたものであってもよい。
【0044】
制御部12は、プロセッサが制御プログラムを含むプログラムを実行することにより、以下の機能を有する。
【0045】
制御部12は、空気袋駆動部11を制御して空気袋2内の空気量を調整することで、センサ部6による手首への押圧力を制御する。制御部12は、押圧力制御部として機能する。
【0046】
制御部12は、回転駆動部10を制御してセンサ部6を回転させて、センサ部6のピッチ角及びロール角を制御する。制御部12は、回転制御部として機能する。
【0047】
制御部12は、温度検出部7により検出された温度に基づいて、圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号(出力信号)の基準レベルを設定する。この基準レベルの設定により、圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号のレベルは、設定された基準レベルを基準にした値として処理される。制御部12は基準レベル設定部として機能する。
【0048】
制御部12は、センサ部6のピッチ角を第一の値に制御し、かつ、センサ部6のロール角を第二の値に制御し、かつ、空気袋2によってセンサ部6を体表面に押圧した状態(以下、脈波計測状態という)で、センサ部6の中から選択された圧力検出素子により検出される圧力信号をメモリ15に記憶する。制御部12は記憶制御部として機能する。
【0049】
制御部12は、脈波計測状態で検出されてメモリ15に記憶された圧力信号に基づいて生体情報を算出し、算出した生体情報をメモリ15に記憶する。制御部12は生体情報算出部として機能する。
【0050】
生体情報としては、脈波に基づいて算出できるものであれば何でもよい。例えば、制御部12は、生体情報として、SBP(Systolic Blood pressure)及びDBP(Diastolic Blood pressure)等の血圧情報、脈拍数等の脈拍情報、又は、心拍数等の心拍情報、等を算出する。
【0051】
なお、生体情報算出部は、生体情報測定装置とは別の電子機器が有するものであってもよい。この場合は、生体情報測定装置のメモリ15に記憶された圧力信号が電子機器に転送され、この電子機器において生体情報が算出され記憶される。
【0052】
制御部12は、空気袋2によってセンサ部6を体表面に押圧した状態で、センサ部6の圧力検出素子により検出される圧力信号に基づいて設定可能な複数のロール角の中から上記の第二の値を決定し、ロール角をこの決定した第二の値に制御する。
【0053】
そして、制御部12は、ロール角を第二の値に制御した状態でセンサ部6の1つ又は複数の圧力検出素子により検出される圧力信号に基づいて、設定可能な複数のピッチ角の中から上記の第一の値を決定する。制御部12は回転角決定部として機能する。
【0054】
脈波検出部100、回転駆動部10、及び、空気袋駆動部11と、制御部12の機能ブロック(押圧力制御部、回転制御部、基準レベル設定部、記憶制御部、回転角決定部)とにより脈波検出装置が構成される。
【0055】
以下、本実施形態の生体情報測定装置の動作について説明する。本実施形態の生体情報測定装置は、1拍毎にSBP及びDBPを算出して表示部13に表示する連続血圧測定モードを有する。
【0056】
図6は、本実施形態の生体情報測定装置の連続血圧測定モードの動作を説明するためのフローチャートである。
【0057】
なお、脈波検出部100は、血圧測定指示がなされる前の初期状態では、ピッチ角とロール角が共に例えば0度に設定され、押圧面6bが押圧方向に垂直になっているものとする。
【0058】
ここでは、ピッチ角とロール角をそれぞれ0度とした状態を初期状態とするが、これに限らない。例えば、脈波検出部100が手首に装着された状態で、その手首の形状に応じて、押圧面6bが皮膚に均等に接触するように、回転駆動部10がセンサ部6をロール回転又はピッチ回転させた状態を初期状態としてもよい。
【0059】
血圧測定指示があると、制御部12は、温度検出部7により検出された温度情報を取得し、この温度情報に基づいて、センサ部6の各圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号の基準レベルの設定を行う(ステップS1)。
【0060】
本実施形態では、センサ部6に含まれる各圧力検出素子6a,7aとして、押圧面6bが物体に接触していない状態で検出される圧力信号(オフセットレベル)が温度によって変化するものを用いている。
【0061】
そこで、制御部12は、温度検出部7により検出された温度に基づいて、圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号の基準レベルを設定する。この基準レベルの設定により、圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号のレベルは、設定された基準レベルを基準にした値として処理される。
【0062】
圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号には、拍動に依存しない直流成分と、拍動によって変動する交流成分とが含まれる。拍動によって変動した圧力信号の波形の立ち上がり点のレベルが直流成分のレベル(DCレベル)である。拍動によって変動した圧力信号の波形の立ち上がり点とピークとの差分値が交流成分のレベル(ACレベル)である。
【0063】
ステップS1の後、制御部12は、空気袋駆動部11を制御して空気袋2への空気の注入を開始し、センサ部6による体表面への押圧力を増加させる(ステップS2)。
【0064】
制御部12は、ステップS2で開始した押圧力の増加過程において素子列60及び素子列70の各々の圧力検出素子により検出される圧力信号に基づいて、素子列60と素子列70のいずれか一方を選択する(ステップS3)。
【0065】
ここでは、制御部12は、素子列60と素子列70のうち、増加過程においてより速く橈骨動脈Tを閉塞できたものを選択する。以下、ステップS3の処理について、図7を参照して詳述する。
【0066】
図7は、図6に示すステップS3の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0067】
制御部12は、ステップS2で開始した押圧力の増加過程において、素子列60の各圧力検出素子6aにより検出される圧力信号に基づいて、素子列60を構成する全ての圧力検出素子6aの中から、橈骨動脈T上に位置する1つの圧力検出素子である注目素子(以下、第一注目素子という)を決定する(ステップS30)。
【0068】
例えば、制御部12は、任意のタイミングで各圧力検出素子6aにより検出された圧力信号を交流成分と直流成分に分け、ACレベルが交流閾値以上となりかつDCレベルが直流閾値以下となる圧力検出素子6aを第一注目素子として決定する。
【0069】
また、制御部12は、ACレベルが交流閾値以上となりかつDCレベルが直流閾値以下となる圧力検出素子6aが複数ある場合には、この複数の圧力検出素子6aのうち、ACレベルが最大かつDCレベルが最小となるものを第一注目素子として決定する。
【0070】
制御部12は、素子列60のIDと、ステップS30で決定した第一注目素子のIDと、この第一注目素子により検出された圧力信号と、この圧力信号の検出時刻と、この検出時刻での空気袋2による押圧力と、を対応付けてRAMに記憶する(ステップS31)。
【0071】
ステップS31の後、制御部12は、RAMに記憶された検出時刻毎の第一注目素子の圧力信号に基づいて、ステップS30で決定した第一注目素子により検出された圧力信号のACレベルがピークを過ぎたか否かを判定する(ステップS32)。
【0072】
具体的には、制御部12は、ステップS30で決定した第一注目素子の圧力信号の検出時刻の直前の検出時刻に対応する圧力信号の第一のACレベルと、ステップS30で決定した第一注目素子の圧力信号の第二のACレベルとを比較する。
