(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホスフェート系安定剤(D)が、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
O=P(OH)n(OC18H37)3−n …(II)
更に、ハイドロジェンシロキサン(E)を、ポリカーボネート樹脂(A−1)100質量部に対して0.003〜0.15質量部含有することを特徴とする請求項4ないし9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0022】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、基材に酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成された板状フィラー(B)0.1〜5質量部と、基材に酸化チタン、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成された板状フィラー(C)0.1〜5質量とを含有する熱可塑性樹脂組成物であって、板状フィラー(B)と板状フィラー(C)が以下の関係を満たすことを特徴とする。
板状フィラー(B)の平均粒径D
50<板状フィラー(C)の平均粒径D
50
【0023】
なお、本発明において、板状フィラー(B),(C)の粒径とは、板状フィラー(B),(C)を2枚の平行な板で挟んだときに、この板の間隔が最も大きくなる部分の長さをさし、本発明における平均粒径D
50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D
50をいい、例えば、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定されるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
また、板状フィラー(B),(C)の基材や被覆層に含まれる各金属酸化物の含有量は、蛍光X線分析法やエネルギー分散型X線分光法による金属含有量から酸化物量として換算する方法により求めることができるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
更に、板状フィラー(B),(C)のpHとは、フィラーを蒸留水にて煮沸後に、ろ液もしくは上澄み液についてpH試験紙やpH測定器により測定された値であるが、市販品についてはカタログ値が該当する。
【0024】
[作用機構]
基材に酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成された板状フィラー(B)は、被覆層に酸化鉄が含まれることで、金のようなキラキラした外観を演出することができ、また、被覆層が酸化ケイ素を含むことで良好な光沢感を演出することができる。一方、基材に酸化チタン、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成された板状フィラー(C)は、被覆層が酸化チタンを含むことで、高い光輝感を演出する。
【0025】
このような板状フィラー(B)と板状フィラー(C)とを併用することで、金のようなキラキラした金属調の外観を得ることができるが、特に板状フィラー(B)の平均粒径D
50が板状フィラー(C)の平均粒径D
50よりも小さいことにより、板状フィラー(B)による効果と板状フィラー(C)による効果が相乗的に作用するようになり、いずれの角度から見ても、また、どのような光源のもとでも、金のようなキラキラした金属調の外観を実現することが可能となる。
【0026】
なお、本発明で用いる板状フィラー(B)及び板状フィラー(C)は、一般的にアルカリ性であり、ポリカーボネート樹脂を含む熱可塑性樹脂(A)に配合すると、成形加工時にポリカーボネート樹脂を劣化させるおそれがあるため、これらの板状フィラー(B),(C)によるポリカーボネート樹脂の劣化を防止するために、本発明の樹脂組成物が熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂を含む場合には、後述の特定のホスフェート系安定剤(D)、更には、ハイドロジェンシロキサン(E)を配合することが好ましい。
【0027】
[熱可塑性樹脂(A)]
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)としては、特に制限はなく、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、(メタ)アクリレート共重合体、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の一態様にあっては、熱可塑性樹脂(A)は、透明性に優れ、板状フィラー(B)及び板状フィラー(C)の配合による金特有の外観付与効果に優れ、また、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性に優れることから、ポリカーボネート樹脂(A−1)を含むものであることが好ましい。この場合、ポリカーボネート樹脂(A−1)を用いることによる上記効果を十分に得る上で、熱可塑性樹脂(A)100質量部中のポリカーボネート樹脂(A−1)の含有量は50〜100質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂(A−1)以外の熱可塑性樹脂を含む場合、他の熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂(A−2)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂(A−3)が挙げられる。また、本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)は、ポリアセタール樹脂(A−4)であってもよい。
【0029】
<ポリカーボネート樹脂(A−1)>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A−1)としては、透明性、耐衝撃性、耐熱性等の面から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0030】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0031】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0032】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。
【0033】
上述した芳香族ポリカーボネート樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、この一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0035】
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は用途により任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは20,000〜50,000である。粘度平均分子量が20,000より小さいと、得られる成形品の耐衝撃性等の機械的強度が低下し、50,000より大きいと、流動性が悪くなり、成形性に問題が生じる。芳香族ポリカーボネート樹脂のより好ましい粘度平均分子量は20,000〜40,000であり、さらに好ましくは21,000〜30,000である。なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0036】
なお、粘度平均分子量(Mv)とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
−4Mv
0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度(η)とは、各溶液濃度(C)(g/dl)での比粘度(η
sp)を測定し、下記式により算出した値である。
【0038】
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度特性としては、上記の粘度平均分子量(Mv)のほかにMVR(メルトボリュームレイト)で表すこともできる。本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂のMVRは用途により任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは3〜30cm
3/10分である。MVRが30cm
3/10分より大きいと、得られる成形品の耐衝撃性等の機械的強度が低下し、3cm
3/10分より小さいと、流動性が悪くなり、成形性に問題が生じる。芳香族ポリカーボネート樹脂のより好ましいMVRは5〜25cm
3/10分であり、さらに好ましくは8〜20cm
3/10分であり、特に好ましくは10〜15cm
3/10分である。MVRの異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、MVRが上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂のMVRは、ISO1133に準拠して、測定温度300℃、測定荷重1.2kgf(11.8N)の条件で測定された値である。
【0039】
<ABS樹脂(A−2)>
ABS樹脂(A−2)は、ポリカーボネート樹脂(A−1)の流動性の改善、耐衝撃性の向上に有効である。
【0040】
ABS樹脂(A−2)としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体におけるスチレン及び/又はアクリロニトリルを他のモノマーで置換した樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のブタジエンを主成分とするゴム成分を他のゴム成分で置換した樹脂等が挙げられる。
【0041】
ABS樹脂(A−2)の製造方法は任意であり、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法で製造したものを用いることができる。
【0042】
