(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主熱源機と、該主熱源機の運転により湯水を加熱して蓄熱する貯湯タンクと、該貯湯タンクから給湯するための給湯路と、運転時に前記給湯路への給湯を行うバックアップ熱源機と、前記主熱源機及び前記バックアップ熱源機の運転を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、過去の実績情報に基づいて将来の所定単位時間毎の時間帯別の熱負荷を予測する熱負荷予測機能と、該熱負荷予測機能により予測された時間帯別の熱負荷に基づいて現時点で前記主熱源機を運転させた方が運転させない場合よりも省エネ性が高いか否かを判定する省エネ運転判定機能と、前記貯湯タンクが所定の満蓄熱状態であるときに前記主熱源機を運転停止状態とする満蓄熱時運転停止機能とを有する、貯湯式給湯装置において、
前記制御部は、前記省エネ運転判定機能により現時点で前記主熱源機を運転させた方が省エネ性が高いと判定しているとき、前記貯湯タンクからの所定の給湯動作が開始されることを条件として、前記貯湯タンクが前記満蓄熱状態であっても前記主熱源機を運転させるよう構成されていることを特徴とする貯湯式給湯装置。
請求項1に記載の貯湯式給湯装置において、前記制御部は、前記省エネ運転判定機能による前記判定を、前記満蓄熱時運転停止機能により前記主熱源機が運転停止状態とされているときに行うよう構成されていることを特徴とする貯湯式給湯装置。
請求項1又は2に記載の貯湯式給湯装置において、前記制御部は、前記満蓄熱状態で前記主熱源機を運転させた場合に、所定時間を経過しても前記貯湯タンクが前記満蓄熱状態であるとき、前記主熱源機を運転停止状態とするよう構成されていることを特徴とする貯湯式給湯装置。
【背景技術】
【0002】
この種従来の貯湯式給湯装置としては、比較的安価な深夜電力を利用してヒートポンプにより貯湯タンクに貯湯して、貯湯された温水を給湯に利用する一方、湯切れが生じた場合にはガス瞬間式給湯器によって給湯を行うものが、例えば下記の特許文献1に開示されている。このように深夜時間帯に貯湯するタイプの貯湯式給湯装置では、夜間に翌日1日分の予測使用熱量の貯湯を行えるようにするために、1日分の予測使用熱量分の貯湯を行うに十分な容量の大きな貯湯タンクを付設する必要がある。
【0003】
一方、本願出願人は、比較的小容量の貯湯タンクを用い、気温の比較的高い日中にヒートポンプを作動させて、給湯の使用が予測される時間帯の直前までに予想使用熱量分の貯湯を行うようにすることで、貯湯タンクからの放熱ロスを低減するとともにヒートポンプの消費電力を低減させるようにしたハイブリッドヒートポンプ給湯システムの開発を行っており、例えば下記の特許文献2に開示している。
【0004】
この従来のハイブリッドヒートポンプ給湯システムは、電気をエネルギーとする主熱源機(ヒートポンプ)と、ガスをエネルギーとするバックアップ熱源機(瞬間式給湯器)との双方を備えた給湯システムにおいて、ヒートポンプ及び燃焼式熱源機を用いて全ての熱負荷を賄う上で省エネルギー性を最大化し得るヒートポンプ給湯器を提供することを目的として提案したものであって、次のようにしてヒートポンプの種々の作動パターンにおける省エネルギー性を判定して、現時点で実際にヒートポンプを運転作動させるか否かを判定するものである。
【0005】
すなわち、上記従来のハイブリッドヒートポンプ給湯システムは、電気エネルギーを駆動源として運転作動することにより貯湯タンク内に貯湯として蓄熱するヒートポンプ式貯湯装置と、このヒートポンプ式貯湯装置から給湯を行う給湯路と、ヒートポンプ式貯湯装置に貯湯された熱量が不足する場合に燃料を燃焼させて給湯を行うためのバックアップ熱源機と、ヒートポンプ式貯湯装置及びバックアップ熱源機の作動を制御する制御部とを備えている。
【0006】
制御部は、(1)貯湯タンク内の貯湯熱量を計測する貯湯熱量計測手段、(2)過去の給湯使用量に係る実績情報に基づいて所定単位時間毎の時間帯別に要求される使用熱量である熱負荷を予測する熱負荷予測手段、(3)この熱負荷予測手段により予測された熱負荷の内、貯湯熱量計測手段により計測された現時点の残湯熱量で賄った残りの予測熱負荷について、現時点又は現時点以降にヒートポンプ式貯湯装置を仮想的に運転作動させて得られる出力熱量で賄うために、その出力熱量を直近の時間帯別の前記残りの予測熱負荷から順に配分するシミュレーションを行い、シミュレーションされた各運転作動パターンについて省エネルギー性を判定するための判定指標を演算する仮想省エネ作動演算手段、並びに、(4)この仮想省エネ作動演算手段により演算された各運転作動パターン別の判定指標に基づいてヒートポンプ式貯湯装置を現時点で実際に運転作動させるか否かを判定する省エネ作動制御手段、として機能するよう構成されている。
【0007】
そして、仮想省エネ作動演算手段として、前記の判定指標として、ヒートポンプ式貯湯装置を運転作動させた場合に消費するエネルギー量について、このヒートポンプ式貯湯装置の運転作動により得られる出力熱量から放熱ロス分を減じた有効熱量をバックアップ熱源機の燃焼作動により賄うとした場合に消費されるエネルギー量に対する比率である省エネ度に対し、前記残りの予測熱負荷に対する前記出力熱量の配分割合を乗じた省エネ評価点を演算するように構成され、かつ、前記放熱ロス分として、ヒートポンプ式貯湯装置の運転作動に基づく貯湯タンクへの貯湯から前記残りの予測熱負荷への配分までの放置時間に対応して増大されるように設定する構成としている。