【0073】
そして、制御部12は、第二のACレベルが第一のACレベルに対して閾値以上小さくなっている場合に、ステップS30で決定した第一注目素子により検出された圧力信号のACレベルがピークを過ぎたと判定する。
【0074】
制御部12は、第二のACレベルが第一のACレベルに対して閾値以上小さくなっていない場合、又は、第一注目素子の圧力信号のACレベルがRAMに1つしか記憶されていない場合には、ステップS30で決定した第一注目素子により検出された圧力信号のACレベルがピークを過ぎていないと判定する。
【0075】
ステップS32の判定がNOの場合、制御部12はステップS30に処理を戻す。
【0076】
ステップS32の判定がYESの場合、制御部12は、ステップS30で決定した第一注目素子により検出された圧力信号のACレベルが、RAMに記憶されている第一注目素子の圧力信号のACレベルの最大値よりも小さい閉塞完了判定閾値(以下、第一の閉塞完了判定閾値という)に達しているか否かを判定する(ステップS33)。
【0077】
第一の閉塞完了判定閾値は、RAMに記憶された第一注目素子の圧力信号のACレベルの最大値に対し、0より大きく1よりも小さい係数αを乗じた値が設定される。
【0078】
第一の閉塞完了判定閾値は、素子列60によって橈骨動脈Tが閉塞されたか否かを判定するための値である。係数αは、この目的に沿って判定精度が確保できる程度の値が設定される。係数αは、一例として0.5とされる。
【0079】
ステップS33の判定がNOの場合、制御部12はステップS30に処理を戻す。
【0080】
ステップS33の判定がYESの場合、制御部12はステップS38の処理を行う。
【0081】
ステップS30〜ステップS33の処理と並行して、制御部12は、ステップS34〜ステップS37の処理を行う。
【0082】
ステップS34において、制御部12は、ステップS2で開始した押圧力の増加過程において、素子列70の各圧力検出素子7aにより検出される圧力信号に基づいて、素子列70を構成する全ての圧力検出素子7aの中から、橈骨動脈T上に位置する1つの圧力検出素子である注目素子(以下、第二注目素子という)を決定する。
【0083】
第二注目素子の決定方法は第一注目素子の決定方法と同様である。なお、ステップS34の処理は、ステップS30の処理と同時刻に行われる。
【0084】
ステップS34の次のステップS35において、制御部12は、素子列70のIDと、ステップS34で決定した第二注目素子のIDと、この第二注目素子により検出された圧力信号と、この圧力信号の検出時刻と、この検出時刻での空気袋2による押圧力と、を対応付けてRAMに記憶する。
【0085】
ステップS35の次のステップS36において、制御部12は、RAMに記憶された検出時刻毎の第二注目素子の圧力信号に基づいて、ステップS34で決定した第二注目素子により検出された圧力信号のACレベルがピークを過ぎたか否かを判定する。この判定方法は、ステップS32と同様である。
【0086】
ステップS36の判定がNOの場合、制御部12はステップS34に処理を戻す。
【0087】
ステップS36の判定がYESの場合、制御部12は、ステップS34で決定した第二注目素子により検出された圧力信号のACレベルが、RAMに記憶されている第二注目素子の圧力信号のACレベルの最大値よりも小さい閉塞完了判定閾値(以下、第二の閉塞完了判定閾値という)に達しているか否かを判定する(ステップS37)。
【0088】
第二の閉塞完了判定閾値は、RAMに記憶されている第二注目素子の圧力信号のACレベルの最大値に対し上記の係数αを乗じた値が設定される。
【0089】
ステップS37の判定がNOの場合、制御部12はステップS34に処理を戻す。ステップS37の判定がYESの場合、制御部12はステップS38の処理を行う。
【0090】
ステップS38において、制御部12は、素子列60と素子列70のうち、ACレベルが先に閉塞完了判定閾値に達した注目素子を含む素子列を選択する。
【0091】
つまり、圧力信号のACレベルが第一の閉塞完了判定閾値に達した第一注目素子の当該圧力信号の検出時刻が、圧力信号のACレベルが第二の閉塞完了判定閾値に達した第二注目素子の当該圧力信号の検出時刻よりも早い場合、つまり、ステップS33の判定がYESになるタイミングが、ステップS37の判定がYESになるタイミングよりも早い場合には、ステップS38において、素子列60が選択される。
【0092】
逆に、圧力信号のACレベルが第一の閉塞完了判定閾値に達した第一注目素子の当該圧力信号の検出時刻が、圧力信号のACレベルが第二の閉塞完了判定閾値に達した第二注目素子の当該圧力信号の検出時刻よりも遅い場合、つまり、ステップS37の判定がYESになるタイミングが、ステップS33の判定がYESになるタイミングよりも早い場合には、ステップS38において、素子列70が選択される。
【0093】
制御部12は、ステップS38において素子列を選択した時点で、ステップS30〜ステップS37の処理を停止する。ステップS38において選択した素子列を以下では選択素子列という。
【0094】
次に、制御部12は、RAMに記憶されている、上記の選択素子列について決定した注目素子のACレベルが閉塞完了判定閾値に達した時点での空気袋2の押圧力(HDPmax)を第一の押圧値に設定する(ステップS39)。選択素子列について決定された注目素子のうち、ACレベルが閉塞完了判定閾値に達した注目素子を閉塞完了時注目素子ともいう。
【0095】
次に、制御部12は、RAMに記憶されている、上記の選択素子列について決定した注目素子のACレベルが最大値に達した時点での空気袋2の押圧力(HDPACmax)を第二の押圧値に設定する(ステップS40)。
【0096】
ここでは、圧力検出素子6a,7aにより検出される圧力信号に基づいて素子列60と素子列70のいずれか一方が選択素子列として選択されるが、センサ部6に含まれる素子列60と素子列70のどちらを選択素子列とすべきかが予め設定されていてもよい。
【0097】
例えば素子列60が選択素子列として予め設定されている場合には、ステップS34〜ステップS37の処理とステップS38の処理は省略することができる。この場合は、ステップS33の判定がYESになった場合にステップS39以降の処理が行われる。
【0098】
図8は、図7のステップS38で選択された選択素子列において決定された注目素子により検出される圧力信号の変化を示す図である。横軸は時刻であり、縦軸は圧力値である。各時刻における圧力値は、各時刻において決定された注目素子により検出された圧力信号のレベルである。
【0099】
血圧測定指示があると、時刻t0の前に、センサ部6の基準レベルが設定される(図6のステップS1)。そして、時刻t0において押圧力の増加が開始される(図6のステップS2)。
【0100】
押圧力が増加しはじめると、注目素子により検出される圧力信号のACレベルは、時刻t1においてピーク(ACmax)に達し、時刻t2において、ACmaxに係数α(ここでは0.5)を乗じた値に達する。そして、時刻t2において、選択素子列が決定される。
【0101】
なお、時刻t0〜時刻t2の間は、図7に示したように、素子列60,70の各々に対して、時刻毎に橈骨動脈T上に位置する注目素子が決定される。
【0102】
時刻t2では、時刻t2での押圧力(HDPmax)が第一の押圧値として設定される(図7のステップS39)。また、時刻t2では、時刻t1での押圧力(HDPACmax)が第二の押圧値として設定される(図7のステップS40)。
【0103】
図6の説明に戻り、ステップS3の処理によって選択素子列が決まると、制御部12は、空気袋2による押圧力を図7のステップS39で設定した第一の押圧値に制御し、この状態で押圧力を保持する(ステップS4)。
【0104】
押圧力が第一の押圧値に保持された状態で、制御部12は、選択素子列に含まれる複数の圧力検出素子により検出されるDCレベルを取得し、取得したDCレベルに基づいて、ステップS14以降の校正用データ生成時及び連続血圧測定時に制御すべきロール角(以下、最適ロール角という)を決定する(ステップS5)。
