特許第6673044号(P6673044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673044
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/00 20060101AFI20200316BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20200316BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G06F3/00 P
   G06F3/00 V
   B60R16/023 P
   G06F13/38 320Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-120484(P2016-120484)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-224217(P2017-224217A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 茂郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】柿井 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】西江 光昭
【審査官】 和平 悠希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−292353(JP,A)
【文献】 特開2000−124953(JP,A)
【文献】 特開2000−332718(JP,A)
【文献】 特開2013−015987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/00
B60R 16/023
G06F 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタ部を有する車両用の電子制御装置と、
車両内において前記第1コネクタ部に連結される第2コネクタ部を有するワイヤハーネス部と、
を備え、
前記電子制御装置は、
多重化信号の伝送経路となる信号線であり、前記第1コネクタ部に配置される第1端子を備える第1信号線と、
複数の信号を多重化し前記第1信号線に伝送する処理、又は前記第1信号線によって伝送された多重化信号から複数の信号を分離する処理、の少なくもいずれかの処理を行う第1の多重化制御部と、
を有し、
前記ワイヤハーネス部は、
前記第2コネクタ部に設けられるとともに前記第1信号線で伝送される多重化信号の伝送経路となる信号線であり、前記第1コネクタ部と前記第2コネクタ部とが連結されたときに前記第1端子に接続され、連結されていないときに前記第1端子に接続されない第2端子を備える第2信号線と、
前記第2コネクタ部に設けられ、前記第2信号線によって伝送された多重化信号から信号を分離する処理、又は複数の信号を多重化し前記第2信号線に伝送する処理、の少なくもいずれかの処理を行う第2の多重化制御部と、
を有する制御システム。
【請求項2】
前記第1の多重化制御部は、複数の信号を多重化し前記第1信号線に伝送する処理を少なくとも行い、
前記第2の多重化制御部は、前記第2信号線によって伝送された多重化信号に含まれる一部の信号を分離する処理を少なくとも行い、
前記ワイヤハーネス部は、
前記第2信号線によって伝送された多重化信号のうち、前記第2の多重化制御部で分離された信号を除いた残余の多重化信号を伝送するケーブルと、
前記ケーブルを介して伝送された前記残余の多重化信号を分離する第3の多重化制御部と、
を有する請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1の多重化制御部は、複数の信号を多重化し前記第1信号線に伝送する処理を少なくとも行い、
前記第2の多重化制御部は、前記第2信号線によって伝送された多重化信号に含まれる全ての信号を分離する処理を少なくとも行い、
前記ワイヤハーネス部は、前記第2の多重化制御部で分離された各信号を伝送する複数の伝送ケーブルを有する請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1の多重化制御部は、前記電子制御装置の外部へ出力する複数のデジタル出力信号を多重化し前記第1信号線に伝送する処理、及び前記電子制御装置の外部から前記第1信号線を介して入力された多重化信号から複数のデジタル入力信号を分離する処理を行い、