ABS樹脂(A−2)におけるスチレン及び/又はアクリロニトリルを他のモノマーで置換した樹脂における他のモノマーとしては、他のスチレン系モノマー、シアン化ビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。スチレン系モノマーとしてはα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、ビニルトルエン、o−p−ジクロロスチレンが挙げられる。シアン化ビニル系モノマーとしては、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしてはアクリル酸及びメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル等のエステルが挙げられる。スチレン及び/又はアクリロニトリルを他のモノマーで置換する場合、スチレン及び/又はアクリロニトリルの一部を他のモノマーで置換することもできるし、全量を他のモノマーで置換することもできる。
【0043】
さらに、これらと共重合可能な他のビニルモノマーを共重合したものでも良く、この場合、共重合可能な他のビニルモノマーとしては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
ABS樹脂(A−2)のブタジエンを主成分とするジエン系ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン/(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体、ブタジエン/スチレン/(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体等が挙げられる。ジエン系ゴム成分を他のゴム成分で置換した樹脂における他のゴム成分としては、例えば、エチレンープロピレンラバー、アクリルラバー等が挙げられる。
【0045】
ABS樹脂(A−2)中のブタジエン単位の含有率は5〜39質量%が好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
【0046】
ABS樹脂(A−2)は、市販されているものを広く採用することができる。
【0047】
<ポリエステル樹脂(A−3)>
ポリエステル樹脂(A−3)は、耐薬品性の向上、熱安定性の向上に有効である。
【0048】
ポリエステル樹脂(A−3)としては、従来公知の任意のポリエステル樹脂を使用できるが、中でも芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。ここで芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステル樹脂を示し、例えば、芳香族ジカルボン酸成分と、ジオール(及び/又はそのエステルやハロゲン化物)成分とを主成分とし、これらを重縮合して得られる重合体又は共重合体である。
【0049】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2'−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3'−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4'−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4'−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0050】
これら芳香族ジカルボン酸成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。これら芳香族ジカルボン酸の中では、テレフタル酸が好ましい。尚、本発明の効果を損なわない範囲で、これら芳香族ジカルボン酸と共に、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸を併用してもよい。
【0051】
ジオール成分としては、脂肪族グリコール類、ポリオキシアルキレングリコール類、脂環式ジオール類、芳香族ジオール類等が挙げられる。脂肪族グリコール類としては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の炭素数2〜20のものが挙げられ、中でも炭素数2〜12、特に炭素数2〜10の脂肪族グリコール類が好ましい。
【0052】
ポリオキシアルキレングリコール類としては、アルキレン基の炭素数が2〜4で、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール類、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0053】
脂環式ジオール類としては、例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、水素化ビスフェノールA等が挙げられる。また芳香族ジオール類としては、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコール、テトラメチルシクロブタンジオール等が挙げられる。
【0054】
その他のジオール成分としては上述したジオール類のエステルや、ハロゲン化物、例えばテトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなど)付加物などのハロゲン化ジオール類が挙げられる。これらのジオール成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。また少量であれば、分子量400〜6000の長鎖ジオール類、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いてもよい。
【0055】
本発明に用いる芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレートが好ましい。ここで、ポリアルキレンテレフタレートとは、アルキレンテレフタレート構成単位を含む樹脂をいい、アルキレンテレフタレート構成単位と他の構成単位との共重合体であってもよい。
【0056】
本発明に用いるポリアルキレンテレフタレートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレン−テレフタレート)、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0057】
また、本発明に用いるポリアルキレンテレフタレートとして、上記の他、アルキレンテレフタレート構成単位を主構成単位とする、PETG、PCTG、PCTA、Tritan等のアルキレンテレフタレート共重合体や、ポリアルキレンテレフタレートを主成分とするポリアルキレンテレフタレート混合物が挙げられる。さらに、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のエラストマー成分を含有又は共重合したものも用いることができる。
【0058】
アルキレンテレフタレートコポリエステルとしては、2種以上のジオール成分とテレフタル酸からなるコポリエステルや、ジオール成分とテレフタル酸、及びテレフタル酸以外のジカルボン酸からなるコポリエステルが挙げられる。ジオール成分を2種以上用いる場合には、上述したジオール成分から適宜選択して決定すればよいが、主構成単位であるアルキレンテレフタレートに共重合されるモノマー単位を、25質量%以下とすることで、耐熱性が良好となるので好ましい。
【0059】
例えば、エチレングリコール/イソフタル酸/テレフタル酸共重合体(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート)や、1,4−ブタンジオール/イソフタル酸/テレフタル酸共重合体(イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート)等の、アルキレンテレフタレート構成単位を主構成単位とする、アルキレンテレフタレートコポリエステルの他に、1,4−ブタンジオール/イソフタル酸/デカンジカルボン酸共重合体等が挙げられ、中でもアルキレンテレフタレートコポリエステルが好ましい。
【0060】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A−3)としては、アルキレンテレフタレートのコポリエステルを用いる場合には、上述のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートや、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートなどが好ましく、特にこれらの内、耐熱性の観点から、イソフタル酸成分が25質量%以下のものが好ましい。
【0061】
(ポリエチレンテレフタレート)
ポリエステル樹脂(A−3)としては、特にポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。ここで、ポリエチレンテレフタレートとは、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位(以下「ET単位」と称す場合がある。)の比率(以下「ET比率」と称す場合がある。)が好ましくは90当量%以上であるポリエチレンテレフタレート樹脂であり、本発明におけるポリエチレンテレフタレートはET単位以外の構成繰り返し単位を10当量%未満の範囲で含んでいてもよい。本発明におけるポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
【0062】
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体が挙げられる。
【0063】
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
【0064】
上記の様なテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとを含む原料は、エステル化触媒又はエステル交換触媒の存在下におけるエステル化反応又はエステル交換反応により、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及び/又はそのオリゴマーを形成させ、その後、重縮合触媒及び安定剤の存在下で高温減圧下に溶融重縮合を行ってポリマーとされる。
【0065】
エステル化触媒は、テレフタル酸がエステル化反応の自己触媒となるため特に使用する必要はない。また、エステル化反応は、エステル化触媒と後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であり、また、少量の無機酸等の存在下に実施することができる。エステル交換触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、マンガン等の金属化合物が好ましく使用されるが、中でも得られるポリエチレンテレフタレートの外観上、マンガン化合物が特に好ましい。
【0066】