【0105】
図9は、図6に示すステップS5の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0106】
まず、制御部12は、回転駆動部10を制御して、ロール角を任意の値に制御する(ステップS51)。
【0107】
次に、制御部12は、選択素子列の各圧力検出素子のうちの閉塞完了時注目素子である第一の圧力検出素子(図8の時刻t2の時点で決定された注目素子)と、この第一の圧力検出素子の橈骨側の隣にある第二の圧力検出素子と、この第一の圧力検出素子の尺骨側の隣にある第三の圧力検出素子とによりそれぞれ検出された圧力信号のDCレベルを取得する(ステップS52)。
【0108】
次に、制御部12は、取得した3つのDCレベルと、第一の圧力検出素子〜第三の圧力検出素子の位置との関係を示すグラフの平坦度を算出し、算出した平坦度を、現在制御しているロール角の値と対応付けてRAMに記憶する(ステップS53)。
【0109】
例えば、制御部12は、この3つのDCレベルの分散又は標準偏差を求め、求めた分散又は標準偏差の逆数を平坦度として扱う。平坦度は、この3つのDCレベルのバラツキの小ささを示す数値となる。
【0110】
次に、制御部12は、制御可能な全てのロール角の各々について平坦度を算出したか否かを判定する(ステップS54)。
【0111】
全てのロール角について平坦度を算出していない場合(ステップS54:NO)には、制御部12は、回転駆動部10を制御して、平坦度をまだ算出していないロール角に変更し(ステップS55)、その後、ステップS52以降の処理を行う。
【0112】
全てのロール角について平坦度を算出した場合(ステップS54:YES)には、制御部12は、ステップS53の処理でRAMに記憶されたロール角のうち、対応付けられている平坦度が最大(DCレベルのバラツキが最小と同義)となるロール角を最適ロール角として決定する(ステップS56)。なお、制御部12は、ステップS51においてロール角を任意の値に制御した後、予め決められた時間待機し、この時間経過後のタイミングで選択素子列の第一〜第三の圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルを取得するのが好ましい。ロール角がある値から他の値に変更された直後には、センサ部6による体表面の押圧姿勢が変化するため、血流が大きく変動している可能性がある。そこで、ロール角を任意の値に制御してから少し待った後に検出される圧力信号のDCレベルを取得することで、血流変化の影響を低減することができる。
【0113】
図10は、図1に示す脈波検出部100のロール角を3つの値に制御した状態を示す図である。図10(a)はロール角が+θa度に制御された状態を示す。図10(b)はロール角が0度に制御された状態を示す。図10(c)はロール角が−θa度に制御された状態を示す。θaは任意の値である。
【0114】
図11は、図10に示すようにロール角が制御された状態で選択素子列の各圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルと、この各圧力検出素子の位置との関係を示すグラフである。
【0115】
図11に示す曲線110は、図10(a)に示す状態で各圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルの一例を示している。図10(a)に示す状態では、選択素子列において橈骨TB側の端部が橈骨TBと近い位置にある。このため、曲線110の形状は、橈骨TB側の端部においてDCレベルが高くなる形状となっている。
【0116】
図11に示す曲線111は、図10(b)に示す状態で各圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルの一例を示している。図10(b)に示す状態では、図10(a)に示す状態と比べると、橈骨TBからの圧力が弱くなる。このため、曲線111の傾斜は、曲線110の傾斜よりも緩やかになっている。
【0117】
図11に示す曲線112は、図10(c)に示す状態で各圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルの一例を示している。図10(c)に示す状態では、図10(b)に示す状態と比べると、橈骨TBからの圧力が弱くなる。このため、曲線112の傾斜は、曲線111の傾斜よりも緩やかになり、3つの曲線110,111,112の中で最も平坦度が高くなっている。
【0118】
このように、素子列の各圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルを見ることで、骨又は腱等の硬い組織からの圧力の分布を把握することができる。
【0119】
なお、最適ロール角決定時の押圧力は、ロール角を変更することで曲線110〜112のように曲線に変化が生じる程度に大きすぎない値であることが好ましい。また、最適ロール角決定時の押圧力は、硬い組織からの圧力信号が検出される程度(橈骨動脈Tが十分に閉塞する程度)の値とすることが好ましい。
【0120】
つまり、上記係数αの値を適度な大きさにすることで、最適ロール角決定時の押圧力を適度な大きさにすることができ、硬い組織からの圧力分布を正確に把握することができる。
【0121】
図11に示した曲線は、選択素子列に含まれる全ての圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルによって形成されたものである。この選択素子列の下方には、橈骨、橈骨動脈、腱がこの順に並んで存在する。
【0122】
このため、図11に示す曲線の形状は、橈骨からの圧力が強く検出されていて、選択素子列に含まれる圧力検出素子のうちの最も橈骨に近い位置(橈骨側端部)にある圧力検出素子のDCレベルが、選択素子列に含まれる圧力検出素子のうちの最も尺骨に近い位置(尺骨側端部)にある圧力検出素子のDCレベルよりも高くなる形状と、腱からの圧力が強く検出されていて、橈骨側端部の圧力検出素子のDCレベルが、尺骨側端部の圧力検出素子のDCレベルよりも低くなる形状と、平坦な形状と、の主に3つのパターンをとる。
【0123】
したがって、制御部12は、図9のステップS53において、選択素子列に含まれる圧力検出素子のうちの橈骨側端部の圧力検出素子を上述した第二の圧力検出素子とし、選択素子列に含まれる圧力検出素子のうちの尺骨側端部の圧力検出素子を上記の第三の圧力検出素子として、図11に示した曲線の平坦度を算出してもよい。
【0124】
また、制御部12は、図9のステップS52において、選択素子列の橈骨側端部と尺骨側端部の各々にある2つの圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルを取得し、図9のステップS53において、この2つのDCレベルの差の逆数を、図11に示した曲線の平坦度として扱ってもよい。
【0125】
選択素子列に含まれる複数の圧力検出素子の位置とこれらにより検出されたDCレベルとの関係を示すグラフが平坦であるほど、硬い組織からの圧力の影響が少なく、硬い組織に邪魔されずに橈骨動脈Tを押圧できていることを意味する。
【0126】
硬い組織に邪魔されずに橈骨動脈Tを押圧できる状態を得るために、制御部12は、制御可能な全てのロール角について平坦度を算出し、算出した平坦度が最大となったロール角を最適ロール角として決定している。
【0127】
なお、制御部12は、選択素子列に含まれる全ての圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルのバラツキから平坦度を算出し、算出した平坦度が最大となるロール角を最適ロール角として決定してもよい。
【0128】
上述したように、平坦度の算出に用いるDCレベルの数を2つ又は3つに限定することで演算量を削減することができる。この結果、消費電力の低減、最適ロール角の決定の高速化を実現することができる。
