特許第6673065号(P6673065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673065
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20200316BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20200316BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20200316BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   H01F27/29 125
   H01F17/04 A
   H01F41/04 B
   H01F41/10 C
   H01F27/29 H
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-135228(P2016-135228)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-6676(P2018-6676A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】有光 一統
(72)【発明者】
【氏名】菊池 峻平
(72)【発明者】
【氏名】大場 暁海
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−282333(JP,A)
【文献】 特開2007−273739(JP,A)
【文献】 特開2012−064682(JP,A)
【文献】 特開2006−041418(JP,A)
【文献】 特開2013−102056(JP,A)
【文献】 特開2011−243686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 41/04
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤがコイル状に巻回してあるコイル部と、
磁性材と樹脂とを含有しており、前記コイル部の内部も含めて前記コイル部の全体を覆うコア部と、
前記コア部の外面に装着してある端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記ワイヤのリード部が前記コア部の外面から飛び出し前記外面から離れた位置で、前記リード部と前記端子電極との接合部が形成してあり、
前記端子電極は、
前記コア部の外面に沿って取り付けられる端子本体と、
前記リード部が前記コア部の外面から飛び出す位置の近くで、前記接合部に向けて前記端子本体から折り曲げられているリード支持部とを有し、
前記端子電極の内面に対する前記リード支持部の交差角度θ1が、90度より小さいコイル装置。
【請求項2】
ワイヤがコイル状に巻回してあるコイル部と、
磁性材と樹脂とを含有しており、前記コイル部の内部も含めて前記コイル部の全体を覆うコア部と、
前記コア部の外面に装着してある端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記ワイヤのリード部が前記コア部の外面から飛び出し前記外面から離れた位置で、前記リード部と前記端子電極との接合部が形成してあり、
前記端子電極は、
前記コア部の外面に沿って取り付けられる端子本体と、
前記リード部が前記コア部の外面から飛び出す位置の近くで、前記接合部に向けて前記端子本体から折り曲げられているリード支持部とを有し、
前記リード部に対する前記リード支持部の交差角度θ2が、90度より小さいコイル装置。
【請求項3】
前記リード支持部の途中から前記接合部にわたり、前記リード支持部の幅方向の片側角部には、前記リード支持部の上に前記リード部を案内する傾斜面が形成してある請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記リード支持部の先端部には、前記リード部と実質的に平行な接触平面部が形成してある請求項1〜3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記端子本体は、主端子本体と、副端子本体とから成り、
前記副端子本体に前記リード支持部が一体的に形成してある請求項1〜4のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記コイル部の巻軸方向の両側に位置する前記コア部の外面には、取付溝が形成してあり、