【0008】
このように、過去の実績情報に基づいて所定単位時間毎の時間帯別に予測された熱負荷について、現時点又は現時点以降にヒートポンプを仮想的に運転作動させて得られる出力熱量を、直近の時間帯別の予測熱負荷から順に配分するシミュレーションを行い、シミュレーションの各運転作動パターンについて省エネルギー性判定用の判定指標を演算し、演算された運転作動パターン別の判定指標に基づいてヒートポンプを現時点で実際に運転作動させるか否かを判定することで、貯湯タンクでの放熱ロスを可及的に低減させ得る運転作動パターンによりヒートポンプ式貯湯装置やバックアップ熱源機の作動制御を行うことを可能にしている。
【0009】
また、貯湯タンクには、上下方向に複数の貯湯温度センサが並設されており、隣接する貯湯温度センサ間の各領域の容量、及び、入水温度検出値に基づいて、貯湯タンクに蓄熱されている貯湯熱量を検出可能に構成されている。最下部の貯湯温度センサが高温水を検出すると、満タン状態(満蓄熱状態)であると判定して、ヒートポンプを満タン停止させるが、ヒートポンプ停止後に循環配管内の高温水を回収可能とするために、最下部の貯湯温度センサは貯湯タンクの底部よりも若干上方の位置に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来のハイブリッドヒートポンプ給湯システムにおいては、貯湯タンクが満タン状態であるときにヒートポンプの運転が行われると、ヒートポンプの入水側に高温の湯水が供給され、これによりヒートポンプの寿命を縮めることとなるため、満タン状態である場合にはヒートポンプを運転停止状態とするよう運転制御している。
【0012】
すなわち、ヒートポンプを現時点で実際に運転作動させたほうが省エネ性が高いと判定される場合であっても、貯湯タンクが満タン状態である場合には、貯湯タンク上部からの出湯に伴う貯湯タンク下部からの低温水の入水により最下部の貯湯温度センサが低温を検出するまでヒートポンプの運転停止状態が維持され、最下部の貯湯温度センサが低温を検出すると満タン解除となってヒートポンプの運転が開始されることとなる。
【0013】
したがって、ヒートポンプによる貯湯スピードを上回り、かつ、貯湯タンク容量を超える熱利用がある場合は、熱利用の直前で満タン停止し、熱利用開始後も満タン解除までヒートポンプの運転停止が継続し、このヒートポンプの運転停止期間分の蓄熱が行えなくなることから、その後ヒートポンプの運転が開始されても貯湯が間に合わずに貯湯タンク内の貯湯量が不足して、熱効率の悪いバックアップ熱源機で熱負荷を賄うという動作となってしまう。
【0014】
具体例を示すと、例えば、入水温度5℃、貯湯温度80℃、ヒートポンプの時間当たり最大出力熱量3000kcal(上記入水温度および貯湯温度における貯湯速度としては3000÷(80−5)÷60=40L/時≒0.67L/分)、貯湯タンクの容量140L(蓄熱熱量換算で(80−5)×140=10500kcal。なお、熱量換算値は、入水温度や貯湯温度により変動。)、貯湯タンク底部から最下部の貯湯温度センサまでの容量30L、湯はり温度40℃、湯はり湯量200L、湯はり流速(40℃の湯が浴槽内に流入する速度)が20L/分(貯湯タンクからの80℃の湯の出湯速度としては9.3L/分)とすると、貯湯タンクが満タン状態でヒートポンプを満タン停止させて湯はりを開始して最下部の貯湯温度センサが低温を検出するまでの時間は、{(80−5)×30}/{(40−5)×20}≒約3分となる。
【0015】
仮に、19時の予測熱負荷として、上記の湯はりのために40℃で200L(熱量換算で(40−5)×200=7000kcal)の熱負荷が予測されており、20時の予測負荷として2名分の入浴時のシャワー利用のための40℃で180L(換算6300kcal)の熱負荷とがあり、19時の直前までに貯湯タンクに蓄熱されている熱量のうちの7000kcalが湯はりに利用されるとともに3300kcal(200kcalは1時間分の放熱ロス)が20時のシャワーに利用されるとすると、19時から20時までの1時間の全時間にわたってヒートポンプが運転されれば残りの3000kcalのシャワー利用のための熱負荷をヒートポンプの出力熱量で賄えるにもかかわらず、上述したようにヒートポンプが約3分間停止しているために、この約3分間分のヒートポンプ出力約160kcalの熱量が不足することとなって、熱効率の悪いバックアップ熱源機で不足分を賄うという動作となっていた。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貯湯式給湯装置のより一層の効率向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
【0018】
すなわち、本発明は、主熱源機と、該主熱源機の運転により湯水を加熱して蓄熱する貯湯タンクと、該貯湯タンクから給湯するための給湯路と、運転時に前記給湯路への給湯を行うバックアップ熱源機と、前記主熱源機及び前記バックアップ熱源機の運転を制御する制御部とを備え、前記制御部は、過去の実績情報に基づいて将来の所定単位時間毎の時間帯別の熱負荷を予測する熱負荷予測機能と、該熱負荷予測機能により予測された時間帯別の熱負荷に基づいて現時点で前記主熱源機を運転させた方が運転させない場合よりも省エネ性が高いか否かを判定する省エネ運転判定機能と、前記貯湯タンクが所定の満蓄熱状態であるときに前記主熱源機を運転停止状態とする満蓄熱時運転停止機能とを有する、貯湯式給湯装置において、前記制御部は、前記省エネ運転判定機能により現時点で前記主熱源機を運転させた方が省エネ性が高いと判定しているとき、前記貯湯タンクからの所定の給湯動作が開始されることを条件として、前記貯湯タンクが前記満蓄熱状態であっても前記主熱源機を運転させるよう構成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0019】