【0129】
また、図6のステップS5では、制御部12が、素子列60と素子列70のいずれか一方の素子列の複数の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルに基づいて最適ロール角を決定するものとしたが、これに限らない。制御部12は、素子列60と素子列70の各々の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルに基づいて最適ロール角を決定してもよい。
【0130】
例えば、制御部12は、図9のステップS52において、素子列60と素子列70のそれぞれについて、複数の圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベルを取得する。
【0131】
そして、制御部12は、図9のステップS53において、素子列60について取得した複数のDCレベルに基づいて平坦度を算出して、現時点で制御中のロール角と対応付けて記憶し、素子列70について取得した複数のDCレベルに基づいて平坦度を算出して、現時点で制御中のロール角と対応付けて記憶する。
【0132】
制御部12は、全てのロール角について素子列毎に平坦度を算出した後、図9のステップS56において、最大の平坦度が対応付けられているロール角を最適ロール角として決定すればよい。
【0133】
図6の説明に戻り、ステップS5の後、制御部12は、センサ部6のロール角をステップS5で決定した最適ロール角に制御する(ステップS6)。また、制御部12は、空気袋2による押圧力を図7のステップS40で設定した第二の押圧値に制御し、この状態で押圧力を保持する(ステップS7)。
【0134】
ステップS5〜ステップS7の処理を、図8を参照して説明する。なお、図8は、ロール角が0度、+θ1度、−θ1度の3つに制御可能な場合の動作例を示している。θ1は任意の値である。
【0135】
図8に示すように、時刻t2〜時刻t3の期間でロール角が0度に制御され、この状態で平坦度が算出される。続いて、時刻t3〜時刻t4の期間でロール角が+θ1度に制御され、この状態で平坦度が算出される。続いて、時刻t4〜時刻t5の期間でロール角が−θ1度に制御され、この状態で平坦度が算出される。
【0136】
図8の例では、ロール角が0度に制御された状態で算出された平坦度が最大となる(最適ロール角=0度)。このため、制御部12は、時刻t5〜時刻t6の期間で、センサ部6のロール角を0度に制御する。また、制御部12は、時刻t5〜時刻t6の期間で、押圧力を第二の押圧値(HDPACmax)に保持する。
【0137】
なお、図8の例では、平坦度が最大となったロール角=0度とされているため、時刻t5〜時刻t6の期間において、ロール角が−θ1度から0度に変化する。しかし、時刻t4〜時刻t5の期間において平坦度が最大となった場合には、時刻t5〜時刻t6の期間でのロール角の変更は不要である。すなわち、最適ロール角の決定と、最適ロール角への制御とが同時に行われてもよい。
【0138】
図6の説明に戻り、ステップS7の後、制御部12は、素子列60と素子列70の各々に含まれる複数の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルに基づいて、ステップS14以降の校正用データ生成時及び連続血圧測定時に制御すべきピッチ角(以下、最適ピッチ角という)を決定する(ステップS8)。図8の例では、時刻t6〜時刻t7の期間においてステップS8の処理が行われる。
【0139】
図12は、図6に示すステップS8の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0140】
制御部12は、図7のステップS30〜ステップS37の過程でRAMに記憶した第一注目素子のうち、押圧力として第二の値(HDPACmax)が対応付けられている第一注目素子を選択する(ステップS81)。
【0141】
また、制御部12は、図7のステップS30〜ステップS37の過程でRAMに記憶した第二注目素子のうち、押圧力として第二の値(HDPACmax)が対応付けられている第二注目素子を選択する(ステップS82)。
【0142】
なお、制御部12は、ステップS81及びステップS82の代わりに、素子列60の各圧力検出素子6aにより検出された圧力信号に基づいて橈骨動脈T上に位置する1つの第一注目素子を選択し、素子列70の各圧力検出素子7aにより検出された圧力信号に基づいて橈骨動脈T上に位置する1つの第二注目素子を選択してもよい。
【0143】
第一注目素子と第二注目素子を選択した後、制御部12は、選択した第一注目素子により検出される圧力信号のDCレベル(以下、末梢側DCレベルという)と、選択した第二注目素子により検出される圧力信号のDCレベル(以下、中枢側DCレベルという)とを比較し、この比較結果と現在のピッチ角とに基づいて、センサ部6のピッチ回転の回転方向及び回転量を設定する(ステップS83)。
【0144】
具体的には、制御部12は、末梢側DCレベルが中枢側DCレベルよりも小さい場合には、回転方向をプラス方向(図1において反時計回り)に設定する。また、制御部12は、中枢側DCレベルが末梢側DCレベルよりも小さい場合には、回転方向をマイナス方向(図1において時計回り)に設定する。
【0145】
また、制御部12は、現在のセンサ部6のピッチ角の絶対値と、現在のピッチ角から上記の方法で設定した回転方向にセンサ部6を回転させた場合に取り得るピッチ角の絶対値の最大値又は最小値との差の半分の値を回転量として設定する。
【0146】
例えば、ピッチ角が、0度を基準にしてプラス方向とマイナス方向にそれぞれ最大5度まで取り得るものとする。現在のピッチ角が0度であり、設定された回転方向がプラス方向である場合には、現在のピッチ角からプラス方向に回転させた場合に取り得るピッチ角の絶対値の最大値=5度と現在のピッチ角=0度との差の半分である2.5度が回転量として設定される。
【0147】
また、現在のピッチ角が+2.5度の状態で、設定された回転方向がマイナス方向である場合には、現在のピッチ角からマイナス方向に回転させた場合に取り得るピッチ角の絶対値の最小値=0度と現在のピッチ角=2.5度との差の半分である1.25度が回転量として設定される。
【0148】
また、現在のピッチ角が+2.5度の状態で、設定された回転方向がプラス方向である場合には、現在のピッチ角からプラス方向に回転させた場合に取り得るピッチ角の絶対値の最大値=5度と現在のピッチ角=2.5度との差の半分である1.25度が回転量として設定される。
【0149】
そして、制御部12は、設定した回転方向に、設定した回転量分、センサ部6をピッチ回転させる(ステップS84)。
【0150】
ステップS84の後、制御部12は、ステップS84の処理を予め決められた所定回数行ったか否かを判定する(ステップS85)。この所定回数は2以上の値が設定される。所定回数は、最適ピッチ角の決定に要する時間の短縮と最適ピッチ角の決定精度とを考慮して、3回とされるのが好ましい。
【0151】
ステップS85の判定がNOの場合にはステップS83及びステップS84の処理が再び行われる。ステップS85の判定がYESの場合には、制御部12は、現時点でのピッチ角を最適ピッチ角として決定する(ステップS86)。
【0152】
図13及び図14は、第一注目素子と第二注目素子により検出される圧力信号の一例を示す図である。図13に示すように、第二注目素子により検出される圧力信号のDCレベルが、第一注目素子により検出される圧力信号のDCレベルよりも小さい場合には、素子列70が体表面に近づく方向(マイナス方向)にピッチ回転が行われる。ピッチ回転が繰り返されることで、図14に示したように、2つのDCレベルが近い状態を得ることができる。
【0153】