重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、錫化合物等の反応系に可溶な化合物が単独又は組み合わせて使用される。重縮合触媒としては、色調及び透明性等の観点から二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。これらの重縮合触媒には重合中の分解反応を抑制するために安定剤を併用してもよく、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物の1種又は2種以上が好ましい。
【0067】
上記の触媒の使用割合は、全重合原料中、触媒中の金属の重量として、通常1〜2000ppm、好ましくは3〜500ppmの範囲とされ、安定剤の使用割合は、全重合原料中、安定剤中のリン原子の重量として、通常10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmの範囲とされる。触媒及び安定剤の供給は、原料スラリー調製時の他、エステル化反応又はエステル交換反応の任意の段階において行うことができる。更に、重縮合反応工程の初期に供給することもできる。
【0068】
エステル化反応又はエステル交換反応時の反応温度は、通常240〜280℃であり、反応圧力は通常、大気に対する相対圧力として0.2〜3kg/cm
2G(20〜300kPa)である。また、重縮合時の反応温度は、通常250〜300℃であり、反応圧力は通常、絶対圧力として500〜0.1mmHg(67〜0.013kPa)である。この様なエステル化又はエステル交換反応及び重縮合反応は、一段で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。この様にして得られるポリエチレンテレフタレートは、極限粘度が通常0.45〜0.70dl/gであり、常法によりチップ化される。このチップの平均粒径は、通常2.0〜5.5mm、好ましくは2.2〜4.0mmの範囲とされる。
【0069】
次に、上記の様に溶融重縮合により得られたポリマーは、通常固相重合に供される。固相重合に供されるポリマーチップは、予め固相重合を行う温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重合に供されてもよい。この様な予備結晶化は、(a)乾燥状態のポリマーチップを、通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度で1分間〜4時間加熱する方法、(b)乾燥状態のポリマーチップを、水蒸気又は水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常120〜200℃の温度で1分間以上加熱する方法、(c)水、水蒸気又は水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で吸湿させ調湿したポリマーチップを、通常120〜200℃の温度で1分間以上加熱する方法等によって行うことができる。ポリマーチップの調湿は、その含水分が通常100〜10000ppm、好ましくは1000〜5000ppmの範囲となる様に実施される。調湿したポリマーチップを結晶化や固相重合に供することにより、PETに含まれるアセトアルデヒドや微量に含まれる不純物の量を一層低減化することが可能である。
【0070】
固相重合工程は、少なくとも一段からなり、通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃の重合温度、通常1kg/cm
2G〜10mmHg(絶対圧力として200〜1.3kPa)、好ましくは0.5kg/cm
2G〜100mmHg(絶対圧力として150〜13kPa)の重合圧力の条件下、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガス流通下で実施される。固相重合時間は、温度が高いほど短時間でよいが、通常1〜50時間、好ましくは5〜30時間、更に好ましくは10〜25時間である。固相重合により得られたポリマーの極限粘度は、通常0.70〜0.90dl/gの範囲である。
【0071】
本発明に用いるポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、適宜選択して決定すればよいが、通常0.5〜2dl/g、中でも0.6〜1.5dl/g、特には0.7〜1.0dl/gであることが好ましい。固有粘度を0.5dl/g以上、特には0.7dl/g以上とすることで、機械的特性や、滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性が向上する傾向にあり好ましい。逆に固有粘度を2dl/g以下、特には1.0dl/g以下とすることで加工性が向上する傾向にあり好ましい。
【0072】
本発明において、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃で測定した値である。
【0073】
本発明に用いるポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基の濃度は、通常1〜60μeq/gであり、中でも3〜50μeq/g、更には5〜40μeq/gであることが好ましい。末端カルボキシル基濃度を60μeq/g以下とすることで、耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を1μeq/g以上とすることで、加工性が向上する傾向にあり、好ましい。
【0074】
なお、ポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求めることができる。
【0075】
ところで、ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂を複合化して得られる樹脂組成物は熱安定性が悪く、成形工程においてシリンダー内で高温に保持されることにより、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とでエステル交換反応を起こし、反応による分解ガスの発生で泡、シルバーと称される成形品の外観不良の原因となる;ポリカーボネート樹脂の分子量低下によりポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性、耐熱変形性等が損なわれる;更には、高温下での滞留によりポリカーボネート樹脂組成物の粘度変化が生じることにより射出成形時の成形安定性が損なわれ、成形品のショートショットやバリが発生する;といった問題が起こる。
この滞留熱劣化の問題は、ポリエチレンテレフタレートの製造工程で使用され、製品として提供されるポリエチレンテレフタレート中に含有される重縮合触媒に起因するものである。
【0076】
この重縮合触媒に起因する問題が比較的少ない点において、本発明で用いるポリエチレンテレフタレートは、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物を用いて製造されたポリエチレンテレフタレートであって、ポリエチレンテレフタレート中のゲルマニウム化合物含有量がゲルマニウム原子として1〜50ppm、特に1〜30ppm程度であるものが好ましい。即ち、ゲルマニウム化合物は、ポリカーボネート樹脂に対する悪影響が少なく、ポリカーボネート樹脂を劣化させ難い点において好ましい。また、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物を用いたポリエチレンテレフタレートでは、溶融混練工程において、得られる組成物の色相が良好である点においても好ましい。
同様の理由から、本発明で用いるポリエチレンテレフタレートは、重縮合触媒としてアンチモン化合物を用いて製造されたポリエチレンテレフタレートであって、ポリエチレンテレフタレート中のアンチモン化合物含有量がアンチモン原子として100〜300ppm、特に150〜250ppm程度であるものが好ましい。
【0077】
また、本発明で用いるポリエチレンテレフタレートは、重縮合触媒の失活処理を施したものであることが、重縮合触媒に起因するポリカーボネート樹脂の滞留熱劣化をより一層確実に抑制し得る点において好ましい。
また、重縮合触媒の失活処理を施したポリエチレンテレフタレートは、溶融混練過程において、加工時の耐熱性に優れ、色相が良好である点においても好ましい。
【0078】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の重縮合触媒の失活処理方法としては、特に制限はなく、用いた重縮合触媒に応じて従来公知の失活処理を施すことができる。この失活処理方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0079】
重縮合触媒の失活処理方法1:ゲルマニウム触媒の熱水(蒸気)処理
ポリエチレンテレフタレートを熱水(蒸気)処理してポリエチレンテレフタレート中のゲルマニウム触媒を失活させる方法。
具体的には、ポリエチレンテレフタレートを容器に充填し、70〜150℃、例えば約100℃の水蒸気をポリエチレンテレフタレートに対して毎時1〜100質量%の量で5〜6000分間通蒸して、蒸気処理を行った後乾燥する。
ポリエチレンテレフタレートを容器内でポリエチレンテレフタレートの0.3〜10質量倍の蒸留水に浸漬させ、次に、ポリエチレンテレフタレート及び蒸留水が入った容器を外部より加熱し、内温を70〜110℃にコントロールし、3〜3000分間保持して熱水処理を行なった後、脱水し、乾燥する。
上記乾燥は、通常、窒素等の不活性ガス中、120〜180℃で3〜8時間行われる。
【0080】
重縮合触媒の失活処理方法2:チタニウム触媒へのリン化合物添加
ポリエチレンテレフタレートにリン化合物を添加して、ポリエチレンテレフタレート中のチタニウム触媒を失活させる。この場合、リン原子の添加量は、ポリエチレンテレフタレートの質量を基準として7〜145ppmの範囲であることが好ましい。リン化合物の添加量が7ppm以上であると、触媒の失活を十分に行って、目的とする効果を得ることができ、リン原子の添加量が145ppm以下であると、リン化合物自体が粗大凝集粒子となって、外観不良や耐衝撃性の低下といった問題が生じることが防止される。
【0081】
なお、添加するリン化合物としては、従来公知のリン酸エステル化合物類や亜リン酸エステル化合物類、ホスホネート化合物類等が挙げられる。中でも下記一般式(2)で表されるホスホネート化合物が好適である。
【0082】
R
1OC(O)XP(O)(OR
2)
2 …(2)
(式中、R
1及びR
2は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−CH
2−又は−CH(Y)−(Yはフェニル基を示す。)であり、R
1及びR
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0083】