前記主端子本体の前記巻軸方向の両側に位置する弾性片が前記取付溝に嵌合している請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記主端子本体の前記コイル部の巻軸方向の片側には、前記コア部の前記巻軸方向の片側面に取り付けられる取付片が前記主端子本体に一体に成形してある請求項5に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部を内部に含むコア部を有するコイル装置に係り、さらに詳しくは、コア部から飛び出すリード部と端子電極との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部を内部に含むコア部を有するコイル装置としては、たとえば下記の特許文献1に示すコイル装置が知られている。このタイプのコイル装置では、コア部からリード部が飛び出している位置で、コア部の外面に取り付けられる端子電極と電気的に接続している。
【0003】
コア部からリード部が飛び出す位置は、製品によって多少ばらつくことから、従来では、特殊な装置により、端子電極の接続部とリード部とに圧力を加えて仮止めしてから、レーザ溶接などで接続している。このように従来のコイル装置の構造では、特殊な装置を用いてリード部と端子電極とを仮止めしてから接続する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−243686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、リード部と端子電極との位置合わせが容易で接続部の信頼性が向上するコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るコイル装置は、
ワイヤがコイル状に巻回してあるコイル部と、
磁性材と樹脂とを含有しており、前記コイル部の内部も含めて前記コイル部の全体を覆うコア部と、
前記コア部の外面に装着してある端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記ワイヤのリード部が前記コア部の外面から飛び出し前記外面から離れた位置で、前記リード部と前記端子電極との接合部が形成してあり、
前記端子電極は、
前記コア体の外面に沿って取り付けられる端子本体と、
前記リード部が前記コア部の外面から飛び出す位置の近くで、前記接合部に向けて前記端子本体から折り曲げられているリード支持部とを有し、
前記端子電極の内面に対する前記リード支持部の交差角度θ1が、90度より小さい。
【0007】
交差角度θ1が所定角度範囲内とすることで、コア部の外面から飛び出すリード部の位置が多少ばらついたとしても、リード支持部(またはリード部または双方/以下同様)が弾性変形することで、リード支持部の先端部は、リード部に確実に接触する。しかも、リード支持部が弾性変形しているために、リード部は、リード支持部の上に弾性力で押し付けられて位置決めされて仮固定される。
【0008】
そのため、リード部をリード支持部の先端部に押し付けた状態で、これらをレーザ溶接などで接続することが容易であり、リード部の先端にリード支持部との接続部を容易に形成することができる。また、安定した接続が行われ、接続部の信頼性が向上する。また、本発明の第1の観点に係るコイル装置では、仮固定のための特殊な工具を必要としない。
【0009】
本発明の第2の観点に係るコイル装置は、
ワイヤがコイル状に巻回してあるコイル部と、
磁性材と樹脂とを含有しており、前記コイル部の内部も含めて前記コイル部の全体を覆うコア部と、
前記コア部の外面に装着してある端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記ワイヤのリード部が前記コア部の外面から飛び出し前記外面から離れた位置で、前記リード部と前記端子電極との接合部が形成してあり、
前記端子電極は、
前記コア体の外面に沿って取り付けられる端子本体と、
前記リード部が前記コア部の外面から飛び出す位置の近くで、前記接合部に向けて前記端子本体から折り曲げられているリード支持部とを有し、
前記リード部に対する前記リード支持部の交差角度θ2が、90度より小さい。交差角度θ2は、好ましくは60度以下、さらに好ましくは1〜50度、さらにまた好ましくは5〜35度である。
【0010】
交差角度θ2が所定角度範囲内とすることで、コア部の外面から飛び出すリード部の位置が多少ばらついたとしても、リード支持部が弾性変形することで、リード支持部の先端部は、リード部に確実に接触する。しかも、リード支持部が弾性変形しているために、リード部は、リード支持部の上に弾性力で押し付けられて位置決めされている。