以上のステップS8の処理により、素子列60において橈骨動脈T上に位置する第一注目素子と、素子列70において橈骨動脈T上に位置する第二注目素子との各々により検出される圧力信号のDCレベルが近くなって、素子列60と素子列70とでそれぞれ同じように橈骨動脈Tを押圧できる状態を実現する最適ピッチ角を決定することができる。
【0154】
なお、制御部12は、ステップS81において、素子列60の各圧力検出素子6aにより検出される圧力信号のDCレベルの第一の平均値を算出し、ステップS82において、素子列70の各圧力検出素子7aにより検出される圧力信号のDCレベルの第二の平均値を算出し、ステップS83では、末梢側DCレベルの代わりにこの第一の平均値を用い、中枢側DCレベルの代わりにこの第二の平均値を用いてピッチ回転方向を決定してもよい。このようにすることでも最適ピッチ角を決定することは可能である。
【0155】
また、制御部12は、ステップS8において、次のように最適ピッチ角を決定してもよい。
【0156】
制御部12は、図12に示したステップS81とステップS82の処理を行った後に、ピッチ角を、設定可能な全ての値に順次制御し、ピッチ角が各値に制御された状態において得られる末梢側DCレベルと中枢側DCレベルの差を算出し、算出した差を制御中のピッチ角と対応付けてRAMに記憶する。
【0157】
そして、制御部12は、RAMに記憶されているピッチ角のうち、対応づけて記憶されている差の値が最小となるピッチ角を最適ピッチ角として決定する。
【0158】
この変形例によれば、第一注目素子と第二注目素子の各々により検出される圧力信号のDCレベルが最も近くなる状態のピッチ角を最適ピッチ角として決定することができる。
【0159】
この変形例では、制御部12が、ステップS81において、素子列60の各圧力検出素子6aにより検出される圧力信号のDCレベルの平均値を算出し、ステップS82において、素子列70の各圧力検出素子7aにより検出される圧力信号のDCレベルの平均値を算出し、末梢側DCレベルと中枢側DCレベルの差の代わりに、この2つの平均値の差を算出して記憶してもよい。
【0160】
また、制御部12は、ステップS8において、特許文献1に記載されている方法により、素子列60と素子列70の各々に含まれる圧力検出素子により検出される圧力信号のACレベルに基づいて最適ピッチ角を決定してもよい。
【0161】
図6の説明に戻り、ステップS8で最適ピッチ角を決定した後、制御部12は、センサ部6のピッチ角を、ステップS8で決定した最適ピッチ角に制御する(ステップS9)。
【0162】
なお、図12に示したステップS8の処理例では、ステップS86における最適ピッチ角の決定とステップS9の処理とは同時に行われる。
【0163】
次に、制御部12は、空気袋20による押圧力を、ステップS7において保持した第二の押圧値よりも小さくゼロよりも大きいリセット値(図8に示すHDPRESET)まで減少させて、押圧力をこのリセット値に保持する(ステップS10)。
【0164】
制御部12は、この状態で、温度検出部7により検出された温度情報を取得し、取得した温度情報と、ステップS1において取得した温度情報との差を算出し、この差が温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0165】
この差が温度閾値未満である、すなわち、ステップS1の処理時と現在とでセンサ部6の温度に大きな変化がない判定した場合(ステップS11:NO)、制御部12はステップS14の処理を行う。
【0166】
この差が温度閾値以上である、すなわち、ステップS1の処理時と現在とでセンサ部6の温度に大きな変化があると判定した場合(ステップS11:YES)、制御部12は、押圧力をゼロに制御し(ステップS12)、その後、現在の温度情報に基づいて、センサ部6の各圧力検出素子により検出される圧力信号の基準レベルの再設定を行う(ステップS13)。ステップS13の後はステップS14以降の処理が開始される。
【0167】
ステップS14において、制御部12は、押圧力を現在の値から橈骨動脈Tを閉塞できる程度の予め決められた値まで増加させる(図8の時刻t8〜時刻t9)。
【0168】
制御部12は、ステップS14において押圧力を増加させる速度を、ステップS2において押圧力を増加させるときの速度よりも遅い速度に制御するが、これに限定されるものではない。
【0169】
なお、図6のステップS11〜ステップS13の処理は必須ではなく、省略することも可能である。この場合は、ステップS10の後にステップS14の処理が行われる。
【0170】
制御部12は、ステップS14で開始した押圧力の増加過程においてセンサ部6の各圧力検出素子により検出される圧力信号をメモリ15に記憶し、記憶した圧力信号に基づいて、全ての圧力検出素子6a,7aの中から最適圧力検出素子を決定する。
【0171】
制御部12は、例えば、押圧力の増加過程においてACレベルが最大となる圧力信号を検出した圧力検出素子を最適圧力検出素子として決定する。また、この圧力信号が検出されたときの押圧力を最適押圧力として決定する(ステップS15)。
【0172】
ステップS15の後、制御部12は、メモリ15に記憶されている、押圧力の増加過程で上記最適圧力検出素子により検出された圧力信号に基づいて脈波包絡線データを生成する。
【0173】
脈波包絡線データとは、センサ部6の押圧力(空気袋2の内圧)と、その押圧力で最適圧力検出素子が体表面に押圧された状態で最適圧力検出素子により検出される圧力信号のACレベルとを対応付けたデータである。
【0174】
そして、制御部12は、生成した脈波包絡線データに基づいてSBPとDBPを算出し、ステップS14で開始された押圧力の増加過程で上記最適圧力検出素子により検出された圧力信号と、算出したSBP及びDBPとに基づいて、ステップS18の連続血圧測定時に用いる校正用データを生成し、校正用データをメモリ15に記憶する(ステップS16)。
【0175】
その後、制御部12は、押圧力をステップS15で決定した最適押圧力に保持する(ステップS17、図8の時刻t10)。
【0176】
そして、制御部12は、ステップS15で決定した最適圧力検出素子により検出される圧力信号をメモリ15に順次記憶していき、記憶した各圧力信号のACレベルと、ステップS16で生成した校正用データとに基づいて、1拍毎にSBP及びDBPを算出してメモリ15に記憶する(ステップS18)。制御部12は、算出したSBPとDBPを例えば表示部13に表示させて利用者に通知する。
【0177】
制御部12は、血圧測定の終了指示がなされるまでステップS18の処理を繰り返し行い、終了指示がなされると、血圧測定処理を終了する。
【0178】
以上のように、本実施形態の生体情報測定装置は、ステップS5において最適ロール角を決定し、センサ部6のロール角をこの最適ロール角に制御した状態で、ステップS8において最適ピッチ角を決定する。
【0179】
このように、最適ロール角を決定し、決定した最適ロール角に制御した状態で最適ピッチ角を決定する手順を踏むことで、骨又は腱等の硬い組織からの圧力が脈波の検出精度に与える影響を少なくした状態で、最適ピッチ角を決定することができる。
【0180】
校正用データ生成に必要な圧力信号の取得時及び連続血圧測定時には、脈波の検出精度を高めるために、素子列60による橈骨動脈Tの押圧状態と、素子列70による橈骨動脈Tの押圧状態とがほぼ同じになっている理想押圧状態とすることが好ましい。ステップS8の処理は、この理想押圧状態を実現するための最適ピッチ角を決定する処理である。
【0181】
本実施形態の生体情報測定装置によれば、骨又は腱等の硬い組織からの圧力による信号レベルが低くなる最適ロール角に制御された状態で、理想押圧状態を実現するための最適ピッチ角を決定することができる。
【0182】
このため、理想押圧状態となる最適ピッチ角の決定を高精度に行うことができる。この結果、ステップS14以降の処理で検出される脈波の検出精度を向上させて、生体情報の測定精度を向上させることができる。
【0183】