上記式(2)で表されるホスホネート化合物の中でも、アルキルホスホネート化合物が好ましく例示され、これらの中でも特にトリエチルホスホノ酢酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒の失活処理方法は、本発明で採用し得る失活処理の一例であって、本発明に係る失活処理は何ら上記の方法に限定されるものではない。
【0085】
以下において、重縮合触媒の失活処理を施したポリエチレンテレフタレートを「失活PET」と称し、未処理のポリエチレンテレフタレートを「未処理PET」と称す。
【0086】
本発明で用いる失活PETは、上述のようなポリエチレンテレフタレート中の重縮合触媒の失活処理がなされることによって、下記式(3)で算出される固相重合速度Ksが0.006(dl/g・hr)以下、特に0.005(dl/g・hr)以下、とりわけ0.001〜0.004(dl/g・hr)程度となったものが好ましい。
固相重合速度Ks=([η]s−[η]m)/T …(3)
ここで、[η]sは、当該ポリエチレンテレフタレートを窒素気流下210℃で3時間保持した後の該ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(dl/g)であり、[η]mは、当該ポリエチレンテレフタレートを窒素気流下210℃で2時間保持した後の該ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(dl/g)である。Tは1(時間)である。即ち、本発明では、窒素気流下210℃にて3時間保持した後の固有粘度を[η]s、そして同条件下で2時間保持した後の固有粘度を[η]mとし、これらの値を用いて、上述した(3)式により算出した固相重合速度Ksを、固相重合速度Ksとした。そしてTは1時間となる。
【0087】
失活PETの固相重合速度Ksが0.006(dl/g・hr)以下であると、重縮合触媒の失活処理が十分であり、滞留熱劣化の抑制効果を十分に得ることができる。ただし、固相重合速度Ksを過度に小さくすることは困難であり、通常0.001(dl/g・hr)以上である。
【0088】
(ポリブチレンテレフタレート)
ポリエステル樹脂(A−3)としては、ポリブチレンテレフタレートを用いてもよい。ここで、ポリブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する樹脂をいう。本発明では、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジオール成分の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位であるポリブチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。全ジカルボン酸単位中のテレフタル酸単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最適には98モル%以上である。全ジオール単位中の1,4−ブタンジオール単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最適には98モル%以上である。テレフタル酸単位又は1,4−ブタンジオール単位が上記範囲であると、結晶化速度が適切な範囲であるので、成形性が良好となる。
【0089】
上記した通り、ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。テレフタル酸以外のジカルボン酸については特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;などを挙げることができる。これらのジカルボン酸単位は、ジカルボン酸、又は、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料として用いることで、ポリマー骨格に導入できる。
【0090】
上記した通り、ポリブチレンテレフタレートは、1,4−ブタンジオール以外のジオール単位を含んでいてもよい。1,4−ブタンジオール以外のジオールについては特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等を挙げることができる。
【0091】
ポリブチレンテレフタレートは、更に、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能化合物;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能化合物;などから誘導される単位を含んでいてもよい。
【0092】
本発明に用いるポリブチレンテレフタレートの固有粘度については特に制限はないが、機械的性質の観点から下限値が、成形加工性の観点から上限値が決定されてもよい。ポリブチレンテレフタレートの固有粘度は、0.70〜3.0dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.80〜1.5dl/g、特に好ましくは0.80〜1.2dl/gである。固有粘度が、前記範囲であると、良好な機械的性質を発揮できるとともに、良好な成形加工性が得られる。なお、上記固有粘度の値は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶媒を用いて、温度30℃で測定した値である。
本発明では、固有粘度の異なる2種以上のポリブチレンテレフタレートを併用してもよい。
【0093】
本発明に用いるポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度は、120μeq/g以下であることが好ましく、更に好ましくは2〜80μeq/g、特に好ましくは5〜60μeq/gである。末端カルボキシル基濃度が120μeq/g以下であると、耐加水分解性及び流動性が良好になり、また2μeq/g以上であるのが、生産性の観点から好ましい。末端カルボキシル基濃度は、ポリブチレンテレフタレートをベンジルアルコールに溶解し、0.1N(mol/L)の水酸化ナトリウムの水溶液にて滴定して求めることができ、上記値は、1g当たりのカルボキシル基当量である。
【0094】
ポリエステル樹脂(A−3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
<ポリアセタール樹脂(A−4)>
ポリアセタール樹脂(A−4)は、2価のオキシメチレン基を構成単位と含むものであればよい。従って、ポリアセタール樹脂(A−4)は、オキシメチレン基のみを構成単位として含むアセタールホモポリマーであってもよいし、オキシメチレン基と炭素数が2以上のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0096】
これらの中でも、オキシメチレン基と、炭素数が2以上のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーが好ましい。
【0097】
炭素数が2以上のオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、及び、オキシブチレン基などが挙げられる。中でも、ポリアセタール樹脂(A−4)の特徴が損なわれることをより十分に抑制するという理由からは、オキシエチレン基が好ましい。
【0098】
上記ポリアセタール樹脂(A−4)においては、上述したように、炭素数2以上のオキシアルキレン基の割合はオキシメチレン基100モルあたり0.5〜10モルの割合であることが好ましい。
【0099】
この場合、上記割合が上記範囲の下限値未満である場合に比べて、ポリアセタール樹脂(A−4)はより十分な熱安定性を有する。一方、上記割合が上記範囲内にある場合、上記範囲の上限値を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂(A−4)の結晶性が低下しにくくなり、ポリアセタール樹脂組成物の強度が大きく低下することがより十分に抑制される。
【0100】
オキシアルキレン基の割合はオキシメチレン基100モルあたり0.5〜10モルであることがより好ましい。上記割合が0.5〜10モルの範囲内にあると、上記範囲を外れる場合と比べて、ポリアセタール樹脂(A−4)の熱安定性がより向上する。上記割合は、0.8〜9.0モルであることがより好ましく、1.0〜8.0モルであることがさらに好ましい。
【0101】
上記ポリアセタール樹脂(A−4)を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂(A−4)中に炭素数2以上のオキシアルキレン基を導入するには、例えば環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、例えば1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセパン、1,3−ジオキソカン、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカン等が挙げられる。環状エーテルの具体例としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等が挙げられる。ポリアセタール樹脂(A−4)中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレン基を導入するには、1,3−ジオキサンを用いればよく、オキシブチレン基を導入するには、1,3−ジオキセパンを導入すればよい。
【0102】
なお、ポリアセタール樹脂(A−4)は、例えば上記原料を重合して得た粗ポリアセタール樹脂に対し、触媒の失活化処理、未反応モノマーの除去、洗浄、乾燥、不安定末端部の安定化処理等を行った後、更に各種安定剤の配合による安定化処理等を行うことによって得ることができる。代表的な安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、及び、カルボン酸塩等を挙げることができる。
【0103】
また、ポリアセタール樹脂(A−4)のメルトインデックスは特に制限されるものではないが、好ましくは0.5〜100g/10分であり、より好ましくは1.0〜80g/10分である。ここで、メルトインデックスは、190℃、2.16kgの条件でASTM−D1238規格に従って測定した値を言うものとする。
【0104】
[板状フィラー(B)]
本発明で用いる板状フィラー(B)は、光輝顔料として機能するものであり、基材に、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成されたものである。
【0105】
板状フィラー(B)の基材となるフレーク状粒子の材質としては、マイカ(雲母)、シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられ(以下、それぞれ、フレーク状マイカ、フレーク状シリカ、フレーク状アルミナ、フレーク状ガラスと称す場合がある。)、基材はフレーク状金属粒子であってもよいが、板状フィラー(B)の基材はマイカよりなることが好ましい。