【0011】
そのため、リード部をリード支持部の先端部に押し付けた状態で、これらをレーザ溶接などで接続することが容易であり、リード部の先端にリード支持部との接続部を容易に形成することができる。また、安定した接続が行われ、接続部の信頼性が向上する。なお、接続部を形成するための方法としては、第1の観点と同様である。また、本発明の第2の観点に係るコイル装置においても、仮固定のための特殊な工具を必要としない。
【0012】
前記リード支持部の途中から前記接合部にわたり、前記リード支持部の幅方向の片側角部には、前記リード支持部の先端部の上に前記リード部を案内する傾斜面が形成してあってもよい。傾斜面が形成してあることで、端子電極をコア部に取り付ける際に、コア部の外面から露出しているリード部の横から、端子電極のリード支持部の傾斜面が当たる。そのため、傾斜面が案内部となり、リード部をリード支持部の上に載せることが容易になり、端子電極をコア部に取り付けるのみで、端子電極のリード支持部とリード部との位置決めが容易に行える。
【0013】
前記リード支持部の先端部には、前記リード部と実質的に平行な接触平面部が形成してあっても良い。リード支持部の弾力性により、リード部と実質的に平行な接触平面部がリード部に接触することで、これらは弾力により押し付け合い、接触平面部の上で、リード部が良好に位置決めされて仮固定される。
【0014】
前記端子本体は、主端子本体と、副端子本体とから成ってもよく、前記副端子本体に前記リード支持部が一体的に形成してあってもよい。副端子本体にリード支持部を形成することで、主端子本体をコア部に取り付ける際に、リード支持部を、リード部の横から接触させることが可能になり、リード支持部が容易に弾性変形し、リード支持部上にリード部を弾性保持して仮止めすることができる。
【0015】
前記コイル部の巻軸方向の両側に位置する前記コア部の外面には、取付溝が形成してあってもよく、主端子本体の前記巻軸方向の両側に位置する弾性片が前記取付溝に嵌合していてもよい。このように構成することで、コア部への主端子本体の取り付けが容易になる。
【0016】
前記主端子本体の前記巻軸方向の片側には、前記コア部の前記巻軸方向の片側面に取り付けられる取付片が前記主端子本体に一体に成形してあってもよい。このように構成することでも、主端子本体をコア部に取り付ける際に、リード支持部を、リード部の横から接触させることが可能になる。そのため、リード支持部が容易に弾性変形し、リード支持部上にリード部を弾性保持して仮止めすることができる。
【0017】
本発明に係るコイル装置の製造方法は、
ワイヤがコイル状に巻回してあるコイル部を準備する工程と、
前記コイル部の内部も含めて前記コイル部の全体を、コア部で覆い、コア部の外面から、前記コイル部を構成するワイヤのリード部を露出させる工程と、
前記コア部の外面に端子電極を取り付ける工程と、を有するコイル装置の製造方法であって、
前記端子電極は、前記コア体の外面に沿って取り付けられる端子本体と、前記端子本体の内面から交差角度θ1で外側に折り曲げられているリード支持部とを有し、
前記端子電極をコア部の外面に取り付ける際に、前記コア部の外面から飛び出しているリード部にリード支持部の先端部を横から当接させ、前記リード支持部および/または前記リード部を弾性変形させ、前記リード支持部の先端部の上に前記リード部を相互に押し合うように位置させて仮止めし、
その後に、リード支持部の先端部にリード部との接合部を形成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の一実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
図2A図2A図1に示すコイル装置のIIA−IIA線に沿う断面図である。
図2B図2B図1に示すコイル装置のIIB−IIB線に沿う断面図である。
図3A図3A図2Aに示すリード部と端子との接続部の接続前の状態を示す要部概略図である。
図3B図3B図2Aに示すリード部と端子との接続部の接続前の状態を示す他の例に係る要部概略図である。
図4図4図3Aに示すリード部と端子との接続前の状態を示すコア部の透視斜視図である。
図5A図5A図4に示すコア部に端子を取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
図5B図5B図5Aに示すコア部に端子を取り付ける直前の状態を示す分解平面図である。
図6図6は本発明の他の実施形態に係るコイル装置の斜視図であり、コイル部リード部の図示を省略している。