前記第2の多重化制御部は、前記電子制御装置から出力され前記第2信号線を介して伝送された多重化信号から複数のデジタル出力信号を分離する処理、及び前記電子制御装置へ入力する複数のデジタル入力信号を多重化し前記第2信号線に伝送する処理を行う請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記ワイヤハーネス部は、前記第2コネクタ部内に複数の前記第2の多重化制御部が設けられ、各々の前記第2の多重化制御部にそれぞれ複数の信号線が接続されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両内には、パワーウィンドウ、ライト、ワイパーなど、様々な電子機器が搭載されており、これらは、ワイヤハーネスによって電子制御装置(ECU)に接続されている。ECUと多数の機器をワイヤハーネスによって接続する場合、一般的には、ECU内に各機器への通信経路が確保され、ECUのコネクタには、各通信経路に対応する端子が多数設けられる。そして、ECUのコネクタと連結するワイヤハーネスのコネクタにも、それらに対応する多数の端子が設けられ、これらの端子がケーブルを介して各機器に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−5148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、車載技術の高度化や複雑化が進展しているが、将来的にその傾向がより顕著となると予想した場合、ECUと接続すべき電子部品(センサやアクチュエータ等)の数は一層増加することが想定される。特に、最近では、高度運転支援技術や自動運転技術に対する要求が益々高まっているが、これらをより適正に実現するためには、高度なセンシング技術、高度な動作制御技術が必要となる。例えば、多数のセンサやアクチュエータを用いて熟練度の低い運転者を支援する技術や、いずれかの系統が失陥した場合でも動作を継続できるように冗長性を持たせた技術など、より多くの電子部品を用いる技術が必要となり、このような技術を適正に実現するためには、ECUに接続すべき電子部品の数を益々増加させなければならない。しかし、この種の装置は、ECUに接続される機器の数が多くなると、コネクタに配置すべき端子数が増えるため、コネクタが大型化してしまい、その結果、ECU全体の大型化を招いてしまう。また、コネクタの端子数が増えると、コネクタ同士を着脱する際により大きな挿抜力が必要となるため、着脱作業時の不具合や作業性の低下を招きやすいという問題もある。なお、このような問題は、上述した高度運転支援技術や自動運転技術に関連するECUは勿論のこと、車両に搭載される様々なECUで同様に生じうる。
【0005】
一方、特許文献1には、ECUに対して複数のアクチュエータをカスコード接続によって接続した例が開示されている。この構成によれば、ECUに直接的に接続される機器の数が抑えられ、その分だけコネクタの端子数を減らすことができるため、挿抜力の低下を図ることができる。しかし、特許文献1の技術は、車両内の様々な位置に配置される多数の機器をカスコード接続によって順番に接続しなければならず、車両内の限られたスペースでこのような接続を行うことは難しい。特に、上述したような車両の高機能化の要求に応えるべく、多数の電子部品を様々な場所に配置するような車載システムを構成しようとした場合、このようなカスコード接続を行うことは現実的ではない。なお、この問題も車両に搭載される様々なECUで生じうる。
【0006】
本発明は上述した事情に基づいてなされたものであり、電子制御装置に設けられたコネクタの端子数を抑えて挿抜力の低減を図ることができ、且つ、電子制御装置と様々な場所に配置される複数の機器との接続をより良好に行い得る構成を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制御システムは、
第1コネクタ部を有する電子制御装置と、
前記第1コネクタ部に連結される第2コネクタ部を有するワイヤハーネス部と、
を備え、
前記電子制御装置は、
多重化信号の伝送経路となる第1信号線と、
複数の信号を多重化し前記第1信号線に伝送する処理、又は前記第1信号線によって伝送された多重化信号から複数の信号を分離する処理、の少なくもいずれかの処理を行う第1の多重化制御部と、
を有し、
前記ワイヤハーネス部は、
前記第1信号線で伝送される多重化信号の伝送経路となる第2信号線と、
前記第2コネクタ部に設けられ、前記第2信号線によって伝送された多重化信号から信号を分離する処理、又は複数の信号を多重化し前記第2信号線に伝送する処理、の少なくもいずれかの処理を行う第2の多重化制御部と、
を有する。
【0008】