【0106】
本発明で用いる板状フィラー(B)は、このような基材となるフレーク状粒子、好ましくはフレーク状マイカに、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成されたものであり、基材を30〜40質量%、酸化チタンを20〜30質量%、酸化鉄を15〜25質量%、酸化ケイ素を15〜25質量%、酸化スズを0.1〜4.0質量%含むものであることが好ましい。基材、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素及び酸化スズの含有量が上記範囲内であると、光輝顔料としての意匠性を十分に得ることができる。
【0107】
板状フィラー(B)としては、特に、平均厚み0.1〜10μm程度のフレーク状マイカに、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素及び酸化スズを含む金属酸化物を化学蒸着又は物理蒸着することにより0.01〜1μm程度の厚さの被覆層を形成したものが好ましい。
【0108】
本発明において、板状フィラー(B)の粒径や平均粒径D
50は、前述の式:板状フィラー(B)の平均粒径D
50<板状フィラー(C)の平均粒径D
50、を満たすものであれば特に制限はないが、板状フィラー(B)は粒径10〜100μm、特には10〜80μmであり、その平均粒径D
50は10〜60μmであることが好ましい。板状フィラー(B)の平均粒径D
50が10μm未満では、板状フィラー(B)を配合することによる光輝性の付与効果を十分に得ることができない場合がある。板状フィラー(B)の平均粒径D
50が100μmを超えると、得られる成形品の耐衝撃性が低下する傾向にある。板状フィラー(B)の平均粒径D
50は特に15〜55μm、とりわけ20〜50μm程度であることが好ましい。
【0109】
板状フィラー(B)としては、市販品を用いることができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素及び酸化スズで被覆されたマイカ顔料であるMERCK社製の商品名「Iriodin 305 Solor Gold」(粒径10〜60μm)を用いることができる。
【0110】
板状フィラー(B)は1種を単独で用いてもよく、基材や被覆層の構成材料或いは粒径の異なるものの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の板状フィラー(B)を併用する場合、用いたすべての板状フィラー(B)の平均粒径D
50が上記の範囲内であることが好ましい。
【0111】
なお、板状フィラー(B)は、熱可塑性樹脂(A)との密着性を良好なものとするために、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されたものであってもよい。
【0112】
本発明の樹脂組成物において、上記板状フィラー(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部、より好ましくは0.3〜2質量部である。板状フィラー(B)の配合量が上記下限よりも少ないと、板状フィラー(B)を配合したことによる前述の効果を十分に得ることができず、多過ぎると得られる成形品の耐衝撃性が劣るものとなる。
【0113】
[板状フィラー(C)]
本発明で用いる板状フィラー(C)は、偏光顔料として機能するものであり、基材に、酸化チタン、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成されたものである。
【0114】
板状フィラー(C)の基材となるフレーク状粒子の材質としては、マイカ(雲母)、シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられ(以下、それぞれ、フレーク状マイカ、フレーク状シリカ、フレーク状アルミナ、フレーク状ガラスと称す場合がある。)、基材はフレーク状金属粒子であってもよいが、板状フィラー(C)の基材はガラスよりなることが好ましい。
【0115】
本発明で用いる板状フィラー(C)は、このような基材となるフレーク状粒子、好ましくはフレーク状ガラスに、酸化チタン、酸化ケイ素、及び酸化スズを含む被覆層が形成されたものであり、基材を55〜70質量%、酸化チタンを10〜25質量%、酸化ケイ素を15〜25質量%、酸化スズを0.1〜4.0質量%含むものであることが好ましい。基材、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化スズの含有量が上記範囲内であると、偏光顔料としての意匠性を十分に得ることができる。
【0116】
板状フィラー(C)としては、特に、平均厚み0.1〜10μm程度のフレーク状ガラスに、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化スズを含む金属酸化物を化学蒸着又は物理蒸着することにより0.01〜1μm程度の厚さの被覆層を形成したものが好ましい。
【0117】
本発明において、板状フィラー(C)の粒径や平均粒径D
50は、前述の式:板状フィラー(B)の平均粒径D
50<板状フィラー(C)の平均粒径D
50、を満たすものであれば特に制限はないが、板状フィラー(C)は粒径20〜200μm、特には30〜180μmであり、その平均粒径D
50は40〜160μmであることが好ましい。板状フィラー(C)の平均粒径D
50が20μm未満では、板状フィラー(C)を配合することによる偏光性の付与効果を十分に得ることができない場合がある。板状フィラー(C)の平均粒径D
50が200μmを超えると、得られる成形品の耐衝撃性が大幅に低下する傾向にある。板状フィラー(C)の平均粒径D
50は特に25〜180μm、とりわけ30〜160μm程度であることが好ましい。
【0118】
板状フィラー(C)としては、市販品を用いることができ、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、及び酸化スズで被覆されたアルミノホウ珪酸ガラス顔料であるMERCK社製の商品「Miraval 5400 Luxury Twinkle」(粒径20〜200μm)等を用いることができる。
【0119】
板状フィラー(C)は1種を単独で用いてもよく、基材や被覆層の構成材料或いは粒径の異なるものの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の板状フィラー(C)を併用する場合、用いたすべての板状フィラー(C)の平均粒径D
50が上記の範囲内であることが好ましい。
【0120】
なお、板状フィラー(C)は、熱可塑性樹脂(A)との密着性を良好なものとするために、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されたものであってもよい。
【0121】
本発明の樹脂組成物において、上記板状フィラー(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部、より好ましくは0.3〜2質量部である。板状フィラー(C)の配合量が上記下限よりも少ないと、板状フィラー(C)を配合したことによる前述の効果を十分に得ることができず、多過ぎると得られる成形品の耐衝撃性が劣るものとなる。
【0122】
[板状フィラー(B)と板状フィラー(C)との併用]
前述の通り、本発明においては、以下の関係を満たす板状フィラー(B)と板状フィラー(C)とを併用することにより、金特有の外観を呈する成形品を得ることができる。
板状フィラー(B)の平均粒径D
50<板状フィラー(C)の平均粒径D
50
【0123】
板状フィラー(B)の平均粒径D
50は、板状フィラー(C)の平均粒径D
50よりも小さければよいが、本発明の効果をより有効に得る上で、板状フィラー(C)の平均粒径D
50は、板状フィラー(B)の平均粒径D
50よりも10μm以上、特に20μm以上大きいことが好ましい。なお、両者の平均粒径D
50の差の上限には特に制限はないが、各々の板状フィラーの前述の好適な平均粒径D
50を満たす観点から、通常110μm以下である。
【0124】
また、本発明の樹脂組成物においては、板状フィラー(B)と板状フィラー(C)とを併用することによる光輝性、偏光性のバランスを良好に得る上で、本発明の樹脂組成物中の板状フィラー(B)の含有量と板状フィラー(C)の含有量とはほぼ等しく、板状フィラー(B)の含有量は、板状フィラー(C)の含有量の0.5〜1.5質量倍の範囲であることが好ましく、0.7〜1.3質量倍の範囲であることが好ましく、また、板状フィラー(B)と板状フィラー(C)の合計の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0125】
[ホスフェート系安定剤(D)]
本発明の樹脂組成物は熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(A−1)を含む場合、板状フィラー(B),(C)によるポリカーボネート樹脂(A−1)の劣化を抑制するために、アルキルアシッドホスフェート、アルケニルアシッドホスフェート及びこれらの金属塩より選ばれる1種又は2種以上のホスフェート系安定剤(D)を含むことが好ましい。
【0126】
本発明で用いるホスフェート系安定剤(D)のアルキルアシッドホスフェート又はアルケニルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表されるものであることが好ましい。即ち、アルキルアシッドホスフェート又はアルケニルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表され、アルキルアシッドホスフェート金属塩又はアルケニルアシッドホスフェート金属塩は下記式(I)で表されるアルキルアシッドホスフェート又はアルケニルアシッドホスフェートの亜鉛塩、アルミニウム塩等の金属塩であることが好ましい。
O=P(OH)
n(OR)
3−n …(I)
(式(I)中、Rはアルキル基又はアルケニル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【0127】
上記式(I)中のRで示されるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐を有していてもよいが、炭素数9以上、30以下が好ましく、具体的には、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル(ステアリル)、エイコシル、テトラコシル基等が挙げられる。また、Rで示されるアルケニル基についても直鎖アルケニル基であってもよく、分岐を有していてもよいが、炭素数9以上、30以下が好ましく、具体的には、オレイル基等が挙げられる。nは、1又は2であり、その混合物であっても良い。