図7図7は本発明の他の実施形態に係るコイル装置の斜視図であり、コイル部の図示を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
第1実施形態
図1図2Aおよび図2Bに示すように、本発明の一実施形態におけるコイル装置としてのインダクタ素子2は、圧縮成形体としてのコア部4と、コア部4の内部でコイル状にワイヤ6aが巻回してあるコイル部6と、ワイヤ6aのリード部6bに接合部6cで接続される端子電極8とを有する。本実施形態では、図面において、コイル部6の巻軸方向をZ軸とし、それに相互に直交する軸をX軸およびY軸とする。本実施形態では、X軸は、一対の端子電極8が向き合う方向に一致するが、特に限定されない。
【0021】
ワイヤ6aは、たとえば、導線と、必要に応じて導線の外周を被覆してある絶縁被覆層とで構成してある。導線は、たとえばCu、Al、Fe、Ag、Au、リン青銅などで構成してある。絶縁被覆層は、たとえばポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル−イミド、ポリエステル−ナイロンなどで構成してある。ワイヤ6aの横断面形状は、特に限定されず、円形、平角形状などが例示される。
【0022】
コア部4は、磁性粉体およびバインダを含む顆粒を圧縮成形または射出成形して形成してある。磁性粉体としては、特に限定されないが、センダスト(Fe−Si−Al;鉄−シリコン−アルミニウム)、Fe−Si−Cr(鉄−シリコン−クロム)、パーマロイ(Fe−Ni)、カルボニル鉄系、カルボニルNi系、アモルファス粉、ナノクリスタル粉などの金属磁性体粉が好ましく用いられる。
【0023】
ただし、磁性粉体としては、Mn−Zn、Ni−Cu−Znなどのフェライト磁性体粉であってもよい。バインダとしては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコン樹脂、これらを組み合わせたものなどが例示される。
【0024】
コア部4は、Z軸方向の下部に実装側外面4aが形成してあると共に、Z軸方向の上部には、反実装側外面4bが形成してある。実装側外面4aと反実装側外面4bとの間には、側方外面である側面4cが形成してある。
【0025】
本実施形態では、側面4cは、複数の平面と曲面との組合せで構成してあるが、特に限定されず、全体として曲面であっても良く、全体として多角形の側面であっても良い。本実施形態では、コア部4をZ軸方向の上部または下部から見たときに、非対称形状であることが好ましい。コア部4をZ軸方向の上部または下部から見たときに、コイル装置の形状または方向を認識しやすいからである。
【0026】
図5Aに示すように、コア部4の側面4cは、X軸方向に相互に反対側に位置する一対の主取付側面4c1を有する。本実施形態では、主取付側面4c1は、端子電極8の主端子本体80の形状に合わせて平面状に形成してあるが、主端子本体80の内面が曲面状であれば、それに合わせて曲面状にしてもよい。また、コア部4の側面4cは、Z軸方向の上から見て主取付側面4c1の時計回りの隣に、副取付側面4c2を有している。副取付側面4c2からは、リード部6bが飛び出している。
【0027】
さらに、コア部4の側面4cは、Z軸方向の上から見て副取付側面4c2の時計回りの隣に、非取付側面4c3a,4c4aまたは4c3b,4c4bを有している。本実施形態では、相互に反対側に位置する側面4c1,4c1は、相互に同じ形と面積を有し、側面4c2,4c2についても同様である。
【0028】
しかしながら、相互に反対側に位置する非取付側面4c3a,4c3bは、相互に異なるX軸方向幅を有する。また、相互に反対側に位置する非取付側面4c4a,4c4bは、一方が平面で他方が曲面であり、相互に異なる形を有している。すなわち、本実施形態では、相互に反対側に位置する非取付側面4c3aと4c3b(4c4aと4c4b)は、相互に異なる形状またはサイズを有する。このように構成することで、コア部4をZ軸方向の上部または下部から見たときに、非対称形状にすることができる。
【0029】
図2Aおよび図2Bに示すように、コイル部6は、1本以上のワイヤ6aがコイル状に巻回してある部分であり、コイル部6からはワイヤ6aの両端である少なくとも一対のリード部6bが、コア部4の外部に引き出される。図示する実施形態では、コイル部6からは、一対のリード部6bがコア部4の副取付側面4c2から当該側面に対し略垂直方向に外部に引き出される。
【0030】
本実施形態では、図5Aに示すように、各端子電極8は、主端子本体80を有する。主端子本体80は、コア体4の主取付側面4c1の形状に合わせて四角形の平板形状であるが、前述したように、主取付側面4c1の形状が変われば、その形状に合わせた形状を有することができる。