本発明の制御システムは、電子制御装置に設けられた第1の多重化制御部と、ワイヤハーネス部の第2コネクタ部(電子制御装置の第1コネクタ部に連結されるコネクタ部)に設けられた第2の多重化制御部との間で多重化信号の伝送を行うことができる。つまり、電子制御装置の第1コネクタ部とワイヤハーネス部の第2コネクタ部との間で複数の信号の経路を共通化することができるため、これらコネクタ部において端子数を減らすことができ、挿抜力の低減を図ることができる。
【0009】
しかも、ワイヤハーネス部の第2コネクタ部(電子制御装置の第1コネクタ部に連結されるコネクタ部)に第2の多重化制御部が設けられている。このため、第2の多重化制御部で分離された後の信号又は第2の多重化制御部で多重化される前の信号の経路を、第2コネクタ部と複数の機器との間で個別に設けることができる。つまり、電子制御装置との間で信号の伝送を行う複数の機器を全てカスコード接続する必要が無く、少なくとも一部の機器への経路は、第2コネクタ部から別個に設けられることになる。よって、機器や配線を配置する上での自由度が大きくなり、電子制御装置と様々な場所に配置される複数の機器との接続をより良好に行うことができる。
【0010】
特許文献1の技術も含め、従来の車載技術では、小型化、軽量化、部品点数の削減を図るためにワイヤハーネスを構成する電線数をできるだけ減らしたいという思想が根底にあった。このため、多重化通信の機能を組み込む場合には、電線数を削減し得る範囲をできるだけ長く確保するために多重化通信の経路をできる限り長く構成するという設計思想が一般的であった。しかし、本発明は、このような設計思想をそのまま踏襲せずに発想を転換し、多重化通信の経路を非常に短くしている。即ち、電子制御装置に設けられた第1の多重化制御部と非常に近い位置である第2コネクタ部(電子制御装置の第1コネクタ部に連結されるコネクタ部)に第2の多重化制御部を設けている。このような発想の転換により、少なくとも一部の機器への経路を電子制御装置の近傍から別個に配策することを可能とし、配置の自由度を高めているのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係る制御システムを概略的に示すブロック図である。
図2】実施例2に係る制御システムを概略的に示すブロック図である。
図3】実施例2の制御システムのワイヤハーネス部を概略的に例示するブロック図である。
図4】他の実施例に係る制御システムを概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、第1の多重化制御部が、複数の信号を多重化し第1信号線に伝送する処理を少なくとも行い、第2の多重化制御部が、第2信号線によって伝送された多重化信号に含まれる一部の信号を分離する処理を少なくとも行う構成であってもよい。そして、ワイヤハーネス部は、第2信号線によって伝送された多重化信号のうち、第2の多重化制御部で分離された信号を除いた残余の多重化信号を伝送するケーブルと、ケーブルを介して伝送された残余の多重化信号を分離する第3の多重化制御部と、を有する構成であってもよい。
【0013】
この構成によれば、第2コネクタ部に設けられる第2の多重化制御部を小型化、小規模化することができ、第2コネクタ部自体の小型化を図ることもできる。更に、ワイヤハーネス部において、第2コネクタ部からの配線数を削減することができる。
【0014】
本発明は、第1の多重化制御部が、複数の信号を多重化し第1信号線に伝送する処理を少なくとも行い、第2の多重化制御部は、第2信号線によって伝送された多重化信号に含まれる全ての信号を分離する処理を少なくとも行う構成であってもよい。そして、ワイヤハーネス部は、第2の多重化制御部で分離された各信号を伝送する複数の伝送ケーブルを有する構成であってもよい。
【0015】
この構成によれば、第2の多重化制御部で分離された後の全ての信号の経路を、第2コネクタ部と複数の機器との間で個別に設けることができる。よって、機器や配線を配置する上での自由度がより一層大きくなり、電子制御装置と様々な場所に配置される複数の機器との接続をより一層良好に行うことができる。
【0016】
本発明は、第1の多重化制御部が、電子制御装置の外部へ出力する複数のデジタル出力信号を多重化し第1信号線に伝送する処理、及び電子制御装置の外部から第1信号線を介して入力された多重化信号から複数のデジタル入力信号を分離する処理を行う構成であってもよい。そして、第2の多重化制御部が、電子制御装置から出力され第2信号線を介して伝送された多重化信号から複数のデジタル出力信号を分離する処理、及び電子制御装置へ入力する複数のデジタル入力信号を多重化し第2信号線に伝送する処理を行う構成であってもよい。