【0128】
上記式(I)中のRで示されるアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、13,18,24のいずれかであることがより好ましく、アルキルアシッドホスフェートとしては、特に、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であるものが好ましい。
O=P(OH)
n(OC
18H
37)
3−n …(II)
【0129】
また、アルキルアシッドホスフェートの金属塩としては、下記式(IIIa)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、下記式(IIIb)で表されるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物が好ましい。
【0131】
これらのホスフェート系安定剤(D)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0132】
本発明の樹脂組成物がホスフェート系安定剤(D)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)中のポリカーボネート樹脂(A−1)100質量部に対して好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部、更に好ましくは0.03〜0.1質量部である。ホスフェート系安定剤(D)の含有量が上記下限よりも少ないと、ホスフェート系安定剤(D)を配合したことによるポリカーボネート樹脂(A−1)の分解抑制効果を十分に得ることができず、ホスフェート系安定剤(D)の含有量が上記上限よりも多いと、耐衝撃性が低下し、また、成形品の外観が損なわれるおそれがある。
【0133】
[ハイドロジェンシロキサン(E)]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(A−1)を含む場合、ポリカーボネート樹脂(A−1)の分解をより一層確実に防止するために、更にハイドロジェンシロキサン(E)を含むことが好ましい。
【0134】
本発明に用いるハイドロジェンシロキサン(E)の分子量については特に制限されず、オリゴマー及びポリマーのいずれの群に属するものであっても良い。より具体的には、特公昭63−26140号公報に記載されている式(イ)〜式(ハ)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン類などが好ましい。ハイドロジェンシロキサン(E)は、例えば、下記式(d−1)を繰り返し単位とするポリシロキサン、ならびに下記式(d−2)又は(d−3)で表される化合物を用いるのが好ましい。
【0135】
(R
a)
α(H)
βSiO …(d−1)
(上記式中、R
aは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、α及びβの合計は2である。)
【0137】
(上記式中、A及びBは各々以下の群から選ばれる基であり、rは1〜500の整数である。)
【0140】
(上記式中、A及びBは前記式(d−2)中におけるそれぞれと同義であり、tは1〜50の整数である。)
【0141】
ハイドロジェンシロキサン(E)としては市販品のシリコーンオイル、例えば、SH1107(東レ・ダウコーニング(株)製品)を用いることができる。
【0142】
これらのハイドロジェンシロキサン(E)は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0143】
本発明の樹脂組成物がハイドロジェンシロキサン(E)を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)中のポリカーボネート樹脂(A−1)100質量部に対して好ましくは0.003〜0.15質量部、より好ましくは0.005〜0.12質量部、さらに好ましくは0.01〜0.1質量部である。ハイドロジェンシロキサン(E)の含有量が上記下限よりも少ないと、ハイドロジェンシロキサン(E)を配合したことによるポリカーボネート樹脂(A−1)1の分解抑制効果を十分に得ることができず、ハイドロジェンシロキサン(E)の含有量が上記上限よりも多いと、溶融混練時にガスが発生し、モールドデポジットの原因となりやすい。ハイドロジェンシロキサン(E)はあらかじめフィラーに処理した後に樹脂組成物に配合してもよい。
【0144】
[その他の配合成分]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤から選ばれる1種又は2種以上を含有していてもよい。このような添加剤としては、着色剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0145】
<着色剤>
本発明の樹脂組成物は、所望によって着色剤として各種の染顔料を含有していてもよい。染顔料を含有することで、本発明の樹脂組成物の隠蔽性、耐候性を向上できるほか、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品のデザイン性を向上させることができる。
【0146】
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
【0147】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
【0148】
有機顔料及び有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
【0149】
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
【0150】
上記の着色剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、熱可塑性樹脂(A)とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
【0151】
本発明の樹脂組成物が着色剤を含有する場合、その含有量は、必要な意匠性に応じて適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。着色剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、着色効果が十分に得られない可能性があり、着色剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
【0152】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型性を高め、成形品の表面平滑性を高めるために、離型剤を含有していてもよい。
好ましい離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、及び数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる化合物である。中でも、脂肪族カルボン酸、及び脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる化合物が好ましく用いられる。
【0153】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0154】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していても良い。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していても良く、複数の化合物の混合物であっても良い。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0155】
これらの離型剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0156】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部であることが好ましい。離型剤の含有量が上記範囲であると、耐加水分解性の低下がなく、離型効果が得られるので好ましい。
【0157】
<難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、難燃性を得るために難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、熱可塑性樹脂(A)の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物、有機リン酸エステル、ホスファゼンが好適である。
【0158】
難燃剤用の有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。
【0159】
脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。
【0160】
また、芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0161】
本発明の樹脂組成物がこれらの有機スルホン酸金属塩を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜3質量部であることが好ましく、0.02〜2質量部であることがより好ましく、0.03〜1質量部であることがさらに好ましい。難燃剤としての有機スルホン酸金属塩の含有量が上記範囲であると、難燃性があり、且つ熱安定性が良好な樹脂組成物となるので好ましい。有機スルホン酸金属塩の含有量が上記範囲より多いと、樹脂組成物の透明性を損なうことがあり、少ないと十分な難燃性を得ることができない。
【0162】
難燃剤用のシリコーン化合物としては、特開2006−169451公報に記載の、直鎖状もしくは分岐状の構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。該ポリオルガノシロキサンが有する有機基は、炭素数が1〜20のアルキル基及び置換アルキル基のような炭化水素又はビニル及びアルケニル基、シクロアルキル基、ならびにフェニル、ベンジルのような芳香族炭化水素基などの中から選ばれる。
該ポリジオルガノシロキサンは、官能基を含有していなくても、官能基を含有していても良い。官能基を含有しているポリジオルガノシロキサンの場合、官能基はメタクリル基、アルコキシ基又はエポキシ基であることが好ましい。
【0163】
本発明の樹脂組成物がこれらの難燃剤用シリコーン化合物を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。難燃剤としてのシリコーン化合物の含有量が上記範囲であると、透明性、外観及び弾性率等を損なうことなく、難燃性が良好となるので好ましい。