【0031】
主端子本体80のZ軸方向の下部には、下弾性片83が主端子本体80から折り曲げられて一体に成形してある。また、主端子本体80のZ軸方向の上部には、上弾性片84が主端子本体80から折り曲げられて一体に成形してある。下弾性片83は、コア部4の底面である実装側外面4aに形成してある下取付溝4a1に嵌合するようになっている。
【0032】
図2Bに示すように、下取付溝4a1の底部は、コイル部6の中心軸に向けてZ軸方向の上方向に傾斜しており、下弾性片83が下取付溝4a1に嵌合した後には、抜けにくくなっている。また、下取付溝4a1と副取付側面4c1との交差角部には、平面状または曲面状の下面取り部4a2が設けられている。端子電極8をコア部4に取り付ける際に、弾性片83の先端部が面取り部4a2に当たり、そこから、弾性片83は、面取り部4a2の傾斜に沿って弾性力に反して押し広げられ、下取付溝4a1へと容易に案内される。
【0033】
図2Bに示すように、上弾性片84は、コア部4の上面である反実装側外面4bに形成してある上取付溝4b1に嵌合するようになっている。上取付溝4b1の底部は、コイル部6の中心軸に向けてZ軸方向の下方向に傾斜しており、上弾性片84が上取付溝4b1に嵌合した後には、抜けにくくなっている。また、上取付溝4b1と副取付側面4c1との交差角部には、平面状または曲面状の上面取り部4b2が設けられている。端子電極8をコア部4に取り付ける際に、弾性片84の先端部が面取り部4b2に当たり、そこから、弾性片84は、面取り部4b2の傾斜に沿って弾性力に反して押し広げられ、上取付溝4b1へと容易に案内される。
【0034】
図5Aに示すように、主端子本体80には、副端子本体82が、一体に成形してある。副端子本体82は、図5Bに示すように、主端子本体80の面に対して、角度θ0で交差するように折曲られている。角度θ0は、コア部4主取付面4c1と副取付面4c2との交差角度に略一致する。この角度を適切に調整することで、後述するリード支持部85の先端部がリード部6bの下部に圧接状態で案内されやすくなる。
【0035】
副端子本体82は、副取付面4c2の外面形状に合わせた内面形状を有し、本実施形態では平板形状であるが、副取付面4c2の外面形状に合わせて曲面形状にしてもよい。また、副端子本体82は、図2Aに示すように、副取付面4c2の外面に向き合っているが、必ずしも接触していなくてもよい。むしろ積極的に、副端子本体82の内面82aと副取付面4c2との間に隙間を持たせても良い。副端子本体82およびその上に一体に成形してあるリード支持部85の弾力性を向上させるためである。
【0036】
副端子本体82は、主端子本体80のZ軸方向高さよりも小さく成形され、コア部4の実装側外面4aからリード部6bの飛び出し位置までの高さよりも小さい高さに設定される。副端子本体82のZ軸方向の上部には、図5Aに示すように、リード支持部85が副端子本体82から外側に折り曲げられて一体に成形してある。なお、端子電極8において外側とは、コア部4から離れる側であり、内側とは、コア部4に近づく側である。
【0037】
図3Aに示すように、リード支持部85が副端子本体82の内面82aから外側に折り曲げられて成形された交差角度θ1は、90度より小さく、好ましくは55〜85度、さらに好ましくは65〜75度である。なお、副端子本体82の内面82aとリード支持部85の上面との交差部82bには、曲げ成形のための曲面が形成してあってもよい。曲面の曲率半径Rは、好ましくは0.05〜0.25mmである。
【0038】
本実施形態では、リード支持部85の先端部には、リード部6bと実質的に平行な接触平面部86が形成してあっても良い。リード支持部85の弾力性により、リード部6bと実質的に平行な接触平面部86がリード部6bに接触することで、これらは弾力により押し付け合い、接触平面部86の上で、リード部6bが良好に位置決めされて仮固定される。
【0039】
接触平面部86は、リード支持部85から折り曲げられて一体に成形してあり、リード支持部85と同じ厚みを有しているが、先端側に厚みを薄く成形しても良い。また、本実施形態では、図5Bに示すように、接触平面部86は、先端側に向けて幅w1が狭くなっていてもよい。接触平面部86の幅w1は、ワイヤ6a(リード部6b)の外径Φなどとの関係で決定され、W1/Φは、好ましくは1〜10である。ワイヤ6aの外径Φは、特に限定されないが、好ましくは0.03〜1.5mmである。また、端子電極8の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.08〜0.25mmである。