かかる本発明の貯湯式給湯装置によれば、貯湯タンクが満蓄熱状態である場合でも、貯湯タンクからの所定の給湯動作が開始されると、現時点で主熱源機を運転させた方が省エネ性が高い場合に即座に主熱源機の運転による貯湯タンクへの貯湯が上記給湯動作と並行して開始され、熱効率の高い主熱源機の運転継続時間を可及的に長くすることにより、一層の効率向上が図られる。なお、貯湯タンクが満蓄熱状態であっても主熱源機を運転させるための構成としては、例えば、(1)省エネ運転判定機能により現時点で主熱源機を運転させた方が省エネ性が高いと判定しているとき、貯湯タンクからの所定の給湯動作が開始されることを条件として満蓄熱時運転停止機能による主熱源機の運転停止状態を解除することによって、制御部の主熱源機の通常の運転制御により主熱源機の運転が開始されるように構成することもできるし、また、(2)省エネ運転判定機能により現時点で主熱源機を運転させた方が省エネ性が高いと判定しているとき、貯湯タンクからの所定の給湯動作が開始されることを条件として、満蓄熱時運転停止機能の動作状態(例えば、フラグの状態)にかかわらず主熱源機を強制的に運転開始させるよう構成することもできる。
【0020】
なお、本発明において「給湯」とは、給湯栓への給湯のみならず、浴槽への湯はりのための給湯や、暖房回路の熱交換器への給湯や、ふろ追い焚き回路の熱交換器への給湯などをも含むものとする。また、上記特許文献2記載のハイブリッド給湯システムでは、段落番号0037に記載されているように、満タン以上の蓄熱量となる場合には省エネ評価点の演算を打ち切り、省エネ評価点マップへの演算結果の数値設定は初期設定のゼロのままとしていたが、本発明の給湯装置の場合、省エネ判定において貯湯タンクの最大蓄熱量を超えて主熱源機(ヒートポンプ)で生成される熱量をもその後の熱負荷に割り当てられるものと仮定して省エネ評価点を演算・判定することにより、満蓄熱状態で実際に出湯が開始されたときに主熱源機を運転したほうが省エネとなるか否かにつきより正確に判定を行えるようになる。
【0021】
また、貯湯タンクが満蓄熱状態であるか否かの判定は、貯湯タンクの所定部位に設けた貯湯温度センサ(上記従来例における最下部の貯湯温度センサなど)が所定温度以上を検出しているか否かによって行ってもよいし、貯湯タンクに上下方向に並設した複数の貯湯温度センサの検出値に基づいて現在貯湯タンク内に蓄熱されている熱量(入水温度を基準とした熱量でもよいし、予め定めた固定の基準温度を基準とした熱量でもよい)を演算により求めて、該蓄熱熱量が所定値以上であるか否かによって行ってもよく、その他適宜の方法によって行うことができる。
【0022】
上記本発明の貯湯式給湯装置において、前記制御部は、前記省エネ運転判定機能による前記判定を、前記満蓄熱時運転停止機能により前記主熱源機が運転停止状態とされているときに行うよう構成されていてよい(請求項2)。これによれば、従来は満蓄熱時には省エネ運転判定機能による判定を実施していなかったが、上記のように満蓄熱時運転停止機能により前記主熱源機が運転停止状態とされているときにも省エネ運転判定機能による上記判定を行うことによって、満蓄熱時においても所定の給湯動作が開始されるのであれば現時点で主熱源機を運転させた方が省エネ性が高くなるか否かを判定できる。なお、前記主熱源機の運転停止状態の解除のための前記省エネ運転判定機能による前記判定は、前記満蓄熱時運転停止機能により前記主熱源機が運転停止状態とされているときに行われるものに限定することもでき、これによれば貯湯タンクが満蓄熱状態であるときに省エネ運転判定機能によって省エネ判定を行うことで、より的確な判定を行うことができる。
【0023】
さらに、前記制御部は、前記満蓄熱状態で前記主熱源機を運転させた場合に、所定時間を経過しても前記貯湯タンクが前記満蓄熱状態であるとき、前記主熱源機を運転停止状態とするよう構成されているものとすることが好ましい(請求項3)。これによれば、所定の給湯動作の開始とともに主熱源機の運転が開始されて貯湯タンクへの蓄熱をも開始されたが、所定の給湯動作が短時間で終了したり、給湯流量が少量であることなどによって貯湯タンクの蓄熱熱量が減少していかず、所定時間を経過しても満蓄熱状態が維持されていれば、主熱源機を運転停止状態とすることによって各構成機器を損傷から保護することができる。なお、上記所定時間は、固定の時間(例えば3分)であってもよいし、貯湯タンクからの出湯流量や貯湯温度センサの検出値などに応じて変動するものであってもよい。
【0024】
また、前記所定の給湯動作は、浴槽への湯はりのための給湯動作であってよい(請求項4)。これによれば、大量の蓄熱熱量を必要とする湯はりのための熱負荷を貯湯タンクに蓄熱されている熱量で賄った後、その後に続く入浴者のシャワー利用のための熱負荷を可能な限り主熱源機の出力熱量によって賄うことができる。
【0025】