【0164】
有機リン酸エステル系難燃剤としては、熱安定性の面から縮合リン酸エステル系難燃剤が好ましく、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物が特に好ましい。
【0166】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0又は1であり、kは1〜5の整数であり、X
1はアリーレン基を示す。)
【0167】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なるリン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.2、特に好ましくは1〜1.15の範囲である。
【0168】
また、X
1は、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’−ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0169】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0又は1を表し、なかでも1であることが好ましい。
【0170】
また、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、p−クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0171】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−t−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が、好ましく挙げられる。
【0172】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。一方、ハーフエステルの含有量は1.5質量%以下が好ましく、1.1質量%以下がより好ましく、0.9質量%以下がさらに好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合やハーフエステル含有量が1.5質量%を超える場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性や耐加水分解性の低下を招きやすい。
【0173】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がこのような縮合リン酸エステル系難燃剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは5〜20質量部であり、より好ましくは8〜18質量部であり、さらに好ましくは10〜16質量部である。縮合リン酸エステル系難燃剤の含有量が5質量部を下回る場合は、難燃性が不十分であり、20質量部を超えると著しい耐熱性の低下や、機械物性の低下を引き起こす。
【0174】
ホスファゼン系難燃剤は、分子中に−P=N−結合を有する有機化合物であり、好ましくは、下記一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物、下記一般式(3)で表される鎖状ホスファゼン化合物、並びに、下記一般式(2)及び下記一般式(3)からなる群より選択される少なくとも一種のホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなるものが難燃性の点から好ましい。
【0175】
ホスファゼン系難燃剤は難燃化効果が高く、難燃剤の配合によって起こり得る機械的強度の低下やガスの発生を抑制することができる。
【0177】
(式(2)中、mは3〜25の整数であり、R
11は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【0179】
(式(3)中、uは3〜10,000の整数であり、Zは、−N=P(OR
11)
3基又は−N=P(O)OR
11基を示し、Yは、−P(OR
11)
4基又は−P(O)(OR
11)
2基を示す。R
11は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【0181】
(式(4)中、Qは−C(CH
3)
2−、−SO
2−、−S−、又は−O−であり、lは0又は1である。)
【0182】
一般式(2)及び(3)で表される環状及び/又は鎖状ホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o−トリルオキシホスファゼン、m−トリルオキシホスファゼン、p−トリルオキシホスファゼン、o,m−トリルオキシホスファゼン、o,p−トリルオキシホスファゼン、m,p−トリルオキシホスファゼン、o,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C
1−6アルキルC
6−20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm−トリルオキシホスファゼン、フェノキシp−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C
6−20アリールC
1−10アルキルC
6−20アリールオキシホスファゼン等が例示でき、好ましくは環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C
1−3アルキルC
6−20アリールオキシホスファゼン、C
6−20アリールオキシC
1−3アルキルC
6−20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
【0183】
一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R
11がフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120〜130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。また、該環状フェノキシホスファゼン化合物は、一般式(2)中のmが3〜5である化合物が好ましく、mの異なる化合物の混合物であってもよい。なかでも、m=3のものが50質量%以上、m=4のものが10〜40質量%、m=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
【0184】
一般式(3)で表される鎖状ホスファゼン化合物としては、R
11がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220〜250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3〜10,000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。該直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の、一般式(3)中のuは、好ましくは3〜1,000、より好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜25である。
【0185】
架橋フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、4,4’−スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2−(4,4’−ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’−ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
【0186】
また、架橋ホスファゼン化合物としては、一般式(2)においてR
11がフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物又は、上記一般式(3)においてR
11がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
【0187】
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
【0188】
ホスファゼン系難燃剤としては、上記一般式(2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物が、難燃性及び機械的特性の点から好ましい。
【0189】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、このようなホスファゼン系難燃剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し10〜30質量部であることが好ましく、11〜25質量部であることがより好ましく、12〜22質量部であることがさらに好ましい。ホスファゼン系難燃剤の含有量を10質量部以上とすることにより、難燃性を十分に改良することができ、30質量部以下とすることにより、熱的特性・機械的強度を良好に保つことができる。
【0190】
なお、上記有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物、有機リン酸エステル、及びホスファゼン系難燃剤のうちの2種以上を併用しても良い。
【0191】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及び3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,6]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0192】
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.02〜0.5質量部であることが好ましい。この範囲であると、本発明の効果を阻害せずに、酸化防止性を改善できるので好ましい。
【0193】
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。樹脂成形体は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤を添加することで、このような黄変を防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0194】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0195】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0196】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