【0040】
リード支持部85の先端部、本実施形態では、接触平面部86の幅方向の片側角部(両側でもよい)には、リード支持部85の先端部である接触平面部86の上にリード部6bを案内する傾斜面88が形成してあってもよい。傾斜面88は、たとえば面取り加工などにより形成されることができる。図5Bに示すように、接触平面部86のZ軸方向の上面と副端子本体82の突出方向先端面との角部に、平面状または曲面状の傾斜面88が形成してある。
【0041】
このため、端子電極8をコア部4に取り付ける際に、コア部4の外側面から露出しているリード部6bの横から、端子電極8のリード支持部85の傾斜面88が当たる。そのため、傾斜面88が案内部となり、リード部6bをリード支持部85の上に載せることが容易になり、端子電極8の主端子本体80をX軸方向の両側からコア部4に取り付けるのみで、端子電極8のリード支持部85とリード部6bとの位置決めが容易に行える。
【0042】
なお、図3Bに示すように、リード支持部85の先端部には、図3Aに示すような接触平面部86を形成することなく、リード支持部85Aの全体を先端部まで連続した平板状に成形しても良い。その場合には、傾斜面88は、リード支持部85Aの途中から先端に向けて連続して形成してもよい。いずれにしても、交差角度θ1は、同様な角度になる。
【0043】
次に、図1図5Bに示すインダクタ素子2の製造方法について説明する。まず、図2A図2Bおよび図4に示すように、ワイヤ6aがコイル状に巻回してあるコイル部6を準備する。コイル部6は、たとえば空芯コイルなどで構成される。
【0044】
次に、コイル部6の内部も含めてコイル部6の全体を、コア部4で覆い、コア部4の外面から、コイル部6を構成するワイヤ6aのリード部6bを露出させる。コア部4の成形は、たとえば金型のキャビティ内に、コイル部6をインサートした状態で、金型の内部に、磁性粉末とバインダ樹脂とを含む混合物をキャビティ内に充填し、全体を圧縮することで、図1および図2Aに示すインダクタ素子2が得られる。
【0045】
圧縮成形するための方法としては、金型を用いてもよいし、油圧や水圧を利用してもよい。成形後には、リード部6bは成形体と共に取り出される。
【0046】
本実施形態では、磁性粉体は、金属磁性粒子であり、その粒子外周は、絶縁被膜してあることが好ましい。絶縁被膜としては、金属酸化物被膜、樹脂被膜などが例示される。磁性粉体の粒径は、好ましくは0.5〜50μmである。また、得られるコア部の外表面には、ガラスコーティングや絶縁樹脂コーティングなどが施してあってもよい。
【0047】
コア部4の成形と同時に、あるいはその前後に、本実施形態では、端子電極8を準備する。端子電極8は、好ましくはCuおよびリン青銅などの金属(合金含む)で構成してある。端子電極8は、均一な厚みの単一金属板、あるいはクラッド材などの複合金属板をプレス加工などにより切り抜いて折曲成形することで得られる。端子電極8の表面には、ハンダとの密着性を向上させるメッキ膜などが形成してあっても良い。端子電極8には、主端子本体80、副端子本体82およびリード保持部85が形成してある。また、端子電極8には、必要に応じて、下弾性片83、上弾性片84、接触平面部86および傾斜面88が形成される。
【0048】
端子電極8をコア部4の外面に取り付ける際には、コア部4の外面から飛び出しているリード部6bにリード支持部85の先端部を、リード部6bの横から当接させ、リード支持部85および/またはリード部6bを弾性変形させる。その結果、リード支持部85の先端部の上にリード部6bを相互に押し合うように位置させて仮止めすることができる。
【0049】
本実施形態では、弾性片83および84が取付溝4a1,4b1にそれぞれ係合するために、接着剤は不要ではあるが、接着剤を用いて端子電極8をコア部4の外面に固定してもよい。
【0050】
その後に、リード支持部85の先端部にリード部6bとの接合部6cを形成する。接合部6cを形成する前に、リード部6bの樹脂皮膜は除去しておくことが好ましい。さらに好ましくは、リード部6bの樹脂皮膜は、端子電極8をコア部4の外面に取り付ける前に行う。
【0051】
接合部6cが形成された後に残っているリード部6bの余分な先端部6dは、レーザ照射と同時に除去される。あるいは、レーザ照射後に除去してもよい。あるいは、レーザ照射前に除去しておいても良い。接合部6cでは、リード部6bとリード支持部85の先端部とが、たとえばレーザ溶接により接合されている。なお、接続部6cを形成するための方法としては、レーザ溶接に限らず、アーク溶接、超音波接合、熱圧着接合およびハンダ接合などが例示される。