また、前記主熱源機はヒートポンプ装置であってよい(請求項5)。これによれば、ヒートポンプ貯湯式給湯装置の効率を一層向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の貯湯式給湯装置によれば、貯湯タンクが満蓄熱状態であっても所定の給湯動作の開始とともに主熱源機の運転をも開始させることによって、貯湯式給湯装置のより一層の効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドヒートポンプ方式の貯湯式給湯装置1を示しており、ヒートポンプ作動系2及び貯湯タンク3(貯湯槽)により主構成されるヒートポンプ式貯湯装置と、外部から水道水等を貯湯タンク3等に入水するための入水路4と、貯湯タンク3からの貯湯又は瞬間式ガス給湯器6(バックアップ熱源機)で加熱後の湯を用いて給湯栓や浴槽92等に給湯するための給湯路5と、給湯路5から供給される高温水を暖房用熱源とする暖房回路8と、同様に給湯路5から供給される高温水を追い焚き用熱源とする風呂追い焚き回路9と、この給湯装置1の作動制御を行う制御部10とを備えている。
【0030】
ヒートポンプ作動系2は、主熱源機としてのヒートポンプ21(HP)の排熱との熱交換加熱により貯湯タンク3内の湯水を所定温度まで昇温させて貯湯タンク3に貯湯するためのものである。このヒートポンプ作動系2は、前記ヒートポンプ21と、循環ポンプ22と、貯湯タンク3を含む循環回路と貯湯タンク3を含まない(貯湯タンク3をバイパスする)循環回路とのいずれかに選択的に切り替える貯湯切換弁23と、入側温度センサ24と、出側温度センサ25とからなる。そして、運転制御の開始により、例えば、ヒートポンプ21の凝縮用熱交換器(図示せず)において、高温状態の冷媒と、循環ポンプ22により貯湯タンク3の底部から供給された水との間で熱交換させることで水が加熱され、加熱された高温水が貯湯タンク3の頂部に戻されて貯湯タンク3内で温度成層を形成して蓄熱されることになる。この際、入側温度センサ24による低温水検出温度と出側温度センサ25による熱交換加熱後の湯水の温度との差温の情報、ヒートポンプ21側の冷媒温度などの情報に基づいて、貯湯タンク3の頂部に戻される熱交換加熱後の湯水温度が所定の沸き上げ温度になるよう貯湯切換弁23が切換制御される。
【0031】
貯湯タンク3は、密閉式で、比較的小さな容量(例えば90L〜140L程度)のもので構成されている。そして、貯湯タンク3の上下方向の所定の各位置には、上下方向各位置での内部の貯湯温度を検出する貯湯温度センサS1,S2,S3,S4が設けられている。最下部の貯湯温度センサS4は、貯湯タンク3の底部に設けられていてもよいが、本実施形態では、当該貯湯温度センサS4が高温(貯湯温度)を検出することでヒートポンプ21の運転停止後、ヒートポンプ作動系2の循環回路内の高温水を貯湯タンク3内に回収するための余裕をもたせた位置に設けられており、例えば、貯湯タンク3が完全に満タンの状態から30Lの高温水が貯湯タンク3頂部から出湯したときに貯湯温度センサS4が低温を検出するようになっている。なお、これら貯湯温度センサS1〜S4は、貯湯タンク3内の温水温度を直接検出するものであってもよいし、貯湯タンク3の側壁温度を検出するものであってもよい。後者の場合には、制御部10が、各貯湯温度センサS1〜S4の検出温度(貯湯タンク3の側壁温度)に基づいて内部の温水温度や蓄熱熱量を推定するよう構成できる。
【0032】
入水路4は、主入水路41の上流端が外部の水道管等に接続され、下流端が逆止弁42を介して貯湯タンク3の底部に接続されている。主入水路41の上流側から逆止弁43を介して分岐した混水用入水路44が給湯路5の後述の混合弁55に対し入水可能に接続されている。なお、符号46は入水路4に入水される水の温度を検出する入水温度センサである。
【0033】
給湯路5は、貯湯タンク3の頂部から出湯される湯水をバックアップ熱源機(BU)としての瞬間式ガス給湯器6を介して混合弁55に供給するための補助加熱路51と、貯湯タンク3の頂部から出湯される湯水をガス給湯器6を介さずに混合弁55に供給するための貯湯直接給湯路52との2つに分岐されている。補助加熱路51には、ガス給湯器6の上流側で循環ポンプ54が設けられ、該循環ポンプ54のさらに上流側で三方弁53が設けられ、該三方弁53のさらに上流側に逆止弁56が設けられている。補助加熱路51は、三方弁53及び循環ポンプ54を経てガス給湯器6に湯水を導き、貯湯タンク3の蓄熱量の不足時にはガス給湯器6で補助加熱した上で最終温調用の混合弁55へ供給するよう構成されている。この際、ガス給湯器6と混合弁55との間に設けられた閉止機能付きのタンク水比例弁57を給湯される湯水が通過するとともに、比例弁57を通過した湯水のうちの少量の一部が貯湯直接給湯路52を逆流するよう循環ポンプ54による補助加熱路51の流量制御を行うことにより、貯湯タンク3の頂部から出湯される湯水の温度が低温である場合にかかる低温の湯水が貯湯直接給湯路52を介して混合弁55へ直接流出してしまうことを防止している。貯湯直接給湯路52は、下流端が上記の比例弁57の下流側で補助加熱路51と合流することにより、上記の混合弁55に貯湯を直接供給可能になっている。すなわち、貯湯タンク3の頂部から高温の湯水を混合弁55に貯湯直接給湯路52を介して直接出湯させる場合には、比例弁57を全閉状態とし、入水路4の入水圧によって貯湯タンク3から出湯させる。なお、符号58は混合弁55の下流側位置において最終的に給湯される湯の給湯温度を検出する給湯温度センサであり、符号59は混合弁55の固着時に混合弁55からの高温水が出湯されることを回避するために開作動されて混水用入水路44から低温水を供給するための高温回避弁である。又、符号61は給湯水量を調整する水量調整弁、符号62はガス給湯器6により補助加熱された後の湯の温度を検出する温度センサである。