また、本実施形態の生体情報測定装置では、ステップS8で最適ピッチ角を決定するときの押圧力(第二の押圧値)を、ステップS5で最適ロール角を決定するときの押圧力(第一の押圧値)よりも小さくしている。
【0184】
このように、第一の押圧値よりも第二の押圧値を小さくすることで、橈骨動脈Tが適度に押圧された状態で最適ピッチ角の決定を行うことが可能となり、最適ピッチ角の決定精度を向上させることができる。
【0185】
橈骨動脈Tが適度に押圧された状態とは、橈骨動脈Tが閉塞されておらず、かつ、橈骨動脈Tの押圧されている表面が平坦になって張力の影響が無視できる状態、いわゆるトノメトリ状態のことをいう。
【0186】
図6に示す動作例では、ステップS7において、押圧力が、選択素子列の注目素子のACレベルが最大値(ACmax)となる押圧力(HDPACmax)に保持される。押圧力がHDPACmaxに保持された状態は、トノメトリ状態に最も近いと考えられる。このため、第二の押圧値=HDPACmaxとすることで、最適ピッチ角の決定精度を向上させることができる。
【0187】
なお、図6に示す動作例では、第二の押圧値=HDPACmaxとしたが、これに限らない。第二の押圧値は、選択素子列について時刻毎に決定された注目素子のDCレベルの変化量が変化閾値以下となる状態の押圧力の範囲の任意の値であればよい。この注目素子のDCレベルの変化量が最も小さくなる時の押圧力は、この注目素子のACレベルが最大となるときの押圧力とほぼ一致する。
【0188】
つまり、第二の押圧値は、選択素子列について時刻毎に決定された注目素子のACレベルが最大となる押圧力付近の値が設定されていればよい。
【0189】
具体的には、第二の押圧値は、選択素子列について時刻毎に決定された注目素子のACレベルが、最大値(図8に示すACmax)の0.9倍以上となるときの押圧力の範囲の任意の数値に設定されるのが好ましく、この最大値の0.95倍以上となるときの押圧力の範囲の任意の数値に設定されるのがより好ましい。
【0190】
押圧力=HDPACmaxに保持された状態はトノメトリ状態に最も近いと考えられる。このため、図6の動作例のように、第二の押圧値はHDPACmaxに設定されるのが最も好ましい。
【0191】
また、本実施形態の生体情報測定装置によれば、ステップS3において素子列60と素子列70のうちのいずれか一方が選択素子列として選択される。そして、この1つの選択素子列の複数の圧力検出素子により検出される圧力信号に基づいて最適ロール角が決定される。
【0192】
具体的には、制御部12は、ステップS3において、橈骨動脈Tを先に閉塞した素子列を選択素子列として選択し、この選択素子列が橈骨動脈Tを閉塞した時点での押圧力に保持した状態で最適ロール角を決定している。
【0193】
この構成によれば、橈骨動脈Tが閉塞されたことによる血流変化等の影響を受けていない素子列から出力される圧力信号に基づいて最適ロール角を決定することができる。つまり、選択素子列から出力される圧力信号の信頼性を高めることができ、最適ロール角の決定精度を向上させることができる。
【0194】
また、より短い時間で橈骨動脈Tを閉塞することができた素子列が選択素子列とされることで、最適ロール角の決定にかかる時間を短縮して、血圧測定開始までの時間を短縮することができる。
【0195】
また、本実施形態の生体情報測定装置では、素子列60,70のいずれか一方の素子列の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルに基づいて最適ロール角を決定している。このように、圧力信号のDCレベルに基づいて最適ロール角を決定することで、骨又は腱等の硬い組織からの圧力の影響を受けにくいロール角を高精度に決定することができる。
【0196】
なお、制御部12は、ステップS5において、選択素子列の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルの代わりに、選択素子列の圧力検出素子により検出される圧力信号の絶対値に基づいて最適ロール角を決定してもよい。
【0197】
ステップS4において押圧力が第一の押圧値に保持された状態は、選択素子列によって橈骨動脈Tが閉塞されている状態である。つまり、この状態では、選択素子列の圧力検出素子により検出される圧力信号のACレベルは十分に小さくなっている。
【0198】
このため、選択素子列の複数の圧力検出素子により検出される圧力信号の絶対値に基づいて最適ロール角を決定しても、ある程度の精度で、骨又は腱等の硬い組織からの圧力による影響を低減させることは可能である。上述してきたようにDCレベルを用いる場合には、骨又は腱等の硬い組織からの圧力の分布をより正確に検出することができるため、最適ロール角の決定精度を向上させることができる。
【0199】
また、本実施形態の生体情報測定装置では、素子列60,70の各々に含まれる複数の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルに基づいて最適ピッチ角を決定している。このように、圧力信号のDCレベルに基づいて最適ピッチ角を決定することで、理想押圧状態を実現可能な最適ピッチ角を高精度に決定することができる。この理由を以下に述べる。
【0200】
本実施形態の生体情報測定装置では、素子列60と素子列70とが、生体の異なる部分を押圧している。また、橈骨動脈Tは、抵抗の高い末梢側が中枢側よりも先に閉塞され始めると、これに伴って反射波が発生する。この反射波は、素子列70の橈骨動脈T上に位置する圧力検出素子により検出される圧力信号に重畳される。
【0201】
このように、押圧している生体部位の皮下組織の組成の違い及び反射波の発生等によって、理想押圧状態であっても、素子列60の橈骨動脈T上に位置する圧力検出素子により検出される圧力信号のACレベルと、素子列70の橈骨動脈T上に位置する圧力検出素子により検出される圧力信号のACレベルとは同じにならない場合がある。
【0202】
一方、素子列60の橈骨動脈T上に位置する圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルと、素子列70の橈骨動脈T上に位置する圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルは、押圧している生体部位の皮下組織の組成の違い及び反射波の発生等によって影響を受けない。
【0203】
このため、素子列60,70の各々に含まれる複数の圧力検出素子により検出される圧力信号のDCレベルに基づいて最適ピッチ角を決定することで、最適ピッチ角を高精度に決定することができる。
【0204】
なお、素子列60,70の各々に含まれる複数の圧力検出素子により検出される圧力信号のACレベルに基づいて最適ピッチ角を決定することでも、ある程度の精度で最適ピッチ角を決定することは可能である。
【0205】
また、本実施形態の生体情報測定装置によれば、素子列60から選択した1つの圧力検出素子と、素子列70から選択した1つの圧力検出素子との2つの圧力検出素子により検出される圧力信号に基づいて最適ピッチ角を決定することができる。
【0206】
このように2つの圧力検出素子の圧力信号に基づいて最適ピッチ角を決定することで、最適ピッチ角を決定するために必要な演算量を減らすことができ、消費電力低減と血圧測定開始までの時間短縮が可能となる。
【0207】
なお、図12の処理例では、ステップS81とステップS82において、図7のステップS30〜ステップS37の過程で決定した注目素子の中から1つを選択している。このように、既に決定済みの注目素子の中から最適ピッチ角の決定に利用するものを選択することで、最適ピッチ角を決定するために必要な演算量を減らすことができる。この結果、消費電力低減と血圧測定開始までの時間短縮が可能となる。
【0208】
また、本実施形態の生体情報測定装置は、最適ピッチ角を決定した後に、押圧力を第二の押圧値よりも小さくゼロよりも大きいリセット値まで低下させ、その後、ステップS14以降の処理を行っている。このように、押圧力をゼロまでは下げずにステップS14以降の処理を行うことで、血圧測定開始までの時間を短縮することができる。