【0052】
接合部6cが形成された後でも、交差角度θ1は、接合部6cが形成される前とほとんど変わらない。多少変化したとしても、前述した好ましい角度の範囲内である。また、端子電極8をコア部4に組み付けた後の交差角度θ1は、組み付け前と多少変化するが、多少変化したとしても、前述した好ましい角度の範囲内である。また、接合部6cが形成されたとしても、傾斜面88の一部は残っている。
【0053】
本実施形態において、図3Aおよび図3Bに示す交差角度θ1を所定角度範囲内とすることで、コア部4の外面である副取付側面4c2から飛び出すリード部6bのZ軸方向の位置が多少ばらついたとしてもは問題なくなる。すなわち、リード支持部85(接触平面86含む/以下同様)、またはリード部6bまたは双方が弾性変形することで、リード支持部85の先端部は、リード部6bに確実に接触する。しかも、リード支持部85が弾性変形しているために、リード部6bは、リード支持部85の先端部の上に弾性力で押し付けられて位置決めされて仮固定される。
【0054】
また、コア部4の外面である副取付側面4c2から飛び出すリード部6bの周方向の位置が多少ばらついたとしてもは問題ない。すなわち、図5Bに示すように、リード支持部85の幅w1は、リード部6bの外径に比較して十分に大きいため、上記のばらつきを吸収して確実に、リード部6bは、リード支持部85の先端部の上に弾性力で押し付けられて位置決めされて仮固定される。
【0055】
そのため、リード部6bをリード支持部85の先端部に押し付けた状態で、これらをレーザ溶接などで接続することが容易であり、図3Aおよび図3Bに示すように、リード部6bの先端にリード支持部85(85A含む/以下同様)との接続部6cを容易に形成することができる。また、安定した接続が行われ、接続部6cの信頼性が向上する。特に、レーザ接合する際には、端子電極8とリード部6bとが確実に接触していることが好ましいが、本実施形態によれば、確実に接触させることができることから、接合部の不安定を防止し、接合品質を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係るコイル装置2では、仮固定のための特殊な工具を必要としない。すなわち、図5Bに示すように、端子電極8の主端子本体80をX軸方向の両側からコア部4に取り付けるのみで、コア部4の外側面から露出しているリード部6bの横から、端子電極8のリード支持部85の傾斜面88(リード支持部85の幅方向の先端部)が当たる。そのため、傾斜面88が案内部となり、リード支持部85が弾性力で押し下げられ、リード部6bがリード支持部85の上に載せられ、両者は弾性力で押し付けられて仮固定される。
【0057】
なお、リード部6に対して横から接触することでリード支持部85が弾性力で押し下げられると説明したが、リード部6も多少は弾性変形してもよい。ただし、リード部6よりはリード支持部85の弾性変形の方が大きくなるように、端子電極8の板厚や材質が選択されていることが好ましい。
【0058】
また本実施形態では、リード支持部85の先端部は、リード部6bと実質的に平行な接触平面部86が形成してある。この場合には、リード支持部85の弾力性により、リード部6bと実質的に平行な接触平面部86がリード部6bに接触することで、これらは弾力により押し付け合い、接触平面部86の上で、リード部6bが良好に位置決めされて仮固定される。
【0059】
さらに本実施形態では、端子本体は、主端子本体80と副端子本体82とから成り、副端子本体82にリード支持部85が一体的に形成してある。副端子本体82にリード支持部85を形成することで、主端子本体80をコア部4に取り付ける際に、リード支持部85を、リード部6bの横から接触させることが可能になり、リード支持部85が容易に弾性変形し、リード支持部85上にリード部6bを弾性保持して仮止めすることができる。
【0060】
本実施形態のインダクタ素子2のサイズは、特に限定されないが、たとえばX軸方向幅X0が1.0〜20mm、Y軸方向幅Y0が1.0〜20mm、高さZ0が1.0〜10mmである。
【0061】
第2実施形態
【0062】
本実施形態に係るインダクタ素子は、以下に示す以外は、第1実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。図3Aおよび図3Bに示すように、本実施形態では、リード部6bに対するリード支持部85の交差角度θ2が、90度より小さい。交差角度θ2は、好ましくは60度以下、さらに好ましくは1〜50度、さらにまた好ましくは5〜35度である。
【0063】