【0034】
暖房回路8は、暖房循環路81内の暖房用の循環熱媒を熱交換器82で液−液熱交換により加熱し、加熱した循環熱媒を高温暖房端末(例えば浴室乾燥機)83や、低温暖房端末(例えば床暖房)84に対し循環供給するようになっている。そして、上記の熱交換器82での液−液熱交換の加熱源(暖房熱源)として、給湯路5から分岐した暖房用高温水供給路71を介して、ガス給湯器6から出湯される加熱後の高温水、又は、運転停止状態の瞬間式ガス給湯器6を素通りした貯湯タンク3からの高温水が、熱交換器82の熱源側に供給されるようになっている。かかる高温水は、液−液熱交換により温度低下した後、開閉電磁弁72を介して貯湯タンク3への戻り管路73に導出される。而して、貯湯タンク3、補助加熱路51、ガス給湯器6、給湯路5、暖房用高温水供給路71、熱交換器82、並びに、戻り管路73によって、貯湯タンク3を含む暖房用循環回路が構成されている。また、貯湯タンク3をバイパスして戻り管路73を補助加熱路51の三方弁53に接続するバイパス管路74が設けられており、三方弁53の切換動作によって、貯湯タンク3を含む暖房用循環回路と、貯湯タンク3をバイパスする(貯湯タンク3を含まない)暖房用循環回路とに切換可能に構成されている。また、熱交換器82での液−液熱交換により加熱された暖房回路8の循環熱媒は、高温暖房端末83又は低温暖房端末84に供給されて放熱された後、膨張タンク87及び暖房ポンプ88を経て上記熱交換器82に戻されて再加熱されるようになっている。
【0035】
風呂追い焚き回路9は、追い焚きポンプ91を作動させることにより浴槽92内の湯水を追い焚き循環路93を通して熱交換器94との間で循環させ、この熱交換器94での液−液熱交換により追い焚き加熱するようになっている。熱交換器94の熱源側には、暖房回路8と同様に、給湯路5から分岐した追い焚き用高温水供給路95を介して高温水が供給され、かかる高温水は熱交換器94での液−液熱交換により温度低下した後に開閉電磁弁96を経て戻り管路73に導出される。なお、追い焚き時には、貯湯タンク3をバイパスするよう三方弁53を切換動作させて、ガス給湯器6によって熱交換器94へ供給する高温水を加熱することが好ましいが、貯湯タンク3内の貯湯温度が十分に高く、貯湯量も十分である場合には、貯湯タンク3から供給される高温水を熱交換器94に供給することも可能である。
【0036】
また、給湯路5から分岐して追い焚き循環路93に注湯するための注湯路97が設けられており、リモコン100に設けたふろ自動スイッチをオン操作することによって、貯湯タンク3から出湯される高温水と入水路4に入水する低温水とを混合弁55で混合することによりふろ設定温度に温調した上で、設定水位若しくは設定湯はり量の湯水を浴槽92に注湯して湯はり可能に構成されている。すなわち、注湯路97には、注湯電磁弁98及び逆止弁99が設けられており、制御部10は浴槽92への湯はり制御を開始すると注湯電磁弁98を開くとともに、浴槽98への注湯温度が湯はり設定湯温となるよう混合弁55を制御して、貯湯タンク3に貯湯された高温湯と入水路4から入水する低温水とを混合して、温調された湯水を注湯路97を介して設定水位となるまで浴槽92へ供給するよう構成されている。なお、符号S5は、浴槽内の水位を検出するための水位センサである。
【0037】
上記のヒートポンプ21による貯湯運転、浴槽92への湯はり運転、暖房回路8による暖房運転、及び、風呂追い焚き回路9による追い焚き運転は、リモコン100からの入力設定信号や操作信号の出力、上述した種々の温度センサ等からの検出信号の出力を受けて、制御部10により制御されるようになっている。そして、給湯栓への給湯、浴槽92への湯はり、及び、暖房に必要な熱量が、ヒートポンプ21によって賄う熱負荷となる。
【0038】
制御部10は、上記特許文献2に開示した給湯装置と同様の基本構成を有し、CPUや書き換え可能メモリを備えるマイコンによって主構成されており、メモリに記憶されたプログラム及び各種データに基づいて給湯装置1全体の作動制御を行うようになっている。
【0039】
本実施形態では特に、ヒートポンプ作動系2による蓄熱動作制御に関連して、ヒートポンプ21によって賄う熱負荷の省エネルギー性(例えば一次エネルギー効率)を追求した省エネ化作動制御を行う構成を備えている。以下、本実施形態の省エネ化作動制御について詳細に説明する。
【0040】
制御部10は、貯湯タンク3に蓄熱されている蓄熱熱量を計測する蓄熱熱量計測機能と、給湯・湯はり及び暖房に実際に利用された過去の使用熱量(使用湯量)を計測する実熱負荷計測機能と、給湯・湯はり及び暖房に実際に利用された使用熱量に係る過去の実績情報に基づいて現時刻から所定時間先(例えば9時間先)までの将来の所定単位時間毎(例えば1時間毎)の時間帯別の熱負荷を予測する熱負荷予測機能と、該熱負荷予測機能により予測された時間帯別の熱負荷に基づいて現時点でヒートポンプ21を蓄熱運転させた方が運転させない場合よりも省エネ性が高いか否かを判定する省エネ運転判定機能と、貯湯タンク3が満蓄熱状態であるときにヒートポンプ21を運転停止状態とする満蓄熱時運転停止機能とを有し、例えば、毎時0分となったときや、予測外の熱利用があった場合や、貯湯タンク3が満蓄熱状態から空き状態となったときなどの所定のタイミングで、省エネ性の判定結果に基づいて現時点でヒートポンプ21による蓄熱運転を開始した方が高い省エネルギー性を得られるか否かを判定して、より省エネルギー性が高くなるようヒートポンプ21の運転を制御するようになっている。