【0209】
また、押圧力を一旦下げてからステップS14以降の処理を行うことで、センサ部6が最適ロール角及び最適ピッチ角に制御された状態で、最適押圧力及び最適圧力検出素子を決定することができ、脈波の検出精度を高めることができる。
【0210】
また、本実施形態の生体情報測定装置は、最適ピッチ角を決定した後に、初期状態における温度情報と、現在の温度情報とに大きな差が生じていた場合には、押圧力をゼロにした上で、センサ部6の各圧力検出素子の基準レベルを再設定する。このように、基準レベルの再設定を行うことで、ステップS14以降の処理における脈波の検出精度を向上させることができる。
【0211】
また、本実施形態の生体情報測定装置では、ステップS2において押圧力が増加するときの増加速度が、ステップS14において押圧力が増加するときの増加速度よりも速くなっている。
【0212】
この構成によれば、最適ロール角及び最適ピッチ角の決定のために必要な押圧力の増加を高速に行うことができ、血圧測定開始までの時間を短縮することができる。一方、校正用データ生成のために必要な押圧力の増加については相対的に遅くなっていることで、校正用データを高精度に求めることが可能となる。
【0213】
本実施形態の生体情報測定装置において、制御部12は、ステップS5で最適ロール角を決定するよりも前に、素子列60と素子列70の各々による圧力信号の検出状態が良好となるように、センサ部6をピッチ回転させてもよい。
【0214】
例えば、制御部12は、ステップS2で押圧力の増加を開始してから、図7のステップS38の処理が行われるまでの間の定期的なタイミングで、RAMに記憶された最新の第一注目素子の圧力信号のACレベルと、最新の第二注目素子の圧力信号のACレベルとを比較し、この比較結果に基づいて、ピッチ回転が必要か否かを判定する。
【0215】
制御部12は、この2つのACレベルの差が閾値以上である場合には、ACレベルが相対的に小さい注目素子を含む素子列が橈骨動脈Tを良好に潰せていない状況であると判断し、ピッチ回転が必要であると判定する。そして、この素子列が体表面に近づく方向にセンサ部6をピッチ回転させる。このときの回転量は任意であるが、例えば制御可能な最小値とすればよい。
【0216】
制御部12は、この2つのACレベルの差が閾値未満である場合には、2つの素子列がそれぞれ橈骨動脈Tを良好に潰せている状況であると判断し、ピッチ回転は不要であると判定する。
【0217】
例えば、上記のタイミングで、最新の第一注目素子のACレベルが、最新の第二注目素子の圧力信号のACレベルよりも閾値以上大きい場合には、制御部12は、センサ部6をマイナス方向にピッチ回転させる。
【0218】
これにより、第二注目素子のACレベルを高くすることが可能となる。この結果、ピッチ回転を行わない場合よりも、素子列70が選択素子列となることのできる可能性を高めることができ、最適ピッチ角の決定に利用できる素子列の選択肢を増やすことができる。
【0219】
図15は、図6に示すステップS5の詳細処理の変形例を示すフローチャートである。
【0220】
まず、制御部12は、回転駆動部10を制御して、ロール角を任意の値に制御する(ステップS91)。
【0221】
次に、制御部12は、選択素子列の各圧力検出素子のうちの上述した第一の圧力検出素子〜第三の圧力検出素子によりそれぞれ検出された圧力信号のDCレベルを取得し、取得した3つのDCレベルに基づいて、ステップS52の処理と同様に平坦度を算出し、現在制御中のロール角と対応付けてRAMに記憶する(ステップS92)
【0222】
次に、制御部12は、第二の圧力検出素子より検出された圧力信号のDCレベル(以下、橈骨側DCレベルという)と、第三の圧力検出素子より検出された圧力信号のDCレベル(以下、尺骨側DCレベルという)の差が閾値以上か否かを判定する(ステップS93)。
【0223】
制御部12は、橈骨側DCレベルと尺骨側DCレベルの差が閾値未満であった場合(ステップS93:NO)には、回転駆動部10を制御し、センサ部6を、プラス方向又はマイナス方向に最小角度でロール回転させ(ステップS94)、その後、ステップS92に処理を戻す。
【0224】
制御部12は、橈骨側DCレベルと尺骨側DCレベルの差が閾値以上であった場合(ステップS93:YES)には、橈骨側DCレベルが尺骨側DCレベルよりも大きいか否かを判定する(ステップS95)。
【0225】
制御部12は、橈骨側DCレベルが尺骨側DCレベルよりも小さい場合(ステップS95:NO)には、ロール回転の方向をプラス方向(左肘側から見て反時計回り)に制限する(ステップS96)。つまり、制御部12は、平坦度を算出済みのロール角を除くロール角のうち、現在のロール角よりもマイナス方向のロール角を、最適ロール角の候補からは除外する
【0226】
制御部12は、橈骨側DCレベルが尺骨側DCレベルよりも大きい場合(ステップS95:YES)には、ロール回転の方向をマイナス方向(左肘側から見て時計回り)に制限する(ステップS97)。つまり、制御部12は、平坦度を算出済みのロール角を除くロール角のうち、現在のロール角よりもプラス方向のロール角を、最適ロール角の候補からは除外する
【0227】
ステップS96及びステップS97の後、制御部12は、設定可能な全てのロール角のうちの現在のロール角を基準とする上記制限した回転方向における角度の全てについて平坦度を算出したか否かを判定する(ステップS98)。
【0228】
ステップS98の判定がNOの場合、制御部12は、回転駆動部10を制御し、センサ部6を、制限されている回転方向における設定可能なロール角のうち、平坦度をまだ算出していないロール角に制御する(ステップS99)。
【0229】
そして、制御部12は、第一の圧力検出素子〜第三の圧力検出素子によりそれぞれ検出された圧力信号のDCレベルを取得し、取得した3つのDCレベルに基づいて、ステップS52の処理と同様に平坦度を算出し、現在制御中のロール角と対応付けてRAMに記憶する(ステップS100)。ステップS100の後はステップS98に処理が戻る。
【0230】
ステップS98の判定がYESの場合、制御部12は、ステップS92及びステップS100の処理でRAMに記憶されたロール角のうち、対応づけられている平坦度が最大となるロール角を最適ロール角として決定する(ステップS101)。
【0231】
以上のように、図15に示す変形例によれば、図9に示す処理例と比較して、平坦度を算出するロール角の数を少なくすることができる。このため、最適ロール角を決定するための演算量の削減及びロール回転に伴う消費電力の低減が可能となる。
【0232】
なお、ロール角として設定可能な角度が0度、+θ1度、−θ1度(θ1は任意の値)の3つであり、ステップS91における任意の値が0度である場合を考える。
【0233】
この場合は、最初のステップS93の処理の判定がYESかつステップS95の判定がNOの場合には、制御部12は+θ1度を最適ロール角として決定する。また、最初のステップS93の処理の判定がYESかつステップS95の判定がYESの場合には、制御部12は−θ1度を最適ロール角として決定する。
【0234】
このように、この変形例によれば、ロール回転をさせることなく最適ロール角を決定することもできる。
【0235】
本実施形態の生体情報測定装置では、回動部5が第一の軸Xと第二の軸Yの各々を中心に回転可能な構成としたが、回動部5は、第一の軸Xと第二の軸Yのいずれか一方を中心に回転可能な構成であってもよい。
【0236】
回動部5が第一の軸Xのみを中心に回転可能な構成(ピッチ回転のみ可能な構成)である場合、制御部12は、図6のフローチャートにおいて、ステップS5及びステップS6の処理を省略し、ステップS4の処理の後にステップS7以降の処理を行えばよい。
【0237】