なお、接合部6cが形成された後でも、交差角度θ2は、接合部6cが形成される前とほとんど変わらない。多少変化したとしても、前述した好ましい角度の範囲内である。また、端子電極8をコア部4に組み付けた後の交差角度θ2は、組み付け前と多少変化するが、多少変化したとしても、前述した好ましい角度の範囲内である。また、接合部6cが形成されたとしても、傾斜面88の一部は残っている。
【0064】
前述した第1実施形態では、コイル部6からは、一対のリード部6bがコア部4の副取付側面4c2から当該側面に対し略垂直方向に外部に引き出されるが、リード部6bの引出方向は、必ずしもコア部4の副取付側面4c2から略垂直方向でなくてもよい。その場合には、図3Aおよび図3Bに示す交差角度θ1は、第1実施形態に係る好ましい交差角度θ1の角度範囲に収まらないこともある。しかしながら、その場合においても、交差角度θ2が本実施形態に係る好ましい交差角度θ2の角度範囲に収まれば、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0065】
第3実施形態
本実施形態に係るインダクタ素子は、以下に示す以外は、第1実施形態または第2実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。図6に示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2Aでは、端子電極8Aが主端子本体80Aと副端子本体82とを有する。副端子本体82の構成は、前述した実施形態と同様である。
【0066】
主端子本体80Aは、前述した実施形態の主端子本体80とは異なり、上弾性片84を有さず、Z軸方向の高さは、主端子本体80の約半分以下である。主端子本体80AのZ軸方向の下端には、下取付片83Aが主端子本体80Aから折り曲げられて一体に成形してある。下取付片83Aには、埋込凸部83bが折曲成形などにより一体に形成してある。コア部4aの成形時に、端子電極8Aをインサート成形することなどにより、埋込凸部83bは、コア部4Aの実装側外面4aの内部に埋め込まれている。
【0067】
なお、埋込凸部83bなどを形成することなく、端子電極8Aは、コア部4Aの外面に接着剤で取り付けてもよい。本実施形態においても、第1実施形態または第2実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0068】
第4実施形態
本実施形態に係るインダクタ素子は、以下に示す以外は、第1〜第2実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。図7に示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2Bは、図1図5Bに示すインダクタ素子2のZ軸方向の上下を逆にした構成であり、回路基板などへの実装面が上下逆になる。
【0069】
また、インダクタ素子2Bの上下を逆にしてインダクタ素子2と比較した場合には、主端子本体80と副端子本体82との配置位置関係が、インダクタ素子2におけるこれらの配置位置関係とX軸方向から見て左右が逆になる。本実施形態においても、第1実施形態または第2実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0071】
たとえば、図1に示す相互に反対側に位置する側面4c1,4c1は、相互に同じ形と面積を有するが、異ならせても良い。側面4c2,4c2についても同様である。
【0072】
また、上述した実施形態では、コイル部6は、円形コイル状であるが、特に限定されず、四角コイル状、多角コイル状、楕円コイル状、その他のコイル状でもよい。さらに、コア部4または4Aの形状は、特に限定されず、円柱形、楕円柱、多角柱などであっても良い。
【0073】
本発明に係るコイル装置は、電源用トランス、電源用インダクタ、ノイズ除去用インダクタなどとして、電子機器、電気装置、車載装置などに用いられる。
【符号の説明】
【0074】
2,2A… インダクタ素子(コイル装置)
4… コア部
4a… 実装側外面
4a1,4b1… 取付溝
4a2,4b2… 面取り部
4b… 反実装側外面
4c… 側面(側方外面)
4c1… 主取付側面
4c2… 副取付側面
4c3a,4c3b、4c4a,4c4b… 非取付側面
6… コイル部
6a… ワイヤ
6b… リード部
6c… 接合部
8… 端子電極
80… 主端子本体
82… 副端子本体
83,84… 弾性片
85… リード支持部
86… 接触平面部
88… 傾斜面
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7