【0017】
この構成によれば、電子制御装置から出力する複数のデジタル出力信号も、電子制御装置に入力される複数のデジタル入力信号も、コネクタ部の間では多重化信号によって伝送することができるため、コネクタ部の端子数をより一層減らすことができ、挿抜力の一層の低減を図ることができる。
【0018】
本発明において、ワイヤハーネス部は、第2コネクタ部内に複数の第2の多重化制御部が設けられ、各々の第2の多重化制御部にそれぞれ複数の信号線が接続されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、第2コネクタ部において、より多くの信号を多重化した多重化信号の生成、又は多重化信号からより多くの信号の分離を行うことができ、信号数が多い場合により有利になる。特に、複数設けられる第2の多重化制御部を共通の回路構成とすれば、部品の共通化を図りつつ多数の信号に対応できるようになる。
【0020】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す制御システム1は、コネクタ間で多重化された信号を伝送し得る装置として構成され、車両用の電子制御ユニットとして機能する。制御システム1は、車両用の電子制御装置として構成されるECU(Electronic Control Unit)2と、ECU2に接続されるワイヤハーネス部4とを備える。この制御システム1は、ワイヤハーネス部4に設けられた複数の電線26によって車両内に分散する複数の機器(図示略)とECU2とを通信可能に接続し、ECU2による機器の制御を可能としている。
【0021】
ECU2は、例えば、エアコン、ドアなどの内装品を制御するボディ系のECU、或いはその他のECUとして構成されている。このECU2は、図示しないケース内に収容される基板(図示略)と、この基板に電気的に接続された多数の端子18を有する第1コネクタ部10とを有する。ECU2の基板には様々な電子部品が実装され、基板内及び基板表面には様々な導電路が配置されており、これらによって電子回路が構成されている。
【0022】
ECU2には、図示しないケースの外部に露出した構成で第1コネクタ部10が設けられている。第1コネクタ部10は、ECU2の基板に電気的に接続された複数の端子18がコネクタハウジング内に設けられている。図1の例では、多重化制御回路12に電気的に接続される端子を端子18Aとし、それ以外の端子を端子18Bとしている。
【0023】
図1には、ECU2に構成される電子回路の一部を概略的に示している。ECU2は、主として、マイクロコンピュータ2Aと、アナログ入力処理回路2Bと、アナログ出力処理回路2Cと、処理回路16と、多重化制御回路12とを備える。マイクロコンピュータ2Aは、CPU、メモリ、入出力ポートなどを有し、様々な処理を行う制御回路として機能する。アナログ入力処理回路2Bは、入力処理回路やADコンバータなどを備え、外部から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換してマイクロコンピュータ2Aに入力する。アナログ出力処理回路2Cは、マイクロコンピュータ2Aで生成された各機器への信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換して出力する。
【0024】
処理回路16は、例えば多重化制御回路12に対する入力及び多重化制御回路12からの出力を制御する制御LSIによって構成される。多重化制御回路12は、ECU2の外部へ出力する複数種類のデジタル出力信号を多重化して第1信号線14に伝送する処理を行う回路、及びECU2の外部から第1信号線14を介して入力された多重化信号から複数種類のデジタル入力信号を分離する処理を行う回路を有する。
【0025】
多重化制御回路12は、第1の多重化制御部の一例に相当し、例えばマルチプレクサ回路及びデマルチプレクサ回路を有する集積回路であるMUX/DMUX LSIとして構成されている。ECU2の外部へ出力する複数種類のデジタル出力信号は、マイクロコンピュータ2Aで生成され、処理回路16によって制御される形で多重化制御回路12に与えられる。多重化制御回路12は、処理回路16によって与えられた複数種類のデジタル出力信号を、公知の多重化通信方式で多重化して第1信号線14に伝送する。また、多重化制御回路12は、後述する多重化制御回路22から第2信号線24及び第1信号線14を介して送信された多重化信号を公知の分離方式で分離し、処理回路16に入力する機能を有する。
【0026】