また、回動部5が第一の軸Xのみを中心に回転可能な構成である場合には、センサ部6の素子列60と素子列70は、それぞれ複数の圧力検出素子を含んでいる必要はなく、それぞれ1つの圧力検出素子を含む構成であってもよい。つまり、センサ部6は、方向Aに並ぶ圧力検出素子6aと圧力検出素子7aとの2つの圧力検出素子のみを有する構成であってもよい。
【0238】
この構成の場合には、図7において説明した第一注目素子は常に同じ圧力検出素子6aとなり、第二注目素子は常に同じ圧力検出素子7aとなる。また、ステップS38では、ACレベルが先に閉塞完了判定閾値に到達した圧力検出素子が選択される。
【0239】
また、ステップS39では、この選択された圧力検出素子のACレベルが閉塞完了判定閾値に達した時点の押圧力が第一の押圧値に設定される。また、ステップS40では、この選択された圧力検出素子のACレベルがピークに達した時点の押圧力が第二の押圧値に設定される。
【0240】
また、制御部12は、ステップS8においては、図12のステップS81とステップS82を省略し、ステップS83において、圧力検出素子6aと圧力検出素子7aの各々により検出される圧力信号のDCレベルを比較し、この比較結果と現在のピッチ角とに基づいてセンサ部6のピッチ回転の回転方向及び回転量を設定する。
【0241】
回動部5が第二の軸Yのみを中心に回転可能な構成(ロール回転のみ可能な構成)である場合、制御部12は、図6のフローチャートにおいて、ステップS7〜ステップS9の処理を省略し、ステップS6の処理の後にステップS10以降の処理を行えばよい。
【0242】
また、回動部5が第二の軸Yのみを中心に回転可能な構成である場合には、センサ部6において素子列60と素子列70のいずれか一方を削除した構成としてもよい。
【0243】
例えばセンサ部6が素子列60のみを有する構成の場合には、図7においてステップS34〜ステップS38が削除され、ステップS33の判定がYESの場合に、ステップS39以降の処理が行われる動作となる。また、ステップS39以降における選択素子列は素子列60となる。
【0244】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0245】
例えば、ここまでは、手首の橈骨動脈から脈波を検出する手首装着型の生体情報測定装置について説明されているが、頚動脈又は足背動脈から脈波を検出する装置に対して本発明を適用してもよい。
【0246】
また、センサ部6は、3つ以上の素子列が方向Aに配列された構成であってもよい。
【0247】
この構成の場合には、制御部12は、図6のステップS3において、3つ以上の素子列の中から、橈骨動脈Tを最も早く閉塞した素子列を選択素子列として選択する。または、制御部12は、3つ以上の素子列のいずれか1つを予め選択素子列として選択する。
【0248】
また、制御部12は、図6のステップS8において、3つ以上の素子列の各々から選択した1つの圧力検出素子により検出された圧力信号のDCレベル又はACレベルの値が近くなる最適ピッチ角を決定する。
【0249】
次に、図1に示すセンサ部6の好ましい設計例について説明する。
【0250】
図4には、素子列60と素子列70の間の距離L1(素子列60と素子列70の方向Aの配列間隔)と、体表面に接触する押圧面6bの方向Aの幅L2とが示されている。
【0251】
発明者は、鋭意検討した結果、距離L1を5mm以上15mm以下の範囲の任意の値とすることで、脈波の検出精度を向上させられることを見出した。
【0252】
素子列60と素子列70の間の距離L1は、医師又は看護師が2本の指を手首に押し当てて脈波を確認する触診の形態を模擬できることが好ましい。触診を行う際の2本の指の中心同士の動脈方向の距離を多数の医師を対象に調査したところ、この距離は5mm以上15mm以下の範囲に入ることが分かった。
【0253】
また、発明者は、素子列70を削除した構成のセンサ部6を有する脈波検出部100を使用し、素子列60の動脈方向における位置を順次変えながらトノメトリ法によって脈波を検出する実験を複数人に対して行った。
【0254】
図16は、素子列の位置を変えながら脈波を検出した実験の結果の傾向を示す図である。
【0255】
図16に示す横軸は、素子列の方向Aの中心と手首の皮線との間の距離を示す。図16に示す縦軸は、トノメトリ状態が得られたときの素子列の体表面に対する押圧力を複数人で平均した値を示す。図16に示すように、素子列は、皮線から5mm以上20mm以下の範囲にある場合に、低い押圧力でトノメトリ状態を実現することができる。
【0256】
低い押圧力でトノメトリ状態を実現できると、素子列によって検出される圧力信号には、骨又は腱等の硬い組織からの圧力に応じた成分が含まれにくくなる。つまり、ノイズを低減することができるため、脈波の検出精度を高めることができる。
【0257】
図16に示す結果から、2つの素子列60,70を有するセンサ部6においては、素子列60と素子列70がそれぞれ、皮線から5mm以上20mm以下の範囲に配置されることが好ましい。
【0258】
末梢側に配置される素子列60の方向Aの中心が皮線から5mmの位置に配置される場合を考えると、図4に示す距離L1が15mm以下である場合に、素子列60と素子列70がそれぞれ、皮線から5mm以上20mm以下の範囲に位置することになる。したがって、図16に示す実験結果からも、距離L1は15mm以下とするのが好ましいことが分かった。
【0259】
なお、本実施形態の脈波検出部100は、押圧面6bがピッチ回転する構成である。上記距離L1が小さすぎると、ピッチ回転させた場合でも、素子列60,70の各々により検出される圧力信号群に差が生じにくくなる。距離L1が5mm以上あれば、ピッチ回転させることによる脈波検出精度の向上効果を十分に得ることが可能である。
【0260】
また、距離L1が大きすぎると、中枢側に配置される素子列70と動脈との距離が大きくなりすぎてしまう。この結果、ピッチ角の最大値を大きくする必要がある。距離L1が15mm以下であれば、ピッチ角を大きくすることなく、2つの素子列によって動脈からの脈波を十分に捉えることができる。
【0261】
図4において、押圧面6bの方向Aの一方の端縁から素子列60の中心までの距離と、押圧面6bの方向Aの他方の端縁から素子列70の中心までの距離と、距離L1とがそれぞれ同じとなることで、素子列60と素子列70を体表面に同じ押圧力で押圧することができる。このため、図4に示した幅L2は、15mm以上45mm以下の範囲の任意の値とすることが好ましい。
【0262】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0263】
開示された脈波検出装置は、一方向に並ぶ複数の圧力検出素子からなる2つの素子列が前記一方向に直交する方向に配列されたセンサ部と、前記一方向が生体の体表面下の動脈の伸びる方向と交差する状態で前記体表面に前記センサ部を押圧する押圧部と、を備え、前記2つの素子列の前記一方向に直交する方向の配列間隔は、5mm以上15mm以下である。
【0264】
開示された脈波検出装置は、前記一方向に伸びる軸と前記一方向に直交する方向に伸びる軸の各々の周りに前記センサ部を回転させる回転機構を更に備えるものである。
【0265】
開示された生体情報測定装置は、前記脈波検出装置と、前記圧力検出素子により検出された圧力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備えるものである。
【符号の説明】
【0266】
100 脈波検出部
1 筐体
2 空気袋
3 平板部
5 回動部
5a 2軸回転機構
6 センサ部
6a,7a 圧力検出素子
6b 押圧面
60,70 素子列
7 温度検出部
X 第一の軸
Y 第二の軸
10 回転駆動部
11 空気袋駆動部
12 制御部
13 表示部
14 操作部
15 メモリ
TB 橈骨
T 橈骨動脈
110、111、112 曲線
A,B 方向
L1 距離
L2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16