【0041】
蓄熱熱量計測機能(貯湯熱量計測手段)は、貯湯タンク3に設けられた複数の貯湯温度センサS1〜S4の検出値、上下方向に隣接する貯湯温度センサ間の各領域の容量、及び、入水温度センサ46の検出値に基づいて、貯湯タンク3に蓄熱されている熱量を計測す機能である。例えば、沸き上げ温度の高温水が貯湯されて各貯湯温度センサS1〜S4がその高温水の温度(例えば80℃)を検出した場合には、その温度検出値から入水温度(例えば5℃)を減じた値と前記の容量値との乗算を行い、これを上下方向に積算することで蓄熱熱量が得られる。
【0042】
実熱負荷計測機能(実熱負荷計測手段)は、給湯栓への給湯・浴槽への湯はり及び暖房による過去の使用熱量(使用湯量)の実績値(実熱負荷)を計測して、計測した実熱負荷に係る情報をメモリなどの記憶手段に記憶する機能である。実熱負荷の計測と記憶とは、例えば曜日毎に区分けして行うことができ、各曜日の使用熱量(湯量)の実績である実熱負荷情報として、給湯栓への給湯・浴槽への湯はり・暖房のそれぞれについて、曜日毎でかつ1時間毎(単位時間毎)の時間帯別の過去の使用熱量の実績値を記憶しておくことができ、ガス給湯器6による補助加熱が行われた際にはこの補助加熱分に相当する熱量をも使用熱量の実績値に考慮することができる。各曜日の各時間帯別のそれぞれの実績値は、過去の同じ曜日の同じ時間帯別の実使用熱量に基づいて算出できる。
【0043】
熱負荷予測機能(熱負荷予測手段)は、実熱負荷計測機能によって記憶手段に記憶された曜日毎かつ時間帯別の過去の実熱負荷に係る情報に基づいて、現時刻から9時間先までの将来の1時間毎の時間帯別に要求される使用熱量(熱負荷)を予測する。この際、特に来客等の日常と異なる熱利用の予定があって、ユーザーが例えばリモコン100を用いてその熱量使用分の使用予定を予約設定した場合には、その予約設定された熱負荷の熱量分を記憶された熱負荷情報に基づく予測熱負荷に加算したものを予測熱負荷として設定することができる。なお、熱負荷(使用熱量)は、ジュール(J)やカロリー(cal)という熱力学上の熱量の単位を用いたものであるが、本明細書においては、本願出願人が制御プログラム上使用しているカロリー(cal)単位を用いて説明する。又、ヒートポンプ給湯装置においては貯湯タンク3への貯湯温度(沸き上げ温度)が80℃などの所定温度となるように制御され、かかる貯湯温度で貯湯された貯湯量と蓄熱された熱量とはほぼ線形の関係となるから、貯湯タンク3における所定の貯湯温度で貯湯された湯量を蓄熱された熱量とみなすとともに、翌日に貯湯タンク3から出湯されると予測(予定)される使用予定湯量を使用予定熱量とみなして制御することも可能である。この熱負荷予測機能による熱負荷の予測は、運転当日の曜日に対応する曜日における時間毎の情報をそのまま予測熱負荷に係る情報として用いるものであってもよいし、天候や気温や入水温度などに基づいて適宜補正した上で時間毎の予測熱負荷情報として予測するものであってもよい。
【0044】
省エネ運転判定機能は、上記のようにして求められた9時間先までの予測熱負荷と、現時刻の貯湯タンク3内の貯湯熱量とに基づいて、各時間帯にヒートポンプ21を仮想的に運転させることで生成される熱量を予測熱負荷に順次割り当てていった場合にどの程度の省エネポイント(省エネ度数)となるかのシミュレーションをすべての運転パターンについて行い、最も省エネ評価点の高い運転パターンを抽出することで、現時点でヒートポンプ21を蓄熱運転させるか否かを判定する機能である。
【0045】
上記シミュレーションは、特許文献2で既に開示したように、現時刻+i時間後(n時間先までの熱負荷の予測を行っている場合、iは0〜(n−1)までの整数)からヒートポンプをj時間(但し、i+j≦8を満たす整数)連続運転させた場合に出力される熱量を、各時間帯の熱負荷に順次割り当てていった場合の省エネポイントS(i,j)を演算していく。各省エネポイントS(i,j)は、次式(1)、(2)、(3)により求めることができる。
【0046】
S(i,j)=Σ(予測熱負荷毎の省エネ評価点) ・・・(1)
【0047】
予測熱負荷毎の省エネ評価点=t時間放置した場合の省エネ度×(賄う対象の予測熱負荷/HP総出力熱量) ・・・(2)
【0048】
t時間放置した場合の省エネ度=(貯湯タンクから単位熱量を取り出す時点からt時間前に貯湯タンクに蓄熱することが必要となる熱量を出力するために必要なHPの消費エネルギー量/単位熱量をBUで賄う場合のBUの消費エネルギー量)×100 ・・・(3)
【0049】
かかる省エネポイント(省エネ度数)の演算シミュレーションの詳細は特許文献2にすでに開示しているのでここに引用して省略し、異なる点について詳述する。
【0050】
特許文献2に開示した従来例では、貯湯タンクの貯湯熱量の空き熱量の部分や、使用熱量の部分を考慮して、満タン以上の蓄熱量となる場合には、それ以降の予測熱負荷についてはヒートポンプ21の出力熱量では賄えないものとして当該予測熱負荷の省エネ評価点の演算を打ち切って初期設定のままゼロとしていた。一方、本実施形態においては、ヒートポンプ21の仮想出力熱量によって貯湯タンク3の容量を超えて蓄熱されるものとして各予測熱負荷の省エネ評価点、並びに、省エネポイントを演算する。
【0051】
図2〜