多重化制御回路12に接続された第1信号線14は、多重化信号の伝送経路として機能する。第1信号線14は、例えば1又は複数本の信号線からなり、ECU2の基板に配置される配線部14Aと、この配線部14Aに導通し第1コネクタ部10に配置される端子18Aとを備える。第1信号線14は、第1コネクタ部10と第2コネクタ部20とが連結された時に第2信号線24と電気的に接続する。
【0027】
ワイヤハーネス部4は、ECU2の第1コネクタ部10に連結される第2コネクタ部20と、この第2コネクタ部20から延びるとともに車両内の様々な場所に配置される複数の機器(図示略)に接続される複数の電線26とを備える。複数の電線26のうち、各電線26Aはそれぞれ多重化制御回路22に電気的に接続されており、多重化制御回路22と複数の機器とを通信可能に接続する導電路として構成されている。また、各電線26BはECU2と複数の機器とを電気的に接続する導電路(専用線)として構成されている。
【0028】
第2コネクタ部20は、コネクタハウジング内に端子28や多重化制御回路22などが収容された構成をなす。第2コネクタ部20は、第1コネクタ部10と第2コネクタ部20とが連結される時に端子18Aに接続される端子28Aと、各端子18Bにそれぞれ接続される複数の端子28Bとを備える。そして、端子28Aとこの端子28Aに接続される配線部24Aとが第2信号線24として構成されている。第2信号線24は、1又は複数本の信号線からなり、第1コネクタ部10と第2コネクタ部とが連結されている時に第1信号線14と電気的に接続され、多重化信号の伝送経路となる。
【0029】
第2コネクタ部20に設けられた多重化制御回路22は、ECU2から出力され第1信号線14及び第2信号線24を介して伝送された多重化信号から複数のデジタル出力信号を分離する処理、及びECU2へ入力する複数のデジタル入力信号を多重化し第2信号線24に伝送する処理を行う。
【0030】
多重化制御回路22は、第2の多重化制御部の一例に相当し、例えばマルチプレクサ回路及びデマルチプレクサ回路を有する集積回路であるMUX/DMUX LSIとして構成されている。ECU2の内部へ入力する複数種類のデジタル入力信号は、車両内の各機器(センサ、アクチュエータ等)から各電線26Aを介して伝送される形で多重化制御回路22に与えられる。多重化制御回路22は、複数の電線26Aを介して各機器から与えられた複数種類のデジタル入力信号を、公知の多重化通信方式で多重化して第2信号線24に伝送する。また、多重化制御回路22は、多重化制御回路12から第1信号線14及び第2信号線24を介して送信された多重化信号を公知の分離方式で分離し、分離されたそれぞれの信号を各電線26Aに出力する機能を有する。
【0031】
以上のように、本構成の制御システム1は、ECU2に設けられた多重化制御回路12と、ワイヤハーネス部4の第2コネクタ部20(ECU2の第1コネクタ部10に連結されるコネクタ部)に設けられた多重化制御回路22との間で多重化信号の伝送を行うことができる。つまり、ECU2の第1コネクタ部10とワイヤハーネス部4の第2コネクタ部20との間で複数種類の信号の経路を共通化することができるため、これらコネクタ部において端子数を減らすことができ、挿抜力の低減を図ることができる。
【0032】
しかも、ワイヤハーネス部4の第2コネクタ部20(ECU2の第1コネクタ部10に連結されるコネクタ部)に多重化制御回路22が設けられている。このため、図1で示す各電線26Aのように、多重化制御回路22で分離された後の信号又は多重化制御回路22で多重化される前の信号の経路を、第2コネクタ部20と複数の機器との間で個別に設けることができる。つまり、ECU2との間で信号の伝送を行う複数の機器を全てカスコード接続する必要が無く、第2コネクタ部20から別個に設けられることになる。よって、機器や配線を配置する上での自由度が大きくなり、ECU2と様々な場所に配置される複数の機器との接続をより良好に行うことができる。
【0033】
また、本構成の制御システム1は、多重化制御回路12が、複数の信号を多重化し第1信号線14に伝送する処理を行い、多重化制御回路22は、第2信号線24によって伝送された多重化信号に含まれる全ての信号を分離する処理を行う構成となっている。そして、ワイヤハーネス部4には、多重化制御回路22で分離された各信号を伝送する複数の伝送ケーブル(電線26A)が設けられている。この構成によれば、多重化制御回路22で分離された後の全ての信号の経路を、第2コネクタ部と複数の機器との間で個別に設けることができる。よって、機器や配線を配置する上での自由度がより一層大きくなり、ECU2と様々な場所に配置される複数の機器との接続をより一層良好に行うことができる。
【0034】