【0197】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0198】
本発明の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.8質量部であることがより好ましく、0.01〜0.5質量部であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であると、光吸収による光輝性や偏光性の低下が生じず、且つ成形品表面にブリードアウト等を発生させずに、耐候性を改善できるので好ましい。
【0199】
<その他>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分のほかに、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを配合することができる。
これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0200】
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、従来から知られている方法で各成分を混合し、溶融混練することにより製造することができる。具体的な混合方法としては、熱可塑性樹脂(A)、板状フィラー(B)、板状フィラー(C)及び必要に応じて配合されるホスフェート系安定剤(D)及びハイドロジェンシロキサン(E)やその他の添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラペンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
【0201】
〔成形品〕
本発明の成形品は、上述のような本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。
【0202】
本発明の樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品を製造する場合の成形方法としては、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。
【0203】
[用途]
本発明の樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、特定の板状フィラー(B)と板状フィラー(C)との併用により、美麗な金塗装製品様の外観を呈する意匠性に優れたものであり、塗装を施すことなく製品化することができ、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、遊具、玩具やレジャー用品・スポーツ用品、化粧品、アクセサリー類、文具類等の雑貨類等の各種用途に適用することができる。
【実施例】
【0204】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の構成成分は、以下の通りである。
【0205】
<熱可塑性樹脂(A)>
A−1−1(PC−1):三菱エンジニアリングプラスチックス社製 芳香族ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS−3000F」(粘度平均分子量=21500)
A−1−2(PC−2):三菱エンジニアリングプラスチックス社製 芳香族ポリカーボネート樹脂「ユーピロンE−2000F」(粘度平均分子量=28000)
A−1−3(Si−PC):出光興産社製 シロキサン共重合ポリカーボネート樹脂「タフロンネオAG1760」、高流動タイプ(MVR=13cm
3/10分(ISO1133、300℃、1.2kgf))
A−2(ABS):日本A&L社製 ABS樹脂「サンタックUT−61」(ブタジエン単位含有率=10質量%)
A−3(PBT):三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ポリブチレンテレフタレート「ノバデュラン5010L」、固有粘度1.00dl/g、末端カルボキシル基濃度=25μeq/g)
A−4(POM):三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ポリアセタール樹脂「ユピタールF20−03」(メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)=9.0g/10分)
【0206】
<板状フィラー>
B−1(305):MERCK社製(TiO
2/SnO
2/SiO
2/Fe
2O
3)被覆マイカ「Iriodin305」
C−1(5400):MERCK社製(TiO
2/SnO
2/SiO
2)被覆ガラス「Miraval5400」
b−1(306):MERCK社製(TiO
2/Fe
2O
3)被覆マイカ「Iriodin306」
【0207】
板状フィラーB−1,C−1,b−1の仕様を下記表1に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
<安定剤>
AX−71:ADEKA社製「アデカスタブAX−71」(前記式(II)で表されるモノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートとの混合物)
JP−513:城北化学社製「JP−513」(下記式(IV)で表されるイソトリデシルアシッドホスフェート)
【化10】
【0210】
JP−518−O:城北化学社製「JP−518−O」(下記式(V)で表されるオレイルアシッドホスフェート)
【化11】
【0211】
JP−524R:城北化学社製「JP−524R」(下記式(VI)で表されるテトラコシルアシッドホスフェート)
【化12】
【0212】
JP−518Zn:城北化学社製「JP−518Zn」(前記式(IIIa)と(IIIb)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩とモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩の混合物)
【0213】
ADK2112:ADEKA社製「アデカスタブ2112」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)
SH1107:東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH1107 FLUID」(メチルハイドロジエンシロキサン)
【0214】
<離型剤>
VPG861:エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオールVPG861」(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)
【0215】
[実施例1〜11及び比較例1〜6]
熱可塑性樹脂及び各種添加剤を表2,3に示す割合で配合し、タンブラーで20分混合後、スクリュー径40mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS−40」)により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数54rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥後、射出成形機(ファナック社製「S−2000i150B」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形を行って、各種試験片を作製した。
得られたペレット又は試験片について、以下の評価を行い、結果を表2,3に示した。
【0216】
(1) 流れ値(Q値)
JIS K7210付属書Cに記載の方法にてペレットの流れ値(Q値)を評価した。測定は島津製作所社製「フローテスターCFD500D」を用いて、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、試験温度278℃、試験力160kg/cm
2、余熱時間420secの条件で排出された溶融樹脂量(単位:cc/sec)を測定した。
【0217】
(2) 320℃滞留流れ値(320℃滞留Q値)
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥後、射出成形機(ファナック社製「S−2000i150B」)にて、シリンダー温度320℃(ただし、実施例8のみ240℃)、金型温度80℃、成形サイクル600秒の条件で射出成形を行った。3ショット目の成形品を粉砕して、Q値の測定を行った。Q値は(1)と同様の方法を用いて求めた。
【0218】
(3) Izod衝撃強度
ASTM D256に準拠して、ノッチ付きIzod衝撃試験片(厚さ3.2mm)について、23℃の温度でIzod衝撃強度(単位:J/m)を測定した。
【0219】
(4) 金属調外観評価
調色用試験片(50mm(幅)×90mm(長さ)で厚みが1mm、2mm、及び3mmの3段プレート)について、以下の(1)〜(6)の条件で観察して、金のようなキラキラした金属調の外観を呈しているか否かを確認し、以下の通り評価した。
○:金のようにキラキラした金属感のある良好な外観
×:金属感がなく、マットな外観
(1) 北空昼光 45°:晴れた日の13:00頃に北窓から入る光(太陽光の直射を避けた自然光)を用いて、3段プレートの外観を斜め約45°から観察した。
(2) 北空昼光 90°:晴れた日の13:00頃に北窓から入る光(太陽光の直射を避けた自然光)を用いて、3段プレートの外観をほぼ真上から観察した。
(3) A光源 45°:トキナー社製「DAY−LIGHT KD−DL4」光学箱を用いて、A光源により、3段プレートの外観を斜め約45°から観察した。
(4) A光源 90°:トキナー社製「DAY−LIGHT KD−DL4」光学箱を用いて、A光源により、3段プレートの外観をほぼ真上から観察した。
(5) D65 45°:トキナー社製「DAY−LIGHT KD−DL4」光学箱を用いて、D65光源により、3段プレートの外観を斜め約45°から観察した。
(6) D65 90°:トキナー社製「DAY−LIGHT KD−DL4」光学箱を用いて、D65光源により、3段プレートの外観をほぼ真上から観察した。
【0220】
【表2】
【0221】
【表3】
【0222】
表2,3の結果から明らかなように、本発明に係る板状フィラー(B)と板状フィラー(C)とを組み合わせて配合した実施例1〜11では、いずれの角度においても、金のような金属調外観を得ることができる。
一方、板状フィラー(B)のみ、又は板状フィラー(C)のみを用いた比較例1,2,4,5や、板状フィラー(B)とは被覆層が異なる板状フィラーを板状フィラー(C)に組み合わせて用いた比較例3,6では、斜め方向から観察した場合には、金属感を得ることができない。