図4は、現時点からヒートポンプ21を運転することで出力される熱量によって1時間後の予測熱負荷を賄う場合の省エネ評価点の演算例を従来方法と本実施形態に係る方法とで対比した図である。なお、ここではヒートポンプ21の1時間あたりの最大出力熱量は2000kcalであるものとし、湯余り補正のために800kcalまで連続運転時間を短縮できる仕様とする。ヒートポンプ21はある程度の時間連続運転しなければ効率が悪くなることから、運転する場合には最低800kcalの熱量を出力するまで運転を継続する。また、説明の簡単のため、現時点で貯湯タンク3に蓄熱されている熱量は、現時刻の熱負荷によってすべて消費されるものとする。また、1時間放置の場合の省エネ度は50とし、湯余り熱量分の省エネ度は−35とする。
【0052】
図2に示す例では、1時間後に2000kcalの予測熱負荷があるため、本実施形態ではこの予測熱負荷を賄うためにヒートポンプを1時間連続運転することで2000kcal出力するものと仮定し、この出力分によって上記予測熱負荷が賄われるものとして、この予測熱負荷に対する省エネ評価点は50×2000/2000=50ポイントと算出する。なお、2時間後以降の予測熱負荷がある場合には、すべての予測熱負荷について同様に省エネ評価点を算出して、これらを積算することで省エネポイントが算出され、この省エネポイントが大きければ大きいほど省エネ性が高いと判定する。また、省エネポイントが1以上であればバックアップ熱源機BUとしてのガス給湯器によって予測熱負荷を賄うよりも省エネ性が高くなることを意味する。
【0053】
一方、従来の省エネ評価点の算出方法の場合、貯湯タンクに空きが無い場合には演算を打ち切るため、この予測熱負荷に対する省エネ評価点としては0となる。
【0054】
図3に示す例では、1時間後に1500kcalの予測熱負荷があり、本実施形態ではこの予測熱負荷を賄うためにヒートポンプを1500kcal分連続運転させるものと仮定し、この出力分によって上記予測熱負荷が賄われるものとして、この予測熱負荷に対する省エネ評価点は50×1500/1500=50ポイントと算出する。一方、従来の算出方法の場合、貯湯タンクの空き容量分しかヒートポンプを連続運転しないため、ヒートポンプの出力熱量は貯湯タンクの空き容量である1200kcalとされ、この出力熱量によって1時間後の予測熱負荷の一部が賄われ、残りはバックアップ熱源機により賄われるものとして、この予測熱負荷に対する省エネ評価点は50×1200/1200=50ポイントと算出する。
【0055】
図4に示す例では、1時間後に500kcalの予測熱負荷があり、本実施形態ではヒートポンプの最低出力熱量である800kcalより小さいため、シミュレーションの簡素化のためにこの場合には2000kcalを出力するものとして計算する。すなわち、2000kcalの出力熱量のうちの1200kcalが貯湯タンクの空き領域に入り、800kcalがタンクオーバー分として仮想的に蓄熱されるものとし、蓄熱された2000kcalのうちの500kcalによって1時間後の予測熱負荷が賄われ、1500kcalが湯余りとなるものとして、この予測熱負荷に対する省エネ評価点は50×500/2000−35×1500/2000≒−13(小数点以下切り上げ)となる。すなわち、この場合はバックアップ熱源機によって予測熱負荷を賄った方が省エネ性が高いと判定されることとなる。一方、従来の算出方法の場合、ヒートポンプの出力熱量は貯湯タンクの空き容量である1200kcalとされ、そのうち500kcalで1時間後の予測熱負荷が賄われ、700kcalが湯余りとなるため、この場合の省エネ評価点は50×500/1200−35×700/1200≒1(小数点以下切り上げ)となる。
【0056】
このようにして9時間先までの予測熱負荷を賄うためのヒートポンプのすべての運転パターンについてシミュレーションを行うことによって省エネポイントS(i,j)を演算により求めて、このすべての省エネポイントS(i,j)の内から、9時間先までのすべての予測熱負荷を賄う場合に最も良い数値(最も大きい数値)となる1の省エネポイント又は2以上の省エネポイントの組み合わせを検索し、最大となる省エネポイントが現時点に運転するもの、すなわちS(0,j)のいずれかが最も省エネポイントが高いか否かを判定し、現時点でヒートポンプを運転した方が運転しないよりも省エネ性が高いと判定した場合にはヒートポンプ作動系2による蓄熱運転を開始させる。なお、実際の蓄熱運転継続時間は、上記シミュレーションにおける仮定と一致させる必要はなく、適宜のタイミングで上記シミュレーションを再計算した上で、その時点で再度ヒートポンプ作動系2を運転させるか停止させるかを判定するものであってよい。
【0057】
次に、上記満蓄熱時運転停止機能について説明する。制御部10は、現時点でヒートポンプの蓄熱運転を行ったほうが行わない場合よりも省エネ性が高いと判定する場合には上述したようにヒートポンプ作動系2による蓄熱運転を行うが、メモリ内の所定の記憶領域に設定された満タンフラグがオンの場合にはヒートポンプ作動系2による蓄熱運転制御を行わず、ヒートポンプ21を運転停止状態に維持し、満タンフラグがオフとなった後に蓄熱運転制御を開始するよう構成されている。
【0058】
満タンフラグは、
図5に示す満タンフラグ制御フローにしたがって制御部10によって常時オン/オフ切換制御される。すなわち、制御部10はまずステップS1において満タンフラグをオフとする。次に、ステップS2において後述する満タン確定タイマーが3分を経過しているか否かを判定し、3分経過していなければ待機する。
【0059】