また、多重化制御回路22は、第2信号線24で伝送するべき全てのデジタル入力信号(複数の機器から電線26Aを介して入力される全てのデジタル入力信号)を多重化して第2信号線24に伝送する構成となっている。この構成によれば、多重化制御回路22で多重化される前の全ての信号の経路を、第2コネクタ部20と複数の機器との間で個別に設けることができる。
【0035】
また、本構成の制御システム1は、多重化制御回路12が、ECU2の外部へ出力する複数のデジタル出力信号を多重化し第1信号線14に伝送する処理、及びECU2の外部から第1信号線14を介して入力された多重化信号から複数のデジタル入力信号を分離する処理を行う構成となっている。多重化制御回路22が、ECU2から出力され第2信号線24を介して伝送された多重化信号から複数のデジタル出力信号を分離する処理、及びECU2へ入力する複数のデジタル入力信号を多重化し第2信号線24に伝送する処理を行う構成となっている。この構成によれば、ECU2から出力する複数のデジタル出力信号も、ECU2に入力される複数のデジタル入力信号も、コネクタ部の間では多重化信号によって伝送することができるため、コネクタ部の端子数をより一層減らすことができ、挿抜力の一層の低減を図ることができる。
【0036】
<実施例2>
次に、図2図3等を参照して実施例2について説明する。
実施例2の制御システム201は、ワイヤハーネス部204の構成のみが実施例1のワイヤハーネス部4と異なり、ECU2は、実施例1と同様の構成をなす。よって、以下では実施例1と同一の構成をなす部分については実施例1と同一の符号を付して詳細な説明を省略し、実施例1と相違する点を重点的に説明する。
【0037】
図2で示す制御システム201でも、ECU2(電子制御装置)の多重化制御回路12が第1の多重化制御部の一例に相当し、ECU2の外部へ出力する複数のデジタル出力信号を多重化して第1信号線14に伝送する処理、及びECU2の外部(具体的には、多重化制御回路222)から第1信号線14を介して入力された多重化信号から複数のデジタル入力信号を分離する処理を行う構成となっている。
【0038】
そして、ワイヤハーネス部204の第2コネクタ部220に設けられた多重化制御回路222が第2の多重化制御部の一例に相当し、ECU2の多重化制御回路12から出力され第1信号線14及び第2信号線24を介して伝送された多重化信号から複数のデジタル出力信号を分離する処理、及びECU2へ入力する複数のデジタル入力信号を多重化し第2信号線24に伝送する処理を行う構成となっている。
【0039】
多重化制御回路222は、例えばマルチプレクサ回路及びデマルチプレクサ回路を有する集積回路であるMUX/DMUX LSIとして構成され、多重化制御回路12から第1信号線14及び第2信号線24を介して伝送された多重化信号に含まれる一部(具体的には多重化信号に含まれる全種類の信号のうちの一部をなす複数種類)の信号を分離する処理を行う構成となっている。多重化制御回路222で分離された各信号は、各電線226Aによって図示しない各機器に個別に伝送される。
【0040】
図3のように、ワイヤハーネス部204には、第2信号線24(図2も参照)によって第2コネクタ部220内へと伝送された多重化信号のうち、多重化制御回路22で分離された信号(各電線226Aによって各機器へと伝送される信号)を除いた残余の多重化信号を伝送するケーブル(電線226B)と、この電線226Bに連結された第3コネクタ部230とが設けられている。
【0041】
多重化制御回路12から多重化制御回路222へと伝送された多重化信号のうち、多重化制御回路222で分離されなかった残余の多重化信号は、図3で示す電線226Bを介して電線226Bに連結された第3コネクタ部230に伝送され、多重化制御回路232へと与えられる。多重化制御回路232は、第3の多重化制御部の一例に相当し、例えばマルチプレクサ回路及びデマルチプレクサ回路を有する集積回路であるMUX/DMUX LSIとして構成され、電線226Bを介して伝送された残余の多重化信号に含まれる全ての信号を分離する処理を行う構成となっている。多重化制御回路232で分離された各信号は、多重化制御回路232に電気的に接続される各電線によって各機器に個別に伝送される。
【0042】
多重化制御回路232は、複数の機器から入力される複数の信号を多重化し、電線226Bを介して第2コネクタ部220へ伝送し得るように構成されていてもよい。そして、多重化制御回路222は、複数の機器から各電線226Aを介して入力される複数の信号、及び多重化制御回路232から伝送される信号を多重化し、第2信号線24及び第1信号線14を介して多重化制御回路12に伝送し得るように構成されていてもよい。この場合、多重化制御回路12は、多重化制御回路222から伝送される多重化信号に含まれる複数の信号を分離する処理を行う。なお、図3の例では、多重化制御回路232が第3コネクタ部230の内部に設けられた例を示したが、多重化制御回路232はコネクタ部以外の場所(例えば電子機器内など)に設けられていてもよい。