満タン確定タイマーが3分を経過していれば、次にステップS3において、最下部の貯湯温度センサS4の検出温度が、貯湯設定温度−10℃を超えているか否かを判定する。なお、設定温度に対して−10℃で判定しているのは、貯湯温度センサS4として貯湯タンク3の側面に貼り付けるタイプのサーミスタを利用することを想定しており、かかるサーミスタの検知特性を考慮したものである。また、貯湯設定温度−10℃を超えているか否かは、ある程度の時間継続してかかる条件を満たしたか否かという基準によって判定することがノイズ対策等のために好ましく、例えば2〜3分継続して貯湯温度センサS4の検出温度が貯湯設定温度−10℃である場合にステップS4へ移行するよう構成できる。
【0060】
ステップS4では、満タンフラグをオンに切り替える。これにより、ヒートポンプ21の蓄熱運転中であっても、制御部10は強制的にヒートポンプ21による蓄熱運転を停止することとなる。
【0061】
次に、ステップS5において、最下部の貯湯温度センサS4の検出温度が貯湯設定温度−12℃よりも低いか否かを判定する。この判定も所定時間(例えば1〜2分)連続して満たした場合にのみ判定条件が成立したものとし、それ以外の場合には判定条件が不成立とすることができる。判定条件が成立すると、貯湯タンク3が満タン状態(満蓄熱状態)ではなくなったものとして、ステップS1に戻る。一方、判定条件不成立の場合には、ステップS6に移行する。
【0062】
ステップS6では、リモコン100に設けられたふろ自動スイッチがオン操作されたか否かを判定する。かかる判定も、ふろ自動スイッチが操作されてふろ自動運転制御が開始されれば条件成立とすることができるが、誤ってふろ自動スイッチが押されてその直後にふろ自動スイッチをオフ操作される場合にはふろ自動スイッチがオン操作されたとは判定しないよう構成することもできる。ふろ自動スイッチがオン操作されなければステップS5の判定を繰り返す。一方、ふろ自動スイッチがオン操作されたと判定された場合には、満タン確定タイマーをリセットした上で(ステップS7)、ステップS1に戻り、満タンフラグを強制的にオフにするよう構成されている。
【0063】
このとき、貯湯サーミスタS4は高温を検出している状態であるので、実際は貯湯タンク3は満タン状態であるが、ふろ自動スイッチがオン操作されたことによって浴槽92への湯はり動作が開始され、貯湯タンク3の頂部から比較的大きな流量で高温水が出湯している。かかる出湯速度は、ヒートポンプ21による貯湯速度と比較してかなり大きなものであるため、満タンフラグがオフに切り替わることによってヒートポンプ21による蓄熱運転が再開されても、貯湯タンク3から徐々に貯湯量(蓄熱量)が減少していく。
【0064】
上記ステップS2における確定時間である3分は、浴槽への湯はりのための出湯と、ヒートポンプ21の運転による貯湯とが同時に行われた場合に、貯湯タンク3が完全に満タンの状態から最下部の貯湯サーミスタS4が貯湯設定温度−12℃以下を検出する状態まで貯湯タンク3の貯湯量が減少する時間として設定されるものであり、かかる満タン確定タイマーの設置により、強制的に満タンフラグをオフにしたにもかかわらずその後すぐに満タンフラグがオンに復帰してしまうことを回避している。
【0065】
なお、満タン確定タイマーは、貯湯タンク3が満タンの状態でふろ自動スイッチがオン操作されたときにのみリセットされ、ステップS5において貯湯温度センサS4の通常の低温検出による満タンフラグオフ時にはリセットされないので、この場合には3分経過せずともステップS2において貯湯サーミスタS4により満タンを検知させることができる。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。例えば、「所定単位時間」として、本実施形態では1時間を採用した場合について説明したが、これに限らず、所定単位時間を例えば30分(0.5時間)としたり、15分(0.25時間)としたり、あるいは2時間とすることもできる。また、バックアップ熱源機としては、ガスを燃料として燃焼作動させるものの他に、液体燃料(例えば石油)を燃料として燃焼作動させるものを用いることもできるし、システムに要求される仕様等によっては瞬間式給湯器のみならず他の貯湯式給湯装置などを用いることも可能である。また、予測熱負荷としては、給湯栓への給湯に必要な熱量のみであってもよいし、給湯栓への給湯+暖房のみでもよいし、湯はり+暖房のみでもよいし、その他適宜のもの及び組み合わせを予測熱負荷とすることができる。
【0067】
また、上記実施形態では制御部10によって、9時間先までの予測熱負荷を賄うための運転パターンについて省エネポイントS(i,j)をシミュレーションにより演算し、現時刻にヒートポンプを運転することが省エネポイントが最大となるか否かによってヒートポンプを運転開始するか否かを判定したが、9時間先までの予測熱負荷のすべてのパターンについて現時点で運転したほうが省エネ性が高くなるか否かを別途のコンピュータを用いてシミュレーションしておき、その結果のみをデータベース化して制御部10の不揮発性メモリに記憶しておくことで、9時間先までの予測熱負荷が定まれば上記データベースの参照によって現時点でヒートポンプを運転すべきか否かを判定できるようにしておくこともできる。例えば、各時間帯の予測熱負荷の大きさを4ビット(16段階)で表すのであれば、9時間先までの予測熱負荷のすべてのパターンに対応するデータベースは4
9÷8バイト=32キロバイトのメモリ領域に記憶しておくことができる。