【0043】
図2図3で示す制御システム201の構成によれば、第2コネクタ部220に設けられる多重化制御回路222を小型化、小規模化することができ、第2コネクタ部220自体の小型化を図ることもできる。更に、ワイヤハーネス部204において、第2コネクタ部220からの配線数を削減することができる。
【0044】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上述した実施例では、第1コネクタ部の多重化制御回路が、複数のデジタル出力信号を多重化して第1信号線に伝送する処理、及び第1信号線で伝送された多重化信号から複数のデジタル入力信号を分離する処理、をいずれも行う例を示した。しかし、第1コネクタ部の多重化制御回路が複数のデジタル出力信号を多重化して第1信号線に伝送する処理のみを行い、第2コネクタ部の多重化制御回路がこの多重化信号を分離する処理のみを行う構成であってもよい。この場合、ECU2の外部から入力される複数のデジタル入力信号については、多重化せずに個別の信号線で入力すればよい。
(2)第2コネクタ部の多重化制御回路が複数のデジタル入力信号を多重化して第2信号線に伝送する処理のみを行い第1コネクタ部の多重化制御回路がこの多重化信号から複数のデジタル入力信号を分離する処理のみを行う構成であってもよい。この場合、ECU2の内部から外部に出力される複数のデジタル出力信号については、多重化せずに個別の信号線で出力すればよい。
(3)上述した実施例では、第1コネクタ部の多重化制御回路と第2コネクタ部の多重化制御回路とによってデジタル信号を多重化した多重化信号をコネクタ部間で伝送する例を示したが、第1コネクタ部の多重化制御回路と第2コネクタ部の多重化制御回路とによってアナログ信号の多重化通信を行ってもよい。
(4)実施例2では、第3の多重化制御部が1つのみ設けられた構成を例示したが、複数設けられていてもよい。例えば、図3で示す第3コネクタ部230内に第3の多重化制御部に相当する多重化制御回路を複数設けるようにしてもよい。或いは、図3で示す多重化制御回路232により、この多重化制御回路232に入力された多重化信号の一部の信号を分離し、残りの多重化信号は、図示しない電線を介して多重化制御回路232に電気的に接続された1又は複数個所の多重化制御回路で分離してもよい。いずれの場合でも、多重化制御回路222で分離されなかった残余の多重化信号を分離する複数の多重化制御回路が第3の多重化制御部に相当する。
(5)実施例1、2では、第2コネクタ部内に1つの多重化制御回路が設けられた構成を例示したが、いずれの実施例の場合でも、第2コネクタ部内に同様の回路構成をもつ複数の多重化制御回路が設けられていてもよい。なお、図4の構成は、図1で示す多重化制御回路22を複数の多重化制御回路22A,22Bに変更した点が実施例1と異なり、それ以外は実施例1と同様である。よって、実施例1と同様の部分については、実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図4の例では、第2コネクタ部20内に複数の多重化制御回路22A,22Bが設けられ、各々の多重化制御回路22A,22Bにそれぞれ複数の信号線(電線26A)が接続されている。例えば、多重化制御回路12から第1信号線14及び第2信号線24を介して伝送された多重化信号に含まれる全ての信号を複数の多重化制御回路22A,22Bにより分離し、分離された各信号を各電線26Aによって送信する構成となっている。また、複数の多重化制御回路22A,22Bは、複数の電線26Aを介して入力される複数の信号を多重化し、多重化制御回路12に送信する構成となっている。
このような構成によれば、第2コネクタ部20において、より多くの入力信号を多重化した多重化信号の生成、及び出力信号(多重化信号)からより多くの信号の分離を行うことができ、信号数が多い場合により有利になる。
【符号の説明】
【0045】
1,201…制御システム
2…ECU(電子制御装置)
4,204…ワイヤハーネス部
10…第1コネクタ部
12…多重化制御回路(第1の多重化制御部)
14…第1信号線
20,220…第2コネクタ部
22,222…多重化制御回路(第2の多重化制御部)
24…第2信号線
226B…電線(ケーブル)
232…多重化制御回路(第3の多重化制御部)
図1
図2
図3
図4